(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5793615
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】カスケード接続変調器回路を備える光学導波管
(51)【国際特許分類】
G02F 1/017 20060101AFI20150928BHJP
G02F 1/025 20060101ALI20150928BHJP
【FI】
G02F1/017 503
G02F1/025
【請求項の数】31
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-512876(P2014-512876)
(86)(22)【出願日】2012年5月15日
(65)【公表番号】特表2014-519623(P2014-519623A)
(43)【公表日】2014年8月14日
(86)【国際出願番号】US2012037944
(87)【国際公開番号】WO2012166349
(87)【国際公開日】20121206
【審査請求日】2013年12月26日
(31)【優先権主張番号】13/117,844
(32)【優先日】2011年5月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】595168543
【氏名又は名称】マイクロン テクノロジー, インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100106851
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 泰久
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】ミード,ロイ イー.
(72)【発明者】
【氏名】サンデュ,ガーテ エス.
【審査官】
林 祥恵
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−268276(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/108093(WO,A1)
【文献】
国際公開第2010/087790(WO,A1)
【文献】
国際公開第2008/024513(WO,A1)
【文献】
国際公開第00/035057(WO,A1)
【文献】
特開2008−160719(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00−1/125
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学導波管に入力された第一の周波数の光信号を伝送するための光学伝送チャネルと、
前記光学伝送チャネルに沿って構成された複数の変調器回路と、を含み、
前記複数の変調器回路の各々は、共振温度にあるとき、前記第一の周波数で共振する少なくとも一つの共振構造と、バンドパスフィルタとしての機能を有し前記光学伝送チャネルから前記少なくとも一つの共振構造へ前記光信号を結合させる入力共振スイッチと、前記少なくとも一つの共振構造によって変調された前記光信号を前記光学伝送チャネルへ結合させる出力共振スイッチとを有し、
前記複数の変調器回路の各々の前記少なくとも一つの共振構造は、前記第一の周波数で共振する異なる共振温度を有する、
ことを特徴とする光学導波管。
【請求項2】
前記複数の変調器回路がお互いに直列である、ことを特徴とする請求項1に記載の光学導波管。
【請求項3】
前記少なくとも一つの共振構造が、光学変調器である、ことを特徴とする請求項2に記載の光学導波管。
【請求項4】
前記少なくとも一つの共振構造は、其々の共振温度において最大の共振を有する、ことを特徴とする請求項2に記載の光学導波管。
【請求項5】
前記少なくとも一つの共振構造は、前記其々の共振温度に近い温度範囲内の温度で部分的に共振する、ことを特徴とする請求項4に記載の光学導波管。
【請求項6】
前記複数の変調器回路のうち第一の変調器回路に対応する前記少なくとも一つの共振構造に対する前記温度範囲は、前記複数の変調器回路のうち第二の変調器回路に対応する少なくとも一つの共振構造に対する前記温度範囲と重複する、ことを特徴とする請求項5に記載の光学導波管。
