特許第5793768号(P5793768)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5793768
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】周波数ホッピング方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/7143 20110101AFI20150928BHJP
【FI】
   H04B1/7143
【請求項の数】12
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-12933(P2014-12933)
(22)【出願日】2014年1月28日
(65)【公開番号】特開2015-142191(P2015-142191A)
(43)【公開日】2015年8月3日
【審査請求日】2014年1月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】390014306
【氏名又は名称】防衛省技術研究本部長
(74)【代理人】
【識別番号】100079290
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 隆
(72)【発明者】
【氏名】船田 吉丸
【審査官】 羽岡 さやか
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−124837(JP,A)
【文献】 特開平03−011833(JP,A)
【文献】 特開2005−045663(JP,A)
【文献】 特開平08−204615(JP,A)
【文献】 特開2005−142860(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/713
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の周期を持ち広い周波数範囲を広い周波数間隔でホッピングする第1のホッピングパターンと、前記第1の周期と異なる第2の周期を持ち狭い周波数範囲を狭い周波数間隔でホッピングする第2のホッピングパターンとを合成し、この合成したホッピングパターンに基づいて一つの局部発振器による発振周波数の周波数ホッピングを行う、周波数ホッピング方法であって、
前記第2のホッピングパターンは、前記第1のホッピングパターンに含まれる各周波数に、当該周波数に割り当てられた占有帯域幅内で変動を加えるものである、周波数ホッピング方法。
【請求項2】
第1の周期を持ち広い周波数範囲を広い周波数間隔でホッピングする第1のホッピングパターンと、前記第1の周期と異なる第2の周期を持ち狭い周波数範囲を狭い周波数間隔でホッピングする第2のホッピングパターンとを合成し、この合成したホッピングパターンに基づいて、一群の局部発振器の発振出力のいずれかを選択することによって得られる発振周波数の周波数ホッピングを行う、周波数ホッピング方法であって、
前記第2のホッピングパターンは、前記第1のホッピングパターンに含まれる各周波数に、当該周波数に割り当てられた占有帯域幅内で変動を加えるものである、周波数ホッピング方法。
【請求項3】
所定の周波数を境にいずれの局部発振器を使用するかを切り替える、請求項に記載の周波数ホッピング方法。
【請求項4】
ある局部発振器の使用中に、次に使用する局部発振器に予め発振させる、請求項2又は3に記載の周波数ホッピング方法。
【請求項5】
ある局部発振器の使用が開始された後に、前に使用していた局部発振器の発振を終了させる、請求項2から4のいずれか一項に記載の周波数ホッピング方法。
【請求項6】
前記第1のホッピングパターンに含まれる周波数の数をn、前記第2のホッピングパターンに含まれる周波数の数をmとしたとき、前記合成したホッピングパターンに含まれる周波数の数がn×mである、請求項1から5のいずれか一項に記載の周波数ホッピング方法。
【請求項7】
前記第1及び第2のホッピングパターンをそれぞれ複数準備しておき、合成する前記第1及び第2のホッピングパターンの組合せを所定のタイミングで変更する、請求項1からのいずれか一項に記載の周波数ホッピング方法。
【請求項8】
一つの局部発振器と、前記局部発振器を制御する制御部とを備え、前記制御部は、第1の周期を持ち広い周波数範囲を広い周波数間隔でホッピングする第1のホッピングパターンと、前記第1の周期と異なる第2の周期を持ち狭い周波数範囲を狭い周波数間隔でホッピングする第2のホッピングパターンとを記憶したメモリを有し、前記第1及び第2のホッピングパターンを合成したホッピングパターンに基づいて前記局部発振器の発振周波数をホッピングさせる、周波数ホッピング装置であって、
前記第2のホッピングパターンは、前記第1のホッピングパターンに含まれる各周波数に、当該周波数に割り当てられた占有帯域幅内で変動を加えるものである、周波数ホッピング装置。
【請求項9】
