特許第5793739号(P5793739)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5793739金銀花抽出物を含む逆流性食道炎治療または予防用薬学組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5793739
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】金銀花抽出物を含む逆流性食道炎治療または予防用薬学組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/216 20060101AFI20150928BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20150928BHJP
   A61K 36/355 20060101ALI20150928BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20150928BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20150928BHJP
   A23L 1/30 20060101ALI20150928BHJP
   C07C 69/732 20060101ALN20150928BHJP
【FI】
   A61K31/216
   A61P1/04
   A61K36/355
   A61K45/00
   A61P43/00 121
   A61P43/00 113
   A61P43/00 111
   A23L1/30 B
   !C07C69/732
【請求項の数】3
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-539780(P2013-539780)
(86)(22)【出願日】2011年11月24日
(65)【公表番号】特表2014-507374(P2014-507374A)
(43)【公表日】2014年3月27日
(86)【国際出願番号】KR2011009027
(87)【国際公開番号】WO2012070890
(87)【国際公開日】20120531
【審査請求日】2013年5月15日
(31)【優先権主張番号】10-2010-0117984
(32)【優先日】2010年11月25日
(33)【優先権主張国】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513120619
【氏名又は名称】グリーン クロス ヘルス サイエンス カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GREEN CROSS HEALTH SCIENCE CO.,LTD.
(73)【特許権者】
【識別番号】506379781
【氏名又は名称】グリーン・クロス・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】GREEN CROSS CORP.
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】ユ、ヨン−ヒョ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジョム ヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ソン オク
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジュ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】パク、ソン ギュ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、ミン ジョン
【審査官】 長岡 真
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−077117(JP,A)
【文献】 特開2007−197386(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/071296(WO,A1)
【文献】 D. Tang et al.,J. Sep. Sci.,2008年,vol.31,p.3519-3526
【文献】 S-K. Ku et al.,World J. Gastroenterol,2009年,vol.15, No.38,p.4799-4805
【文献】 J. J. Heidelbaugh et al.,America Family Physician,2003年,vol.68, No.7,p.1311-1318
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/216
A23L 1/30
A61K 36/355
A61K 45/00
A61P 1/04
A61P 43/00
C07C 69/732
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3,5−ジ−O−カフェオイルキナ酸(化学式1)及び、4,5−ジ−O−カフェオイルキナ酸(化学式2)の化合物が、金銀花のメタノール、エタノール、ブタノール、またはこれらの50〜100%アルコール水溶液抽出物をエチルアセテートで分画した分画物に有効成分として含有され、該化合物及び該分画物から成る薬学組成物であって、
3,5−ジ−O−カフェオイルキナ酸の該薬学組成物に対する含有量が10%以上で、4,5−ジ−O−カフェオイルキナ酸の該薬学組成物に対する含有量が2%以上である
ことを特徴とする、逆流性食道炎治療または予防用薬学組成物。
【化1】
【化2】
【請求項2】
前記薬学組成物は逆流性食道炎治療剤であるプロトンポンプ抑制剤またはヒスタミン受容体拮抗剤のうちから選択された1種以上の薬物が追加で含まれたことを特徴とする、請求項1に記載の逆流性食道炎治療または予防用薬学組成物。
【請求項3】
