特許第5793786号(P5793786)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5793786
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】被処理物加熱加圧システム
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/16 20060101AFI20150928BHJP
   A23L 3/10 20060101ALI20150928BHJP
   A61L 2/06 20060101ALN20150928BHJP
【FI】
   A47J27/16 B
   A23L3/10
   !A61L2/06
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-16716(P2011-16716)
(22)【出願日】2011年1月28日
(65)【公開番号】特開2012-152516(P2012-152516A)
(43)【公開日】2012年8月16日
【審査請求日】2013年7月23日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】313000128
【氏名又は名称】サントリー食品インターナショナル株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】田中 二郎
(72)【発明者】
【氏名】割石 卓也
(72)【発明者】
【氏名】中田 誠亮
【審査官】 豊島 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−002100(JP,A)
【文献】 特開2000−204966(JP,A)
【文献】 特開2006−255573(JP,A)
【文献】 特開2006−002966(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/14 − 27/18
A23L 3/00 − 3/3598
A61L 2/00 − 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物を収容してその被処理物を蒸気で加熱加圧する耐圧容器と、
前記耐圧容器に蒸気を供給する蒸気発生装置とを設け、
原料水を前処理する前処理装置を、前記蒸気発生装置へ水を供給する第1供給路に設け、
前記耐圧容器から排出される蒸気の排出路を、凝集水貯留タンクに接続し、
前記凝集水貯留タンクから上方に延出して大気中に接続する排気塔を設けてある被処理物加熱加圧システムであって、
前記排気塔内に水を噴霧する水ノズルを設け、
前記水ノズルに対する給水装置を設け
前記耐圧容器から排出される蒸気に対する温度検出センサーを設け、
前記温度検出センサーの検出結果を基に、前記排気塔からの排出気体が一定温度以下に成るように、前記給水装置を操作する制御装置を設け、
前記制御装置により、前記排出路からの蒸気の排出量の増大に伴って、複数の前記水ノズルの内の低い位置の物から高い位置の物に、段階的に順次噴霧を開始して水の噴霧量を増大していくように設定してある被処理物加熱加圧システム。
【請求項2】
前記水ノズルを、前記排気塔において上下複数箇所に配置してある請求項1に記載の被処理物加熱加圧システム。
【請求項3】
前記水ノズルを、前記排気塔の内周に螺旋状に配置してある請求項2に記載の被処理物加熱加圧システム。
【請求項4】
前記凝集水貯留タンクの貯留水を、前記第1供給路の水と熱交換する熱交換装置を設けてある請求項1〜のいずれか1項に記載の被処理物加熱加圧システム。
【請求項5】
前記熱交換装置による熱交換後の前記凝集水貯留タンクの貯留水を、前記給水装置に供給する第2供給路を設けてある請求項に記載の被処理物加熱加圧システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理物を収容してその被処理物を蒸気で加熱加圧する耐圧容器と、前記耐圧容器に蒸気を供給する蒸気発生装置とを設け、原料水を前処理する前処理装置を、前記蒸気発生装置への水の第1供給路に設け、前記耐圧容器から排出される蒸気の排出路を、凝集水貯留タンクに接続し、前記凝集水貯留タンクから上方に延出して大気中に接続する排気塔を設けてある被処理物加熱加圧システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レトルト食品や医薬品等を加熱加圧下において、調理殺菌および滅菌する際に使用される被処理物加熱加圧システムに関するもので、まず、被処理物の加熱加圧殺菌処理に必要な水蒸気を作るのに、蒸気発生装置でのスケールの発生や腐食の発生を抑えて、長期使用ができるようにしなければならず、そのために、原料水は、前処理装置で固形物除去や軟水化などの前処理がなされる。
