(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【実施例1】
【0015】
図2は、立体画像表示装置の構成図である。図示した立体画像表示装置は、立体像として提示する画像を表示する例えばLCDなどから成るディスプレイパネル10、ディスプレイパネル10の表示動作を制御するディスプレイ制御器11、複数のレンズを配設した例えばフライアイレンズから成り、ディスプレイパネル10に表示された画像を集光するレンズアレイ12を備えている。
レンズアレイ12は、所定の配列で複数の要素レンズを備えたものであり、ディスプレイパネル10に表示される要素画像と対応するように、例えば凸レンズ、もしくは凸レンズと同様な光学作用を有するレンズを所定の数量配置している。
【0016】
ここで、一般的なインテグラルイメジングによって立体像提示を行う立体画像表示装置について説明する。
ディスプレイパネル10は、合成することにより立体像を成す複数の要素画像を所定の配置で表示するように構成されている。
また、レンズアレイ12は、上記のディスプレイパネル10に表示される各要素画像と各々対応するように配列された複数の要素レンズを備えている。
レンズアレイ12の各要素レンズは、例えば凸レンズから成り、観察者15の視界内に含まれる所定の位置に実像20が結像するように形成されており、上記の要素画像よりも小さいサイズとなるように構成されている。
【0017】
図3、
図4、及び
図5は、インテグラルイメジングによる立体像の提示を示す説明図である。
ディスプレイパネル10には、ディスプレイ制御器11の制御によって図示したように複数の要素画像が並べられて表示される。なお、図中、各要素画像の中心を矢印にて示している。
レンズアレイ12は、ディスプレイパネル10の表示面と対向するように配置され、レンズアレイ12の各要素レンズは、各要素画像面と対向配置されており、それぞれ要素画像光を入射して、結像位置へ向かうように屈折させる。
【0018】
ここで、各要素レンズの焦点距離をf、ディスプレイパネル10の要素画像表示面とレンズアレイ12との距離をa、レンズアレイ12と結像位置即ち実像生成面との距離をbとしたとき、
1/a+1/b=1/f
という関係が成り立つ。なお、上記の実像生成面の位置は任意に設定されたものである。
ディスプレイパネル10の解像度をc[dpi]としたとき、実像生成面における当該実像の解像度はca/b[dpi]で表される。これらのことから、要素画像面と要素レンズ間の距離が近い程、実像の解像度が良く、また、要素レンズから実像生成面までの距離が遠くなる程、実像の解像度が悪くなることが分かる。
【0019】
図4に示したように要素画像の表示面からレンズアレイ12が離れており、距離aが遠くなる場合には、レンズアレイ12から実像生成面までの距離bが近くなり、結像した実像の解像度ca/bが高くなる。これに対して
図4の実像では視野角が
図3の実像に比べて狭くなる。このようにインテグラルイメジングによって立体像を提示する場合には、実像の解像度と視野角とがトレードオフの関係になる。
【0020】
上述のようなインテグラルイメジングにおいて、結像した実像の視野角を広くするため、
図5に示したようにディスプレイパネル10に表示される各要素画像のサイズを大きくすることが考えられる。
このように各要素画像を大きくし、また要素画像面とレンズアレイ12との距離を遠くすることにより、実像の解像度を維持しながら視野角を拡大することができる。しかし、この場合にはレンズアレイ12と結像位置との距離が近くなるため、レンズアレイ12の端部側に配置された要素レンズを通過した光によって実像に歪が生じる。即ち、レンズアレイ12と結像位置との距離が近い程、実像の歪が増大する。
なお、粗インテグラルイメジングを用いた装置においても、
図3〜
図5を用いて説明したように解像度を良好に維持しながら視野角を拡大することは困難になる。
【0021】
