特許第5793725号(P5793725)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社サンエイの特許一覧 ▶ 株式会社荒木製作所の特許一覧

<>
  • 特許5793725-鉄イオン溶出装置 図000002
  • 特許5793725-鉄イオン溶出装置 図000003
  • 特許5793725-鉄イオン溶出装置 図000004
  • 特許5793725-鉄イオン溶出装置 図000005
  • 特許5793725-鉄イオン溶出装置 図000006
  • 特許5793725-鉄イオン溶出装置 図000007
  • 特許5793725-鉄イオン溶出装置 図000008
  • 特許5793725-鉄イオン溶出装置 図000009
  • 特許5793725-鉄イオン溶出装置 図000010
  • 特許5793725-鉄イオン溶出装置 図000011
  • 特許5793725-鉄イオン溶出装置 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5793725
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】鉄イオン溶出装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/68 20060101AFI20150928BHJP
   B63H 11/02 20060101ALI20150928BHJP
   B63B 35/44 20060101ALI20150928BHJP
   B63B 35/00 20060101ALI20150928BHJP
【FI】
   C02F1/68 530A
   B63H11/02
   B63B35/44 N
   B63B35/00 Z
   C02F1/68 510Z
   C02F1/68 520B
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-249586(P2013-249586)
(22)【出願日】2013年11月14日
(65)【公開番号】特開2015-93271(P2015-93271A)
(43)【公開日】2015年5月18日
【審査請求日】2014年5月21日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501098061
【氏名又は名称】株式会社サンエイ
(73)【特許権者】
【識別番号】391029808
【氏名又は名称】株式会社荒木製作所
(72)【発明者】
【氏名】東 利保
【審査官】 金 公彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−323510(JP,A)
【文献】 特開平11−207390(JP,A)
【文献】 特開2013−183676(JP,A)
【文献】 特開2013−215101(JP,A)
【文献】 特開2009−297622(JP,A)
【文献】 特開2010−172829(JP,A)
【文献】 特開昭63−119896(JP,A)
【文献】 米国特許第7615147(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/66− 1/68
C02F 3/00
Thomson Innovation
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロートの上に設置板を備え池・堀・湖沼・河川・海などの水域の上に設置板上面が水面上に位置するようにして浮くとともに移動も可能とされた浮台と、全体が直方体型をした密閉ボックスであって浮台上に固定された外容器と、浮台に備えた揚水ポンプからの揚水を給水パイプを通じて外容器内の下部中央位置の水噴射パイプから噴射可能とされた給水手段と、軸方向前後に端板を備えて全体が円筒ドラム型をしているとともにドラム周部に多孔板が装着されかつドラム中心軸上には撹拌芯軸と撹拌部材とが設けられて撹拌駆動源により撹拌芯軸が水平軸回りに回転駆動されるようになっていて鉄と該鉄に比べて電位の高い異種のものとがそれぞれ個別的に複数個あるいは圧着一体式に結合されたものとして複数個備えたものとして構成された内容物が内部に入れられて回転駆動されることで内容物の相互衝突や接触を前記給水手段による供給水を取り込みながら繰り返して鉄イオンを溶出可能とする通水式内容器と、前記内容器で溶出した鉄イオンを含む水を外容器を通じて外部である前記水域内に導出して浮台の移動力を発生可能とする排水手段とを備え、前記外容器は、その側板部が開閉可能とされるとともに浮台に対する脱着も可能とされ、前記内容器の多孔板は、開閉可能とされていることを特徴とする鉄イオン溶出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中に鉄イオンを溶出させるようにした鉄イオン溶出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属イオン水の製造装置の一つとして、セメントに酸化鉄と発泡基材とが混入されて連続した空隙を有するように形成された気泡コンクリート製ブロックをそなえ、同ブロックに中空部が形成されるとともに、同中空部が上記ブロックの表面に開口する開口部をそなえていることを特徴とする、海域浄化式漁礁構造物が下記の特許公開公報において提案されている。