特許第5793637号(P5793637)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5793637
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】ブレーキシステムおよび車両
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/00 20060101AFI20150928BHJP
【FI】
   B60T8/00 Z
【請求項の数】10
【全頁数】41
(21)【出願番号】特願2015-531393(P2015-531393)
(86)(22)【出願日】2014年10月29日
(86)【国際出願番号】JP2014078806
【審査請求日】2015年6月23日
(31)【優先権主張番号】特願2013-227458(P2013-227458)
(32)【優先日】2013年10月31日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 宏昭
(72)【発明者】
【氏名】大橋 邦英
(72)【発明者】
【氏名】山村 健
(72)【発明者】
【氏名】逵 由典
(72)【発明者】
【氏名】高田 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】梶原 邦夫
【審査官】 竹村 秀康
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−126514(JP,A)
【文献】 特開2003−137085(JP,A)
【文献】 特開2012−17009(JP,A)
【文献】 特開2012−56503(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/12− 8/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームと、
前記車体フレームが直立状態の車両を前方から見て、前記車体フレームの左右方向に並ぶ右前輪および左前輪と、
前記右前輪および前記左前輪より前記車体フレームの前後方向の後方に設けられ、前記車体フレームが直立状態の車両を前方から見て、前記右前輪および前記左前輪の間に配置される中央後輪と、
下部に前記右前輪を支持し、上部に対する前記右前輪の前記車体フレームの上下方向における変位を緩衝する右緩衝装置と、
下部に前記左前輪を支持し、上部に対する前記左前輪の前記車体フレームの上下方向における変位を緩衝する左緩衝装置と、
前記車体フレームが直立状態の車両を前方から見て、前記車体フレームの上下方向において前記右前輪および前記左前輪より上方に設けられ、前記右緩衝装置の上部および前記左緩衝装置の上部を回転可能に支持し、少なくても一部が前記車体フレームの前後方向の前方かつ前記車体フレームの上下方向の上方に延びる回転軸線回りに回転可能に前記車体フレームに支持されるリンク機構と、を備える車両に採用可能なブレーキシステムであって、
前記ブレーキシステムは、
前記右前輪に設けられ、前記右前輪の制動力を発生する右前ブレーキと、
前記左前輪に設けられ、前記左前輪の制動力を発生する左前ブレーキと、
前記中央後輪に設けられ、前記中央後輪の制動力を発生する中央後ブレーキと、
初期状態から最大操作状態の間で運転者が操作可能であり、前記右前ブレーキ、前記左前ブレーキおよび前記中央後ブレーキを作動する入力部材と、
少なくとも前記車体フレームを前記車両の左右方向に傾斜させて旋回中において、
前記入力部材の初期状態からの操作量が第1操作量のときに、中央後ブレーキを作動開始させ、
前記入力部材の初期状態からの操作量が前記第1操作量より大きい第2操作量のときに、前記右前ブレーキおよび前記左前ブレーキのうちの旋回半径の大きい外輪となる前輪に設けられた前記右前ブレーキおよび前記左前ブレーキのうちの一方を作動開始させ、
前記入力部材の初期状態からの操作量が前記第2操作量と同じかそれより大きい第3操作量のときに、旋回半径の小さい内輪となる前輪に設けられた前記右前ブレーキおよび前記左前ブレーキのうちの他方を作動開始させ、
前記初期状態から前記最大操作状態の間の操作量を、低制動力領域、中制動力領域および高制動力領域の3つの領域に3等分した場合、前記第1操作量、前記第2操作量および前記第3操作量がいずれも前記3つの領域のうち前記低制動力領域に含まれる態様で構成されるブレーキ作動装置と、
を含む、
ブレーキシステム。
【請求項2】
前記ブレーキ作動装置は、
少なくとも前記車体フレームを前記車両の左右方向に傾斜させて旋回しているとき、前記中央後ブレーキのみを作動させる前記第1操作量から前記第2操作量の間の操作量の変化量が前記低制動力領域の半分より小さくなる態様で構成される、請求項1に記載のブレーキシステム。
【請求項3】
前記ブレーキ作動装置は、
少なくとも前記車体フレームを前記車両の左右方向に傾斜させて旋回しているとき、前記中央後ブレーキのみを作動させる前記第1操作量と前記第2操作量の間の前記中央後輪の最大制動力が前記初期状態と前記最大操作状態の間の前記中央後輪の最大制動力の1/3より小さくなる態様で構成される、請求項1または2に記載のブレーキシステム。
【請求項4】
前記ブレーキ作動装置は、
少なくとも前記車体フレームを前記車両の左右方向に傾斜させて旋回しているとき、前記入力部材の初期状態からの操作量が前記第3操作量と同じかそれより大きい第4操作量のときに、前記外輪となる前輪の制動力および前記内輪となる前輪の制動力の合計の制動力が、前記中央後輪の制動力の半分の制動力より大きくなる態様で構成される、請求項1から3のいずれか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項5】
前記ブレーキ作動装置は、
少なくとも前記車体フレームを前記車両の左右方向に傾斜させて旋回しているとき、前記入力部材の初期状態からの操作量が前記第4操作量と同じかそれより大きい第5操作量のときに、前記外輪となる前輪の制動力および前記内輪となる前輪の制動力の合計の制動力が、前記中央後輪の制動力より大きくなる態様で構成される、請求項4に記載のブレーキシステム。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のブレーキシステムを備えた車両。
【請求項7】
前記右緩衝装置は、前記車体フレームの上下方向に延びる伸縮方向に伸縮可能な右テレスコピック要素を含み、前記右前輪を前記右テレスコピック要素の伸縮方向に変位させ、
前記左緩衝装置は、前記車体フレームの上下方向に延びる伸縮方向に伸縮可能な左テレスコピック要素を含み、前記左前輪を前記左テレスコピック要素の伸縮方向に変位させる、請求項6に記載の車両。
【請求項8】
前記リンク機構は、前記車体フレームが直立状態の前記車両を前方から見て、前記車体フレームの上下方向において、前記右前輪および前記左前輪より上方に設けられ、
前記右前輪および前記左前輪は、前記リンク機構に対して前記右緩衝装置および前記左緩衝装置が最も回転した状態の車両を前方から見て、前記中央後輪と重なる態様に設けられる、請求項6または7に記載の車両。
【請求項9】
前記車両は、
前記入力部材とは異なる第2入力部材と、
少なくとも前記車体フレームを前記車両の左右方向に傾斜させて旋回しているとき、前記第2入力部材の操作により、旋回半径の大きい外輪となる前輪に設けられた前記右前ブレーキおよび前記左前ブレーキのうちの一方および旋回半径の小さい内輪となる前輪に設けられた前記右前ブレーキおよび前記左前ブレーキのうちの他方を同時に作動開始させる第2ブレーキ作動装置と、
を含む第2ブレーキシステムを備える、請求項6から8のいずれか一項に記載の車両。
【請求項10】
前記第2ブレーキ作動装置は、前記ブレーキ作動装置の少なくとも一部を利用して前記右前ブレーキおよび前記左前ブレーキを作動させる、請求項9に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、傾斜可能な車体フレーム、2つの前輪および1つの後輪を備える車両用ブレーキシステムおよび車両に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のコーナリング時に車両の左右方向に傾斜する車体フレームと、その車体フレームの左右方向に並べて設けられた2つの前輪と、車体フレームが直立状態の車両を前方から見て、その2つの前輪の中央に配置される中央後輪を備えた車両が知られている(例えば、特許文献1および非特許文献1を参照)。また、車両のコーナリング時に車両の左右方向に傾斜する車体フレームと、その車体フレームの左右方向に並べて設けられた2つの前輪および2つの後輪を備えた車両が知られている(例えば、特許文献2を参照)。
【0003】
特許文献1、非特許文献1および特許文献2に記載されている車両は、傾斜可能な車体フレームと2つの前輪を備えた車両である。傾斜可能な車体フレームと2つの前輪を備えた車両は、リンク機構を備えている。リンク機構は、上クロスメンバと下クロスメンバを含んでいる。またリンク機構は、上クロスメンバと下クロスメンバの右端部を支持する右サイドロッド、および上クロスメンバと下クロスメンバの左端部を支持する左サイドロッドを含んでいる。
【0004】
上クロスメンバの中間部は、中間上軸受を介して車体フレームに連結され、車体フレームの前後方向に延びる中間上軸線回りに回転可能とされている。ここで、前記中間上軸線は、前記車体フレームの前後方向の前方かつ車体フレームの上下方向の上方に延びるように傾斜する態様で設けられている。上クロスメンバの右端部は、右上軸受を介して右サイドロッドに連結され、車体フレームの前後方向に延びる右上軸線回りに回転可能とされている。上クロスメンバの左端部は、左上軸受を介して左サイドロッドに連結され、車体フレームの前後方向に延びる左上軸線回りに回転可能とされている。下クロスメンバの中間部は、中間下軸受を介して車体フレームに連結され、車体フレームの前後方向に延びる中間下軸線回りに回転可能とされている。ここで、前記中間下軸線も、中間上軸線と同様に前記車体フレームの前後方向の前方かつ車体フレームの上下方向の上方に延びるように傾斜する態様で設けられている。下クロスメンバの右端部は、右下軸受を介して右サイドロッドに連結され、車体フレームの前後方向に延びる右下軸線回りに回転可能とされている。下クロスメンバの左端部は、左下軸受を介して左サイドロッドに連結され、車体フレームの前後方向に延びる左下軸線回りに回転可能とされている。
【0005】
車体フレームが直立状態から車両の左右方向に傾斜すると、上クロスメンバと下クロスメンバは、車体フレームに対して中間上軸線と中間下軸線回りに回転し、車体フレームの上下方向における2つの前輪の相対位置は変化する。また、中間上軸線および中間下軸線が前記車体フレームの前後方向の前方かつ車体フレームの上下方向の上方に延びるように傾斜して設けられているため、2つの前輪は、上方に移動するほど後方に移動し、下方に移動するほど前方に変位する。なお、上クロスメンバと下クロスメンバは、車体フレームの直立状態において、2つの前輪よりも車体フレームの上下方向の上方に設けられている。リンク機構は、車体フレームが直立状態の車両を前方から見て、車体フレームの上下方向において右前輪および左前輪より上方に設けられている。
【0006】
傾斜可能な車体フレームと2つの前輪を備えた車両は、右前輪を車体フレームの上下方向に移動可能に支持する右緩衝装置と、左前輪を車体フレームの上下方向に移動可能に支持する左緩衝装置とを備えている。右緩衝装置は、車体フレームの上下方向に延びる右軸線回りに回転可能に右サイドロッドに支持されている。左緩衝装置は、車体フレームの上下方向に延びる左軸線回りに回転可能に左サイドロッドに支持されている。特許文献1に記載の車両は、ハンドル、ステアリングシャフト、および回転伝達機構をさらに備えている。ハンドルは、ステアリングシャフトに固定されている。ステアリングシャフトは、車体フレームに対して回転可能に支持されている。ハンドルを回転させると、ステアリングシャフトも回転する。回転伝達機構は、ステアリングシャフトの回転を右緩衝装置と左緩衝装置に伝達する。
【0007】
傾斜可能な車体フレームと2つの前輪を備えた車両は、ステアリングシャフトの周囲に多くの車両搭載部品を備えている。車両搭載部品は、ヘッドライトなどの灯火器、ラジエーター、リザーバータンク、ホーンなどの電装部品、車両のメインスイッチ、収納ボックス、収納ポケットなどである。
【0008】
特許文献1および非特許文献1に記載の車両は、右前輪および左前輪に発生する制動力を制御するための左右前輪制動入力部材を備えている。また、中央後輪に発生する制動力を制御するための後輪制動入力部材を備えている。さらに、中央後輪、右前輪および左前輪に発生する制動力を制御するための左右前輪および中央後輪制動入力部材を備えている。
【0009】
左右前輪制動入力部材を操作すると、前輪用マスターシリンダーが作動する。その前輪用マスターシリンダーが発生した液圧は、第1タンデムマスターシリンダーを作動させる。その第1タンデムマスターシリンダーが発生する液圧は、均等に分岐され、右前輪に設けた右ブレーキおよび左前輪に設けた左ブレーキに伝達される。液圧を受けた右ブレーキおよび左ブレーキは制動力を発生させる。
【0010】
後輪制動入力部材を操作すると、後輪用マスターシリンダーが作動する。その後輪用マスターシリンダーが発生した液圧は、第2マスターシリンダーを作動させる。その第2マスターシリンダーが発生する液圧は、中央後輪に設けた中央後ブレーキに伝達される。液圧を受けた中央後ブレーキは制動力を発生させる。
【0011】
左右前輪および後輪入力部材を操作すると、前後輪用マスターシリンダーが作動する。その前後輪用マスターシリンダーが発生した液圧は、第2マスターシリンダーを作動させる。その第2マスターシリンダーが発生する液圧は、中央後輪に設けた中央後ブレーキに伝達される。また、前後輪用マスターシリンダーが発生した液圧の一部は、第2マスターシリンダーを通過して、第1タンデムマスターシリンダーを作動させる。第1タンデムマスターシリンダーが発生する液圧は、均等に分岐され、右前輪に設けた右ブレーキおよび左前輪に設けた左ブレーキに伝達される。そして、液圧を受けた中央後ブレーキ、右ブレーキおよび左ブレーキは制動力を発生させる。
【0012】
特許文献1および非特許文献1に記載の車両は、作動の異なる3つの種類のブレーキシステムを採用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際公開2012/007819号公報
【特許文献2】日本国特開2011-195099号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Catalogo partidi ricambio, MP3 300 ie LT Mod. ZAPM64102, Piaggio社
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
特許文献1および非特許文献1に記載されている傾斜可能な車体フレーム、2つの前輪および1つの後輪を備えた車両は、車体フレームが直立状態の車両を前方から見ると、車体フレームの左右方向に並ぶ右前輪、中央後輪および左前輪を備える。そのため、車両が走行するとき、右前輪、中央後輪、左前輪が通過する路面は基本的に異なる。特許文献2に記載されている傾斜可能な車体フレーム、2つの前輪および2つの後輪を備えた車両は、車体フレームが直立状態の車両を前方から見ると、車体フレームの左右方向に並ぶ右前輪、右後輪、左前輪および左後輪を備える。そのため、車両が走行するとき、右前輪と右後輪はほぼ同じ路面を通過し、左前輪と左後輪はほぼ同じ路面を通過する。このように、傾斜可能な車体フレームと2つの前輪と1つの中央後輪を備えた車両の車輪が通過する路面は、傾斜可能な車体フレームと2つの前輪と2つの後輪とを備えた車両の車輪が通過する路面と異なる。
【0016】
特許文献1および非特許文献1に記載されている傾斜可能な車体フレーム、2つの前輪および1つの後輪を備えた車両は、2つの前輪と、その2つの前輪を各々支持する2つの緩衝装置と、その2つの緩衝装置を支持するリンク機構と、1つの中央後輪と、その1つの中央後輪を支持する1つの緩衝装置を備える。特許文献2に記載されている傾斜可能な車体フレーム、2つの前輪および2つの後輪を備えた車両は、2つの前輪と、その2つの前輪を各々支持する2つの緩衝装置と、その2つの緩衝装置を支持するリンク機構と、2つの後輪と、その2つの後輪を支持する1つの緩衝装置を備える。
傾斜可能な車体フレームと2つの前輪および1つの中央後輪を備えた車両は、傾斜可能な車体フレームと2つの前輪および2つの後輪を備えた車両よりも、前輪および後輪にかかる荷重の大きさに対する前輪にかかる荷重の大きさの割合が大きくなる傾向を有する。なお、必ずしも後輪にかかる荷重より前輪にかかる荷重が大きいとは限らない。実際に前輪および後輪のそれぞれにかかる荷重は、車体フレームに搭載されるエンジンなどの駆動源のレイアウト、搭乗者の着座位置などによって変化する。
