特許第5793787号(P5793787)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5793787
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】車両用駆動装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 6/40 20071001AFI20150928BHJP
   B60K 17/04 20060101ALI20150928BHJP
   B60K 17/02 20060101ALI20150928BHJP
   B60K 6/48 20071001ALI20150928BHJP
   B60K 6/54 20071001ALI20150928BHJP
   B60K 6/22 20071001ALI20150928BHJP
   B60K 6/36 20071001ALI20150928BHJP
【FI】
   B60K6/40ZHV
   B60K17/04 G
   B60K17/04 N
   B60K17/02 F
   B60K6/48
   B60K6/54
   B60K6/22
   B60K6/36
【請求項の数】14
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2011-242916(P2011-242916)
(22)【出願日】2011年11月4日
(65)【公開番号】特開2013-95390(P2013-95390A)
(43)【公開日】2013年5月20日
【審査請求日】2014年3月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100768
【氏名又は名称】アイシン・エィ・ダブリュ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100120352
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100152087
【弁理士】
【氏名又は名称】伏木 和博
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】須山 大樹
(72)【発明者】
【氏名】神内 直也
(72)【発明者】
【氏名】和田 賢介
(72)【発明者】
【氏名】出塩 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】井上 雄二
【審査官】 小原 一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−137406(JP,A)
【文献】 特開2008−239125(JP,A)
【文献】 特開2007−261302(JP,A)
【文献】 特開2011−105192(JP,A)
【文献】 特開2006−168443(JP,A)
【文献】 特開2011−131828(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/00 − 6/547
B60W 10/00 − 50/16
F02D 29/00 − 29/06
B60L 1/00 − 15/42
B60K 17/00 − 17/36
F16H 57/00 − 57/12
F16H 59/00 − 61/12
F16H 61/16 − 61/24
F16H 61/66 − 61/70
F16H 63/40 − 63/50
F16D 48/00 − 48/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関に駆動連結される入力部材と、
回転電機と、
前記回転電機に駆動連結される変速機構と、
前記変速機構及び車輪に駆動連結される出力部材と、
前記入力部材と前記変速機構との間の係合の状態を変更可能な係合装置と、
前記内燃機関又は前記回転電機により駆動されて油を吐出する油圧ポンプと、
前記油圧ポンプから供給される油圧を制御して当該制御後の油圧を前記変速機構に供給する第一油圧制御装置と、
前記第一油圧制御装置とは別に設けられる、前記油圧ポンプから供給される油圧を制御して当該制御後の油圧を前記係合装置に供給する第二油圧制御装置と、
前記回転電機、前記変速機構、前記係合装置、及び前記油圧ポンプを収容するケースと、
を備える車両用駆動装置において、
少なくとも前記係合装置が前記ケースによって形成される第一収容空間に収容されており、
前記ケースが、前記第一収容空間を形成する第一ケース部と、前記変速機構が収容される変速機構収容空間を形成する第二ケース部とに分離可能に構成されており、
前記第二油圧制御装置が、前記第一ケース部に設けられ、
前記第一油圧制御装置が、前記第二ケース部に設けられ、
前記第二ケース部には、前記変速機構収容空間と連通しているとともに油を貯留可能な第一油貯留部が設けられ、
前記第一ケース部には、前記第一収容空間及び前記第二油圧制御装置の油排出口と連通しているとともに油を貯留可能な第二油貯留部が設けられ、
前記第二油貯留部の油を前記第一油貯留部に排出する排出油路を備え、
前記油圧ポンプは、前記第一油貯留部に貯留された油を吸引して油圧を発生させる車両用駆動装置。
【請求項2】
前記第一収容空間に前記回転電機が収容されており、
前記第二油圧制御装置は、前記回転電機の径方向に見て前記回転電機と重複する部分を有する位置に配置されている請求項1に記載の車両用駆動装置。
【請求項3】
前記第二油圧制御装置が、前記係合装置の径方向に見て前記係合装置と重複する部分を有する位置に配置されている請求項1又は2に記載の車両用駆動装置。
【請求項4】
前記第二油圧制御装置は、少なくとも前記係合装置に供給する油圧を制御するソレノイド弁と、前記ソレノイド弁と連通する油路が設けられたバルブボディと、を備える請求項1から3のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項5】
前記第二油圧制御装置が、前記第一収容空間とは別に前記ケースによって形成される第二収容空間に収容されており、
前記第一収容空間と前記第二収容空間とを連通する連通油路を備える請求項1から4のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項6】
前記回転電機が前記第一収容空間に収容されており、
前記回転電機には、前記油圧ポンプから油が供給され、
前記変速機構収容空間の下方に前記第一油貯留部が設けられているとともに、前記第一収容空間の下方に前記第二油貯留部が設けられている請求項1から5のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項7】
前記回転電機が前記第一収容空間に収容されている請求項1から6のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項8】
前記第二油圧制御装置が、前記第一ケース部の下部に設けられている請求項1からのいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項9】
記第二油貯留部には、前記回転電機に供給された後の油及び前記油排出口から排出された油が貯留される請求項1から8のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項10】
前記入力部材と前記出力部材とを結ぶ動力伝達経路に沿った前記係合装置、前記回転電機、及び前記変速機構の配置順は、前記入力部材の側から、前記係合装置、前記回転電機、前記変速機構の順であり
前記係合装置は、前記動力伝達経路における当該係合装置より車輪側の部材から前記内燃機関を切り離す内燃機関切離用クラッチである請求項1からのいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項11】
前記第一油圧制御装置は、前記油圧ポンプから吐出された油を制御して前記変速機構に供給するとともに、前記第二油圧制御装置に供給し、
前記第二油圧制御装置は、前記第一油圧制御装置から供給された油を制御して前記係合装置に供給する請求項1から1のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項12】
前記回転電機と前記変速機構とは、前記回転電機に駆動連結される継手入力側部材と、前記変速機構に駆動連結される継手出力側部材とを備える流体継手を介して駆動連結され、
前記係合装置は、前記入力部材と前記継手入力側部材との間の係合の状態を変更可能であり、
前記第一油圧制御装置は、前記油圧ポンプから供給される油圧を制御して当該制御後の油圧を前記流体継手に供給する請求項1から1のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項13】
前記回転電機、前記流体継手、及び前記係合装置は、前記変速機構に対して当該変速機構の軸方向における一方側である軸第一方向側に配置され、前記軸第一方向側から反対側に向かって、前記回転電機、前記流体継手、前記変速機構の順に配置され、
前記係合装置が、前記回転電機の径方向に見て前記回転電機と重複する部分を有する位置に配置されている請求項1に記載の車両用駆動装置。
【請求項14】
前記回転電機が前記第一収容空間に収容され、
前記流体継手が前記ケースによって形成される流体継手収容空間に収容され、