3,5−ジ−O−カフェオイルキナ酸(化学式1)及び、4,5−ジ−O−カフェオイルキナ酸(化学式2)の化合物が、金銀花のメタノール、エタノール、ブタノール、またはこれらの50〜100%アルコール水溶液抽出物をエチルアセテートで分画した分画物に有効成分として含有され、該化合物及び該分画物から成る食品組成物であって、
3,5−ジ−O−カフェオイルキナ酸の該薬学組成物に対する含有量が10%以上で、4,5−ジ−O−カフェオイルキナ酸の該薬学組成物に対する含有量が2%以上である
ことを特徴とする、逆流性食道炎改善または予防用健康機能食品組成物。
【化1】
【化2】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆流性食道炎損傷に対する治療効果を有する金銀花分画物またはこれから分離した化合物を有効成分として含有する逆流性食道炎治療または予防用組成物に関し、より詳しくは、逆流性食道炎に優れる治療効果を有しながら細胞毒性を表さない金銀花分画物または3,5−di−O−caffeoylquinic acid、4,5−di−O−caffeoylquinic acidから構成される群から選択される1つ以上の化合物を有効成分として含有する逆流性食道炎治療または予防効果を有する薬学的組成物、健康機能食品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
逆流性食道炎は、胃の内容物(主に、酸とペブシン)が食道に逆流して胸焼けと上腹部痛みなど、多様な臨床症状と粘膜の変化をもたらす疾患であって、酸に露出される時間が長いほど激しい病変を見えて、慢性的な経過を踏む。典型的な逆流性食道炎では、食道の多過ぎた酸とペブシンの露出が主な原因である一方、非糜爛性逆流疾患の場合には酸とペブシンに対する露出程度は正常範囲であるが、食道の感覚が酸とペブシンに異常に過敏になって発生することと知られている。
【0003】
逆流性食道炎の初期治療剤として、過去に酸分泌抑制剤であるヒスタミン受容体拮抗剤(HRA)が使われたが、激しい食道炎の場合には治療効果が満足でなく、再発の頻度が高いので、強い酸分泌抑制作用を有するプロトンポンプ抑制剤(Proton pump inhibitor:PPI)が費用−効果の面で優秀性が立証されて広く使われている。
【0004】
しかしながら、プロトンポンプ抑制剤を使用する場合にも再発率が高く、長期服用しなければならないという問題点がある。実際に、8週位服用すれば逆流性食道炎は治療されるが、薬物服用中断後、50〜80%の患者が1年以内に再発すると報告されている。逆流性食道炎治療のためにプロトンポンプ抑制剤を長期服用する場合には、神経内分泌細胞腫瘍(neuroendocrine cell tumor)を誘発するという報告が続いており、2010年米国FDAではPPI系薬物を1年以上長期間服用したり、高容量で服用する場合、骨折の危険が増加することがあると報告した。したがって、逆流性食道炎の治療効果に優れ、長期服用時にも人体に安全な逆流性食道炎治療剤の開発が切実に求められている実状である。
【0005】
金銀花(Lonicerae Flos)は忍冬科(Caprifoliaceae)に属する忍冬蔓(Lonicera japonica Thunb.)の花であって、漢方や民間では利尿、健胃、関節炎、化膿性皮膚炎、気管支炎に使われている。金銀花の成分には、tannin、inositol、sterol、chlorogenic acid、isochlogenic acidなどが報告されており、flavonoid成分としては、luteolin、apigenin、luteolin−7−O−rhamnoglucoside、quercetinなどが知られている。このような金銀花のflavonoid成分は、抗炎症作用(Lee,S.J.;Arch.Pharm.Res.16,25,1993:非特許文献1)及び抗突然変異作用などが報告された。
【0006】
金銀花に対する研究に、カン オク ヒ(金銀花の薬理作用に関する研究:非特許文献2)は、金銀花のメタノール抽出液が数種のグラム陽性及びグラム陰性菌に坑菌作用があることを報告したし、Leeなどは金銀花のブタノール分画がマウス耳介浮腫及びカラギーニン(carrageenin)誘発足の裏浮腫実験でプレドニソロン(prednisolone)よりは弱いが、容量依存的に足の裏浮腫を改善させることを報告した(S.J.Lee,;Phytotherapy research.12,445−447,1998:非特許文献3)。また、TaeなどはLonicera japonica flowerの水抽出物がLPS(Lipopolysaccharide)に誘導されたラット肝敗血症(rat liver sepsis)でNFκB p65の活性抑制とIκBαの分解(degradation)抑制を通じて抗炎症効果を表すことを報告した(Tae,J,Han、;Clin Chim Acta.330(1−2),165−171,2003:非特許文献4)。
【0007】
最近、Kuなどは金銀花水抽出物がラットの逆流性食道炎モデルで食道粘膜の損傷を保護する効果を確認したし(Ku,S.K.;World J Gastroenterol.15(38):4799−4805、2009:非特許文献5)、本発明者らは大韓民国特許登録第10−0878436号(特許文献1)で“金銀花抽出物を含む消化性潰瘍治療または予防用薬学組成物”という内容として金銀花抽出物が胃炎・胃潰瘍に治療効果があることを確認した。
【0008】
本発明者らは、金銀花抽出物に対する胃炎、胃潰瘍治療剤を開発していた中、金銀花の特定分画物が逆流性食道炎疾患に効果が優れることを確認したし、Kuにより先行研究された金銀花水抽出物より本発明者らが発明した金銀花特定分画物が逆流性食道炎の治療効果がより優れることを確認した。ここに、本発明者らは金銀花分画物またはこれから分離された化合物が逆流性食道炎治療にとても効果が優れるだけでなく、食道粘膜の炎症抑制効果及び抗酸化効果を通じて食道粘膜細胞の保護及び再生作用を発揮することが分かった。このような作用は既存の治療剤(プロトンポンプ抑制剤及びヒスタミン受容体拮抗剤)の問題点である再発率を低め、延いては、逆流性食道炎に対する予防効果を表して、これを有効成分として含有する組成物を逆流性食道炎治療または予防のための医薬品及び健康機能食品に使用できることを明らかにすることによって本発明を完成した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】大韓民国特許登録第10−0878436号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Lee,S.J.;Arch.Pharm.Res.16,25,1993
