特許第5793785号(P5793785)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社Idoの特許一覧

<>
  • 特許5793785-水棲生物用水槽の水濾過装置 図000002
  • 特許5793785-水棲生物用水槽の水濾過装置 図000003
  • 特許5793785-水棲生物用水槽の水濾過装置 図000004
  • 特許5793785-水棲生物用水槽の水濾過装置 図000005
  • 特許5793785-水棲生物用水槽の水濾過装置 図000006
  • 特許5793785-水棲生物用水槽の水濾過装置 図000007
  • 特許5793785-水棲生物用水槽の水濾過装置 図000008
  • 特許5793785-水棲生物用水槽の水濾過装置 図000009
  • 特許5793785-水棲生物用水槽の水濾過装置 図000010
  • 特許5793785-水棲生物用水槽の水濾過装置 図000011
  • 特許5793785-水棲生物用水槽の水濾過装置 図000012
  • 特許5793785-水棲生物用水槽の水濾過装置 図000013
  • 特許5793785-水棲生物用水槽の水濾過装置 図000014
  • 特許5793785-水棲生物用水槽の水濾過装置 図000015
  • 特許5793785-水棲生物用水槽の水濾過装置 図000016
  • 特許5793785-水棲生物用水槽の水濾過装置 図000017
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5793785
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】水棲生物用水槽の水濾過装置
(51)【国際特許分類】
   A01K 63/04 20060101AFI20150928BHJP
【FI】
   A01K63/04 A
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-62026(P2015-62026)
(22)【出願日】2015年3月25日
【審査請求日】2015年3月26日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515081419
【氏名又は名称】株式会社Ido
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】井戸 則幸
【審査官】 坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】 実開平4−21257(JP,U)
【文献】 特開2009−296976(JP,A)
【文献】 特開昭55−111739(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 63/00−63/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水槽内の水を吸引するとともに濾過した水を供給する圧力を与える水中ポンプが設置された第1濾過装置と、この第1濾過装置の上方に設置された第2濾過装置と、を備え、これらの第1濾過装置及び第2濾過装置で水棲生物用水槽内の水を濾過するとともに、濾過した水に酸素を供給する水棲生物用水槽の水濾過装置であって、
前記第1濾過装置は、下部に吸水口を有した下部筐体と、上部に吸水口を有した上部筐体と、を有し、これらの下部筐体と上部筐体とが、互いに高さ調節可能に嵌合され、その中に前記水中ポンプが収容されており、
前記第2濾過装置は、複数の凸部が外表面に形成された装置本体と、その装置本体の上部に設けられ、前記水中ポンプの圧力により濾過した水を吐出する吐出口と、を有し、
前記水中ポンプを駆動して前記第1濾過装置及び第2濾過装置を通過した水を、前記吐出口から前記複数の凸部を通過するように流下させて供給すること
を特徴とする水棲生物用水槽の水濾過装置。
【請求項2】
前記複数の凸部は、すじ状の複数の凸部が上下方向に交互に重なるように形成されていること
を特徴とする請求項1に記載の水棲生物用水槽の水濾過装置。
【請求項3】
前記水中ポンプは、スポンジ状の樹脂からなる濾材で覆われた上、前記下部筐体及び前記上部筐体に収容されていること
を特徴とする請求項1又は2に記載の水棲生物用水槽の水濾過装置。
【請求項4】