【0017】
特許文献1、非特許文献1および特許文献2に記載されている傾斜可能な車体フレームおよび2つの前輪を備えた車両は、車体フレームを車両の左右方向に傾斜した状態で旋回する。このとき、傾斜可能な車体フレームおよび2つの前輪を備えた車両は、旋回半径の大きい外輪となる前輪にかかる荷重より旋回半径の小さい内輪となる前輪にかかる荷重が相対的に大きくなる傾向を有する。これは、中間上軸線および中間下軸線が前記車体フレームの前後方向の前方かつ車体フレームの上下方向の上方に延びるように傾斜して設けられていることに起因する。車体フレームを車両の左右方向に傾斜した状態では、内輪は車体フレームの上下方向の上方に位置し、外輪は下方に位置する。また、内輪は車体フレームの前後方向の後方に位置し、外輪は前方に位置する。内輪となる前輪と後輪の間隔が外輪となる前輪と後輪の間隔より小さくなる。これにより、傾斜可能な車体フレームおよび2つの前輪を備えた車両は、旋回半径の大きい外輪となる前輪にかかる荷重より旋回半径の小さい内輪となる前輪にかかる荷重が相対的に大きくなる傾向を有する。
【0018】
特許文献1および非特許文献1に記載されている傾斜可能な車体フレーム、2つの前輪および1つの後輪を備えた車両は、車体フレームが直立状態の車両を前方から見て、車体フレームの上下方向において右前輪および左前輪より上方に設けられたリンク機構を備えている。この構成により、車体フレームが直立状態において、右前輪、右緩衝装置、左緩衝装置および左前輪が車体フレームの左右方向に並び、右前輪と左前輪の間にリンク機構が存在しない。そのため、特許文献1および非特許文献1に記載されている傾斜可能な車体フレーム、2つの前輪および1つの後輪を備えた車両の右前輪と左前輪の間隔は、右前輪と左前輪の間にリンク機構が配置されている車両の右前輪と左前輪の間隔より小さい。これにより、特許文献1および非特許文献1に記載されている傾斜可能な車体フレーム、2つの前輪および1つの後輪を備えた車両は、右前輪と左前輪の間にリンク機構が配置されている車両より旋回半径の大きい外輪となる前輪にかかる荷重と旋回半径の小さい内輪となる前輪にかかる荷重の差が小さくなる傾向を有する。
【0019】
特許文献1および非特許文献1に記載の車両は、上述した構成および特性を有する。特許文献1および非特許文献1に記載の車両は、作動の異なる3つの種類のブレーキシステムを採用している。
【0020】
本発明は、傾斜可能な車体フレーム、2つの前輪および1つの後輪を備えた車両に採用可能であり、従来採用されている3つの種類のブレーキシステムとは異なる作動のブレーキシステムを提供することを目的とする。本発明は、従来採用されている3つの種類のブレーキシステムとは異なる作動のブレーキシステムと、傾斜可能な車体フレーム、2つの前輪および1つの後輪を備えた車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用する。
(1)ブレーキシステムであって、
車体フレームと、
前記車体フレームが直立状態の車両を前方から見て、前記車体フレームの左右方向に並ぶ右前輪および左前輪と、
前記右前輪および前記左前輪より前記車体フレームの前後方向の後方に設けられ、前記車体フレームが直立状態の車両を前方から見て、前記右前輪および前記左前輪の間に配置される中央後輪と、
下部に前記右前輪を支持し、上部に対する前記右前輪の前記車体フレームの上下方向における変位を緩衝する右緩衝装置と、
下部に前記左前輪を支持し、上部に対する前記左前輪の前記車体フレームの上下方向における変位を緩衝する左緩衝装置と、
前記車体フレームが直立状態の車両を前方から見て、前記車体フレームの上下方向において前記右前輪および前記左前輪より上方に設けられ、前記右緩衝装置の上部および前記左緩衝装置の上部を回転可能に支持し、少なくとも一部が前記車体フレームの前後方向の前方かつ前記車体フレームの上下方向の上方に延びる回転軸線回りに回転可能に前記車体フレームに支持されるリンク機構と、を備える車両に採用可能なブレーキシステムであって、
前記ブレーキシステムは、
前記右前輪に設けられ、前記右前輪の制動力を発生させる右前ブレーキと、
前記左前輪に設けられ、前記左前輪の制動力を発生させる左前ブレーキと、
前記中央後輪に設けられ、前記中央後輪の制動力を発生させる中央後ブレーキと、
初期状態から最大操作状態の間で運転者が操作可能であり、前記右前ブレーキ、前記左前ブレーキおよび前記中央後ブレーキを作動する入力部材と、
少なくとも前記車体フレームを前記車両の左右方向に傾斜させて旋回中において、
前記入力部材の初期状態からの操作量が第1操作量のときに、中央後ブレーキを作動開始させ、
前記入力部材の初期状態からの操作量が前記第1操作量より大きい第2操作量のときに、旋回半径の大きい外輪となる前輪に設けられた前記右前ブレーキおよび前記左前ブレーキのうちの一方を作動開始させ、
前記入力部材の初期状態からの操作量が前記第2操作量と同じかそれより大きい第3操作量のときに、旋回半径の小さい内輪となる前輪に設けられた前記右前ブレーキおよび前記左前ブレーキのうちの他方を作動開始させ、
前記初期状態から前記最大操作状態の間の操作量を3等分して、前記右前ブレーキの制動力、前記左前ブレーキの制動力および前記中央後ブレーキの制動力を合計した制動力が小さい低制動力領域、前記右前ブレーキの制動力、前記左前ブレーキの制動力および前記中央後ブレーキの制動力を合計した制動力が中程度の中制動力領域および前記右前ブレーキの制動力、前記左前ブレーキの制動力および前記中央後ブレーキの制動力を合計した制動力が大きい高制動力領域の3つの領域と定義した場合、前記第1操作量、前記第2操作量および前記第3操作量がいずれも前記3つの領域のうち前記低制動力領域に含まれる態様で構成されるブレーキ作動装置と、
を含む。
【0022】
(1)の構成によれば、ブレーキシステムは、右前ブレーキ、左前ブレーキ、中央後ブレーキ、入力装置および入力装置の操作によって前記3つのブレーキを作動させるブレーキ作動装置を備える。そのため、ブレーキシステムは、傾斜可能な車体フレーム、2つの前輪および1つの後輪を備えた車両に採用可能である。
【0023】
傾斜可能な車体フレーム、2つの前輪および1つの後輪を備えた車両は、車体フレームを車両の左右方向に傾斜させて旋回しているとき、以下の特性を有する。
【0024】
車体フレームを右方向に傾斜させて旋回しているとき、右前輪が旋回半径の小さい内輪となり、左前輪が旋回半径の大きい外輪となる。車体フレームを左方向に傾斜させて旋回しているとき、左前輪が旋回半径の小さい内輪となり、右前輪が旋回半径の大きい外輪となる。
なお、旋回半径の大きい外輪となる前輪に設けられた前記右前ブレーキおよび前記左前ブレーキのうちの一方とは、右前ブレーキと左前ブレーキのうちの一方であって、旋回時に旋回半径の大きい外輪となる前輪に設けられているブレーキを意味する。
車体フレームを車両の左右方向に傾斜させて旋回するため、旋回中の内輪となる前輪にかかる荷重は、外輪となる前輪にかかる荷重より、基本的に大きくなる傾向を有する。しかも、一つの中央後輪を備えた車両は、左後輪および右後輪を備えた車両に比べて、前輪にかかる荷重が後輪にかかる荷重より相対的に大きくなる傾向を有する。そのため、旋回中の内輪となる前輪にかかる荷重は、外輪となる前輪にかかる荷重より、基本的により大きくなる傾向を有する。
【0025】
本願発明者は、この傾斜可能な車体フレーム、2つの前輪および1つの後輪を有する車両の特性を考慮し、ブレーキシステムの研究を行った。そして、少なくとも車体フレームを車両の左右方向に傾斜させて旋回しているときに車両のスピードを調整するライダーの入力部材の操作と右前ブレーキ、左前ブレーキおよび中央後ブレーキの作動の関係を研究した。その結果、先ず、旋回中は内輪および外輪に制動力を発生させるより、中央後輪に小さい制動力を発生させる機会が多いことを見出した。さらにスピードの調整が必要な場合は、中央後輪の制動力に加えて内輪および外輪に制動力を発生させる機会が多いことを見出した。しかも、中央後輪にのみ制動力をかけるより、中央後輪、内輪および外輪の3つの車輪全てに制動力を発生させる機会が多いことを見出した。そこで、本願発明者は、このライダーの入力部材の操作と右前ブレーキ、左前ブレーキおよび中央後ブレーキの作動の関係を考慮したブレーキシステムを考えるに至った。
【0026】
(1)の構成によれば、ブレーキ作動装置は、少なくとも車体フレームを車両の左右方向に傾斜させて旋回しているときに、以下の態様で入力部材の操作に応じて中央後ブレーキ、右前ブレーキおよび左前ブレーキを作動させる。ブレーキ作動装置は、入力部材の初期状態からの操作量が第1操作量のときに、中央後ブレーキを作動開始させる。ブレーキ作動装置は、入力部材の初期状態からの操作量が第1操作量より大きい第2操作量のときに、右前ブレーキおよび左前ブレーキのうちの旋回半径の大きい外輪となる前輪に設けられた前ブレーキを作動開始させる。ブレーキ作動装置は、入力部材の初期状態からの操作量が第2操作量と同じかそれより大きい第3操作量のときに、旋回半径の小さい内輪となる前輪に設けられた前ブレーキを作動開始させる。
ブレーキ作動装置は、初期状態から最大操作状態の間の操作量を3等分して低制動力領域、中制動力領域および高制動力領域の3つの領域と定義した場合、第1操作量、第2操作量および第3操作量はいずれもこれら3つの領域のうちの低制動力領域に含まれる態様で構成される。
なお、低制動力領域は、初期状態から最大操作状態の間の操作量を3等分したうちの、右前ブレーキの制動力、左前ブレーキの制動力および中央後ブレーキの制動力を合計した制動力が小さい領域である。中制動力領域は、初期状態から最大操作状態の間の操作量を3等分したうちの、右前ブレーキの制動力、左前ブレーキの制動力および中央後ブレーキの制動力を合計した制動力が中程度の領域である。高制動力領域は、初期状態から最大操作状態の間の操作量を3等分したうちの、右前ブレーキの制動力、左前ブレーキの制動力および中央後ブレーキの制動力を合計した制動力が大きい領域である。
さらに言い換えれば、初期状態から最大操作状態まで変化する操作量を、3つの領域に区分けする。これら3つの領域を、3つの車輪の制動力の合計が最も小さい低制動力領域と、3つの車輪の制動力の合計が最も大きい高制動力領域と、低制動力領域と高制動力領域の中間である中制動力領域と定義する。このように定義した場合、第1操作量および第2操作量より大きい第3操作量が、3つの車輪の制動力の合計が最も小さい低制動力領域に含まれるように、ブレーキ作動装置が構成されている。
このため、傾斜可能な車体フレーム、2つの前輪および1つの後輪を備えた車両に採用可能であり、従来採用されている3つのブレーキシステムとは作動が異なるブレーキシステムが提供される。
【0027】
本発明は、以下の構成を採用することが好ましい。
(2)ブレーキシステムであって、
前記ブレーキ作動装置は、
少なくとも前記車体フレームを車両の左右方向に傾斜させて旋回しているとき、前記中央後ブレーキのみを作動させる前記第1操作量から前記第2操作量の間の操作量の変化量が前記低制動力領域の半分より小さくなる態様で構成される。
【0028】
(2)の構成によれば、ブレーキ作動装置は、少なくとも車体フレームを車両の左右方向に傾斜させて旋回しているときに、以下の態様で入力部材の操作に応じて中央後ブレーキ、右前ブレーキおよび左前ブレーキを作動させる。ブレーキ作動装置は、中央後ブレーキのみを作動させる第1操作量から第2操作量の間の操作量の変化量が低制動力領域の半分より小さくなる態様で構成される。このため、傾斜可能な車体フレーム、2つの前輪および1つの後輪を備えた車両に採用可能であり、従来採用されている3つのブレーキシステムとは作動が異なるブレーキシステムが提供される。
【0029】
本発明は、以下の構成を採用することが好ましい。
(3)ブレーキシステムであって、
前記ブレーキ作動装置は、
少なくとも前記車体フレームを車両の左右方向に傾斜させて旋回しているとき、前記中央後ブレーキのみを作動させる前記第1操作量と前記第2操作量の間の前記中央後輪の最大制動力が前記初期状態と前記最大操作状態の間の前記中央後輪の最大制動力の1/3より小さくなる態様で構成される。
【0030】
(3)の構成によれば、ブレーキ作動装置は、少なくとも車体フレームを車両の左右方向に傾斜させて旋回しているときに、以下の態様で入力部材の操作に応じて中央後ブレーキ、右前ブレーキおよび左前ブレーキを作動させる。ブレーキ作動装置は、中央後ブレーキのみを作動させる第1操作量と第2操作量の間の中央後輪の最大制動力が初期状態と最大操作状態の間の中央後輪の最大制動力の1/3より小さくなる態様で構成される。このため、傾斜可能な車体フレーム、2つの前輪および1つの後輪を備えた車両に採用可能であり、従来採用されている3つのブレーキシステムとは作動が異なるブレーキシステムが提供される。
【0031】
本発明は、以下の構成を採用することが好ましい。
(4)ブレーキシステムであって、
前記ブレーキ作動装置は、
少なくとも前記車体フレームを車両の左右方向に傾斜させて旋回しているとき、前記入力部材の初期状態からの操作量が前記第3操作量と同じかそれより大きい第4操作量のときに、前記外輪となる前輪の制動力および前記内輪となる前輪の制動力の合計の制動力が、前記中央後輪の制動力の半分の制動力より大きくなる態様で構成される。
【0032】
(4)の構成によれば、ブレーキ作動装置は、少なくとも車体フレームを車両の左右方向に傾斜させて旋回しているときに、以下の態様で入力部材の操作に応じて中央後ブレーキ、右前ブレーキおよび左前ブレーキを作動させる。ブレーキ作動装置は、入力部材の初期状態からの操作量が第3操作量と同じかそれより大きい第4操作量のときに、外輪となる前輪の制動力および内輪となる前輪の制動力の合計の制動力が、中央後輪の制動力の半分の制動力より大きくなる態様で構成される。このため、傾斜可能な車体フレーム、2つの前輪および1つの後輪を備えた車両に採用可能であり、従来採用されている3つのブレーキシステムとは作動が異なるブレーキシステムが提供される。
【0033】
本発明は、以下の構成を採用することが好ましい。
(5)ブレーキシステムであって、
前記ブレーキ作動装置は、
少なくとも前記車体フレームを車両の左右方向に傾斜させて旋回しているとき、前記入力部材の初期状態からの操作量が前記第4操作量と同じかそれより大きい第5操作量のときに、前記外輪となる前輪の制動力および前記内輪となる前輪の制動力の合計の制動力が、前記中央後輪の制動力より大きくなる態様で構成される。
【0034】
(5)の構成によれば、ブレーキ作動装置は、少なくとも車体フレームを車両の左右方向に傾斜させて旋回しているときに、以下の態様で入力部材の操作に応じて中央後ブレーキ、右前ブレーキおよび左前ブレーキを作動させる。ブレーキ作動装置は、入力部材の初期状態からの操作量が第4操作量と同じかそれより大きい第5操作量のときに、外輪となる前輪の制動力および内輪となる前輪の制動力の合計の制動力が、中央後輪の制動力より大きくなる態様で構成される。このため、傾斜可能な車体フレーム、2つの前輪および1つの後輪を備えた車両に採用可能であり、従来採用されている3つのブレーキシステムとは作動が異なるブレーキシステムが提供される。
【0035】
本発明は、以下の構成を採用することが好ましい。
(6)車両であって、前記(1)から(5)のいずれかのブレーキシステムを備える。
【0036】
(6)の構成によれば、旋回中に内輪の荷重が大きくなる傾斜可能な車体フレームと、2つの前輪と、1つの後輪および従来採用されている3つのブレーキシステムとは作動が異なるブレーキシステムを備えた車両を提供できる。
【0037】
本発明は、以下の構成を採用することが好ましい。
(7)車両であって、前記右緩衝装置は、前記車体フレームの上下方向に延びる伸縮方向に伸縮可能な右テレスコピック要素を含み、前記右前輪を前記右テレスコピック要素の伸縮方向に変位させ、
前記左緩衝装置は、前記車体フレームの上下方向に延びる伸縮方向に伸縮可能な左テレスコピック要素を含み、前記左前輪を前記左テレスコピック要素の伸縮方向に変位させる。
【0038】
(7)の構成によれば、右緩衝装置および左緩衝装置による右前輪および左前輪の車体フレームの上下方向の変位量が、従来採用されているリンク式の緩衝装置による右前輪および左前輪の車体フレームの上下方向の変位量より大きい。このため、(7)の構成を備えた車両は、リンク式の緩衝装置を備えた従来の車両より、車両の姿勢変化が大きくなる。(7)の構成を備えた車両は、車両の姿勢変化により、旋回中の内輪となる前輪にかかる荷重が外輪となる前輪にかかる荷重より基本的により大きくなる傾向を有する。(1)から(5)のいずれかのブレーキシステムは、このような前輪の車体フレームの上下方向の変位量が大きいテレスコピック式の緩衝装置と、傾斜可能な車体フレームと、2つの前輪および1つの後輪を備えた車両に採用可能である。(7)の構成によれば、旋回中に内輪の荷重が大きくなる傾斜可能な車体フレームと、2つの前輪と、1つの後輪および従来採用されている3つのブレーキシステムとは作動が異なるブレーキシステムを備えた車両を提供できる。