【非特許文献2】カン オク ヒ(金銀花の薬理作用に関する研究)
【非特許文献3】S.J.Lee,;Phytotherapy research.12,445−447,1998
【非特許文献4】Tae,J,Han、;Clin Chim Acta.330(1−2),165−171,2003
【非特許文献5】Ku,S.K.;World J Gastroenterol.15(38):4799−4805、2009
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、金銀花抽出物、分画物、または以下の<化学式1>乃至<化学式2>の化合物を有効成分として含有する逆流性食道炎治療及び予防用薬学的組成物を提供することにある。
【0012】
【化1】
【化2】
【0013】
本発明の他の目的は、金銀花抽出物、分画物、または上記<化学式1>乃至<化学式2>の化合物を有効成分として含有する逆流性食道炎予防または改善用健康機能食品組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するために、本発明は、抗酸化活性に優れて、急・慢性で誘発された逆流性食道炎を治療する金銀花分画物または上記<化学式1>の3,5−di−O−caffeoylquinic acid(以下、‘3,5−di−CQA’と称する)、上記<化学式2>の4,5−di−O caffeoylquinic acid(以下、‘4,5−di−CQA’と称する)で構成される群から選択される1つ以上の化合物を有効成分として含有する逆流性食道炎治療及び予防用薬学的組成物を提供する。
【0015】
本発明は、抗酸化活性に優れて、急・慢性で誘発された逆流性食道炎を治療する金銀花分画物または上記<化学式1>の3,5−di−O−caffeoylquinic acid、上記<化学式2>の4,5−di−O−caffeoylquinic acidで構成される群から選択される1つ以上の化合物を有効成分として含有する逆流性食道炎改善及び予防用健康機能食品組成物を提供する。
【0016】
また、本発明に従う金銀花抽出物、分画物、または<化学式1>乃至<化学式2>の化合物を単独に使われるか、現在臨床で逆流性食道炎治療剤として使われているH2受容体拮抗剤(H2RA:H2 receptor antagonist)薬物であるシメチジン、ラニチジン、ニザチジン、ファモチジンやプロトンポンプ抑制剤(PPI:proton−pump inhibitor)薬物であるオメプラゾール、パントプラゾール、ランソフラゾール、レバプラザンなどと併用または適当な組合により使用して、より優れる逆流性食道炎治療効果を有する治療及び予防用薬学的組成物を提供する。
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0018】
本発明に従う金銀花抽出物は、金銀花またはその乾燥物から抽出して得ることができ、上記金銀花は野生及び人が裁培したもの等、制限無しで使用することができる。本発明に従う金銀花抽出物は、超臨界抽出、常温抽出、高温抽出、高圧抽出、または超音波抽出法などの抽出装置を用いた方法、またはXAD及びHP−20を含んだ吸着樹脂を用いる方法など、当業界の通常的な抽出方法を使用することができ、好ましくは、使用可能であり、還流抽出または常温で抽出して製造することができるが、これに限定されるものではない。抽出回数は1乃至5回のものが好ましく、3回反復抽出することがより好ましいが、ここに限定されるものではない。
【0019】
上記抽出物は、水、有機溶媒、またはこれらの混合溶媒を用いて抽出できる。上記有機溶媒はC1乃至C4のアルコール、エチルアセテート、塩化メチレン、及びクロロホルムからなる群から選択されるいずれか1つまたはこれらの混合溶媒のものが好ましく、C1乃至C4のアルコールのものがより好ましく、メタノール、エタノール、ブタノール、またはこれらの50〜100%アルコール水溶液で抽出することが最も好ましい。
【0020】
一例に、本発明に従う金銀花抽出物は、金銀花乾燥物を適当なサイズに粉砕して抽出容器に入れて、抽出溶媒を入れて溶媒を沸かしながら還流抽出した後、一定時間放置した後、濾過紙などで濾過してアルコール抽出物を得ることができる。抽出時間は2乃至12時間であることが好ましく、3乃至6時間であることがより好ましい。以後に、濃縮または凍結乾燥などの方法を追加することができる。
【0021】
本発明に従う金銀花抽出物または分画物は、上記金銀花抽出物をヘキサン、エチルアセテート、及びブタノールを使用して独立的に、または順次的に系統分画を遂行して得ることができる。延いては、本発明は上記<化学式1>で表示される3,5−di−O−caffeoylquinic acid、<化学式2>で表示される4,5−di−O−caffeoylquinic acidで構成される群から選択される1つ以上の化合物を有効成分として含有する逆流性食道炎治療または予防用薬学的組成物を提供する。
【0022】
上記<化学式1>乃至<化学式2>の化合物は、金銀花に水または有機溶媒、またはこれらの混合物を加えて金銀花抽出物を収得するステップ(ステップ1):
上記ステップ1で収得した金銀花抽出物を水に懸濁させた後、エチルアセテートまたはブタノールに分画して分画物を得るステップ(ステップ2):
上記ステップ2で収得した分画物に対してシリカゲルクロマトグラフィーを遂行して<化学式1>乃至<化学式2>の化合物を分離し精製するステップ(ステップ3):
を含んでなされる製造方法により製造できる。
【0023】
以下、本発明に従う上記製造方法をステップ別に具体的に説明する。まず、本発明に従う上記ステップ1は抽出溶媒で金銀花抽出物を収得するステップである。乾燥された金銀花を適当なサイズに粉砕して抽出容器に入れる。抽出溶媒はC1乃至C4のアルコール、50〜100%のC1乃至C4のアルコール水溶液、エチルアセテート、塩化メチレン、クロロホルム、またはこれらの混合溶媒を使用することができ、これらのうち、メタノール、エタノール、ブタノール、またはこれらの50〜100%アルコール水溶液を使用することが好ましい。これを60℃で超音波で6時間の間抽出した後、濾過紙などで濾過して本発明に従う金銀花抽出物を収得することができる。
