特許第5793792号(P5793792)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5793792
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】フェノールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 27/00 20060101AFI20150928BHJP
   C07C 37/08 20060101ALI20150928BHJP
   C07C 39/04 20060101ALI20150928BHJP
   C07C 49/403 20060101ALI20150928BHJP
   C07C 45/53 20060101ALI20150928BHJP
   C07C 407/00 20060101ALI20150928BHJP
   C07C 409/14 20060101ALI20150928BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20150928BHJP
【FI】
   C07C27/00 310
   C07C37/08
   C07C39/04
   C07C49/403 A
   C07C45/53
   C07C407/00
   C07C409/14
   !C07B61/00 300
【請求項の数】14
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-505128(P2014-505128)
(86)(22)【出願日】2011年12月15日
(65)【公表番号】特表2014-522386(P2014-522386A)
(43)【公表日】2014年9月4日
(86)【国際出願番号】US2011065062
(87)【国際公開番号】WO2012145031
(87)【国際公開日】20121026
【審査請求日】2013年10月10日
(31)【優先権主張番号】61/476,893
(32)【優先日】2011年4月19日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】11170855.8
(32)【優先日】2011年6月22日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】509004675
【氏名又は名称】エクソンモービル ケミカル パテンツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(72)【発明者】
【氏名】ワン クン
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア ロベルト
(72)【発明者】
【氏名】キス ガボール
【審査官】 品川 陽子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/001244(WO,A1)
【文献】 特開2007−099745(JP,A)
【文献】 特開平05−085974(JP,A)
【文献】 特表2008−512223(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/138248(WO,A1)
【文献】 特表2010−514559(JP,A)
【文献】 BAERLOCHER, L. B. et al.,Atlas of Zeolite Framework Types, 6th edn.,2007年,www.iza-structure.org/databases/
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 37/08
C07C 39/04
C07C 45/53
C07C 49/403
C07C 27/00
CAplus(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノール及びシクロヘキサノンの製造方法であって、