【0039】
本発明は、以下の構成を採用することが好ましい。
(8)車両であって、
前記リンク機構は、前記車体フレームが直立状態の前記車両を前方から見て、前記車体フレームの上下方向において、前記右前輪および前記左前輪より上方に設けられ、
前記右前輪および前記左前輪は、前記リンク機構に対して前記右緩衝装置および前記左緩衝装置が最も回転した状態の車両を前方から見て、前記中央後輪と重なる態様に設けられる。
【0040】
(8)の構成によれば、右前輪および左前輪の間隔が小さくなる。そのため、内輪の旋回半径と外輪の旋回半径の差も小さくなる。また、旋回半径の差を小さくすることで、旋回中の内輪となる前輪にかかる荷重と外輪となる前輪にかかる荷重の差を小さくできる。(1)から(5)のいずれかのブレーキシステムは、このような傾斜可能な車体フレームと、1つの後輪と、間隔の小さい右前輪および左前輪を備えた車両に採用可能である。特に、(4)または(5)のブレーキシステムを採用することが好ましい。(8)の構成によれば、旋回中に内輪の荷重が大きくなる傾斜可能な車体フレームと、1つの後輪と、間隔の小さい右前輪および左前輪と、従来採用されている3つのブレーキシステムとは作動が異なるブレーキシステムを備えた車両を提供できる。
【0041】
本発明は、以下の構成を採用することが好ましい。
(9)車両であって、
前記入力部材とは異なる第2入力部材と、
少なくとも前記車体フレームを車両の左右方向に傾斜させて旋回しているとき、前記第2入力部材の操作により、旋回半径の小さい内輪となる前輪に設けられた前記前ブレーキおよび旋回半径の大きい外輪となる前輪に設けられた前記前ブレーキを同時に作動開始させる第2ブレーキ作動装置と、
を含む第2ブレーキシステムを備える。
【0042】
(9)の構成によれば、少なくとも車体フレームを車両の左右方向に傾斜させて旋回しているとき、前記入力部材とは異なる第2入力部材の操作により、旋回半径の小さい内輪となる前輪に設けられた前ブレーキおよび旋回半径の大きい外輪となる前輪に設けられた前ブレーキを同時に作動開始させる第2ブレーキ作動装置を含む第2ブレーキシステムを備える。したがって、旋回中に内輪の荷重が大きくなる傾斜可能な車体フレームと、1つの後輪と、間隔の小さい右前輪および左前輪と、作動の異なる2つの種類のブレーキシステムを備えた車両を提供できる。
【0043】
本発明は、以下の構成を採用することが好ましい。
(10)車両であって、
前記第2ブレーキ作動装置は、前記ブレーキ作動装置の少なくとも一部を利用して前記右前ブレーキおよび前記左前ブレーキを作動させる。
【0044】
(10)の構成によれば、第2ブレーキ作動装置は、前記ブレーキ作動装置の少なくとも一部を利用するため、システム構成を簡素化できる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】本発明の第1の実施形態に係る車両の全体側面図である。
図2図1の車両の前部の正面図である。
図3図1の車両の前部の平面図である。
図4図1の車両を転舵させた状態の車両前部の平面図である。
図5図1の車両を傾斜させた状態の車両前部の正面図である。
図6図1の車両を転舵させかつ傾斜させた状態の車両前部の正面図である。
図7図1の車両の左緩衝器の側面図である。
図8A】車体フレームの上下方向の上方から見た車両と車輪の前後方向の位置を示す説明図である。
図8B】車体フレームの上下方向の上方から見た車両と車輪の前後方向の位置を示す説明図である。
図9図8A図8Bのブレーキシステムの実施形態の一例(第1実施形態)を示す説明図である。
図10図8A図8Bのブレーキシステムの変形例(第2実施形態)を示す説明図である。
図11図8A図8Bのブレーキシステムの変形例(第3実施形態)を示す説明図である。
図12図8A図8Bのブレーキシステムの変形例(第4実施形態)を示す説明図である。
図13図8A図8Bのブレーキシステムの変形例(第5実施形態)を示す説明図である。
図14図8A図8Bのブレーキ作動装置の変形例(第6実施形態)を示す説明図である。
図15図8A図8Bの液圧ユニットの実施形態の一例(第1実施形態)を示す説明図である。
図16図8A図8Bのブレーキシステムの変形例(第7実施形態)を示す説明図である。
図17図16のブレーキシステムの作動状況を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、本発明を好ましい実施形態に基づいて図面を参照しつつ説明する。
<方向についての定義>
以下、図中の矢印Fは車両の前方向を示し、矢印Bは車両の後方向を示す。矢印Uは車両の上方向を示し、矢印Dは車両の下方向を示す。矢印Rは車両の右方向を示し、矢印Lは車両の左方向を示す。なお、車両は、車体フレームを鉛直に対して車両の左右方向に傾斜させて旋回する。そこで、車両の方向とは別に車体フレームを基準とした方向を定めている。図中の矢印FFは車体フレームを基準とした前方向を示し、矢印FBは車体フレームを基準とした後方向を示す。矢印FUは車体フレームを基準とした上方向を示し、矢印FDは車体フレームを基準とした下方向を示す。矢印FRは車体フレームを基準とした右方向を示し、矢印FLは車体フレームを基準とした左方向を示す。明細書において、車両の前後方向、車両の上下方向、車両の左右方向とは、車両を運転する乗員から見た前後、左右、上下の方向であり、車両を基準とした方向である。また、明細書において、車体フレームの前後方向、車体フレームの上下方向、車体フレームの左右方向とは、車両を運転する乗員から見た前後、左右、上下の方向であり、車体フレームを基準とした方向である。車幅方向中央とは、車両の左右方向の車幅の中央を意味する。言い換えると、車両の左右方向中央のことである。また、明細書において、直立状態とは、車体フレームの上下方向が鉛直と一致している状態を示す。この状態では、車両の方向と車体フレームの方向は一致する。なお、車体フレームを鉛直に対して左右方向に傾斜させて旋回しているときは、車両の左右方向と車体フレームの左右方向は一致しない。また、車両の上下方向と車体フレームの上下方向も一致しない。しかし、車両の前後方向と車体フレームの前後方向は一致する。
<第1の実施形態>
以下、本発明の好ましい実施形態に係る車両の第1の実施形態を、図1から図7を参照して説明する。
第1の実施形態では、傾斜可能な車体フレーム、2つの前輪および1つの前輪を備える三輪車両(以下、車両と称する)に搭載されたブレーキシステムを例示する。
【0047】
〈第1の実施形態の全体構成〉
図1は、車両を車体フレームの左右方向の左方から見た全体側面図を示す。
図1に示すように、車両1001は、車両本体部1002を備えている。車両1001は、左右一対の前輪1003を備えている。車両1001は、中央後輪1004を備えている。車両1001は、操舵機構1007を備えている。車両1001は、リンク機構1005を備えている。車両本体部1002は、車体フレーム1021と、車体カバー1022と、シート1024と、パワーユニット1025とを含んでいる。
【0048】
車体フレーム1021は、ヘッドパイプ1211と、ダウンフレーム1212と、アンダーフレーム1214と、リアフレーム1213とを有する。図1では、車体フレーム1021のうち、車体カバー1022に隠れた部分は破線で示している。車体フレーム1021は、パワーユニット1025やシート1024等を支持している。車体フレーム1021は、パワーユニット1025やシート1024等を直接的にまたはブラケットなどを介して間接的に支持している。パワーユニット1025は、エンジンあるいは電動モータ等の駆動源と、トランスミッション装置等を有する。また、パワーユニット1025には、中央後輪1004が支持されている。駆動源の駆動力は、トランスミッション装置を介して中央後輪1004に伝達される。さらに、パワーユニット1025は、車体フレーム1021に揺動可能に支持されている。パワーユニット1025の前部は、車体フレーム1021に揺動可能に支持されている。パワーユニット1025は、後輪用緩衝装置1025Aを介して車体フレーム1021に支持されている。パワーユニット1025の後部は、後輪用緩衝装置1025Aを介して車体フレーム1021に支持されている。この構成により、中央後輪1004は、車体フレームの上下方向に変位可能に構成されている。
【0049】
ヘッドパイプ1211は、車両1001の前部に配置されている。ヘッドパイプ1211には、操舵機構1007のステアリングシャフト1060が回転可能に支持されている。ヘッドパイプ1211は、車体フレームを車両の左右方向から見て、その下部よりその上部が後方に位置している。ヘッドパイプ1211の回転軸線は、車体フレームの上下方向に対して傾斜して配置されている。ヘッドパイプ1211の回転軸線は、車体フレームの上方かつ後方に延びている。ヘッドパイプ1211の周囲には、操舵機構1007およびリンク機構1005が配置されている。ヘッドパイプ1211は、リンク機構1005を支持している。ヘッドパイプ1211は、リンク機構1005の少なくとも一部を回転可能に支持している。ヘッドパイプ1211は、車体フレーム1021の前後方向の前方かつ車体フレーム1021の上下方向の上方に延びる回転軸線回りに回転可能にリンク機構1005の少なくとも一部を支持している。
【0050】
ダウンフレーム1212は、ヘッドパイプ1211に接続されている。ダウンフレーム1212は、ヘッドパイプ1211より後方に配置され、車両の上下方向に沿って延びている。ダウンフレーム1212の下部には、アンダーフレーム1214が接続されている。アンダーフレーム1214は、ダウンフレーム1212の下部から後方へ向けて延びている。アンダーフレーム1214の後方には、リアフレーム1213が後方かつ上方へ向けて延びている。リアフレーム1213は、シート1024、パワーユニット1025およびテールランプ等を支持している。
【0051】
車体フレーム1021は、車体カバー1022によって覆われている。車体カバー1022は、フロントカバー1221、左右一対のフロントフェンダー1223、レッグシールド1225、センターカバー1226およびリアフェンダー1224を有する。車体カバー1022は、左右一対の前輪1003、車体フレーム1021、リンク機構1005など車両に搭載される車体部品の少なくとも一部を覆う車体部品である。
【0052】
フロントカバー1221は、シート1024より前方に位置している。フロントカバー1221は、操舵機構1007およびリンク機構1005の少なくとも一部を覆っている。乗員の足の少なくとも一部を前方から覆うレッグシールド1225は、左右一対の前輪1003より後方かつシート1024より前方に配置されている。センターカバー1226は、リアフレーム1213の周囲を覆うように配置されている。センターカバー1226は、リアフレーム1213の上部を覆うように配置されている。センターカバー1226は、リアフレーム1213の左右側部を覆うように配置されている。
【0053】
左右一対のフロントフェンダー1223の少なくとも一部は、フロントカバー1221の下方にそれぞれ配置されている。左右一対のフロントフェンダー1223の少なくとも一部は、左右一対の前輪1003の上方にそれぞれ配置されている。リアフェンダー1224の少なくとも一部は、中央後輪1004の上方に配置されている。
【0054】
左右一対の前輪1003の少なくとも一部は、直立状態で、ヘッドパイプ1211の下方に配置されている。左右一対の前輪1003の少なくとも一部は、直立状態で、フロントカバー1221の下方に配置されている。中央後輪1004の少なくとも一部は、センターカバー1226またはシート1024の下方に配置されている。中央後輪1004の少なくとも一部は、リアフェンダー1224の下方に配置されている。
【0055】
〈操舵機構〉
図2は、図1の車両1001の前部を正面から見た正面図である。図2は、車体フレーム1021が直立状態の車両1001を前方から見た図である。図3は、図1の車両1001の前部を上方から見た平面図である。図3は、車体フレーム1021が直立状態の車両1001を上方から見た図である。図2および図3では、車体カバー1022を透過させた状態で図示している。
図2および図3に示すように、操舵機構1007は、操舵力伝達機構1006、左緩衝器1033、右緩衝器1034、および左右一対の前輪1003を有する。
【0056】
左右一対の前輪1003は、左前輪1031および右前輪1032を含んでいる。左前輪1031は、車体フレーム1021の一部であるダウンフレーム1212の車体フレーム1021の左右方向の左方に配置されている。右前輪1032は、車体フレーム1021の一部であるダウンフレーム1212の車体フレーム1021の左右方向の右方に配置されている。車体フレーム1021が直立状態の車両1001を前方から見て、左前輪1031および右前輪1032は、車体フレーム1021の左右方向に並べて配置されている。また、左前輪1031の上方には、左フロントフェンダー1227が配置されている。右前輪1032の上方には、右フロントフェンダー1228が配置されている。左前輪1031は左緩衝器1033に支持されている。右前輪1032は右緩衝器1034に支持されている。
【0057】
左緩衝器1033は、いわゆるテレスコピック式の緩衝器であり、支持する左前輪1031が路面から受ける荷重による振動を減衰させるものである。左緩衝器1033は、左下部1033a(左アウター要素)および左上部1033b(左インナー要素)を有する。左緩衝器1033は、左サイド部材支持部1053Aを有する。左前輪1031は左下部1033aに支持されている。左下部1033aは、車体フレーム1021の上下方向に延び、その下端に左車輪軸1314が支持されている。左車輪軸1314は、左前輪1031を支持している。左上部1033bは、その一部が左下部1033aに挿入された状態で、左下部1033aの上方に配置されている。左緩衝器1033は、左上部1033bが、左下部1033aの延びる方向において、左下部1033aに対して相対移動することで伸縮可能である。左上部1033bの上部は、左ブラケット1317に固定されている。左サイド部材支持部1053Aの下部は、左ブラケット1317に固定されている。なお、左下部1033aの延びる方向は、左緩衝器1033の伸縮方向である。
【0058】
左下部1033aおよび左上部1033bは、2つのテレスコピック要素を含んでいる。その2つのテレスコピック要素は、前後に並べて配置されている。その2つのテレスコピック要素は、互いに連結されている。そのため、左下部1033aは、左上部1033bに対してテレスコピック要素の伸縮方向に平行な軸線回りに相対回転しない。
【0059】
右緩衝器1034は、いわゆるテレスコピック式の緩衝器であり、支持する右前輪1032が路面から受ける荷重による振動を減衰させるものである。右緩衝器1034は、右下部1034a(右アウター要素)および右上部1034b(右インナー要素)を有する。右緩衝器1034は、右サイド部材支持部1054Aを有する。右前輪1032は右下部1034aに支持されている。右下部1034aは、車体フレーム1021の上下方向に延び、その下端に右車輪軸1324が支持されている。右車輪軸1324は、右前輪1032を支持している。右上部1034bは、その一部が右下部1034aに挿入された状態で、右下部1034aの上方に配置されている。右緩衝器1034は、右上部1034bが、右下部1034aの延びる方向において、右下部1034aに対して相対移動することで伸縮可能である。右上部1034bの上部は、右ブラケット1327に固定されている。右サイド部材支持部1054Aの下部は、右ブラケット1327に固定されている。なお、右下部1034aの延びる方向は、右緩衝器1034の伸縮方向である。
【0060】
右下部1034aおよび右上部1034bは、2つのテレスコピック要素を含んでいる。その2つのテレスコピック要素は、前後に並べて配置されている。その2つのテレスコピック要素は、互いに連結されている。そのため、右下部1034aは、右上部1034bに対してテレスコピック要素の伸縮方向に平行な軸線回りに相対回転しない。
【0061】
車体フレーム1021が直立状態の車両1001を前方から見て、操舵力伝達機構1006は、左前輪1031および右前輪1032より上方に配置されている。操舵力伝達機構1006は、乗員の操舵力を入力する部材として、操舵部材1028を備えている。操舵部材1028は、ステアリングシャフト1060と、ステアリングシャフト1060の上部に連結されたハンドルバー1023とを有する。ステアリングシャフト1060は、その一部がヘッドパイプ1211に回転可能に支持されている。ステアリングシャフト1060は、その下部よりその上部が車体フレーム1021の後方に位置する。ステアリングシャフト1060の回転軸線は、車体フレーム1021の後方かつ上方に延びる。ステアリングシャフト1060は、乗員によるハンドルバー1023の操作に連動して回転する。