【0024】
次に、上記ステップ2は上記ステップ1で得た金銀花抽出物を極性を異にする溶媒に分画して分画物を得るステップである。上記溶媒には、エチルアセテートまたはブタノールを使用することができる。
【0025】
次に、上記ステップ3は上記ステップ2で得た分画物に対してシリカゲルクロマトグラフィーを遂行して<化学式1>乃至<化学式2>の化合物を分離し精製するステップである。上記シリカゲルクロマトグラフィーはサイズ排除クロマトグラフィー用コラムを使用して遂行することができ、好ましくはHP−20を充填したコラムを使用することができる。上記ステップ2で収得した分画物に対してエタノールを移動相にしてHP−20コラムを用いたシリカゲルクロマトグラフィーを遂行する。この際、収得した分画物に対して高速液体クロマトグラフィーを遂行して<化学式1>乃至<化学式2>の化合物を分離することができる。上記高速液体クロマトグラフィーは0乃至5体積%、5乃至10体積%のアセトニトリルで濃度勾配されたアセトニトリルの混合溶媒を展開溶媒として使用して遂行することができる。この際、上記移動相の流速は2−15mL/分である。
【0026】
本発明に従う上記金銀花分画物または上記<化学式1>乃至<化学式2>の化合物は、逆流性食道炎の治療または予防用に使用できる。これらの逆流性食道炎治療または予防効果は具体的な実験結果に基づいて説明する。
【0027】
本発明に従う金銀花分画物または<化学式1>乃至<化学式2>の化合物に対して急・慢性逆流性食道炎の治療効果を確認するために、文献(Nakamura K et al;Jpn.J.Pharmacol.,32(3),445−456,1982:Okabe S,et al;Jpn.J. Pharmacol.,69(4),317−323,1995)に記載された逆流性食道炎に対する治療効果測定方法を応用して本実験に使用した。
【0028】
本発明に従う金銀花分画物または<化学式1>乃至<化学式2>の化合物を有効成分として含有する逆流性食道炎治療または予防用薬学的組成物は、以下の多様な経口または非経口投与形態に剤形化できるが、これに限定するものではない。
【0029】
経口投与用剤形には、例えば、錠剤、丸剤、硬/軟質カプセル剤、液剤、懸濁剤、乳化剤、シロップ剤、顆粒剤などがあるが、これら剤形は上記有効成分の以外に通常的に使われる充填剤、増量剤、湿潤剤、崩解剤、滑澤剤、結合剤、界面活性剤などの希釈剤、または賦形劑を1種以上使用することができる。崩解剤には、寒天、澱粉、アルギン酸、またはこれのナトリウム塩、無水リン酸一水素カルシウム塩などが使われることができ、滑澤剤には、シリカ、タルク、ステアル酸、またはこれのマグネシウム塩またはカルシウム塩、ポリエチレングリコールなどが使われることができ、結合剤には、マグネシウム、アルミニウムシリケート、澱粉ペースト、ゼラチン、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリジン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、グリシンなどを希釈剤として使用することができ、場合によっては一般的に知られた沸騰混合物、吸収剤、着色剤、香味剤、甘味剤などを共に使用することができる。
【0030】
また、金銀花抽出物、分画物、または<化学式1>乃至<化学式2>の化合物を有効成分として含有する逆流性食道炎治療または予防用薬学的組成物は非経口投与することができ、非経口投与は皮下注射剤、静脈注射剤、筋肉内注射剤、または胸部内注射剤を注入する方法による。この際、非経口投与用剤形に製剤化するために、金銀花抽出物、分画物、または<化学式1>乃至<化学式2>の化合物を安定剤または緩衝剤と共に水で混合して溶液または懸濁液に製造し、これをアンプルまたはバイアルの単位投与型に製造することができる。
【0031】
上記組成物は滅菌されるか、または防腐剤、安定化剤、水和剤、または油化促進剤、滲透圧調節のための塩、緩衝剤などの補助剤及びその他の治療的に有用な物質を含有することができ、通常的な方法である混合、顆粒化、またはコーティング方法により製剤化することができる。
【0032】
本発明の金銀花分画物または<化学式1>乃至<化学式2>の化合物を有効成分として含有する逆流性食道炎治療または予防用薬学的組成物を単位容量形態に剤形化する場合、有効成分としてこれら金銀花分画物または<化学式1>乃至<化学式2>の化合物を約0.1〜1500mgの単位容量に含まれることが好ましい。投与量は患者の体重、年齢、及び疾病の特殊な性質と深刻性のような要因によって医師の処方に従う。しかしながら、成人治療に必要な経口または非経口投与量は投与の頻度と強度によって一日に約0.1〜1000mgの範囲が普通である。成人に筋肉内または静脈内投与時、一回投与量に分離して一日に普通0.1〜300mgの全体投与量であれば充分であるが、一部の患者の場合、より高い一日投与量が好ましいことがある。
【0033】
本発明に従う金銀花抽出物、分画物、または<化学式1>乃至<化学式2>の化合物を逆流性食道炎治療または予防用の目的に、食品、飲料などの健康補助または健康機能性食品に添加することができる。この場合、金銀花分画物または<化学式1>乃至<化学式2>の化合物を食品添加物として使用時に、原料に対して0.01〜30重量%、好ましくは0.1〜10重量%の量で添加することができる。有効成分の混合量は使用目的によって適合するように決定できる。しかしながら、健康及び衛生を目的とするか、健康調節を目的とする長期間の摂取の場合に、上記の量は上記範囲以下のことがあり、安定性の面で何らの問題がないので、有効成分は上記範囲以上の量でも使用できる。上記分画物または<化学式1>乃至<化学式2>の化合物を他の食品または食品成分と共に使われることができ、通常的な方法により適切に使用できる。
【0034】