【請求項7】
前記重複する温度範囲では、少なくとも部分的な共振が任意の温度で生じる、ことを特徴とする請求項6に記載の光学導波管。
【請求項8】
前記少なくとも部分的な共振は、前記任意の温度における前記第一の周波数の変調をもたらす、ことを特徴とする請求項7に記載の光学導波管。
【請求項9】
前記任意の温度における前記第一の周波数の前記変調の深さは、前記共振温度における前記第一の周波数の前記変調の深さと同一である、ことを特徴とする請求項8に記載の光学導波管。
【請求項10】
前記複数の変調器回路の各々は、共通信号によって駆動される、ことを特徴とする請求項2に記載の光学導波管。
【請求項11】
温度センサと、前記複数の変調器回路に対して複数の駆動信号を適用するために、前記温度センサによって検知された温度を利用する制御回路と、をさらに含む、ことを特徴とする請求項2に記載の光学導波管。
【請求項12】
光学導波管に入力された第一の周波数の光信号を伝送するためのシリコン光学伝送チャネルと、
前記シリコン光学伝送チャネルに沿って構成される複数の変調器回路とを有し、
前記複数の変調器回路の各々は、前記シリコン光学伝送チャネルに結合された入力共振スイッチと、前記シリコン光学伝送チャネルへと結合された出力共振スイッチと、前記入力および出力共振スイッチの間に結合された変調器とを含み、
前記入力共振スイッチは、バンドパスフィルタとしての機能を有し、前記入力共振スイッチを含む前記変調器回路が共振温度にあるときに前記第一の周波数で共振するように構成され、
前記複数の変調器回路は、其々異なる共振温度を有する、
ことを特徴とするシリコン光学導波管。
【請求項13】
前記複数の変調器回路の各々における前記入力共振スイッチは、前記複数の変調器回路の各々の共振温度に近い温度範囲内の温度で共振する、ことを特徴とする請求項12に記載のシリコン光学導波管。
【請求項14】
前記複数の変調器回路の各々に対応する前記温度範囲は重複する、ことを特徴とする請求項13に記載のシリコン光学導波管。
【請求項15】
任意の温度における前記第一の周波数の変調深さは一定である、ことを特徴とする請求項14に記載のシリコン光学導波管。
【請求項16】
任意の温度における前記第一の周波数の変調深さは、最小変調深さと最大変調深さとの間にあり、前記最小変調深さは、前記最大変調深さの少なくとも70パーセントである、ことを特徴とする請求項14に記載のシリコン光学導波管。
【請求項17】
少なくとも一つのシリコン光学導波管を含むプロセッサを備えるプロセッサシステムであって、
前記プロセッサは、前記光学導波管に入力された第一の周波数の光信号を伝送するためのシリコン光学伝送チャネルと、前記シリコン光学伝送チャネルに沿って構成された複数の変調器回路とを備え、
前記複数の変調器回路の各々は、対応する共振温度にあるときに前記第一の周波数で共振する少なくとも一つの共振構造と、前記光学伝送チャネルから前記少なくとも一つの共振構造へと前記光信号をバンドパスフィルタして結合可能とする入力共振スイッチと、前記少なくとも一つの共振構造から前記光学伝送チャネルへと前記光信号を結合可能とする出力共振スイッチとを有し、
前記複数の変調器回路は其々異なる共振温度を有する、
ことを特徴とするプロセッサシステム。
【請求項18】
前記少なくとも一つの共振構造は、前記複数の変調器回路の各々の共振温度に近い温度範囲内の温度で共振する、ことを特徴とする請求項17に記載のプロセッサシステム。
【請求項19】
前記複数の変調器回路のうちの各々に対応する前記温度範囲では、任意の温度で前記第一の周波数での部分的な共振が生じ、
前記複数の変調器回路のうち第一の変調器回路に対応する前記少なくとも一つの共振構造に対する前記温度範囲は、前記複数の変調器回路のうち第二の変調器回路に対応する少なくとも一つの共振構造に対する前記温度範囲と重複する、
ことを特徴とする請求項18に記載のプロセッサシステム。
【請求項20】
前記任意の温度における前記第一の周波数の変調深さは、前記共振温度における前記第一の周波数の変調深さと同一である、ことを特徴とする請求項19に記載のプロセッサシステム。
【請求項21】
