(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5793772
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】埋込み型医療デバイスのための相分離したブロックコポリマーコーティング
(51)【国際特許分類】
A61F 2/82 20130101AFI20150928BHJP
A61L 31/00 20060101ALI20150928BHJP
A61M 29/00 20060101ALI20150928BHJP
【FI】
A61F2/82
A61L31/00 Z
A61M29/00
【請求項の数】6
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2009-519470(P2009-519470)
(86)(22)【出願日】2007年7月5日
(65)【公表番号】特表2009-542418(P2009-542418A)
(43)【公表日】2009年12月3日
(86)【国際出願番号】US2007015569
(87)【国際公開番号】WO2008005530
(87)【国際公開日】20080110
【審査請求日】2010年6月23日
【審判番号】不服2013-20589(P2013-20589/J1)
【審判請求日】2013年10月23日
(31)【優先権主張番号】11/482,599
(32)【優先日】2006年7月7日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507135788
【氏名又は名称】アボット カーディオヴァスキュラー システムズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100126653
【弁理士】
【氏名又は名称】木元 克輔
(74)【代理人】
【識別番号】100139000
【弁理士】
【氏名又は名称】城戸 博兒
(74)【代理人】
【識別番号】100152191
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 正人
(72)【発明者】
【氏名】ホッサイニー, シド エフ. エー.
(72)【発明者】
【氏名】グローサー, ティエリー
【合議体】
【審判長】
新居田 知生
【審判官】
小久保 勝伊
【審判官】
冨永 保
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2006/071860(WO,A1)
【文献】
国際公開第2005/011770(WO,A1)
【文献】
欧州特許出願公開第1440698(EP,A1)
【文献】
国際公開第2006/047378(WO,A1)
【文献】
Biomacromolecules,2006,7,2086−2090
【文献】
Biomacromolecules,2005,6,2570−2582
【文献】
Biomacromolecules,2005,6,3410−3418
【文献】
Macromolecules,2005,38,8183−8191
【文献】
Journal of Controlled Release,2001,72,203−215
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F2/82-2/97
A61L15/00-31/00
A61M25/00-29/04,35/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種又は複数の疎水性の活性薬剤と、1種又は複数の親水性のペプチドと、2つ以上のポリマーブロックからなり当該ブロックが線状配列であるブロックコポリマーと、を含むステントであって、
少なくとも1つのポリマーブロックが、ヒドロキシルエチルメタクリレート(HEMA)、メタクリル酸(MA)、アクリル酸(AA)ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)、ヒドロキシプロピルメタクリルアミド、アルコキシメタクリレート、アルコキシアクリレート及び3−トリメチルシリルプロピルメタクリレート(TMSPMA)のホモポリマー並びにランダムコポリマー、ヒドロキシ官能基を有するポリ(ビニルピロリドン)、デキストリン、エラスチン、キトサン、並びにこれらの組み合わせからなる群より選択される親水性のブロックであり、
少なくとも1つのポリマーブロックが、ポリアルキレン、ポリ(4−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(4−ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(ホスホエステル)、ポリジメチルオキサノン(PDMS)、ポリジメチルシロキサン、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(エステルウレタン)、ポリ(エーテルウレタン)、ポリ(カーボネートウレタン)、ポリ(シリコーンウレタン)、ポリ(尿素ウレタン)、及びこれらのコポリマー、ポリ(エチレン−co−酢酸ビニル)、ポリ(エチレン−co−ビニルアルコール)、並びに前述のいずれかの組み合わせからなる群より選択される疎水性のブロックであり、
前記ブロックコポリマーが、前記親水性のブロックを含む親水性の相ドメインと前記疎水性のブロックを含む疎水性の相ドメインとを含む2つ以上の相ドメインに相分離しており、
前記親水性のペプチドが、前記親水性の相ドメイン内に取り込まれ、
前記疎水性の活性薬剤が、前記疎水性の相ドメイン内に取り込まれている、ステント。
【請求項2】
完全に吸収性である、請求項1に記載のステント。
【請求項3】
基材とコーティングとを含むステントであって、
前記コーティングが、1種又は複数の疎水性の活性薬剤と、1種又は複数の親水性のペプチドと、2つ以上のポリマーブロックからなり当該ブロックが線状配列であるブロックコポリマーと、を含み、
少なくとも1つのポリマーブロックが、ヒドロキシルエチルメタクリレート(HEMA)、メタクリル酸(MA)、アクリル酸(AA)ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)、ヒドロキシプロピルメタクリルアミド、アルコキシメタクリレート、アルコキシアクリレート及び3−トリメチルシリルプロピルメタクリレート(TMSPMA)のホモポリマー並びにランダムコポリマー、ヒドロキシ官能基を有するポリ(ビニルピロリドン)、デキストリン、エラスチン、キトサン、並びにこれらの組み合わせからなる群より選択される親水性のブロックであり、
少なくとも1つのポリマーブロックが、ポリアルキレン、ポリ(4−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(4−ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(ホスホエステル)、ポリジメチルオキサノン(PDMS)、ポリジメチルシロキサン、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(エステルウレタン)、ポリ(エーテルウレタン)、ポリ(カーボネートウレタン)、ポリ(シリコーンウレタン)、ポリ(尿素ウレタン)、及びこれらのコポリマー、ポリ(エチレン−co−酢酸ビニル)、ポリ(エチレン−co−ビニルアルコール)、並びに前述のいずれかの組み合わせからなる群より選択される疎水性のブロックであり、
前記ブロックコポリマーが、前記親水性のブロックを含む親水性の相ドメインと前記疎水性のブロックを含む疎水性の相ドメインとを含む2つ以上の相ドメインに相分離しており、
前記親水性のペプチドが、前記親水性の相ドメイン内に取り込まれ、
前記疎水性の活性薬剤が、前記疎水性の相ドメイン内に取り込まれ、
前記コーティングが前記基材の少なくとも一部分上に配置されている、ステント。
【請求項4】
プライマー層をさらに含み、前記コーティングが前記プライマー層の少なくとも一部分上に配置されている、請求項3に記載のステント。
【請求項5】
ブロックコポリマーが、3つ以上のブロックを含む、請求項1に記載のステント。
【請求項6】
前記疎水性の活性薬剤と前記親水性のペプチドとが、前記ブロックコポリマーからの異なる放出速度プロファイルを有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載のステント。
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
[0001]本発明は、医療デバイスの分野、特に、相分離したブロックコポリマーと1種又は複数の活性薬剤とを含む埋込み型医療デバイスに全般的に関する。より具体的には、本発明は、ブロックコポリマーの相分離と、活性薬剤が取り込まれる相とを調整することによって、ブロックコポリマーからの活性薬剤の放出速度を調節するための方法に関する。本発明は、相分離したブロックコポリマー及び1種又は複数の活性薬剤を含む、医療デバイス及び医療デバイスのためのコーティングを作製するための方法にさらに関する。
【0002】
[発明の背景]
[0002]医療デバイスの分野、特に被検体の体内に移植可能な医療デバイスにおいて、予想可能で制御可能な性能は、患者の治療を成功させるために必須である。埋込み型医療デバイスの一例がステントである。ステントは、被検体の体内の通路を物理的に開いたまま維持するため、及び必要に応じて拡大するための機械的手段として働くことができる。通常ステントは、圧縮し、カテーテルを介して小血管に挿入し、一度適切な位置に配置してから、より大きい直径へと拡大する。ステントは、様々な医学的治療、例えば閉塞により遮断された冠動脈を開くことによって心疾患を治療するのに使用される方法である経皮的冠動脈形成術(PTCA)などにおいて、重要な役割を果たす。ステントは、閉塞形成の減少、血栓及び再狭窄の抑制、血管腔内の開通性の維持などの治療において一般的に移植される。ステントを開示している特許の例は、Plamazの米国特許第4733665号明細書、Gianturcoの同第4800882号明細書、及びWiktorの同第4886062号明細書を含む。
【0003】
[0003]活性薬剤、例えば薬物又は他の医学的に有利な物質を局所的に送達するステント及び他の医療デバイスも開発されている。特に、特定部位に作用させるために高い全身投与量が必要になる場合は、全身への送達よりも局所的な送達が好ましいことが多い。例えば、薬剤をコーティングしたステントは、再狭窄に伴う組織の増殖を阻止することによって、ステントの再狭窄の割合を著しく減少させることを実証した。
【0004】