記第一収容空間と、前記変速機構収容空間と、前記流体継手収容空間とが、互いに独立した空間として形成されている請求項1又は1に記載の車両用駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に駆動連結される入力部材と、回転電機と、回転電機に駆動連結される変速機構と、変速機構及び車輪に駆動連結される出力部材と、入力部材と変速機構との間の係合の状態を変更可能な係合装置と、を備える車両用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような車両用駆動装置の従来技術として、例えば特開2011−105192号公報(特許文献1)や特開2010−196867号公報(特許文献2)に記載された技術がある。なお、この背景技術の欄の説明では、〔〕内に特許文献1,2における関連する部材名を引用して説明する。特許文献1に記載の構成では、動力伝達経路における入力部材〔入力軸32〕と回転電機〔電気モータ1〕との間に配置された係合装置〔クラッチ装置3〕に対して、電動ポンプ〔電動ポンプ7〕から供給される油圧を制御して供給する構成とすることで、当該係合装置の係合の状態を変化させている。ここで、電動ポンプは、車両の駆動力源としての回転電機〔電気モータ1〕とは別の油圧制御専用の回転電機により駆動される油圧ポンプである。
【0003】
このような構成では、車両用駆動装置の車両への搭載性を向上させるべく電動ポンプとして小型のポンプを用いると、ポンプの吐出能力が不足するおそれがある。吐出能力の不足分を、摩擦板の枚数や径を増加させることで賄うことが考えられるが、摩擦板の枚数や径を増加させると、係合装置が大型化するおそれがある。そのため、車両用駆動装置の小型化には限界がある。
【0004】
一方、特許文献2には、機械式ポンプ〔メカポンプOP〕から供給される油圧を制御する油圧制御装置〔AT油圧コントロールバルブユニットCVU〕内に、係合装置〔第1クラッチCL1〕に供給する油圧を制御する油圧ユニット〔第1クラッチ油圧ユニット6〕を備える構成が記載されている。ここで、機械式ポンプは、車両の駆動力源により駆動される油圧ポンプである。このような構成では、特許文献1の構成に比べてポンプの吐出能力の確保が容易となるため、ポンプの吐出能力の不足分を、摩擦板の枚数や径を増加させることで賄うような対策の必要性は低下する。しかしながら、特許文献2に記載の構成では、油圧ユニットから係合装置のサーボ油室〔油圧室53〕までの距離が長くなりやすく、係合装置の応答性や制御性が低下するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−105192号公報
【特許文献2】特開2010−196867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、係合装置の大型化を抑制しつつ、当該係合装置の応答性や制御性を確保することが容易な車両用駆動装置の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る車両用駆動装置の特徴構成は、内燃機関に駆動連結される入力部材と、回転電機と、前記回転電機に駆動連結される変速機構と、前記変速機構及び車輪に駆動連結される出力部材と、前記入力部材と前記変速機構との間の係合の状態を変更可能な係合装置と、前記内燃機関又は前記回転電機により駆動されて油を吐出する油圧ポンプと、前記油圧ポンプから供給される油圧を制御して当該制御後の油圧を前記変速機構に供給する第一油圧制御装置と、前記第一油圧制御装置とは別に設けられる、前記油圧ポンプから供給される油圧を制御して当該制御後の油圧を前記係合装置に供給する第二油圧制御装置と、前記回転電機、前記変速機構、前記係合装置、及び前記油圧ポンプを収容するケースと、を備え、少なくとも前記係合装置が前記ケースによって形成される第一収容空間に収容されており、前記ケースが、前記第一収容空間を形成する第一ケース部と、前記変速機構が収容される変速機構収容空間を形成する第二ケース部とに分離可能に構成されており、前記第二油圧制御装置が、前記第一ケース部に設けられ、前記第一油圧制御装置が、前記第二ケース部に設けられ、前記第二ケース部には、前記変速機構収容空間と連通しているとともに油を貯留可能な第一油貯留部が設けられ、前記第一ケース部には、前記第一収容空間及び前記第二油圧制御装置の油排出口と連通しているとともに油を貯留可能な第二油貯留部が設けられ、前記第二油貯留部の油を前記第一油貯留部に排出する排出油路を備え、前記油圧ポンプは、前記第一油貯留部に貯留された油を吸引して油圧を発生させる点にある。
【0008】
本願において、「駆動連結」とは、2つの回転要素が駆動力を伝達可能に連結された状態を指し、当該2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態、或いは当該2つの回転要素が一又は二以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む概念として用いている。このような伝動部材としては、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材が含まれ、例えば、軸、歯車機構、ベルト、チェーン等が含まれる。また、このような伝動部材として、回転及び駆動力を選択的に伝達する係合装置、例えば摩擦係合装置や噛み合い式係合装置等が含まれていてもよい。
また、本願において「回転電機」は、モータ(電動機)、ジェネレータ(発電機)、及び必要に応じてモータ及びジェネレータの双方の機能を果たすモータ・ジェネレータのいずれをも含む概念として用いている。
【0009】
上記の特徴構成によれば、油圧ポンプから供給される油圧を第二油圧制御装置により制御して、当該制御後の油圧を係合装置に供給することができる。ここで、この油圧ポンプは、車両の駆動力源としての内燃機関や回転電機により駆動されるため、このような油圧ポンプの吐出能力を確保するのは比較的容易である。よって、油圧ポンプの吐出能力が十分でないことに起因して係合装置が大型化することを抑制することができる。
さらに、上記の特徴構成によれば、係合装置に油圧を供給する第二油圧制御装置が、当該係合装置が収容される第一収容空間を形成するケースの部位に設けられる。よって、係合装置と第二油圧制御装置との間の距離を短くして、係合装置の応答性や制御性を確保することが容易となる。
【0010】
ここで、前記第一収容空間に前記回転電機が収容されており、前記第二油圧制御装置は、前記回転電機の径方向に見て前記回転電機と重複する部分を有する位置に配置されている構成とすると好適である。
【0011】
本願において、2つの部材の配置に関して、「所定方向に見て重複する部分を有する」とは、当該所定方向を視線方向として当該視線方向に直交する各方向に視点を移動させた場合に、2つの部材が重なって見える視点が少なくとも一部の領域に存在することを指す。
【0012】
この構成によれば、第二油圧制御装置と回転電機とが径方向に見て重複する分だけ、これらが占有する空間の軸方向長さを短縮することができ、装置全体の軸方向における小型化を図ることができる。また、第一収容空間とは別に回転電機を収容する回転電機収容空間を設ける場合に比べ、ケースの構成を簡素化することができる。
【0013】
また、前記第二油圧制御装置が、前記係合装置の径方向に見て前記係合装置と重複する部分を有する位置に配置されている構成とすると好適である。
【0014】
この構成によれば、係合装置を、当該係合装置に油圧を供給する第二油圧制御装置の近くに配置することができる。よって、係合装置と第二油圧制御装置との間の距離を短く抑えて、係合装置の応答性や制御性を確保することが容易となる。
【0015】
また、前記第二油圧制御装置は、少なくとも前記係合装置に供給する油圧を制御するソレノイド弁と、前記ソレノイド弁と連通する油路が設けられたバルブボディと、を備える構成とすると好適である。
【0016】
この構成によれば、第二油圧制御装置を、一体化された部品として構成することが容易となり、組付工程の簡素化を図ることができる。
【0017】
また、前記第二油圧制御装置が、前記第一収容空間とは別に前記ケースによって形成される第二収容空間に収容されており、前記第一収容空間と前記第二収容空間とを連通する連通油路を備える構成とすると好適である。
【0018】
この構成によれば、第二油圧制御装置の油排出口から排出された油を、連通油路を介して第一収容空間に送ることが可能となる。これにより、第二油圧制御装置の油排出口から排出される油の圧力(排出圧)により第二収容空間における油圧が急上昇することを抑制することができ、油排出口からの油の排出時に第二油圧制御装置の制御性が低下することを抑制することができる。なお、第二収容空間が連通油路を介して連通する空間は、ケースにおける第二油圧制御装置が設けられる部位が形成する第一収容空間である。よって、連通油路の長さを短くして連通油路における油の流通抵抗を小さく抑えることが容易となっている。
【0019】
また、前記回転電機が前記第一収容空間に収容されており、前記回転電機には、前記油圧ポンプから油が供給され、前記変速機構収容空間の下方に前記第一油貯留部が設けられているとともに、前記第一収容空間の下方に前記第二油貯留部が設けられている構成とすると好適である。
【0020】
この構成によれば、回転電機に供給された後の油と、第二油圧制御装置の油排出口から排出された油との双方を第二油貯留部に回収した後に、これらをまとめて排出油路を介して第一油貯留部に排出することができる。よって、回転電機に供給された後の油と、第二油圧制御装置の油排出口から排出された油とを、それぞれ別の油路を介して第一油貯留部に排出する場合に比べて、油路の構成を簡素化して油を効率的に第一油貯留部に排出することができ、結果、装置の製造コストの低減や装置全体の小型化を図ることができる。
【0021】
また、前記回転電機が前記第一収容空間に収容されている構成とすると好適である。
【0022】
この構成によれば、回転電機を備える駆動装置と、回転電機を備えない駆動装置とで、変速機構側の部分の大半を共通化することが可能となり、製造コストを抑制することができる。
【0023】
上記のように、前記第二油圧制御装置が前記第一ケース部に設けられている構成において、前記第二油圧制御装置が、前記第一ケース部の下部に設けられている構成とすると好適である。
【0024】