前記第2濾過装置は、上部に通水溝が形成された第1仕切り板と、下部に通水溝が形成された第2仕切り板とが、前記装置本体の内部に装着可能となっていること
を特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の水棲生物用水槽の水濾過装置。
【請求項5】
前記第2濾過装置は、前記吐出口から吐出した水を一旦溜める水溜まり部が前記装置本体の上面に設けられ、この水溜まり部には、前記複数の凸部の直上の側面に複数の流下溝が形成されていること
を特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の水棲生物用水槽の水濾過装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、比較的泳力や酸素摂取能力が弱い小型の観賞魚などの水棲生物用水槽の水を濾過する水棲生物用水槽の水濾過装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
土佐錦魚、らんちゅう、地金、ナンキン、津軽錦、変わりメダカなどのいわゆる小型の観賞魚は、鰭や体形等を長い間を掛けて人為的に改良して来たため、他の魚と比べて泳力や酸素摂取能力が弱く、水質の悪化に極めて敏感なものが多い。このため、これらの観賞魚用の水槽では、頻繁に、且つ注意深く水槽内の水替えと充分な酸素供給を行う必要があった。そのため、人力だけで水替え等を行うことが困難であり、従来、酸素供給が可能な様々な観賞魚用水槽の水濾過装置が提案されている。
【0003】
このような観賞魚用水槽の水濾過装置としては、例えば、特許文献1には、濾過ケースCと、蓋板Lと、濾過ユニットUなど、からなり、濾過ケースCの両側面に設けた係止孔13に係脱可能なロック片45を蓋板Lの両側に設け、ロック片45は、蓋板Lの内方に弾性変形したときに係止孔13から離脱し、蓋板Lの放射方向外方に弾性復元したときに係止孔13に係合するようにし、濾過ケースCと蓋板Lとをワンタッチにて着脱出来るようにして、濾材の交換などのメンテナンスが容易に行なえるようにした内部式濾過装置が開示されている(特許文献1の特許請求の範囲の請求項1、明細書の段落[0016]〜[0024]、図面の図1図12等参照)。
【0004】
また、特許文献2には、回転軸31と、回転軸31が貫通する貫通路32aを設けたろ過材本体32と、回転軸31が貫通し、回転軸31を中心にして複数の羽根(33ab、33as)を設けた羽根具33と、を備え、羽根具33を貫通路32aと同軸上に複数備える水槽用水中ろ過材30と、気泡2を放出する気泡放出口21aを設けた底部21と、この底部21の縁に連接されて複数の側壁スリット22sを設けた側壁部22と、気泡2を排出する気泡排出口23aを設けたフタ部23とからなるろ過材収納ケース20に、回転軸31を気泡放出口21aと気泡排出口23aとで支持して気泡2による上昇水流C1が前記羽根具33に当たって回転するように収納し、水槽内で酸素が効率よく水中に溶解し、ゴミを均一に吸着し、交換時期を容易に判断出来る水槽用水中ろ過装置が開示されている(特許文献2の特許請求の範囲の請求項2、明細書の段落[0017]〜[0024]、図面の図1図5等参照)。
【0005】
しかし、特許文献1の内部式濾過装置や特許文献2の水槽用水中ろ過装置では、水槽の水の濾過と酸素供給は出来るものの、濾過機能や酸素供給能力を上げると必然的にポンプの動力が上がり、濾過後の酸素を充分に含み濾過された新鮮な水の水流も強くなってしまう。このため、泳力の弱い小型の観賞魚は、強い水流に逆らって泳ぐのに疲れて体調を崩し、それが原因で死んでしまうという問題があった。また、ポンプの動力を上げるとポンプの作動音が大きくなり、その音が、観賞魚にストレスとなり、これも場合によっては、死に至らしめることがあるという問題もある。
【0006】
このような問題を解決するには、小型の観賞魚を飼育する水槽と入れ替えた水を直接供給する水槽を分け、直接供給する水槽から飼育する水槽へ2段階に分けて供給することが考えられる。しかし、それでは、多大なスペースが必要であり、一般家庭では実現するのが困難であることに加え、省エネルギー、省スペースに反する結果となってしまうという新たな問題が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013−123412号公報