上記食品の種類には特別な制限がない。上記分画物または<化学式1>乃至<化学式2>の化合物を添加することができる食品の例には、肉類、ソーセージ、パン、チョコレート、キャンディ類、スナック類、ピザ、ラーメン、その他の麺類、ガム類、アイスクリーム類を含む酪農製品、各種スープ、飲物、ドリンク製、アルコール飲料、及びビタミン混合製などがあり、通常的な意味での健康食品を全て含む。
【0035】
本発明の食品保存添加剤は、さまざまな香味剤または天然炭水化物などを使用することができる。上記天然炭水化物は、葡萄糖、果糖のようなモノサッカライド、マルトース、スクローズなどのようなジサッカライド及びデキストリン、シクロデキストリンのようなポリサッカライド、ザイリトール、ソルビトール、エリトリトールなどの糖アルコールである。甘味剤としては、タウマチン、ステビア抽出物のような天然甘味剤やサッカリン、アスパルテームのような合成甘味剤などを使用することができる。上記天然炭水化物の割合は本発明に従う組成物100重量部当たり一般的に約0.01〜0.04重量部、好ましくは0.02〜0.03重量部である。
【0036】
上記の他に本発明に従う組成物はさまざまな営養剤、ビタミン、電解質、風味剤、着色剤、ペクト、及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、保護性コロイド重粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使われる炭酸化剤などを含有することができる。このような成分は独立的に、または組み合わせて使用することができ、添加剤の割合はあまり重要でないが、本発明に従う組成物100重量部当たり0.01〜0.1重量部の範囲で選択されることが一般的である。
【発明の効果】
【0037】
本発明に従う金銀花分画物または上記<化学式1>の3,5−di−O−caffeoylquinic acid、上記<化学式2>の4,5−di−O−caffeoylquinic acidで構成される群から選択される1つ以上の化合物を有効成分として含有する組成物は、逆流性食道炎疾患に対して既存の治療剤より副作用無しで同等以上の効果を表し、食道粘膜の炎症抑制効果と共に食道粘膜細胞保護作用を表して、食道炎の再発率を低めて逆流性食道炎疾患に対する優れる治療効果を表す。
【0038】
本発明に従う抽出物または<化学式1>乃至<化学式2>の化合物は、逆流性食道炎治療及び予防に有用に使用できる。
【0039】
また、本発明に従う金銀花抽出物または<化学式1>乃至<化学式2>の化合物を単独に使われたり、現在臨床で逆流性食道炎治療剤に使われているH2受容体拮抗剤(H2RA:H2 receptor antagonist)薬物であるシメチジン、ラニチジン、ニザチジン、ファモチジンやプロトンポンプ抑制剤(PPI:proton−pump inhibitor)薬物であるオメプラゾール、パントプラゾール、ランソプラゾール、レバプラザンなどと併用または適当な組合により使用して、より優れる逆流性食道炎治療効果を有する。
【0040】
(実験例1:金銀花抽出物の逆流性食道炎に対する薬効試験)
本発明に従う金銀花抽出物、分画物、または<化学式1>乃至<化学式2>化合物に対するラットの逆流性食道炎疾患モデルでの治療効果に関する方法には、7週齢スプラーグドーリー(Spraugue−Dawley:SD)系の雄白ねずみを24時間の間絶食させ、水は十分な量を供給した。体重を測定した後、対照薬物であるオメプラゾール(Sigma−Aldrich)と試験薬物である金銀花抽出物と分画物は0.5%CMC(Carboxymethyl celluse)溶液に懸濁して逆流を誘導する1時間前に経口投与した。逆流を誘導するために腹部を開腹して胃と十二指腸の境界になる幽門部を結紮し、食道と胃との境界をなす胃−食道括約筋に縦に1cmの傷口を与えて、括約筋の弛緩が異常に起こるようにして、胃酸を逆流させるようにした。また、前胃(forestomach)と腺胃(glandular portion)との間であるtransition zoneを糸で結紮した後、腹部を綿糸で縫合した。手術終了後、6時間後に吸入麻酔して食道を摘出して食道病便のサイズと食道炎の程度を観察した。<表1>は対照群対比本発明の試験物質投与群の食道病変抑制率(%)を表示したものであり、図1は食道粘膜での本発明試験物質の効果を表した写真である。
【0041】
<表1>から分かるように、5個の分画のうち、金銀花エチルアセテート分画物は対照群に比べて85%食道損傷を抑制したし、3,5−di−O−caffeoylquinic acidまたは4,5−di−O−caffeoylquinic acidと類似の抑制効果を発揮した。このような効果は、先行文献の金銀花水抽出物を経口投与したものより顕著に優れる効果であることを確認することができ、陽性対照群であるオメプラゾールと同等優位の優れる効果があることを確認することができた。
【0042】
【表1】
【0043】
(実験例2:ラットの逆流性食道炎モデル内食道組織での過酸化脂質測定)
本発明に従う金銀花抽出物、分画物、またはこれから分離された3,5−di−O−caffeoylquinic acid及び4,5−di−O−caffeoylquinic acid化合物に対する脂質過酸化抑制程度を調べた。実験例1で摘出した食道粘膜を取った後、トリス−塩酸バッファー溶液(pH7.0)1mlに入れて超音波粉砕する。600×g、4℃で5分間遠心分離した後、上澄液0.3mlに3塩化アセト酸(trichloroacetic acid、8%)0.9mlを加える。その後、10,000×g、4℃で5分間遠心分離した後、上澄液1mlにTBA(1%)0.25mlを加えた後、n−ブタノール2mlを加えて、3,000×g、4℃で5分間遠心分離した後、ブタノール分液層1mlで532nmで吸光度を測定する。標準物質はマロンアルデヒドビス−ジメチルアセタールを使用する。結果は、nmol/mgプロテイン(protein)で表示し、蛋白質定量分析はブラッドフォード法により行った。実験結果、図2はラットの逆流性食道炎モデルで食道組織の脂質過酸化程度をマロンジアルデヒド値で表したものであって、フェノール性成分を含有した金銀花抽出物のうち、実施形態4のエチルアセテート分画物を処理したグループでの過酸化脂質抑制率は46.2%として効果が優れて、3,5−di−O−caffeoylquinic acidと4,5−di−O−caffeoylquinic acidの過酸化脂質抑制率は各々49.1%、50.2%に表れたし、オメプラゾール(omeprazole)を処理したグループでは53.9%の過酸化脂質抑制率を表した。