この構成によれば、車両への搭載性に関する制約を満たしつつ、第二油圧制御装置を配置することが可能となる。
【0026】
また、前記第二油貯留部には、前記回転電機に供給された後の油及び前記油排出口から排出された油が貯留される構成とすると好適である。
【0027】
また、前記入力部材と前記出力部材とを結ぶ動力伝達経路に沿った前記係合装置、前記回転電機、及び前記変速機構の配置順は、前記入力部材の側から、前記係合装置、前記回転電機、前記変速機構の順であり、前記係合装置は、前記動力伝達経路における当該係合装置より車輪側の部材から前記内燃機関を切り離す内燃機関切離用クラッチである構成とすると好適である。
【0028】
また、前記第一油圧制御装置は、前記油圧ポンプから吐出された油を制御して前記変速機構に供給するとともに、前記第二油圧制御装置に供給し、前記第二油圧制御装置は、前記第一油圧制御装置から供給された油を制御して前記係合装置に供給する構成とすると好適である。
【0029】
上記の各構成の車両用駆動装置において、前記回転電機と前記変速機構とは、前記回転電機に駆動連結される継手入力側部材と、前記変速機構に駆動連結される継手出力側部材とを備える流体継手を介して駆動連結され、前記係合装置は、前記入力部材と前記継手入力側部材との間の係合の状態を変更可能であり、前記第一油圧制御装置は、前記油圧ポンプから供給される油圧を制御して当該制御後の油圧を前記流体継手に供給する構成とすると好適である。
【0030】
本願において「流体継手」は、トルク増幅機能を有するトルクコンバータ、及びトルク増幅機能を有さない通常の流体継手のいずれをも含む概念として用いている。
【0031】
この構成によれば、車両用駆動装置が流体継手を備える構成を適切に実現することができる。
【0032】
また、前記回転電機、前記流体継手、及び前記係合装置は、前記変速機構に対して当該変速機構の軸方向における一方側である軸第一方向側に配置され、前記軸第一方向側から反対側に向かって、前記回転電機、前記流体継手、前記変速機構の順に配置され、前記係合装置が、前記回転電機の径方向に見て前記回転電機と重複する部分を有する位置に配置されている構成とすると好適である。
【0033】
この構成によれば、軸第一方向側から反対側に向かって、流体継手、回転電機、変速機構の順に配置される場合に比べて、第一油圧制御装置と当該第一油圧制御装置の油圧の供給対象である流体継手及び変速機構との間の距離を短く抑えつつ、第二油圧制御装置と当該第二油圧制御装置の油圧の供給対象である係合装置との間の距離を短く抑えることが容易となる。よって、各油圧供給対象部について、応答性や制御性の確保、又は油圧の供給性能の確保が容易となる。
【0034】
また、前記回転電機が前記第一収容空間に収容され、前記流体継手が前記ケースによって形成される流体継手収容空間に収容され、前記第一収容空間と、前記変速機構収容空間と、前記流体継手収容空間とが、互いに独立した空間として形成されている構成とすると好適である。
【0035】
この構成によれば、回転電機及び変速機構に冷却用又は潤滑用の油が供給される場合でも、流体継手収容空間を、流体継手の周囲には油の存在しない空間とすることができ、流体継手の回転時に油の引き摺り損失が発生することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明の実施形態に係る車両用駆動装置の概略構成を示す模式図である。
図2】本発明の実施形態に係る車両用駆動装置の部分断面図である。
図3図2の一部拡大図である。
図4図2の一部拡大図である。
図5】本発明の実施形態に係る車両用駆動装置の図2とは異なる位置での部分断面図である。
図6】本発明の実施形態に係る第二油圧制御装置の油圧制御系の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明に係る車両用駆動装置の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明では、特に区別して明記している場合を除き、「軸方向L」、「径方向R」、「周方向」は、変速機構TMの入力軸(変速入力軸、本例では中間軸M)の軸心(図2に示す軸心X)を基準として定義している。本実施形態では、回転電機MG、第一クラッチC1、及びトルクコンバータTCが、全て、変速機構TMと同軸上に配置されているため、回転電機MG,第一クラッチC1、及びトルクコンバータTCのそれぞれについての、「軸方向」、「径方向」、及び「周方向」は、それぞれ、変速機構TMの「軸方向L」、「径方向R」、及び「周方向」と一致する。そして、「軸第一方向L1」は、軸方向Lに沿って変速機構TMの出力軸(変速出力軸、本例では出力軸O)から変速入力軸側へ向かう方向(図2における左側)を表し、「軸第二方向L2」は、軸第一方向L1とは反対方向(図2における右側)を表す。また、「径内方向R1」は、径方向Rの内側へ向かう方向を表し、「径外方向R2」は、径方向Rの外側へ向かう方向を表す。
【0038】
また、以下の説明では、「上」及び「下」は、車両用駆動装置1を車両に搭載した状態(車両搭載状態)での鉛直方向V(図2参照)を基準として定義しており、「上」は図2における上方を表し、「下」は図2における下方を表す。なお、各部材についての方向は、当該部材が車両用駆動装置1に組み付けられた状態での方向を表す。また、各部材についての方向や位置等に関する用語は、製造上許容され得る誤差による差異を有する状態も含む概念として用いている。
【0039】
1.車両用駆動装置の全体構成
図1は、本実施形態に係る車両用駆動装置1の概略構成を示す模式図である。図1に示すように、この車両用駆動装置1は、内燃機関Eに駆動連結される入力軸Iと、回転電機MGと、トルクコンバータTCと、変速機構TMと、変速機構TM及び車輪Wに駆動連結される出力軸Oと、ケース3と、を備えている。トルクコンバータTCは、回転電機MGに駆動連結される継手入力側部材2と、継手入力側部材2と対をなす継手出力側部材4とを備えている。また、変速機構TMは、中間軸Mを介して継手出力側部材4に駆動連結されている。すなわち、本実施形態では、変速機構TMは、トルクコンバータTCを介して回転電機MGに駆動連結されている。車両用駆動装置1は、更に、入力軸Iと変速機構TMとの間の係合の状態を変更可能な第一クラッチC1を備えている。本実施形態では、回転電機MGと変速機構TMとは、トルクコンバータTCを介して駆動連結されており、第一クラッチC1は、入力軸Iと継手入力側部材2との間の係合の状態を変化させることで、入力軸Iと変速機構TMとの間の係合の状態を変化させる。入力軸Iと出力軸Oとの間の動力伝達経路に沿う各部材の並び順は、図1に示すように、入力軸Iの側から順に、第一クラッチC1、回転電機MG、トルクコンバータTC、変速機構TMとなっている。本実施形態では、入力軸I及び出力軸Oが、それぞれ、本発明における「入力部材」及び「出力部材」に相当する。また、本実施形態では、第一クラッチC1及びトルクコンバータTCが、それぞれ、本発明における「係合装置」及び「流体継手」に相当する。
【0040】
内燃機関Eは、機関内部における燃料の燃焼により駆動されて動力を取り出す原動機であり、例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジン等を用いることができる。本実施形態では、入力軸Iはダンパ16(図2参照、図1では省略)を介して内燃機関Eの出力軸(クランクシャフト等)に駆動連結されている。入力軸Iが、ダンパ16を介さずに内燃機関Eの出力軸に駆動連結された構成とすることもできる。なお、入力軸Iは、駆動連結の対象とする2つの部材の内の何れか(例えば、内燃機関Eの出力軸)と一体的に形成されている構成とすることも、2つの部材の双方と別体に形成されている構成とすることもできる。
【0041】
第一クラッチC1は、動力伝達経路における入力軸Iと回転電機MG(ロータ部材21)との間に備えられており、車輪Wから内燃機関Eを切り離す内燃機関切離用クラッチとして機能する。変速機構TMは、変速比を段階的に或いは無段階に変更可能な機構(例えば自動有段変速機構等)で構成され、継手出力側部材4に駆動連結された中間軸M(変速入力軸)の回転速度を所定の変速比で変速して、出力用差動歯車装置DFに駆動連結された出力軸O(変速出力軸)へ伝達する。
【0042】
出力軸Oは、出力用差動歯車装置DFを介して車輪Wに駆動連結されており、出力軸Oに伝達された回転及びトルクは、出力用差動歯車装置DFを介して左右2つの車輪Wに分配されて伝達される。これにより、車両用駆動装置1は、内燃機関E及び回転電機MGの一方又は双方のトルクを車輪Wに伝達させて車両を走行させることができる。すなわち、この車両用駆動装置1は、ハイブリッド車両用の駆動装置として構成され、具体的には、1モータパラレル方式のハイブリッド駆動装置として構成されている。なお、出力軸Oは、駆動連結の対象とする2つの部材の内の何れか(例えば、ドライブシャフト等)と一体的に形成されている構成とすることも、2つの部材の双方と別体に形成されている構成とすることもできる。
【0043】
本実施形態では、入力軸I、第一クラッチC1、回転電機MG、トルクコンバータTC、中間軸M、変速機構TM、及び出力軸Oは、いずれも軸心X(図2参照)上に配置されており、本実施形態に係る車両用駆動装置1は、FR(Front Engine Rear Drive)方式
の車両に搭載される場合に適した一軸構成とされている。
【0044】
2.駆動装置の各部の構成
次に、本実施形態に係る車両用駆動装置1の各部の構成について図2図5を参照して説明する。なお、図2は、本実施形態に係る車両用駆動装置1の一部を、軸心Xを含む鉛直面に沿って切断した断面図であり、図3及び図4は、それぞれ図2の一部拡大図である。また、図5は、図2とは異なる水平方向の位置において、本実施形態に係る車両用駆動装置1の一部を軸心Xに平行な鉛直面に沿って切断した断面図である。なお、図2及び図3では、変速機構TMについての具体的構成の図示を省略している。