図6は、実施例1の立体画像表示装置による立体像の提示を示す説明図である。
実施例1の立体画像表示装置は、
図2に示したように構成されており、当該装置に備えられるレンズアレイ12は、後述するように複数の要素レンズを並べたものである。
図6には、レンズアレイ12を構成する各要素レンズのうち、レンズ(1)〜(9)を代表して図示している。
【0022】
本発明の立体画像表示装置のレンズアレイ12を構成する各要素レンズは、レンズ形状中心と光学上のレンズ中心とが異なっており、この光学的なレンズ中心が幾何的中心よりも外側に位置するように形成されている。
レンズアレイ12は、図示した集光中心XCと要素画像面(ディスプレイパネル10の表示面)の中心とを結んだ直線と、レンズアレイ12のレンズ面とが交差する位置に、当該レンズアレイ12において中心に配置された要素レンズのレンズ中心が置かれるように設置されている。
【0023】
図7は、実施例1に用いられるレンズアレイを示す説明図である。
実施例1のレンズアレイ12を構成する各要素レンズは、例えば
図7に示したように正面視したときに円形状となる凸レンズを、格子状に切り分けた各部分から成るものである。
凸レンズから要素レンズを切り出すとき、レンズアレイ12の中心に位置する要素レンズのレンズ中心(即ち、レンズアレイ12のレンズ中心)と、凸レンズのレンズ中心が同一となるようにこの位置を合わせて、各要素レンズを形成させている。
【0024】
ここで例示したレンズアレイ12では、各要素レンズを切り出す際に各2[mm]の間隔をおいて切り出し、またレンズを正面視した際に一辺が22[mm]の格子状となるように切り分け、正面視したときに正四辺形となるように各要素レンズを切り出している。
このように切り出すことにより、それぞれレンズ中心が異なる各要素レンズが形成され、前述のようにレンズ中心が幾何的中心よりも外側に位置している要素レンズ(レンズアレイ12の中心に配置される要素レンズを除く)が形成される。また、この要素レンズは、上記のように切り出した場合と同様な形状に形成したものでもよい。
なお、このレンズアレイ12は、上記のように凸レンズから切り出した際の配置と同様に各要素レンズを配置している。
【0025】
上記のように各要素レンズが形成されたレンズアレイ12は、
図6に示した集光中心XCを遠くに存在させて実像生成面を当該立体画像表示装置から離れた位置に設定し、また視野角が拡がるように構成した場合であっても、歪を抑えた良好な解像度で実像を結像させることができる。また、表示された要素画像のドットピッチによらず、良好な解像度の立体像を提示することができる。
【実施例2】
【0026】
本発明の実施例2による立体画像表示装置は、概ね
図2に示したように構成されており、後述するように構成されたレンズアレイ12aを、
図2のレンズアレイ12に代えて備え、またさらにレンズアレイ12aの出射側に大口径レンズ30を配置している。ここでは、実施例1の立体画像表示装置と同様に構成された部分の重複説明を省略する。
【0027】
図8は、実施例2の立体画像表示装置による立体像の提示を示す説明図である。
レンズアレイ12aは、後述するように複数の要素レンズを並べたものである。
図8には、レンズアレイ12aを構成する各要素レンズのうち、レンズ(1)〜(9)を代表して図示している。
大口径レンズ30は、例えばフレネルレンズから成るもので、レンズアレイ12aから出射された光を集光し、結像時の収差を抑制するように構成されている。
ここで、レンズアレイ12の各要素レンズの焦点距離をf、大口径レンズ30の焦点距離をFとする。
【0028】
レンズアレイ12aの各要素レンズは、ディスプレイパネル10に表示される各要素画像よりも小さいサイズとして形成されており、また、光学上のレンズ中心が幾何的中心よりも外側に位置するように形成されている。
