(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5793765
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】集合電池用架台
(51)【国際特許分類】
H01M 2/10 20060101AFI20150928BHJP
【FI】
H01M2/10 E
H01M2/10 L
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-530583(P2012-530583)
(86)(22)【出願日】2011年7月7日
(86)【国際出願番号】JP2011065582
(87)【国際公開番号】WO2012026224
(87)【国際公開日】20120301
【審査請求日】2014年5月19日
(31)【優先権主張番号】特願2010-187216(P2010-187216)
(32)【優先日】2010年8月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085523
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 文夫
(74)【代理人】
【識別番号】100078101
【弁理士】
【氏名又は名称】綿貫 達雄
(72)【発明者】
【氏名】長谷 有太
(72)【発明者】
【氏名】武山 幹根
(72)【発明者】
【氏名】神谷 均
【審査官】
植前 充司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−315521(JP,A)
【文献】
実開昭60−145550(JP,U)
【文献】
実開平08−000726(JP,U)
【文献】
特開平05−016051(JP,A)
【文献】
特開平11−059688(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底枠の四隅に立設された支柱を備え、内部に電池モジュールを収納して輸送するための架台であって、
各支柱の上端部に嵌合用突起を形成するとともに、各支柱の底部にこれらの嵌合用突起が嵌合される嵌合孔を形成し、
下側の支柱の嵌合用突起と上側の支柱の嵌合孔とを嵌合させて段積み設置することにより、据付用架台として使用可能とし、
輸送時または倉庫保管時に底枠と電池モジュールに挟まれ、据付時には取り除かれる緩衝材を持ち、その底枠と電池モジュールに挟まれる緩衝材の厚さに対応する高さのスペーサを、下側の支柱と上側の支柱との間に介在させることを特徴とする集合電池用架台。
【請求項2】
嵌合用突起の上部がテーパ状であることを特徴とする請求項1記載の集合電池用架台。
【請求項3】
対をなす支柱の下端部間に、荷重分散用の板状部材を配置したことを特徴とする請求項1記載の集合電池用架台。
【請求項4】
板状部材が底コーナー部に丸みを持たせた断面U字形状であることを特徴とする請求項3記載の集合電池用架台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NaS電池その他の集合電池を輸送したり、倉庫保管や据え付けたりするために用いられる集合電池用架台に関するものである。
【背景技術】
【0002】
NaS電池、Liイオン電池、Ni−H
2電池などの集合電池は、多数本の単電池をケースの内部に密に配置して電池モジュールを形成したものであり、その例は特許文献1、特許文献2等に記載されている。このような電池モジュールは単独で使用されることもあるが、特に大電力貯蔵用の場合には多数の電池モジュールを組み合わせて使用されることが多い。
【0003】
特許文献3には、棚板を備えた容器の内部に電池モジュールを引き出し可能に収納した例が記載されているが、大電力貯蔵用の実際の設備は数十個の電池モジュールを用いる大型設備となる。このため、新設時にはまず現場に数十個の電池モジュールを収納できる鉄骨製の据付用架台を設置し、工場から運搬されてきた電池モジュールを昇降及び押し込み機能を備えた専用冶具によって一つずつ据付用架台の内部にセットしていた。しかしこの専用冶具は据付が完了した後は不要となるため、コストの無駄を生じていた。また据付用架台の建設工事にも多くの日数とコストとが必要であった。
【0004】
また、電池モジュールは重量物であり、鉄骨製の輸送用架台に緩衝材とともに収納した状態で工場から出荷されている。NaS電池は海外への輸出も多いため、輸送中のトラブルを避けることができる十分な強度を持った輸送用架台が用いられている。しかしこの輸送用架台は電池モジュールを据付用架台に据え付けた後は不要となり、現地で廃棄するにしても日本に返送するにしても多くのコストが必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−275072号公報
