(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5793617
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】環境廃液からの可溶性硫酸塩の微生物による自己持続的解毒
(51)【国際特許分類】
C02F 3/34 20060101AFI20150928BHJP
C02F 3/00 20060101ALI20150928BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20150928BHJP
C12N 1/20 20060101ALI20150928BHJP
【FI】
C02F3/34 Z
C02F3/00 G
C12M1/00 D
C12N1/20 D
【請求項の数】40
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2014-514157(P2014-514157)
(86)(22)【出願日】2011年7月28日
(65)【公表番号】特表2014-519977(P2014-519977A)
(43)【公表日】2014年8月21日
(86)【国際出願番号】IB2011001743
(87)【国際公開番号】WO2012168754
(87)【国際公開日】20121213
【審査請求日】2013年12月9日
(31)【優先権主張番号】789/KOL/2011
(32)【優先日】2011年6月10日
(33)【優先権主張国】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】513275311
【氏名又は名称】ウエスト ベンガル ユニバーシティ オブ テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109586
【弁理士】
【氏名又は名称】土屋 徹雄
(72)【発明者】
【氏名】レイ チャウドゥリー,シャオン
(72)【発明者】
【氏名】タッカー,アショーク,ランジャン
【審査官】
池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−269249(JP,A)
【文献】
特開2010−239962(JP,A)
【文献】
特開昭63−007776(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/00−3/34
C12M 1/00−3/10
C12N 1/00−7/08
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)第1のマトリックスに固定された乳酸菌(LAB)の培地を含む第1のチャンバーおよび
b)第2のマトリックスに固定された硫酸塩還元菌(SRB)の培地を含む第2のチャンバー
を含むシステムであって、
前記第1のチャンバーは前記第2のチャンバーと流体連通しており、
前記第1のチャンバーは第1の培養液を単独でまたは環境廃液と組み合わせて受け入れ、乳酸を含む第1の排出廃液を前記第2のチャンバーに放出するように構成され、
前記第2のチャンバーは前記乳酸を含む第1の排出廃液を単独でまたは環境廃液と組み合わせて受け入れ、第2の排出廃液を放出するように構成され、
前記第1のマトリックスに固定された乳酸菌は、前記第1の培養液および/または環境廃液の成分を代謝して前記乳酸を産生し、
前記環境廃液には硫酸塩が含まれ、
前記硫酸塩還元菌は前記第1のマトリックスに固定された乳酸菌が産生した乳酸を前記硫酸塩の還元に用い、
前記第2の排出廃液の硫酸塩濃度は前記環境廃液に比べて低減されるシステム。
【請求項2】
前記第1の排出廃液が、前記第1のチャンバーの乳酸菌の上清である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第1の培養液が前記第1のチャンバーの前記乳酸菌の増殖、維持またはその両方に適した栄養素を含む、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記第1の排出廃液が前記第1の培養液または環境廃液よりも高い濃度の乳酸を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記第2のチャンバーが前記硫酸塩還元菌の増殖、維持またはその両方に適したSRB培養液成分を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記第2のチャンバー内では前記乳酸菌が増殖できない、請求項1から5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記第2の排出廃液中の硫酸塩濃度が前記環境廃液の硫酸塩濃度の90%未満である、請求項1から6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記第2の排出廃液中の硫酸塩濃度が前記環境廃液の硫酸塩濃度の1%未満である、請求項1から7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記乳酸菌が種Gibelion catla、Nibea sp.、Labeo rohita、Raiamas bola、Puntius sp.、Oreochromis niloticus、Heteropneutes fossilis、Sus scrofa domesticus、Gallus domesticus、もしくはCapra aegagrus hircusの腸から、または発酵食品、乳製品、柑橘類および腐った果物、葉、もしくは長草から単離された細菌の固有株を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記硫酸塩還元菌が属Archaeoglobus、Desulfoarculus、Desulfobacter、Desulfobacterales、Desulfobacterium、Desulfobotulus、Desulfobulbus、Desulfococcus、Desulfomicrobium、Desulfomonile、Desulfonema、Desulfosarcina、Desulfotomaculum、Desulfovibrio、Desulfovibrionales、Syntrophobacterales、Thermodesulfobacterium、またはThermodesulfovibrioを含む固有の共同体を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記乳酸菌または前記硫酸塩還元菌が、純粋な細菌の集団を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
前記乳酸菌または前記硫酸塩還元菌が、混合された細菌の集団を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
前記第1のマトリックス、前記第2のマトリックス、または前記第1および第2のマトリックスの両方が、天然、合成、または半合成材料を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
前記第1のマトリックス、前記第2のマトリックス、または前記第1および第2のマトリックスの両方が、干し草、麦わら、外皮、おが屑、ふすま、米ぬか、豆かす、木屑、プラスチックシート、プラスチックO−リング、金属メッシュ、繊維メッシュ、アルギネートビーズ、または合成アスベストを含む、請求項1から13のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
前記第1のチャンバーおよび/または前記第2のチャンバーが円筒を含む、請求項1から14のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項16】
前記第1のチャンバーおよび/または前記第2のチャンバーが立方体を含む、請求項1から14のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項17】
前記第1のチャンバーおよび/または前記第2のチャンバーが波形シートを含む、請求項1から16のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項18】
環境廃液から硫酸塩を除去する方法であって、
a)第1の培養液を単独でまたは硫酸塩を含む環境廃液と組み合わせて、第1のマトリックスに固定された乳酸菌(LAB)の培地を含む第1のチャンバーに送り、前記乳酸菌は前記培養液および/または環境廃液の成分を代謝して乳酸を産生し、前記第1のチャンバーは前記乳酸を含む第1の排出廃液を放出すること、