【0045】
2−1.回転電機
回転電機MGは、図2に示すように、ステータStとロータ部材21とを備えている。ステータStは、ケース3に固定されるとともに、軸方向Lの両側にコイルエンド部Ceを備えている。また、ロータ部材21は、図3に示すように、ステータStと対向するように配置されるロータRoと、当該ロータRoをケース3に対して回転可能に支持するロータ支持部材22と、を備えている。本実施形態では、ロータRoは、ステータStの径内方向R1側に配置され、ロータ支持部材22は、ロータRoから径内方向R1側に延びるように形成されてロータRoを径内方向R1側から支持している。
【0046】
本実施形態では、図3及び図4に示すように、ロータ支持部材22は、ロータRoを保持するロータ保持部25と、径方向延在部26と、を備えている。ロータ保持部25は、ロータRoの内周面に接する外周部及びロータRoの軸方向Lの側面に接するフランジ部を有する円筒状に形成されている。径方向延在部26は、ロータ保持部25の軸方向Lの中央部に対して軸第二方向L2側の部分から径内方向R1側に延びる円環板状に形成されている。径方向延在部26は、径内方向R1側の端部に、軸第二方向L2側に向かって突出する筒状の突出部である第一軸方向突出部23を備えるとともに、軸第一方向L1側に向かって突出する筒状の突出部である第二軸方向突出部24を備えている。第一軸方向突出部23は、軸受96によりケース3(具体的には後述する第二支持壁部32)に対して回転可能に径方向Rに支持される被支持部とされている。また、第二軸方向突出部24は、後述する連結部材10との連結部を構成している。
【0047】
ロータ支持部材22には、円環板状の板状部材27が一体回転するように取り付けられている。板状部材27は、ロータ保持部25の軸方向Lの中央部に対して軸第一方向L1側に取り付けられている。これにより、ロータ保持部25の径内方向R1側には、ロータ保持部25により径外方向R2側を区画されるとともに、軸方向Lの両側を径方向延在部26と板状部材27とにより区画される空間が形成される。この空間は、各部に適宜配置されたシール部材等により油密状に区画された空間とされ、この空間内に、後述する第一クラッチC1の作動油圧室H1と循環油圧室H2とが形成されている。
【0048】
2−2.第一クラッチ
第一クラッチC1は、油圧により動作して係合の状態を変更可能な係合装置である。第一クラッチC1は、当該第一クラッチC1によって係合される2つの係合部材の係合の状態を、当該2つの係合部材が係合した状態(スリップ係合した状態を含む)と、当該2つの係合部材が係合しない状態(解放した状態)とに変更可能に構成されている。そして、当該2つの係合部材が係合した状態では、入力軸Iとロータ部材21との間で駆動力の伝達が行われ、当該2つの係合部材が解放した状態では、入力軸Iとロータ部材21との間で駆動力の伝達が行われない。
【0049】
図3及び図4に示すように、第一クラッチC1は、ロータ保持部25により径外方向R2側を区画されるとともに、軸方向Lの両側を径方向延在部26と板状部材27とにより区画される油密状の空間に配置されている。これにより、第一クラッチC1は、回転電機MGの径方向(本例では、径方向Rと同じ方向)に見て回転電機MGと重複する部分を有する位置に配置されている。具体的には、第一クラッチC1は、ロータRoより径内方向R1側であって、径方向Rに見てロータRoの軸方向Lの中央部領域と重複する位置に配置されている。
【0050】
本実施形態では、第一クラッチC1は、湿式多板クラッチ機構として構成されている。具体的には、第一クラッチC1は、クラッチハブ51、摩擦部材53、ピストン54、及び付勢部材55を備え、これらの部材は全て、径方向Rに見てロータRoと重複する部分を有する位置に配置されている。本例では、ロータ支持部材22のロータ保持部25が、クラッチドラムとして機能する。第一クラッチC1は、摩擦部材53として、対となる入力側摩擦部材と出力側摩擦部材とを有し、入力側摩擦部材はクラッチハブ51の外周部により径内方向R1側から支持され、出力側摩擦部材はロータ保持部25の内周部により径外方向R2側から支持されている。クラッチハブ51は、径内方向R1側の端部が入力軸Iのフランジ部Iaに連結されている。
【0051】
図4に示すように、第一クラッチC1の作動油圧室H1は、ロータ支持部材22の径方向延在部26及び第二軸方向突出部24と、ピストン54とにより囲まれて形成されている。また、第一クラッチC1の循環油圧室H2は、主に、ロータ支持部材22のロータ保持部25(クラッチドラム)、ロータ支持部材22に取り付けられた板状部材27、及びピストン54により囲まれて形成され、内部にクラッチハブ51及び摩擦部材53が収容されている。これらの作動油圧室H1と循環油圧室H2とは、ピストン54に対して軸方向Lの両側に分かれて配置されていると共に、シール部材により互いに油密状に区画されている。また、本実施形態では、作動油圧室H1及び循環油圧室H2の双方が、ロータRoより径内方向R1側であって、径方向Rに見てロータRoと軸方向Lの全域で重複する位置に配置されている。
【0052】
付勢部材55は、ピストン54を軸方向Lにおける摩擦部材53側(本例では軸第一方向L1側)に押圧する。これにより、作動油圧室H1内の油圧及び付勢部材55による軸第一方向L1側へのピストン54の押圧力と、循環油圧室H2内の油圧による軸第二方向L2側へのピストン54の押圧力とのバランスにより、第一クラッチC1が係合又は解放される。すなわち、本実施形態では、作動油圧室H1と循環油圧室H2との間の油圧の差(差圧)に応じてピストン54を軸方向Lに沿って摺動させて、第一クラッチC1の係合の状態を制御することができる。なお、循環油圧室H2は、基本的に、車両の走行中には所定圧以上の油で満たされた状態となり、当該油により摩擦部材53が冷却される。
【0053】
2−3.トルクコンバータ
トルクコンバータTCは、回転電機MGのロータ部材21に駆動連結される継手入力側部材2と、継手入力側部材2と対をなすとともに車輪Wに駆動連結される継手出力側部材4と、を備えている。具体的には、図2に示すように、トルクコンバータTCは、ポンプインペラ61、タービンランナ62、ロックアップクラッチとしての第二クラッチC2、及びこれらを収容するカバー部63を備えている。カバー部63は、内側に配置されたポンプインペラ61と一体回転するように連結されているとともに、後述するポンプ駆動軸67とも一体回転するように連結されている。本実施形態では、これらのポンプインペラ61、カバー部63、及びポンプ駆動軸67により継手入力側部材2が構成されている。継手出力側部材4はタービンランナ62により構成され、タービンランナ62は中間軸Mに連結(本例ではスプライン連結)されている。これにより、継手出力側部材4は、図1に示すように、中間軸M、変速機構TM、出力軸O、及び出力用差動歯車装置DFを介して、車輪Wに駆動連結されている。
【0054】
本実施形態では、継手入力側部材2は、連結部材10を介してロータ部材21と一体回転するように連結されている。詳細は後述するが、図4に示すように、ケース3の第二支持壁部32には筒状突出部32aが形成されている。連結部材10は、当該筒状突出部32aの径内方向R1側を通って軸方向Lに延びる筒状の軸方向延在部と、当該筒状突出部32aより軸第一方向L1側を径方向Rに延びる円環板状の径方向延在部とを有している。そして、継手入力側部材2を構成するカバー部63は、連結部材10の上記軸方向延在部とスプライン連結されているとともに、カバー部63と連結部材10とは締結部材90により軸方向に相対移動不能に互いに固定されている。また、ロータ部材21の第二軸方向突出部24は、連結部材10の上記径方向延在部と、軸方向Lに相対移動可能な状態で一体回転するように連結されている。これにより、継手入力側部材2とロータ部材21とが一体回転するように駆動連結されている。
【0055】
2−4.ケース
ケース3は、回転電機MG、トルクコンバータTC、変速機構TM、及び第一クラッチC1を収容する。本実施形態では、図2に示すように、ケース3は、第一支持壁部31と、第二支持壁部32と、第三支持壁部33と、周壁部34と、を備えている。周壁部34は、回転電機MG、第一クラッチC1、トルクコンバータTC、変速機構TM等の外周を覆う概略円筒状に形成されている。また、周壁部34の径内方向R1側に形成されるケース内空間を軸方向Lに区画するように、第一支持壁部31、第二支持壁部32、及び第三支持壁部33が、軸第一方向L1側から記載の順に配置されている。
【0056】
図2に示すように、ケース3は、少なくとも第一クラッチC1が収容される第一収容空間S1と、回転電機MGが収容される回転電機収容空間SGと、トルクコンバータTCが収容される流体継手収容空間SCと、変速機構TMが収容される変速機構収容空間SMとを形成している。本実施形態では、第一収容空間S1と回転電機収容空間SGとは同じ空間として形成されている。すなわち、本実施形態では、回転電機MGは、第一収容空間S1に収容されているといえる。回転電機収容空間SG(第一収容空間S1)、流体継手収容空間SC、及び変速機構収容空間SMは、軸第一方向L1側から記載の順に形成されており、これにより、本実施形態では、軸第一方向L1側から軸第二方向L2側に向かって、回転電機MG及び第一クラッチC1、トルクコンバータTC、変速機構TMの順に配置されている。すなわち、回転電機MG、第一クラッチC1、及びトルクコンバータTCは、変速機構TMに対して軸第一方向L1側に配置されている。また、回転電機収容空間SG(第一収容空間S1)、流体継手収容空間SC、及び変速機構収容空間SMは、互いに独立した空間として形成されている。ここで、「互いに独立した空間」とは、互いに油密状に区画されていることを意味する。このような構成は、各部に適宜シール部材を配置することで実現されている。
【0057】