【0062】
操舵力伝達機構1006は、操舵部材1028、タイロッド1067、左ブラケット1317および右ブラケット1327を有する。操舵力伝達機構1006は、乗員がハンドルバー1023を操作する操舵力を、左ブラケット1317および右ブラケット1327に伝達する。
【0063】
〈リンク機構〉
本例では、平行四節リンク(パラレログラムリンクとも呼ぶ)方式のリンク機構1005を採用している。
リンク機構1005は、車体フレーム1021が直立状態の車両1001を前方から見て、ハンドルバー1023より下方に配置されている。リンク機構1005は、車体フレーム1021のヘッドパイプ1211に支持されている。リンク機構1005は、上クロス部材1051、下クロス部材1052、左サイド部材1053および右サイド部材1054を備えている。
【0064】
上クロス部材1051は、ヘッドパイプ1211の前方に配置されて車幅方向に延びた板状の部材1512を含む。板状の部材1512の中間部は、支持部Cによってヘッドパイプ1211に支持される。支持部Cは、ヘッドパイプ1211に設けたボス部である。上クロス部材1051は、ヘッドパイプ1211に対して、車体フレーム1021の前後方向に延びる中間上軸線回りに回転可能である。上クロス部材1051は、車体フレーム1021に対して、車体フレーム1021の前後方向に延びる中間上軸線回りに回転可能である。上クロス部材1051は、車体フレーム1021に対して、車体フレーム1021の前後方向の前方かつ車体フレーム1021の上下方向の上方に延びる中間上軸線回りに回転可能である。
【0065】
上クロス部材1051の左端は、支持部Dによって左サイド部材1053に支持されている。支持部Dは、左サイド部材1053に設けたボス部である。上クロス部材1051は、左サイド部材1053に対して、車体フレーム1021の前後方向に延びる左上軸線回りに回転可能である。上クロス部材1051の右端は、支持部Eによって右サイド部材1054に支持されている。支持部Eは、右サイド部材1054に設けたボス部である。上クロス部材1051は、右サイド部材1054に対して、車体フレーム1021の前後方向に延びる右上軸線回りに回転可能である。中間上軸線、左上軸線、および右上軸線は、互いに平行である。中間上軸線、左上軸線、および右上軸線は、車体フレーム1021の前後方向の前方かつ車体フレーム1021の上下方向の上方に延びている。
【0066】
下クロス部材1052の中間部は、支持部Fによってヘッドパイプ1211に支持される。支持部Fは、ヘッドパイプ1211に形成されたボス部である。下クロス部材1052は、ヘッドパイプ1211に対して、車体フレーム1021の前後方向に延びる中間下軸線回りに回転可能である。下クロス部材1052は、車体フレーム1021に対して、車体フレーム1021の前後方向に延びる中間下軸線回りに回転可能である。下クロス部材1052は、車体フレーム1021に対して、車体フレーム1021の前後方向の前方かつ車体フレーム1021の上下方向の上方に延びる中間上軸線回りに回転可能である。車体フレームが直立状態の車両を前方から見て、車体フレームの上下方向において、下クロス部材1052は、上クロス部材1051よりも下方に配置されている。下クロス部材1052は、上クロス部材1051と略同じ車幅方向の長さを有する。下クロス部材1052は、上クロス部材1051と平行に配置されている。
【0067】
下クロス部材1052は、車両1001の左右方向に延びる一対の板状の部材1522,1522を含む。一対の板状の部材1522,1522は、車体フレーム1021の前後方向においてヘッドパイプ1211の前方および後方に配置されている。一対の板状の部材1522,1522同士は、連結部1523によって一体的に連結されている。なお、連結部1523は、一対の板状の部材1522,1522と一体でも別体でもよい。下クロス部材1052の左端は、支持部Gによって左サイド部材1053に支持されている。支持部Gは、左サイド部材1053に設けられたボス部である。下クロス部材1052は、左サイド部材1053に対して、車体フレーム1021の前後方向に延びる左下軸線回りに回転可能である。下クロス部材1052の右端は、支持部Hによって右サイド部材1054に支持されている。支持部Hは、右サイド部材1054に設けられたボス部である。下クロス部材1052は、右サイド部材1054に対して、車体フレーム1021の前後方向に延びる右下軸線回りに回転可能である。中間下軸線、左下軸線、および右下軸線は、互いに平行である。中間下軸線、左下軸線、および右下軸線は、車体フレーム1021の前後方向の前方かつ車体フレーム1021の上下方向の上方に延びている。
【0068】
リンク機構1005の少なくとも一部は、車両1001の前後方向に延びる中間軸線回りに回転可能である。リンク機構1005の少なくとも一部は、車体フレーム1021の前後方向の前方かつ車体フレーム1021の上下方向の上方に延びる中間軸線(回転軸線)回りに回転可能である。中間軸線(回転軸線)は、水平に対して傾斜している。中間軸線(回転軸線)は、水平に対して前方かつ上方に延びている。
【0069】
左サイド部材1053は、ヘッドパイプ1211の左方に配置される。左サイド部材1053は、左前輪1031および左緩衝器1033よりも上方に設けられている。左サイド部材1053は、その内周に左サイド部材支持部1053Aを回転可能に支持している。左緩衝器1033は、左サイド部材1053に対して左中心軸Y1を中心に回転できる。左中心軸Y1は、ヘッドパイプ1211の回転軸線と平行に設けられている。
【0070】
右サイド部材1054は、ヘッドパイプ1211の右方に配置される。右サイド部材1054は、右前輪1032および右緩衝器1034よりも上方に設けられている。右サイド部材1054は、その内周に右サイド部材支持部1054Aを回転可能に支持している。右緩衝器1034は、右サイド部材1054に対して右中心軸Y2を中心に回転できる。右中心軸Y2は、ヘッドパイプ1211の回転軸線と平行に設けられている。
【0071】
このように、上クロス部材1051、下クロス部材1052、左サイド部材1053、および右サイド部材1054は、上クロス部材1051と下クロス部材1052が相互に平行な姿勢を保ち、左サイド部材1053と右サイド部材1054が相互に平行な姿勢を保つように支持されている。
【0072】
〈操舵動作〉
図4は、車両1の操舵動作を説明するための図であり、車両1001を転舵させた状態の車両前部の平面図である。図4は、車体フレーム1021が直立状態で左右一対の前輪1003を転舵させた時の車両を車体フレーム1021の上下方向の上方から見た図である。
【0073】
図4に示すように、ハンドルバー1023が回されると、操舵機構1007の操舵力伝達機構1006が動作し、操舵動作が行われる。
例えば、ステアリングシャフト1060が図4の矢印Tの方向に回転すると、タイロッド1067が左後方に移動する。タイロッド1067の左後方への移動に伴って、左ブラケット1317および右ブラケット1327が矢印Tの方向に回転する。左ブラケット1317および右ブラケット1327が矢印Tの方向に回転すると、左前輪1031が左中心軸Y1(図2参照)を中心として回転し、右前輪1032が右中心軸Y2(図2参照)を中心として回転する。
【0074】
〈傾斜動作〉
図5は、車両1001の傾斜動作を説明するための図であり、車両1001を傾斜させた状態の車両前部の正面図である。図5は、車体フレーム1021が左方向に傾斜した状態の車両1001を車両1001の前後方向(車体フレーム1021の前後方向)の前方から見た図である。
リンク機構1005は、車体フレーム1021が直立状態の車両1001を前方から見ると、長方形を成している。リンク機構1005は、車体フレーム1021が左方向に傾斜した状態の車両を前方から見ると、平行四辺形を成している。リンク機構1005の変形と車体フレーム1021の左右方向への傾斜は連動する。リンク機構1005の作動とは、リンク機構1005における傾斜動作を行うための各部材(上クロス部材1051、下クロス部材1052、左サイド部材1053および右サイド部材1054)がそれぞれの支持点を軸として相対回転し、リンク機構1005の形状が変化することを意味している。
本例のリンク機構1005では、例えば、車両1001の直立状態において正面視で略長方形状に配置された上クロス部材1051、下クロス部材1052、左サイド部材1053および右サイド部材1054が、車両1001が傾斜した状態において略平行四辺形に変形している。車体フレーム1021の傾斜に連動して、左前輪1031および右前輪1032も車体フレーム1021の左右方向に傾斜する。
【0075】
例えば、乗員が車両1001を左方に傾斜させると、ヘッドパイプ1211が垂直方向に対して左方に傾斜する。ヘッドパイプ1211が傾斜すると、上クロス部材1051は支持部Cを中心としてヘッドパイプ1211に対して回転し、下クロス部材1052は支持部Fを中心としてヘッドパイプ1211に対して回転する。すると、上クロス部材1051が下クロス部材1052よりも左方に移動し、左サイド部材1053および右サイド部材1054は、ヘッドパイプ1211と平行な状態を保ったまま、垂直方向に対して傾斜する。左サイド部材1053および右サイド部材1054が傾斜する際に、左サイド部材1053および右サイド部材1054は、上クロス部材1051および下クロス部材1052に対して回転する。したがって、車両1001を傾斜させると、左サイド部材1053および右サイド部材1054の傾斜に伴って、左サイド部材1053および右サイド部材1054に支持された左前輪1031および右前輪1032は、それぞれ垂直方向に対してヘッドパイプ1211と平行な状態を保ったまま傾斜する。
【0076】
また、タイロッド1067は、車両1001が傾斜しても上クロス部材1051と下クロス部材1052に対して平行な姿勢を保つ。
【0077】
このように、傾斜動作を行うことで左前輪1031および右前輪1032をそれぞれ傾けるリンク機構1005は、左前輪1031および右前輪1032の上方に配置されている。つまり、リンク機構1005を構成する上クロス部材1051、下クロス部材1052、左サイド部材1053および右サイド部材1054の回転軸は、左前輪1031および右前輪1032より上方に配置されている。
【0078】
〈操舵動作+傾斜動作〉
図6は、車両1001を転舵させかつ傾斜させた状態の車両前部の正面図である。図6では、左側方に操舵し、左方に傾斜した状態を示している。図6は、車体フレーム1021が左方に傾斜した状態で左右一対の前輪1003を転舵させた時の車両1001を車両1001の前後方向(車体フレーム1021の前後方向)の前方から見た図である。図6に示す動作時には、操舵動作により左前輪1031および右前輪1032の向きが変更され、傾斜動作により左前輪1031および右前輪1032が車体フレーム1021とともに傾斜している。この状態では、リンク機構1005の上クロス部材1051、下クロス部材1052、左サイド部材1053および右サイド部材1054が平行四辺形に変形し、タイロッド1067が左右何れかの操舵した方向(図6では左方)かつ後方に移動する。
【0079】
〈緩衝器の構造〉
図7は、図1の車両1001の右側方から見た左緩衝器1033の側面図である。図7は、左緩衝器1033に支持される左前輪1031の回転軸線方向から見た左緩衝器1033の側面図である。なお、図7では、左緩衝器1033を図示している。右緩衝器1034は、図示を省略する。ただし、本実施形態において、右前輪1032および右緩衝器1034は、左前輪1031および左緩衝器1033の左右対称の形状を備えている。そのため、図7の符号に右前輪1032および右緩衝器1034の符号を追記した。以下、図7を参照して右前輪1032および右緩衝器1034の各部も説明する。
【0080】
図7に示すように、左緩衝器1033は、左下部1033a(左アウター要素)および左上部1033b(左インナー要素)を有する。左緩衝器1033は、左サイド部材支持部1053Aを有する。左下部1033aおよび左上部1033bは、前後に並列して連結された左後テレスコピック要素1331および左前テレスコピック要素1332により構成されている。左緩衝器1033は、左後テレスコピック要素1331、左前テレスコピック要素1332、左サイド部材支持部1053Aおよび左ブラケット1317(車体支持部、インナー連結部)を含む。左後テレスコピック要素1331は、左中心軸Y1方向に伸縮する伸縮構造を有する。左後テレスコピック要素1331には、内部にスプリング等の弾性部材(図示略)およびオイル等の緩衝部材(図示略)が設けられている。左後テレスコピック要素1331は、左前輪1031が路面から受ける荷重による振動や衝撃を吸収するダンパー機能を有する。左前テレスコピック要素1332は、左前輪1031に対して左車輪軸1314の回転軸線方向で左後テレスコピック要素1331と同じ側に配置される。左後テレスコピック要素1331と左前テレスコピック要素1332は、左前輪1031の右方で車両1001の直立状態で前後方向に並んで配置される。左前テレスコピック要素1332は、左後テレスコピック要素1331の前方に配置されている。左前テレスコピック要素1332は、左中心軸Y1方向に伸縮する伸縮構造を有する。左後テレスコピック要素1331の伸縮方向と左前テレスコピック要素1332の伸縮方向は、左前輪1031の回転軸線方向から見て平行である。左後テレスコピック要素1331の上部および左前テレスコピック要素1332の上部は、左ブラケット1317によって連結されている。左前テレスコピック要素1332の下端部は、左後テレスコピック要素1331の下端部近傍に連結固定されている。左前輪1031の左車輪軸1314は、左後テレスコピック要素1331の下端部に設けられている左車輪軸支持部1333(車輪支持部)に支持される。左前輪1031は、車両の前後方向に並列に配置された左後テレスコピック要素1331および左前テレスコピック要素1332の2本のテレスコピック要素によって左ブラケット1317に支持されている。そのため、左下部1033aは、左上部1033bに対してテレスコピック要素の伸縮方向に平行な軸線回りに相対回転しない。
【0081】
左ブラケット1317は、車体フレーム1021が直立状態の車両1001を上方から見て、車体カバー1022のフロントカバー1221の下方に位置する。
【0082】
左前テレスコピック要素1332は、伸縮方向において、左後テレスコピック要素1331よりも短い。左前テレスコピック要素1332の下端部より下方には、左車輪軸1314を支持する左車輪軸支持部1333が配置されている。左前テレスコピック要素1332の下方に、左車輪軸1314を支持する左車輪軸支持部1333が配置されている。左中心軸Y1は、左後アウター部材1331a(左後アウター部)と左前アウター部材1332a(左前アウター部)の間に位置する。左車輪軸支持部1333は、左後テレスコピック要素1331に設けられている。左車輪軸支持部1333は、左後アウター部材1331aに設けられている。なお、左後テレスコピック要素1331と左前テレスコピック要素1332を左中心軸Y1回りに反転して、車両1001の前後方向の位置を入れ替えることが可能である。
【0083】
左後テレスコピック要素1331は、左後インナー部材1331b(左後インナー部)と、左後アウター部材1331aとを有している。左後インナー部材1331bは、左後テレスコピック要素1331の上部を構成する。左後アウター部材1331aは、左後テレスコピック要素1331の下部を構成する。左後インナー部材1331bは、その下部が左後アウター部材1331aに相対移動可能に挿入されている。左前テレスコピック要素1332は、左前インナー部材1332b(左前インナー部)と、左前アウター部材1332aとを有している。左前インナー部材1332bは、左前テレスコピック要素1332の上部を構成する。左前アウター部材1332aは、左前テレスコピック要素1332の下部を構成する。左前インナー部材1332bは、その下部が左前アウター部材1332aに相対移動可能に挿入されている。左後テレスコピック要素1331は、左後アウター部材1331aに左後インナー部材1331bが挿入されている部分の長さが左後挿入長I1とされている。左前テレスコピック要素1332は、左前アウター部材1332aに左前インナー部材1332bが挿入されている部分の長さが左前挿入長I2とされている。最大に伸びた状態において、左後テレスコピック要素1331の左後挿入長I1は、左前テレスコピック要素1332の左前挿入長I2よりも長い。
【0084】
左後テレスコピック要素1331は、左前輪1031から振動や衝撃が作用した際に、左後インナー部材1331bに対して左後アウター部材1331aが伸縮方向へ相対移動する。左前テレスコピック要素1332は、左前輪1031から振動や衝撃が作用した際に、左前インナー部材1332bに対して左前アウター部材1332aが伸縮方向へ相対移動する。