b)前記第1のチャンバーからの前記乳酸を含む第1の排出廃液を単独でまたは環境廃液と組み合わせて、第2のマトリックスに固定された硫酸塩還元菌(SRB)の培地を含む第2のチャンバーに送り、前記硫酸塩還元菌は前記第1の排出廃液中に存在する前記乳酸を代謝し、前記第1の排出廃液および/または環境廃液中に存在する硫酸塩を還元して、第2の排出廃液を産生すること、および
c)前記第2の排出廃液を前記第2のチャンバーから放出し、前記第2の排出廃液の硫酸塩濃度は前記環境廃液に比べて低減されること
を含み、
前記第1のチャンバーは前記第2のチャンバーと流体連通している、
方法。
【請求項19】
前記第1の排出廃液が、前記第1のチャンバーの乳酸菌の上清である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第2のチャンバーが前記第1の排出廃液に加えて、前記硫酸塩還元菌の増殖、維持またはその両方に適したSRB培養液成分を含む、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
前記第2のチャンバー内で維持される条件下では前記乳酸菌が増殖できない、請求項18から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記乳酸菌および前記硫酸塩還元菌が、純粋な細菌の集団である、請求項18から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記乳酸菌および前記硫酸塩還元菌が、混合された細菌の集団である、請求項18から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
環境廃液中の硫酸塩のバイオレメディエーションのためのシステムであって、
a)第1のマトリックスに固定された乳酸菌(LAB)の培地を含む第1のチャンバーおよび
b)第2のマトリックスに固定された硫酸塩還元菌(SRB)の培地を含む第2のチャンバー
を含み、
前記第1のチャンバーは前記第2のチャンバーと流体連通しており、
前記第1のチャンバーは第1の培養液を単独でまたは硫酸塩を含む環境廃液と組み合わせて受け入れ、乳酸を含む第1の排出廃液を前記第2のチャンバーに送るように構成され、
前記第1のマトリックスに固定された乳酸菌は、前記第1の培養液および/または環境廃液の成分を代謝して前記乳酸を産生し、
前記第2のチャンバーは前記乳酸を含む第1の排出廃液を単独でまたは硫酸塩を含む環境廃液と組み合わせて受け入れ、第2の排出廃液を放出するように構成され、
前記硫酸塩還元菌は前記第1のマトリックスに固定された乳酸菌が産生した乳酸を前記硫酸塩の還元に用い、
前記第2の排出廃液の硫酸塩濃度は前記環境廃液に比べて低減されるシステム。
【請求項25】
前記第1の排出廃液が、前記第1のチャンバーの乳酸菌の上清である、請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
前記第1の培養液が前記乳酸菌の増殖、維持またはその両方に適した栄養素を含む、請求項24または25に記載のシステム。
【請求項27】
前記第1の排出廃液が前記第1の培養液または環境廃液よりも高い濃度の乳酸を含む、請求項24から26のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項28】
前記第2のチャンバーが前記硫酸塩還元菌の増殖、維持またはその両方に適したSRB培養液成分を含む、請求項24から27のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項29】
前記第2のチャンバー内で維持される条件下では前記乳酸菌が増殖できない、請求項24から28のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項30】
前記第2の排出廃液中の硫酸塩濃度が前記環境廃液の硫酸塩濃度の90%未満である、請求項24から29のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項31】
前記第2の排出廃液中の硫酸塩濃度が前記環境廃液の硫酸塩濃度の1%未満である、請求項24から30のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項32】
前記乳酸菌が種Gibelion catla、Nibea sp.、Labeo rohita、Raiamas bola、Puntius sp.、Oreochromis niloticus、Heteropneutes fossilis、Sus scrofa domesticus、Gallus domesticus、もしくはCapra aegagrus hircusの腸から、または発酵食品、乳製品、柑橘類および腐った果物、葉、もしくは長草から単離された細菌の固有株を含む、請求項24から31のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項33】
前記硫酸塩還元菌が属Archaeoglobus、Desulfoarculus、Desulfobacter、Desulfobacterales、Desulfobacterium、Desulfobotulus、Desulfobulbus、Desulfococcus、Desulfomicrobium、Desulfomonile、Desulfonema、Desulfosarcina、Desulfotomaculum、Desulfovibrio、Desulfovibrionales、Syntrophobacterales、Thermodesulfobacterium、Thermodesulfovibrioを含む固有の共同体を含む、請求項24から32のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項34】
前記乳酸菌または前記硫酸塩還元菌が、純粋な細菌の集団を含む、請求項24から33のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項35】
前記乳酸菌または前記硫酸塩還元菌が、混合された細菌の集団を含む、請求項24から33のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項36】
前記第1のマトリックス、前記第2のマトリックス、または前記第1および第2のマトリックスの両方が、天然、合成、または半合成材料を含む、請求項24から35のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項37】
前記第1のマトリックス、前記第2のマトリックス、または前記第1のマトリックスおよび前記第2のマトリックスの両方が、干し草、麦わら、外皮、おが屑、ふすま、米ぬか、豆かす、木屑、プラスチックシート、プラスチックOリング、金属メッシュ、繊維メッシュ、アルギネートビーズ、または合成アスベストを含む、請求項24から36に記載のシステム。
【請求項38】
前記第1のチャンバーおよび/または前記第2のチャンバーが円筒を含む、請求項24から37のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項39】
前記第1のチャンバーおよび/または前記第2のチャンバーが立方体を含む、請求項24から37のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項40】
前記第1のチャンバーおよび/または前記第2のチャンバーが波形シートを含む、請求項24から39のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、任意のかつ全ての目的のため、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2011年6月10日出願のインド特許出願第701/KOL/2011の利益を主張する。
【0002】
概して本技術は環境廃液のバイオレメディエーションのための方法およびシステムに関する。具体的には、本技術は廃液中に存在する可溶性硫酸塩の硫酸塩還元菌による還元に関する。
【背景技術】
【0003】
種々の人的活動により、地下水の硫酸塩汚染はここ数十年間で増大している。鉱山からの排出水は環境に大量の硫酸塩を放出し、そのため水を環境中に排出することまたはヒトに使用することが不適当になっている。また、農業利用による地下水面の低下によって無酸素層に酸素が浸透し、それにより硫化鉄がFe(III)水酸化物に酸化され、硫酸塩が生成する。硫酸塩は地下水に浸出し、硫酸塩濃度の増大をもたらす。硫酸塩はまた、腐敗する植物および動物等の源から、ならびに農業、繊維産業、および製造業において使用される化学物質から、給水中に浸出する。
【0004】