回転電機収容空間SG、流体継手収容空間SC、及び変速機構収容空間SMは、全て環状の空間として形成されている。具体的には、回転電機収容空間SGは、軸方向Lにおける第一支持壁部31と第二支持壁部32との間に形成されている。流体継手収容空間SCは、軸方向Lにおける第二支持壁部32と第三支持壁部33との間に形成されている。変速機構収容空間SMは、軸方向Lにおける第三支持壁部33と当該第三支持壁部33より軸第二方向L2側に配置された支持壁部(図示せず)との間に形成されている。そして、これらの回転電機収容空間SG、流体継手収容空間SC、及び変速機構収容空間SMは、全て、周壁部34により径外方向R2側を区画されている。また、ケース3内における第一支持壁部31より軸第一方向L1側の空間には、ダンパ16が収容されている。
【0058】
第一収容空間S1は、後述する第二収容空間S2と第一連通油路ACを介して連通されている。上記のように、本実施形態では、第一収容空間S1と回転電機収容空間SGとが同じ空間として形成されているため、本実施形態では、回転電機収容空間SGと第二収容空間S2とが第一連通油路ACを介して互いに連通されている。
【0059】
本実施形態では、図2に示すように、ケース3は、第一ケース部3aと、当該第一ケース部3aより軸第二方向L2側に配置される第二ケース部3bと、に分離可能に構成されている。これらの第一ケース部3aと第二ケース部3bとは、接合部5において互いに連結されており、本実施形態では、締結ボルト(図示せず)によりそれぞれの周壁部34同士が互いに締結固定されている。以下では、周壁部34の内、第一ケース部3aが構成する部分を第一周壁部34aとし、第二ケース部3bが構成する部分を第二周壁部34bとする。
【0060】
第一ケース部3aは、第一収容空間S1を形成する部分であり、本実施形態では、第一ケース部3aは、回転電機収容空間SGを形成する部分でもある。具体的には、第一ケース部3aは、第一支持壁部31と第二支持壁部32とを有し、第一ケース部3aのみにより第一収容空間S1(回転電機収容空間SG)が形成されている。本実施形態では、更に、第一ケース部3aによりダンパ16の収容空間が形成されている。第二ケース部3bは、変速機構収容空間SMを形成する部分である。具体的には、第二ケース部3bは、第三支持壁部33を有し、第二ケース部3bのみにより変速機構収容空間SMが形成されている。流体継手収容空間SCは、第一ケース部3aと第二ケース部3bとの接合部5を含む軸方向Lの領域に、第一ケース部3aと第二ケース部3bとが協働して形成されている。
【0061】
2−4−1.第一支持壁部
第一支持壁部31は、図2に示すように、回転電機MGより軸第一方向L1側(本例では、軸方向Lにおける回転電機MGとダンパ16との間)において径方向R及び周方向に延びるように形成されている。円板状に形成された第一支持壁部31の径方向Rの中心部には、軸方向Lの貫通孔が形成されており、この貫通孔に、入力軸Iが挿通されている。第一支持壁部31は、径内方向R1側の部分が全体として径外方向R2側の部分よりも軸第二方向L2側に位置するように、軸方向Lにオフセットされた形状を有している。
【0062】
2−4−2.第二支持壁部
第二支持壁部32は、図2に示すように、軸方向Lにおける回転電機MGとトルクコンバータTCとの間で、径方向R及び周方向に延びるように形成されている。円板状に形成された第二支持壁部32の径方向Rの中心部には、軸方向Lに貫通する貫通孔が形成されており、この貫通孔内に連結部材10が配置されている。この連結部材10を介して、第二支持壁部32に対して軸第二方向L2側に配置された継手入力側部材2と、第二支持壁部32に対して軸第一方向L1側に配置されたロータ部材21とが、一体回転するように駆動連結されている。
【0063】
第二支持壁部32は、径内方向R1側の部分が全体として径外方向R2側の部分よりも軸第一方向L1側に位置するように、軸方向Lにオフセットされた形状を有している。図4に示すように、第二支持壁部32の径内方向R1側の端部には、軸第一方向L1側に向かって突出する筒状突出部32aが形成されており、第二支持壁部32は、軸方向Lに所定厚さを有する肉厚部(ボス部)を径内方向R1側の端部に有している。なお、筒状突出部32aは、ロータ部材21より径内方向R1側であって、径方向Rに見てロータ部材21と重複する部分を有する位置に配置されている。
【0064】
第二支持壁部32の内部には、第一油路A1と第二油路A2とが形成されている。第一油路A1は、図3及び図4に示すように、第一クラッチC1の作動油圧室H1に連通し、当該作動油圧室H1にピストン54の作動用の油を供給するための油供給路である。第二油路A2は、図4に示すように、第一クラッチC1の循環油圧室H2に連通し、当該循環油圧室H2に摩擦部材53の冷却用の油を供給するための油供給路である。図4に示すように、第一油路A1は、筒状突出部32aの内部を軸第一方向L1側に向かって延びた後、当該筒状突出部32aに形成された連通孔32c、スリーブ部材94に形成された貫通孔94c、及びロータ支持部材22の第二軸方向突出部24に形成された貫通孔24cを介して、作動油圧室H1に連通している。ここで、スリーブ部材94は、筒状突出部32aの外周面と第二軸方向突出部24の内周面との間の径方向の隙間を、油が軸方向Lに流通することを規制するために設けられている。
【0065】
また、図4に示すように、第二油路A2は、筒状突出部32aの内部を軸第一方向L1側に向かって延びた後、当該筒状突出部32aの軸第一方向L1側の端面に開口するように形成されている。第二油路A2の当該開口は、連結部材10と筒状突出部32aとの間に形成された軸方向Lの隙間に開口している。また、第二軸方向突出部24の連結部材10との連結部分には、当該第二軸方向突出部24を径方向Rに貫通する隙間が形成されている。これら2つの隙間を介して、第二油路A2が循環油圧室H2に連通している。
【0066】
2−4−3.第三支持壁部
第三支持壁部33は、図2に示すように、トルクコンバータTCより軸第二方向L2側(本例では、軸方向LにおけるトルクコンバータTCと変速機構TMとの間)において径方向R及び周方向に延びるように形成されている。円板状に形成された第三支持壁部33の径方向Rの中心部には、軸方向Lの貫通孔が形成されており、この貫通孔に、中間軸Mが挿通されている。第三支持壁部33には、車両用駆動装置1の各部に油を供給するための油圧を発生する油圧ポンプ9が設けられている。具体的には、第三支持壁部33は、周壁部34(具体的には第二周壁部34b)に固定された第一部分と、当該第一部分の軸第一方向L1側の端面に取り付けられた第二部分とを有し、これらの第一部分と第二部分とにより軸方向Lの両側を区画される空間に、油圧ポンプ9のポンプ室が形成されている。そして、第三支持壁部33の内部には、油圧ポンプ9の吸入油路(図示せず)及び吐出油路ABが形成されている。
【0067】
油圧ポンプ9を駆動するポンプ駆動軸67は、上述したように、トルクコンバータTCのポンプインペラ61と一体回転するように駆動連結されている。このポンプインペラ61は、図1に示すように、回転電機MG及び内燃機関Eに駆動連結されているため、油圧ポンプ9は、車輪Wの駆動力源としての内燃機関E又は回転電機MGにより駆動されて油を吐出する。そして、油圧ポンプ9が生成した油圧は、後述する第一油圧制御装置81により制御されて制御後の油圧がトルクコンバータTC及び変速機構TMに供給されるとともに、後述する第二油圧制御装置82により制御されて制御後の油圧が第一クラッチC1に供給される。
【0068】
3.油圧の供給構成
次に、本実施形態に係る車両用駆動装置1における油圧の供給構成について説明する。この車両用駆動装置1は、油圧ポンプ9から供給される油圧を制御する油圧制御装置として第一油圧制御装置81を備えるとともに、当該第一油圧制御装置81とは別に第二油圧制御装置82を備えている。
【0069】
3−1.第一油圧制御装置
第一油圧制御装置81は、油圧ポンプ9から供給される油圧を制御して、制御後の油圧をトルクコンバータTC及び変速機構TMに供給する装置である。図2に示すように、本実施形態では、第一油圧制御装置81は、第二ケース部3bに設けられており、本例では、第二ケース部3bの下部に設けられている。具体的には、第一油圧制御装置81は、第二ケース部3bの第二周壁部34bの外周部(本例では当該外周部における下側を向く面を有する部分)に固定されている。また、本実施形態では、第一油圧制御装置81は、変速機構TMの径方向である径方向Rに見て当該変速機構TMと重複する部分を有する位置に配置されている。本例では、図示は省略するが、第一油圧制御装置81は、径方向Rに見て変速機構TMと軸方向Lの全域で重複する位置に配置されている。
【0070】
具体的には、ケース3は、第二ケース部3bの下部に取り付けられる第一オイルパン11を備えており、第二ケース部3bと第一オイルパン11とで囲まれる空間が、第一油圧制御装置81を収容する第一油圧制御装置収容空間とされている。この第一油圧制御装置収容空間は、下方から見て変速機構TMと重複する部分を有する位置に形成されている。そして、第一油圧制御装置81は、この第一油圧制御装置収容空間に収容された状態で、下方から見て変速機構TMと重複する部分を有する位置に配置されている。
【0071】
第一油圧制御装置81は、複数の油圧制御弁と油の流路とを備えている。第一油圧制御装置81に備えられる油圧制御弁には、変速機構TMに供給する油圧を制御する変速機構油圧制御弁(図示せず)と、トルクコンバータTCに供給する油圧を制御する流体継手油圧制御弁(図示せず)とが含まれる。変速機構TMに供給された油圧は、変速機構TMが備える各係合装置の係合の状態の制御に用いられ、また、変速機構TMが備える歯車機構や軸受等の潤滑及び冷却に用いられる。トルクコンバータTCに供給された油圧は、トルクコンバータTC内の動力伝達用の油として用いられるとともに、第二クラッチC2の作動油圧室に供給されて、当該第二クラッチC2の係合の状態を制御するために用いられる。そして、変速機構TMやトルクコンバータTCに供給された後の油は、変速機構TMの下方に配置された第一オイルパン11に戻される。