(a)シクロヘキシルベンゼンヒドロペルオキシドを含む供給原料をシクロヘキシルベンゼンヒドロペルオキシドの少なくとも一部をフェノール及びシクロヘキサノンに変換するのに有効な開裂条件下で24.35以下の単位セルサイズを有するFAU型のアルミノシリケートゼオライトを含む開裂触媒と接触させることを含むことを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
供給原料が供給原料の合計質量を基準として、1質量%より多いシクロヘキシルベンゼンヒドロペルオキシドを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
接触工程(a)におけるシクロヘキシルベンゼンヒドロペルオキシドの転化率が30%より大きい、請求項1記載の方法。
【請求項4】
開裂触媒が実質的に金属を含まない、請求項1記載の方法。
【請求項5】
触媒が第二反応器中の接触工程(a)の操作中に第一反応器中で復活又は再生され、かつ第一反応器及び第二反応器が平行に連結される、請求項1からのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
接触工程(a)をスラリー反応器中で少なくとも部分的に行なう、請求項1からのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
開裂触媒の少なくとも一部を接触工程(a)の下流で連続的に、又は周期的に取り出し、復活させる、請求項1からのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
開裂触媒を極性溶媒でフラッシすることにより復活させる、請求項記載の方法。
【請求項9】
極性溶媒がアセトン又はシクロヘキサノンである、請求項記載の方法。
【請求項10】
(i)シクロヘキシルベンゼンをシクロヘキシルベンゼンヒドロペルオキシド及び環状イミド触媒を含む酸化生成物を生成するのに有効な酸化条件下で環状イミドを含む酸化触媒の存在下で酸素含有化合物と接触させ、そして
(ii)シクロヘキシルベンゼンヒドロペルオキシドを含む酸化生成物の少なくとも一部を接触工程(a)に供給することを更に含む、請求項1からのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
酸化生成物からの環状イミド触媒の除去を接触工程(a)と同時に行なう、請求項10記載の方法。
【請求項12】
環状イミド触媒の少なくとも一部をアルミノシリケートゼオライトから脱着し、接触工程(i)に循環する、請求項11記載の方法。
【請求項13】
供給原料が供給原料の合計質量を基準として、0.5 質量%より多い極性溶媒を含む、請求項1から12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
フェノール及びシクロヘキサノンの製造方法であって、
(a)ベンゼンをシクロヘキシルベンゼンを含むヒドロアルキル化反応生成物を生成するのに有効な条件下でヒドロアルキル化触媒の存在下で水素でヒドロアルキル化し、
(b)シクロヘキシルベンゼンの少なくとも一部をヒドロアルキル化反応生成物から分離し、
(c)分離工程(b)からのシクロヘキシルベンゼンの少なくとも一部をシクロヘキシルベンゼンヒドロペルオキシド及び環状イミド触媒を含む酸化生成物を生成するのに有効な酸化条件下で環状イミドを含む酸化触媒の存在下で酸素含有化合物と接触させ、そして
(d)シクロヘキシルベンゼンヒドロペルオキシドを含む酸化生成物の少なくとも一部をシクロヘキシルベンゼンヒドロペルオキシドの少なくとも一部をフェノール及びシクロヘキサノンに変換するのに有効な開裂条件下で24.35Å以下の単位セルサイズを有するFAU型のアルミノシリケートゼオライトを含む開裂触媒と接触させることを含むことを特徴とする前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
この出願は2011年4月19日に出願された米国仮特許出願第61/476,893号、及び2011年6月22日に出願された欧州特許出願第11170855.8 号(これらの開示が参考として本明細書に完全に含まれる)の優先権を主張する。
関連特許出願の相互参照