そして、前処理装置で前処理された原料水から蒸気発生装置で蒸気が作られ、耐圧容器内に蒸気を供給して所定時間、所定の温度、所定の圧力で前述の被処理物の処理をした後、降温、降圧処理をして被処理物を取り出すのに、耐圧容器から蒸気を排出する必要がある。
そこで従来装置においては、前記耐圧容器から排出される蒸気は、排出路から凝集水貯留タンクを通って排気塔にそのまま流れて外方に放出されるように構成してあった。
つまり、このシステムでは、蒸気発生装置で大量の熱エネルギーが消費され、しかも、排出路から排気塔を通って余剰の熱エネルギーが廃棄されているのが現状である。
これに対し、耐圧容器から凝集水貯留タンクまでの排出路に熱交換器を設けて熱回収を図ることが考えられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−160121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述のシステムの場合、熱交換器という新たな設備を設けることになるが、既設の被処理物加熱加圧システムからの改造をするには、熱交換器を設置するスペースの確保が難しい場合がある。
【0005】
従って、本発明の目的は、排出される水蒸気からの効率の良い熱回収を維持しつつ、既存の被処理物加熱加圧システムからの改造に対応可能にするところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の特徴構成は、被処理物を収容してその被処理物を蒸気で加熱加圧する耐圧容器と、前記耐圧容器に蒸気を供給する蒸気発生装置とを設け、原料水を前処理する前処理装置を、前記蒸気発生装置へ水を供給する第1供給路に設け、前記耐圧容器から排出される蒸気の排出路を、凝集水貯留タンクに接続し、前記凝集水貯留タンクから上方に延出して大気中に接続する排気塔を設けてある被処理物加熱加圧システムであって、前記排気塔内に水を噴霧する水ノズルを設け、前記水ノズルに対する給水装置を設け、前記耐圧容器から排出される蒸気に対する温度検出センサーを設け、前記温度検出センサーの検出結果を基に、前記排気塔からの排出気体が一定温度以下に成るように、前記給水装置を操作する制御装置を設け、前記制御装置により、前記排出路からの蒸気の排出量の増大に伴って、複数の前記水ノズルの内の低い位置の物から高い位置の物に、段階的に順次噴霧を開始して水の噴霧量を増大していくように設定してあるところにある。
【0007】
本発明の第1の特徴構成によれば、水ノズルを既設の排気塔に設け、水ノズルに対する給水装置を設けるだけの簡単な改造で済み、従来のように改造のための新たな追加装置のスペースを設ける必要が無い。
しかも、排気塔内に水ノズルから噴霧された多数の水滴に、蒸気が直接接触して吸着され、それらの水滴は、熱エネルギーを含んだ状態で下方の凝集水貯留タンクに落下して集められる。
従って、新たなスペースを設けない簡単な改造で、効率よく蒸気からの熱エネルギーを回収できる。
また、排気塔での水ノズルからの水噴霧により、耐圧容器から排気される蒸気が効率よく、且つ、確実に吸着されて回収されるために、排気塔からの白煙を防止でき、システム全体の環境イメージを良好に維持できる。
また、制御装置による給水装置の操作で排気塔からの排出気体が一定温度以下になるために、蒸気からの熱回収率を高く維持できる。その上、温度検出センサーによる排出ガスの温度を検出することで給水装置による給水が迅速に行えるようになる。
また、排気塔内で蒸気の排出量の増大に伴って、複数の前記水ノズルの内の低い位置の物から高い位置の物に、段階的に順次噴霧を開始して水の噴霧量を増大していくように設定してあるから、経済的に且つ効率よく蒸気の回収、つまりは熱エネルギーの回収を行うことができる。
【0008】
本発明の第2の特徴構成は、前記水ノズルを、前記排気塔において上下複数箇所に配置してあるところにある。