また、該公報には、中空部に鉄と鉄に比べ電位の高い金属、例えば、グラファイト、活性炭等との混合物を充填し溶出する鉄イオン量を加速的に増加させ得るようにした混合金属充填型漁礁構造物も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−206804
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1による海域浄化式漁礁構造物は、それを海水に浸漬すると、構造物内を海水が自由に出入りし、流入する海水とともに多くの酸素が供給されて空隙内を好気性雰囲気に維持することができ、したがって、海水中に生息する微生物が中空部、空隙の内部および気泡コンクリートの表面に大量に付着繁殖して、生物皮膜層が形成され、そしてこの生物皮膜層が海水中の有機物を分解し、無機化を進行させると同時に、海藻類および微生物の増殖を促進し、その結果生物環境が改善されるという効果がある。また、中空部に鉄を充填して海水に浸漬すると、鉄表面には電位を異にする部分が混存して局部電池を形成し局部電池の陽極部からは腐食電流が流出し、鉄は鉄イオンとなって溶出する海藻類に吸収され海藻の繁殖を促すという効果が発生する。中空部に鉄と鉄に比べて電位の高い金属、例えば、グラファイト、活性炭等との混合物を充填して海水中に浸漬すれば、溶出する鉄イオン量が加速的に増加するため、珪藻、プランクトンの繁殖、海藻類の増殖はさらに向上するという効果が発生する。
このように鉄イオンの溶出により海水等の水域での生物環境ならびに水質が改善されるのであるが、前記特許公報1の漁礁構造物によれば、海域などのごく限定された個所に固定設置される方式であるため、生物環境や水質改善がごく限られた範囲内のものとなり、今一つ広範囲な水質等改善につながらないものであった。
【0005】
本発明は、上記問題を解決しようとするものであり、鉄イオンの溶出が浮いて移動可能な浮台を介して拡散的に行われることで広範囲に鉄イオンの溶出による環境改善効果を拡大させることができるようにした鉄イオン溶出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的達成のため、請求項1に記載の発明は、フロートの上に設置板を備え池・堀・湖沼・河川・海などの水域の上に設置板上面が水面上に位置するようにして浮くとともに移動も可能とされた浮台と、全体が直方体型をした密閉ボックスであって浮台上に固定された外容器と、浮台に備えた揚水ポンプからの揚水を給水パイプを通じて外容器内の下部中央位置の水噴射パイプから噴射可能とされた給水手段と、軸方向前後に端板を備えて全体が円筒ドラム型をしているとともにドラム周部に多孔板が装着されかつドラム中心軸上には撹拌芯軸と撹拌部材とが設けられて撹拌駆動源により撹拌芯軸が水平軸回りに回転駆動されるようになっていて鉄と該鉄に比べて電位の高い異種のものとがそれぞれ個別的に複数個あるいは圧着一体式に結合されたものとして複数個備えたものとして構成された内容物が内部に入れられて回転駆動されることで内容物の相互衝突や接触を前記給水手段による供給水を取り込みながら繰り返して鉄イオンを溶出可能とする通水式内容器と、前記内容器で溶出した鉄イオンを含む水を外容器を通じて外部である前記水域内に導出して浮台の移動力を発生可能とする排水手段とを備え、前記外容器は、その側板部が開閉可能とされるとともに浮台に対する脱着も可能とされ、前記内容器の多孔板は、開閉可能とされていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