地下水の硫酸塩汚染はヒトに多くの健康被害をもたらす。硫酸塩が500mg/Lを超える水を摂取すると緩下剤効果が引き起こされ、腸の不快感、下痢、さらには脱水がもたらされる。また、250〜1000mg/Lの範囲の硫酸塩の存在は、水に不快な味を与える。硫酸塩汚染により表面水の富栄養化がもたらされ、水の腐食性を増大させることがあることも報告されている。
【0005】
硫酸塩汚染を低減させる方法としては、逆浸透による脱塩、蒸留、またはバリウム等の化学物質を用いる沈殿が挙げられる。しかし、脱塩は工業スケールで用いるには実施不可能なほどに高価である。また、塩化バリウムを用いる硫酸塩の化学的低減はかなりの量の重金属の低減をも保証する一方、硫酸塩を効果的に除去するために必要な塩化バリウムの量は極めて多いので、この方法を工業スケールで実施するのは困難である。
【0006】
バイオレメディエーションは地下水の硫酸塩濃度を低減させる代替処理の選択肢である。しかし、硫酸塩還元菌(SRB)の共同体を用いる廃水からの可溶性硫酸塩の処理には限界がある。たとえば、SRBの継続的な供給が維持されなければならず、また細菌は硫酸塩の還元を支持するために基質/電子供与体の継続的な供給を必要とする。乳酸はSRBの極めて効果的な基質であるが、市販の乳酸を用いてリアクターを運転するには大きなコストがかかる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本明細書において、硫酸塩の自己持続的バイオレメディエーションのための方法およびシステムが提供される。該システムには、SRBの単離培養による異化的硫酸塩還元のための基質/電子供与体として作用する乳酸を産生させるための乳酸菌(LAB)の固定培地が含まれる。SRB媒介硫酸塩還元を支持するために内部乳酸源を使用することにより、市販の乳酸菌の必要がなくなり、硫酸塩の大スケールのバイオレメディエーションのコストが大幅に低減される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1つの態様においては、水からの可溶性硫酸塩の除去のためのシステムが提供される。概して、該システムには第1のマトリックスに固定された乳酸菌(LAB)の培地を含む第1のチャンバーおよび第2のマトリックスに固定された硫酸塩還元菌(SRB)の培地を含む第2のチャンバーが含まれる。例示的な実施形態においては、第1のチャンバーは第2のチャンバーと流体連通している。いくつかの実施形態においては、第1のチャンバーは第1の培養液を単独でまたは環境廃液と組み合わせて受け入れ、第1の排出廃液を第2のチャンバーに放出するように構成されている。例示的な実施形態においては、第2のチャンバーは第1の排出廃液を単独でまたは環境廃液と組み合わせて受け入れ、第2の排出廃液を放出するように構成されている。例示的な実施形態においては、環境廃液には硫酸塩が含まれ、第2の排出廃液の硫酸塩濃度は環境廃液に比べて低減される。
【0009】
1つの態様においては、環境廃液から硫酸塩を除去する方法が提供される。例示的な実施形態においては、該方法には第1の培養液を単独でまたは硫酸塩を含む環境廃液と組み合わせて、第1のマトリックスに固定された乳酸菌(LAB)の培地を含む第1のチャンバーに送ることが含まれ、乳酸菌は培養液および/または環境廃液の成分を代謝して乳酸を産生し、第1のチャンバーは第1の排出廃液を放出する。例示的な実施形態においては、該方法には第1のチャンバーからの第1の排出廃液を単独でまたは環境廃液と組み合わせて、第2のマトリックスに固定された硫酸塩還元菌(SRB)の培地を含む第2のチャンバーに送ることも含まれ、硫酸塩還元菌は第1の排出廃液中に存在する乳酸を代謝し、第1の排出廃液または環境廃液中に存在する硫酸塩を還元して、第2の排出廃液を産生する。例示的な実施形態においては、該方法には第2の排出廃液を第2のチャンバーから放出することも含まれ、第2の排出廃液の硫酸塩濃度は環境廃液に比べて低減される。
【0010】
例示的な実施形態においては、第2のチャンバーには第1の排出廃液に加えて、硫酸塩還元菌の増殖、維持またはその両方に適したSRB培養液成分が含まれている。例示的な実施形態においては、第2のチャンバー内で維持される条件下では乳酸菌は増殖できない。例示的な実施形態においては、乳酸菌および硫酸塩還元菌は純粋な細菌の集団である。例示的な実施形態においては、乳酸菌および硫酸塩還元菌は混合された細菌の集団である。
【0011】
1つの態様においては、環境廃液中の硫酸塩のバイオレメディエーションのためのシステムが提供される。例示的な実施形態においては、該システムには第1のマトリックスに固定された乳酸菌(LAB)の培地を含む第1のチャンバーおよび第2のマトリックスに固定された硫酸塩還元菌(SRB)の培地を含む第2のチャンバーが含まれる。例示的な実施形態においては、第1のチャンバーは第2のチャンバーと流体連通している。例示的な実施形態においては、第1のチャンバーは第1の培養液を単独でまたは硫酸塩を含む環境廃液と組み合わせて受け入れ、第1の排出廃液を第2のチャンバーに送るように構成されている。例示的な実施形態においては、第2のチャンバーは第1の排出廃液を単独でまたは環境廃液と組み合わせて受け入れ、第2の排出廃液を放出するように構成されている。例示的な実施形態においては、第2の排出廃液の硫酸塩濃度は環境廃液に比べて低減される。
【0012】
例示的な実施形態においては、第1の培養液には乳酸菌の増殖、維持またはその両方に適した栄養素が含まれている。例示的な実施形態においては、第1の排出廃液には第1の培養液または環境廃液よりも高い濃度の乳酸が含まれている。
【0013】
例示的な実施形態においては、第2のチャンバーには硫酸塩還元菌の増殖、維持またはその両方に適したSRB培養液成分が含まれている。例示的な実施形態においては、第2のチャンバー内で維持される条件下では乳酸菌は増殖できない。
【0014】
例示的な実施形態においては、第2の排出廃液中の硫酸塩濃度は環境廃液の硫酸塩濃度の90%未満である。例示的な実施形態においては、第2の排出廃液中の硫酸塩濃度は環境廃液の硫酸塩濃度の1%未満である。1つの実施形態においては、第2の排出廃液中の硫酸塩濃度はほぼゼロである。
【0015】
例示的な実施形態においては、乳酸菌としてGibelion catla、Nibea sp.、Labeo rohita、Raiamas bola、Puntius sp.、Oreochromis niloticus、Heteropneutes fossilis、Sus scrofa domesticus、Gallus domesticus、もしくはCapra aegagrus hircus等の種の腸から、または発酵食品、乳製品、柑橘類および腐った果物、葉、長草、その他から単離された細菌の固有株が挙げられる。
【0016】
例示的な実施形態においては、硫酸塩還元菌としてArchaeoglobus、Desulfoarculus、Desulfobacter、Desulfobacterales、Desulfobacterium、Desulfobotulus、Desulfobulbus、Desulfococcus、Desulfomicrobium、Desulfomonile、Desulfonema、Desulfosarcina、Desulfotomaculum、Desulfovibrio、Desulfovibrionales、Syntrophobacterales、Thermodesulfobacterium、Thermodesulfovibrio、その他の属を含む固有の共同体が挙げられる。
【0017】
例示的な実施形態においては、乳酸菌または硫酸塩還元菌には純粋な細菌の集団が含まれる。例示的な実施形態においては、乳酸菌または硫酸塩還元菌には混合された細菌の集団が含まれる。
【0018】
例示的な実施形態においては、第1のマトリックス、第2のマトリックス、または第1のマトリックスおよび第2のマトリックスの両方には天然、合成、または半合成材料が含まれる。例示的な実施形態においては、第1のマトリックス、第2のマトリックス、または第1のマトリックスおよび第2のマトリックスの両方として干し草、麦わら、外皮、おが屑、ふすま、米ぬか、豆かす、木屑、プラスチックシート、プラスチックO−リング、金属メッシュ、繊維メッシュ、アルギネートビーズ、または合成アスベストが挙げられる。
【0019】
例示的な実施形態においては、第1のチャンバーおよび/または第2のチャンバーは円筒を含む。例示的な実施形態においては、第1のチャンバーおよび/または第2のチャンバーは波形シートを含む。例示的な実施形態においては、第1のチャンバーおよび/または第2のチャンバーは立方体を含む。
【0020】
上記の概要は一例にすぎず、多少なりとも限定することを意図していない。上述の例示的な態様、実施形態、および特徴に加えて、さらなる態様、実施形態、および特徴は以下の図面および詳細な説明を参照することによって明確になる。
【0021】