【0044】
(実験例3:食道組織内でのTNF−alpha level分析を通じた抗炎症効果)
ラットの逆流性食道炎疾患モデルで治療効果を確認した金銀花抽出物、分画物、またはこれから分離された3,5−di−O−caffeoylquinic acid及び4,5−di−O−caffeoylquinic acid化合物に対して食道組織内での抗炎症効果を測定するために炎症性疾患のメカニズム上、重要な役割をするTumor necrosis factor−alpha(TNF−α)のレベル(level)をラット食道組織内で測定した(Nippon Rinsho, 68(5),819−822,2010)。これを測定するためのキット(kit)はeBioscience社のラットTNF−α ELISA kit(Cat No:88−7340)を使用した。<実験例1>で得た全ての試験群の食道組織を各々10倍数のホモジナイジングバッファー(homogenizing buffer)(pH7.4:1.15% KCl、50mM Tris−HCl,1mM EDTA)を入れた後、ホモジナイザー(homogenizer)で破砕させた。その後、3,000rpm以上で10分間遠心分離して均質化組織液(上層液)を分離した後、deep freezerに保管しながら実験に使用した。全ての抗原抗体反応が終わった後、ELISA Reader(BIORAD)機で450nmで吸光度を測定し、吸光度の標準曲線を用いて食道組織でのTNF−α量を表示した。試験物質の炎症抑制率(%)は以下のように算出したものであり、
【0045】
【数1】
ラットの逆流性食道炎誘発モデルで金銀花抽出物の抗炎症効果は<表2>に表した 。
【0046】
【表2】
【0047】
<表2>に表すように、対照群対比金銀花抽出物を処理した全てのグループでTNF−alpha levelが減少した。そのうち、エチルアセテート分画物(実施形態4)の炎症抑制率が94.0%として最も高い抗炎症効果を表したものであり、これはオメプラゾール単独処理群(80.5%)に比べて優れた。3,5−di−O−caffeoylquinic acid及び4,5−di−O−caffeoylquinic acidの炎症抑制率は各々87.8%、85.5%として優れるに表れた。
【0048】
(実験例4:金銀花分画物の食道粘膜保護効果)
ラットの逆流性食道炎疾患モデルで治療効果を確認した金銀花抽出物、分画物、またはこれから分離された3,5−di−O−caffeoylquinic acid及び4,5−di−O−caffeoylquinic acid化合物に対して食道組織での食道粘膜構成成分であるヘキソサミン(Hexosamine)量とシアル酸(Sialic acid)量を測定した。
【0049】
1.食道組織でヘキソサミン(Hexosamine)量の測定
<実験例1>で得た全ての試験群の食道組織をエタノールに浸した後、アセトンに2日、エーテルに1日間放置して脱脂し、乾燥した。この標本の重さを測定した後、4N HCl溶液5mlを加えて100℃で9時間の間加熱して加水分解させた後、常温で冷却後、濾過した。濾液0.5mlに4N NaOH溶液0.5mlを加えて中和させ、アセチルアセトン(acetylacetone)溶液1mlを加えて振蕩した後、100℃で20分間加熱し冷却した後、イソアミルアルコール(isoamylalcohol)を5ml加えて2分間振蕩した後、3,000rpmで10分間遠心分離して上澄液2mlを取った。発色溶液0.5mlを加えて15分間放置した後、530nmで吸光度を測定した。グルコサミン(Glucosamine)を使用して作成した検量線からヘキソサミン(hexosamine)の含有量を換算した。
【0050】
2.食道組織でシアル酸(Sialic acid)量の測定
<実験例1>で得た全ての試験群の食道組織をエタノールに浸した後、アセトンに2日、エーテルに1日間放置して脱脂し、乾燥した。この標本の重さを測定した後、0.1N HSO溶液5mlを加えて80℃で1時間の間加熱して加水分解させた後、常温で冷却した後、濾過した。濾液0.2mlに0.2Mパーアイオデート(periodate)溶液0.1mlを加えて混和し、常温で20分間放置した後、10%アルセナイト(arsenite)溶液1mlを加えて黄褐色が消失されるまで混和した後、0.6%TBA溶液3mlを加えて混和した後、蓋を塞ぎ、100℃で15分間加熱し冷却した後、5分間冷湯で放置した後、3,000rpmで10分間遠心分離した後、上澄液を取って549nmで吸光度を測定した。N−acetylneuraminic acidを使用して作成した検量線からシアル酸(Sialic acid)の含有量を換算した。
【0051】
本試験の結果は、<表3>の通りである。逆流性食道炎誘発群は正常群に比べてヘキソサミン含有量及びシアル酸含有量が減少し、金銀花抽出物、分画物、3,5−di−CQA、及び4,5−di−CQAの投与時には対照群に比べてヘキソサミン含有量及びシアル酸含有量は留意性ある増加を表した。このような結果は、逆流性食道炎により減少した食道粘膜の構成成分が金銀花抽出物、分画物、3,5−di−CQA及び4,5−di−CQAにより治癒過程を経ながら食道組織が正常化されることを意味する。逆流性食道炎を起こしたラットでヘキソサミン量が減少し、逆流性食道炎の治癒と粘膜内のヘキソサミンとの相関関係を考慮した時、食道組織でヘキソサミン含有量の変化が逆流性食道炎の程度と比例した。本結果は、金銀花抽出物または分画物が臨床的に損傷された食道粘膜を速かに正常化させ、胃酸に対して防御できる条件に食道組織を作ってやることで、逆流性食道炎の再発率を低めることができることを意味する。
【0052】
【表3】
【0053】
(実験例5:金銀花分画物のHPLC分析
本発明の金銀花抽出物、その分画物、または<化学式1>乃至<化学式2>化合物のHPLC分析条件は、以下の<表4>の通りである。
【0054】
【表4】
【0055】
本発明の金銀花抽出物とその分画物に対する3,5−di−O−caffeoylquinic acid及び4,5−di−O−ccffeoylquinic acid含有量は、以下の<表5>の通りである。