この出願は2010年1月25日に出願された米国特許出願第13/143,975号(2009EM028)、2011年6月30日に出願された米国仮特許出願第61/502,985号(2011EM102)、2011年6月30日に出願された米国仮特許出願第61/502,979号(2011EM170)、2011年7月19日に出願された米国仮特許出願第61/509,258号(2011EM194)、及び“フェノール及び/又はシクロヘキサノンの製造方法”という発明の名称の、 に出願された国際特許出願第 号(2011EM359)に関連する。
本発明はフェノールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フェノールは化学工業における重要な製品であり、例えば、フェノール樹脂、ビスフェノールA、ε-カプロラクタム、アジピン酸、及び可塑剤の製造に有益である。
現在、フェノールの製造のための最も普通の経路はクメンを介してのホック方法である。これは最初の工程がクメンを製造するための酸性触媒の存在下のプロピレンによるベンゼンのアルキル化を伴なう3工程方法である。その第二工程は相当するクメンヒドロペルオキシドへのクメンの酸化、好ましくは好気酸化である。その第三工程は等モル量のフェノール及びアセトン、同時生成物への一般に硫酸触媒の存在下のクメンヒドロペルオキシドの開裂である。
フェノール及びシクロヘキサノンはシクロヘキシルベンゼンが酸化されてシクロヘキシルベンゼンヒドロペルオキシドを得、そのヒドロペルオキシドが酸触媒の存在下で所望のフェノール及びシクロヘキサノンに分解されるホック方法の変化により同時製造し得ることが知られている。種々の方法がシクロヘキシルベンゼンの製造に利用し得るが、好ましい経路が米国特許第6,037,513号に開示されており、その特許はシクロヘキシルベンゼンがベンゼンをMCM-22ファミリーのモレキュラーシーブ及びパラジウム、ルテニウム、ニッケル、コバルト及びこれらの混合物から選ばれた少なくとも一種の水素化金属を含む二機能性触媒の存在下で水素と接触させることにより製造し得ることを開示している。その’513特許はまた得られるシクロヘキシルベンゼンが相当するヒドロペルオキシドに酸化でき、次いでこれが所望のフェノール及びシクロヘキサノン同時生成物に分解されることを開示している。
【0003】
クメンをベースとするホック方法では、クメン酸化工程からの希薄なクメンヒドロペルオキシドが最初に未反応のクメンを真空で除去することにより80質量%より大きく濃縮され、次いで得られる濃厚物が開裂反応器に送られる。濃縮ヒドロペルオキシドを取り扱うことに関連する危険に加えて、その開裂がその反応の迅速かつ高度の発熱性のために安全性の関心事を有する。更に、かなりの量の副生物が濃縮酸化生成物から生成し得る。それ故、実際に、反応の熱を一層良く処理し、副生物生成を制御するために、濃縮クメンヒドロペルオキシドがしばしばアセトンの如き溶媒で希釈される。例えば、米国特許第5,254,751号はクメンヒドロペルオキシドを過剰のアセトンの存在下で非等温様式で分解することによるフェノール及びアセトンの製造方法を開示しており、それによれば分解反応器中のアセトン対フェノールのモル比が約1.1:1 から1.5:1 までである。
フェノールをシクロヘキシルベンゼンから製造する際に、問題が異なる。第一に、シクロヘキシルベンゼンヒドロペルオキシドへのシクロヘキシルベンゼンの酸化はクメンの酸化よりも極めて困難であり、高温及びN-ヒドロキシフタルイミド(NHPI)の如き触媒の使用を必要とする。結果として、シクロヘキシルベンゼン酸化流出物がまた一般に高温であり、その結果、この流れを逆に周囲温度に冷却することが追加の運転コストを招くであろう。また、シクロヘキシルベンゼンの高沸点に鑑みて、未反応シクロヘキシルベンゼンの蒸発によるシクロヘキシルベンゼンヒドロペルオキシドの濃縮が困難であり、ヒドロペルオキシドの望ましくない分解をもたらし得る。こうして、シクロヘキシルベンゼンヒドロペルオキシド開裂によると、供給原料が約80質量%の炭化水素を含み、生成物がわずかに約20質量%の極性成分を含み、これが硫酸溶解性及び開裂速度を制限する。加えて、シクロヘキシルベンゼンヒドロペルオキシドについての開裂化学がクメンヒドロペルオキシドについてのそれよりも極めて複雑である。何とならば、特に副生物生成についての一層多い経路がシクロヘキシルベンゼンヒドロペルオキシド開裂で存在するからである。更に、シクロヘキサノンはアセトンよりも極めて酸触媒アルドール縮合反応を受け易く、その結果、シクロヘキシルベンゼンヒドロペルオキシド開裂が厳密に制御されない限り、かなりの収率損失が可能である。