【0085】
左後アウター部材1331aは、左後アウター本体部1331c(左後アウター部)と、左後上支持部1331dと、左後下支持部1331eと、キャリパ支持部1331fと、左車輪軸支持部1333を含む。左前アウター部材1332a(左前アウター部)は、左前アウター本体部1332cと、左前上支持部1332dと、左前下支持部1332eと、を含む。左後アウター本体部1331cは、左後インナー部材1331bを伸縮方向に挿入可能である。左前アウター本体部1332cは、左前インナー部材1332bを伸縮方向に挿入可能である。左後上支持部1331dと左後下支持部1331eは、左後アウター本体部1331cの前方に左後テレスコピック要素1331の伸縮方向に並んで配置される。左前上支持部1332dと左前下支持部1332eは、左前アウター本体部1332cの後方に左前テレスコピック要素1332の伸縮方向に並んで配置される。キャリパ支持部1331fは、左後アウター本体部1331cの後方に配置される。左車輪軸支持部1333は、左後アウター本体部1331cの左後テレスコピック要素1331の伸縮方向の下部に設けられる。
【0086】
左後インナー部材1331bと左前インナー部材1332bは、連結される。左後インナー部材1331bと左前インナー部材1332bは、左ブラケット1317で連結される。左後インナー部材1331bの上端部と左前インナー部材1332bの上端部は、左ブラケット1317で連結される。左後アウター部材1331aと左前アウター部材1332aは、複数の連結部で連結される。左後アウター部材1331aと左前アウター部材1332aは、左上連結部1351(アウター連結部)と左下連結部1352(アウター連結部)で連結される。左上連結部1351と左下連結部1352は、左前テレスコピック要素1332の伸縮方向に並んで配置される。左上連結部1351は、左前テレスコピック要素1332の伸縮方向の中間部に設けられる。左下連結部1352は、左前テレスコピック要素1332の伸縮方向の下端部に設けられる。左車輪軸支持部1333は、左前テレスコピック要素1332の伸縮方向で、左下連結部1352より下方に配置される。左上連結部1351は、左後上支持部1331dと、左前上支持部1332dと、左上連結部材1351aを含む。左上連結部材1351aは、左後上支持部1331dと左前上支持部1332dとを連結する。左下連結部1352は、左後下支持部1331eと、左前下支持部1332eと、左下連結部材1352aを含む。左下連結部材1352aは、左後下支持部1331eと左前下支持部1332eとを連結する。
【0087】
左前アウター部材1332aは、左前テレスコピック要素1332の伸縮方向において左後アウター部材1331aより短い。左前インナー部材1332bは、左前テレスコピック要素1332の伸縮方向において左後インナー部材1331bより短い。
【0088】
図7を参照して右前輪1032および右緩衝器1034の各部も説明する。右緩衝器1034は、右下部1034a(右アウター要素)および右上部1034b(右インナー要素)を有する。右緩衝器1034は、右サイド部材支持部1054Aを有する。右下部1034aおよび右上部1034bは、前後に並列して連結された右後テレスコピック要素1341および右前テレスコピック要素1342により構成されている。右緩衝器1034は、右後テレスコピック要素1341、右前テレスコピック要素1342、右サイド部材支持部1054Aおよび右ブラケット1327(車体支持部、インナー連結部)を含む。右後テレスコピック要素1341は、右中心軸Y2方向に伸縮する伸縮構造を有する。右後テレスコピック要素1341には、内部にスプリング等の弾性部材(図示略)およびオイル等の緩衝部材(図示略)が設けられている。右後テレスコピック要素1341は、右前輪1032が路面から受ける荷重による振動や衝撃を吸収するダンパー機能を有する。右前テレスコピック要素1342は、右前輪1032に対して右車輪軸1324の回転軸線方向で右後テレスコピック要素1341と同じ側に配置される。右後テレスコピック要素1341と右前テレスコピック要素1342は、右前輪1032の右方で車両1001の直立状態で前後方向に並んで配置される。右前テレスコピック要素1342は、右後テレスコピック要素1341の前方に配置されている。右前テレスコピック要素1342は、右中心軸Y2方向に伸縮する伸縮構造を有する。右後テレスコピック要素1341の伸縮方向と右前テレスコピック要素1342の伸縮方向は、右前輪1032の回転軸線方向から見て平行である。右後テレスコピック要素1341の上部および右前テレスコピック要素1342の上部は、右ブラケット1327によって連結されている。右前テレスコピック要素1342の下端部は、右後テレスコピック要素1341の下端部近傍に連結固定されている。右前輪1032の右車輪軸1324は、右後テレスコピック要素1341の下端部に設けられている右車輪軸支持部1343(車輪支持部)に支持される。右前輪1032は、車両の前後方向に並列に配置された右後テレスコピック要素1341および右前テレスコピック要素1342の2本のテレスコピック要素によって右ブラケット1327に支持されている。そのため、右下部1034aは、右上部1034bに対してテレスコピック要素の伸縮方向に平行な軸線回りに相対回転しない。
【0089】
右ブラケット1327は、車体フレーム1021が直立状態の車両1001を上方から見て、車体カバー1022のフロントカバー1221の下方に位置する。
【0090】
右前テレスコピック要素1342は、伸縮方向において、右後テレスコピック要素1341よりも短い。右前テレスコピック要素1342の下端部より下方には、右車輪軸1324を支持する右車輪軸支持部1343が配置されている。右前テレスコピック要素1342の下方に、右車輪軸1324を支持する右車輪軸支持部1343が配置されている。右中心軸Y2は、右後アウター部材1341a(右後アウター部)と右前アウター部材1342a(右前アウター部)の間に位置する。右車輪軸支持部1343は、右後テレスコピック要素1341に設けられている。右車輪軸支持部1343は、右後アウター部材1341aに設けられている。なお、右後テレスコピック要素1341と右前テレスコピック要素1342を右中心軸Y2回りに反転して、車両1001の前後方向の位置を入れ替えることが可能である。
【0091】
右後テレスコピック要素1341は、右後インナー部材1341b(右後インナー部)と、右後アウター部材1341aとを有している。右後インナー部材1341bは、右後テレスコピック要素1341の上部を構成する。右後アウター部材1341aは、右後テレスコピック要素1341の下部を構成する。右後インナー部材1341bは、その下部が右後アウター部材1341aに相対移動可能に挿入されている。右前テレスコピック要素1342は、右前インナー部材1342b(右前インナー部)と、右前アウター部材1342aとを有している。右前インナー部材1342bは、右前テレスコピック要素1342の上部を構成する。右前アウター部材1342aは、右前テレスコピック要素1342の下部を構成する。右前インナー部材1342bは、その下部が右前アウター部材1342aに相対移動可能に挿入されている。右後テレスコピック要素1341は、右後アウター部材1341aに右後インナー部材1341bが挿入されている部分の長さが右後挿入長I3とされている。右前テレスコピック要素1342は、右前アウター部材1342aに右前インナー部材1342bが挿入されている部分の長さが右前挿入長I4とされている。最大に伸びた状態において、右後テレスコピック要素1341の右後挿入長I3は、右前テレスコピック要素1342の右前挿入長I4よりも長い。
【0092】
右後テレスコピック要素1341は、右前輪1032から振動や衝撃が作用した際に、右後インナー部材1341bに対して右後アウター部材1341aが伸縮方向へ相対移動する。右前テレスコピック要素1342は、右前輪1032から振動や衝撃が作用した際に、右前インナー部材1342bに対して右前アウター部材1342aが伸縮方向へ相対移動する。
【0093】
右後アウター部材1341aは、右後アウター本体部1341c(右後アウター部)と、右後上支持部1341dと、右後下支持部1341eと、キャリパ支持部1341fと、右車輪軸支持部1343を含む。右前アウター部材1342a(右前アウター部)は、右前アウター本体部1342cと、右前上支持部1342dと、右前下支持部1342eと、を含む。右後アウター本体部1341cは、右後インナー部材1341bを伸縮方向に挿入可能である。右前アウター本体部1342cは、右前インナー部材1342bを伸縮方向に挿入可能である。右後上支持部1341dと右後下支持部1341eは、右後アウター本体部1341cの前方に右後テレスコピック要素1341の伸縮方向に並んで配置される。右前上支持部1342dと右前下支持部1342eは、右前アウター本体部1342cの後方に右前テレスコピック要素1342の伸縮方向に並んで配置される。キャリパ支持部1341fは、右後アウター本体部1341cの後方に配置される。右車輪軸支持部1343は、右後アウター本体部1341cの右後テレスコピック要素1341の伸縮方向の下部に設けられる。
【0094】
右後インナー部材1341bと右前インナー部材1342bは、連結される。右後インナー部材1341bと右前インナー部材1342bは、右ブラケット1327で連結される。右後インナー部材1341bの上端部と右前インナー部材1342bの上端部は、右ブラケット1327で連結される。右後アウター部材1341aと右前アウター部材1342aは、複数の連結部で連結される。右後アウター部材1341aと右前アウター部材1342aは、右上連結部1353(アウター連結部)と右下連結部1354(アウター連結部)で連結される。右上連結部1353と右下連結部1354は、右前テレスコピック要素1342の伸縮方向に並んで配置される。右上連結部1353は、右前テレスコピック要素1342の伸縮方向の中間部に設けられる。右下連結部1354は、右前テレスコピック要素1342の伸縮方向の下端部に設けられる。右車輪軸支持部1343は、右前テレスコピック要素1342の伸縮方向で、右下連結部1354より下方に配置される。右上連結部1353は、右後上支持部1341dと、右前上支持部1342dと、右上連結部材1353aを含む。右上連結部材1353aは、右後上支持部1341dと右前上支持部1342dとを連結する。右下連結部1354は、右後下支持部1341eと、右前下支持部1342eと、右下連結部材1354aを含む。右下連結部材1354aは、右後下支持部1341eと右前下支持部1342eとを連結する。
【0095】
右前アウター部材1342aは、右前テレスコピック要素1342の伸縮方向において右後アウター部材1341aより短い。右前インナー部材1342bは、右前テレスコピック要素1342の伸縮方向において右後インナー部材1341bより短い。
【0096】
〈ディスクブレーキ〉
図7に示すように、左前輪1031は、左前ブレーキ1071を備えている。左前ブレーキ1071は、左前輪1031の制動力を発生させる。左前ブレーキ1071は、左ブレーキディスク1711および左キャリパ1712を有する。左ブレーキディスク1711は、左車輪軸1314を中心とした環状に形成されている。左ブレーキディスク1711は、左前輪1031に固定されている。左キャリパ1712は、左緩衝器1033に設けられている。左キャリパ1712は、左緩衝器1033の左後テレスコピック要素1331の下部に固定されている。左キャリパ1712は、キャリパ支持部1331fに固定される。左キャリパ1712は、左緩衝器1033の左後テレスコピック要素1331の下部の後方に配置されている。左ブレーキホース1714の一端部は、左キャリパ1712に接続されている。左キャリパ1712は、左ブレーキホース1714を介して液圧を受ける。左キャリパ1712は、受けた液圧によりブレーキパッドを移動させる。ブレーキパッドは、左ブレーキディスク1711の右側面および左側面に接触する。左キャリパ1712は、左ブレーキディスク1711をブレーキパッドで挟持して、左ブレーキディスク1711の回転を制動する。
【0097】
図7を参照して右前輪1032の各部も説明する。右前輪1032は、右前ブレーキ1072を備えている。右前ブレーキ1072は、右前輪1032の制動力を発生させる。右前ブレーキ1072は、右ブレーキディスク1721および右キャリパ1722を有する。右ブレーキディスク1721は、右車輪軸1324を中心とした環状に形成されている。右ブレーキディスク1721は、右前輪1032に固定されている。右キャリパ1722は、右緩衝器1034に設けられている。右キャリパ1722は、右緩衝器1034の右後テレスコピック要素1341の下部に固定されている。右キャリパ1722は、キャリパ支持部1341fに固定される。右キャリパ1722は、右緩衝器1034の右後テレスコピック要素1341の下部の後方に配置されている。右ブレーキホース1724の一端部は、右キャリパ1722に接続されている。右キャリパ1722は、右ブレーキホース1724を介して液圧を受ける。右キャリパ1722は、受けた液圧によりブレーキパッドを移動させる。ブレーキパッドは、右ブレーキディスク1721の左側面および右側面に接触する。右キャリパ1722は、右ブレーキディスク1721をブレーキパッドで挟持して、右ブレーキディスク1721の回転を制動する。
【0098】
〈車輪速センサ〉
図7に示すように、左車輪速センサ1081(車体部品の一例)は、左センサディスク1811および左検出部1812を有する。左センサディスク1811は、左車輪軸1314を中心とした環状に形成されている。左センサディスク1811は、左ブレーキディスク1711よりも小径に形成されている。左センサディスク1811は、左ブレーキディスク1711の内周に配置されている。左センサディスク1811は、左前輪1031に固定されている。左検出部1812は、光学的または磁気的に左センサディスク1811の回転を検出する。左検出部1812は、左センサディスク1811の回転速度に応じて変化する電気信号を発生する。または、左検出部1812は、左センサディスク1811の回転速度に応じて電気信号を変化させる。左検出部1812は、左センサコード1813を備えている。左検出部1812で発生した電気信号または変化した電気信号は、左センサコード1813で制御装置に伝達される。左センサコード1813を介して伝達される左検出部1812の電気信号に基づいて、左前輪1031の車輪の回転速度が算出される。
【0099】
左車輪軸支持部1333には、左センサステー1814が固定されている。左センサステー1814には、左車輪速センサ1081の左検出部1812が支持されている。左センサステー1814は、車両1001の走行時に左緩衝器1033が振動しても、左車輪速センサ1081の左検出部1812の検出精度が十分に維持できる程度の剛性を有している。
【0100】
左緩衝器1033は、車幅方向中央から左前輪1031を見て、左後テレスコピック要素1331、左前テレスコピック要素1332、左ブラケット1317および左後テレスコピック要素1331の下端部と左前テレスコピック要素1332の下端部を結ぶ仮想線1335で区画される左領域1336を有している。左車輪速センサ1081の左検出部1812は、左領域1336の外方に配置されている。左検出部1812は、左領域1336よりも下方に配置されている。左検出部1812は、左領域1336よりも前方に配置されている。左検出部1812は、左後テレスコピック要素1331の下端部より上方に配置されている。
【0101】
左車輪軸支持部1333に支持される左前輪1031の回転軸線方向から見て、左後テレスコピック要素1331と左前テレスコピック要素1332で段部1361を形成する。左後アウター部材1331a(左後アウター部)と左前アウター部材1332a(左前アウター部)で段部1361を形成する。左センサステー1814は、段部1361に配置される。
【0102】
左車輪軸支持部1333に支持される左前輪1031の回転軸線方向から見て、左車輪速センサ1081の左検出部1812は、左キャリパ1712より前方に配置されている。左車輪速センサ1081の左検出部1812は、左車輪軸1314よりも前方に配置されている。左検出部1812は、左前テレスコピック要素1332の伸縮方向において、少なくとも一部が左前テレスコピック要素1332の下方に配置されている。
【0103】
〈車輪速センサ〉