前記複数の変調器回路の各々は共通信号によって駆動される、ことを特徴とする請求項17に記載のプロセッサシステム。
【請求項22】
温度センサと、前記複数の変調器回路へと複数の駆動信号を適用するために前記温度センサによって検知された温度を利用する制御回路と、をさらに含む、ことを特徴とする請求項17に記載のプロセッサシステム。
【請求項23】
温度範囲内のシリコン光学導波管を使用する方法であって、
光学伝送チャネルへと第一の周波数の光信号を入力するステップと、
前記シリコン光学導波管の温度が第一の温度に等しいときに前記光信号を変調するステップであって、前記変調するステップは、対応する第一の共振温度を有する第一の共振構造を含む第一の変調器回路を利用して実施され、前記第一の共振温度は前記第一の温度に等しい、ステップと、
第一の入力共振スイッチを使って前記光学伝送チャネルから前記第一の共振構造へと前記第一の周波数の光信号をバンドパスフィルタして結合するステップと、
第一の出力共振スイッチを使って前記第一の共振構造から前記光学伝送チャネルへと前記第一の周波数の光信号を結合するステップと、
前記シリコン光学導波管の温度が第二の温度に等しいとき、前記光信号を変調するステップであって、前記変調するステップは、対応する第二の共振温度を有する第二の共振構造を含む第二の変調器回路を利用して実施され、前記第二の共振温度は前記第二の温度に等しい、ステップと、
第二の入力共振スイッチを使って前記光学伝送チャネルから前記第二の共振構造へと前記第一の周波数の光信号をバンドパスフィルタして結合するステップと、
第二の出力共振スイッチを使って前記第二の共振構造から前記光学伝送チャネルへと前記第一の周波数の光信号を結合するステップと、
を含む、ことを特徴とする方法。
【請求項24】
前記シリコン光学導波管の温度が第三の温度に等しいとき、前記光信号を変調するステップをさらに含み、前記第三の温度は、前記第一および第二の温度の間にあり、前記変調するステップは、前記第一および第二の共振構造に対応する前記回路の部分的共振中に、前記第一および第二の変調器回路を利用して実施される、ことを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記第一の周波数で前記光信号を、前記第一、第二および第三の温度で一定である変調深さへと変調するステップをさらに含む、ことを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項26】
共通信号を利用して前記第一および第二の変調器回路を駆動するステップをさらに含む、ことを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項27】
温度センサと、前記第一および第二の変調器回路へと複数の駆動信号を適用するために前記温度センサによって検知された温度を利用する制御回路と、を利用するステップをさらに含む、ことを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記出力共振スイッチは、バンドパスフィルタとしての機能を有する請求項1に記載の光学導波管。
【請求項29】
前記出力共振スイッチは、バンドパスフィルタとしての機能を有する請求項12に記載のシリコン光学導波管。
【請求項30】
前記出力共振スイッチは、バンドパスフィルタとしての機能を有する請求項17に記載のプロセッサシステム。
【請求項31】
前記第1及び第2の出力共振スイッチは、バンドパスフィルタとしての機能を有する請求項23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、概してシリコン光学導波管
(光導波路)の分野に関し、より詳細には、シリコン光学導波管における光学変調器回路に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンベースの集積回路は、マイクロエレクトロニクス用途のプラットフォームとして長い間利用されている。例えば、コンピュータ、自動車、航空電子工学、モバイルデバイス、制御および表示システムならびに全ての様式の消費者電子製品、産業電子製品におけるマイクロプロセッサは、従来から、全て、電気の流れを容易にし、かつ方向づけるシリコンプラットフォームに基づくものである。処理の必要性が増大するにつれて、シリコンベースの集積回路の設計は、より早い処理時間および拡大した通信帯域幅に対して順応するように適応してきた。主に、このような性能の利益は、フィーチャ寸法改良の結果であり、それは、技術が発達して、シリコンチップ上にトランジスタなどの増加したフィーチャをぎっしり詰め込むことを意味する。フィーチャ密度を増加させる努力が続く一方、シリコンベースプラットフォームの処理速度および帯域幅を増加させるための新しい方法が開発されてきた。このような一方法は、シリコンフォトニクスとして知られている。