【特許文献2】特開2012−205569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、上述した問題を鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、高度に水を濾過して溶存酸素を充分に供給することが出来るとともに、供給する水の水流を極限まで抑えることで、飼育する観賞魚などの水棲生物を疲れさせたりストレスを与えたりすることがなく、そのため本来の美しさを損なうことなく、誰でも簡単に小型観賞魚等水棲生物の飼育を可能とする水棲生物用水槽の水濾過装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の水棲生物用水槽の水濾過装置は、水槽内の水を吸引するとともに濾過した水を供給する圧力を与える水中ポンプが設置された第1濾過装置と、この第1濾過装置の上方に設置された第2濾過装置と、を備え、これらの第1濾過装置及び第2濾過装置で水棲生物用水槽内の水を濾過するとともに、濾過した水に酸素を供給する水棲生物用水槽の水濾過装置であって、前記第1濾過装置は、下部に吸水口を有した下部筐体と、上部に吸水口を有した上部筐体と、を有し、これらの下部筐体と上部筐体とが、互いに高さ調節可能に嵌合され、その中に前記水中ポンプが収容されており、前記第2濾過装置は、複数の凸部が外表面に形成された装置本体と、その装置本体の上部に設けられ、前記水中ポンプの圧力により濾過した水を吐出する吐出口と、を有し、前記水中ポンプを駆動して前記第1濾過装置及び第2濾過装置を通過した水を、前記吐出口から前記複数の凸部を通過するように流下させて供給することを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の水棲生物用水槽の水濾過装置は、請求項1に記載の水棲生物用水槽の水濾過装置において、前記複数の凸部は、すじ状の複数の凸部が上下方向に交互に重なるように形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の水棲生物用水槽の水濾過装置は、請求項1又は2に記載の水棲生物用水槽の水濾過装置において、前記水中ポンプは、スポンジ状の樹脂からなる濾材で覆われた上、前記下部筐体及び前記上部筐体に収容されていることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の水棲生物用水槽の水濾過装置は、請求項1ないし3にいずれかに記載の水棲生物用水槽の水濾過装置において、前記第2濾過装置は、上部に通水溝が形成された第1仕切り板と、下部に通水溝が形成された第2仕切り板とが、前記装置本体の内部に装着可能となっていることを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の水棲生物用水槽の水濾過装置は、請求項1ないし4にいずれかに記載の水棲生物用水槽の水濾過装置において、前記第2濾過装置は、前記吐出口から吐出した水を一旦溜める水溜まり部が前記装置本体の上面に設けられ、この水溜まり部には、前記複数の凸部の直上の側面に複数の流下溝が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1〜5に記載の発明によれば、高度に水を濾過して溶存酸素を充分に供給することが出来るとともに、供給する水の水流を極限まで抑えて、飼育する観賞魚を疲れさせたり観賞魚にストレスを与えたりすることがなく、そのため本来の美しさを損なうことなく誰でも簡単に小型観賞魚の飼育が可能となる。また、請求項1〜5に記載の発明によれば、溶存酸素を充分に供給することが出来るため、別途、エアレーション装置を設ける必要がなく、経済的である。また、前記の全ての機能を垂直方向に備えるので、省スペース、低コストで、しかもレイアウトの自由度が高いものとなる。
【0015】
特に、請求項2に記載の発明によれば、すじ状の複数の凸部が上下方向に交互に重なるように形成されているので、吐出口から流下してくる水が、分断、合流、落下を繰り返すため、供給する水流の勢いを弱めることが出来るとともに、凸部にぶつかりながら流れ落ちる過程において空気を巻き込むため、水流に充分に酸素を溶解して供給する水の溶存酸素の濃度を高めることが出来る。
【0016】
特に、請求項3に記載の発明によれば、水中ポンプがスポンジ状の樹脂からなる濾材で覆われているので、水中ポンプの駆動音や振動が多孔性のスポンジ状の樹脂で吸収されて弱められることとなり、水棲生物用水槽の水濾過装置の静粛性が高められ、水棲生物及び人へのストレスを軽減することが出来る。
【0017】