[0004]提案される医療デバイスからの局所的な送達方法は、ポリマーマトリックスを含む層でデバイス表面をコーティングすることと、ポリマー骨格に活性薬剤を結合させるか、又はポリマーマトリックス中に活性薬剤を分散、含浸、又は捕捉させることによってそれを取り込むことを含む。例えば活性薬剤をステントに適用する一方法は、薬剤と溶媒中に溶解したポリマーとをブレンドすること、この組成物をステントの表面に適用すること、溶媒を除去して、中に活性薬剤が含浸、分散、又は捕捉されているポリマーマトリックスを残すことを含む。医療デバイス、例えばステントを一度治療部位に移植すると、活性薬剤は、例えばポリマーマトリックス及び活性薬剤の組成を含めた様々な要素によって決まる、ポリマーマトリックスからの放出速度プロファイルを有する。
【0005】
[0005]ポリマーマトリックスからの活性薬剤の放出速度を調節して医学的に最も効果のある治療を得ることが可能なことが極めて望ましい。例えば2種以上の活性薬剤を含むステント用のポリマーコーティング中では、活性薬剤の1種が、ポリマーマトリックスからのより遅い若しくはより速い放出速度を有するか、又はより長い時間の間、1種若しくは複数の活性薬剤の濃度を治療上有効な濃度で維持することが望ましいこともある。したがって、活性薬剤の局所的送達は、制御可能で予想可能な改善した放出速度プロファイルからだけでなく、特定の医学的治療に合わせて調整することができる放出速度プロファイルからも利益を得るであろうことを、当業者であれば認識するであろう。
【0006】
[0006]本発明の実施形態は、医療デバイス及び医療デバイスのためのコーティングからの活性薬剤の放出速度を調整及び/又は制御するための方法を提供することによってそのような必要性だけでなく、他の必要性にも取り組んでいる。
【0007】
[発明の概要]
[0007]本発明の一態様に従って、相分離したブロックコポリマー及び1種又は複数の活性薬剤を含む医療デバイスを提供する。相分離したブロックコポリマーと1種又は複数の活性薬剤とを含む、医療デバイスのためのコーティングも提供する。ブロックコポリマーの相分離を使用して、医療デバイス及び医療デバイスのためのコーティング層からの活性薬剤の放出速度を調節する。一実施形態において、コーティング層からの活性薬剤の放出速度は、活性薬剤を溶解する、さもなければ取り込む相ドメインを制御することで調節することができる。
【0008】
[0008]本発明の相分離したブロックコポリマーは、2つ以上の相ドメインへと分離した2つ以上のブロック相を含む。活性薬剤をこの相ドメインの1つに取り込むことができる。一実施形態において相分離したブロックコポリマーは、硬質の相ドメイン、軟質の相ドメイン、結晶の相ドメイン、水素結合した相ドメイン、Π−Πスタッキングした相ドメイン、親水性の相ドメイン、疎水性の相ドメイン及び非結晶の相ドメインからなる群から選択される1つ又は複数の相ドメインを含む。一部の実施形態において、相分離したブロックコポリマーは、親水性ブロックを含む。一部の実施形態において、相分離したブロックコポリマーは、親水性ブロック及び疎水性ブロックを含む。他の実施形態では、相分離したブロックコポリマーは、2つ以上の疎水性ブロックを含む。一実施形態において相分離したブロックコポリマーは、水素結合した相ドメインを含み、水素結合した相ドメインは、水素結合を形成できる活性薬剤を優先的に取り込む。
【0009】
[0009]相分離したブロックコポリマーと1種又は複数の活性薬剤とを含む医療デバイスのためのコーティングを作製する方法も提供する。一実施形態においてこの方法は、デバイスの少なくとも一部分にコーティング組成物を堆積させることを含み、このコーティング組成物は少なくとも2つのブロックと1種又は複数の活性薬剤とを含むブロックコポリマーを含み、このブロックコポリマーは2つ以上の相ドメインに相分離する。
【0010】
[詳細な説明]
[0010]本発明は、活性薬剤の、相分離したブロックコポリマー及び1種又は複数の活性薬剤を含む医療デバイスからの放出速度を調整するための方法に全般的に関する。本発明は、生体に有利な特性及び機械的特性を強化した医療デバイスにも関する。一実施形態において相分離したブロックコポリマー及び1種又は複数の活性薬剤は、完全に吸収可能なステントなどの医療デバイスの作製に用いられる。他の実施形態では、医療デバイスは、基材(例えば金属及び/又はポリマーでできたもの)と、基材の少なくとも一部分に配置された、相分離したブロックコポリマー及び1種以上の活性薬剤を含むコーティングとを含む。好ましい実施形態において、この医療デバイスはステントである。
【0011】
[0011]本発明の医療デバイス及び医療デバイスのためのコーティングは、相分離したブロックコポリマーと1種又は複数の活性薬剤とを含む。相分離したブロックコポリマーは、2つ以上のポリマーブロックを含み、このポリマーブロックは2つ以上の相ドメインへと相分離する。コポリマーのブロック間に生じる相分離を調整することによって、独自の物理的特性及び機械特性を有する不均質な材料を得ることができる。特に、医療デバイスからの活性薬剤の放出速度は、コポリマーブロックの相分離及び物理的特定、化学特性及び機械的特性を調整することによって調節することができる。一部の実施形態では、ブロックコポリマーの相分離及び形成された相ドメインの1つに活性薬物が優先的に取り込まれることを使用して、活性薬剤の放出速度を調節することができる。発明の実施形態を使用して、医療デバイスからの活性薬剤の放出速度を上昇若しくは減少させること、又は2種以上の活性薬剤を含み、一方の活性薬剤は放出速度が速く、別の活性薬剤は放出速度が遅いような医療デバイスを得ることができる。例えば、疎水性相ドメイン及び親水性の相ドメインを含む相分離したブロックコポリマーにおいて、エベロリムスなどの疎水性の活性薬剤は、疎水性相で溶解することになり、その一方でペプチドなどの親水性の活性薬剤は、親水性相に優先的に取り込まれることになる。疎水性相ドメインは、エベロリムスをゆっくりと放出する一方、親水性ペプチドは、親水性の相ドメインからより急速に放出され、2つの異なる放出速度を有する放出速度プロファイルを有するコーティング層が得ることになる。さらに、本発明の相分離したブロックコポリマーを使用して、別の場合には相容性ではないような他の活性薬剤を本発明のコーティング層内に取り込むことができる。例えば、親水性の活性薬剤が溶液中に留まることを可能にするミセルを形成する親水性ブロックを含むブロックコポリマーポリマーを用いて、親水性の活性薬剤が有機溶剤系コーティング組成物に収容されるように設計することができる。ポリマーコーティング組成物は、例えば、医療デバイスの基材上にスプレーコーティングすることができ、ブロックコポリマーは、そこで親水性の活性薬剤を含有する親水性の相ドメインへと相分離することになる。
【0012】
[0012]本発明の実施形態は、ステントなどの医療デバイスのためのコーティングに関連させて以下に記載しているが、このような実施形態及び本明細書に記載されている方法は、相分離したブロックコポリマー組成物からの、医療デバイス、例えば完全に吸収可能なステントなどの作製に同様に応用できる。
【0013】
放出速度
[0013]「速い放出」とは、活性剤の全量又は実質的に全量の、医療デバイス又はコーティングからの15日未満、例えば7〜14日以内でのインビボでの放出(例えば、哺乳動物生体の血管内で)と定義される。「遅い放出」とは、活性薬剤の全量又は実質的に全量の、医療デバイス又はコーティングからの15日以上、例えば15〜56日以内でのインビボでの放出(例えば、哺乳動物生体の血管内で)と定義される。速い放出が24時間以内、例えば12時間未満、6時間未満、3時間未満又は1時間未満の場合、この速い放出は、「バースト放出」と定義する。本発明のコーティングが、単一の薬物又は異なる薬物に対しそのような放出プロファイルの任意の1つ又はその組合せを有するように改質を行うことができる。例えば、単一の薬物が、バースト放出及び遅い放出のプロファイルを有することができる。別の例として、薬物Aがバースト放出プロファイルを有し、薬物Bが遅い放出プロファイルを有することができる。
【0014】
[0014]ブロックコポリマーマトリックスの相分離を用いて活性薬剤の放出速度をより効果的に操作することにより、患者の治療におけるより大きな医療効果を得ることができる。例えば、多くの場合1〜2週間以内の放出が必要とされる抗遊走剤の活性薬剤には速い放出を推薦する。対照的に、抗増殖性の活性薬剤は、例えば30日までなど、遅い放出時間が必要とされ得る。
【0015】
ブロックコポリマー
[0015]「ブロックコポリマー」という用語は、本明細書で使用する場合、International Union for Pure and Applied Chemistry(IUPAC)で使用されている用語に従って定義される。「ブロックコポリマー」は、ブロックの線状配列を含有するコポリマーを指す。ブロックとは、その単量体単位が、隣接部分にはない少なくとも1つの構成上又は配置上の特徴を有するポリマー分子の一部分と定義される。
【0016】
[0016]「ブロックコポリマー」という用語は、2種類以上のブロック、例えばジブロック、トリブロック、テトラブロックなどを有するポリマーを大まかに含むことを意図する。例えば、部分A及び部分Bのブロックコポリマーは、−A−A−A−B−B−B−B−と書いてもよい。そのようなブロックコポリマーは、「ABブロックコポリマー」又は「ジブロックコポリマー」と呼ばれることが多い。個々のブロックはそれだけでポリマーと見なされるだけ普通十分に長いので、ブロックは末端で結合している必要はない。ABブロックコポリマーに加えて、他のブロックコポリマーの変異形には、ABAブロックコポリマー(−A−A−A−B−B−B−A−A−A−)、ABCBAブロックコポリマー(−A−A−A−B−B−B−C−C−C−B−B−B−B−A−A−A−)、ABCブロックコポリマー(−A−A−A−B−B−B−C−C−C−)などが挙げられる。好ましい実施形態において、ブロックコポリマーは、ジブロック(AB)又はトリブロック(ABA又はABC)コポリマーである。
【0017】
[0017]「ABブロックコポリマー」という用語は、一般式−{[A−]
m−[B]
n}−
x(式中、各「m」、「n」及び「x」は正の整数であり、m≧2及びn≧2である)に従って並べられた部分A及び部分Bを有するブロックコポリマーと定義される。
【0018】
[0018]「ABAブロックコポリマー」という用語は、一般式−{[A−]
m−[B−]
n−[A]
p}−
x(式中、各「m」、「n,」、「p」及び「x」は正の整数であり、m≧2、及びn≧2、及びp≧2である)に従って並べられた部分A及び部分Bを有するブロックコポリマーと定義される。
【0019】
[0019]「ABCブロックコポリマー」という用語は、一般式−{[A−]
m−[B−]
n−[C]
p}x−(式中、各「m」、「n」、「p」及び「x」は正の整数であり、m≧2、及びn≧2、及びp≧2である)に従って並べられた部分A、部分B及び部分Cを有するブロックコポリマーと定義される。
【0020】