【0003】
“シリコンフォトニクス”という用語は、光学媒体としてシリコンを利用するフォトニックシステムの研究および適用に関連する。したがって、電気の流れを容易にするために、シリコンを利用する代わりに、もしくはシリコンを利用することに加えて、シリコンは、光子もしくは光の流れを方向づけるために利用される。電気の速度と光の速度とは同一であるが、光は、電気よりも広い周波数範囲でデータを伝搬することが可能であり、光の帯域幅が電気の帯域幅よりも大きいことを意味する。したがって、光の流れは、同じ期間に同等の電気の流れが伝搬するよりも多くのデータを伝搬することができる。したがって、データキャリアとして光を利用することには、顕著な利点が存在する。さらには、望ましい光学媒体としてシリコンを利用することによって、既存のシリコン集積回路技術の適用と、そのぎっしり詰まった集積を可能にする。シリコンは、約1.1マイクロメートルよりも長い波長の赤外光に対して透過性がある。シリコンは、約3.5の高い屈折率をも有する。この高い屈折率によって提供される漏れのない光学的封じ込めは、数百ナノメートルのみの断面寸法を有し、それによって、現在のナノスケール半導体技術での集積を容易にする顕微鏡的光学導波管を可能にする。したがって、シリコンフォトニックデバイスは、既存の半導体作製技術を利用して作成することができる。なぜなら、シリコンは、ほとんどの集積回路用の基板として既に使用され、単一のマイクロチップ上に光学コンポーネントと電子コンポーネントとが集積されるハイブリッドデバイスを作成することが可能であるためである。
【0004】
実際には、シリコンフォトニクスは、シリコンオンインシュレータ、もしくはSOI技術を利用して実現される。シリコンフォトニックコンポーネントが、作製されるウェーハのバルクシリコンから光学的に独立したままであるために、介在材料を有することが必要である。これは、通常、興味ある波長領域における約1.44のより低い屈折率を有するシリカである。これによって、シリコン・シリカ
の界面での光
の内部
全反射をもたらし、それによって
、伝送された光が
シリコン内に留まる。
【0005】
光を利用するデータ伝搬の典型例が
図1に示される。
図1は、例えば、シリコン導波管110を含む光学伝送システム100を示す。シリコン導波管は、光学伝送システム100の全体を構成してもよいし、当該システム100の一つ以上の部分だけを構成してもよい。システムは、複数のデータ入力チャネル120を含み、各チャネル120は、光パルスの形状でデータを伝送する。複数のデータチャネル120で伝送されるデータを同時に伝送するために、各チャネル120における光は、周波数変調器130によって変調される。各チャネル120から変調される光は、その後、光学マルチプレクサ140を利用して、単一の伝送チャネル150へと組み合わせられる。多重化された光は、その後、(図示されていない)終点へと信号伝送チャネル150に沿って伝送され、光は、終点デバイスによって利用される前に、逆多重化され、復調される。
【0006】
しかしながら、光学導波管における光の伝送は、温度の影響を受ける。概して、温度変化は、(熱膨張による)デバイス寸法の変化をもたらし、光学導波管において利用される材料の屈折率の変化をもたらす。より詳細には、温度変化は、