一群の局部発振器と、前記一群の局部発振器を制御する制御部とを備え、前記制御部は、第1の周期を持ち広い周波数範囲を広い周波数間隔でホッピングする第1のホッピングパターンと、前記第1の周期と異なる第2の周期を持ち狭い周波数範囲を狭い周波数間隔でホッピングする第2のホッピングパターンとを記憶したメモリを有し、前記第1及び第2のホッピングパターンを合成したホッピングパターンに基づいて、前記一群の局部発振器の発振出力のいずれかを選択することによって得られる発振周波数をホッピングさせる、周波数ホッピング装置であって、
前記第2のホッピングパターンは、前記第1のホッピングパターンに含まれる各周波数に、当該周波数に割り当てられた占有帯域幅内で変動を加えるものである、周波数ホッピング装置。
【請求項10】
前記制御部は、所定の周波数を境にいずれの局部発振器を使用するかを切り替える、請求項に記載の周波数ホッピング装置。
【請求項11】
前記一群の局部発振器のいずれかの出力信号を選択して混合器に入力する選択手段とを備え、前記制御部は、ある局部発振器の出力信号を選択中に、次に選択する局部発振器に予め発振させる、請求項9又は10に記載の周波数ホッピング装置。
【請求項12】
前記制御部は、ある局部発振器の出力信号が選択された後に、前に使用していた局部発振器の発振を終了させる、請求項9から11のいずれか一項に記載の周波数ホッピング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばBluetooth(登録商標)、無線ICタグ、セキュリティを要するデータ通信、又は音声通信等に利用可能な周波数ホッピング方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、周波数ホッピングを使用する送受信機は、利用可能な周波数を多く持っているが、混信を避けるために周波数が分割して割り当てられる関係で、実際に利用できる周波数は僅かであることが多い。すなわち、多数の送受信機(無線局)が同時に使用される可能性があり、他の送受信機、或いは同様の送受信機から構成される多数のネットワークに混信を与えないように、例えば制御局が多数の送受信機(無線局)で構成される多数のネットワークに対して利用できる周波数を分割して割り当てるため、一つのネットワークが使用できるホッピング周波数は僅かであることが多い。制御局が多数のネットワークに対して周波数が衝突しないようなホッピングパターンを割り当てることもある。
【0003】
若しくは、最初から使用できる周波数が少ない場合や、使える周波数帯域幅が広く理論的には使用できる周波数が多いものの他の送受信機(無線局)に割り当てられた周波数を電波干渉防止の観点から使用しないようにする場合等は、現実的に使用できる周波数が少ないことが多い。また、制御局が異なり全く独立した多数のネットワークにおいては、相関のない独立した異なるホッピングパターンが使用されるので、周波数衝突が発生し通信障害による伝送レートが低下することがある。
【0004】
そして、セキュリティを要する周波数ホッピング送受信機において、使用周波数が少ない場合は、第三者が傍受し容易に使用周波数を知ることができる。そして使用周波数を容易に知ることにより、第三者が電波妨害を掛けることが容易となる。また、下記特許文献5のFH用非同期受信機(FH:周波数ホッピング)により周波数ホッピングの効果を除去される可能性がある。さらに、使用周波数が少ないとホッピングレートを上げても使用周波数における電波が頻繁に受信されてしまうため、第三者の使用する受信機の周波数スキャン(周波数走査)に容易に引っ掛かり、ホッピングレートを上げる効果が小さくなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−45663号公報(第10頁、図1
【特許文献2】特開平11−68701号公報(第5頁、図1
【特許文献3】特開平9−116526公報(第13頁、図1、第14頁、図9
【特許文献4】特開2003−32739公報(第14頁、図1
【特許文献5】特開平11−103266公報(第6頁、図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述のように、周波数ホッピングを使用する送受信機においては実際に使用できる周波数に限りがあるため、多数の送受信機を同時に使用できるよう想定されたネットワークで近隣のネットワークと相関がなく独立したホッピングパターンを使用する場合は、ホッピングパターンを変えても、またホッピングレートを上げても周波数の衝突が多く発生する可能性が高く再送回数が増加する傾向にあり、伝送レートを高くすることができず、高速なデータ伝送又は高音質な音声通信の障害になっていた。また、周波数の衝突が多いと受信時の雑音が増え、信号対妨害波比(S/J)又は信号対雑音比(S/N)が悪化し、送受信機間の通信距離を短くする要因にもなっていた。
【0007】
そして、セキュリティを要する周波数ホッピング送受信機においては、使用周波数が少ないと、ホッピングレートを上げたとしても第三者が受信又は傍受し容易に使用周波数を知ることができ、第三者が狭帯域の妨害電波を使用して簡単に効果的に妨害を掛けることができた。若しくは、第三者がホッピングの効果を除去し、あたかも一つの周波数で受信しているようにすることもできた。