特に、請求項4に記載の発明によれば、第2濾過装置は、上部に通水溝が形成された第1仕切り板と、下部に通水溝が形成された第2仕切り板とが、前記装置本体の内部に装着可能となっているので、第2濾過装置の装置本体内を3区画に区分して、物理濾過用の濾材や生物濾過用の担体(濾材)、吸着・化学濾過用の濾材等を自由に組み合わせるなど設置出来る濾材の自由度が高く、飼育する魚に応じて様々な濾過を省スペースで実現することが出来る。また、請求項4に記載の発明によれば、第1仕切り板と第2仕切り板とで上下に水流を蛇行させることが出来るので、さらに、濾過効率を高めながら、濾過供給する水流の勢いを弱めることが出来る。その上、請求項4に記載の発明によれば、第1仕切り板と第2仕切り板を簡単に着脱可能なため、濾材の取り替えやアレンジ、装置内の清掃が容易であり、小型観賞魚の飼育がより簡便となる。
【0018】
特に、請求項5に記載の発明によれば、吐出口から供給する水を一旦水溜まり部に溜めたうえ、複数の流下溝から均等に分散し、流れを弱め、水を流下させることが出来る。このため、請求項5に記載の発明によれば、第2濾過装置の外側面全体を均等に使って凸部に水を衝突させながら流下させることができ、より一層、水流を弱めることが出来るとともに、水流に充分に酸素を溶解して供給する水の溶存酸素の濃度を高めることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る水棲生物用水槽の水濾過装置の全体構成を示した斜視図である。
図2】同上の水濾過装置の第1濾過装置の装置本体を示す斜視図である。
図3】同上の第1濾過装置の装置本体に収容されている部品構成を示す斜視図である。
図4】同上の第1濾過装置の台座を示す斜視図である。
図5】同上の第1濾過装置の水中ポンプ、スポンジ、接続パイプを示す斜視図である。
図6】同上の第1濾過装置の上皿を示す斜視図である。
図7図1の水濾過装置の第2濾過装置の内容器と外容器を示す斜視図である。
図8】同上の内容器の平面図である。
図9】同上の内容器の仕切り板を示す正面図である。
図10】同上の内容器を流れる水流を示す説明斜視図である。
図11図7の外容器を示す平面図である。
図12】同上の外容器の上面を流れる水流を示す説明平面図である。
図13】同上の外容器の外周面を流れる水流を示す説明斜視図である。
図14】実施形態に係る水濾過装置で吸引する水の水流等を示す説明斜視図である。
図15】同上の水濾過装置のオプションとして観葉植物栽培キットの本体を示す斜視図である。
図16】同上の観葉植物栽培キットの底板を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る水棲生物用水槽の水濾過装置を実施するための一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
図1図14を用いて、本発明の実施形態に係る水棲生物用水槽の水濾過装置について説明する。図1に示すように、本実施形態に係る水棲生物用水槽の水濾過装置1は、水棲生物用水槽の水底に設置される第1濾過装置2と、この第1濾過装置2の上の水面上に載置される第2濾過装置3など、から構成されており、スポンジ状の濾材S1や後述の観葉植物栽培キットなどのオプション部品が第2濾過装置3の上に載置可能となっている。
【0022】
<第1濾過装置>
先ず、図2図6を用いて、第1濾過装置2について説明する。第1濾過装置2は、図2に示す装置の筐体となる装置本体20を備え、この装置本体20に、図3等に示す水中ポンプ4などの部品が収容されており、水槽内の水を吸引して濾過する機能を有している。
【0023】
[装置本体]
装置本体20は、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂、ポリスチレン(PS)樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂などの樹脂からなる有底の円筒状の下部筐体21と、この下部筐体21に外嵌されて嵌着される、下部筐体21と同様の樹脂からなる上部が開放された円筒状の上部筐体22など、から構成されている。
【0024】
(下部筐体)
下部筐体21は、主に、内径126mm×高さ146mm程度、厚さ2mmの円筒体23と、この円筒体23の底となる底板24と、からなり、この円筒体23の側面の下部(本実施形態では、底板24からの孔の下端の離間距離が5mmとなる位置)には、水槽内の水を吸引するための直径10mmの円形の孔からなる複数の吸引口23aが穿設されている。また、吸引口23aの上方となる上端から高さ126mmの円筒体23の側面部分は、鉛直断面が波形に蛇行した凹凸部23bとなっており、上部筐体22を嵌着する高さが調節可能となっている。