[0020]「部分」という用語は、コポリマーの全部の構造の一部分であり、この一部分は、ある特定の方法で共に結合した少なくとも2個の原子を含むと定義される。「部分」という用語は、コポリマーの巨大分子内に存在する官能基及び/又は結合した個別の残基を含む。「部分」という用語は、本明細書で使用する場合、ブロックコポリマー中のポリマーブロック全体を含める。「部分」という用語は、個々の単位、例えばコポリマーブロックのモノマー単位などを指すためにも使用することができる。
【0021】
[0021]ブロック数を決定する整数の数値は、個々のブロックがそれだけでポリマーと見なされるだけ普通十分に長いことを確かにするような数値なので、ブロックコポリマーのブロックは、末端で結合している必要はない。したがって、ABAブロックコポリマーは、ポリAブロック−ポリBブロック−ポリAブロックのコポリマーと名付けることができ、ABCブロックコポリマーは、ポリAブロック−ポリBブロック−ポリCのコポリマーと名付けることができ、ABブロックコポリマーは、ポリAブロック−ポリBのコポリマーと名付けることができる。ブロック「A」、「B」及び「C」は、3ブロックのサイズよりも通常は大きく、互い違い又はランダムであってよい。
【0022】
[0022]「ランダムコポリマー」という用語は、IUPACで使用される用語に従って定義される。「ランダムコポリマー」とは、所与の単量体単位が鎖内の任意の所与の部位で発見される可能性が、隣接する単位の性質と関係のない巨大分子からなるコポリマーを指す。ランダムコポリマーにおいて、単量体単位の逐次分布はベルヌーイ統計に従う。
【0023】
ブロックコポリマーの合成
[0023]本発明において有用なブロックコポリマーは、当業者に知られている一般的な方法で合成できる。ブロックコポリマーは、例えば、A−、B−及び/又はC−単位を形成するモノマーを、適切な開始剤の存在下で、塊状、溶液、懸濁液、又は乳濁液でラジカル共重合により合成することができる。使用することができる一合成方法は、その開示が全体で本明細書に参照により組み込まれているGlauserらの米国特許出願第10/746483号明細書(米国特許出願公開第2005/1047647号明細書)及びHossainyらの米国特許出願第10/317435号明細書に記載されているように、開始−移動剤によるリビングマクロ連鎖の停止(イニファータプロセス)を用いた、複数のモノマーのリビングフリーラジカル共重合法である。このイニファータプロセスは、熱及び/又は光のフリーラジカル分解を起こすことができる開始剤を利用している。適切な開始剤の例は、ベンジル−N,N−ジエチルジチオカルバミン酸(BDC)又はp−キシリレン−N,N−ジエチルジチオカルバミン酸(XDC)を含む。BDCは、トルエン誘導体であり、式C
6H
5−CH
2−S−C(S)−N−(C
2H
5)
2を有し、XDCは、p−キシレンの誘導体であり、式(C
2H
5)
2−N−C(S)−S−CH
2−C
6H
4−CH
2−S−C(S)−N−(C
2H
5)
2を有する。BCD及びXCDは、その開示が本明細書に参照により組み込まれている、例えば米国特許出願第10/317435号明細書及び米国特許出願公開第2005/0147647号明細書に記載の通り、合成により調製できる。ブロックコポリマーを合成する他の方法は、当業者に知られているように、必要に応じて酸又は塩基で触媒された共重縮合反応を含むが、これに限らない。
【0024】
[0024]多種多様の開始部分又はモノマーを使用することによって、本発明のブロックコポリマーを合成することができる。ブロックコポリマーのブロックを誘導することができる有用な開始モノマーは、不飽和モノマー、例えば非置換又は置換のアクリレート又は一般式CH
2=CX−M(式中、Xは水素であるか又はメチルであり、Mは置換又は非置換の芳香族基、アリール基又はエステル基O=C(OR)−(式中、Rはアルキル基、アリール基、水素基、又はヒドロキシアルキル基である)である)を有するビニルモノマーを含むが、これに限らない。非置換若しくは置換のアクリレート又はビニルモノマーの例は、メチルメタクリレート(MMA)、エチルメタクリレート(EMA)、n−ブチルメタクリレート(BMA)、ラウリルメタクリレート(LMA)、スチレン(ビニルベンゼン)(ST)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、アクリル酸、メタクリル酸、N−ビニルピロリドン(VP)、ポリ(エチレングリコール)アクリレート(PEGA)、ポリエチレングリコール(PEG)、2−メタクリロイルエチルホスホリルコリン、ホスホリルコリンメタクリレート、2−アクリルアミド−2−メチル−1プロパンスルホン酸、3−スルホプロピルアクリレート、3−スルホプロピルメタクリレート(SPMA)、ビニルスルホン酸、4−スチレンスルホン酸及び2−アリルオキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸を含むがこれらに限らない。一部の実施形態において、モノマーは、疎水性の部分を含む。一部の実施形態において、モノマーは、親水性の部分を含む。
【0025】
医療デバイスのためのコーティング
[0025]本発明の一実施形態による医療デバイスのためのコーティングは、2つ以上のポリマーブロック及び1種又は複数の活性薬剤を含むブロックコポリマーを含む。一部の実施形態において、ブロックコポリマーは、2つのブロックを含む。一部の実施形態において、ブロックコポリマーは、3つのブロックを含む。さらに他の実施形態において、ブロックコポリマーは、3つ以上のブロックを含む。
【0026】
[0026]本発明によるコーティング又は医療デバイスを形成する間、ブロックコポリマーは、2つ以上の相ドメインへと相分離する。本明細書で使用する場合「相ドメイン」という用語は、特定の相ドメインを形成しているコポリマーブロックの特性の点から特徴づけられるポリマー中の異なる領域を指す。相分離したドメインのミクロ構造及び特性は、とりわけ相ドメインのブロックを形成する部分によって決まる。一実施形態において相分離したブロックコポリマーは、2つ以上の相ドメインを含む。一部の実施形態において、相分離したブロックコポリマーは、2つの相ドメインを含む。一部の実施形態において、相分離したブロックコポリマーは、3つの相ドメインを含む。例えば、AB又はABAのブロックコポリマーは、2つの相ドメインに相分離することができ、この場合一方のドメインは、Aブロックを含み、もう一方の相ドメインは、Bブロックを含み、ABCブロックコポリマーは、A、B及びCの相ドメインへと相分離することができる。
【0027】
[0027]ブロックコポリマーは、活性薬剤の放出速度プロファイル及び医療デバイスのためのコーティング層の機械的特性を調節するために使用することができる独特の特性を有することができる。例えば、ブロックコポリマーは、2種のポリマーのブレンドと同様の特性を提供し、しかもこれら2相が互いに不溶性の場合でも混和性を維持するような材料をもたらすことができる。そのようなブレンドが存在する場合、このブロックコポリマーは、それぞれのブロック成分を多く含む別個の相ドメインがあるミクロ構造を有する。ブロックコポリマーの各相は、それを形成するホモポリマー成分の特性に依存する物理的特性を有することになる。対照的に、ランダムコポリマーは、各モノマーから作られるホモポリマーの特性の間にある特性を所有する傾向となるであろう。しかしブロックコポリマーは、どちらのホモポリマーにもない特性を所有することができる。ホモポリマーの特性がかなり異なる場合、例えば1方のブロックが親水性で、他方のブロックが疎水性である場合、これらブロックは、自己集合することになる。すなわちこのブロックは、例えば、溶液中でミセル及び凝集体を形成するか、又はミクロ相が固体で分離し、異なる特性を有する相ドメインを生成することができる。ランダムコポリマーがこのような二相性の形態又はその結果生じる特性を持つことはない。
【0028】
[0028]本発明の相分離したブロックコポリマーは、ナノスケール又はミクロスケールで相分離することができる。一部の実施形態において、相ドメインのうちの少なくとも1つは、ナノスケールで相分離する。他の実施形態において、相ドメインの少なくとも1つは、ミクロスケールで相分離する。相分離したブロックコポリマー中の個々の相ドメインのサイズは、相ドメインを形成するポリマーブロックのサイズによって決まることになる。一部の実施形態において、本発明の相ドメインの代表的寸法(例えばラメラ又は「粒子」のサイズ)は、5nm〜500nmである。一部の実施形態において、それは50〜400nmの間、100〜300nmの間、又は150〜250nmの間であってよい。寸法とは、最も広いピークポイントからの測定を意味することを意図している。
【0029】
[0029]不均質な材料を生成するブロックコポリマーの相分離を使用することによって、独特の機械的特性を有する医療デバイスのためのコーティング層、例えばドラッグデリバリー又は薬剤溶出ステントなどを形成でき、活性薬剤の放出速度を調整することもできる。相分離したドメインのナノ構造又はミクロ構造及び特性を使用することによって、1種又は複数の活性薬剤を含むコーティングの放出速度プロファイルを調節することができる。例えば、活性薬剤が優先的に取り込まれる相を選択することによって、活性薬剤の放出速度を調節できる。本発明のコーティング層及び方法を使用することによって、コーティング層からの活性薬剤の放出速度を減少又は上昇させ得る。本発明の方法をさらに使用して、2種以上の活性薬剤を含むコーティング層を作り、必要に応じて、活性薬剤の少なくとも1種の放出速度を速く、活性薬剤の少なくとも1種の放出速度を遅くすることもできる。
【0030】
[0030]一部の実施形態において、医療デバイスのためのコーティング層の相分離したブロックコポリマーは、ポリマーマトリックスを形成し、このポリマーマトリックス中では、ブレンド又は混合、溶解、含浸、捕捉又は分布により1種又は複数の活性薬剤が取り込まれている。ポリマーマトリックスを形成するブロックと、ブロックコポリマー相が分離して形成する相ドメインとを選択することによって、本発明の相分離したブロックコポリマーを使用して、別の場合には不相容性であるような薬物を収容し、並びに/又はコーティング層からの1種又は複数の活性薬剤の放出速度を調節することができる。一部の実施形態において、活性薬剤は、ポリマーマトリックスの相ドメインの1つに優先的に取り込まれることになる。例えば、疎水性及び親水性の相ドメインを含む相分離したブロックコポリマーにおいて、疎水性である活性薬剤は、疎水性の相に溶解する一方、親水性の活性薬剤は、親水性のドメインに優先的に取り込まれることになる。疎水性の活性薬剤は、疎水性の相からゆっくりと浸出する一方、親水性の相内の活性薬剤は、(例えば、血液などの水溶液中で)より急速に放出されることになる。単一の活性薬剤を含むコーティングにおいて、活性薬剤の放出速度は、活性薬剤が取り込まれる相ドメインを調整することによって、及び/又はコーティングからの活性薬剤の放出速度を上昇又は減少させる相ドメインをポリマーマトリックス中に取り込むことによって、調節することができる。例えば、疎水性のポリマーマトリックスを含むコーティング層から疎水性の活性薬剤を放出する速度は、本発明の相分離したブロックコポリマーを用いて、ポリマーマトリックスに親水性のドメインを取り込むことによって調節することができ、これによって親水性のドメインは、コーティング中への水の拡散及びコーティング外への活性薬剤の拡散を増加させることになる。