【0008】
本発明はこうした状況を認識してなされたものであり、その目的は、使用可能な周波数が限られた中でも周波数衝突を効果的に避け、セキュリティも向上させることが可能な周波数ホッピング方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様は、周波数ホッピング方法である。この方法は、第1の周期を持ち広い周波数範囲を広い周波数間隔でホッピングする第1のホッピングパターンと、前記第1の周期と異なる第2の周期を持ち狭い周波数範囲を狭い周波数間隔でホッピングする第2のホッピングパターンとを合成し、この合成したホッピングパターンに基づいて一つの局部発振器による発振周波数の周波数ホッピングを行う、周波数ホッピング方法であって、
前記第2のホッピングパターンは、前記第1のホッピングパターンに含まれる各周波数に、当該周波数に割り当てられた占有帯域幅内で変動を加えるものである。
【0010】
本発明の第2の態様は、周波数ホッピング方法である。この方法は、第1の周期を持ち広い周波数範囲を広い周波数間隔でホッピングする第1のホッピングパターンと、前記第1の周期と異なる第2の周期を持ち狭い周波数範囲を狭い周波数間隔でホッピングする第2のホッピングパターンとを合成し、この合成したホッピングパターンに基づいて、一群の局部発振器の発振出力のいずれかを選択することによって得られる発振周波数の周波数ホッピングを行う、周波数ホッピング方法であって、
前記第2のホッピングパターンは、前記第1のホッピングパターンに含まれる各周波数に、当該周波数に割り当てられた占有帯域幅内で変動を加えるものである。
【0011】
前記第2の態様において、所定の周波数を境にいずれの局部発振器を使用するかを切り替えてもよい。
【0012】
前記第2の態様において、ある局部発振器の使用中に、次に使用する局部発振器に予め発振させてもよい。
【0013】
前記第2の態様において、ある局部発振器の使用が開始された後に、前に使用していた局部発振器の発振を終了させてもよい。
【0014】
前記第1又は第2の態様において、前記第1のホッピングパターンに含まれる周波数の数をn、前記第2のホッピングパターンに含まれる周波数の数をmとしたとき、前記合成したホッピングパターンに含まれる周波数の数がn×mであってもよい。
【0015】
前記第1又は第2の態様において、前記第1及び第2のホッピングパターンをそれぞれ複数準備しておき、合成する前記第1及び第2のホッピングパターンの組合せを所定のタイミングで変更してもよい。
【0016】
本発明の第3の態様は、周波数ホッピング装置であり、一つの局部発振器と、前記局部発振器を制御する制御部とを備え、前記制御部は、第1の周期を持ち広い周波数範囲を広い周波数間隔でホッピングする第1のホッピングパターンと、前記第1の周期と異なる第2の周期を持ち狭い周波数範囲を狭い周波数間隔でホッピングする第2のホッピングパターンとを記憶したメモリを有し、前記第1及び第2のホッピングパターンを合成したホッピングパターンに基づいて前記局部発振器の発振周波数をホッピングさせる構成であって、
前記第2のホッピングパターンは、前記第1のホッピングパターンに含まれる各周波数に、当該周波数に割り当てられた占有帯域幅内で変動を加えるものである。
本発明の第4の態様は、周波数ホッピング装置であり、一群の局部発振器と、前記一群の局部発振器を制御する制御部とを備え、前記制御部は、第1の周期を持ち広い周波数範囲を広い周波数間隔でホッピングする第1のホッピングパターンと、前記第1の周期と異なる第2の周期を持ち狭い周波数範囲を狭い周波数間隔でホッピングする第2のホッピングパターンとを記憶したメモリを有し、前記第1及び第2のホッピングパターンを合成したホッピングパターンに基づいて、前記一群の局部発振器の発振出力のいずれかを選択することによって得られる発振周波数をホッピングさせる構成であって、
前記第2のホッピングパターンは、前記第1のホッピングパターンに含まれる各周波数に、当該周波数に割り当てられた占有帯域幅内で変動を加えるものである。
【0017】
前記第4の態様において、前記制御部は、所定の周波数を境にいずれの局部発振器を使用するかを切り替えてもよい。
【0018】
前記第4の態様において、前記一群の局部発振器のいずれかの出力信号を選択して混合器に入力する選択手段とを備え、前記制御部は、ある局部発振器の出力信号を選択中に、次に選択する局部発振器に予め発振させてもよい。
【0019】
前記第4の態様において、前記制御部は、ある局部発振器の出力信号が選択された後に、前に使用していた局部発振器の発振を終了させてもよい。
【0020】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現をシステムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、使用可能な周波数が限られた中でも周波数衝突を効果的に避け、セキュリティも向上させることが可能な周波数ホッピング方法及び装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施の形態に係る送受信機の基本構成を示すブロック図。