図7を参照して右前輪1032の各部も説明する。右車輪速センサ1082(車体部品の一例)は、右センサディスク1821および右検出部1822を有する。右センサディスク1821は、右車輪軸1324を中心とした環状に形成されている。右センサディスク1821は、右ブレーキディスク1721よりも小径に形成されている。右センサディスク1821は、右ブレーキディスク1721の内周に配置されている。右センサディスク1821は、右前輪1032に固定されている。右検出部1822は、光学的または磁気的に右センサディスク1821の回転を検出する。右検出部1822は、右センサディスク1821の回転速度に応じて変化する電気信号を発生する。または、右検出部1822は、右センサディスク1821の回転速度に応じて電気信号を変化させる。右検出部1822は、右センサコード1823を備えている。右検出部1822で発生した電気信号または変化した電気信号は、右センサコード1823で制御装置に伝達される。右センサコード1823を介して伝達される右検出部1822の電気信号に基づいて、右前輪1032の車輪の回転速度が算出される。
【0104】
右車輪軸支持部1343には、右センサステー1824が固定されている。右センサステー1824には、右車輪速センサ1082の右検出部1822が支持されている。右センサステー1824は、車両1001の走行時に右緩衝器1034が振動しても、右車輪速センサ1082の右検出部1822の検出精度が十分に維持できる程度の剛性を有している。
【0105】
右緩衝器1034は、車幅方向中央から右前輪1032を見て、右後テレスコピック要素1341、右前テレスコピック要素1342、右ブラケット1327および右後テレスコピック要素1341の下端部と右前テレスコピック要素1342の下端部を結ぶ仮想線1345で区画される右領域1346を有している。右車輪速センサ1082の右検出部1822は、右領域1346の外方に配置されている。右検出部1822は、右領域1346よりも下方に配置されている。右検出部1822は、右領域1346よりも前方に配置されている。右検出部1822は、右後テレスコピック要素1341の下端部より上方に配置されている。
【0106】
右車輪軸支持部1343に支持される右前輪1032の回転軸線方向から見て、右後テレスコピック要素1341と右前テレスコピック要素1342で段部1362を形成する。右後アウター部材1341a(右後アウター部)と右前アウター部材1342a(右前アウター部)で段部1362を形成する。右センサステー1824は、段部1362に配置される。
【0107】
右車輪軸支持部1343に支持される右前輪1032の回転軸線方向から見て、右車輪速センサ1082の右検出部1822は、右キャリパ1722より前方に配置されている。右車輪速センサ1082の右検出部1822は、右車輪軸1324よりも前方に配置されている。右検出部1822は、右前テレスコピック要素1342の伸縮方向において、少なくとも一部が右前テレスコピック要素1342の下方に配置されている。
【0108】
<第1実施形態の詳細説明>
図8Aおよび図8Bは、車体フレームの上下方向の上方から見た車両と車輪の前後方向の位置を示す説明図である。以降の説明においては、便宜的に、図8A図8Bをまとめて図8と呼ぶことがある。図8Aに示した(a)は、車体フレームが直立状態の車両を示している。このとき、右前輪、左前輪および中央後輪の各ブレーキは作動していない。図8A図8Bに示した(b)は、車体フレームを車両の左右方向の左方に傾斜させて旋回している車両を示している。このとき、右前輪および左前輪の各ブレーキは作動していないが、中央後輪のブレーキは作動している。図8Bに示した(c)は、車体フレームを車両の左右方向の左方に傾斜させて旋回している車両を示している。このとき、右前輪および左前輪の各ブレーキは作動している。なお、図8の(a)と(b)との比較が容易なように、また、図8の(b)と(c)との比較が容易なように、(b)は図8A図8Bの両方に図示した。
【0109】
図8の(a)は、車体フレームが直立状態の車両を示している。このとき、右前輪、左前輪および中央後輪の各ブレーキは作動していない。車両1001は、ブレーキシステム1701を備えている。車両1001は、車体フレーム1021を備えている。車両1001は、車体フレーム1021が直立状態の車両1001を前方から見て、車体フレーム1021の左右方向に並ぶ右前輪1032および左前輪1031を備えている。車両1001は、右前輪1032および左前輪1031より車体フレーム1021の前後方向の後方に設けられ、車体フレーム1021が直立状態の車両1001を前方から見て、右前輪1032および左前輪1031の間に配置される中央後輪1004を備えている。右緩衝器1034は、その下部に右前輪1032を支持する。右緩衝器1034は、その上部に対する右前輪1032の車体フレーム1021の上下方向における変位を緩衝する。左緩衝器1033は、その下部に左前輪1031を支持する。左緩衝器1033は、その上部に対する左前輪1031の車体フレーム1021の上下方向における変位を緩衝する。リンク機構1005は、車体フレーム1021が直立状態の車両を前方から見て、車体フレーム1021の上下方向において右前輪1032および左前輪1031より上方に設けられる。リンク機構1005は、右緩衝器1034の上部および左緩衝器1033の上部を回転可能に支持する。リンク機構1005は、少なくてもその一部が車体フレーム1021の前後方向の前方かつ車体フレーム1021の上下方向の上方に延びる回転軸線回りに回転可能に車体フレーム1021に支持される。ブレーキシステム1701は、右前輪1032に設けられ、右前輪1032の制動力を発生させる右前ブレーキ1072を含む。ブレーキシステム1701は、左前輪1031に設けられ、左前輪1031の制動力を発生させる左前ブレーキ1071を含む。ブレーキシステム1701は、中央後輪1004に設けられ、中央後輪1004の制動力を発生させる中央後ブレーキ1073を含む。ブレーキシステム1701は、車両1001を運転する運転者が手で操作可能な入力部材1752を含む。入力部材1752は、レバー形状である。ブレーキシステム1701は、ブレーキ作動装置1754を含む。ブレーキ作動装置1754は、右前ブレーキ1072、左前ブレーキ1071および中央後ブレーキ1073を作動させる。入力部材1752は、初期状態から最大操作状態の間で運転者が操作可能に構成されている。入力部材1752の操作により、右前ブレーキ1072、左前ブレーキ1071および中央後ブレーキ1073は作動する(図8の(a)参照)。
【0110】
ブレーキ作動装置1754は、少なくとも車体フレーム1021を左方に傾斜させて旋回しているとき、入力部材1752の操作により以下の態様で作動する。入力部材1752の初期状態からの操作量が第1操作量のときに、中央後ブレーキ1073を作動開始させる。中央後ブレーキ1073は、制動力FCBWを発生する(図8の(b)参照)。入力部材1752の初期状態からの操作量が第1操作量より大きい第2操作量のときに、旋回半径の大きい外輪となる右前輪1032に設けられた右前ブレーキ1072を作動開始させる。右前ブレーキ1072は、制動力FRFWを発生する。入力部材1752の初期状態からの操作量が第2操作量と同じかそれより大きい第3操作量のときに、旋回半径の小さい内輪となる左前輪1031に設けられた左前ブレーキ1071を作動開始させる。左前ブレーキ1071は、制動力FLFWを発生する。なお、この時、中央後輪1004の制動力FCBWは増加している(図8の(c)参照)。外輪となる右前輪1032と内輪となる左前輪1031には、中央後輪1004が制動力を発生した後、同時に制動力が発生する態様に構成されていても良い。その場合、第2操作量と第3操作量は同じになる。初期状態から最大操作状態の間の操作量を3等分して低制動力領域LBFR、中制動力領域MBFRおよび高制動力領域HBFRの3つの領域と定義する。第1操作量、第2操作量および第3操作量がいずれも低制動力領域に含まれる態様で構成される。入力部材1752の操作により外輪となる右前輪1032および内輪となる左前輪1031の両方の制動力の合計であるFRFW+FLFWは、中央後輪1004の制動力FCBWより小さい(図8の(c)参照)。この状態とした後、ブレーキ作動装置1754は、入力部材の操作により外輪となる右前輪1032および内輪となる左前輪1031の両方の制動力の合計であるFRFW+FLFWを中央後輪1004の制動力FCBWより大きくする態様に構成されていても良い。また、外輪である右前輪1032の制動力FRFWは、内輪である左前輪1031の制動力FLFWより小さくなる態様に構成されていても良い。内輪および外輪で発生する制動力の差を小さくなるように設定しても良い。この場合、制動力の差は、大きい制動力の50%以下が好ましい。なお、図8の(a)、(b)および(c)では、車体フレーム1021を左方に傾斜させて左旋回している例を示している。右方に傾斜させて右旋回させている場合は、内輪および外輪となる前輪が入れ換わる。上記説明の右と左、内と外を読み替えれば良い。他は基本的に同じである。
【0111】
低制動力領域LBFRは、初期状態から最大操作状態の間の操作量を3等分したうちの、右前ブレーキ1072の制動力、左前ブレーキ1071の制動力および中央後ブレーキ1073の制動力を合計した制動力が小さい領域である。高制動力領域HBFRは、初期状態から最大操作状態の間の操作量を3等分したうちの、右前ブレーキ1072の制動力、左前ブレーキ1071の制動力および中央後ブレーキ1073の制動力を合計した制動力が大きい領域である。中制動力領域MBFRは、初期状態から最大操作状態の間の操作量を3等分したうちの、右前ブレーキ1072の制動力、左前ブレーキ1071の制動力および中央後ブレーキ1073の制動力を合計した制動力が、低制動力領域LBFRよりも大きく、かつ、高制動力領域HBFRよりも小さい領域であって、右前ブレーキ1072の制動力、左前ブレーキ1071の制動力および中央後ブレーキ1073の制動力を合計した制動力が中程度の領域である。低制動力領域LBFRは、入力部材1752の操作量の初期状態を含む領域である。高制動力領域HBFRは、入力部材1752の操作量の最大操作状態を含む領域である。低制動力領域LBFRは、中制動力領域MBFRより入力部材1752の操作量が小さい領域である。中制動力領域MBFRは、高制動力領域HBFRより入力部材1752の操作量が小さい領域である。
【0112】
車両1001は、ブレーキシステム1701を含む。ブレーキシステム1701は、入力部材1752を含む。ブレーキシステム1701は、ブレーキ作動装置1754を含むブレーキ作動装置1754は、後マスターシリンダー1753lを含む。入力部材1752が運転者によって操作されると、後マスターシリンダー1753lは作動して液圧を発生する。発生した液圧は、ブレーキホースを介して液圧制御ユニット1755に伝えられる。液圧制御ユニット1755は、伝えられた液圧に応じた液圧を中央後キャリパ1732に後ブレーキホース1734を介して伝える。これにより、中央後ブレーキ1073は作動する。液圧制御ユニット1755は、伝えられた液圧に応じた液圧を右キャリパ1722に右ブレーキホース1724を介して伝える。これにより、右前ブレーキ1072は作動する。液圧制御ユニット1755は、伝えられた液圧に応じた液圧を左キャリパ1712に左ブレーキホース1714を介して伝える。これにより、左前ブレーキ1071は作動する。
【0113】
入力部材1752は、レバーである。入力部材1752は、初期状態と最大操作状態との間で揺動するレバーである。初期状態は、運転者の操作が行われていない状態である。例えば、操作量をレバーの位置とする。最大操作状態は、運転者の操作により最も揺動した状態である。第1操作量のときの状態は、第2操作量のときの状態より初期状態に近い。第2操作量のときの状態は、第3操作量のときの状態より初期状態に近い。第2操作量のときの状態は、第3操作量のときの状態より最大操作状態から遠い。なお、入力部材の形態は、レバーに限らず、ペダルでも、ボタンでも、置換可能である。
また、操作量をレバーに入力される圧力としてもよい。入力部材1752の初期状態において、操作量である入力される圧力は0Nである。最大操作状態は以下の態様に定義される。運転者が手で操作する入力部材1752の場合、操作量である入力される圧力は最大でも200Nである。また、運転者が足で操作する入力部材1752の場合、操作量である入力される圧力は最大でも350Nである。これは、実験的、経験的に求められた値である。運転者が手で操作するタイプの入力部材1752の場合、操作量である入力される圧力が200Nのときを最大操作状態とする。運転者が足で操作するタイプの入力部材1752の場合、操作量である入力される圧力が350Nのときを最大操作状態とする。第1操作量のときの圧力は、第2操作量のときの圧力より小さい。第2操作量のときの圧力は、第3操作量のときの圧力より小さい。第3操作量のときの圧力は、第2操作量のときの圧力より大きい。第2操作量のときの圧力は、第1操作量のときの圧力より大きい。なお、入力部材1752の形態は、レバーに限らず、ペダルでも、ボタンでも、置換可能である。
【0114】
ブレーキ作動装置1754は、少なくとも車体フレーム1021を車両の左右方向に傾斜させて旋回しているとき、入力部材1752の操作により、旋回半径の大きい外輪となる前輪に設けられた右前ブレーキ1072および左前ブレーキ1071の一方の作動開始時期と旋回半径の小さい内輪となる前輪に設けられた右前ブレーキ1072および左前ブレーキ1071の他方の作動開始時期は、同時である。
【0115】
車両1001において、右緩衝器1034は、車体フレーム1021の上下方向に延びる伸縮方向に伸縮可能な右テレスコピック要素1341(1342)を含み、右前輪1032を右テレスコピック要素1341(1342)の伸縮方向に変位させる。左緩衝器1033は、車体フレーム1021の上下方向に延びる伸縮方向に伸縮可能な左テレスコピック要素1331(1332)を含み、左前輪1031を左テレスコピック要素1331(1332)の伸縮方向に変位させる。
【0116】
リンク機構1005は、車体フレーム1021が直立状態の車両を前方から見て、車体フレーム1021の上下方向において、右前輪1032および左前輪1031より上方に設けられる。右前輪1032および左前輪1031は、図6に示したように、車体フレーム1021が車両の左右方向に傾斜している状態で、かつ、リンク機構1005に対して右緩衝器1034および左緩衝器1033が最も回転した状態の車両を前方から見て、中央後輪1004と重なる態様に設けられる。なお、車体フレーム1021の上下方向が鉛直方向と一致している状態で、かつ、リンク機構1005に対して右緩衝器1034および左緩衝器1033が最も回転した状態の車両を前方から見ても、右前輪1032および左前輪1031は、中央後輪1004と重なる態様に設けられる。
【0117】
車両1001は、第2ブレーキシステムを備えている。第2ブレーキシステムは、入力部材1752とは異なる第2入力部材1751を備えている。第2ブレーキシステムは、右前ブレーキ1072および左前ブレーキ1071を作動させる第2ブレーキ作動装置を備えている。第2ブレーキ作動装置は、第2入力部材1751によって作動される前マスターシリンダー1753rを含む。前マスターシリンダー1753rは、前ブレーキホース1704を介してブレーキ作動装置1754の一部である液圧制御ユニット1755に接続される。第2ブレーキ作動装置は、ブレーキ作動装置1754の一部である液圧制御ユニット1755を含む。第2ブレーキ作動装置は、少なくとも車体フレーム1021を車両の左右方向に傾斜させて旋回しているとき、第2入力部材1751の操作により、旋回半径の大きい外輪となる前輪に設けられた右前ブレーキ1072および左前ブレーキ1071の一方および旋回半径の小さい内輪となる前輪に設けられた右前ブレーキ1072および左前ブレーキ1071の他方を同時に作動開始させる。より具体的には、第2入力部材1751が操作されると、前マスターシリンダー1753rが作動して、液圧を発生する。前マスターシリンダー1753rで発生した液圧は、前ブレーキホース1704を介してブレーキ作動装置1754の一部である液圧制御ユニット1755に伝えられる。液圧制御ユニット1755は、伝えられた液圧に応じた液圧を右キャリパ1722に右ブレーキホース1724を介して伝える。これにより、右前ブレーキ1072は作動する。液圧制御ユニット1755は、伝えられた液圧に応じた液圧を左キャリパ1712に左ブレーキホース1714を介して伝える。これにより、左前ブレーキ1071は作動する。第2ブレーキ作動装置は、ブレーキ作動装置1754の少なくとも一部を利用して右前ブレーキ1072および左前ブレーキ1071を作動させる。ブレーキ作動装置1754は、第2ブレーキ作動装置の少なくとも一部を利用して右前ブレーキ1072および左前ブレーキ1071を作動させる。
【0118】