【0056】
【表5】
【0057】
本発明の金銀花抽出物及びその分画物に対するHPLC分析結果、70%エタノール抽出物、エタノール抽出物、メタノール抽出物、ブタノール分画物、及びエチルアセテート分画物は、3,5−di−O−caffeoylquinic acid含有量が2%以上含有しており、4,5−di−O−caffeoylquinic acidの含有量は1%以上含有していた。逆流性食道炎を誘発したラットでこれら金銀花分画物は対照群に比べて食道病変が60%以上抑制率を表した。化合物1または2と同等な食道炎抑制効果を表したエチルアセテート分画物は3,5−di−O−caffeoylquinic acidが10%以上、4,5−di−O−caffeoylquinic acid含有量が2%以上含有しており、化学式1または2を分離精製することよりエチルアセテート分画物が逆流性食道炎を治療することに費用や効果の面でより優れることが分かる。
【0058】
(実験例6:金銀花分画物の急性経口投与毒性試験)
6週齢の特定病原不在(SPF)SD系雌雄ラットを使用して実施形態1の金銀花抽出物と実施形態4、5の分画物及び実施形態6により製造された3,5−di−O−caffeoylquinic acid、4,5−di−O−caffeoylquinic acid化合物に対する急性毒性試験を実施した。試験群当たり雌雄各々5匹ずつのラットに対して上記実施形態の試験物質を1.0g/kg及び2.0g/kgの投与容量で単回経口投与した。試験物質は0.5%のCMC(Carboxymethyl cellulose)溶液に懸濁して投与した。試験物質投与時、動物の斃死したか否か、臨床症状、体重変化を観察し、7日後に剖検して血液学的検査と血液生化学的検査を実施し、肉眼で腹腔臓器と胸腔臓器に異常があるか否かを観察した。その結果、試験物質を投与した全ての動物で特異するべき臨床症状や斃死された動物はなく、体重変化、血液検査、血液生化学的検査、剖検所見などでも異常変化は観察できなかった。以上の結果、本発明の金銀花抽出物、分画物、またはこれから分離された化合物1または化合物2はラットで2.0g/kgまで毒性変化を表さない安全な物質と確認された。
【0059】
これから、本発明の金銀花抽出物、分画物、または<化学式1>乃至<化学式2>の化合物は、逆流性食道炎治療に効果が優れて、食道粘膜での抗酸化効果及び抗炎症効果が優れることと確認された。また、食道粘膜再生及び保護作用に優れるので、逆流性食道炎治療または予防のための医薬品及び健康機能食品に安全な物質として有用に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1】ラットの急性逆流性食道炎モデルにおける対照群、金銀花水抽出物、70%エタノール抽出物、ブタノール分画物、エチルアセテート分画物を各々50mg/kg容量で経口投与し、3,5−di−O−caffeoylquinic acid、4,5−di−O−caffeoylquinic acid及びオメプラゾールは各々10mg/kg容量で経口投与した後、ラットの食道粘膜での食道病変を示した写真である。
図2】ラットの逆流性食道炎モデルにおける対照群、金銀花水抽出物、70%エタノール抽出物(実施形態1)、エチルアセテート分画物(実施形態4)、ブタノール分画物(実施形態5)、3,5−di−O−caffeoylquinic acid、4,5−di−O−caffeoylquinic acid、及びオメプラゾールに対する食道組織での脂質過酸化程度をマロンジアルデヒド値として示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0061】
以下、本発明を実施形態を通じて詳細に説明する。但し、以下の実施形態は本発明を例示するものであり、本発明の内容が以下の実施形態により限定されるものではない。
【0062】
(実施形態1)金銀花70%エタノール水溶液抽出物の製造
本発明に使われた金銀花は、花が咲く前のつぼみの乾燥物であって、粉砕して得た粉末を適当なサイズに細切して抽出容器に1kgを入れて70%エタノール水溶液溶媒10Lを加えて60℃で6時間の間攪拌しながら抽出し、濾過紙で濾過して抽出物を得た。抽出過程を3回反復し、以後、溶媒を減圧濃縮及び乾燥して300gの70%エタノール水溶液抽出物を得た。
【0063】
(実施形態2〜3)金銀花アルコール抽出物の製造
上記実施形態1のように実施し、かつ実施形態1の70%エタノール水溶液抽出溶媒の代りにエタノール及びメタノールを各々使用して320gのエタノール抽出物と340gのメタノール抽出物を各々得た。
【0064】
(実施形態4)金銀花抽出物のエチルアセテート分画物製造
上記実施形態1の70%エタノール水溶液抽出物に水3Lを加えて懸濁させた後、エチルアセテート3Lを加えて3回反復抽出した後、濾過紙を使用して減圧濾過した後、得たエチルアセテート抽出物の溶媒を除去した後、残渣としてエチルアセテート分画物30gを得た。
【0065】
(実施形態5)金銀花抽出物のブタノール分画物製造
上記実施形態1の70%エタノール水溶液抽出物に水3Lを加えて懸濁させた後、ブタノール3Lを加えて3回反復抽出した後、濾過紙を使用して減圧濾過した後、得たブタノール抽出物の溶媒を除去した後、残渣としてブタノール分画物75gを得た。
【0066】
(実施形態6)金銀花分画物からフェノール性化合物の製造
(実施形態6−1)3,5−di−O−caffeoylquinic acidの製造
上記実施形態4で収得したエチルアセテート分画物に100%エタノールを移動相にしてHP−20コラムを用いたクロマトグラフィーを遂行して分画物(subfraction)1乃至4を収得した。上記分画物のうち、分画物3をエタノールに溶かした後、高速液体クロマトグラフィーを遂行して3,5−di−O−caffeoylquinic acidを得た。この際、移動相にアセトニトリルを混合溶媒を使用し、50分の間0体積%から20体積%のアセトニトリルに順次に極性を与えて濃度勾配したものであり、流速は10ml/分、Capcell pak UG120(6.0×50mm、5μm)コラムを使用した。
【0067】