【0004】
硫酸をシクロヘキシルベンゼンヒドロペルオキシド開裂に使用することのその他の欠点がある:1)硫酸は、特に水の存在下で、腐食性であり、反応器構築に高価な材料を必要とし、2)硫酸は生成物分離及び蒸留の前に中和されることを必要とし、これがフェネート、苛性物質、又は有機アミンの如き追加の薬品を必要とし、かつ3)中和から生成された塩が分離及び廃棄を必要とし、廃水が処理される必要がある。それ故、硫酸をこれらの欠点を排除する不均一開裂触媒で置換するようにとの強い動機がある。
特許及び学術文献はクメンヒドロペルオキシドの開裂において硫酸を置換するための示唆で満ち溢れている。例えば、米国特許第4,490,565 号はゼオライトベータがクメンヒドロペルオキシドの開裂において硫酸の有効な置換であることを開示しており、収率、転化率及び選択率が一般に大きい孔のゼオライトX及びYの使用により生じられるものより優れていることを示す。米国特許第4,490,566 号に、大きい孔のゼオライトX及びYについての同様の改良が中間の孔サイズのゼオライト、例えば、ZSM-5で報告されている。対照的に、“HUSYゼオライトによるクメンヒドロペルオキシドの有効な開裂:ブレンステッド活性の役割”と題する論文, Applied Catalysis A: General, 336 (2008), 29-34頁に、Koltonovらはクメンヒドロペルオキシドがフェノール及びアセトンへの良好な選択率及び硫酸の有効性に匹敵する有効性で高い(15〜40)Si/Al比のHUSYゼオライトで分解を直ぐに受けることを報告している。これらの種々の推奨にもかかわらず、又はおそれくこれらの種々の推奨のために、クメンヒドロペルオキシドの開裂のための殆どの商業的方法が硫酸を触媒として使用し続ける。
関心がシクロヘキシルベンゼンヒドロペルオキシドの開裂にそれ程集中されていなかったが、国際特許公開WO2011/001244はシクロヘキシルベンゼンヒドロペルオキシドがブレンステッド酸及びルイス酸から選ばれた種々の均一又は不均一酸触媒の存在下でフェノール及びシクロヘキサノンに変換し得ることを開示している。好適な均一触媒は硫酸、リン酸、塩酸、及びp-トルエンスルホン酸から選ばれたプロトン酸を含むと言われている。塩化第二鉄、塩化亜鉛、三フッ化ホウ素から選ばれた固体ブレンステッド酸、例えば、アンバーリスト及びルイス酸がまた開示されている。加えて、好適な不均一酸がゼオライトベータ、ゼオライトY、ゼオライトX、ZSM-5、ZSM-12及びモルデナイトを含むと言われている。
【0005】
更に、日本の未審査の特開2007-099746はシクロアルキルベンゼンヒドロペルオキシドが担体で担持されたモンモリロナイト、シリカ-アルミナ、陽イオン交換樹脂、及びスルホン酸、ペルフルオロスルホン酸及びヘテロポリ酸の存在下でフェノール及びシクロアルカノンに高選択率で開裂し得ることを開示している。同様に、日本の未審査の特開2007-099745はシクロアルキルベンゼンヒドロペルオキシドが0.6nm以上の孔直径を有するアルミノシリケートゼオライト、例えば、ゼオライトY及びゼオライトベータの存在下でフェノール及びシクロアルカノンに高選択率で開裂し得ることを開示している。
本発明によれば、アルミノシリケートゼオライトを含む、幾つかの固体酸がフェノール及びシクロヘキサノンへのシクロヘキシルベンゼンヒドロペルオキシドの変換に活性を有するが、24.35Å未満の単位セルサイズを有するFAU型の大きい孔のゼオライトがこの反応について高活性及び高選択率の特異な組み合わせを示すことが今驚くことに見い出された。ベータの如きその他の大きい孔のゼオライトは高選択率を示さない。更に、それらの高表面積を考えると、高シリカFAUゼオライトは先行する酸化工程で使用されるN-ヒドロキシフタルイミド(NHPI)触媒の除去及び回収のための収着剤として潜在的に使用し得る。このようなNHPI除去はシクロヘキシルベンゼンヒドロペルオキシド開裂工程と同時でさえも行なうことができ、それにより総合の方法を簡素化する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