本開示の上記のおよびその他の特徴は、以下の説明および添付した特許請求の範囲を付随する図面と併せることによって、より完全に明確になる。これらの図面は本開示によるいくつかの実施形態を表現するのみであって、その範囲を限定すると考えるべきではないことが理解された上で、付随する図面を用いて、追加的な細目および詳細を含めて本開示を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1A】1つの実施形態による、波形シートバイオリアクターデザインに用いる波形シートの略図である。
【
図1B】1つの実施形態による、波形シートバイオリアクターデザインに用いる波形シート細菌増殖チャンバーの略図である。
【
図2】1つの実施形態による、ポンプを通じてチャンバー間に流体連通を有する第1および第2の反応チャンバーの相対位置を示す波形シートバイオリアクターの略図である。
【
図3】円筒形バイオリアクターデザインに用いる円筒形細菌増殖チャンバーの略図である。
【
図4】立方形バイオリアクターデザインに用いる立方形細菌増殖チャンバーの略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
詳細な説明および特許請求の範囲に記載した実施形態は例示的にすぎず、限定することを意図していない。本明細書に提示した主題の範囲から逸脱することなしに、他の実施形態を用いることもでき、変更することもできる。本明細書に一般的に記載した本開示の態様は様々な異なった構成に配置し、置き換え、組み合わせ、および設計することができ、これらの全てが明示的に意図され、本開示に組み込まれることは容易に理解される。
【0024】
本明細書において用いるいくつかの用語の定義を以下に規定する。他に定義しない限り、本明細書において用いる全ての技術用語および科学用語は本開示が関係する技術における当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。
【0025】
本明細書においては、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈から明白に他が指示されない限り複数の対象物を含む。たとえば、「a bacteria」または「the bacteria」への言及には、2つ以上の細菌の組み合わせ等が含まれる。
【0026】
本明細書においては、「約」は当業者によって理解され、これが用いられる文脈に応じてある程度変動する。当業者にとって明確でない用語の使用がある場合には、これが用いられる文脈に鑑みて、「約」は特定の用語のプラスまたはマイナス10%までを意味する。
【0027】
本明細書においては、「バイオレメディエーション」は、環境汚染物質を除去するための微生物の使用を意味する。バイオレメディエーション法はインサイチュで実施すること、即ち汚染された物質をその元の場所で処理すること、またはエクスサイチュで実施すること、即ち汚染された物質をその元の場所から移動して他の場所で処理することができる。
【0028】
本明細書においては、「異化的還元」は電子伝達系における最終的電子受容体としての物質の還元を意味する。異化的還元は、栄養摂取の過程における物質の還元に関連する同化的還元とは区別される。
【0029】
本明細書においては、「乳酸菌」および「LAB」は、炭水化物の発酵の代謝最終産物として乳酸を産生するグラム陽性、酸耐性、一般に非胞子形成性、非呼吸性細菌の群を意味する。該細菌は分解する植物および乳製品中に見られる。例示的な細菌の属としては、これだけに限らないが、Lactobacillus、Leuconostoc、Pediococcus、Lactococcus、Streptococcus、Aerococcus、Carnobacterium、Enterococcus、Oenococcus、Sporolactobacillus、Tetragenococcus、Vagococcus、Atopobium、およびWeisellaが挙げられる。乳酸菌単離株の例示的な源としては、これだけに限らないが、Gibelion catla、Nibea sp.、Labeo rohita、Raiamas bola、Puntius sp.、Oreochromis niloticus、Heteropneutes fossilis、Sus scrofa domesticus、Gallus domesticus、もしくはCapra aegagrus hircus等の種の腸、または発酵食品、乳製品、柑橘類および腐った果物、葉、長草、その他が挙げられる。
【0030】
本明細書においては、「硫酸塩還元菌」および「SRB」は、硫酸塩を硫化物に、特に硫化水素に還元しながら有機化合物または分子状水素の酸化からエネルギーを得る細菌および古細菌を意味する。硫酸塩還元菌を含む細菌属としては、これだけに限らないが、Archaeoglobus、Desulfoarculus、Desulfobacter、Desulfobacterales、Desulfobacterium、Desulfobotulus、Desulfobulbus、Desulfococcus、Desulfomicrobium、Desulfomonile、Desulfonema、Desulfosarcina、Desulfotomaculum、Desulfovibrio、Desulfovibrionales、Syntrophobacterales、Thermodesulfobacterium、Thermodesulfovibrio、その他が挙げられる。
【0031】
本明細書においては、「固有の共同体」(単数または複数)は、本明細書に記載した方法またはシステムが実施される地理的領域を原産とする細菌の集団を意味する。固有の共同体は植物または動物の源から単離することができ、純粋な細菌の集団または混合された細菌の集団を含み得る。
【0032】
本明細書においては、「SRB培養液」は、硫酸塩還元菌の増殖、維持、またはその両方に適した培養液を意味する。SRB培養液の例としては、これだけに限らないが、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(German Collection of Microorganism and Cell Cultures)によって推奨されるDSMZ Medium 641が挙げられる。例示的なSRB培養液は1リットルあたりNH
4Cl 1.0g、Na
2SO
4 2.0g、チオ硫酸Na・5H
2O 1.0g、MgSO
4・7H
2O 1.0g、CaCl
2・2H
2O 0.1g、KH
2PO
4 0.5g、微量元素溶液SL−10(下記)1.0ml、ビタミン溶液(下記)10.0ml、酵母抽出物 1.0g、NaHCO
3 2.0g、ピルビン酸Na 1.0g、リンゴ酸Na 1.0g、Resazurin 0.5mg、Na
2S・9H
2O 75.0mgを含む。成分は(微量元素、ビタミン、重炭酸塩、ピルビン酸塩、リンゴ酸塩および硫化ナトリウムを除いて)水に溶解し、1分間煮沸し、室温に冷却し、血清ボトルに分注する。オートクレーブ処理後、培養液は残りの成分を加えることによって完成する。培養液のpHは7.0〜7.2に調整する。微量元素溶液SL−10は1リットルあたりHCl(25%、7.7M)10.00ml、FeCl
2・4H
2O 1.50g、ZnCl
2 70.00mg、MnCl
2・4H
2O 100.00mg、H
3BO
3 6.00mg、CoCl
2・6H
2O 190.00mg、CuCl
2・2H
2O 2.00mg、NiCl
2・6H
2O 24.00mg、Na
2MoO
4・2H
2O 36.00mgを含む。最初にFeCl
2をHClに溶解し、次いで水で希釈した後に他の塩を加える。ビタミン溶液は1リットルあたりビオチン2.00mg、葉酸2.00mg、ピリドキシン−HCl 10.00mg、チアミン−HCl・2H
2O 5.00mg、リボフラビン5.00mg、ニコチン酸5.00mg、d−ca−パントテン酸5.00mg、ビタミンB
12 0.10mg、p−アミノ安息香酸5.00mg、リポ酸5.00mgを含む。
【0033】
本明細書においては、「環境廃液」は、環境中に排出される、環境に有害な物質を含む廃水を意味する。環境廃液の例としては、これだけに限らないが、汚染された地下水、鉱山の操業からの廃水、処理場からの廃液排出、下水道、または工業用パイプ、その他が挙げられる。本明細書においては、この用語は処理済みおよび未処理の水の両方を包含する。
【0034】
本明細書においては、「排出廃液」は、本明細書に記載した細菌培地の上清を意味する。用語「第1の排出廃液」は、第1のチャンバーの乳酸菌の上清を意味する。第1の排出廃液は第1のチャンバーの乳酸菌によって産生された乳酸を含み、第2のチャンバーに送られる。用語「第2の排出廃液」は、第2のチャンバーの硫酸塩還元菌の上清を意味する。第2の排出廃液中の硫酸塩濃度は第1の排出廃液および環境廃液の硫酸塩濃度に比べて低い。