【0031】
[0031]本発明のブロックコポリマーの相分離は、他の要素よりも、ブロックを形成する部分、コポリマーを形成するブロックの性質、ブロックとその環境との相互作用並びにコーティング層を形成するのに使用される加工条件によって決定し得る。本発明のブロックコポリマーにおいて相分離を誘発するのに使用できる適切な推進力は、ポリマーブロックの性質、ブロックのサイズ、ブロック中での部分の比、ブロック構造(AB、ABC、ABAなど)、ブロック中での部分の相互作用、ブロックの親水性又は疎水性の特性、相ドメインの1つの結晶化度、相ドメインの1つの特異性相互作用などが含まれるが、これらに限らない。本発明のブロックコポリマーの相分離はまた、コーティング層を形成するのに使用される加工パラメータの選択により制御又は強化できる。本発明のブロックコポリマーコーティングの相分離を誘発又は制御するのに有用で適切な加工パラメータは、溶媒又は溶媒混合物の選択、溶媒混合物の異なる蒸発速度、熱サイクル、及び成分の化学的不相容性を含むが、これらに限らない。単純な熱サイクルは、所与の速度である温度まで加熱し、所与の時間の間その温度で維持し、所与の速度で最終温度まで冷却することを含む。より複雑なサイクルであれば、いくつかの冷却、維持及び加熱の区間があることになろう。この種のサイクル(加熱、冷却、加熱、冷却など)は、正しく選択すれば、結晶化を促進できる。
【0032】
[0032]本発明のブロックコポリマーは、これらだけに限らないが、親水性、疎水性、結晶性、半結晶性、非結晶性、非晶質、硬質、軟質、水素結合、Π−Πスタッキング(例えば芳香環など)、及び配向性を含む相ドメインに相分離することができる。一実施形態において相分離したブロックコポリマーは、硬質の相ドメインを含む。一実施形態において相分離したブロックコポリマーは、軟質の相ドメインを含む。一実施形態において相分離したブロックコポリマーは、親水性の相ドメインを含む。一実施形態において相分離したブロックコポリマーは、疎水性の相ドメインを含む。他の実施形態では、ブロックコポリマーは、親水性及び疎水性の相ドメインへと相分離する。一部の実施形態において、相分離したブロックコポリマーは、結晶の相ドメインを含む。一部の実施形態において、相分離したブロックコポリマーの相ドメインの1つは、水素結合している。さらに他の実施形態において、ブロックコポリマーは2つ以上の相ドメインへと相分離し、ここで少なくとも1つの相ドメインは、水素結合によって物理的に架橋されている。一部の実施形態において、相分離したブロックコポリマーの相ドメインの1つは、Π−Πスタッキングしている。
【0033】
[0033]一部の実施形態において、コーティング層の、相分離したブロックコポリマーは、硬質相及び軟質相のドメインを含む。本明細書で使用する場合「硬質の相ドメイン」という用語は、剛性で、分子間の強い相互作用を形成することができるポリマーセグメントを本質的に含む相ドメインを指す。硬質の相ドメインは、例えば、コポリマーブロックの部分のΠ−Π相互作用及びスタッキングによって形成するか、又はイソシアネートなど隆起のあるブロック部分から誘導することができる。本明細書で使用する場合「軟質の相ドメイン」という用語は、使用温度より低いガラス転移温度を有するポリマーセグメントを本質的に含む相ドメインを指す。軟質の相ドメインは、例えば、ポリオールなどのブロック部分から誘導することができる。軟質の相ドメインは、コーティングのひびを防ぐか又は少なくとも減少させるエラストマーの特性をコーティングに付与することができる一方で、硬質の相ドメインは、機械的強度をコーティングに付与することができる。したがって、硬質及び軟質の相ドメインへと相分離するブロックコポリマーコーティングは、機械的完全性のための高い弾性率を有する頑丈なエラストマーと、並びに拡大する間にコーティングの完全性を維持する、破断場所での大きな変形を提供する。硬質及び軟質の相ドメインへと相分離する本発明の実施に有用なブロックコポリマーコーティングの一例は、ポリスチレンブロック/ポリイソブチレンブロック/ポリスチレンコポリマーである。スチレンブロックの芳香環のΠ−Πスタッキングにより、軟質のイソブチレンドメインにより連結された硬質なドメインが作製される。エベロリムスなどの小分子活性薬剤は、軟質のイソブチレン相ドメインへと優先的に収容される。硬質及び軟質の相ドメインを含む相分離したブロックコポリマーの他の例は、これだけに限らないが、ポリ(L−ラクチド)とトリメチレンカーボネート(TMC)とのブロックコポリマーを含み、ここではポリ乳酸ブロックが晶出して硬質の相ドメインを形成し、TMCが軟質の相ドメインを形成する。硬質相のドメインを形成するのに使用することができるポリマーブロックの例は、スチレン、PLA、ポリウレタン、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、メタクリル酸及びヒドロキシエチルメタクリレートを含むが、これらに限らない。軟質ドメインを形成するのに使用することができるポリマーブロックの例は、イソブチレン、TMC、PEG、ポリオール、ビニルピロリジノン及びブチルメタクリレート並びに長いアルキル側鎖を有する他のアクリレート/メタクリレートを含むが、これらに限らない。
【0034】
[OO34]一部の実施形態において、コーティング層の、相分離したブロックコポリマーは、疎水性及び親水性の相ドメインを含む。疎水性と親水性と両ドメインを含むブロックコポリマーを使用することによって、別の場合には不相容性であるような活性薬剤を、本発明の医療デバイスのためのコーティング組成物中に収容することができる。親水性及び疎水性のブロックを含むブロックコポリマーを使用して、有機溶剤を含むコーティング組成物に、ペプチドなどの親水性の活性薬剤を溶解するのを補助することができる。例えば、本発明のコーティング組成物に親水性及び疎水性の両ブロックを含むブロックコポリマーを使用する場合、エベロリムスなどの疎水性の活性薬剤と、RGDペプチド配列又はVEGFペプチド配列などの親水性の活性薬剤の両方のスプレーコーティングを遂行することができる。任意の理論に制約されることなしに、明らかに親水性のポリマーブロックは、親水性の活性薬剤を溶液中に留め、スプレーコーティングすることを可能にするミセルを形成することになる。コーティングされた後、このブロックコポリマーは、ペプチドを含む親水性の相ドメインと、疎水性の活性薬剤を含む疎水性の相ドメインへと相分離する。本発明の代替の実施形態において、親水性の活性薬剤は、本発明の相分離したブロックコポリマーコーティングを含むコーティング層の親水性の相ドメインへと膨潤により取り込むことができる。例えば、疎水性及び親水性の相ドメインを含む相分離したブロックコポリマーにおいて、エベロリムスなどの活性薬剤は、疎水性の相内で溶解することになる一方、ペプチドなどの親水性の活性薬剤は、親水性のドメインへと膨潤により取り込むことができる。エベロリムスは、疎水性のマトリックスドメインからゆっくりと放出される一方、親水性のペプチドは、より急速に放出されることになる。膨潤により取り込むことによって、温度及び/又はコーティング層を形成するのに使用する溶媒に敏感なペプチドなどのデリケートな活性薬剤を取り込むことが可能になる。
【0035】
[0035]本発明のコポリマーに使用する親水性のブロックの例は、ヒアルロン酸(HA)、ヘパリン、ポリエチレングリコール(PEG)、PEGアクリレート及びポリ(ビニルピロリジノン)(PVP)を含むが、これらに限らない。本発明のコポリマーに使用する疎水性ブロックの例は、メタクリレートコポリマー、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、及びブチルメタクリレートなど、ビニルポリマー、例えば、ポリエチレン及びPVDFなど、並びにポリエステル、例えばポリ乳酸(PLA)などを含むが、これらに限らない。親水性及び疎水性のブロックを含むブロックコポリマーの合成の例は、その開示が本明細書に参照により組み込まれている、例えば、Glauserらの米国特許出願公開第2005/0147647号明細書及び第2005/0266038に記載されている。
【0036】
[0036]単一の疎水性の活性薬剤を含むコーティング層内において、親水性の相ドメインを含む相分離したブロックコポリマーを使用することによって、コーティング層からの疎水性の活性薬剤の放出速度を調節することができる。この疎水性の活性薬剤は、コーティング層の非親水性の相ドメインへと取り込まれる。コーティング層の親水性の相ドメインは、コーティング内への水の拡散、コーティング外への活性薬剤の拡散を増加させることになる。さらに、ブロックコポリマーの相ドメインが水混和性である場合、水の存在下でその相は、優先的に表面に存在する傾向を有するであろう。それ故、水性の媒体において、ブロックコポリマーの親水性のブロックが表面へ移動することによって、相分離したブロックから形成される親水性の表面を生成しやすいであろう。この推進力を使用することによって、コーティングからの活性薬剤の放出速度を調節し、並びに有利な機械的特性をコーティングに付与することができる。
【0037】
[0037]本発明の一実施形態において、PEG−PLAブロックコポリマーは、PGEを多く含む相ドメインと、PLAを多く含む相ドメインへと相分離する。PLAブロックは、ポリ(D,L−乳酸)、ポリ(D−乳酸)又はポリ(L−乳酸)、又はこれらの任意の組合せのうちの少なくとも1種を含むことができる。層内の相分離の程度は、他の要素よりも特に相対的なブロックサイズにより決まることになる。立体規則性のPDLAブロック又はPLLAブロックは結晶の相ドメインを形成しやすいので、PLAブロックは、相分離のための推進力を増加しやすいだろう。これによって、コポリマーの親水性のPEGブロックを多く含む表面の形成をもたらすことのできる相分離への強い推進力が得られる。さらに、コポリマーのPLAブロックはまた、機械的完全性を付与することによって、有利な機械的特性をコーティング層に与える。PEG及びPLAのブロックコポリマーの合成の例は、その開示が本明細書に参照により組み込まれている、Hossaniyらの米国特許出願公開第2005/0112170号明細書に記載されている。
【0038】