レンズアレイ12aは、ディスプレイパネル10に表示された要素画像の中心を要素レンズの焦点距離fだけ平行移動させた位置に、当該要素レンズのレンズ中心が配置されるように、ディスプレイパネル10から離間されて配置・固定されている。換言すると、レンズアレイ12aに備えられた各要素レンズは、上記のレンズアレイ12aの配置位置において、ディスプレイパネル10に表示されている要素画像の中心と自身の光学的なレンズ中心とが重なり合い、同位置となるように形成されている。
【0029】
このようにレンズアレイ12aを配置することにより、ディスプレイパネル10から出射された各要素画像光の中心光は、各要素レンズによって屈折されて平行光となり、大口径レンズ30に入射する。
大口径レンズ30は、自身の焦点距離Fの位置において各要素レンズから入射した各光を集光させ、
図8に示した立体像の中心において全ての要素画像の中心を提示する画素が一点に集光する。
【0030】
図9は、実施例2に用いられるレンズアレイを示す説明図である。この図は、実線で囲った部分がレンズアレイ12aの各要素レンズを示し、破線で囲った部分がディスプレイパネル10に表示された各要素画像を示している。
図中、“E#”は#番目の要素レンズを示し、“P#”は#番目の要素画像を示し、要素画像の中心且つ当該要素画像に対応している要素レンズのレンズ中心をドットによって表示している。例えば、要素画像P1の中心を示すドットは、要素レンズE1のレンズ中心をも示している。即ち、要素画像と同一番数の要素レンズが、当該要素画像の中心光を通過させる。
【0031】
レンズアレイ12aの各要素レンズは、例えばレンズ径や焦点距離が同一の凸レンズから、正面視したときに正四辺形となるように切り出されたもので、凸レンズのレンズ中心と切り出される要素レンズのレンズ中心が同一の位置となるように、当該要素レンズを切り出す位置を決めて形成したものである。あるいは、このように切り出した場合と同様な形状に形成したものである。
【0032】
図10は、実施例2の立体画像表示装置による立体像の提示を示す説明図である。この図は、ディスプレイパネル10からの画像光がレンズアレイ12aと大口径レンズ30とを介して立体像に結像するまでの光路を示したもので、ある要素画像の光が対応する要素レンズに入射し、大口径レンズ30によって屈折される光路を例示している。
【0033】
ディスプレイパネル10に表示される各要素画像は、前述のようにディスプレイ制御器11によって制御されている。
このディスプレイ制御器11は、1つの要素画像の例えば任意の各点から要素レンズのレンズ中心を通過する光路を計算し、さらに大口径レンズ30を通過した後の上記の各点からの光路を求め、これらの光路の延長線が交わる点を視点位置として設定する。
このように設定した視点位置を基準点として透視射影変換を行い、ディスプレイパネル10に表示させる要素画像を生成する。
【0034】
ここで、大口径レンズ30を通過した後の各光路の間隔は、各レンズを通過する際の屈折により、上記の要素画像の各点から要素レンズのレンズ中心へ向かう各光路の間隔と整合せず、ずれたものとなる。
そこで、ディスプレイ制御器11は、上記のずれを例えばテクスチャマッピングを用いて補正する。
この補正を行う場合、初めにディスプレイパネル10に表示する要素画像の任意の位置に複数の格子点を設定する。このとき、
図10に例示した要素画像のように格子点によって囲まれた領域が正方形となるように各格子点を配置し、後にテクスチャ処理を行う領域を設定する。
【0035】
上記のように格子点を設定した要素画像がディスプレイパネル10に表示され、この画像光がレンズアレイ12aの要素アレイを介して大口径レンズ30へ入射する。大口径レンズ30から上記の光が出射されて立体像が結像したとき、
図10に例示した投影変換の投影面において観察される画像には図示したように歪が生じており、各格子点によって囲まれた領域は歪んだ四辺形となる。
上記の観察される画像中の歪んだ四辺形を、要素画像中の同一格子点にて囲まれた正方形の領域に対してテクスチャ処理を行い、要素画像全体のテクスチャマッピングを行う。この処理結果に基づいて、後に表示させる要素画像に補正を施す。