【0072】
詳細は省略するが、油圧ポンプ9、第一油圧制御装置81、トルクコンバータTC、及び変速機構TMを経由する油の循環経路には、油を冷却するオイルクーラ(熱交換器)が直列或いは並列に設けられている。このオイルクーラは、第二ケース部3b側に設けられている。例えば、少なくとも発熱部位に供給された油が、オイルクーラを介して第一オイルパン11に戻される構成とすることや、少なくとも発熱部位に供給される油が、オイルクーラを介して油供給対象箇所に供給される構成とすることができる。
【0073】
図3に示すように、第一オイルパン11に回収された油は、上記の第一油圧制御装置収容空間に貯留される。この第一油圧制御装置収容空間は、変速機構収容空間SMの下方に形成されているとともに、第二周壁部34bに形成された開口部を介して変速機構収容空間SMと連通している。よって、本実施形態では、第二ケース部3bと第一オイルパン11とにより囲まれて形成される第一油圧制御装置収容空間が、第一油貯留部U1を構成している。油圧ポンプ9は、この第一油貯留部U1に貯留された油を吸引して油圧を発生させる。
【0074】
油圧ポンプ9の吐出圧(出力圧)であるライン圧は、ライン圧制御弁(図示せず)により制御される。ライン圧制御弁は、例えばプレッシャーレギュレータバルブが用いられ、基準圧室に供給された基準圧に基づきライン圧が制御される。本実施形態では、ライン圧制御弁は、第一油圧制御装置81に備えられており、ライン圧制御弁により制御(調圧)された油圧が、第三油路A3を介して第二油圧制御装置82に供給される。
【0075】
3−2.第二油圧制御装置
第二油圧制御装置82は、油圧ポンプ9から供給される油圧を制御して、制御後の油圧を第一クラッチC1に供給する装置である。図2に示すように、本実施形態では、第二油圧制御装置82は、第一ケース部3aに設けられており、本例では、第一ケース部3aの下部に設けられている。この第一ケース部3aは、第一収容空間S1を形成する部分であり、第二油圧制御装置82は、ケース3の第一収容空間S1を形成する部分に設けられている。すなわち、第二油圧制御装置82は、ケース3の第一収容空間S1を形成する部位に設けられている。具体的には、第二油圧制御装置82は、第一ケース部3aの第一周壁部34aの外周部(本例では当該外周部における下側を向く面を有する部分)に固定されている。この第一ケース部3aは、第一油圧制御装置81が設けられている第二ケース部3bより軸第一方向L1側に配置されている。よって、本実施形態では、第二油圧制御装置82は、第一油圧制御装置81より軸第一方向L1側に配置されている。具体的には、第一油圧制御装置81は、第一ケース部3aと第二ケース部3bとの接合部5より軸第二方向L2側に配置され、第二油圧制御装置82は、当該接合部5より軸第一方向L1側に配置されている。また、本実施形態では、第二油圧制御装置82は、第一油圧制御装置81の上端部よりも下方に配置されている。
【0076】
具体的には、ケース3は、第一ケース部3aの下部に取り付けられる第二オイルパン12を備えており、第一ケース部3aと第二オイルパン12とで囲まれる空間が、第二油圧制御装置82を収容する第二油圧制御装置収容空間とされている。すなわち、この第二油圧制御装置収容空間は、第一収容空間S1とは別にケース3によって形成される空間であり、第二油圧制御装置82を収容する第二収容空間S2を構成している。第二収容空間S2は、下方から見て回転電機MGと重複する部分を有する位置に形成されているとともに、下方から見て第一クラッチC1と重複する部分を有する位置に形成されている。なお、第二オイルパン12は、第一オイルパン11とは独立して設けられている。すなわち、第一オイルパン11と第二オイルパン12とは、互いに別の部材で構成され、ケース3の互いに異なる位置に取り付けられている。具体的には、第一オイルパン11は、第一ケース部3aと第二ケース部3bとの接合部5より軸第二方向L2側に配置され、第二オイルパン12は、当該接合部5より軸第一方向L1側に配置されている。
【0077】
図3に示すように、第二油圧制御装置82は、回転電機MGの径方向(本例では径方向Rと同じ方向)に見て回転電機MGと重複する部分を有する位置に配置されている。本例では、第二油圧制御装置82の軸第一方向L1側の部分が径方向Rに見て回転電機MG(具体的にはステータSt)と重複するように、第二油圧制御装置82は回転電機MGに対して軸第二方向L2側にずらして配置されている。本実施形態では、更に、第二油圧制御装置82は、下方から見て回転電機MGと重複する部分を有する位置に配置されている。
【0078】
また、図3に示すように、第二油圧制御装置82は、第一クラッチC1の径方向(本例では径方向Rと同じ方向)に見て第一クラッチC1と重複する部分を有する位置に配置されている。本実施形態では、第二油圧制御装置82は、第一クラッチC1を構成するクラッチハブ51、ピストン54、摩擦部材53、クラッチドラム(本例では、ロータ保持部25)、作動油圧室H1、及び循環油圧室H2の全てに対して、径方向Rに見て重複する部分を有する位置に配置されている。なお、これらの一部の部材或いは油圧室のみに対して、径方向Rに見て重複する部分を有する位置に第二油圧制御装置82が配置された構成とすることもできる。この場合において、少なくともサーボ機構(本例ではピストン54、付勢部材55、及び作動油圧室H1)に対して径方向Rに見て重複する部分を有する位置に、第二油圧制御装置82を配置すると好適である。
【0079】
第二油圧制御装置82は、複数の油圧制御弁と、当該油圧制御弁と連通する油路が設けられたバルブボディ83と、を備えている。本実施形態では、図3に示すように、油圧ポンプ9が吐出した油は、第一油圧制御装置81及び第三油路A3を介して第二油圧制御装置82に供給される。この第三油路A3には、上述したように、第一油圧制御装置81により制御されたライン圧が供給され、第二油圧制御装置82は、制御後の油圧を第一クラッチC1に供給する。具体的には、図6に示すように、第二油圧制御装置82は、油圧制御弁として、第一油圧制御弁41と第二油圧制御弁42とを備えている。第一油圧制御弁41は、第一クラッチC1の作動油圧室H1に供給する油圧を制御する油圧制御弁である。第二油圧制御弁42は、第一クラッチC1の循環油圧室H2に供給する油圧を制御(調圧)する油圧制御弁である。
【0080】
第一油圧制御弁41は、本実施形態では、電磁部と調圧部とを有するリニアソレノイド弁とされている。ここで、電磁部は、弁体(スプール)の位置を制御するアクチュエータとして機能する部分である。また、調圧部は、バルブとして機能する部分であり、この調圧部は、バルブボディ83に形成されたバルブ挿入孔に挿入されている。第一油圧制御弁41は、ライン圧の油が供給される入力ポート41aと、第一油路A1に油を吐出する出力ポート41bと、フィードバック圧を発生させるためのフィードバックポート41cと、油を排出(ドレン)する第一排出ポート41d及び第二排出ポート41eとを備えている。そして、電磁部への通電状態に応じた圧力の油が、第一油路A1を介して第一クラッチC1の作動油圧室H1に供給される。このように、第一油圧制御弁41は、第一油路A1及び第三油路A3の双方と連通するように構成されており、バルブボディ83には、第一油路A1の一部と第三油路A3の一部とが形成されている。
【0081】
第一油圧制御弁41の第一排出ポート41dは、フィードバック圧に応じて出力ポート41bから第一油路A1に供給される油の量を調整するために、油を適宜、第三油圧制御弁43側に排出する機能を有する。また、第一排出ポート41dは、作動油圧室H1へ供給する油圧を低下させる際に、第一油路A1内の油の一部を第三油圧制御弁43側に排出する機能を有する。ここで、第三油圧制御弁43は、当該第三油圧制御弁43の入力ポートに供給される油圧が所定値以上である場合に、当該第三油圧制御弁43の入力ポートと出力ポートとを連通する弁である。すなわち、この第三油圧制御弁43は、第一油路A1内の油の抜け止めとして機能するとともに、第三油圧制御弁43から第一油圧制御弁41に向かって油が逆流することを規制する逆止弁として機能する。第三油圧制御弁43の出力ポートから出力された油は、第二収容空間S2に排出される。また、第一油圧制御弁41の第二排出ポート41eは、バネ室内の油が高圧になった場合に、当該油を第二収容空間S2に排出する機能を有する。
【0082】
第二油圧制御弁42は、本実施形態では、入力ポート42aの開閉と第一排出ポート42dとの開閉との双方を行うタイプの調圧弁である。第二油圧制御弁42は、ライン圧の油が供給される入力ポート42aと、第二油路A2に油を吐出する出力ポート42bと、フィードバック圧を発生させるためのフィードバックポート42cと、油を排出(ドレン)する第一排出ポート42d及び第二排出ポート42eとを備えている。そして、第二油圧制御弁42による制御後の油圧が、第二油路A2を介して第一クラッチC1の循環油圧室H2に供給される。なお、第二油圧制御弁42の第一排出ポート42dは、フィードバック圧に応じて出力ポート42bから第二油路A2に供給される油の量を調整するために、油を適宜、第二収容空間S2へ排出する機能を有する。また、第二油圧制御弁42の第二排出ポート42eは、バネ室内の油が高圧になった場合に、当該油を第二収容空間S2に排出する機能を有する。このように、第二油圧制御弁42は、第二油路A2に連通するように構成されており、バルブボディ83には、第二油路A2の一部が形成されている。
【0083】