【0009】
本発明の第2の特徴構成によれば、排出路を介して耐圧容器から排出される蒸気は、凝集水貯留タンクから排気塔を上昇して大気放出される前に、排気塔の上下複数箇所に配置した水ノズルからの噴霧水に接触して、排気塔内で下方から上方に上昇する途中で効率よく吸着され、熱エネルギーを含んだ状態で回収される。その上、排出される蒸気の量や温度の低い時には、その回収する熱量に応じて排気塔内の上部に位置する物から順に給水を停止することで、回収効率を下げずに消費する水の量を減少して経済性を上げることができる。
【0010】
本発明の第3の特徴構成は、前記水ノズルを、前記排気塔の内周に螺旋状に配置してあるところにある。
【0011】
本発明の第3の特徴構成によれば、少ない水ノズルで、排気塔内に噴霧する水を立体的に排気塔内で均一に供給することができる。
【0016】
本発明の第の特徴構成は、前記凝集水貯留タンクの貯留水を、前記第1供給路の水と熱交換する熱交換装置を設けてあるところにある。
【0017】
本発明の第の特徴構成によれば、凝集水貯留タンクに回収して貯留された蒸気の熱エネルギーは、熱交換装置により蒸気発生装置へ供給される水に利用され、そのために、蒸気発生装置で蒸気を発生させるための熱エネルギーが少なくて済み、全体としてのエネルギー消費量を抑え、経済性を向上させることができる。
【0018】
本発明の第の特徴構成は、前記熱交換装置による熱交換後の前記凝集水貯留タンクの貯留水を、前記給水装置に供給する第2供給路を設けてあるところにある。
【0019】
本発明の第の特徴構成によれば、熱交換装置により熱エネルギーを第1供給路の水に与えた後の冷却された水が、第2供給路に供給されることにより、排気塔での噴霧時の蒸気の回収効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の全体システム概略図である。
図2】別実施形態の要部概略縦断面図である。
図3】別実施形態の要部概略縦断面図である。
図4】(a)別実施形態の排気塔の縦断面図、(b)別実施形態の排気塔の平面図である。
図5】(a)別実施形態の凝集水貯留タンクの概略縦断正面図、(b)別実施形態の凝集水貯留タンクの平面図、(c)別実施形態の凝集水貯留タンクの概略縦断側面図である。
図6】(a)別実施形態のシステム概略図、(b)別実施形態のシステムの排蒸気温度と散水量の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1には、被処理物加熱加圧システム1(第1実施形態)の構成が概略的に示されている。
図1に示されるように、被処理物加熱加圧システム1は、耐圧容器2(例えば、レトルト釜等)、蒸気発生装置4、凝集水貯留タンク6、及び排気塔8を備えて構成されている。
蒸気発生装置4には、原料水を前処理する前処理装置11を介して水を供給する第1供給路12に設けてあり、前処理装置11では、配管内でスケールが発生して付着するのを防止するために、原料水を軟水化するための処理が施される。
【0022】
耐圧容器2は、被処理物13を中に収容し、収容された被処理物13を蒸気で加熱加圧して殺菌することができる。耐圧容器2としては、既存の耐圧容器のうち任意のものを用いることが可能であり、例えば、(1)特開平11−347105号公報に開示されたレトルト殺菌用の処理槽、又は(2)特開平9−192016号公報に開示された蒸煮槽等が挙げられる。
耐圧容器2の下部には、耐圧容器2内に蒸気を供給するための配管9A、及び耐圧容器2内の流体(例えば、耐圧容器2内の残存空気、蒸気、熱水、圧縮空気等)を外に排出するための配管9Bが接続されている。
【0023】
配管9Aの上流には、蒸気発生装置4(ボイラー等)が設けられており、蒸気発生装置4によって生成された蒸気が、耐圧容器2に供給されるように構成されている。
【0024】
配管9Bには、開閉弁10が設けられている。
耐圧容器2から配管9Bを通って移送された流体(耐圧容器2内の残存空気、圧縮空気、蒸気、熱水等)は、配管9Eを通って凝集水貯留タンク6に排出されるように構成されている。
【0025】
次に、上記構成を有する本実施形態の加熱加圧システム1の作用について説明する。
本実施形態の加熱加圧システム1においては、耐圧容器2内に収容した被処理物13(例えば、飲食品を充填して密封した密封容器等)を蒸気で加熱加圧して殺菌する際、被処理物13の予備加熱を実施する。