【0025】
そして、底板24の外縁には、円筒体23の外周面の下端から20mm幅で外部へ張り出す鍔状の台座部24aが形成されており、この台座部24aがあるため転倒モーメントが大きくなり第1濾過装置2及び水濾過装置1全体が転倒しにくいようになっている。
【0026】
(上部筐体)
上部筐体22は、主に、内径129mm×高さ139mm程度、厚さ2mmの円筒体25からなり、この円筒体25の側面の上部には、水槽内の水を吸引する直径10mmの円形の孔からなる複数の吸引口25aが穿設されている。また、この円筒体25の上端の縁には、円筒体25の外周面から20mm外側へ張り出す鍔部25bが形成されている。なお、この鍔部25bには、後述の第2濾過装置の蓋体32の鍔部36bが装着される。
【0027】
[水中ポンプ、その他収容部品]
図3図6に示すように、第1濾過装置2は、前述の装置本体20内に、水槽内の水を吸引するとともに濾過した水を供給する圧力を与える水中ポンプ4などの収容部品を備えており、この水中ポンプ4は、樹脂からなるスポンジ状の濾材S2〜S4間に挟装されて台座5の上に載置され、さらにその上に上皿6が載置されている。
【0028】
(水中ポンプ)
本実施形態に係る水中ポンプ4には、エーハイム製のコンパクトポンプ300が採用されており、このコンパクトポンプ300は、50Hzでポンプ流量が130〜260リットル/h、最大揚程が0.36mの能力を有する外部フィルター式の電動コンパクトポンプである。この水中ポンプ4は、図5等に示すように、上部に吐出口40を有し、下部及び周囲から水槽内の水を吸引して、吐出口40から前記能力で水を吐出する機能を有している。勿論、この水中ポンプ4には、0.30m程度以上の揚力があれば、他の外部フィルター式の電動コンパクトポンプを採用することが出来る。
【0029】
(接続パイプ)
この吐出口40内には、図3図5に示すように、第2濾過装置3に接続するための装置本体20と同様の樹脂製の接続パイプPが嵌め込まれて接続・延長される。この接続パイプPは、下部が外径12.5mmで上部が外径16.5mmのテーパー状の高さ(長さ)50mm、厚さ2mmの円筒体からなる第1接続パイプP1と、下部が外径17mmで上部が外径21mmのテーパー状の高さ(長さ)50mm、厚さ2mmの円筒体からなる第2接続パイプP2と、から構成されている。なお、装置本体20を水槽の水深に応じて高さ調整する際には、この第2接続パイプP2を伸縮させる。
【0030】
(台座)
台座5は、図4に示すように、装置本体20と同様の樹脂製の直径124mmの円形の平板からなる上板50と、直径75mm、高さ30mmの円筒状の台輪51とからなり、これらの上板50及び台輪51には、水槽の水を通す(通水する)直径10mm〜15mm程度の複数の通水孔50a,51aが穿設されている。この台座5は、水中ポンプ4を載置して水中ポンプ4の吸水スペースを下方に設けるスペーサーとしての機能を有している。
【0031】
(上皿)
上皿6は、図6に示すように、装置本体20と同様の樹脂製の概略直径124mmの円形の平板60からなり、この平板60には、吐出口40を挿通するための直径18〜22mmの円形の孔からなる2つの挿通孔60aと、水槽の水を通す(通水する)直径10mmの複数の通水孔60bが形成されている。この上皿6は、スポンジ状の濾材S2が浮き上がるのを防止するとともに、水中ポンプ4を装置本体20の所定の位置、即ち、上部筐体22の内周面から所定の間隔をあけて中央付近に位置するように固定するスペーサーとしての機能を有している。なお、4つのU字状の欠き込み60cは、水中ポンプ4の電源コードを導出するための欠き込みである。
【0032】
[第1濾過装置の作用効果]
このような第1濾過装置2によれば、水中ポンプ4の圧力で水槽内の水を吸引する際に、吸引される水がスポンジ状の濾材S2〜S4を通過することとなる。このため、水中に漂うゴミ等の漂流物が、濾材S2〜S4を通過する際に濾されていわゆる物理濾過を行うことが出来る。また、第1濾過装置2によれば、濾材S2〜S4にバクテリア等が住み着くことにより、バクテリア等で水中に溶けているアンモニア等の有害物質を分解するいわゆる生物濾過を行うことも出来る。
【0033】