上述したように請求項1に記載の発明は、フロートの上に設置板を備え池・堀・湖沼・河川・海などの水域の上に設置板上面が水面上に位置するようにして浮くとともに移動も可能とされた浮台と、全体が直方体型をした密閉ボックスであって浮台上に固定された外容器と、浮台に備えた揚水ポンプからの揚水を給水パイプを通じて外容器内の下部中央位置の水噴射パイプから噴射可能とされた給水手段と、軸方向前後に端板を備えて全体が円筒ドラム型をしているとともにドラム周部に多孔板が装着されかつドラム中心軸上には撹拌芯軸と撹拌部材とが設けられて撹拌駆動源により撹拌芯軸が水平軸回りに回転駆動されるようになっていて鉄と該鉄に比べて電位の高い異種のものとがそれぞれ個別的に複数個あるいは圧着一体式に結合されたものとして複数個備えたものとして構成された内容物が内部に入れられて回転駆動されることで内容物の相互衝突や接触を前記給水手段による供給水を取り込みながら繰り返して鉄イオンを溶出可能とする通水式内容器と、前記内容器で溶出した鉄イオンを含む水を外容器を通じて外部である前記水域内に導出して浮台の移動力を発生可能とする排水手段とを備え、前記外容器は、その側板部が開閉可能とされるとともに浮台に対する脱着も可能とされ、前記内容器の多孔板は、開閉可能とされていることを特徴とするので、鉄イオンの溶出が浮いて移動可能な浮台を介して拡散的に行われることで広範囲に鉄イオンの溶出による環境改善効果を拡大させることができるようにした鉄イオン溶出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】 鉄イオン溶出装置の一例を示す平面図。
図2図1の鉄イオン溶出装置の正面図。
図3図2のIII−III線断面図。
図4】 鉄イオン溶出装置の要部を示す図5のIV−IV線断面図。
図5図4のV−V線断面図。
図6図5のVI−VI線断面図。
図7】 他の実施形態を示す装置縦断面図。
図8】 他の実施形態を示す装置縦断面図。
図9】 他の実施形態を示す縦断面図。
図10】 他の実施形態を示す縦断面図。
図11】 他の実施形態を示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1ないし図6は本発明の一実施形態を示している。この実施形態において1は池や堀(濠)あるいは湖沼や河川、海などの水域で一般的には汚水であり、この水域1上には、少なくとも鉄を含む複数の物質を水中に没した状態下にして鉄イオンを溶出させるようにした鉄イオン溶出装置が水域1上に浮きながら自力で低速移動も可能な状態にして設けられている。2は水面である。
【0010】
この鉄イオン溶出装置は、前記水域1の上に左右一対のフロート4を介して浮上する浮台5を木質製、金属製あるいは樹脂製などとして備える。浮台5の上面である水平な設置板6は、幅が60cmで長さが120cm程度で図1のように前後に長い矩形をしており、その上面の前後にはソーラーパネル7,7がまた前部パネルの後側には蓄電機能もあるバッテリ8が水封埋込式で交換も可能なように内装されている。9は自動制御盤で、バッテリ8からの電源を得て遠隔操作により後述する駆動源(揚水ポンプや攪拌駆動源など)の電気制御(ON/OFFや回転数制御等)を行うものである。
【0011】
11は揚水ポンプで、ポンプモーターを前記駆動源の1つとして備え、浮台5の後寄りの底部に搭載されることで遠隔操作による自動制御盤9によりON/OFFや回転数制御などがなされるようになっている。
13は外容器で、一辺が30cm前後で全体が直方体型をした鉄製の密閉ボックスであって設置板6の中央位置に搭載されるとともに取付具14を介して脱着可能に固定されている。この外容器13内の下部中央位置には、ドーナツ型で底面から水を噴射可能な水噴射パイプ15が固定設置され、このパイプ15には、揚水ポンプ11からの給水パイプ16あるいは連通ホースが脱着可能な状態で接続されている。揚水ポンプ11・給水パイプ16・水噴射パイプ15などは前記水域1の水を外容器13内に供給する給水手段を構成している。
【0012】
18は通水式内容器で、直径が20cm程度で長さ30cm弱の円筒ドラム型をした鉄製の容器であって、外容器13の高さ方向中間位置にそのドラム中心を水平に向けるようにして設けられている。この内容器18は、前後の密閉型端板18aと周穴18bの複数を有するドラム本体18cとを備えたものであるとともに周穴18bに対応する個所には湾曲状した鉄製の多孔板19が脱着可能な状態で張設されている。こうして多孔を有するドラム型の内容器18が形成されている。この内容器18の中心軸上には、中実あるいはパイプ式の鉄製攪拌芯軸20が溶接一体化されるとともに、その芯軸20は端部を外容器13の対向壁に回転自在に支持し、しかも、その芯軸20の一端は減速機付きモーターである攪拌駆動源21が攪拌芯軸20と内容器18とを同じA方向に同時回転するように連結されている。攪拌芯軸20の周りには、軸方向に沿って位相をずらせた形の鉄製バーである攪拌部材22は複数本配備されている。この攪拌部材22は、フラットバーや丸(あるいは角)パイプなどでもよい。
【0013】