【0035】
本明細書においては、「硫酸塩」は、実験式SO
42−を有する多原子アニオンを含む硫酸の可溶性塩を意味する。本明細書に記載した方法およびシステムに適した硫酸塩としては、全ての水溶性硫酸塩が挙げられる。
【0036】
本明細書において、「マトリックス」は、本明細書に記載した細菌が付着でき、本明細書に記載した培養条件に適合した任意の天然、合成、または半合成材料を意味する。例示的な実施形態においては、マトリックス材料としては天然、合成、または半合成材料が挙げられる。例示的な天然のマトリックス材料としては、これだけに限らないが、干し草、麦わら、外皮、おが屑、ふすま、米ぬか、豆かす、木屑、天然アスベスト、およびアルギネートビーズが挙げられる。例示的な合成のマトリックス材料としては、これだけに限らないが、合成アスベスト、合成ゴム、ベークライト(ポリオキシベンジルメチレングリコール無水物)、ネオプレン、ナイロン、PVC、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、PVB、およびシリコーンが挙げられる。例示的な半合成のマトリックス材料としては、これだけに限らないが、加硫ゴム、火薬綿、およびセルロースジアセテートが挙げられる。マトリックス材料はシート、O−リング、メッシュ、またはビーズ等、用いられる特定の培養条件に適合した任意の形態を取り得る。
【0037】
本明細書に記載した技術を実施する際には、化学、生化学、および微生物学の多くの従来手技が用いられる。これらの手技は当技術においてよく知られており、The Prokaryotes:Symbiotic Associations、Biotechnology、Applied Microbiology、Martin編、Springer(2006);Bioremediation Protocols、2巻、Sheehan編、Humana Press(1997);Methods in Microbiology、19巻、Bergan編、Elsevier Science(1984);NorrisおよびRibbons、Methods in Microbiology、Academic Press(1971)等の入手可能な出版物のいずれにも提供されている。
【0038】
環境廃液中の硫酸塩の除去またはバイオレメディエーションのための方法およびシステムが提供される。概して、本明細書に記載する方法およびシステムには、マトリックスに固定された乳酸菌(LAB)の培地およびマトリックスに固定されたSRBの共同体が含まれ、固定されたLABおよびSRBは個別のバイオリアクターに維持されており、バイオリアクターは流体連通している。概して、該方法には乳酸の産生に適した培養液をLABの培地に供給すること、およびさらにその乳酸をSRB共同体に送って環境廃液中の可溶性硫酸塩の異化的還元における基質/電子供与体として用いることが含まれる。
【0039】
例示的な実施形態においては、本明細書に記載したシステムには、第1のマトリックスに固定されたLABの培地を含む第1のチャンバーおよび第2のマトリックスに固定されたSRBの培地を含む第2のチャンバーが含まれる。例示的な実施形態においては、第1のチャンバーは第2のチャンバーと流体連通している。第1のチャンバーは第1の培養液を単独でまたは硫酸塩を含む環境廃液と組み合わせて受け入れ、第1の排出廃液を放出するように構成されている。第1のチャンバーにはさらに、LABの増殖および/または維持に適した第1の培養液が含まれている。第2のチャンバーは第1の排出廃液を単独でまたは硫酸塩を含む環境廃液と組み合わせて受け入れ、第2の排出廃液を放出するように構成されている。第2のチャンバーにはさらに、SRBの増殖および/または維持に適した第2の培養液が含まれている。例示的な実施形態においては、SRB培養液は乳酸を含まない。
【0040】
例示的な実施形態においては、第1のチャンバーのLABは第1の培養液中に存在する炭水化物を代謝して乳酸を産生し、それにより第1の排出廃液の乳酸濃度は第1の培養液または環境廃液よりも高い。第1の排出廃液は第2のチャンバーに送られる。第2のチャンバーのSRBは第1の排出廃液の乳酸を環境廃液中に存在する硫酸塩の異化的還元のための基質/電子供与体として用い、それにより第2の排出廃液中の硫酸塩濃度は第1の排出廃液および環境廃液に比べて低減される。
【0041】
第2の排出廃液の硫酸塩濃度は当技術で既知の方法によってモニターされる。硫酸塩低減を測定するための例示的な方法を実施例1に示す。例示的な実施形態においては、第2の排出廃液中の硫酸塩濃度は環境廃液中の硫酸塩濃度の90%未満である。種々の実施形態においては、第2の排出廃液中の硫酸塩濃度は環境廃液中の硫酸塩濃度の50%、25%、10%、または5%未満である。代替の実施形態においては、第2の排出廃液中の硫酸塩濃度は環境廃液中の硫酸塩濃度の1%未満である。理想的な実施形態においては、第2の排出廃液中の硫酸塩濃度はほぼゼロである。
【0042】
可溶性硫酸塩を含む任意の廃液が上述のシステムおよび方法の対象となり得る。大量の可溶性硫酸塩を産生する既知の例示的な業務としては、これだけに限らないが、鉱山の操業、硫酸アンモニウム肥料の使用、硫酸アルミニウムを用いる水処理、繊維の染色における硫酸銅の使用、皮革のなめし、化石燃料の燃焼、および金属の溶錬等の工業活動が挙げられる。本方法は環境廃液の産生の現場で実施する(インサイチュ)ことができ、または廃液を移動させて別の場所で処理する(エクスサイチュ)ことができる。
【0043】
本方法およびシステムは、環境廃液からの硫酸塩の除去またはバイオレメディエーションにおいて、運転コストおよび効率の点で有利である。マトリックス材料に細菌培地を固定することにより、開始培地の連続的産生に伴うコストが低減される。LABの場合には、固定培地を使用することにより、長期的な乳酸産生の一貫性が改善される。また、システム内で乳酸が産生されるので、市販の乳酸の必要がなくなり、SRB培養液のコストが大幅に低減される。これらの特徴により、特に本明細書に記載した方法およびシステムは大スケールの操業のために実現可能で、しかも費用効果性が高い。
【0044】
乳酸菌(LAB)
本明細書に記載した方法およびシステムには、硫酸塩の異化的還元においてSRBの基質/電子供与体として作用する乳酸の産生のためのLABが含まれる。LABは炭水化物発酵の代謝最終産生物として乳酸を産生する。LABを含む例示的な属としては、これだけに限らないが、Atopobium、Bacillus、Streptococcus、Lactobacillus、Leuconostoc、Pediococcus、Lactococcus、Streptococcus、Aerococcus、Carnobacterium、Enterococcus、Oenococcus、Sporolactobacillus、Tetragenococcus、Vagococcus、およびWeisellaが挙げられる。
【0045】
LABは炭水化物発酵に用いる代謝経路によって分類される。典型的には、LABは2つの経路の1つを用いる。過剰のグルコースおよび制限された酸素の条件下では、ホモ乳酸性LABはEmbden−Meyerhof−Parnas(EMP)経路において1モルのグルコースを異化して2モルのピルビン酸塩を産生する。ピルビン酸塩の乳酸への還元に伴い、NADHの酸化によって細胞内酸化還元バランスが維持される。典型的には、ホモ発酵の最終産生物には85%を超える乳酸が含まれる。
【0046】
ヘテロ発酵性LABはペントースリン酸経路(別名ペントースホスホケトラーゼ経路)を用いる。ここでは1モルのグルコース−6−リン酸が脱水素されて6−ホスホグルコン酸になり、脱カルボキシル化されて1モルのCO
2を産生する。生成するペントース−5−リン酸は次に開裂して1モルのグリセルアルデヒドリン酸(GAP)および1モルのアセチルリン酸を生じる。GAPはさらに代謝されて乳酸塩になり、アセチルリン酸は還元されてエタノールになる。典型的には、ヘテロ発酵性最終産生物には乳酸50%およびかなりの量のエタノールおよびCO
2が含まれる。
【0047】
代表的なホモ乳酸性LAB属としては、Lactococcus、Enterococcus、Streptococcus、Pediococcus、ならびにL.acidophilus、L.delbrueckii、L.helveticus、およびL.salivarius等のI群乳酸菌が挙げられる。必須のヘテロ発酵性LABとしては、Leuconostoc、Oenococcus、Weissella、ならびにL.brevis、L.buchneri、L.fermentum、およびL.reuteri等のIII群乳酸菌が挙げられる。条件的ホモ発酵性細菌としては、L.casei、L.curvatus、L plantarum、およびL.sakei等のII群乳酸菌が挙げられる。LABの両群は本方法に適合している。