また、第1濾過装置2によれば、装置本体20の高さ調整が容易であり、即ち、下部筐体21と上部筐体22とを凹凸部23bで嵌合させる位置をズラして回すだけで、容易に高さ調整が可能である。このため、水深がどのような水槽であっても、上部筐体22の吸引口25aの位置を水槽の水面丁度の高さに調整することができ、オーバーフロー濾過が可能となり、水面に漂うゴミ、油、フンなどの漂流物を効果的に濾過することが出来る。また、この時、酸素も同時に取り込むことが出来るので、濾過した水の溶存酸素量を高めることが出来る。
【0034】
その上、第1濾過装置2によれば、水中ポンプ4がスポンジ状の濾材S2〜S4で覆われているので、水中ポンプ4の駆動音や振動が多孔性のスポンジ状の樹脂で吸収されて弱められることとなり、駆動音が非常に小さく抑えられて、水槽の静粛性が高められる。よって、魚や人にもストレスを与えず第1濾過装置2(水濾過装置1)を作動させることが出来る。
【0035】
なお、濾材S2〜S4として、樹脂からなるスポンジ状のものを例示して説明したが、ウールマットなどの繊維からなる濾材等を組み合わせても構わない。要するに、濾材S2〜S4としては、振動吸収と物理濾過、生物濾過が可能な素材であれば良い。
【0036】
<第2濾過装置>
次に、図7図13を用いて、第2濾過装置3について説明する。第2濾過装置3は、図7に示すように、装置本体20と同様の樹脂製の装置全体の筐体である装置本体30を備え、第1濾過装置2で濾過された水をさらに濾過するとともに水槽へ濾過した水を滴下して、酸素を取り込みながら水流を和らげ供給する機能を有している。
【0037】
[装置本体]
この装置本体30は、主に、概形が有底円筒状の内容器31と、この内容器31の外側
に装着される有蓋円筒状の蓋体32など、から構成されている。
【0038】
(内容器)
内容器31は、図7図8に示すように、内径125mm、高さ125mm、厚さ2mmの円筒体33と、厚さ2mmの底板34と、高さ4mmの台輪35から主になり、円筒体33の内周面には、後述の仕切り板B1を差し込む2箇所の差込溝33aが内周面から内側に向け突設されている。
【0039】
また、図7に示すように、円筒体33の外周面の下端付近には、蓋体32を螺着するための凸部33bと2段の整流板33cが形成されていると共に、底板34の一縁際には、図7図8に示すように、前述の接続パイプP(第2接続パイプP2)の上端を差し込み接続するための挿通孔34aが穿設されている。
【0040】
(仕切り板)
仕切り板B1は、図9に示すように、装置本体20と同様の樹脂製の概形が幅120mm、高さ120mm、厚さ2mmの正方形(矩形)の平板からなり、この平板には、幅4mm、深さ30mmの通水溝であるスリットB1aが12mmピッチで形成されている。
【0041】
この仕切り板B1は、図10等に示すように、同一形状の2枚の板が、一方は、スリットB1a側が上に、他方は、スリットB1a側が下になるように前述の差込溝33aに差し込まれ、内容器31内を3区域に区分するとともに、接続パイプPから送り込まれる第1濾過装置2で濾過した水を、流動表面積を広げ、上下に蛇行させて、水流の勢いを弱めると共に濾過材を効率的に通過させる機能を有している。なお、2枚の仕切り板B1の差し込み方向は、水流が上下に蛇行するようにスリットB1a側が互い違いになっていれば、図示形態と反対であっても構わない。
【0042】
このように、2枚の仕切り板B1により、3つの区画に区分された内容器31内には、飼育する魚や目的に応じて、物理濾過、生物濾過、化学濾過等が可能な様々な濾材を種々組み合わせて設置することが出来る。
【0043】
(蓋体)
蓋体32は、図7図11に示すように、内径124mm、高さ145mm、厚さ2mmの円筒体36と、厚さ2mmの円形の板からなる蓋板37と、から主に構成され、この円筒体36の外表面には、複数のすじ状の凸部36aが外側へ向け突設されているとともに、円筒体36の下端の縁には、鍔部36bが形成されている。この鍔部36bは、後述のように整流板としても機能する。
【0044】
円筒体36の外表面に形成されたすじ状の凸部36aは、幅2mm、突出高さ2mm程度のすじ状の凸部であり、このすじ状の凸部36aが、上下左右に一定間隔をおいて複数突設されているとともに、左右(水平方向)の間隔の直下に別の下のすじ状の凸部36aの中央部が位置するように突設されている。即ち、すじ状の凸部36aは、周方向に一定間隔を置いて複数形成されているとともに、上下方向に交互に重なるように複数形成されている。
【0045】