24は排水パイプで、その一端が外容器13の上面板に連通状とされ途中は左右に分かれてその左右各端は浮台5の左右に設置した水吹き出し部25,25に接続されている。排水パイプ24・水吹き出し部25,25は排水手段を構成する。水吹き出し部25は、その胴芯を後方に向けてあるが前記自動制御盤9により駆動される角度変更装置26を介して図1の矢印のように左右に操向制御可能にすれば装置をF方向に真直ぐに前進させるように微調整制御したり前進後に旋回Uターン操向に制御したりするなど装置を種々のパターンに則した運転制御ができるようになる。尚、この水吹き出し部25は、図1の右部に仮想線で示すように浮台5の後部中央に設けて角度変更装置26で操向自在にしてもよい。
【0014】
浮台5はフロート4による浮力を得て水域1上に水平に浮いた状態で設置され、バッテリ8にはソーラーパネル7から制御盤を通じて常時蓄電の追加がなされながら蓄電分の利用も可能になっている。前記内容器18内には、図4ないし図6に示すように鉄片である内容物29とコークスである内容物30が多数入れられる。その出し入れの具体的な方法については後述する。バッテリ8からは、揚水ポンプ11と攪拌駆動源21に配電される。揚水ポンプ11からの揚水(汚水)は水噴射パイプ15を通じて噴射され、それら揚水は多孔板19の孔を通じて内容器18内に湧水として流入することで内容物29,30は乱舞するようになり、その状態でさらに攪拌部材22による攪拌作用を受けるため、内容物29,30は互いに衝突したり接触したりを繰返しまた外周である鉄製内容器18とも接触を繰り返すことによりナノ鉄粒子を造りイオン化した鉄イオン(Fe2+)を効果的に溶出するようになる。この溶出作用は内容物29,30の一方が鉄で他方が鉄に比べて電位の高い例えば、コークス、グラファイトあるいは活性炭などの炭であるような相対電位差を有することに基づき効果的に発生する。これら電位差のある異種の内容物29,30は圧着一体式にしてもよい。こうして溶出した鉄イオンは、排水パイプ24を通じて水吹き出し部25から水域1内へと矢印Xのように排出されしかもその排出が浮台5の移動とともに拡散的になされるようになっているので水域1の水質浄化が広い範囲に亘るものとなる。
【0015】
尚、攪拌部材22は、内容物29,30の咬み込みを防止するように内容器18の内周面に対し5cmないし8cm前後の周間隔をおいて回転する関係にしてある。
また、内容物29,30を入れるには、例えば、図7に示すように、外容器13の側板部32を開閉可能にするとともに内容器18の一部の多孔板19を開閉可能にしておくことで可能であり、使用済の内容物29,30を交換するのにも側板部32と多孔板19とを共に開いた状態にして内容器18を回転させれば内容物29,30を落下させることができ、それら落下物を取り出せば廃棄できまた多孔板19で空いた穴を回転により上回りにもってくることで新規な内容物29,30を投入することができる。あとは多孔板19と側板部32を密閉しておけば交換は完了する。33は把手である。外容器13は下部のヒンジ34と止着具35とによって開閉するようにしてあるが、上下共に止着具35により開閉するようにしてもよい。また、多孔板19は、図8に示すように、フランジ36と止着具37による接合方式で開閉自在にしてもよく、この場合、同図右に示すように一方をヒンジ38で支持させる方式にしてもよい。
【0016】
前記浮台5は、広い水域1を操向制御しながら運転するのでなく、図1および図2に示すように、直線往復動式軌道あるいは湾曲往復動式軌道、または長円など周回式軌道のように一定の定置式軌道(ワイヤやレールなど)40に浮台5側のローラー式ガイド41を添わせて運転するようにすれば制御方式を含めた装置全体がシステム的に簡素化する。浮台5は、巻取りと繰出しの可能なワイヤなどの進退駆動式作動部材に連結することで往復運動可能にしてもよい。
【0017】
図6に示すように、エアー供給パイプ43を通じてエアーを吹き込んで内容物29,30の攪拌・接触がより効果的に行われ鉄イオンの溶出がより効率的になされるようにしてもよい。
また、図9に示すように、内容器18を固定式にし攪拌部材22のみを攪拌手段として回転させるようにしてもよい。
図10に示すように、攪拌部材22を、回転する内容器18の内周に突設した掻き揚げ突片としてもよい。この突片に代えて同図左側に示すように内容器18自体を凹凸状にしてその凸部を攪拌部材22とすることもできる。
さらには、図11に示すように、攪拌部材22をバネ鋼製としそれに係合する固定突片44を固定式の内容器18側に設けて内容物29,30を攪拌部材22によってはじき揚げるようにして鉄イオンの溶出をより効果的なものにするようにしてもよい。
【符号の説明】
【0018】
1…水域 2…水面 4…フロート 5…浮台 11…揚水ポンプ 13…外容器 18…内容器 19…多孔板 21…攪拌駆動源 22…攪拌部材 24…排水パイプ 25…水吹き出し部 29,30…内容物。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11