【0048】
本明細書に記載した方法およびシステムは任意に、LABの純粋な集団または混合された集団を含み得る。本方法は任意に、確立された源から取得された既知の同一性を有するLABまたは固有のもしくはその他の源から新たに単離されたLABを含み得る。LABの株は当技術で既知の方法を用いて単離し、特性解析することができる。乳酸菌単離株の例示的な源としては、これだけに限らないが、Gibelion catla、Nibea sp.、Labeo rohita、Raiamas bola、Puntius sp.、Oreochromis niloticus、Heteropneutes fossilis、Sus scrofa domesticus、Gallus domesticus、およびCapra aegagrus hircus等の種の腸が挙げられる。LABは発酵食品、乳製品、柑橘類および腐った果物、葉、長草、その他から単離することもできる。LABの単離および特性解析の例示的な方法を実施例1に示す。
【0049】
本方法およびシステムにおける使用のためのLAB株(単数または複数)の選択はいくつかの要素によって決まる。LABは第2のチャンバーの固定化SRBを持続させるために充分なレベルで乳酸を産生する必要がある。LABは好ましくは産生される全ての滴定可能な酸の少なくとも4.0%から少なくとも30%の範囲のレベルで乳酸を産生する。LABの乳酸レベルを試験する方法は当技術で既知である。細菌による乳酸産生を測定するための例示的な方法を実施例1に示す。
【0050】
さらに、LABはSRBによる硫酸塩の異化的還元を支持する能力に基づいて選択される。常にではないがしばしば、異化的硫酸塩還元を支持する能力は高い乳酸産生レベルと相関することになる。したがって、LABはその乳酸産生レベルに加えて、かつそれとは関係なしに、この点に関して特性解析する必要がある。LABの異化的硫酸塩還元を支持する能力を測定する方法は当技術で既知である。例示的方法を実施例1に示す。
【0051】
さらに、本方法およびシステムのためのLABは、固定化されたSRB培地およびSRB培養液を含む第2のチャンバーの中で維持された培養条件がLABの増殖に最適でないように選択され得る。この特徴により、第1の排出廃液中に意図せずに含まれる自由浮遊LABによる第2のチャンバーの相互汚染が制限されることになる。LABはさらに、その株に対する周囲の増殖条件が、用いるSRB株の増殖条件と同様になるように選択され得る。
【0052】
本明細書に記載した方法およびシステムのためのLABの培養条件は、用いる正確な株(単数または複数)によって決まる。しかし、条件には一般にグルコース、ラクトース、または乳酸に変換され得る等価物を含む培養液が含まれる。例示的な実施形態においては、LABは1%デキストロース含有Luria Bertani(LB)培養液中で増殖する。細菌は温度15℃〜55℃で、酸性から弱アルカリ性のpHで増殖できる。用いるLABの株によって、条件は好気的、微好気的、または嫌気的であり得る。LABを培養するための一般的な方法は当技術で既知である。例示的なLABの培養条件を実施例1および実施例2に示す。
【0053】
第1のチャンバーにおけるLABによる乳酸の産生は、当技術で既知の方法を用いて定期的にモニターされ得る。乳酸産生のレベルおよび効率はLAB培養の健常性および培地の増強または置換の必要性を示すものと解釈される。細菌培養上清中の乳酸を測定するための例示的な方法を実施例1に示す。
【0054】
硫酸塩還元菌(SRB)
本方法およびシステムには、環境廃液からの硫酸塩の異化的還元のためのSRBが含まれる。SRBは終末電子受容体として硫酸塩を利用する厳密なまたは条件的な嫌気性菌である。SRBによる硫酸塩の還元により、硫化物、特に硫化水素ガスが産生される。SRBを包含する細菌属としては、これだけに限らないが、Archaeoglobus、Desulfoarculus、Desulfobacter、Desulfobacterales、Desulfobacterium、Desulfobotulus、Desulfobulbus、Desulfococcus、Desulfomicrobium、Desulfomonile、Desulfonema、Desulfosarcina、Desulfotomaculum、Desulfovibrio、Desulfovibrionales、Syntrophobacterales、Thermodesulfobacterium、Thermodesulfovibrio、その他が挙げられる。
【0055】
本方法およびシステムは任意に、SRBの純粋な集団または混合された集団を含み得る。本方法は任意に、確立された源から取得された既知の同一性を有するSRBまたは固有のもしくはその他の源から新たに単離されたSRBを含み得る。SRBの株は当技術で既知の方法を用いて単離し、特性解析することができる。SRB単離株の例示的な源としては、これだけに限らないが、廃水養魚池、湿地、温泉、皮革なめし廃水、およびごみ投棄場が挙げられる。例示的な実施形態においては、SRBはインド、カルカッタのEast Calcutta Wetlandから単離された。
【0056】
本明細書に記載した方法のためのSRBの培養条件は、用いる正確な株(単数または複数)によって決まる。全てのSRBについて、条件は厳密に嫌気的でなければならず、SRB培養液は窒素で脱ガスしなければならない。本方法においては、SRB培養液は乳酸を含まないように調製される。例示的な実施形態においては、SRB培養液はDeutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH (German Collection of Microorganisms and Cell Cultures)によって推奨され、乳酸を含まないように改変されたDSMZ Medium 641である。SRB株は、環境の増殖条件が用いるLAB株の増殖条件と同様になるように選択され得る。
【0057】
第2のチャンバーにおけるSRBによる硫酸塩の還元は、当技術で既知の方法を用いて定期的にモニターされ得る。硫酸塩還元のレベルおよび効率はSRB培養の健常性および培地の増強または置換の必要性を示すものと解釈される。硫酸塩還元を測定するための例示的な方法を実施例1に示す。
【0058】
システムおよびバイオリアクターの設計
本システムには第1のチャンバーおよび第2のチャンバーが含まれ、第1のチャンバーは第2のチャンバーと流体連通している。概して、第1のチャンバーは第1の培養液を単独でまたは硫酸塩を含む環境廃液と組み合わせて受け入れ、第1の排出廃液を放出するように構成されている。第2のチャンバーは第1の排出廃液を単独でまたは硫酸塩を含む環境廃液と組み合わせて受け入れ、第2の排出廃液を放出するように構成されている。概して、システムは第1のチャンバーから第2のチャンバーへの流体の一方向流れが存在するように設計されている。
【0059】
本明細書に記載したチャンバーは任意にアクリル、ガラス、または乳酸によって腐食されない他の材料から構成され得る。
【0060】
第1および第2のチャンバーは、細菌の増殖および維持の助けとなり、その中で廃液の流れを効率的に制御するのに適した形状であり得る。したがって、1つの実施形態においては、第1および/または第2のチャンバーは円筒形である。他の実施形態においては、第1および/または第2のチャンバーは立方形である。代替の実施形態においては、第1および/または第2のチャンバーはパイプの長さだけ離された波形シートである。リアクターの波形シート部分10を
図1Aに示す。一般的に上述したように、波形シート部分10はパイピングまたはダボ30によって離されたシート20を含む。パイピングまたはダボ30は、シートが互いにつぶれて、それによってリアクター中でシートが流体と効率良く接触することを妨げないように、シート20を単離する。
図1Bはリアクター本体40の中に配置された波形シート部分10の図である。リアクター本体40はバルブ50、51、52、および53のうち2つ以上も含む。バルブは入口バルブまたは出口バルブであり得る。いくつかの実施形態においては、リアクターを通る廃液の流れは底部から上部に向かう。そのような実施形態においては、バルブ50は入口バルブであり、バルブ51は出口バルブであり得る。他の実施形態においては、廃液の流れは底部から上部に向かい、したがってバルブ51は入口バルブであり、バルブ51、52、および53のうち1つまたは複数が出口バルブであり得る。さらに他の実施形態においては、リアクターを通る廃液の流れは、バルブ51を入口バルブ、バルブ53を出口バルブとする交叉型様式であり得る。正確な流れの設計は、種々のリアクターシステムおよび実施に適合するように改変し得る。
【0061】
図2はLABリアクター140およびSRBリアクター240を有するリアクターシステム100の図である。リアクター140、240のそれぞれの構造は