[0038]さらに本発明の他の実施形態において、水素結合を使用することによって、ブロックコポリマーマトリックスの相分離を誘発することができる。この水素結合は、ブロックの部分間の分子内結合又はブロック間の分子内結合のいずれかであってよい。また、相ドメインの物理的架橋は、DNAストランド間に形成されるものに類似した、コポリマーブロック間の特定の水素結合によって達成できる。水素結合を形成することのできるコポリマーのブロックは、水素結合した相ドメインへと相分離することになる。これらの相ドメインは、相ドメインとの水素結合を形成することのできない活性薬剤又は他の化合物を追いやることになる。それ故、水素結合を形成することができる活性薬剤、例えばペプチド又はオリゴヌクレオチドなどは、水素結合相のドメイン内に優先的に取り込まれることになる。さらに活性薬剤が相ドメインと水素結合を形成できる場合、放出速度がポリマーマトリックスを介しての活性薬剤の拡散のみに依存しなくなるので、放出速度に対するより多大な制御が実現されることになる。したがって、一実施形態において活性薬剤の放出速度は、活性薬剤を取り込む水素結合相のドメインを形成することによって制御することができる。さらに、水素結合相のドメインの存在は、コーティング層の機械的完全性を増加させることができる。
【0039】
[0039]一部の実施形態において、溶媒混合物を含むコーティング組成物からコーティング層を形成することによって、ブロックコポリマーの相分離を制御又は強化することができるが、この溶媒混合物は、蒸発が速い溶媒と遅い溶媒とを含み、コポリマーの第1のブロックは、蒸発の速い溶媒にはわずかしか溶けず、遅い溶媒には溶けやすく、コポリマーの第2のブロックは、蒸発の遅い溶媒には溶けにくく、速い溶媒には溶けやすい。コーティング組成物からの、溶媒の異なる蒸発速度は、コーティング層形成中のブロックコポリマーの相分離のための推進力を提供することになる。
【0040】
[0040]一部の実施形態において、本発明のブロックコポリマーの平均分子量は、60000〜2000000ダルトン(Da)の間、又はこの中の任意の範囲である。ブロックコポリマーの分子量は、70000〜1000000Daの間、70000〜500000Daの間、又は100000〜300000Daの間がより好ましい。ブロックコポリマーは、本発明のコーティング層及び医療デバイスに機械的完全性を提供するためには、好ましくは少なくとも60000Da、より好ましくは少なくとも100000Daの平均分子量を有する。60000Daより大きな分子量におけるポリマー鎖の物理的なもつれによって、本発明のコーティング又はデバイス本体に機械的完全性が得られる。
【0041】
[0041]本発明のコポリマーのブロックは、コポリマーが不連続な相ドメインへと相分離できるように、十分大きくなければならない。一実施形態においてブロックコポリマーのブロックは、少なくとも1000Da、交互に少なくとも3000Da、又は少なくとも4000DA、又は少なくとも5000Daの分子量を有する。
【0042】
[0042]本発明のブロックコポリマーのブロックのサイズ及び重量比は、機械的完全性、下の層への接着及び1種又は複数の活性化合物の徐放をコーティング層に提供するように選択すべきである。ABジブロックコポリマーにおけるAブロック及びBブロックの重量比のパーセントは、Aブロックに対しては約5%〜95%が、Bブロックに対しては5%〜95%が好ましい。BABトリブロックコポリマーにおいては、Aブロックは、ブロックコポリマーの5〜30重量%の間が好ましく、Bブロックを一緒にした場合、約70〜95重量%を構成することになる。BABブロックコポリマーにおいてBブロックは、同じサイズでも、そうでなくてもよい。一実施形態においてBブロックは、ほとんど同じサイズであろう。一部の実施形態において、総分子量は、5000〜500000Daであってよく、40000〜l50000Daが好ましい。
【0043】
[0043]一部の実施形態のブロックコポリマーは、1つ又は複数の親水性ポリマーブロック及び1つ又は複数の疎水性ポリマーブロックを含む。親水性ブロックがブロックコポリマーの5〜30重量%の間、疎水性ブロックがブロックコポリマーの約70〜95重量%の間を構成することが好ましい。親水性の相の量が約30重量%よりも上に増加した場合、ポリマーマトリックスの機械的安定度及び完全性は大きく減少する。なぜなら血流などの水性の環境において、親水性のポリマーは、水を吸収して分解しやすいからである。その結果、親水性の相は水を吸収する能力があるため、親水性の相からの活性薬剤の放出速度は、疎水性の相からの放出速度よりも高くなるであろう。親水性の相ドメインのこの性質を発明の実施形態に使用することによって、活性薬剤の放出速度を調節することができる。
【0044】
[0044]多種多様なポリマーブロックを使用することによって、本発明のブロックコポリマーを形成することができる。コポリマーマトリックスに選択されたブロックは、移植された場合、生体適合性で、刺激作用が最も小なくなければならない。マトリックス成分の選択は、これだけには限らないが、ポリマーブロックと、薬剤及び/又はコーティング溶媒と間の相互作用、ポリマーブロックの生体適合性、並びにポリマーブロック及びコポリマーの物理的、機械的、化学的及び生物学的な特性を含めた多数の要素によって決まる。性能パラメータは、例えば、医療デバイスの表面へ接着する能力、所望するコーティングの靭性、薬剤の取り込み濃度に対する容量及び被検体からの組成物の生分解及び排出の速度、並びにコポリマーブロックの相分離の能力を含む。
【0045】
[0045]ポリマーマトリックスに選択される各ポリマーブロックは、生体安定性又は生分解性のいずれかであってよい。「生分解性」は、血液など身体内の液体に晒された場合、完全に分解及び/又は侵食されることが可能であり、徐々に再吸収、吸収及び/又は被検体から排除されることが可能なポリマーを指す。分解する方法及び結果として起こるポリマーの吸収及び排除は、例えば、加水分解、代謝プロセス、全体浸食又は表面浸食などにより引き起こされる可能性があり、生分解後に微量又は残留したポリマーがデバイス上又はデバイス付近に残り得る。生分解性ポリマーの例は、繰り返し単位を有するポリマー、例えばα−ヒドロキシカルボン酸、α−ヒドロキシカルボン酸の環状ジエステル、ジオキサノン、ラクトン、環状カーボネート、環状オキサレート、グリコール、無水塩、乳酸、グリコール酸、ラクチド、グリコリド、エチレンオキシド、エチレングリコール、又はこの組合せなどを含むが、これらに限らない。一部の実施形態において、ポリマーマトリックスは生分解中に活性薬剤を放出する。他の実施形態では、ポリマーマトリックスは、マトリックスの生分解なしで活性薬剤を放出する。さらに他の実施形態において、活性薬剤の放出は、ポリマーマトリックスの生分解性に部分的に依存してもよい。生体安定性ポリマーは、慢性的に比較的に低い組織反応を有するべきである。
【0046】
[0046]本発明のブロックコポリマーのブロックは、多種多様なホモポリマー又はランダムコポリマーから形成することができる。本発明のブロックコポリマーのブロックに使用することのできるポリマーの代表的な例は、アクリル系ポリマーに基づくホモポリマー及びランダムコポリマー、並びにコポリマー(例えば、ポリアクリロニトリル、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)及びポリ(ブチルメタクリレート)など)、ポリ(シアノアクレート)、フッ化したポリマー又はコポリマー(例えば、ポリフルオロアルキレン、ポリフッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロペン及びポリテトラフルオロエチレンなど);ヒドロキシアルカノエート(例えばポリカプロラクトン、ポリ乳酸(例えばポリ(D−ラクチド)、ポリ(L−ラクチド)、ポリ(D,L−ラクチド)など)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(ヒドロキシバリレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(オルトエステル)及びポリバリレート)のホモポリマー又はランダムコポリマー;ポリ(アミノ酸)のホモポリマー又はコポリマー;ポリ酸無水物、ポリホスホエステル、ポリホスホエステルウレタン、ポリホスファゼン、ポリカーボネート、ポリイミノカーボネート、ポリエチレンオキシド、ポリ(アルキレンオキサレート)、ポリウレタン、シリコーン、ポリエステル、ポリオレフィン(例えばポリエチレン及びポリプロピレンなど)、ポリ(イソブチレン)及びエチレン−アルファオレフィンのコポリマー;ビニルハロゲン化物のポリマー及びコポリマー(例えばポリ塩化ビニルなど)、ポリビニルエーテル(例えばポリビニルメチルエーテル)、ポリハロゲン化ビニリデン(例えばポリフッ化ビニリデン及びポリ塩化ビニリデンなど)、ポリアクリロニトリル、ポリビニルケトン、ポリビニル芳香族(例えばポリスチレンなど)、ポリビニルエステル(例えばポリビニルアセテートなど)、ビニルモノマー相互とオレフィンのコポリマー(例えばエチレンメチルメタクリレートコポリマー、アクリロニトリルスチレンコポリマー、ABS樹脂、及びエチレン酢酸ビニルコポリマーなど)、エチレンビニルアルコールコポリマー(例えばエチレンビニルアルコールコポリマー、一般名EVOH又は商品名EVALにより一般に知られている)、ポリアミド(例えばナイロン66及びポリカプロラクタム)、アルキド樹脂、ポリオキシメチレン、ポリイミド、ポリエステルアミド、ポリ(アルキレングリコール)(例えばポリ(エチレングリコール)及びポリ(プロピレングリコール)など)を含めたポリエーテル、ポリ(チロシン由来のカーボネート)、ポリ(チロシン由来のアリレート)、エポキシ樹脂、レーヨン、レーヨントリアセテート、生体分子(例えばフィブリン、フィブリノゲン、デンプン、セルロース、コラーゲン、ヒアルロン酸など)、ポリ(N−アセチルグルコサミン)(キチン)、キトサン、セルロース、酢酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、セロハン、硝酸セルロース、プロピオン酸セルロース、セルロースエーテル及びカルボキシメチルセルロース、並びに前述の誘導体及び組合せを含むが、これらに限らない。一部の実施形態においてポリマーは、上述のポリマーのいかなる1種又は組合せも排除することができる。
【0047】
[0047]一部の実施形態において、相分離したブロックコポリマーは、2種以上の疎水性ポリマーブロックを含む。一部の実施形態において、相分離したブロックコポリマーは、親水性のポリマーブロックを含む。他の実施形態では、相分離したブロックコポリマーは、親水性のブロック及び1つ又は複数の疎水性のポリマーブロックを含む。一部の実施形態において、相分離したブロックコポリマーは、疎水性のポリマーブロックしか含まない。
【0048】
[0048]本発明のブロックコポリマーに使用する疎水性のポリマーブロックは、例えば一般式CH