【0036】
また、上記のテクスチャマッピングを用いた補正は形状の歪に対するものであるが、画像光等はそれぞれの色によって屈折率が異なることから、上記の補正と同様な計算処理を色別に行うことにより、色収差を補正することもできる。
【0037】
実施例2の立体画像表示装置のように、レンズアレイ12aから出射された各光を集光する大口径レンズ30を備えて構成した場合であっても、実施例1で説明したものと同様に、視野角が広くなるようにしながら、歪が抑制された良好な解像度で実像を結像させることができる。また、表示された要素画像のドットピッチによらず、良好な解像度の立体像を提示することができる。
【実施例3】
【0038】
図11は、実施例3の立体画像表示装置による立体像の提示を示す説明図である。この図は、ディスプレイパネル10からの画像光がレンズアレイ12aと大口径レンズ30とを介して立体像に結像するまでの光路を示したもので、ある要素画像の光が対応する要素レンズに入射し、大口径レンズ30によって屈折される光路を例示している。
実施例3の立体画像表示装置は、粗インテグラルボリュメトリックイメジング(CIVI)による立体像の提示を行うように、複数の表示面を重ねて多層化したディスプレイパネル10を備えている。他の部分は概ね実施例2で説明した立体画像表示装置と同様に構成されている。ここでは、実施例2の立体画像表示装置と同様に構成された部分の重複説明を省略する。
【0039】
実施例3の立体画像表示装置に備えられるディスプレイ制御器11は、ディスプレイパネル10の多層化された各表示面に各々要素画像を表示させる。
正面視したときに重なり合っている表示面から出射された要素画像光は、当該要素画像の中心と同一の位置にレンズ中心が配置された要素レンズへ入射する。この要素レンズから出射された光は、大口径レンズ30によって集光され、上記の重なった表示面と同じ数の実像が重なり合って結像する。
図11に例示したものは、2層の表示面を有するディスプレイパネル10からそれぞれ光が出射され、レンズアレイ12aの要素レンズと大口径レンズ30を介することにより所定の位置に2つの実像が結像している。
【0040】
ディスプレイ制御器11は、上記のように多層化された表示面に要素画像を表示させるとき、次のように表示制御を行う。
表示面に要素画像を表示させる前に、各層の表示面からの光によって各実像が生成される奥行き(距離)を計算し、最も大口径レンズ30から近い位置に結像する実像を認識する。この実像となる光を出射する表示面を、重なり合っている表示面の中から特定し、この表示面に要素画像を表示させる。
また、複数の実像を提示する場合に、2つの実像の中間的な態様の立体像を提示するときには、上記の2つの実像となる光を出射する2つの表示面に輝度を分配して、それぞれ要素画像の描画を行うように制御する。
【0041】
実施例3の立体画像表示装置は、大口径レンズ30を備えてCIVIによる立体像の提示を行うものであるが、実施例1で説明した大口径レンズを備えていない装置に、表示面を多層化させたディスプレイパネル10を備え、CIVIによる立体像の提示を行うように構成してもよい。
【0042】
前述のように、要素レンズの幾何的中心とは異なる位置にレンズ中心を配置し、このレンズ中心とディスプレイパネル10に表示される要素画像の中心が重なるようにレンズアレイを構成(配置)し、大口径レンズ30を介して実像を結像させることにより、CIVIによる立体像の提示について視野角を広くしながら立体像の歪を抑制することができ、解像度を良好にすることができる。
【0043】
実施例1〜3の各立体画像表示装置に用いられるレンズアレイは、前述のように各々の要素レンズのレンズ中心の位置が異なっていることから、1つの凸レンズから複数の要素レンズを切り出すことができ、レンズを正面視したときにレンズ形状の中心に光学的なレンズ中心を配置した一般的な要素レンズを形成する場合に比べて製造コストを抑えることができる。