【特許文献2】特開平5−275113号公報
【特許文献3】特開平5−275114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記した従来の問題点を解決し、据付用架台の製作コストを削減することができ、輸送用架台の廃棄や返送に要するコストを削減することができ、さらに従来のような電池モジュールを昇降及び押し込むための専用冶具を用いることなく据付が可能な集合電池用架台を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するためになされた本発明は、底枠の四隅に立設された支柱を備え、内部に電池モジュールを収納して輸送するための架台であって、各支柱の上端部に嵌合用突起を形成するとともに、各支柱の底部にこれらの嵌合用突起が嵌合される嵌合孔を形成し、下側の支柱の嵌合用突起と上側の支柱の嵌合孔とを嵌合させて段積み設置することにより、据付用架台として使用可能とし
、輸送時または倉庫保管時に底枠と電池モジュールに挟まれ、据付時には取り除かれる緩衝材を持ち、その底枠と電池モジュールに挟まれる緩衝材の厚さに対応する高さのスペーサを、下側の支柱と上側の支柱との間に介在させることを特徴とするものである。
【0008】
なお請求項2のように、嵌合用突起の上部がテーパ状であることが好ましい。
【0009】
また請求項3のように、対をなす支柱の下端部間に、荷重分散用の板状部材を配置することが好ましい。請求項4のように、この板状部材は底コーナー部に丸みを持たせた断面U字形状のものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の集合電池用架台は、輸送用の架台をそのまま段積みすることによって据付用架台として使用できるため、予め据付用架台を設置する必要がなくなり、据付用架台の製作コストを削減することができるのみならず、工事期間の短縮化が可能である。しかも輸送用架台の廃棄や返送を要しないので、そのコストも削減することができる。さらにフォークリフトによる段積みが可能であるから、従来のような専用冶具も不要となる。
【0012】
請求項2のように嵌合用突起の上部をテーパ状としておけば、下側の架台と上側の架台が多少ずれた場合にも、下側の支柱の嵌合用突起と上側の支柱の嵌合孔とを容易に嵌合させ、位置決めしながら段積みが可能となる。
【0013】
請求項3のように対をなす支柱の下端部間に荷重分散用の板状部材を配置しておけば、輸送時のコンテナの木製の床を傷付けることがなくなり、また請求項4のように板状部材を底コーナー部に丸みを持たせた断面U字形状としておけば、コンテナ内部への押し込みやコンテナからの引き出しの際にも滑り易くなる。
【0014】
また、電池モジュールの輸送時や倉庫保管時には緩衝材が用いられるために、据付状態よりも電池モジュールの上下方向の間隔を広くする必要があるが、
本発明では底枠と電池モジュールに挟まれる緩衝材の厚さに対応する高さのスペーサを、下側の支柱と上側の支柱との間に介在させることにより、高さの調節が可能である。このスペーサは据付時には取り除けばよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図10】輸送時や倉庫保管時の状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
図1、
図2に示されるように、本発明の集合電池用架台は、内部に電池モジュール1が収納される鋼鉄製の架台であって、電池モジュール1を支持する底枠2の四隅に、支柱3を備えたものである。電池モジュール1はこの実施形態ではNaS電池であるが、前記したようにLiイオン電池、Ni-H
2電池などの集合電池であってもよい。電池モジュール1は直方体状のケースの内部に数百本の単電池を収納したもので、重量物である。4は支柱3の上部間を結ぶ連結材であるがその配置は自由であり、筋交いのように斜めの連結材を加えてもよい。電池モジュール1はこのような集合電池用架台に収納された状態で、輸送されるものである。
【0017】
本発明の集合電池用架台の支柱3は、横断面が略正方形の角型鋼管よりなる。
図3に示すように各支柱3の上端部には嵌合用突起5が突設されている。この嵌合用突起5は円柱の上部をテーパ状部6とするとともに、横孔7を貫通させた構造であり、支柱3の上端部に溶接されている。また各支柱3の底部に溶接された底板8には、嵌合用突起5が嵌合される嵌合孔9が形成されている。また支柱3の下端部付近にも横孔10が形成されている。