2=CX−M(式中、Xは水素又はメチルであり、Mは置換又は非置換のアリール基又はエステル基O=C(OR)−(式中、Rはアルキル又はアリール基である))を有する非置換及び置換のアクリレート又はビニルモノマーなど、不飽和モノマーから誘導されるものを含むが、これらに限らない。疎水性のブロックの例は、メタクリレートコポリマー(例えばメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート(BMA)、ラウリルメタクリレート)、ビニルポリマー(例えばポリエチレン、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、スチレン(ビニルベンゼン)、又はポリエステル(ポリ乳酸(PLA)など)を含むが、これらに限らない。
【0049】
[0049]疎水性のポリマーブロックのための疎水性のポリマーの他の例は、ポリ(エステルアミド)、ポリスチレン、ポリイソブチレン、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ(乳酸)(PLA)及びPLA誘導体、ポリ(L乳酸)、ポリ(D,L乳酸)、ポリ(D乳酸)、ポリ(グリコリド)、ポリアルキレン、ポリフルオロアルキレン、ポリヒドロキシアルカノアート、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリ(4−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシバリレート)、ポリ(3−ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(4−ヒドロキシヘキサノエート)、中鎖ポリヒドロキシアルカノエート、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(オルトエステル)、ポリホスファゼン、ポリ(ホスホエステル)、ポリ(チロシン由来のアリレート)、ポリ(チロシン由来のカーボネート)、ポリジメチルオキサノン(PDMS)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリヘキサフルオロプロピレン(HFP)、ポリジメチルシロキサン、ポリクロロトリフルオロエチレン)、(アクリレート及びメタクリレートを網羅するアクリル系ポリマー)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(メタクリレート)、ポリ(2−メタクリル酸ヒドロキシエチル)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(エチレン−co−酢酸ビニル)、ポリ(エチレン−co−ビニルアルコール)、ポリ(エステルウレタン)、ポリ(エーテルウレタン)、ポリ(カーボネートウレタン)、ポリ(シリコーンウレタン)、ポリ(尿素ウレタン)、並びに前述の誘導体及び組合せのホモポリマー及びランダムコポリマーを含むが、これらに限らない。一部の実施形態において、ポリマーは、上述のポリマーのいかなる1種も排除することができる。
【0050】
[0050]本発明のブロックコポリマーに使用する親水性のポリマーブロックは、不飽和のモノマー由来のもの、例えば一般式CH
2=CX−M(式中、Xは水素又はメチルであり、Mは置換又は非置換の芳香族基又はエステル基O=C(OR)−(式中、Rは水素又はヒドロキシアルキル基である)である)を有する非置換及び置換のアクリレート又はビニルモノマーを含むが、これに限らない。親水性のブロックの例は、ヒアルロン酸、ヘパリン、PEGアクリレート及びポリ(ビニルピロリジノン)含むが、これらに限らない。
【0051】
[0051]親水性のポリマーブロックのための親水性ポリマーの他の例は、ヒドロキシルエチルメタクリレート(HEMA)、PEGアクリレート(PEGA)、PEGメタクリレート、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)及びn−ビニルピロリドン(VP)、ポリ(ビニルピロリドン)(PVP)、カルボン酸を有するモノマー、例えばメタクリル酸(MA)、アクリル酸(AA)など、ヒドロキシルを有するモノマー、例えばヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)、ヒドロキシプロピルメタクリルアミド、アルコキシメタクリレート、アルコキシアクリレート、及び3−トリメチルシリルプロピルメタクリレート(TMSPMA)、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(プロピレングリコール)、PLURONIC(商標)界面活性剤(ポリプロピレンオキシド−co−ポリエチレングリコール)、ポリ(テトラメチレングリコール)、ヒドロキシ官能基のポリ(ビニルピロリドン)、ポリアルキレンオキシド、デキストラン、デキストリン、ヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸、ヘパリン、エラスチン、キトサン、並びにこれらの誘導体及び組合せのホモポリマー及びランダムコポリマーを含むが、これらに限らない。一部の実施形態において、ポリマーは、上述のポリマーのいかなる1種も排除することができる。
【0052】
[0052]本発明の相分離したブロックコポリマーを含むポリマーコーティング及びデバイスは、当技術分野で知られている任意の方法、例えば示差走査熱量測定(DSC)、走査型電子顕微鏡、原子間力顕微鏡、ラマン顕微鏡、及びX線又は中性子散乱などによって特徴づけることができる。示差走査熱量測定は、デバイス及びコーティングのブロックコポリマーの相分離を特徴づけるのに特に有用な方法である。コポリマーブロックが相分離している所では、ガラス転移温度(Tg)などの個々の熱物理的特性は、別々に観察されることになる。ブロックが相分離していない場合は、単一の中間Tgが観察されることになる。走査型電子顕微鏡及び原子間力顕微鏡を使用して、異なる相ドメインのサイズに基づく相分離の特徴を目視することもできる。
【0053】
コーティング層及びデバイスを形成する方法
[0053]本発明の一実施形態によると、ステントなどの医療デバイスのためのコーティング層は、相分離したブロックコポリマー及び1種又は複数の活性薬剤を含む。この層は、貯蔵層とも呼ぶことができる。任意選択で、コーティング層は、1種又は複数の添加剤又は他の成分、例えば可塑剤、金属、金属酸化物又はセラミクスなどをさらに含み得る。
【0054】
[0054]通常医療デバイスのためのコーティング層は、1種又は複数の活性薬剤と、溶媒に溶解したブロックコポリマーとを共にブレンドしてコーティング組成物を形成し、このコーティング組成物を医療デバイスの表面(本明細書中では基材とも呼ばれる)に、流込み、スプレー、ディッピング又は浸漬、手動による直接の施行又は注入などの方法により塗布することによって形成する。デバイス表面へ組成物を塗布した後で、溶媒を除去することによって湿ったコーティングを乾燥させることにより、相分離したブロックコポリマーマトリックスの1つ又は複数のドメイン内に分散した活性薬剤をデバイス表面上に残す。コーティング組成物を基材に塗布した後で、ポリマーブロックの物理的特性又は加工条件のいずれかによりブロックコポリマー中での相分離を誘導することができる。湿潤コーティングは、周囲温度又は高温で溶媒を蒸発させることによって乾燥させることができる。溶媒の除去はまた、真空、凍結乾燥又は臨界点乾燥などの方法を用いて遂行し得る。或いは、コーティング層形成の後で、活性薬剤を親水性ドメインなどの相ドメインに、膨潤により取り込むことができる。膨潤による取り込みは、ペプチドなどの活性薬剤が、加工条件に敏感な場合に好ましい方法である。
【0055】
[0055]コーティング組成物は、従来の方法で調製されるが、この場合すべての成分を合わせ、次いでブレンドする。より詳細には所定量のブロックコポリマーを所定量の相容性の溶媒又は溶媒混合物に添加することで、ポリマー溶液が形成される。ブロックコポリマーは、大気圧、及び無水環境又は他の環境下で溶媒に添加することができる。必要に応じて、穏やかな加熱及び撹拌又は混合により、例えば、12時間の間60℃の水槽内で、ポリマーを溶媒に溶解させることができる。十分な量の活性薬剤が、ブレンドしたブロックコポリマー溶液中に分散している。活性薬剤は、好ましくは真溶液中に存在するか、又はブレンドした組成物中に飽和しているべきである。活性薬剤が組成物中に完全に溶けていない場合、混合、撹拌、又はかき混ぜを含めた作業を行うことにより、残留物を均質化することができる。本明細書に記載されている通り、活性薬剤が溶液中に留まるのを可能にするミセルを形成できる親水性ブロックを含むブロックコポリマーを用いて、親水性の活性薬剤の有機溶剤への溶解を改善することができる。或いは、活性薬剤は、ポリマー溶液と混合する前に、相容性の溶媒へと最初に加えることもできる。任意選択で、テトラヒドロフラン又はジメチルホルムアミドなどの第2の溶媒を使用して、コーティング組成物中の活性薬剤の溶解度を改善するか、又は組成物の湿潤能力を上げることができる。第2の溶媒をコーティング組成物に加えることもできるし、ポリマー溶液との混合の前に活性薬剤を第2の溶媒に加えることもできる。添加剤及び他の成分、例えば、可塑剤、金属、金属酸化物又はセラミクスを使用する場合、任意の段階でコーティング組成物にこれらを添加及びブレンドしてもよい。
【0056】
[0056]ブロックコポリマーは、コーティング組成物の総重量の約0.1重量%〜約35重量%、より狭く約2重量%〜約20重量%を構成することができる。その1種又は複数の溶媒は、コーティング組成物の総重量の約19.8重量%〜約99.8重量%、より狭く約49重量%〜約87重量%、さらにより狭く約79重量%〜約87重量%を構成してもよい。この1種又は複数の活性薬剤は、コーティング組成物の総重量の約0.02重量%〜約40重量%、好ましくは約0.1重量%〜約9重量%、より狭く約0.7重量%〜約1.2重量%を構成してもよい。ポリマーと溶媒との具体的な重量比の選択は、これだけには限定されないが、デバイスを作製する材料、デバイスの幾何学的構造、及び使用する活性薬剤の種類及び量などの要素によって決まる。活性薬剤の具体的な重量パーセントは、コーティング層のブロックコポリマーと活性薬剤の形態、並びに投与量、放出期間、累積的な放出量、及び所望する放出速度などの要素によって決まる。
【0057】