図3に示すように、第二収容空間S2は、第一連通油路ACを介して第一収容空間S1(回転電機収容空間SG)の下部に連通している。図3に示すように、本実施形態では、第一ケース部3aの第一周壁部34aに形成された、当該第一周壁部34aの外周面と内周面とを連通する第一孔部P1が、第一連通油路ACを構成している。なお、第一連通油路AC(第一孔部P1)は、第一周壁部34aにおける径方向Rの厚さの小さい部分に形成されており、これにより、第一連通油路ACの長さを短く抑えて当該第一連通油路ACにおける油の流通抵抗を小さく抑えることが可能となっている。本例では、第一連通油路ACは、流路幅と流路長さとが同程度の油路とされている。本実施形態では、第一連通油路ACが本発明における「連通油路」に相当する。
【0084】
そして、第二収容空間S2は、第一連通油路ACを介してのみ第二収容空間S2から油を排出可能なように、第一連通油路AC以外の部分が油密状に区画された空間とされている。また、第二収容空間S2は、第一収容空間S1(回転電機収容空間SG)より下側に位置するため、第一連通油路ACは、第二収容空間S2の上部(天井部)に形成されている。よって、第二収容空間S2は、基本的に油で満たされる状態となり、第二油圧制御装置82の油排出口から排出された油は、第一連通油路ACを介して上方にある第一収容空間S1に排出される。ここで、本実施形態では、第一油圧制御弁41の第一排出ポート41d及び第二排出ポート41e、並びに第二油圧制御弁42の第一排出ポート42d及び第二排出ポート42eが、第二油圧制御装置82の「油排出口」を構成している。
【0085】
これにより、油圧ポンプ9の回転時には、例えば図3に一例を示すように、第二収容空間S2が油で満たされると共に、第一収容空間S1(回転電機収容空間SG)の下側部分まで油が溜まった状態となる。なお、第二収容空間S2が第一連通油路ACを介して連通する第一収容空間S1は、基本的に下側の部分のみに油が溜められた状態となるため、第二油圧制御装置82の油排出口から第二収容空間S2に高圧の油が排出される場合でも、油圧の変化を第一収容空間S1における油面レベルの変化により吸収して、第二収容空間S2における油圧の急上昇を抑制することが可能となっている。
【0086】
ところで、本実施形態では、図4に示すように、第二油路A2を介して第一クラッチC1の循環油圧室H2に供給された後の油を、軸受96を介して回転電機MGのコイルエンド部Ceに供給する油の流通経路が形成されている。これにより、循環油圧室H2に供給された後の油を利用して、ロータRoを支持する軸受96の冷却や、コイルエンド部Ceを含む回転電機MGの冷却が可能となっている。このように、本実施形態では、油圧ポンプ9により吐出された油が回転電機MGに供給されるように構成されている。
【0087】
図3に示すように、回転電機MGに供給された後の油は、第一収容空間S1(回転電機収容空間SG)の下側の部分に貯留される。そして、第一収容空間S1の下側の部分は、第一連通油路ACを介して、第二収容空間S2に配置された第二油圧制御装置82の油排出口と連通している。すなわち、本実施形態では、第二油圧制御装置82の油排出口と第一収容空間S1との双方に連通するように設けられる第二油貯留部U2は、第一収容空間S1(回転電機収容空間SG)の一部(具体的には、下側の一部)により構成されている。
【0088】
図5に示すように、第二油貯留部U2に貯留された油は、排出油路ADを介して第一油貯留部U1に排出される。この排出油路ADは、本実施形態では、第一ケース部3aと第二ケース部3bとの接合部5を貫通して軸方向Lの両側に延びるように形成されている。また、本実施形態では、この排出油路ADは、第三油路A3とは水平方向の異なる位置において、当該第三油路A3と上下方向の位置が重なるように形成されている。そのため、図2及び図3では、排出油路ADを破線で示している。
【0089】
排出油路ADは、図5に示すように、第二油貯留部U2を有する第一収容空間S1に開口する第二開口部AEoと、第一油貯留部U1を有する第一油圧制御装置収容空間に開口する第一開口部ADoとを有している。具体的には、排出油路ADは、水平方向(具体的には軸方向L)に延びる本体油路と、水平方向に対して傾斜(本例では45度程度の傾斜)した方向に延びる第二連通油路AEとを備えている。本体油路は、軸第二方向L2側の端部に第一開口部ADoを備えるとともに、接合部5より軸第一方向L1側の部分で第二連通油路AEに連通するように形成されている。具体的には、本体油路は、第一周壁部34aに形成された軸方向Lに延びる第三孔部P3と、第二周壁部34bに形成された軸方向Lに延びる第四孔部P4とが軸方向Lに連結されて構成されている。
【0090】
また、第二連通油路AEは、上方側の端部に第二開口部AEoを備えるとともに、下方側の端部が上記本体油路の上面部(天井部)に開口するように形成されている。具体的には、第二連通油路AEは、第一周壁部34aの内周面と本体油路を構成する第三孔部P3の上面部とを連通する第二孔部P2により形成されている。なお、排出油路ADにおける接合部5の貫通部分(接合部5における第三孔部P3と第四孔部P4との連結部)の周囲にはシール部材が設けられており、接合部5を介して排出油路AD内の油がケース3の外部に漏れることが抑制されている。図3に示すように、第三油路A3における接合部5の貫通部分の周囲にもシール部材が設けられており、接合部5を介して第三油路A3内の油がケース3の外部に漏れることが抑制されている。
【0091】
図5に示すように、第二開口部AEoは、第一開口部ADoより上方に位置する。言い換えれば、第二連通油路AEの上端部は、第一開口部ADoの下端部Bより上方に位置する。そして、油圧ポンプ9の回転中は、基本的に、第一油貯留部U1における油面は、第一開口部ADoの下端部Bより下方に位置する。これにより、排出油路ADに専用のポンプ等を設けることなく、重力を利用した簡素な構成で、第二油貯留部U2の油を効率的に、油圧ポンプ9の吸入油路(図示せず)が接続された第一油貯留部U1に戻すことが可能となっている。なお、第一油貯留部U1における油面は、ケース3内を循環させる油の量や特性(粘性等)、ポンプ駆動軸67の回転速度等に依存するが、第一開口部ADoの下端部Bが、油圧ポンプ9の回転中の第一油貯留部U1における最も高い油面より上方に位置する構成とすると好適である。
【0092】
上記のように、第二開口部AEoは、第一開口部ADoより上方に位置する。そして、本実施形態では、第二連通油路AEにおける油の許容流量が、第二油貯留部U2への油の供給量より大きくなるように、第二連通油路AEの断面積を設定している。なお、上述したように、第二油貯留部U2へは、回転電機MGに供給された後の油が供給されるとともに、第二油圧制御装置82の油排出口から排出された油が供給される。これにより、第二油貯留部U2における油面は、基本的に、第二連通油路AEの上端部(すなわち第二開口部AEo)の高さ(上下方向位置)により定まり、具体的には、第二連通油路AEの上端部と同程度の高さに定まる。そして、本実施形態では、図5に示すように、第二開口部AEoがステータSt(具体的にはステータコア)の内周面の最下部より下方に位置するように、第二連通油路AEを形成している。これにより、油圧ポンプ9の回転中においても、第二油貯留部U2における油面がステータStの内周面の最下部より高くなることを抑制して、ロータRoの回転抵抗を低減することが可能となっている。
【0093】
本実施形態では、第一油圧制御装置81及び第二油圧制御装置82の双方に対して、油圧ポンプ9が第一油貯留部U1から吸入して吐出した油が供給される。そして、上述したように、油圧ポンプ9、第一油圧制御装置81、トルクコンバータTC、及び変速機構TMを経由する油の循環経路にはオイルクーラが設けられているため、第一油貯留部U1に貯留される油の温度は、所定の温度以下に維持される。これにより、第二油圧制御装置82と回転電機MGとの間の油の流通経路にオイルクーラを備えなくとも、回転電機MGに対して、当該回転電機MGを冷却することが可能な温度の油を供給するのが容易な構成となっている。
【0094】
4.その他の実施形態
最後に、本発明に係る車両用駆動装置の、その他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能である。
【0095】
(1)上記の実施形態では、油圧ポンプ9が吐出した油が、第一油圧制御装置81及び第三油路A3を介して第二油圧制御装置82に供給される構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、第二油圧制御装置82がライン圧制御弁を備える構成とし、油圧ポンプ9が吐出した油が、第一油圧制御装置81を介することなく直接、第二油圧制御装置82に供給される構成とすることもできる。
【0096】
(2)上記の実施形態では、第二油圧制御装置82の油排出口から排出された油が、第二油貯留部U2に排出された後に、第一収容空間S1と第一油貯留部U1とを連通する排出油路ADを介して第一油貯留部U1に排出される構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、第二油圧制御装置82の油排出口から排出された油が、排出油路ADとは別の油路を介して第一油貯留部U1に排出される構成とすることもできる。例えば、第二油圧制御装置82が、第一油圧制御装置81の下端部よりも上方に配置されている場合にこのような構成としても良い。この際、油に作用する重力のみではなく、例えば、第二油圧制御装置82の排出圧を利用して当該別の油路に油を流通させる構成とすることができる。
【0097】