従って、本発明は一局面においてフェノールの製造方法にあり、その方法は
(a) シクロヘキシルベンゼンヒドロペルオキシドを含む供給原料をシクロヘキシルベンゼンヒドロペルオキシドの少なくとも一部をフェノール及びシクロヘキサノンに変換するのに有効な開裂条件下で24.50Å未満、例えば、24.45Å以下、例えば、24.40Å以下、例えば、24.35Å以下、例えば、24.30Å以下の単位セルサイズを有するFAU型のアルミノシリケートゼオライトを含む開裂触媒と接触させることを含む。
都合良くは、開裂条件が約20℃〜約200 ℃の温度及び約100kPa〜約2000kPaの圧力を含む。
一実施態様において、接触(a) が直列に連結された少なくとも第一反応器及び第二反応器中で行なわれる。都合良くは、第一反応器が約20℃〜約120 ℃の温度及び約100kPa〜約500kPaの圧力で運転され、かつ第二反応器が約40℃〜約180 ℃の温度及び約100kPa〜約1000kPaの圧力で運転される。毎時の質量空間速度が約1〜1000h-1であってもよい。
別の実施態様において、接触工程(a) が平行に連結された複数の反応器の少なくとも一つ中で行なわれる。都合良くは、開裂触媒が第二反応器中の接触工程(a) の運転中に復活され、かつ/又は再生される。
都合良くは、第一反応器及び第二反応器が同じであり、又は異なる。
一実施態様において、接触工程(a) が連続撹拌タンク反応器(CSTR)中で少なくとも部分的に行なわれる。都合良くは、開裂触媒が接触(a) の下流で連続的又は周期的に取り出され、再生される。典型的には、再生された触媒が接触工程(a) に戻される。都合良くは、開裂触媒が連続的又は周期的に接触工程(a) に追加されて変換を維持する。
別の実施態様において、接触工程(a) が固定床反応器中で少なくとも部分的に行なわれる。
一実施態様において、その方法が更に
(i) シクロヘキシルベンゼンをシクロヘキシルベンゼンヒドロペルオキシド及び環状イミド触媒を含む酸化生成物を生成するのに有効な酸化条件下で環状イミドを含む酸化触媒の存在下で酸素含有化合物と接触させ、そして
(ii)シクロヘキシルベンゼンヒドロペルオキシドを含む酸化生成物の少なくとも一部を接触工程(a) に供給することを含む。
【0007】
都合良くは、環状イミド触媒の少なくとも一部が接触工程(a) に供給される酸化生成物から除去される。
都合良くは、環状イミド触媒の少なくとも一部が24.50Å未満の単位セルサイズを有するFAU型のアルミノシリケートゼオライトによる選択的吸着により酸化生成物から除去される。一実施態様において、酸化生成物からの環状イミド触媒の除去が接触工程(a) と同時に行なわれる。都合良くは、環状イミド触媒の少なくとも一部がアルミノシリケートゼオライトから脱着され、接触工程(i) に循環される。
更なる局面において、本発明はフェノールの製造方法にあり、その方法が
(a) ベンゼンをシクロヘキシルベンゼンを含むヒドロアルキル化反応生成物を生成するのに有効な条件下でヒドロアルキル化触媒の存在下で水素でヒドロアルキル化し、
(b) シクロヘキシルベンゼンをヒドロアルキル化反応生成物から分離し、
(c) 分離(b) からのシクロヘキシルベンゼンの少なくとも一部をシクロヘキシルベンゼンヒドロペルオキシド及び未反応の環状アミド触媒を含む酸化生成物を生成するのに有効な酸化条件下で環状アミドを含む酸化触媒の存在下で酸素含有化合物と接触させ、そして
(d) シクロヘキシルベンゼンヒドロペルオキシドを含む酸化生成物の少なくとも一部をシクロヘキシルベンゼンヒドロペルオキシドの少なくとも一部をフェノール及びシクロヘキサノンに変換するのに有効な開裂条件下で24.35Å未満の単位セルサイズを有するFAU型のアルミノシリケートゼオライトを含む開裂触媒と接触させることを含む。
【発明を実施するための形態】
【0008】
24.50Å未満、例えば、24.45Å以下、例えば、24.40Å以下、例えば、24.35Å以下、例えば、24.30Å以下の単位セルサイズを有するFAU型のアルミノシリケートゼオライトを含む触媒の存在下のシクロヘキシルベンゼンヒドロペルオキシドの開裂によるフェノールの製造方法が本明細書に記載される。このような触媒の使用が硫酸の如き均一触媒の使用に固有の欠点を生じないでフェノール及びシクロヘキサノンへの格別高い選択率と合わせてシクロヘキシルベンゼンヒドロペルオキシドの高転化率(95%より大きい)を可能にする。