図1に示された光学周波数変調器130の動作に影響を与える可能性がある。共振性光子変調器は、特定の既知の周波数もしくはその近傍の周波数である受信周波数のみを変調するために設計される。特定の既知の周波数の変調を可能にするために、変調器は、変調器によって変調されるべき既知の周波数以外の全てをフィルタ処理するように動作する共振構造を含む。したがって、既知の周波数は、共振構造の共振周波数である。不幸なことに、共振構造の屈折率は、温度に従って変化する傾向にあるため、変調される特定の周波数(即ち、共振周波数)は、温度変化に伴って既知の周波数から逸脱する傾向にある。したがって、温度変化に対して耐性を有する変調器回路を備えるシリコン光学導波管の必要性が存在する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】シリコン光学導波管を備える光学伝送システムを示す。
【
図2】開示された一実施形態に従うシリコン光学導波管を示す。
【
図3】開示された一実施形態に従うリング共振器に対する周波数/強度グラフを示す。
【
図4】開示された一実施形態に従うシリコン光学導波管の動作方法を示す。
【
図5】開示された一実施形態に従うシリコン光学導波管に対する周波数/強度グラフを示す。
【
図6】開示された一実施形態に従うシリコン光学導波管を示す。
【
図7】開示された一実施形態に従うシリコン光学導波管に対する周波数/強度グラフを示す。
【
図8】開示された一実施形態に従うシリコン光学導波管の動作方法を示す。
【
図9A】開示された一実施形態に従うシリコン光学導波管を示す。
【
図9B】開示された一実施形態に従うシリコン光学導波管を示す。
【
図10】開示された一実施形態に従うプロセッサシステムを示す。
【0008】
シリコンベース集積回路は種々の製品および状況で利用されるため、シリコンベース集積回路は、広範囲の温度状態に晒される傾向にある。しかしながら、シリコンベース光学導波管においては、温度変動は、含まれる光学周波数変調器の性能の低下をもたらす可能性がある。したがって、シリコン光学導波管が温度変化に対してより頑強になることを可能にするために、本明細書では、光学周波数変調器を備える改良されたシリコン光学導波管が開示される。
【0009】
改良されたシリコン光学導波管の210の一実施形態が
図2に示される。改良された導波管210の図示された部分は、光学伝送チャネル220と、二つの周波数変調器回路230T1、230T2を含み、各々の周波数変調器回路は、導波管210に対してシリアルに結合される。二つだけの周波数変調器回路(概して230と称される)が示されているが、改良されたシリコン光学導波管210は、以下の説明で明らかなように、任意の数の周波数変調器回路230を含む可能性がある。
図2においては、各変調器回路230は、二つのスイッチ(例えば、スイッチ240AT1、240BT1)と、変調器(例えば、変調器250T1)とを含む。特定の周波数の光信号が、導波管210とパラレルに構成された変調器(概して250と称される)に対して導波管210から分路することを可能にするために、スイッチ(概して240と称される)は導波管210へと結合される。したがって、スイッチ240は、特定周波数の光信号が変調器250へのアクセスするのを可能にするように調整されるため、スイッチ240は、変調器250に対して、フィルタ処理された信号を提供するバンドパスフィルタのように動作する。特定の周波数ではない光信号は、導波管210に沿って障害物なしに継続することが可能である。
【0010】
各変調器回路230においては、一つのスイッチ(例えば、スイッチ240AT1)は、入力スイッチ(概して、入力スイッチ240Aと称される)として設計される。変調器回路230における他のスイッチ、例えば、スイッチ240BT1は、出力スイッチ(概して、出力スイッチ240Bと称される)として設計される。入力スイッチ240Aは、光学伝送チャネル220から変調器250へと光信号を結合する。出力スイッチ240Bは、変調器250から光学伝送チャネル220へと光信号を結合する。
【0011】
スイッチ周波数応答は、スイッチ240の共振特性の結果である。共振性光学スイッチは、スイッチ共振周波数に一致する周波数を有する信号の伝送を完全に通過させるか、可能にするだけのスイッチである。例えば、リング共振器スイッチは、本質的には、その円周が所望の周波数の強めあう干渉を提供するループ型光学導波管である。円周が、所望の周波数に対応する光信号の波長の整数倍(例えば、λ、2λ、3λなど)に等しい光学リング共振器は、所望の周波数の信号を完全に通過させるか、または伝送する。なぜなら、信号が光学リング共振器周囲を通過するとき、