図2】ホッピング周波数に関し、実際に使用できる周波数と理論上使用できる周波数の関係を示す説明図。
図3図2に示した周波数のうち実際に使用できる周波数を抜き出した説明図。
図4】従来例に関し、信号処理器11に記憶されている複数のホッピングパターンの中から使用するホッピングパターンを選択し、周波数情報をPLL局部発振器7に伝達する関係を示した説明図。
図5】他の無線局又は送受信機と電波干渉がなく理想的な環境で使用可能なホッピングパターン(ホッピングパターン1,2)と、業務上実際に使用できる周波数を使用して作成されたホッピングパターン(ホッピングパターンA,B)との違い、及びそれらのホッピングパターンと秘匿性についての特徴を示す説明図。
図6】実施の形態に関し、図4に示した各ホッピングパターンに加えて周波数衝突の回避性を向上するホッピングパターン(偏差パターンA,B)を信号処理器11に更に記憶しておき、その中から使用するホッピングパターンを選択し、周波数情報をPLL局部発振器7に伝達する関係を示した説明図。
図7】実施の形態に関し、図5に示した各ホッピングパターンに加えて、偏差パターンA,Bの偏差量及び偏差の変化について説明した説明図。
図8】従来及び実施の形態のPLL局部発振器7の発振周波数及びステップ間隔の関係を説明した説明図。
図9】実施の形態に関し、高速ホッピング及び安定周波数出力に対応したPLL局部発振器7の構成説明図。
図10図9のPLL局部発振器7の出力のタイムチャート。
図11】隣り合うホッピング周波数における変調された受信波の帯域幅及びガードバンドの説明図。
図12】中間周波数に変換された受信波のスペクトラムの形状説明図。
図13図7に記載のホッピングパターンAの周波数における目的の受信波、及び重畳した狭帯域の妨害(混信)波の関係を示した説明図。
図14】実施の形態に関し、図7に記載のホッピングパターンAの周波数に偏差パターンAの周波数が加算された周波数における目的の受信波、及び重畳した狭帯域の妨害(混信)波の関係を示した説明図。
図15】実施の形態に関し、図7に記載のホッピングパターンAの周波数に偏差パターンAの周波数が加算された周波数における目的の受信波、及び重畳した広帯域の妨害(混信)波の関係を示した説明図。
図16】実施の形態に関し、図7に記載のホッピングパターンAの周波数に偏差パターンAの周波数が加算された周波数における目的の受信波、及び重畳した同類かつ中心周波数のずれた変調波(混信波)の関係を示した説明図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を詳述する。なお、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は発明を限定するものではなく例示であり、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0024】
図1は、本発明の実施の形態に係る送受信機の基本構成を示すブロック図である。この送受信機は、例えば、Bluetooth(登録商標)又は無線ICタグに使用する周波数ホッピングを行う送受信機、或いはセキュリティを要する周波数ホッピングを行う送受信機であり、多数の送受信機を同時に使用できるよう想定されたネットワークで、近隣のネットワークと相関がなく独立した周波数ホッピングパターンを使用し、近隣のネットワークと周波数衝突が発生する可能性のある送受信機を想定している。
【0025】
図1に示すように、本実施の形態の送受信機は、使用周波数帯域の電波のみ通過させるバンドパスフィルタ1と、信号処理器11の制御に従い送受信を高速に切換えできる送受切換器2と、送信電波を規定の出力電力まで増幅する増幅器3と、IF(中間周波数)信号とPLL局部発振器信号を混合する送信部の混合器4、或いは受信電波とPLL局部発振器信号を混合する受信部の混合器4と、IF(中間周波数)信号を増幅するIF増幅器5と、変調データを発振器8の出力する基準信号に乗せる変調器6と、ホッピング周波数の基準信号を発振出力するPLL局部発振器7と、IF(中間周波数)信号を発振出力する発振器8と、微弱な受信電波を増幅する増幅器9と、IF信号からベースバンドデータを取り出す復調器10と、ホッピングパターンの選択、PLL局部発振器7或いは送受切換器2の制御、並びに送受信するデータの加工及び分離を行う制御部としての信号処理器11と、アンテナ16とから構成される。なお、このブロック図の受信部は簡単な構成としてシングルスーパーヘテロダイン方式になっているが、ダブルスーパーヘテロダイン方式など、多段のIFを使用した方式でもよい。
【0026】