【0018】
本発明の集合電池用架台は上記のような構造の支柱3を備えているので、集合電池用架台を上下に重ね、
図4に示すように下側の支柱3の嵌合用突起5と上側の支柱3の嵌合孔9とを嵌合させることにより、段積み設置することができる。このような段積みは、電池モジュール1を収納したままの集合電池用架台をフォークリフトによって持ち上げる方法で実施可能であり、従来のような専用冶具は不要である。
図5に3段の段積み状態を示したが、段数は任意に増減することができる。
【0019】
このとき、嵌合用突起5の上部をテーパ状部6としておけば、下側の架台と上側の架台が多少ずれた場合にも、下側の支柱3の嵌合用突起5を上側の支柱3の嵌合孔9に嵌合させ易くなる。またテーパ状部6がガイド部となって上下の位置決めをしながら段積みが可能となる。その後、
図4に示すように嵌合用突起5の横孔7と支柱3の下端部の横孔10とにボルト11を通してナット12で固定すれば、脱落するおそれのない強固な段積みが可能となり、この状態で据え付けが完了となる。なお
図5には示されていないが、水平方向にも本発明の集合電池用架台を密接配置し、連続した状態で据え付けることができる。
【0020】
上記のように、本発明の集合電池用架台は輸送用の架台をそのまま段積みすることにより、輸送用の架台を据付用架台として用いるものである。このため、従来のように予め据付用架台を設置する必要がなくなり、据付用架台の製作コストを削減することができるのみならず、工事期間の短縮化が可能である。また従来は現地で電池モジュール1を取り出して不要となった輸送用架台は廃棄したり返送したりしていたのであるが、本発明ではそれらの必要もなくなり、その分のコストも削減することができる。さらに本発明の集合電池用架台はフォークリフトによる段積みが可能であるから、従来のような据付用の専用冶具も不要となり、一層のコストダウンを図ることができる。
【0021】
上記のように、本発明の集合電池用架台は輸送用架台及び据付用架台として使用されるものであり、船舶輸送時にはコンテナが用いられる。コンテナの床は木製であるため、4本の支柱3が下方に突出した構造であると荷重が集中して床面を損傷し易い。また縦長のコンテナへの搬入・搬出の際にはフォークリフトにより集合電池用架台を押し込んだり、引き出したりすることとなるが、支柱3が木製の床面に食い込んでしまいこれらの作業が円滑に行えないおそれがある。
【0022】
そこで
図6、
図7に示すように、対をなす支柱3(前後の支柱または左右の支柱)の下端部間に、荷重分散用の板状部材13を配置しておくことが好ましい。この実施形態では断面がU字状の鋼材を左右の支柱3、3間にボルト止めした。なお、底コーナー部に丸みを持たせておくことが好ましい。このような板状部材13を用いれば、輸送時にコンテナの木製の床を傷付けることがなくなり、また押し込んだり引き出したりするときに木製の床に食い込むこともない。
【0023】
この板状部材13は輸送時に有益なものであるが、据付の際には必ずしも必要ではない。このため据え付けに先立って板状部材13は取り外すことも可能であるが、前記した嵌合孔9と同じ嵌合孔を設けておけば、板状部材13を装着したままで据え付けることも可能である。
【0024】
なお輸送時や倉庫保管時には、
図10に示すように緩衝材20を
底枠2と電池モジュール1との間に挟んで損傷防止を図ることが行われているが、緩衝材20の分だけ電池モジュール1が持ち上げられ、上方の架台の底枠2と干渉することがある。しかも据付時には、緩衝材20は取り除かれる。そこで輸送時や倉庫保管時には、
図8、
図9に示されるスペーサ21を下側の支柱3と上側の支柱3との間に挿入し、上下の架台間の間隔を拡大し、据付時にはこのスペーサ21を取り外し、上下の架台間の間隔を元に戻すことが好ましい。
【0025】
このスペーサ21は前記した支柱3と同様に上端部には嵌合用突起5を備え、底板8に嵌合孔9を設けた構造であり、その高さは緩衝材20の高さに対応させてある。このためスペーサ21の嵌合孔9を下側の架台の支柱3の嵌合用突起5に嵌合させ、スペーサ21の嵌合用突起5に上側の架台の支柱3の嵌合孔9を嵌合させることによって、上下の架台間の間隔を緩衝材20の高さ分だけ拡大することができる。
【符号の説明】
【0026】
1 電池モジュール
2 底枠
3 支柱
4 連結材
5 嵌合用突起
6 テーパ状部
7 横孔
8 底板
9 嵌合孔
10 横孔
11 ボルト
12 ナット
13 板状部材
20 緩衝材
21 スペーサ