(3)上記の実施形態では、第二油圧制御装置82が、ケース3(本例では第一ケース部3a)の下部に固定されている構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、第二油圧制御装置82が、ケース3の周壁部34の側面部(周壁部34の外周部における水平方向を向く面を有する部分)に固定されている構成とすることもできる。この場合、第一ケース部3aと第二オイルパン12とに代えて、第一ケース部3aと、第二油圧制御装置82が固定されたケース3の側面部を覆うサイドカバーとにより、第二収容空間S2が形成される構成とすることができる。また、このような場合、第一油圧制御弁41の電磁部の少なくとも一部が油面より下方に位置するとともに、第二油圧制御装置82の油排出口(具体的には、当該油排出口が第二油圧制御装置82の外部に開口する部分)が、油面より上方に位置する構成とすると好適である。このような構成とすれば、当該電磁部を冷却することができるとともに、当該油排出口における油の排出抵抗を小さく抑えることができる。また、第二油圧制御装置82が、ケース3の周壁部34の上部(周壁部34の外周部における上側を向く面を有する部分)に固定されている構成とすることもできる。
【0098】
(4)上記の実施形態では、第二油圧制御装置82が、回転電機MGの径方向に見て回転電機MGと重複する部分を有する位置に配置されている構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、第二油圧制御装置82が、回転電機MGの径方向に見て回転電機MGと重複する部分を有さないように、回転電機MGの軸方向において回転電機MGとは異なる位置に配置されている構成とすることもできる。
【0099】
(5)上記の実施形態では、第二油圧制御装置82が、第一クラッチC1の径方向に見て第一クラッチC1と重複する部分を有する位置に配置されている構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、第二油圧制御装置82が、第一クラッチC1の径方向に見て第一クラッチC1と重複する部分を有さないように、第一クラッチC1の軸方向において第一クラッチC1とは異なる位置に配置されている構成とすることもできる。
【0100】
(6)上記の実施形態では、第二油圧制御装置82の油排出口と第一収容空間S1(回転電機収容空間SG)との双方に連通するように設けられる第二油貯留部U2が、第一収容空間S1の一部(具体的には、下側の一部)により構成されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、第一収容空間S1の下方であって、第一周壁部34aに対して径外方向R2側に形成された空間に、第二油貯留部U2が形成されている構成とすることもできる。
【0101】
(7)上記の実施形態では、ケース3が、第一収容空間S1(回転電機収容空間SG)を形成する第一ケース部3aと、変速機構収容空間SMを形成する第二ケース部3bとに分離可能に形成されている構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、ケース3をどの部位において分離可能に形成するかについては、適宜変更可能である。
【0102】
(8)上記の実施形態では、軸第一方向L1側から軸第二方向L2側に向かって、回転電機MG、トルクコンバータTC、変速機構TMの順に配置されている構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、軸第一方向L1側から軸第二方向L2側に向かって、トルクコンバータTC、回転電機MG、変速機構TMの順に配置される構成とすることも可能である。また、上記の実施形態では、回転電機MG、トルクコンバータTC、及び第一クラッチC1の全てが、変速機構TMに対して軸第一方向L1側に配置された構成を例として説明したが、回転電機MG、トルクコンバータTC、及び第一クラッチC1の少なくとも何れかが、変速機構TMに対して軸第二方向L2側に配置される構成とすることも可能である。
【0103】
(9)上記の実施形態では、第二油圧制御装置82から第一クラッチC1の循環油圧室H2に供給された油が、当該循環油圧室H2から排出された後に回転電機MGに供給される構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、循環油圧室H2から排出された油が回転電機MGに供給されずに、油路を介して第一油貯留部U1に直接戻される構成とすることもできる。
【0104】
(10)上記の実施形態では、第二油圧制御装置82が第二油圧制御弁42を備え、第二油圧制御弁42により制御された油圧が第一クラッチC1の循環油圧室H2に供給される構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、第一クラッチC1の作動油圧室H1にのみ第二油圧制御装置82が制御した油圧が供給される構成とすることもできる。
【0105】
(11)上記の実施形態では、回転電機収容空間SG、流体継手収容空間SC、及び変速機構収容空間SMが、互いに独立した空間として形成されている構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、回転電機収容空間SG内において油の流通経路が限定される場合には、回転電機収容空間SGと流体継手収容空間SCとが一体的に形成された構成とすることも可能である。また、上記の実施形態では、回転電機MGが第一収容空間S1に収容される構成を例として説明したが、回転電機MGが第一収容空間S1とは軸方向Lに異なる位置に形成された空間に収容される構成、すなわち、回転電機収容空間SGが第一収容空間S1とは軸方向Lの異なる位置に、第一収容空間S1とは独立した空間として形成される構成とすることも可能である。
【0106】
(12)上記の実施形態では、車両用駆動装置1が一軸構成とされ、入力軸I、第一クラッチC1、回転電機MG、トルクコンバータTC、中間軸M、変速機構TM、及び出力軸Oの全てが同軸上に配置された構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、入力軸I、第一クラッチC1、回転電機MG、トルクコンバータTC、中間軸M、及び出力軸Oの少なくとも何れかを、変速機構TMとは異なる軸上に配置し、車両用駆動装置1を複軸構成の駆動装置として構成することもできる。また、このような複軸構成の駆動装置は、車両用駆動装置1が更にカウンタギヤ機構を備える場合に好適であり、このようなカウンタギヤ機構を備える構成は、FF(Front Engine Front Drive)方式の車両に搭載される場合に適している。
【0107】
(13)上記の実施形態では、第二油圧制御装置82の第一油圧制御弁41が制御した油圧が、直接第一クラッチC1の作動油圧室H1に供給される構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、第一油圧制御弁41とは別の油圧制御弁(図示せず)を備え、当該別の油圧制御弁が制御(調圧)した油圧が第一クラッチC1の作動油圧室H1に供給される構成とすることもできる。この場合、当該別の油圧制御弁は、第一油圧制御弁41が制御した油圧を信号圧として動作することで、ライン圧を調圧する調圧弁とされ、この別の油圧制御弁は、第二油圧制御装置82に備えられる構成とすると好適である。
【0108】
(14)上記の実施形態では、第一油圧制御装置81を収容する第一油圧制御装置収容空間が、第二ケース部3bと、当該第二ケース部3bの下部に取り付けられる第一オイルパン11とで囲まれる空間とされる構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、第一油圧制御装置収容空間が、第二ケース部3bと一体的に形成されたケース3の部分のみにより形成される構成(例えば、第二ケース部3bの周壁内に形成された構成)とすることもできる。
【0109】
(15)上記の実施形態では、第二油圧制御装置82を収容する第二収容空間S2が、第一ケース部3aと、当該第一ケース部3aの下部に取り付けられる第二オイルパン12とで囲まれる空間とされる構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、第二収容空間S2が、第一ケース部3aと一体的に形成されたケース3の部分のみにより形成される構成(例えば、第一ケース部3aの周壁内に形成された構成)とすることもできる。
【0110】
(16)上記の実施形態では、車両用駆動装置1が、流体継手としてトルク増幅機能を有するトルクコンバータTCを備える構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、車両用駆動装置1が、トルクコンバータTCに代えて、トルク増幅機能を有さない流体継手を備える構成とすることもでき、また、車両用駆動装置1が流体継手を備えない構成とすることもできる。
【0111】
(17)その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、本願の特許請求の範囲に記載されていない構成に関しては、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明は、内燃機関に駆動連結される入力部材と、回転電機と、回転電機に駆動連結される変速機構と、変速機構及び車輪に駆動連結される出力部材と、入力部材と変速機構との間の係合の状態を変更可能な係合装置と、を備える車両用駆動装置に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0113】
1:車両用駆動装置
2:継手入力側部材
3:ケース
3a:第一ケース部
3b:第二ケース部
4:継手出力側部材
9:油圧ポンプ
41d:第一排出ポート(油排出口)
41e:第二排出ポート(油排出口)
42d:第一排出ポート(油排出口)
42e:第二排出ポート(油排出口)
81:第一油圧制御装置
82:第二油圧制御装置
AC:第一連通油路(連通油路)
AD:排出油路
C1:第一クラッチ(係合装置)
E:内燃機関
I:入力軸(入力部材)
L:軸方向
L1:軸第一方向
MG:回転電機
O:出力軸(出力部材)
S1:第一収容空間
S2:第二収容空間
SC:流体継手収容空間
SM:変速機構収容空間
TM:変速機構
TC:トルクコンバータ(流体継手)
U1:第一油貯留部
U2:第二油貯留部
W:車輪
図1
図2
図3
図4
図5
図6