図2は、ホッピング周波数に関し、実際に使用できる周波数と理論上使用できる周波数の関係を示す説明図である。図2において実際に使用できる周波数とは、例えば他のネットワークの送受信機又は他無線局と周波数の衝突を避けるために、予め使用周波数を協議して当該送受信機が使用できる周波数である。また、理論上使用できる周波数とは、周波数の割当てがあり使用できるのであるが、他のネットワークの送受信機又は他無線局と周波数の衝突を避けるために、予め使用周波数を協議して、使用を休止した周波数である。ただし、予め使用周波数を協議することが困難な場合や、他のネットワークと周波数に相関のない場合は業務上実際に使用できる周波数と理論上使用できる周波数との区分けがなくなり、全ての周波数を使用することも可能となり、衝突が起こることが多くなる。なお、図2において実線(実際に使用できる周波数でf1,f4,f8など)と点線(理論上使用できる周波数でf2,f3,f5など)は等間隔に並んでないが、PLL局部発振器7の発振周波数のstepに合わせて、例えば10KHzごとに周波数が並んでいてもよい。
【0027】
図3は、図2の実線の部分を抜き出した図で、実際に使用できる周波数が少ないことが容易に理解できるようにした図である。
【0028】
図4は、従来例に関し、信号処理器11に記憶されている複数のホッピングパターンの中から使用するホッピングパターンを選択し、周波数情報をPLL局部発振器7に伝達する関係を示した説明図である。図4では、例えばホッピングパターンが4種類あり、これらのうち1種類を選択し、選択したホッピングパターンに応じた刻々と変化する周波数情報をPLL局部発振器7に送り、PLL局部発振器7を制御している。
【0029】
図5は、図4に記載されたホッピングパターンについて説明したものであり、ホッピングパターン1,2は実際に使用できる周波数と理論上使用できる周波数とを使用して作成されたホッピングパターンである。一方、ホッピングパターンA,Bは実際に使用できる周波数のみを使用して作成されたホッピングパターンである。なお、ホッピングパターンA,Bのホッピング周期は、使用できる周波数が少ないことからホッピングパターン1,2と比較して周期が短くなる。
【0030】
従来は、秘匿性を向上させるために、図5の下段に示すようにホッピングレートを上げたりしている。例えば、汎用として使われているBluetooth(登録商標)では、2.4GHz帯の中の1MHzごとに79波を使用し、1,600回/秒のレートでホッピングを行っている。また、セキュリティを要する送受信機においては、例えば米軍規格のFighter Data Link 16においては77,800回/秒のレートでホッピングを行っている。
【0031】
しかし、いくらホッピングレートを上げても使用周波数が少なければ、容易に第三者の受信機のスキャンに引っ掛かる確率が高くなる。また、スペクトラムアナライザーなどの測定器でMax hold受信にすれば容易に使用周波数の輝線が立ってきて、使用周波数が知られてしまう。
【0032】
図6は、実施の形態に関し、図4に示した各ホッピングパターンに加えて周波数衝突の回避性を向上するホッピングパターン(偏差パターンA,B)を信号処理器11に更に記憶しておき、その中から使用するホッピングパターンを選択し、周波数情報をPLL局部発振器7に伝達する関係を示した説明図である。ホッピングパターン1,2及びホッピングパターンA,Bは、第1のホッピングパターンの例示であり、図6で追加された偏差パターンA,Bは、第2のホッピングパターンの例示である。第1及び第2のホッピングパターンのホッピング周期は相互に異なる。
【0033】
図6では、一例として、第1のホッピングパターンの中から選択されたホッピングパターンAの周波数情報と、第2のホッピングパターンの中から選択された偏差パターンAの周波数情報とを合成し、その合成値を信号処理部11からPLL局部発振器7に送り、PLL局部発振器7を制御している。そしてこの合成値による周波数をPLL局部発振器7に発振させることにより、周波数衝突が少なくなり、データの再送信回数が減り、結果として高速なデータ伝送を可能とする。また、周波数の相互干渉が少なくなり、雑音のレベルが小さくなり、結果として高音質な音声通信の向上、通信距離の向上を可能にする。第1のホッピングパターンに含まれる周波数の数をn、第2のホッピングパターンに含まれる周波数の数をmとすれば、第1及び第2のホッピングパターンを合成したホッピングパターンに含まれる周波数の数は最大でn×mとなる。なお、合成する第1及び第2のホッピングパターンの組合せは、予め設定した時間、周期回数に達した場合、あるいは予め設定した使用表(組合せの切替に関する情報を記憶したテーブル)に基づいて変更するようにしてもよい。
【0034】
ホッピングパターン1,2及びホッピングパターンA,Bは、ある系列のホッピングパターンと別の系列のホッピングパターンの合成後のホッピングパターン、即ち多重合成後のホッピングパターンであってもよいし、ホッピングパターンの基となる乱数系列が多重合成によってできたものであってもよい。ただし、ホッピングパターン1,2及びホッピングパターンA,Bは、合成後のホッピングパターンの指示する周波数情報が、ある基本となる周波数の占有帯域幅内で僅かに変動するものにはなっていない。
【0035】