図9は、図8のブレーキシステム1701の実施形態の一例を示している。図9は、図8のブレーキシステム1701の詳細を示している。液圧制御ユニット1755は、電子制御ユニット1755aとその電子制御ユニット1755aによって作動される液圧ユニットを含む。右検出部1822は、右センサコード1823を介して電子制御ユニット1755aに接続されている。左検出部1812は、左センサコード1813を介して電子制御ユニット1755aに接続されている。後検出部1832は、後センサディスク1831の回転を検出するためのセンサである。後検出部1832の機能は、右検出部1822および左検出部1812の機能と同じである。後検出部1832は、後センサコード1833を介して電子制御ユニット1755aに接続されている。電子制御ユニット1755aは、後検出部1832、右検出部1822および左検出部1812から電気信号を受け取る。そして、電子制御ユニット1755aは、その電気信号から各車輪の回転速度を検出する。なお、電子制御ユニット1755aは、前記以外のセンサ(不図示)から車両速度、車両の姿勢状態などに関する電気信号も受け取る。ブレーキ作動装置1754は、後マスターシリンダー1753lを含む。入力部材1752が運転者によって操作されると、後マスターシリンダー1753lは作動して液圧を発生する。発生した液圧は、ブレーキホースを介して液圧制御ユニット1755に伝えられる。液圧制御ユニット1755の電子制御ユニット1755aは、伝えられた液圧および各車輪の回転速度などに応じた液圧を発生するために液圧ユニット1755bを制御する。液圧ユニット1755bで発生した液圧は、中央後キャリパ1732に後ブレーキホース1734を介して伝えられる。これにより、中央後ブレーキ1073は作動する。液圧ユニット1755bで発生した液圧は、右キャリパ1722に右ブレーキホース1724を介して伝えられる。これにより、右前ブレーキ1072は作動する。液圧ユニット1755bで発生した液圧は、左キャリパ1712に左ブレーキホース1714を介して伝えられる。これにより、左前ブレーキ1071は作動する。図9の第1実施形態は、右前ブレーキ1072用のアクチュエータと、左前ブレーキ1071用のアクチュエータと、中央後ブレーキ1073用のアクチュエータと、を含む。それぞれ右前ブレーキ1072、左前ブレーキ1071および中央後ブレーキ1073の液圧を独立して制御可能である。
【0119】
図10は、図8のブレーキシステム1701の実施形態の一例を示している。図10は、図8のブレーキシステム1701の詳細を示している。図10は、図9のブレーキシステム1701の変形例を示している。図10の第2実施形態は、基本的に図9の実施形態と同じである。図10の第2実施形態は、右前ブレーキ1072および左前ブレーキ1071用のアクチュエータと、中央後ブレーキ1073用のアクチュエータと、を含む。右前ブレーキ1072および左前ブレーキ1071用のアクチュエータによる液圧は、分岐されて右ブレーキホース1724および左ブレーキホース1714を介して、右前ブレーキ1072および左前ブレーキ1071に伝えられる。左前ブレーキ1071および中央後ブレーキ1073の液圧は、互いに独立して制御可能である。しかしながら、本実施形態では、それぞれ右前ブレーキ1072および左前ブレーキ1071の液圧は同じにされる。
【0120】
図11は、図8のブレーキシステム1701の実施形態の一例を示している。図11は、図8のブレーキシステム1701の詳細を示している。図11は、図9図10のブレーキシステム1701の変形例を示している。図11の第3実施形態は、基本的に図10の実施形態と同じである。図11の第3実施形態は、右前ブレーキ1072および左前ブレーキ1071用のアクチュエータと、中央後ブレーキ1073用のアクチュエータと、を含む。右前ブレーキ1072および左前ブレーキ1071用のアクチュエータによる液圧は、ブレーキホース部分で分岐されて右ブレーキホース1724および左ブレーキホース1714を介して、右前ブレーキ1072および左前ブレーキ1071に伝えられる。左前ブレーキ1071および中央後ブレーキ1073の液圧は、互いに独立して制御可能である。しかしながら、本実施形態では、それぞれ右前ブレーキ1072および左前ブレーキ1071の液圧は同じにされる。さらに、第3実施形態では、ブレーキ作動装置1754は、ブレーキを作動させる液圧のタイミングを変更するための機械的な機構を含む。第3実施形態では、ブレーキ作動装置1754は、後マスターシリンダー1753l、操作力発生機構1753a、操作力伝達機構1753b、タイミング変更機構1753c、前マスターシリンダー1753rを含む。操作力発生機構1753aは、入力部材1752が運転者によって操作されると、その操作に連動して、作動する。その操作力発生機構1753aの動作は、操作力伝達機構1753bを介して、タイミング変更機構1753cに伝達される。タイミング変更機構1753cは、操作力伝達機構1753bから受けた動作に対して時間的な遅れを伴って前マスターシリンダー1753rを作動する。前マスターシリンダー1753rの後の作動は、前記実施形態と同じである。時間的な遅れは、液圧制御ユニット1755ではなく、操作力発生機構1753a、操作力伝達機構1753b、タイミング変更機構1753cによって発生する。
【0121】
図12は、図8のブレーキシステム1701の実施形態の一例を示している。図12は、図8のブレーキシステム1701の詳細を示している。図12は、図9図10図11のブレーキシステム1701の変形例を示している。図12の第4実施形態は、基本的に図11の実施形態と同じである。図12の第4実施形態は、右前ブレーキ1072および左前ブレーキ1071用のアクチュエータを含む。右前ブレーキ1072および左前ブレーキ1071用のアクチュエータによる液圧は、ブレーキホース部分で分岐されて右ブレーキホース1724および左ブレーキホース1714を介して、右前ブレーキ1072および左前ブレーキ1071に伝えられる。左前ブレーキ1071の液圧は制御可能である。しかしながら、本実施形態では、それぞれ右前ブレーキ1072および左前ブレーキ1071の液圧は同じにされる。さらに、第4実施形態では、ブレーキ作動装置1754は、ブレーキを作動させる液圧のタイミングを変更するための機械的な機構を含む。第4実施形態では、ブレーキ作動装置1754は、後マスターシリンダー1753l、操作力発生機構1753a、操作力伝達機構1753b、タイミング変更機構1753c、前マスターシリンダー1753rを含む。操作力発生機構1753aは、入力部材1752が運転者によって操作されると、その操作に連動して、作動する。その操作力発生機構1753aの動作は、操作力伝達機構1753bを介して、タイミング変更機構1753cに伝達される。タイミング変更機構1753cは、操作力伝達機構1753bから受けた動作に対して時間的な遅れを伴って前マスターシリンダー1753rを作動する。後の作動は、前記実施形態と同じである。時間的な遅れは、液圧制御ユニット1755ではなく、操作力発生機構1753a、操作力伝達機構1753b、タイミング変更機構1753cによって発生する。
【0122】
図13は、図8のブレーキシステム1701の実施形態の一例を示している。図13は、図8のブレーキシステム1701の詳細を示している。図13は、図9図10図11図12のブレーキシステム1701の変形例を示している。図13の第5実施形態は、基本的に図11の実施形態と同じである。図13の第5実施形態は、中央後ブレーキ1073用のアクチュエータを含む。中央後ブレーキ1073用のアクチュエータによる液圧は、後ブレーキホース1734を介して、中央後ブレーキ1073に伝えられる。中央後ブレーキ1073の液圧は制御可能である。さらに、第3実施形態では、ブレーキ作動装置1754は、ブレーキを作動させる液圧のタイミングを変更するための機械的な機構を含む。第3実施形態では、ブレーキ作動装置1754は、後マスターシリンダー1753l、操作力発生機構1753a、操作力伝達機構1753b、タイミング変更機構1753c、前マスターシリンダー1753rを含む。操作力発生機構1753aは、入力部材1752が運転者によって操作されると、その操作に連動して、作動する。その操作力発生機構1753aの動作は、操作力伝達機構1753bを介して、タイミング変更機構1753cに伝達される。タイミング変更機構1753cは、操作力伝達機構1753bから受けた動作に対して時間的な遅れを伴って前マスターシリンダー1753rを作動する。前マスターシリンダー1753rの後の作動は、前記実施形態と同じである。時間的な遅れは、液圧制御ユニット1755ではなく、操作力発生機構1753a、操作力伝達機構1753b、タイミング変更機構1753cによって発生する。
【0123】
図14は、図11図12図13のブレーキシステム1701の実施形態の一例を示している。図14は、図11図12図13のブレーキシステム1701の詳細を示している。図14は、図11図12図13のブレーキシステム1701の変形例を示している。図14の第6実施形態は、操作力発生機構1753a、操作力伝達機構1753b、タイミング変更機構1753cの一例を示している。入力部材1752は、回転軸63aの回りを揺動可能なレバーである。入力部材1752が操作されると、入力部材1752に設けられた第1作動部63bが後マスターシリンダー1753lを押す。これにより、後マスターシリンダー1753lは作動して、液圧を発生する。その発生した液圧は、後ブレーキホース1734に伝えられる。入力部材1752が操作されると、入力部材1752に設けられた第2作動部63cが第3作動部70を作動させて、ワイヤで構成されている操作力伝達機構1753bを作動させる。操作力伝達機構1753bの動作は、スプリング57に伝えられる。このとき、スプリングの弾性的な復元力より大きな力が伝達されると、スプリング57は変形し、接続部材54が作動する。接続部材54が作動すると、第4作動部53c、第5作動部53bが作動し、前マスターシリンダー1753rを押す。これにより、前マスターシリンダー1753rは作動して、液圧を発生する。その発生した液圧は、前ブレーキホース1704に伝えられる。このような構成により、入力部材1752を操作しても、すぐに前マスターシリンダー1753rは作動しない。その後入力部材1752をさらに操作することで、時間的な遅れを伴って前マスターシリンダー1753rは作動する。なお、この機械的な機構は、その大きさなどを変更することで、液圧が発生するタイミングだけでなく、発生する液圧の大きさも適宜変更可能である。
【0124】
第2入力部材1751は、回転軸53a回りに揺動可能なレバー部材である。第2入力部材1751が操作されると、第6作動部53d、第5作動部53bが作動し、前マスターシリンダー1753rを押す。これにより、前マスターシリンダー1753rは作動して、液圧を発生する。その発生した液圧は、前ブレーキホース1704に伝えられる。操作力発生機構1753aは、第1作動部63b、第2作動部63c、第3作動部70を含む。操作力伝達機構1753bは、ワイヤを含む。タイミング変更機構1753cは、スプリング57、接続部材54、第4作動部53c、第5作動部53b、第6作動部53dを含む。ブレーキ作動装置1754は、操作力発生機構1753a、操作力伝達機構1753b、タイミング変更機構1753c、後マスターシリンダー1753l、前マスターシリンダー1753r、前ブレーキホース1704、後ブレーキホース1734を含む。第2ブレーキ作動装置は、第6作動部53d、第5作動部53b、前マスターシリンダー1753r、前ブレーキホース1704を含む。
【0125】
図1に示すように、液圧制御ユニット1755は、リンク機構1005の車両1001の前後方向の前方に配置されている。液圧制御ユニット1755は、ブラケットを介して車体フレーム1021に支持されている。なお、図1に示すように、液圧制御ユニット1755は、運転者が足を置くフートボードの下方の車体フレーム1021の間に配置しても良い。また、液圧制御ユニット1755は、運転者が着座するシート1024の下方に配置しても良い。液圧制御ユニット1755は、車体カバー1022の内方で車体フレーム1021の間に配置しても良い。操舵機構1007のハンドルバー1023は、車体フレーム1021の左右方向に延びる棒状に形成されている。ハンドルバー1023は、その右端部に運転者が把持する右グリップ1007rを備えている。ハンドルバー1023は、その左端部に運転者が把持する左グリップ1007lを備えている。入力部材1752および第2入力部材1751は、運転者が右グリップ1007rおよび左グリップ1007lを把持した状態で操作できる。
【0126】
図15は、図9のブレーキシステム1701の実施形態の一例を示している。図15は、図9のブレーキシステム1701の詳細を示している。図15は、液圧ユニット1755bの一例を示している。液圧ユニット1755bは、液圧を発生するモーター1755b1を備えている。液圧ユニット1755bは、液体を蓄積するバッファチャンバ1755b2を備えている。液圧ユニット1755bは、ソレノイドバルブ1755b3を備えている。液圧ユニット1755bは、絞り1755b4を備えている。モーター1755b1は、電子制御ユニット1755aによって制御される。ソレノイドバルブ1755b3は、電子制御ユニット1755aによって制御される。電子制御ユニット1755aは、モーター1755b1およびソレノイドバルブ1755b3を制御して、左前ブレーキ1071、右前ブレーキ1072および中央後ブレーキ1073を作動させる。
【0127】
図16は、図8のブレーキシステム1701の実施形態の一例を示している。図16は、ブレーキシステム1701の変形例を示している。図16の第7実施形態は、図14の第6実施形態を採用している。図15の第7実施形態において、ブレーキ作動装置1754は、液圧制御ユニット1755を備えていない。前ブレーキホース1704に伝えられた液圧は、分岐されて右ブレーキホース1724および左ブレーキホース1714を介して、右前ブレーキ1072および左前ブレーキ1071に伝えられる。後ブレーキホース1734に伝えられた液圧は、中央後ブレーキ1073に伝えられる。ブレーキ作動のタイミングと液圧の調整は、操作力発生機構1753a、操作力伝達機構1753b、タイミング変更機構1753cによって調整される。
【0128】
図17は、図16のブレーキシステム1701の作動状況を示している。図17は、入力部材1752の操作量と車輪に発生する制動力の関係を示している。横軸は、入力部材1752に入力される力(N)である。縦軸は、車輪に発生する制動力(N)である。図17の5010bwは、中央後輪1004に発生する制動力を示している。図17の5010fwaは、内輪となる前輪と外輪となる前輪の両方の制動力を合計した制動力を示している。図17の5010fwaは、右前輪1032と左前輪1031の両方の制動力を合計した制動力を示している。図17の5010fwbは、内輪となる前輪と外輪となる前輪の両方の制動力を合計した制動力の別の一例を示している。図17の5010fwbは、右前輪1032と左前輪1031の両方の制動力を合計した制動力の別の一例を示している。なお、制動力が非常に小さい場合、運転者は制動力を認識できない場合がある。そのため、本実施形態においては、制動力が30Nより小さい場合はブレーキが作動していない状態とみなす。言い換えれば、制動力が30Nを超えるとブレーキが作動しているとみなす。また、制動力が30Nのとき、ブレーキが作動開始したとみなす。ただし、車両の重量などにより、運転者が認識できる制動力の最低レベルは異なる。本発明の制動力の最低レベルは、運転者が認識できるレベルである。本発明においては、最低レベルの制動力より小さい場合は、ブレーキが作動していないとみなす。本発明においては、最低レベルの制動力のとき、ブレーキが作動開始したとみなす。本発明においては、最低レベルの制動力より大きい場合は、ブレーキが作動しているとみなす。
【0129】
入力部材1752は、初期状態から最大操作状態の間で運転者が操作可能である。ブレーキ作動装置1754は、運転者の操作によって入力部材1752に入力された操作量である入力される圧力に応じて作動する。なお、入力部材1752の初期状態において、操作量である入力される圧力は0Nである。本実施形態および本発明において、最大操作状態は以下の態様に定義される。運転者が手で操作する入力部材1752の場合、操作量である入力される圧力は最大でも200Nである。また、運転者が足で操作する入力部材1752の場合、操作量である入力される圧力は最大でも350Nである。これは、実験的、経験的に求められた値である。そこで、本実施形態および本発明において、運転者が手で操作するタイプの入力部材1752の場合、操作量である入力される圧力が200Nのときを最大操作状態とする。運転者が足で操作するタイプの入力部材1752の場合、操作量である入力される圧力が350Nのときを最大操作状態とする。
【0130】