また、図11に示すように、蓋板37には、図10に示した内容器31内を流れる水を吐出する吐出口37aが穿設されているとともに、外周の縁には、縁壁部37bが形成されており、蓋体32の上面が吐出口37aから吐出した水を一旦溜める水溜まり部37cとなっている。
【0046】
吐出口37aから吐出した水は、図12の矢印で示すように、地球の自転によるコリオリの力により北半球に位置する日本では、反時計回りの渦を巻きながら水溜まり部37cに溜まっていき、滞らずに後述の流下溝37dへ誘導される。勿論、南半球では、時計回りになるのは云うまでもない。
【0047】
また、縁壁部37bの側面には、図13に示すように、前述のすじ状の凸部36aのそれぞれの中央の直上の位置に、円弧状の切り欠きからなる流下溝37dがそれぞれ形成されている。このため、矢印で示すように、吐出口37aから吐出した水が、水溜まり部37cに溜まると、流下溝37dから流れ落ち、すじ状の凸部36a当たって左右に分かれたり、そのまま凸部36aを乗り越えて滴下したりするとともに、分断、合流、落下を繰り返しながら蓋体32の外周側面を流下して行き、水槽の水面に滴下する直前に、整流板として機能する段状の鍔部36bにぶつかり、流れを水平方向に変えながら流下して行くこととなる。
【0048】
[第2濾過装置の作用効果]
このような第2濾過装置3によれば、仕切り板B1を差し込むだけで、内容器31の内部を1区画〜3区画に区分して、物理濾過用の濾材や生物濾過用の担体(濾材)等を自由に組み合わせることができ、濾材の自由度が高く、飼育する魚に応じて様々な濾過を実現することが出来る。また、2枚の仕切り板B1を簡単に着脱可能なため、濾材の取り替えや、装置内の清掃が容易であり、小型観賞魚等の飼育がより簡便となる。
【0049】
また、第2濾過装置3によれば、水中ポンプ4の圧力で挿通孔34aから噴き上がる水を、仕切り板B1の通水溝であるスリットB1aで上下に蛇行させて、吐出口37aから吐出させ、さらに、すじ状の凸部36aに当て、分断、合流、落下を繰り返しながら蓋体32の外周側面を流下させ、最後に、鍔部36bに当て、流れを水平方向に変えながらく流下させるので、供給する水の水流を極限まで抑えて飼育する観賞魚等を疲れさせたり観賞魚にストレスを与えたりすることがなく、そのため本来の美しさを損なうことなく誰でも簡単に小型観賞魚等の飼育が可能となる。
【0050】
その上、第2濾過装置3によれば、すじ状の凸部36aに当て、分断、合流、落下を繰り返す過程において、濾過して飼育水槽に供給する水の中に溶存酸素を充分に取り込むことが出来る。このため、別途、エアレーション装置を設ける必要がなく、省スペースであり、また、経済的である。
【0051】
さらに、第2濾過装置3の上部の吸水口25aの一部が水面より上に出ている場合は、オーバーフロー濾過が可能となるばかりか、同時に酸素の水への取り込みも可能となる。その時、吸水口25aから落下して取り込まれることとなるが、スポンジ状の濾材S2があるので、静音性は何ら妨げられない。
【0052】
[水濾過装置の作用効果]
次に、図14を用いて、水濾過装置1全体の水の流れを説明する。図14に示すように、先ず、第1濾過装置2の吸引口23a,25aから水槽の水を吸引する。このとき、下部筐体21と上部筐体22の嵌め合わせ位置を変えるだけで簡単に装置本体20の高さ調整が出来るため、吸引口23a,25aを、汚染物質が溜まり易い水槽底部、水面近傍に位置させることができ、効率よく水槽内の汚染された水を吸引することが出来る。
【0053】
次に、濾材S2〜S4で物理濾過、生物濾過を行いつつ、水中ポンプ4の揚力で水面上の第2濾過装置へ送られる。そして、前述の内容器31内の3区域を上下に蛇行しながら吐出口から吐出され、回転しながら水溜まり部37cに溜まり、流下溝37dから流れ落ち、すじ状の凸部36aに当たって左右に分かれたり、そのまま凸部36aを乗り越えて滴下したりして、分断、合流、落下を繰り返しながら蓋体32の外周側面を流下して行き、水槽の水面に滴下する直前に、整流板として機能する鍔部36b、整流板33c、鍔部25bにぶつかり、流れを水平方向に変えながら流下する。
【0054】
このため、水槽内に供給されるときには、極限まで水流の勢いが弱められるため、泳力の弱い観賞魚等にもストレスを与えることがない。また、従来の水濾過装置と相違して、水中ポンプ4自体の流量を弱めて水流を弱めるわけではないので、濾過能力自体は、落ちることなく、時間当たりに濾過出来る流量は変わらない。よって、水質の悪化に極めて敏感な観賞魚等の飼育も容易である。
【0055】