図7は、図6に記載されたホッピングパターンについて説明したものであり、偏差パターンA,Bのホッピング周波数は変化の範囲が小さい。例えば、ホッピングパターン1,2及びホッピングパターンA,Bは、図2のように変化範囲が100MHzから200MHzにも及ぶ。これに対して偏差パターンA,Bは変化範囲が±十数KHzとなっている。すなわち、本実施の形態では、偏差パターンA,Bの合成により、ホッピングパターン1,2及びホッピングパターンA,Bに含まれる各周波数の占有帯域幅内で、PLL局部発振器7の発振周波数を変化させる。
【0036】
図8は、従来及び実施の形態のPLL局部発振器7の発振周波数及びステップ間隔の関係を説明した説明図である。従来のPLL局部発振器7では、幅広い発振周波数帯に対応するため発振できる周波数のステップ間隔が大きくなってしまう(又はチャンネル数が少なくなってしまう)という欠点があった。このステップ間隔が大きくなることを改善するために、今回のPLL局部発振器7においては、第1のPLL局部発振器12と第2のPLL局部発振器13とを並列使用し、各PLL局部発振器の発振周波数帯を分けている。なお、並列使用するPLL局部発振器の個数は3個以上でもよく、出力周波数のステップ間隔により決定される。
【0037】
図9は、実施の形態に関し、高速ホッピング及び安定周波数出力に対応したPLL局部発振器7の構成説明図である。図9は、図8とは別の方法を示しており、4つのPLL局部発振器を並列使用し、早いホッピングレートに対応させるために、第1のPLL局部発振器12と第3のPLL局部発振器14を低周波側を担当する組とし、第2のPLL局部発振器13と第4のPLL局部発振器15を高周波側を担当する組としている。こうした方法は、一方の組の担当する出力周波数が連続して選択される場合に有効である。すなわち、例えば第1のPLL局部発振器12の発振出力が選択されている最中に第3のPLL局部発振器14の発振を開始し、その後、発振周波数が安定した段階の第3のPLL局部発振器14の発振出力を選択することで、立ち上がり時の周波数変化、立ち下がり時の周波数変化の無い安定した周波数をPLL局部発振器7の発振出力として使用することができる。なお、並列使用するPLL局部発振器は5個以上でもよく、また各組が具備するPLL局部発振器の個数は異なってもよい(例えば、ある組が2個を並列使用し、他の組が3個を並列使用する等)。また、並列使用するPLL局部発振器の組は3組以上であってもよい。PLL局部発振器の選択は、各PLL局部発振器の出力側に設けられた不図示のゲートを信号処理器11の制御で開閉することにより行えばよい。
【0038】
図10は、図9のPLL局部発振器7の出力のタイムチャートである。なお、図10の縦軸は、発振周波数を絶対値として明確には表しておらず、相対値として表しているが、発振周波数の高低の時間的な変化が分かるようになっている。PLL局部発振器7の発振出力の周波数は、時間がt1,t2,t3・・・と経過していくのに応じて変化している(最上段のタイムチャート参照)。なお、各時間の後部においては電波が出ない空白時間、即ちガードタイムが設けられている。ガードタイムは、送受信機間の距離による遅延を考慮し、送受信機間が最大通信距離にあるときに、ある送受信機が受信波を受信した後に送信する場合において、受信波を最後まで受信してから送信できるようにするものである。ガードタイムは、また、相互の送受信機間の僅かな時間同期ずれを緩衝する目的も含んでいる。
【0039】
図10の2段目以下のタイムチャートは、PLL局部発振器7に含まれる各々のPLL局部発振器(第1のPLL局部発振器12〜第4のPLL局部発振器15)の発振周波数の波形を示す。t1〜t3までの期間とt6の期間は、出力周波数が低いので、第1のPLL局部発振器12及び第3のPLL局部発振器14の組が担当している。一方、t4,t5の期間は、出力周波数が高いので、第2のPLL局部発振器13及び第4のPLL局部発振器15の組が担当している。
【0040】
周波数fp,fq,fx,fyは、図7に示すホッピングパターン1,2又はホッピングパターンA,Bを構成する周波数(f1〜fn)のいずれかを示す。なお、図10の2段目以下のタイムチャートにおいて周波数fp,fq,fx,fyは横一直線で示されるが、周波数fp,fq,fx,fyが示す周波数は、信号処理器11の制御に従い、t1,t2,t3・・・で示される期間ごとに変化しうる。
【0041】
図10の2段目以下のタイムチャートにおけるオーバーシュートが見られる波形は、第1のPLL局部発振器12〜第4のPLL局部発振器15の実際の発振周波数の変化を示す波形であり、周波数fp,fq,fx,fyに対して図7に示す偏差パターンA又は偏差パターンBの周波数を合成したものに相当する。発振周波数の変化、オーバーシュート及びアンダーシュートは、各PLL局部発振器の立ち上がり時と立ち下り時に現れる。このため、信号処理器11は、各PLL局部発振器を、当該PLL局部発振器の発振出力を選択する前に(他のPLL局部発振器の使用中に)予め発振させる。信号処理器11は、また、各PLL局部発振器の発振を、次のPLL局部発振器の使用が開始された後に終了させる。例えば、信号処理器11は、第1のPLL局部発振器12が発振しているt1の期間に、次の第3のPLL局部発振器14の発振を開始させ、第3のPLL局部発振器14の発振出力が選択されるt2の期間の後(t3の期間)に第3のPLL局部発振器14の発振を終了させる。これらにより、高いホッピングレートであっても、PLL局部発振器7の出力として、第1のPLL局部発振器12〜第4のPLL局部発振器15の、立ち上がり時の周波数変化、立ち下がり時の周波数変化の無い安定した周波数を使用することが可能となる。