ブレーキ作動装置1754は、少なくとも車体フレーム1021を車両の左右方向に傾斜させて旋回しているとき、以下の態様で作動する。入力部材1752の初期状態からの操作量が第1操作量5011のときに、中央後ブレーキ1073を作動開始させる。なお、本実施例では、第1操作量が0Nではないが、0Nであっても良い。入力部材1752の初期状態からの操作量が第1操作量5011より大きい第2操作量5012a(5012b)のときに、旋回半径の大きい外輪となる前輪に設けられた右前ブレーキ1072および左前ブレーキ1071の一方を作動開始させる。入力部材1752の初期状態からの操作量が第2操作量5012a(5012b)と同じかそれより大きい第3操作量5013a(5013b)のときに、旋回半径の小さい内輪となる前輪に設けられた右前ブレーキ1072および左前ブレーキ1071の他方を作動開始させる。本実施形態では、第2操作量5012aと第3操作量5013aは同じである。本実施形態の別の一例では、第2操作量5012bと第3操作量5013bは同じである。言い換えれば、外輪となる前輪と内輪となる前輪は、中央後輪が制動力を発生した後、同時に制動力を発生する。なお、本発明において、初期状態から最大操作状態の間の操作量を3等分して低制動力領域LBFR、中制動力領域MBFRおよび高制動力領域HBFRの3つの領域と定義する。第1操作量5011、第2操作量5012a(5012b)および第3操作量5013a(5013b)がいずれも低制動力領域LBFRに含まれる態様で構成される。これにより、少なくとも車体フレーム1021を車両の左右方向に傾斜させて旋回しているとき、低制動力領域LBFRにおいて、中央後輪1004のみが制動力を発生している状態と中央後輪1004、右前輪1032および左前輪1031の全てが制動力を発生している状態を備えることができる。
【0131】
ブレーキ作動装置1754は、少なくとも車体フレーム1021を車両の左右方向に傾斜させて旋回しているとき、以下の態様で構成されていても良い。ブレーキ作動装置1754は、中央後ブレーキ1073のみを作動させる第1操作量5011から第2操作量5012a(5012b)の間の操作量の変化量が低制動力領域LBFRの半分より小さくなる態様で構成されていても良い。これにより、中央後輪1004のみが制動力を発生している状態を短くできる。
【0132】
ブレーキ作動装置1754は、少なくとも車体フレーム1021を車両の左右方向に傾斜させて旋回しているとき、以下の態様で構成されていても良い。ブレーキ作動装置1754は、中央後ブレーキ1073のみを作動させる第1操作量5011と第2操作量5012a(5012b)の間の中央後輪1004の最大制動力が初期状態と最大操作状態の間の中央後輪1004の最大制動力の1/3より小さくなる態様で構成されていても良い。これにより、中央後輪1004の制動力を小さくできる。なお、図17の5030は、初期状態と最大操作状態の間の中央後輪1004の最大制動力の1/3を示している。
【0133】
ブレーキ作動装置1754は、少なくとも車体フレーム1021を車両の左右方向に傾斜させて旋回しているとき、以下の態様で構成されていても良い。ブレーキ作動装置1754は、入力部材1752の初期状態からの操作量が第3操作量5013a(5013b)と同じかそれより大きい第4操作量5014a(5014b)のときに、外輪となる前輪の制動力および内輪となる前輪の制動力の合計の制動力が、中央後輪の制動力の半分の制動力より大きくなる態様で構成されていても良い。これにより、中央後輪1004の制動力と2つの前輪1003の制動力の合計の制動力において、2つの前輪1003の制動力の比率を高めることができる。なお、図17の5020は、中央後輪1004が発生する制動力の半分を示している。
【0134】
ブレーキ作動装置1754は、少なくとも車体フレーム1021を車両の左右方向に傾斜させて旋回しているとき、以下の態様で構成されていても良い。ブレーキ作動装置1754は、入力部材1752の初期状態からの操作量が第4操作量5014bと同じかそれより大きい第5操作量5015bのときに、外輪となる前輪の制動力および内輪となる前輪の制動力の合計の制動力が、中央後輪1004の制動力より大きくなる態様で構成されていても良い。これにより、中央後輪1004の制動力と2つの前輪1003の制動力の合計の制動力において、2つの前輪1003の制動力の比率をより高めることができる。
【0135】
前記実施形態では、車体フレーム1021を車両の左右方向に傾斜させて旋回しているときの制御または作動を説明した。本発明は、車体フレーム1021を車両の左右方向に傾斜させて旋回しているとき以外の場面、例えば、車体フレーム1021が直立状態で走行中に、上記態様で作動することを排除しない。少なくとも車体フレーム1021を車両の左右方向に傾斜させて旋回しているとき、前記の態様で作動する形態を全て含む。
【0136】
前記実施形態において、ブレーキシステム1701は、右前ブレーキ1072、左前ブレーキ1071、中央後ブレーキ1073、単一の入力部材1752および入力部材1752の操作によってこれら3つのブレーキを作動させるブレーキ作動装置1754を備える。そのため、ブレーキシステム1701は、傾斜可能な車体フレーム1021、右前輪1032、左前輪1031および中央後輪1004を備えた車両1001に採用可能である。
【0137】
傾斜可能な車体フレーム、2つの前輪および1つの後輪を備えた車両1001は、車体フレーム1021を車両の左右方向に傾斜させて旋回しているとき、以下の特性を有する。
【0138】
車体フレーム1021を右方向に傾斜させて旋回しているとき、右前輪1032が旋回半径の小さい内輪となり、左前輪1031が旋回半径の大きい外輪となる。車体フレーム1021を左方向に傾斜させて旋回しているとき、左前輪1031が旋回半径の小さい内輪となり、右前輪1032が旋回半径の大きい外輪となる。車体フレーム1021を車両の左右方向に傾斜させて旋回するため、旋回中の内輪となる前輪にかかる荷重は、外輪となる前輪にかかる荷重より、基本的に大きくなる傾向を有する。しかも、傾斜可能な車体フレームと2つの前輪および1つの中央後輪を備えた車両は、傾斜可能な車体フレームと2つの前輪および2つの後輪を備えた車両よりも、前輪および後輪にかかる荷重の大きさに対する前輪にかかる荷重の大きさの割合が大きくなる傾向を有する。そのため、旋回中の内輪となる前輪にかかる荷重は、外輪となる前輪にかかる荷重より、基本的により大きくなる傾向を有する。
【0139】
本願発明者は、この傾斜可能な車体フレーム、2つの前輪および1つの後輪を有する車両の特性を考慮し、ブレーキシステムの研究を行った。そして、少なくとも車体フレームを車両の左右方向に傾斜させて旋回しているときに車両のスピードを調整するライダーの入力部材の操作と右前ブレーキ、左前ブレーキおよび中央後ブレーキの作動の関係を研究した。その結果、先ず、旋回中は内輪および外輪に制動力を発生させるより、中央後輪に小さい制動力を発生させる機会が多いことを見出した。特に、一つの中央後輪1004を備えた車両は、左後輪および右後輪を備えた車両より小さい制動力を発生させる機会が多いことを見出した。さらにスピードの調整が必要な場合は、中央後輪の制動力に加えて内輪および外輪に制動力を発生させる機会が多いことを見出した。しかも、中央後輪のみに制動力をかけるより、中央後輪、内輪および外輪の3つの車輪全てに制動力を発生させる機会が多いことを見出した。そこで、本願発明者は、このライダーの入力部材の操作と右前ブレーキ、左前ブレーキおよび中央後ブレーキの作動の関係を考慮したブレーキシステムを考えるに至った。
【0140】
本発明の構成によれば、ブレーキ作動装置1754は、少なくとも車体フレーム1021を車両の左右方向に傾斜させて旋回しているときに、以下の態様で入力部材の操作に応じて中央後ブレーキ1073、右前ブレーキ1072および左前ブレーキ1071を作動させる。ブレーキ作動装置1754は、入力部材1752の初期状態からの操作量が第1操作量のときに、中央後ブレーキ1073を作動開始させる。ブレーキ作動装置1754は、入力部材1752の初期状態からの操作量が第1操作量より大きい第2操作量のときに、右前ブレーキ1072および左前ブレーキ1071のうちの旋回半径の大きい外輪となる前輪に設けられた前ブレーキを作動開始させる。ブレーキ作動装置1754は、入力部材1752の初期状態からの操作量が第2操作量と同じかそれより大きい第3操作量のときに、旋回半径の小さい内輪となる前輪に設けられた前ブレーキを作動開始させる。ブレーキ作動装置1754は、初期状態から最大操作状態の間の操作量を3等分して低制動力領域、中制動力領域および高制動力領域の3つの領域と定義した場合、第1操作量、第2操作量および第3操作量はいずれも低制動力領域に含まれる態様で構成される。これにより、少なくとも車体フレーム1021を車両の左右方向に傾斜させて旋回しているとき、低制動力領域LBFRにおいて、中央後輪1004のみが制動力を発生している状態と中央後輪1004、右前輪1032および左前輪1031の全てが制動力を発生している状態を備えることができる。このため、傾斜可能な車体フレーム、2つの前輪および1つの後輪を備えた車両に採用可能であり、従来採用されている3つのブレーキシステムとは作動が異なる。
【0141】
なお、車両の上下方向は、地面に対して垂直な方向に一致する。車両の左右方向は、地面に対して平行な方向に一致する。上記実施形態で記載された車両は、傾斜可能な車両である。車両が傾斜状態では、車両の上下方向は、地面に対して垂直な方向に一致する。しかしながら、車両が傾斜状態では、車体フレームは地面に対して傾斜する。言い換えると、車体フレームの上下方向は、車両が直立状態において、車両の上下方向と一致する。しかしながら、車両が傾斜状態では、車体フレームの上下方向は車両の上下方向に対して傾斜する。また、車体フレームの左右方向は、車両が直立状態において、車両の左右方向と一致する。しかしながら、車両が傾斜状態では、車体フレームの左右方向は車両の左右方向に対して傾斜する。
【0142】
本発明に係る車両は、傾斜可能な車体フレームと2つの前輪を備えた車両である。また、車体フレームを覆う車体カバーを備えていても良い。車体フレームを覆う車体カバーを備えていなくても良い。動力源についても、エンジンに限らず電動モータであっても良い。
【0143】
なお、本実施形態において、中央後輪の左右方向の中央は、右前輪と左前輪の左右方向の中央と一致している。しかしながら、本発明では、中央後輪の左右方向の中央は、右前輪と左前輪の左右方向の中央と一致していなくても良い。本発明では、車体フレームが直立状態の車両を上方から見て、中央後輪が、右前輪と左前輪の左右方向の中央線上に存在する形態が好ましい。
【0144】
なお、本実施形態において、入力部材は、運転者が手で操作可能なレバーである。しかしながら、本発明では、運転者が足で操作するペダルであっても良い。また、本発明では、運転者が操作する押し込み式のボタン、回転式のグリップであっても良い。入力部材は、運転者が手または足で触れていない状態である初期状態と運転者が手または足で最も操作した状態である最大操作状態との間で操作可能である。入力部材は、初期状態と最大操作状態との間で運転者が操作可能である。入力部材の操作量は、入力部材の初期状態からの位置であっても良い。この場合、入力部材の位置を検出するセンサを設けることで、その操作量を検出できる。入力部材の操作量とは、入力部材の初期状態からの圧力の変化量であっても良い。この場合、マスターシリンダーが発生する液圧を検出するセンサを設けることで、その操作量を検出できる。また、入力部材に直接作用する圧力を検出するセンサを設けることで、その操作量を検出できる。入力部材の操作量は、運転者の操作に応じて変化する物理量である。なお、操作量は必ずしもセンサで検出する必要はなく、機械的に操作量に連動して作動する機構であっても良い。
【0145】
なお、本実施形態において、ブレーキは、液圧を利用したディスクブレーキを採用している。しかしながら、本発明では、ブレーキの種類はこれに限らず、ドラムブレーキ、電磁ブレーキ、湿式多板ブレーキなど種々の種類を採用してもよい。
【0146】
なお、本実施形態において、ブレーキ作動装置は、液圧を電子制御するタイプを採用している。しかしながら、本発明では、液圧を電子制御するタイプに限らず、液圧を機械的な機構で制御しても良い。また、本発明では、ブレーキホースに換えてブレーキワイヤーで接続し、液圧を使わず機械的な機構で制御しても良い。このとき、電気的な制御装置を用いることを要求しない。
【0147】
なお、本発明を実施するに当たり、電子制御するタイプまたは機械的な機構で作動するタイプのブレーキ作動装置およびブレーキシステムを採用することが考えられる。そのとき、電子制御するタイプの装置では、同時に制御するように構成しても、現実的にはわずかな時間差が生じることがある。また、機械的な機構で作動するタイプの装置では、同時に作動するように構成しても、機械部品の誤差や操作力の伝達経路の長さの差などによりわずかな時間的差が生じることがある。本発明において、このようなわずかな時間差が生じる場合も同時と解釈する。本発明でいう同時は、辞書に定義されている同時より範囲が広い。同様の効果が得られる範囲で時間差があっても同時と解釈する。
【0148】
なお、本発明では、リンク機構は、上クロス部材と下クロス部材の他にさらにクロス部材を備えていても良い。上クロス部材と下クロス部材は、相対的な上下関係で命名しているに過ぎない。上クロス部材は、リンク機構における最上位のクロス部材を示していない。上クロス部材は、それより下方の別のクロス部材より上方にあるクロス部材を意味する。下クロス部材は、リンク機構における最下位のクロス部材を示していない。下クロス部材は、それより上方の別のクロス部材より下方にあるクロス部材を意味する。また、クロス部材は、右クロス部材と左クロス部材の2つの部品で構成されていても良い。このように、上クロス部材および下クロス部材は、リンク機能を有する範囲で、複数のクロス部材で構成しても良い。さらに、上クロス部材と下クロス部材の間に他のクロス部材を設けても良い。リンク機構は、上クロス部材および下クロス部材を含んでいれば良い。
【0149】
本明細書において、「平行」は、±40°の範囲で傾斜するが、部材としては交わらない2つの直線も含む。本発明において、「方向」および「部材」等に対して「沿う」は、±40°の範囲で傾斜する場合も含む。本発明において、「方向」に対して「延びる」は、±40°の範囲で傾斜する場合も含む。
【0150】
ここに用いられた用語及び表現は、説明のために用いられたものであって限定的に解釈するために用いられたものではない。ここに示され且つ述べられた特徴事項の如何なる均等物をも排除するものではなく、本発明のクレームされた範囲内における各種変形をも許容するものであると認識されなければならない。
【0151】
本発明は、多くの異なった形態で具現化され得るものである。この開示は本発明の原理の実施形態を提供するものと見なされるべきである。それらの実施形態は、本発明をここに記載しかつ/又は図示した好ましい実施形態に限定することを意図するものではないという了解のもとで、多くの図示実施形態がここに記載されている。
【0152】
本発明の図示実施形態を幾つかここに記載した。本発明は、ここに記載した各種の好ましい実施形態に限定されるものではない。本発明は、この開示に基づいて当業者によって認識され得る、均等な要素、修正、削除、組み合わせ(例えば、各種実施形態に跨る特徴の組み合わせ)、改良及び/又は変更を含むあらゆる実施形態をも包含する。クレームの限定事項はそのクレームで用いられた用語に基づいて広く解釈されるべきであり、本明細書あるいは本願のプロセキューション中に記載された実施形態に限定されるべきではない。そのような実施形態は非排他的であると解釈されるべきである。例えば、この開示において、「好ましくは」「良い」という用語は非排他的なものであって、「好ましいがこれに限定されるものではない」「良いがこれに限定されるものではない」ということを意味するものである。
【0153】
本出願は、2013年10月31日に提出された日本国特許出願2013−227458に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【符号の説明】
【0154】
車両1001、前輪1003、中央後輪1004、リンク機構1005、車体フレーム1021、左前輪1031、右前輪1032、左緩衝器1033、右緩衝器1034、後緩衝器1025A、左前ブレーキ1071、右前ブレーキ1072、中央後ブレーキ1073、ブレーキシステム1701、第2入力部材1751、入力部材1752、ブレーキ作動装置1754、液圧制御ユニット1755、左検出部1812、右検出部1822、後検出部1832
【要約】
ブレーキシステム(1701)は、入力部材(1752)の操作により、初めに中央後ブレーキ(1073)を作動開始させ、最後に右前ブレーキ(1072)および左前ブレーキ(1071)のうちの旋回半径の小さい内輪となる前輪に設けられた前ブレーキを作動開始させるブレーキ作動装置(1754)を含む。ブレーキ作動装置(1754)は、中央後ブレーキ(1073)、右前ブレーキ(1072)および左前ブレーキ(1071)を、入力部材(1752)の初期状態から最大操作状態の間の操作量を3等分して低制動力領域、中制動力領域および高制動力領域の3つの領域と定義した場合、低制動力領域で作動開始させる。
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