[0057]デバイス表面に堆積した後のコーティング組成物を「湿潤コーティング層」と呼ぶ。医療デバイスをコーティングした後に湿潤コーティング層に残っている溶媒を除去することによって、乾燥コーティング層を形成する。本明細書で使用する場合「湿潤コーティング層」という用語は、デバイスの表面に塗布した溶媒を含むコーティング組成物を指す。コーティング層は、基本的にすべての溶媒がコーティング層から除去されるまで、湿潤していると呼ばれる。乾燥により実質的にすべての溶媒及び湿った液体(使用されている場合)がコーティング層から除去されることになるが、微量又は残留物がポリマーにブレンドされたまま残っていてもよいことが理解されている。溶媒及び湿った液体をコーティング組成物から除去するための適切な方法は、蒸発、凍結乾燥(昇華)、非溶媒交換、臨界点乾燥、又はこれらの任意の組合せを含むが、これらに限らない。溶媒の蒸発は、室温で生じるか又はある期間の間、デバイスをある温度に加熱することによって誘導することもできる。加熱温度は、活性薬剤が不利な影響を受けるような温度を上回らないように選択する。溶媒の除去は、制御された環境、例えば湿潤状態、無水状態又は溶媒が飽和した状態で、大気圧又は真空下で起こり得る。溶媒を除去する温度は、その方法次第であり、広い範囲で異なってもよい。条件は、活性薬剤又は他のコーティング層の特性にかなり不利な影響を与えないように選択するべきである。
【0058】
[0058]上述のように、溶媒混合物の異なる蒸発速度を使用して、本発明のブロックコポリマーの相分離を制御及び/又は誘発することができる。例えば、相分離は、蒸発の速い溶媒と遅い溶媒とを含む溶媒混合物を用いることによって、制御又は強化することができるが、この場合、第1の成分は、蒸発の速い溶媒にわずかにしか溶けず、遅い溶媒には溶けるが、第2の成分は遅い溶媒には溶けにくい。溶媒のこの異なる蒸発速度によって、相分離のための熱力学的推進力が得られる。溶媒が飽和している環境を使用することによって、溶媒の蒸発を制御して相分離を誘発してもよい。
【0059】
[0059]一部の実施形態において、親水性の活性薬剤は、相分離したブロックコポリマーコーティング層の親水性のドメインに膨潤により取り込むことができる。これは、例えばコーティング層をペプチドの溶液中に浸して、次いで層を乾燥することによって遂行することができる。これは、ペプチドなどの活性薬剤が加工条件又は溶媒に対して敏感な場合に有利である。水中でコーティングが膨潤し、水は親水性の活性薬剤と共に親水性相に入る。続いてコーティングを乾燥する。この方法は、温度、溶媒、及び他の加工条件に敏感な、よりデリケートな活性薬剤を用いてデバイスを形成するのに有用である。
【0060】
[0060]コーティング層を乾燥した後、本発明のコーティング層及び医療デバイスに、1種又は複数の形成後の後処置を施してもよい。任意選択での後処理ステップは、コーティング層のアニーリング、保護コーティングの塗布、コーティング層表面への減速用の膜、拡散バリア層又はトップコート層の塗布、任意選択の仕上塗層の塗布及び殺菌を含むが、これらに限らない。一部の実施形態において医療デバイスは、コーティング層からの、活性薬剤の拡散を制御又は調節する任意選択のトップコート又はバリア層をさらに含み得る。外側のコーティング層は、活性薬剤を含むコーティング層全体又は一部分のみに塗布することができる。トップコート層及び仕上塗層の例は、例えば、その開示が本明細書に参照により組み込まれているHossainyへの米国特許出願公開第2005/0191332号明細書に記載されている。減速用の膜及び拡散バリア層を含めた外層のさらなる例は、その開示が本明細書に参照により組み込まれている、Hossainyらの米国特許第6908624号明細書に記載されている。一部の実施形態では、コーティング層をアニーリングして応力を除去している。これら又は他の実施形態において、例えば凍結乾燥によって生じたコーティング層の脆性がアニーリングによって改善される。
【0061】
[0061]本発明の実施形態において、プライマー層を任意選択で使用することによって、デバイス表面へのコーティング層の接着を補助し得る。プライマー層は、ポリマー活性薬剤コーティングの医療デバイスへの接着を改善することができる。ポリマーマトリックス中での活性薬剤の存在又は濃度によって、ポリマーマトリックスがデバイス表面に効果的に接着する能力が妨げられる場合、これは特に有用である。任意選択のプライマー層を使用する場合、本明細書に記載される又は当業者に知られた任意の方法で、デバイス上又はデバイスの一部にプライマー層をコーティングする。プライマー層は、ポリマーマトリックス及び活性薬剤を含むコーティング組成物をプライマー層の表面に塗布する前に、乾燥(溶媒を除去)及び/又は硬化することができる。プライマー組成物は、1種又は複数のポリマーの所定量を、溶媒又は溶媒混合物の所定量に添加することによって調製し得る。プライマー層用ポリマーの代表的な例は、ポリイソシアネート、ポリエーテル、ポリウレタン、アクリレート、チタネート、ジルコネート、シランカップリング剤、アミン含有量の高いポリマー、水素結合基の含有量が高いポリマー並びに不飽和のポリマー及びプリポリマーを含むが、これらに限らない。ポリマーの代表的な例は、本明細書に記載されている本発明のポリマーマトリックス中に使用されるポリマーも含む。本発明の医療デバイスに有用なプライマー層のさらなる例は、その開示が本明細書に参照により組み込まれている、Hossainyらの米国特許第6908624号明細書で開示されているものを含む。
【0062】
[0062]コーティング層の厚さは、約1.0nm〜約1.0mm、約1.0nm〜約100μm、約1.0nm〜約1.0μm、約1.0nm〜約100nm、約1.0nm〜約10nm、約10nm〜約100nm、約0.5μm〜約10μm、約1μm〜約10μm、約10μm〜約50μm、約50μm〜約100μm、又はこの中の任意の範囲であってよい。他の実施形態では、コーティング層の厚さをデバイスの全体に渡り局所的に分布させることによって、厚さの変化、例えば、反管腔側にコーティングを施した薬剤溶出ステントシステムに見られる、厚さの変化を作ることができる。
【0063】
溶媒
[0063]コーティング組成物のための溶媒は、コーティング溶液中の所望する濃度で、ブロックコポリマー及び活性薬剤を溶解することができるべきである。コーティング溶媒に対する基準を満たすいかなる適切な溶媒、ブレンド又は1種又は複数の溶媒の混合物をも使用することができる。本発明のコーティング組成物を形成するのに有用な溶媒は、本明細書に記載したように、例えば、溶媒中でのブロックコポリマーの溶解度、活性薬剤との相容性、溶媒の揮発度、相分離の誘発に対する溶媒の効果、さらに相分離又は活性薬剤の分布を変えることなく溶媒をコーティング層から除去できる能力などの要素に基づいて選択される。
【0064】
[0064]本発明を実施するために適切な溶媒の例は、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、アセトン、アセトニトリル、i−プロパノール、n−プロパノール、メタノール、エタノール、ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルブチルケトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、酢酸エチル、n−酢酸ブチル、ジオキサン、クロロホルム、水(緩衝した生理食塩水)、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルミド、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、ペンタン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、デカリン、i−酢酸ブチル、i−酢酸プロピル、ジアセトンアルコール、ベンジルアルコール、1−ブタノン、2−ブタノン、Nメチルピロリジン、塩化メチレン、四塩化炭素、テトラクロロエチレン、テトラクロロエタン、クロロベンゼン、1,1,1−トリクロロエタン、ホルムアミド、ヘキサフルオロイソプロパノール、1,1,1−トリフルオロエタノール、ヘキサメチルホスホルアミド、及びこれらの組合せを含むが、これらに限らない。
【0065】
活性薬剤
[0065]本発明のコーティング組成物は、1種又は複数の活性薬剤を含む。「活性薬剤」という用語は、患者の体内で、治療、予防又は他の生物学的効果を発揮することが可能な任意の薬剤を指す。活性薬剤は、診断用薬であっても、血管部位での傷の治癒を強化するものでも、血管部位の構造及び弾性の特性を改善するものでもよい。広範囲な異なる活性薬剤を本発明の医療デバイスに取り込むことができる。適切な活性薬剤の例は、合成の無機化合物及び有機化合物、タンパク質、ペプチド、多糖類及び他の糖、リピド、及びオリゴヌクレオチド、並びにDNA及びRNAの核酸配列などを含むが、これらに限らない。活性薬剤の組合せを使用する場合、各薬剤は、コポリマーの他の薬剤並びに/又は相ドメイン及びブロックとの相容性の点から、並びにその医学的効果及びコポリマーからの放出速度の点から選択される。活性薬剤は薬物であってよい。
【0066】
[0066]広範囲な分子量、例えば、100〜500000グラム/モルの間の分子量を有する活性薬剤が本発明の実施形態に有用である。本発明の実施形態におけるこの1種又は複数の活性薬剤の量は、治療効果を生じるのに必要とされる投与量又は濃度であり、治療効果を得られない濃度よりも大きくなるべきである。活性薬剤の投与量又は濃度は、例えば被検体の特別な事情、外傷の性質、所望する治療の性質、投与した成分が血管部位に留まる時間など、さらに他の生物活性物質を使用する場合には、その物質の又はその物質の組合せの性質及び種類などの要素によって決まる。治療上有効な投与量は、当分野で知られている方法、例えば、適切なインビトロの研究を行うことなどによって求めることができる。例えば、活性薬剤は、0.01重量%〜70重量%、或いは5重量%〜50重量%の間の添加量のパーセントでポリマーマトリックスに取り込むことができる。
【0067】
[0067]本明細書に記載されているように、活性薬剤は、コーティング組成物中のブロックコポリマーにブレンド又は混合することができ、及び/又は活性薬剤は、相分離したポリマーコーティング又はデバイスに膨潤により取り込むことができる。コーティング組成物の活性薬剤は、本発明の医療デバイス及びコーティング中のポリマーマトリックスとの結合を形成していてもいなくてもよい。結合を形成する場合、接続は物理的、化学的、又はその組合せであってよい。物理的接続の例は、例えば、相互浸透しているネットワーク及び鎖のもつれの中で生じ得る成分の相互連結を含むが、これに限らない。化学的接続の例は、共有結合及び非共有結合を含むが、これらに限らない、非共有結合は、イオン結合及び分子間の引力、例えば、水素結合及び静電相互作用又は静電引力などを含むが、これらに限らない、一実施形態において、活性薬剤と、ポリマーの相ドメインの1つとの間の水素結合の形成を使用することによって、コーティング層からの活性薬剤の放出速度を調節する(調整する)。2種類以上の薬剤がコーティング中に存在する場合、各薬剤は、異なる種類の結合を形成するか又は結合を形成しなくてもよい。
【0068】
[0068]本発明の実施形態を実施する上で有用な活性薬剤は、抗増殖剤、抗腫瘍剤、抗炎症剤、ステロイド性の抗炎症剤、非ステロイド性の抗炎症剤、抗血小板剤、抗凝固剤、抗フィブリン剤、アンチトロンビン剤、抗有糸分裂性剤、抗生剤、抗アレルギー剤、抗酸化剤、及び細胞分裂阻害剤、並びにこれらの組合せなどを含むが、これらに限らない。