【0026】
予備加熱は、耐圧容器2内の温度を所定の温度(当該温度を1次加熱温度と称し、1次加熱温度は、例えば90℃〜110℃である)まで上昇させる1次加熱と、1次加熱温度を所定時間(例えば、5分間)維持する予熱保持により構成されている。
この予備加熱は、所定時間、蒸気発生装置4を駆動させて蒸気を発生させて、配管9Aを介して耐圧容器2内に蒸気を供給し、配管9Bの開閉弁10を開けて、耐圧容器2内の残存空気を、配管9Bから耐圧容器2の外に追い出しながら、被処理物13を所定の温度まで加熱する工程であり、この間、耐圧容器2内の残留空気を含んだ蒸気が配管9Bより排出され続ける。
耐圧容器2から排出された蒸気は、配管9B、9Eを通って凝集水貯留タンク6に移送される。
尚、配管9Eより排出された流体(耐圧容器2内の残存空気、圧縮空気、蒸気、熱水等)のうちの、液体成分は、凝集水貯留タンク6に貯留され、気体成分(残存空気、圧縮空気、蒸気等)は、排気塔8を通じて、被処理物加熱加圧システム1の外に排出される。
【0027】
排気塔8には、排気塔8内に水を噴霧する水ノズル14を設け、水ノズル14に対する第1給水ポンプP1から成る給水装置を設けてある。
容器2から排出される蒸気に対する温度検出センサーSを、凝集水貯留タンク6に設け、温度検出センサーSの検出結果を基に、排気塔8からの排出気体が一定温度以下に成るように、給水装置を操作する制御装置15を設けてある。
前記凝集水貯留タンク6の貯留水を、第1供給路12の水と熱交換する熱交換装置19を設け、熱交換後の水を水ノズル14の給水装置に接続する第2供給路20を、設けることにより、凝集水貯留タンク6の水の熱エネルギーを、第1供給路12の前処理水に与えると共に、その熱交換により冷却された水を、水ノズル14から排出路に噴霧することで、蒸気の回収率を上げられるようにしてある。
【0028】
〔別実施形態〕
以下に他の実施の形態を説明する。
【0029】
〈1〉 温度検出センサーSは、排気塔において上下一箇所に設けても良いが、図2に示すように、複数箇所に設けて、例えば、第1温度検出センサーS1を凝集水貯留タンク6に設けて、流入する蒸気の量に応じて水ノズル14からの噴出量を制御し、第2温度検出センサーS2を排気塔8の上方部に配置して、設定温度以下に排出気体がなるように、水ノズル14を調整制御して蒸気の回収率を上げられるようにしてあっても良い。
〈2〉 水ノズル14は、図1に示すように、排気塔8の互いに相対向する方向から噴霧するように取り付ける以外に、図2に示すように、排気塔8内で下向きに噴霧するように取り付けたり、図3に示すように、排気塔8内で、最上部の水ノズル14のみを上向きに噴霧するように取付け、他の水ノズル14を下向きに取り付けるようにしてあっても良い。
〈3〉 複数の水ノズル14を、図4(a)、(b)に示すように、前記排気塔8の内周に螺旋状に配置して、排気塔8内に水滴が均一に分布して噴霧されるようにしてあっても良い。
〈4〉 図5(a)、(b)、(c)に示すように、配管9Eの排出路出口の直近は排出蒸気の密度が高いので、その排出路出口から出る蒸気に対して直交する方向に平面状に噴霧する水ノズル14を設けることで、排出蒸気を効率よく回収できるようにしてあっても良い。
〈5〉 複数の水ノズル14を、図6(a)に示すように、排気塔8内で下から第1、第2、第3、第4バルブ21a,21b,21c,21dを夫々設け、排出路からの排出蒸気量に応じ図6(b)のグラフに示すように、排気塔8内の最上部の温度検出センサーS2からの温度検出結果に基づいて、排気塔8内の温度上昇に伴って第1バルブ21aから順に第4バルブ21dにかけて順次開弁して、できるだけ少ない水量で排気塔8内の温度を上げないように制御するように制御装置15をプログラムしてあっても良い。つまり、できるだけ少ない水量で蒸気の熱エネルギーを回収できるように構成してある。
【0030】
尚、上述のように、図面との対照を便利にするために符号を記したが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0031】
2 耐圧容器
4 蒸気発生装置
6 凝集水貯留タンク
8 排気塔
11 前処理装置
12 第1供給路
13 被処理物
14 水ノズル
S 温度センサー
15 制御装置
19 熱交換装置
20 第2供給路
図1
図2
図3
図4
図5
図6