強めあう干渉を経験するからである。逆に、同一の光学リング共振器は、リング共振器の円周が光信号波長の1/2の奇数倍(例えば、(1/2)λ、(3/2)λ)、(5/2)λなど)に等しい場合、生成される弱めあう干渉によって、光信号を完全にブロックする。光学リング共振器は、他の周波数は部分的にのみ通過させる。
【0012】
リング共振器の周波数通過特性は、
図3のグラフ300に示される。与えられた温度T0に対して、リング共振器は、リングの共振周波数ω0で信号を完全に通過させる。このことは、周波数ω0における深い凹部によってグラフ300において明らかとなり、リング共振器が他の周波数よりもω0の信号に対して顕著に感受性が高いことを示す。ω0から離れた周波数の信号は本質的にブロックされるが、周波数ω0に近い周波数の信号は部分的にのみブロックされる。しかしながら、温度が温度T1へと変化する場合、リング共振器の共振周波数は、周波数ω1へとシフトする。したがって、リング共振器は、リング共振周波数に対する、温度依存性のバンドパスフィルタとして動作する。
【0013】
図2に戻ると、リング共振器スイッチ24は光学変調器250に対してフィルタ処理されたアクセスを提供する。光学変調器250は、共振変調器であってもよいし、任意の他のタイプの周波数変調器であってもよい。スイッチ240と同様に、共振変調器は、特定の温度で機能するように調製される。したがって、一実施例として、共振スイッチと直列の共振変調器は、概して、スイッチが共振周波数ω0を通過させる温度T0に対応する温度T0で機能するように調製される。光学変調器は、非共振性タイプのものであってもよい。それとは関係なく、共振変調器250は、入力スイッチ240Aを介して受信される受信周波数ω0を変調するために、共通信号260によって駆動される。共通信号260は、変調器250へと電荷を注入するように機能し、それによって、周波数変調を実現するために、変調器250の屈折率を変化させる。変調された周波数は、その後、出力スイッチ240Bを介して光学伝送チャネル220へと結合される。
【0014】
図2において、各変調器回路は、特定の温度に対して調製される。換言すると、各変調器回路230内のスイッチ240と変調器250は、特定の温度における特定の周波数をフィルタ処理して変調するように選択される、ならびに/または、設計される。温度変化を補償するために、各変調器回路230は、他の変調器回路230の調製された温度とは異なる温度へと調整される。したがって、当該温度がその調整された温度とは異なるため、ある変調器回路が非アクティブであるとき、調製された温度が実際の温度に対応する別の変調器回路がアクティブである。この方法においては、導波管210は、種々の温度における周波数変調を適応させるために設計される。
【0015】
図2の導波管210の動作方法400は、
図4に示される。まず、与えられた周波数ω0のレーザ入力が導波管に入力される(ステップ410)。入力周波数ω0は、導波管温度Tに依存して、一つ以上の変調器回路を利用して変調される。変調器回路は、異なる温度における周波数ω0を変調するために各々調整される。したがって、例えば、変調器回路230T1は、温度T1における周波数ω0を変調するために調整される。変調器回路230T2は、温度T1とは異なる温度T2における周波数ω0を変調するために調整される。さらなる変調器回路230TNが其々の温度TNでの周波数ω0を各々変調する(ステップ430)ように含まれてもよい(ステップ420)。
【0016】
周波数ω0での変調器回路230の全ての応答を示す強度対温度のグラフ500が、
図5に示される。与えられた周波数ω0に対して各変調器回路は異なる温度範囲内でアクティブであることをグラフは示している。例えば、温度T1において、変調器回路230T1は完全にアクティブであり、他の変調器回路でアクティブな回路はない。温度T2において、変調器回路230T2が完全にアクティブであり、他の変調器回路でアクティブな回路はない。同様に、温度TNにおいて、変調器回路230TNが完全にアクティブである。温度T1とT2の間の温度においては、変調器回路230T1と230T2の双方が部分的にのみアクティブである。
【0017】