【0069】
[0069]抗増殖性物質の例は、アクチノマイシンD、又はその誘導体及び類似体(製造元Sigma−Aldrich(Milwaukee、WI)、又はMerck(Whitehouse Station、NJ)から市販のCOSMEGEN)を含むが、これらに限らない。アクチノマイシンDの同義語は、ダクチノマイシン、アクチノマイシンIV、アクチノマイシンI
1、アクチノマイシンX
1及びアクチノマイシンC
1を含む。抗腫瘍薬及び/又は抗有糸分裂薬の例は、パクリタキセル(例えばBristol−Myers Squibb Co.(Stamford、CT)製のタキソール(登録商標))、ドセタキセル(例えば、Aventis S.A.(Frankfurt、ドイツ)製のTAXOTERE(登録商標))、メトトレキサート、アザチオプリン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、フルオロウラシル、塩酸ドキソルビシン(例えばPharmacia & Upjohn(Peapack、NJ)製のアドリアマイシン(登録商標))、及びマイトマイシン(例えばBristol−Myers Squibb Co.(Stamford、CT)製のMUTAMYCIN(登録商標))を含むが、これらに限らない。抗血小板薬、抗凝血薬、抗フィブリン、及び抗トロンビンの例は、ヘパリン、ナトリウムヘパリン、低分子量ヘパリン、ヘパリン硫酸塩、ヘパリノイド、ヒルジン、アルガトロバン、フォルスコリン、バピプロスト、プロスタサイクリン及びプロスタサイクリン類似体、デキストラン、D−phe−pro−arg−クロロメチルケトン(合成の抗トロンビン)、ジピリダモール、グリコプロテインIIb/IIIa血小板細胞膜レセプター拮抗薬抗体、リコンビナントヒルジン、トロンビン阻害剤、例えばANGIOMAX(商標)(Biogen、Inc.(Cambridge、MA))など及び7E−3B(登録商標)(Centocor(Horsham、PA)製の抗血小板薬)を含むが、これらに限らない。適切な有糸分裂阻害剤の例は、メトトレキサート、アザチオプリン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、フルオロウラシル、アドリアマイシン及びムタマイシンを含むが、これらに限らない。そのような細胞増殖抑制剤又は抗増殖剤の例は、アンジオペプチン、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、例えばカプトプリル(例えばBristol−Myers Squibb Co.(Stamford、CT)製のCAPOTEN(登録商標)及びCAPOZIDE(登録商標))、シラザプリル又はリシノプリル(例えばMerck & Co.,Inc.(Whitehouse Station、NJ)製のPRINIVIL(登録商標)及びPRINZIDE(登録商標))、カルシウムチャネル拮抗薬(例えばニフェジピン)、コルヒチン、線維芽細胞成長因子(FGF)拮抗薬、魚油(ω3−脂肪酸)、ヒスタミン拮抗薬、ロバスタチン(Merck & Co.,Inc.(Whitehouse Station、NJ)製のHMG−CoA還元酵素の阻害剤、コレステロール低下薬、商品名MEVACOR(登録商標))、モノクローナル抗体(血小板由来成長因子(PDGF)受容体に特異性のものなど)、ニトロプルシド、ホスホジエステラーゼ阻害剤、プロスタグランジン阻害剤、スラミン、セロトニン遮断薬、ステロイド、チオプロテアーゼ阻害剤、トリアゾロピリミジン(PDGF拮抗薬)、及び一酸化窒素を含むが、これらに限らない。抗アレルギー剤の例は、ペルミロラストカリウムである。適切であり得る他の治療用の物質又は薬剤は、α−インターフェロン、遺伝子操作された上皮細胞、タクロリムス、デキサメタゾン及びラパマイシン並びに構造上の誘導体又は官能基の類似体、例えば40−O−(2−ヒドロキシ)エチルラパマイシン(Novartis Pharma AG(Switzerland)から市販されているeverolimusという商品名で知られている)、40−O(3−ヒドロキシ)プロピルラパマイシン、40−O−[2(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシン、及び40−O−テトラゾール−ラパマイシンなどを含むが、これらに限らない。
【0070】
[0070]一部の実施形態において、1種又は複数の活性薬剤は水溶性である。水溶性の小分子活性薬剤は、タンパク質、ペプチド、ペプチドに結合した生物活性化合物、抗炎症薬、抗増殖薬、又は抗菌薬を含むが、これらに限らない。ペプチドの例は、RGD配列及びVEGF配列を含むが、これらに限らない。一実施形態において、活性薬剤は、環状RGD(c−RGD)ペプチド、ポリ(L−アルギニン)、ポリ(D−アルギニン)、ポリ(D,L−アルギニン)、ポリ(L−リジン)、ポリ(D−リジン)、ポリ(δ−グアニジノ−α−アミノ酪酸)、ポリ(L−アルギニン)とポリ(D−アルギニン)との混合物及びエラスチン様ポリペプチドを含む。「環状RGD」という用語は、ペプチドすなわちアルギニン(アミノ酸R)、グリシン(アミノ酢酸又はアミノ酸G)及びアスパラギン酸(アミノ酸D)の縮合生成物で、環状構造を有するペプチドを指す。
【0071】
[0071]「ポリ(L−アルギニン)」、「ポリ(D−アルギニン)」、「ポリ(D,L−アルギニン)」という用語は、ポリマー及びオリゴマーの両形態におけるL−、D−、及び/又はD,L−アルギニンを含むことを意図する。使用することができるL−、D−、及び/又はD、L−アルギニンのポリマー及び/又はオリゴマーは、ペプチド結合に連結した、繰り返しの単量体のアミノ酸単位を複数含み、各単位が、−CH
2−CH
2−CH
2−NH−C(NH
2)=NHの構造を有する1−グアニジノプロピルラジカルを含む。一実施形態において、L−アルギニンの七量体(R7)(p=7)又は九量体(R9)(p=9)を使用することができる。
【0072】
[0072]エラスチン様ポリペプチドは、いくつかのアミノ酸を含み、式(I)を有するタンパク質五量体である
−[(V/I)−P−G−Xaa−G]
5− (I)
(式中、Vはバリン(2−アミノ−3−メチル酪酸)であり、Iはイソロイシン(2−アミノ−3−メチルバレリアン酸)であり、Pはプロリン[(S)−2−ピロリジンカルボン酸]であり、Gはグリシン(アミノ酢酸)であり、Xaaは、最初の4つの繰り返し単位ではバリンであり、5つ目の繰り返し単位ではイソロイシン又はリジン[(S)−2,6−ジアミノヘキサン酸又はK]のいずれかであるアミン酸である)。「V/I」という略語は、バリン又はイソロイシンのいずれかが存在し得るが、両方は存在し得ないことを示すものである。
【0073】
[0073]診断用薬の例は、X線、蛍光、核磁気共鳴画像、放射能、超音波、コンピュータ断層撮影(CT)、及びポジトロン放出断層撮影(PET)で検出可能なものを含むが、これらに限らない。
【0074】
[0074]前述の物質は、例として挙げたものであり、制限することを意図していない。現在市販されている又は将来開発し得る他の活性薬剤を同様に適用できる。
【0075】
医療デバイス
[0075]本明細書で使用する場合、「医療デバイス」は、ヒト又は獣医学の患者の治療に使用することができる任意のデバイスであってよい。医療デバイスは、患者の外部に使用するか、又は患者の体内に移植するかのいずれでもよい。好ましい実施形態において、医療デバイスは、薬剤溶出性ステントのように移植が可能である。医療デバイスは、移植可能な完全に吸収性のステントなど、完全に吸収性であってよい。医療デバイスの例は、ステント、ステントグラフト、人工血管、人工心臓弁、卵円孔開存症閉塞デバイス、髄液短絡術、ペースメーカー電極、ガイドワイヤー、補助人工心臓、人工心肺回路、血液酸素付加デバイス、冠動脈内シャント(Axius(商標)Guidant Corp.(IN))、大静脈フィルター及び内心膜リード(FINELINE(登録商標)及びENDOTAK(登録商標)Guidant Corp.(IN))を含むが、これらに限らない。医療デバイスの基礎をなす構造は、実質的にいかなる設計でもよい。好ましくは、埋込み型医療デバイスはステントである。ステントの例は、尿細管ステント、自己拡大型ステント、コイルステント、環状ステント、マルチデザインステントなどを含むが、これらに限らない。一部の実施形態において、ステントは、、血管ステント、腎臓ステント、胆管ステント、肺動脈ステント及び消化管ステントを含むが、これらに限らない。薬剤溶出性ステントなどのデバイスをコーティングする例が本明細書に記載されているが、相分離したブロックコポリマー及び本発明の方法を用いて、他の医療デバイス及び基材を製造することができることを当業者は認識するであろう。
【0076】
[0076]医療デバイスは、金属材料又は合金、低い強磁性ポリマー、非強磁性ポリマー、生体安定性ポリマー、生分解性ポリマー、生体吸収性ポリマー、生分解性金属の又は当分野で知られている他の相容性材料で作製することができる。一部の実施形態において医療デバイスは、相分離したブロックコポリマー及び1種又は複数の活性薬剤を含む組成物から、例えば、射出成形及び当業者に知られている他の方法で形成し得る。金属及び合金の例は、ELASTINITE(登録商標)(Guidant Corp.,IN)、NITINOL(登録商標)(Nitinol Devices and Components(Fremont、CA))、ステンレススチール、タンタル、タンタル系合金、ニッケルチタン合金、白金、白金系合金、例えば、白金イリジウム合金など、イリジウム、金、マグネシウム、チタン、チタン系合金、ジルコニウム系合金、コバルトとクロミウムとを含む合金(ELGILOY(登録商標)、Elgiloy Specialty Metals、Inc.(Elgin、IL))、MP35N及びMP20N(SPS Technologies(Jenkintown、PA))又はこれらの組合せを含むが、これらに限らない。商業名「MP35N」及び「MP20N」は、コバルト、ニッケル、クロミウム及びモリブデンの合金を表している。MP35Nは、コバルト35%、ニッケル35%、クロミウム20%及びモリブデン10%からなる。MP20Nは、コバルト50%、ニッケル20%、クロミウム20%及びモリブデン10%からなる。
【0077】
[0077]本発明の特定の実施形態を説明してきたが、本発明の教示及び実施形態の趣旨及び範囲から逸脱することなく、変更及び修正をなし得ることは、当業者であれば明らかであろう。そのような教示は、例としてのみ提供され、本発明の範囲を制限することを意図するものではないことを当業者であれば認識されよう。したがって詳細及び例は、例としてのみ挙げられたもので、本発明の真の範囲及び趣旨は、以下の特許請求の範囲及び合法的な等価物に記載されている。