【0042】
図11は、隣り合うホッピング周波数における変調された受信波の帯域幅及びガードバンドの説明図であって、図1の増幅器9から出力される電波のスペクトラムの概要図である。なお、中心周波数がf8とf9のスペクトラムはホッピングしているので実際は同一時刻には現れないが、図は説明を分かり易くするために両方のスペクトラムを描いている。
【0043】
図11の例では、受信信号は帯域幅が40KHz、ガードバンドが5KHzであり、電波のスペクトラムは山形となっている。スペクトラムが山形になる理由は、変調器6の中にある図示しないバンドパスフィルタ(または中間周波数フィルタ)の山形の通過特性により高調波などのスプリアスの発生を遮断するようにしているためである。また、復調器10の中にある図示しないバンドパスフィルタ(または中間周波数フィルタ)の山形の通過特性により、図12に示すように受信部の混合器4を通ったIF(中間周波数)信号もいっそうスペクトラムが山形になる。ガードバンドは、各々の送受信機のPLL局部発振器の周波数発振精度や安定度の違いからくる周波数ずれに起因する相互の周波数干渉を緩衝する目的で設定されている。ガードバンドは、また、送受信機のどちらか或いは両方が移動した場合のドップラー効果による周波数偏移の緩衝も目的とする。
【0044】
フィルタにより受信信号のスペクトルラムが山形になること、及びガードバンドが存在することにより、図7に示す偏差パターンA,Bの偏差量を送受信機相互の周波数干渉の悪影響のない程度にすることで、中心周波数の同じ電波同士の衝突は回避されることが多くなる。
【0045】
図13は、図7に記載のホッピングパターンAの周波数における目的の受信波、及び重畳した狭帯域の妨害(混信)波の関係を示した説明図である。図13は、妨害又は混信波としてCW(無変調)がf1やf21の中心周波数に重畳した場合を示している。なお、中心周波数がf1とf21のスペクトラムはホッピングしているので実際は同一時刻には現れないが、図は説明を分かり易くするために両方のスペクトラムを描いている。図13の場合、例えば中心周波数がf1である電波の総受信電力(各スペクトラムの合計値)が−80dBmの場合で妨害(混信)波が−86dBmであると復調困難となるが、妨害(混信)波が−87dBmでは復調可能となる。すなわち、復調にはS/N(またはS/J)が7dB必要である。
【0046】
図14は、実施の形態に関し、図7に記載のホッピングパターンAの周波数に偏差パターンAの周波数が加算された周波数における目的の受信波、及び重畳した狭帯域の妨害(混信)波の関係を示した説明図である。図14は、妨害又は混信波としてCW(無変調)がf1やf21(偏差パターンAの周波数を加算する前の中心周波数)に重畳した場合を示している。なお、中心周波数がf1+5KHzとf21−12KHzのスペクトラムはホッピングしているので実際は同一時刻には現れないが、図は説明を分かり易くするために両方のスペクトラムを描いている。図14の場合、例えば中心周波数がf1+5KHzの電波の総受信電力(各スペクトラムの合計値)が−80dBmの場合で妨害(混信)波が−84dBmであると復調困難となるが、妨害(混信)波が−85dBmでは復調可能となる。すなわち、復調にはS/Nが5dB必要である。同様に例えば中心周波数がf21−12KHzの総受信電力(各スペクトラムの合計値)が−80dBmの場合で妨害(混信)波が−81dBmであると復調困難となるが、妨害(混信)波が−82dBmでは復調可能となる。すなわち、復調にはS/Nが2dB必要である。
【0047】
図15は、実施の形態に関し、図7に記載のホッピングパターンAの周波数に偏差パターンAの周波数が加算された周波数における目的の受信波、及び重畳した広帯域の妨害(混信)波の関係を示した説明図である。図13の例では中心周波数がf1の電波の総受信電力(各スペクトラムの合計値)が−80dBmの場合で妨害(混信)波が−86dBmであると復調困難になっていたが、図15のようにf1+偏差パターンAの周波数に対応させるため妨害(混信)波を広帯域化した結果、妨害(混信)波のピーク電力が例えば−96dBmになってしまう。なお、この−96dBmをCW同様にN(ノイズ)として単純に考えると、Nが10dBさらに小さくなったため妨害効果が全くなくなった例となる。広帯域の妨害波の効果を出すためには、図15で中心周波数がf21−12KHzの電波に重畳した妨害(混信)波のように、単純に考えるとf21での電力値が−86dBm必要となる。実際には広帯域化しているので、妨害効果を得るためのN(ノイズ)の総電力値は、例えば−78dBmになってしまう。
【0048】