グラフ500は、異なる温度Tにおいて導波管210によって提供される変調深さもしくは変調の程度をも示す。例えば、温度T1において、示された変調深さは、約−20dBである。温度T2において、示された変調深さもまた、約−20dBである。しかしながら、温度T1とT2との間の温度においては、任意の一つの変調器回路230によって提供される変調深さは、実質的には、−20dBよりも小さい。にもかかわらず、変調器回路のアクティビティにおける重複のために、温度T1とT2との間の温度においては、変調器回路230T1と230T2の双方が幾らかの変調を提供する。提供される合計の変調深さは、したがって、個々の変調器回路230によって提供される重複する変調深さの総計である。
【0018】
変調深さの重複が任意の与えられた温度で数デバイスだけを含むように、可変周波数応答対温度のグラフで変調器アレイを設計することが可能である。したがって、導波管の動作中、導波管温度Tが温度T1に等しい場合には、変調器回路230T1は受信周波数ω0を変調するうえでアクティブであるが、他の変調器回路230T2、230TNはアクティブではない。導波管温度Tが変化して温度T2に等しい場合、変調器回路230T2が受信周波数ω0を変調するうえでアクティブとなるが、他の変調器回路230T1、230TNはアクティブではない。導波管温度Tが変化して、温度T1とT2の間の温度に等しい場合には、変調器回路230T1と230T2は、230T1および230T2の双方の変調器回路からの変調の合計が、任意の個々の変調器回路230の最大変調深さとほぼ等しくなりうるように設計され、構成されてもよいが、双方の変調器回路230T1と230T2は、減少した変調深さで、受信周波数ω0を変調するうえで部分的にアクティブになる。このことは、隣接する変調器回路230の変調範囲が、各変調器回路の変調深さが回路の最大の変調深さの約半分である点で重複するときの結果である。あるいは、変調深さにおける幾らかの相違が許容されてもよい。例えば、導波管システムのノイズ耐性に依存して、最大変調深さのうちの70パーセントの変調深さが許容されてもよい。
【0019】
したがって、光学導波管システムは、温度範囲が、導波管に直列に配置された変調器回路の数および変調器回路の特性(例えば、周波数/温度応答)に依存するような、温度範囲内の周波数変調を容易にする。
【0020】
別の実施形態においては、共振スイッチは除去され、共振性リング変調器だけが、光学導波管に直列して提供される。
図6は、光学導波管610のこの“スイッチのない”実施形態を示す。
図6の実施形態においては、二つ以上の変調器(概して変調器650と称される)は、導波管610に沿って直列に配置される。変調器650は、異なる温度において、周波数ω0で共振するように選択され、ならびに/または設計される。または、換言すると、与えられた温度Tに対して、各変調器は、異なる共振周波数を有する。
図7に示されるように、隣接する変調器650の共振周波数は、隣接する変調器650間の変調の重複が、それらの最大の変調深さの約1/2に等しい変調深さで、各変調器に対して生じるようにオフセットされる。したがって、与えられた温度T1において、光学回路は、第一の変調器650T1が共振するように設計される。温度T2において、第一の変調器650T1は、もはや共振しないが、第二の変調器650T2は共振する。T1とT2の間の温度T3においては、第一および第二の共振器650T1、650T2の双方が部分的に共振する。この方法においては、光学伝送チャネル220に直列に複数の変調器650をカスケード接続(縦接続)することによって、光学導波管610は、温度における変動に対してより頑強になる。導波管610に使用される変調器650の数は、コスト、空間および全体の必要性を考慮することによる以外には限定されない。
【0021】
図6の導波管システムの動作方法800は、
図8に示される。まず、与えられた周波数ω0のレーザ入力が導波管に入力される(ステップ810)。入力周波数ω0は、導波管温度Tに依存して一つ以上の変調器を利用して変調されるべきである。変調器は、各々異なる温度において周波数ω0を変調するために調整される。したがって、例えば、変調器650T1は、温度T1において周波数ω0を変調するように調製される。変調器650T2は、温度T1とは異なる温度T2において周波数ω0を変調するように調製される。さらなる変調器650TNは、其々の温度TNにおいて、各々が周波数ω0を変調する(ステップ830)ように含まれてもよい(ステップ820)。