3,5−di−O−caffeoylquinic acid化合物:1H−NMR (CD3OD)δ2.11−2.34(4H,m,H2,6),3.95(1H,dd,J=3.0,7.8Hz,H−4),5.37−5.44(2H,m,H−3,5),6.26,6.36(1H each,J=15.9Hz,H−8´,8″),6.77 (2H,d,J=7.8Hz,H−5´,5″),6.96(2H,dd,J=2.1,8.1Hz,H−6´,6″),7.05,7.06(1H each,d,J=2.1Hz,H−2´,2″),7.57,7.61(1H each,d,J=15.9Hz,H−7´,7″)
13C−NMR (125MHz,CDOD)δ36.3(C−2),38.2(C−6),71.1(C−4),72.0(C−5),72.9(C−3),75.2(C−1),115.1,115.2(C2´,2″),115.3,115.5(C−8´,8″),116.5(C−5´,5″),123.0,123.1(C−6´,6″),127.7,127.8(C−1´,1″),146.6(C3´,3″),147.0,147.2(C−7´,7″),149.3,149.4(C−4´,4″),168.5,168.9(C9´,9″),178.1(COOH)
【0068】
(実施形態6−2)4,5−di−O−caffeoylquinic acidの製造
上記実施形態4で収得したエチルアセテート分画物に100%エタノールを移動相にしてHP−20コラムを用いたクロマトグラフィーを遂行して分画物(subfraction)1乃至4を収得した。上記分画物のうち、分画物3をエタノールに溶かした後、高速液体クロマトグラフィーを遂行して4、5−di−O−caffeoylquinic acidを得た。この際、移動相に水とアセトニトリルを混合溶媒を使用したし、50分の間0体積%から20体積%のアセトニトリルに順次に極性を与えて濃度勾配したし、流速は10mL/分、Capcell pak UG120(6.0×150mm,5μm)コラムを使用した。
【0069】
4,5−di−O−caffeoylquinic acid化合物:H−NMR(500MHz,CDOD)δ1.98−2.30(4H,m,H−2,6),4.33(1H,br s,H−3),5.10(1H,dd,J=2.6,9.5Hz,H−4),5.65(1H,m,H−5),6.19,6.27(1H each,d,J=15.9Hz,H−8´,8″),6.72,6.73(1H each,d,J=8.1Hz,H−5´,5″),6.88,6.90(1H each,dd,J=1.8,8.1Hz,H−6´,6″),6.99,7.01(1H each,d,J=1.8Hz,H−2´,2″),7.50,7.58(1H each,d,J=15.9Hz,H−7´,7″)
13C−NMR(125MHz,CDOD)δ76.1(C−1),38.3(C−2),69.8(C−3),75.8(C−4),69.0(C−5),39.8(C−6),127.3,127.4(C−1´,1″),146.5(C−3´,3″),149.4(C−4´.4″),116.1(C−5´,5″),122.9(C−6´,6″),147.2,147.3(C−7´,7″),114.4(C−8´,8″),168.1,168.3(C−9´,9″)
【0070】
(実施形態7)薬学的製剤の製造
(実施形態7−1)金銀花エチルアセテート分画物の散剤製造
金銀花エチルアセテート分画物 20mg
乳糖 100mg
タルク 10mg
上記の成分を混合し、気密布に充填して散剤を製造する。
【0071】
(実施形態7−2)錠剤の製造
金銀花エチルアセテート分画物 10mg
とうもろこし澱粉 100mg
乳糖 100mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
上記の成分を混合した後、通常の錠剤の製造方法に従って打錠して錠剤を製造する。
【0072】
(実施形態7−3)カプセル剤の製造
金銀花エチルアセテート分画物 10mg
結晶性セルロース 30mg
ラクトース 14.8mg
マグネシウムステアレート 0.2mg
通常のカプセル剤製造方法に従って上記の成分を混合し、ゼラチンカプセルに充電してカプセル剤を製造する。
【0073】
(実施形態7−4)注射剤の製造
金銀花エチルアセテート分画物 10mg
マンニトール 180mg
注射用滅菌蒸溜水 2974mg
NaHPO、12HO 26mg
通常の注射剤の製造方法に従って1アンプル当たり(2ml)上記の成分含有量で製造する。
【0074】
(実施形態7−5)液剤の製造例
金銀花エチルアセテート分画物 20mg
異性化糖 10g
マンニトール 5g
精製水 適量
通常の液剤の製造方法に従って精製水に各々の成分を加えて溶解させ、レモン香りを適量加えた後、上記の成分を混合した後、精製水を加えて全体100mlに調節した後、褐色瓶に充填して滅菌させて液剤を製造する。
【0075】
(実施形態8)健康機能食品の製造
(実施形態8−1)飲料の製造
蜂蜜 522mg
チオクト酸アミド 5mg
ニコチンアミド 10mg
塩酸リボフラビンナトリウム 3mg
塩酸ピリドキシン 3mg
イノシトール 30mg
オルト酸 50mg
金銀花エチルアセテート分画物 100mg
精製水 200ml
上記組成及び含有量にして通常的な方法を使用して飲料を製造した。
【0076】
(実施形態8−2)ビタミン混合剤
金銀花酢酸エチル分画物 100mg
フェノール酸化合物 100mg
ビタミンAアセテート 70μg
ビタミンE 1.0mg
ビタミンB1 0.13mg
ビタミンB2 0.15mg
ビタミンB6 0.2μg
ビタミンC 10mg
ビオチン 10μg
ニコチン酸アミド 1.7mg
葉酸 50μg
パントテン酸カルシウム 0.5mg
酸化亜鉛 0.82mg
炭酸マグネシウム 25.3mg
第1燐酸カリウム 15mg
クエン酸カリウム 90mg
炭酸カルシウム 100mg
塩化マグネシウム 24.8mg
【産業上の利用可能性】
【0077】
上記のビタミン及びミネラル混合物は比較的健康食品に適合した成分であって、好ましい実施形態に混合組成したが、その配合比を任意に変形実施し、通常の健康食品製造方法に従って上記の成分を混合した後、顆粒を製造し、通常の方法に従って健康食品組成物製造に使用することができる。
図1
図2