それに加え、蓋体32の外周側面を流下させる際に酸素も取り込めるため、酸素摂取能力の低い観賞魚等を飼育する場合でも別途エアレーション施設を設ける必要がない。
【0056】
水濾過装置1によれば、前述の作用効果に加え、水中ポンプ4の振動及び駆動音が非常に小さく抑えられるため、飼育する観賞魚及び飼育する人間にもストレスを与えることがない。
【0057】
また、水濾過装置1をセットするには、接続パイプPを繋ぎ、水中ポンプ4を起動させるだけなので、極めて簡単に設置することが出来る。
【0058】
その上、水中ポンプ、濾過フィルター、濾材も様々なメーカー、様々な種類のものが利用可能であり、ユーザーフレンドリーであるうえ、エアレーションが要らないので、配線は水中モーターのコード1本のみで済み、すっきりと自由度の高い水槽設計が可能となる。
【0059】
さらに、水濾過装置1によれば、仕切り板B1だけでなく、装置内の全てのパーツが分解、着脱可能なため、装置内の清掃、メンテナンスが容易となっている。
【0060】
最後に、簡単に、水濾過装置1のオプションについて説明する。図1に示すように、水溜まり部37cにスポンジ状の濾材S1を設置すると、さらに、水の勢いを弱められる。また、この濾材S1に替えて、図15図16に示す観葉植物栽培キットを載置することで、水の勢いを弱めつつ、観葉植物を栽培することができ、見た目にも爽やかで心地良く、更に癒し効果を高めることが出来る。
【0061】
以上、本発明の実施形態に係る水棲生物用水槽の水濾過装置について詳細に説明したが、前述した又は図示した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたって具体化した一実施形態を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。特に、水槽で飼育するものを、土佐錦魚、らんちゅう、地金、ナンキン、津軽錦等々の遊泳能力が弱く、水質の悪化、酸素濃度に敏感な観賞魚を例示して説明したが、他に、ディスカス、変わりメダカ、様々な魚種の繁殖、稚魚、幼魚などの飼育、又はエビ、ビーシュリンプ、カメ、サンショウウオ、カエル等の他の水棲生物の飼育にも適用することが出来る。要するに、本発明に係る水棲生物用水槽の水濾過装置は、泳力が弱く、水質の悪化、酸素濃度に敏感な水棲生物には好適に適用することが出来る。
【符号の説明】
【0062】
1 :水濾過装置
2 :第1濾過装置
20 :装置本体
21 :下部筐体(装置本体)
21 :上部筐体(装置本体)
23 :円筒体
23a :吸引口
23b :凹凸部
24 :底板
24a :台座部
25 :円筒体
25a :吸引口
25b :鍔部
3 :第2濾過装置
30 :装置本体
31 :内容器(装置本体)
32 :蓋体(装置本体)
33 :円筒体
33a :差込溝
33b :凸部
33c :整流板
34 :底板
34a :挿通孔
35 :台輪
36 :円筒体
36a :すじ状の凸部(凸部)
36b :鍔部
37 :蓋板
37a :吐出口
37b :縁壁部
37c :水溜まり部
37d :流下溝
4 :水中ポンプ
40 :吐出口
5 :台座
50 :上板
50a :通水孔
51 :台輪
51a :通水孔
6 :上皿
60 :平板
60a,60b :通水孔
60c :U字状の欠き込み
B1 :仕切り板
B1a :スリット(通水溝)
P :接続パイプ
P1 :第1接続パイプ(接続パイプ)
P2 :第2接続パイプ(接続パイプ)
S1,S2,S3,S4 :濾材
【要約】
【課題】水を濾過して溶存酸素を充分に供給することができ、水流を極限まで抑えて飼育する水棲生物を疲れさせたりストレスを与えたりすることがない水棲生物用水槽の水濾過装置を提供する。
【解決手段】第1濾過装置2及び第2濾過装置3を備えた水棲生物用水槽の水濾過装置であって、第1濾過装置2は、下部に吸水口23aを有した下部筐体21と、上部に吸水口25aを有した上部筐体22と、を有し、これらの下部筐体21と上部筐体22とが、互いに高さ調節可能に嵌合され、その中に水中ポンプ4が収容されており、第2濾過装置3は、複数の凸部36a,36bが外表面に形成された装置本体30と、その装置本体30の上部に設けられ、水中ポンプ4の圧力により濾過した水を吐出する吐出口37aと、を有し、水中ポンプを駆動して第1濾過装置及び第2濾過装置を通過した水を吐出口から複数の凸部を通過するように流下させて供給する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16