図1に記載したモデルリアクターと同様である。
図2において、リアクターシステム100は、廃液流をリアクターの底部から上部へと送るように図示されている。廃液は入口バルブ150に入り、固定化LAB細菌を支持する波形シートシステム110を通って上向きに流れる。次いで廃液は出口バルブ151から流出し、ポンプ160によってSRBリアクター240に送られる。廃液は入口バルブ250を通ってSRBリアクター240に入り、波形シートシステム210を通って上向きに流れ、出口バルブ251から出る。ポンプは当技術で既知の任意のものでよい。たとえば、ポンプは蠕動ポンプであってよい。
【0062】
他のリアクターデザインを
図3および
図4に示す。
図3には円筒形リアクター300を示す。リアクター300にはリアクター中の細菌を支持するマトリックス材料310が充填されている。マトリックス材料はまた孔線320を有しており、そのため流体の移動およびマトリックス材料310との全体にわたる接触が可能である。バルブ350、351はリアクター300を通して廃液流を送る。
図4には立方形リアクター400を示す。リアクター400にはリアクター中の細菌を支持するマトリックス材料410が充填されている。マトリックス材料はまた孔420または孔線を有しており、そのため流体の移動およびマトリックス材料410との全体にわたる接触が可能である。バルブ450、451はリアクター400を通して廃液流を送る。
【0063】
上述のように、細菌は波形システムのシート等のマトリックス材料に固定され得る。マトリックスを使用することによって、細菌の増殖に利用可能なチャンバー内の表面積を増大させることと、細菌を固定してチャンバーを出て行く排出廃液中に細菌が含まれないようにすることの二重の目的が果たされる。開示した方法に適合する任意のマトリックス材料を用いることができ、第1および第2のマトリックスは、第1および第2のチャンバー中に維持される条件に基づいて独立に選択され得る。例示的な実施形態においては、マトリックス材料としては天然、合成、または半合成材料が挙げられる。例示的な天然のマトリックス材料としては、これだけに限らないが、干し草、麦わら、外皮、おが屑、ふすま、米ぬか、豆かす、木屑、天然アスベスト、およびアルギネートビーズが挙げられる。例示的な合成のマトリックス材料としては、これだけに限らないが、合成アスベスト、合成ゴム、ベークライト(ポリオキシベンジルメチレングリコール無水物)、ネオプレン、ナイロン、PVC、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、PVB、およびシリコーンが挙げられる。例示的な半合成のマトリックス材料としては、これだけに限らないが、加硫ゴム、火薬綿、およびセルロースジアセテートが挙げられる。
【0064】
マトリックス材料は、これだけに限らないが、シート、O−リング、メッシュ、またはビーズ等、用いられる特定の培養条件に適合した任意の三次元形態を取り得る。例示的な実施形態においては、マトリックス材料が最初にチャンバーに加えられ、続いて細菌培地が加えられる。代替の実施形態においては、マトリックス材料が細菌と組み合わされ、次いでチャンバーに加えられる。
【0065】
特定のマトリックス材料の選択は、用いる細菌の特徴および操作者の好みによって決まる。たとえば、マトリックス材料は、それに付着する特定の細菌の容量に基づいて、または用いる培養条件下において予期される寿命に基づいて選択される。
【実施例】
【0066】
本明細書に開示した方法およびシステムを、以下の実施例によってさらに説明するが、これらの実施例は決して限定的なものと解釈すべきではない。
【実施例1】
【0067】
LAB株の単離および特性解析
要旨:45種類の動物、植物、および食物源についてLABの存在を試験した。それぞれの源の水性試料を、炭酸カルシウムを添加したLuria Bertani(LB)プレート上で培養した。LAB16株を単離し、BarkerおよびSummerson、138 J.Biol.Chem.535(1941)の改変法によって乳酸の産生について分析した。LAB単離株16株中、3株(表1)の、インド、カルカッタのEast Calcutta Wetlandから得られたSRBによる可溶性硫酸塩還元を支持する能力についてさらにスクリーニングした(表2)。SRB活性を支持する能力が最も大きいLAB株を、標準の微生物学的、生化学的、および分子生物学的方法を用いて詳しく特性解析した。株のプロファイルは、以前に報告された株のいずれのプロファイルとも一致しない(表3)。
【0068】
A.LAB株の単離および乳酸の測定
以下の45種の源をLAB株の存在について試験した。ミルク、チーズ、果実ジュース、サンバー、チャツネ、甘味ヨーグルト、酸味ヨーグルト、地酒、イドリ生地、Labeo rohita(腸)、Raiamas bola(腸)、 Gibelion catla(腸)、Penaeus indicus(肉)、 プロバイオティック(プロウェル)、プロバイオティック(Laviest)、プロバイオティック(Binifit)、パケットミルク(低温殺菌)、ペストリー、バターミルク、マンゴーピックル、チリピックル、ピックルフィラー、Solanum tuberosum、Solanum lycopersicum、Malus domestica(ジュース)、Musa acuminata(腐ったもの)、ブドウ(腐ったもの)、Mangifera indica(腐ったもの)、Solanum melongena(腐ったもの)、Allium cepa、Oreochromis niloticus niloticus(腸)、Heteropneutes fossilis(腸)、Sus scrofa domesticus(肉)、Sus scrofa domesticus(腸)、 Charapona(腸)、Puntius sp.(腸)、Gallus domesticus(肉)、Gallus domesticus(腸)、Capra hircus(肉)、Capra hircus(腸)、長草、草(芽)、ニガウリ草、カリー葉、およびトマト葉。少量の各試料を滅菌したリン酸塩緩衝液(PBS)と混合した。葉の試料は最大周波数で14分間、超音波処理した。試料を1:1×10
−8まで段階希釈し、各50μlを0.4%CaCO
3含有LB寒天プレート(1%トリプトン、0.5%酵母抽出物、0.5%NaCl、1%寒天)上に広げた。プレートを逆転して一夜37℃で培養した。乳酸菌は、コロニーを取り巻くゾーンにおける培地の透明化によって同定した。LAB16株を単離し、BarkerおよびSummerson(1941)から改変した以下のプロトコルを用いて、乳酸の産生について分析した。
【0069】
試薬:細菌培養上清中の乳酸を測定するため、以下の試薬を用いた。CuSO
4・5H
2Oの20%溶液、CuSO
4・5H
2Oの4%溶液、粉末化した固体状水酸化カルシウム、濃硫酸(比重1.84)、0.5%NaOH中p−ヒドロキシジフェニルの1.5%溶液。
【0070】
銅およびカルシウムによる処理:0.4%CaCO
3を添加した液体LB培養液中で、LAB単離株を一夜培養した。細胞を含まない濾液5.0mlを20%の硫酸銅溶液1.0mlに加え、さらに水4.0mlを加えて溶液を希釈した。粉末化した水酸化カルシウム約1.0gを加え、混合物を直ちに激しく振盪した。混合物を時々振盪しながら室温に0.5時間放置し、次いで9000rpmで10分間遠心した。上清を以下に記載するように最終的な発色に用いた。分析のために分割量を取り出す際には、表面フィルムに存在する固体物質がいくらかでも混入するのを避けるように注意した。分割量は表面フィルムの下側から取り出し、ピペットの外側を拭ってきれいにした。
【0071】
発色:銅−カルシウム処理後の上清液体1.0mlを太い試験管に移し、4%硫酸銅溶液50μlを加えた。次いで濃硫酸6.0mlを、酸を加える間、試験管の内容物を混合しながら加えた。酸を添加した後、試験管を立てて沸騰水浴中に5分間置いた。次いで試験管を取り出し、冷水中に置いて20℃未満まで冷却した。試験管の内容物が充分に冷却された後、p−ヒドロキシジフェニルのアルカリ溶液100μlを加えた。沈殿した試薬を溶液全体にわたってできるだけ速やかにかつ均一に分散させ、試験管を時々振盪しながら30℃で30分間水浴中に置いた。次いで試験管を90秒間沸騰水浴中に置き、取り出して室温になるまで冷水中で放冷した。沸騰水中で90秒間加熱することによって過剰の試薬が溶解し、透明な溶液が残る。590nmの光学密度(OD)を測定し、市販の乳酸および乳酸リチウムを用いて別々に調製した曲線によって濃度を決定した。
【0072】
結果:LAB16株による乳酸の産生を表1に示す。産生は滴定可能な全ての酸のうち4.51%〜29.84%の範囲であった。株10が最大百分率の乳酸を産生し、株2および株12がこれに次いだ。それらの株の高い乳酸産生レベルに基づき、株2、株10、および株12についてSRB共同体による可溶性硫酸塩還元を支持する能力を試験した(下記パートB)。