以上のことからホッピングパターンAと偏差パターンAの合成により、第三者は下記のように妨害を掛けにくくなる。
1 電波を受信する場合は、受信周波数の規則性がなくなり、高速同期及び安定受信ができなくなる。
2 電波を妨害する場合は、妨害に効果的なCWを使用できなくなり、広帯域の電波を送信する必要がある。しかし単位周波数あたりの送信電力が小さくなるため、効果的な妨害ができなくなる。
【0049】
図16は、実施の形態に関し、図7に記載のホッピングパターンAの周波数に偏差パターンAの周波数が加算された周波数における目的の受信波、及び重畳した同類かつ中心周波数のずれた変調波(混信波)の関係を示した説明図である。図16において重畳している混信波は、当該送受信機と同様の近隣のネットワークの送受信機が発したデータ信号波であり、目的の受信波に対して中心周波数がずれている。なお、近隣のネットワークとの周波数衝突は、当該送受信機のホッピングパターンと近隣のネットワークの送受信機のホッピングパターンとの間に相関がない場合に起こる。
【0050】
図16に示すような混信波が重畳すると雑音であるN(ノイズ)が大きくなることにより当該送受信機のIF信号のS/Nが悪くなる。しかし、前記の図13及び図14の説明から、目的の受信波に対して混信波の中心周波数がずれているため雑音レベルは僅かに低下し、受信波の欠落が低下する。結果として復調器10における復調後のベースバンドデータの欠落が少なくなり、伝送レートの向上、高音質な音声通信の向上、通信距離の向上が可能となる。そして伝送レートが高くできるということは、単位時間当たりのデータ伝送量が増えることになり、ホッピングレートを上げ、ホッピングに伴う制御データが増えてもベースバンドデータ量を減らす必要がなくなる。したがってホッピングレートも向上することが可能となる。
【0051】
本実施の形態によれば、下記の効果を奏することができる。
【0052】
(1) 受信機の通過帯域幅はフィルターの特性により通常は山形となり、通過帯域の中心周波数から離れるほど他の信号即ち雑音から受ける影響が小さくなる。したがって、本実施の形態のように偏差パターンを合成することで、ホッピング周波数の異なる他の送受信機の発する電波との完全な周波数衝突は回避されることが多くなり、S/NまたはS/Jが改善され、そして近隣する相関のない送受信機又はネットワークの悪影響を受けることを少なくし、結果として高速なデータ伝送又は高音質な音声通信の向上、通信距離の向上が可能となる。
【0053】
(2) 使用周波数が多数生成されたことにより、同一周波数を積分した度数が小さくなり、第三者の受信機に対しては、受信レベルの低下に伴い受信スキャン(受信走査)機能の無効化を図ることができ、この結果電波妨害を行うことが困難になる。また、仮にCW妨害や変調波による広帯域幅の妨害を受けたとしても、その効果を小さくすることができる。
【0054】
(3) 使用周波数が多数生成されたことにより、特許文献5のFH用非同期受信機のように局部発振器を多数具備する必要のある受信機にとっても、受信信号が通過帯域幅の中心に位置しなくなることが多くなり、復調後の信号レベルの低下によりホッピングを除去する効果が低下させることができる。
【0055】
(4) 合成するホッピングパターンの組合せ(図7のホッピングパターンと偏差パターンとの組合せ)を予め設定した時間、周期回数に達した場合に、あるいは予め設定した使用表に基づいて変更すれば、一層第三者の受信機の受信スキャン(受信走査)機能の無効化を図ることができる。
【0056】
(5) 高周波側を担当するPLL局部発振器と低周波側を担当するPLL局部発振器を並列使用すれば、周波数分解能を上げることができ、発振できる周波数のステップ間隔を小さくすることができる。
【0057】
(6) 同じ周波数範囲を担当する複数のPLL局部発振器を用いれば、図10で説明したように、発振の立ち上がり時、立ち下り時の周波数の歪のある部分を除いた周波数を選択使用することが可能となり、発振周波数の安定性を向上することができる。
【0058】
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、実施の形態の各構成要素や各処理プロセスには請求項に記載の範囲で種々の変形が可能であることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0059】
1 BPF(バンドパスフィルタ)、2 送受切換器、3 増幅器、4 混合器、5 IF増幅器、6 変調器、7 PLL局部発振器、8 発振器、9 増幅器、10 復調器、ll 信号処理器、12 第1のPLL局部発振器、13 第2のPLL局部発振器、14 第3のPLL局部発振器、15 第4のPLL局部発振器、16 アンテナ
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
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図10
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図16