【0022】
導波管の動作中、導波管温度Tが温度T1に等しい場合、変調器650T1は、受信周波数ω0を変調するうえでアクティブであるが、他の変調器650T2、650TNはアクティブではない。導波管温度Tが変化してT2に等しい場合には、変調器650T2が受信周波数ω0を変調するうえでアクティブになるが、他の変調器650T1、650TNはアクティブではない。導波管温度Tが変化して温度T1とT2との間の温度に等しい場合には、変調器650T1と650T2との双方が、減少した変調深さで受信周波数ω0を変調するうえで、部分的にアクティブになる。双方の変調器は、同一の信号から駆動され、したがって、双方は、受信周波数ω0上の信号をエンコードするのと併せて動作することができる。
【0023】
導波管210、610は、
図9Aおよび
図9Bに示されたようにさらに改変されてもよい。
図9Aおよび
図9Bにおいては、導波管910Aおよび910Bは、其々、温度センサ920と制御回路960の追加によって改変される。導波管910A、910Bにおいては、変調器250、650の動作は、その出力によって制御回路960が変調器250、650をアクティブに駆動することが可能である、温度センサ920を利用することによって最適化される。例えば、制御アルゴリズムは、特定の検知された温度において、特定の変調器を駆動するために、光学導波管の検知された温度を利用するために使用される可能性がある。この方法においては、特定の変調器は、完全にパッシブな変調回路によって提供される変調深さよりも与えられた周波数に対するより大きな変調深さを提供するために駆動されてもよい。さらには、検知された温度情報は、生成された波長が、通信リンクもしくは導波管の他の側が受信することを期待する波長に対応するように、導波管に沿って伝送するための特定の波長の生成に役立つように使用されてもよい。
【0024】
改良された光学導波管は、集積回路の一部として作製されてもよい。対応する集積回路は、典型的なプロセッサシステムにおいて使用されてもよい。例えば、
図10は、上述された実施形態に従う、光学導波管210、610、910A、910Bなどの改良されたシリコン光学導波管を使用するプロセッサおよび/もしくはメモリデバイスを含む典型的なプロセッサシステム1500を示す。コンピュータシステムなどのプロセッサシステムは、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ、もしくは、入力/出力(I/O)デバイス1520とバス1590を介して通信する他のプログラマブルデジタル論理デバイスなどの中央処理装置(CPU)1510を概して含む。メモリデバイス1400は、メモリコントローラを典型的に介して、バス1590を介して、CPU1510と通信する。メモリデバイスは、RAM、ハードドライブ、FLASHドライブもしくはリムーバブルメモリを例えば含んでもよい。コンピュータシステムの場合においては、プロセッサシステムは、バス1590を介してCPU1510と通信するリムーバブルメディアデバイス1550などの周辺デバイスを含んでもよい。所望の場合には、メモリデバイス1400は、単一の集積回路として、例えばCPU1510などのプロセッサと組み合わせられてもよい。
【0025】
プロセッサシステム1500のコンポーネントの任意の一つ以上は、上述されたようなシリコン光学導波管の一つ以上を含む可能性がある。例えば、CPU1510、I/Oデバイス1520およびメモリデバイス1400は、シリコン光学導波管を含んでもよい。さらには、二つ以上のプロセッサシステムコンポーネント間のバス1590を介した通信は、シリコン光学導波管210、610、910A、910Bを介してもよい。
【0026】
上記の記述および図面は、本明細書で記述される特徴および利点を達成する例示的実施形態を例示する目的でのみ考えられるべきである。具体的なプロセス状態および構造に対する改変および置換がなされる可能性がある。したがって、本発明は、前述の記述および図面によって限定して考えられるべきではなく、添付の請求項の範囲によってのみ限定される。