【0073】
【表1】
【0074】
B.SRBによる可溶性硫酸塩還元を支持するLAB単離株の能力
LAB単離株2、10、および12について、インド、カルカッタのEast Calcutta Wetlandから得られたSRB共同体による可溶性硫酸塩還元を支持する能力を試験した。共同体は可溶性硫酸塩の異化的還元における電子供与体としてD−L乳酸ナトリウムを利用し、Nasipuriら、6 Am.J.Environ.Sci.152(2010)において以前報告された25の細菌株からなっている。該株の部分的16SリボソーマルRNA配列はGenBank Accession Nos.GQ503854−GQ503878に報告されている。
【0075】
図2に示すデザインにより、波形シートバイオリアクター中でLABおよびSRBの培養を行なった。培地は煮沸した干し草を固定マトリックスとして、周囲条件下(温度、pH、嫌気性を調節しない)で維持した。LABは1%デキストロース含有LB培養液で増殖させた。SRBはDSMZ培養液641中で増殖させた。LABまたはSRBの1%接種材料をそれぞれの培養液に添加し、バイオリアクター中の固定マトリックスを12時間浸漬した。次いで培地から水を抜き、マトリックスを6時間風乾して、細菌がマトリックスに付着するようにした。新鮮な培養液をバイオリアクターに添加し、乳酸の産生または硫酸塩の還元を24時間で測定した(表2)。可溶性硫酸塩の源として硫酸ナトリウム(2.0g/L)および硫酸マグネシウム(1.0g/L)をSRB培地に添加した。以前発表された濁度測定(Icgenら、157(8) Res.Microbiol.784−91(2006))に僅かな改変を加えて硫酸塩を測定した。硫酸塩は塩酸媒体中で塩化バリウムによって沈殿して不溶性の硫酸バリウム結晶を形成した。改変した状態調節試薬は1リットルあたりグリセロール(104.16mL)、濃塩酸(60.25mL)、および95%イソプロピルアルコール(208.33mL)を含んでいた。それぞれの反応について、250mL三角フラスコ中で、細胞を含まない上清2.0mLを超純水で50倍に希釈し、状態調節試薬5.0mLを添加した。懸濁液を撹拌してよく混合した。塩化バリウム結晶約1gを添加し、1.0分、撹拌を継続した。混合物を2.0分、放置して沈殿させた後に、420nmで分光学的に濁度を測定した。0〜40ppmの範囲のNa
2SO
4標準を用いて調製した標準曲線から、硫酸塩濃度を決定した。
【0076】
結果:LAB株によって得られる濃度の2倍の最終濃度で市販の乳酸基質を添加したにも関わらず、LAB株10および株12は市販の乳酸対照と同程度のレベルで可溶性硫酸塩還元を支持した(表2)。LAB株2は、株10および株12と同程度の乳酸レベルが得られたにも拘わらず、硫酸塩還元を全く支持しなかった(表2)。
【0077】
【表2】
【0078】
これらの結果に基づいて、標準的な微生物学的、生化学的、および分子生物学的方法を用いる詳細な特性解析のために株12を選択した。株12を選択したのは、これがSRB培養液中では増殖できず、したがってLABバイオリアクターから意図せずに放出される自由浮遊細胞からのSRBバイオリアクターの相互汚染が起こらないことを保証できるからでもある。
【0079】
C.LAB株12(SRCkk.01)の特性解析
標準的な微生物学的、生化学的、および分子生物学的方法を用いてLAB株12の特性解析を行なった(表3)。株のプロファイルは、以前に報告された株のいずれのプロファイルとも一致しない。
【0080】
【表3】
【実施例2】
【0081】
3種の異なったバイオリアクターデザインにおけるLABによる乳酸産生の比較
要旨:LAB株12(上述)を用いる乳酸産生について3種のバイオリアクターデザインを比較した。
【0082】
A.バイオリアクターデザイン
LABによる乳酸産生の効率について、3種のバイオリアクターデザインを比較した。バイオリアクターは表4に示す仕様に従ってアクリルから構成した。
【0083】
【表4】
【0084】
B.乳酸産生
3種のバイオリアクターデザインのそれぞれにおいてLAB株12を増殖させた。円筒形および立方形デザインについては、マトリックス材料として干し草を用いた(表5)。それぞれのバイオリアクターについて1%のLAB接種材料を用いた。細菌は1%デキストロース含有LB培養液中で増殖させた。接種の24、36、48、および60時間後に、BarkerおよびSummerson(1941)の改変法(上述)を用いて乳酸を測定した。
【0085】
結果:立方形バイオリアクターデザインは、円筒形および波形シートデザインに比べて全ての時点で大幅に高いレベルの乳酸デザインを示した(表5)。
【0086】
【表5】
【0087】
等価物
いくつかの実施形態を説明し記述したが、以下の特許請求の範囲に定義されるより広い態様における技術から逸脱することなく、当技術における通常の技能に従い、その中において変更および改変することが可能であることを理解されたい。
【0088】
本明細書において例示的に記載した実施形態は、本明細書に具体的に開示されていないいかなる要素(単数または複数)、限定(単数または複数)なしに適切に実施することができる。したがって、たとえば用語「含む」(「comprising」、「including」、「containing」等)は、拡張的にかつ限定なく読むべきである。さらに、本明細書において使用した用語および表現は限定の用語ではなく説明の用語として使用しており、そのような用語および表現の使用において、提示し記述した特徴またはその部分のいかなる等価物をも除外する意図はなく、特許を請求する技術の範囲内において種々の改変が可能であることが認識される。さらに、「基本的に〜からなる」という語句は、具体的に列挙した要素ならびに特許を請求する技術の基礎的および新規な特徴に実質的に影響しない追加的な要素を含むものと理解されよう。「〜からなる」という語句は、特定されていないいかなる要素も除外する。
【0089】
本開示は、本出願に記載した特定の実施形態に関して限定するべきではない。当業者には明白なように、その精神および範囲から逸脱することなく、多くの改変および変化が可能である。本開示の範囲内の機能的に等価な方法および組成は、本明細書に列挙したものに加えて、上記の記述から当業者には明白であろう。そのような改変および変化は、添付した特許請求の範囲に含まれることが意図されている。本開示は、添付した特許請求の範囲に権利が与えられる全ての範囲の等価物とともに、特許請求の範囲の用語によってのみ限定されるべきである。本開示は、当然変動し得る特定の方法、試薬、化合物、組成物または生物学的システムに限定されないと理解すべきである。本明細書において使用した用語は特定の実施形態を説明するためのみであって、限定することを意図するものではないことも理解すべきである。
【0090】
本明細書において言及した全ての出版物、特許出願、発行特許、および他の書類は、それぞれの個別の出版物、特許出願、発行特許、および他の書類が全体として参照により組み込まれると具体的かつ個別に示されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。参照により組み込まれたテキストに含まれる定義は、それらが本開示における定義と矛盾する限りにおいては除外される。
【0091】
さらに、本開示の特徴または態様がマーカッシュグループに関して記述される場合には、したがって本開示もマーカッシュグループの任意の個別の構成要素または構成要素のサブグループに関して記載されていることを、当業者は認識するであろう。
【0092】
当業者には理解されるように、任意のかつ全ての目的のため、特に書面による明細書の提供に関して、本明細書に開示した全ての範囲は、任意のかつ全ての可能な小範囲およびその小範囲の組み合わせをも包含する。列挙されたいかなる範囲も充分に説明しており、同じ範囲を少なくとも等価の半分、三分の一、四分の一、五分の一、十分の一等に分割することができることが容易に認識できる。非限定的な例として、本明細書において検討したそれぞれの範囲は、低位三分の一、中位三分の一および高位三分の一等に容易に分割できる。また当業者には理解されるように、「まで」、「少なくとも」、「より大きい」、「より少ない」等の全ての用語は言及した数を含み、上で検討したように、引き続いて小範囲に分割することができる範囲を意味する。最後に、当業者には理解されるように、範囲はそれぞれの個別の構成要素を含む。
【0093】
種々の態様および実施形態を本明細書に開示したが、当業者には他の態様および実施形態は明白であろう。本明細書に開示した種々の態様および実施形態は説明のためのものであって限定することを意図するものではなく、真の範囲および精神は以下の特許請求の範囲に示されている。