一つの好ましい実施態様において、本開裂方法がベンゼンからフェノール及びシクロヘキサノンを製造するための統合された方法の一部を形成し、この場合、ベンゼンがシクロヘキシルベンゼンに変換され、次いでシクロヘキシルベンゼンがシクロヘキシルベンゼンヒドロペルオキシドに酸化され、シクロヘキシルベンゼンヒドロペルオキシドが開裂されてフェノール及びシクロヘキサノンを生成する。それ故、本方法が今この好ましい実施態様を参照して更に特別に記載されるであろう。
シクロヘキシルベンゼンの製造
ベンゼンから始まる統合された方法の初期の工程において、シクロヘキシルベンゼンがベンゼンをアルキル化機能を有する触媒の存在下で下記の反応を促進する条件下でシクロヘキセンと反応させることにより生成される。
【0009】
【化1】
【0010】
シクロヘキセンはベンゼンとは別の供給原料として反応ゾーンに供給し得るが、通常アルキル化機能を有する触媒に用意された水素化成分の存在下のベンゼンの選択的水素化によりin situ で生成される。それ故、その二機能性触媒が本明細書でヒドロアルキル化触媒と称され、全体としてそのヒドロアルキル化反応が以下のように進行してシクロヘキシルベンゼン(CHB) を生成する。
【0011】
【化2】
【0012】
あらゆる市販のベンゼン供給原料がヒドロアルキル化工程で使用し得るが、ベンゼンが少なくとも99質量%の純度レベルを有することが好ましい。同様に、水素の源は重要ではないが、水素が少なくとも99質量%の純度であることが一般に望ましい。
都合良くは、ヒドロアルキル化工程への全供給原料が1000ppm未満、例えば、500ppm未満、例えば、100ppm未満の水を含む。加えて、全供給原料が100ppm未満、例えば、30ppm未満、例えば、3ppm未満の硫黄及び10ppm未満、例えば、1ppm未満、例えば、0.1ppm未満の窒素を含む。
水素は広範囲の値にわたってヒドロアルキル化工程に供給し得るが、典型的にはヒドロアルキル化供給原料中の水素対ベンゼンのモル比が約0.15:1〜約15:1、例えば、約0.4:1〜約4:1 、例えば、約0.4:1〜約0.9:1であるように調整される。
ベンゼン及び水素に加えて、希釈剤(これはヒドロアルキル化条件下で実質的に不活性である)が、ヒドロアルキル化反応に供給されてもよい。典型的には、希釈剤が炭化水素であり、これに所望のシクロアルキル芳香族生成物、この場合、シクロヘキシルベンゼンが可溶性であり、例えば、直鎖パラフィン系炭化水素、分枝鎖パラフィン系炭化水素、及び/又は環状パラフィン系炭化水素である。好適な希釈剤の例はデカン及びシクロヘキサンである。シクロヘキサンが特に魅力的な希釈剤である。何とならば、それがヒドロアルキル化反応の望ましくない副生物であるからである。
希釈剤の量は狭く特定されないが、一般に希釈剤は希釈剤対芳香族化合物の質量比が少なくとも1:100、例えば、少なくとも1:10であるが、10:1以下、典型的には4:1以下であるような量で添加される。
【0013】
そのヒドロアルキル化反応は固定床、スラリー反応器、及び/又は接触蒸留塔を含む広範囲の反応器形態で行ない得る。加えて、そのヒドロアルキル化反応は単一反応ゾーン又は複数の反応ゾーン(少なくとも水素が諸段階の反応に導入される)中で行ない得る。好適な反応温度は約100 ℃〜約400 ℃、例えば、約125 ℃〜約250 ℃であり、一方、好適な反応圧力は約100kPa〜約7,000kPa、例えば、約500kPa〜約5,000kPaである。
そのヒドロアルキル化反応に使用される触媒はMCM-22ファミリーのモレキュラーシーブと水素化金属を含む二機能性触媒である。本明細書に使用される“MCM-22 ファミリー物質”(又は“MCM-22 ファミリーの物質” もしくは“MCM-22 ファミリーのモレキュラーシーブ”)という用語は、
・普通の第一級(first degree)結晶性ビルディングブロック単位セル(その単位セルはMWWフレームワークトポロジーを有する)からつくられたモレキュラーシーブ(単位セルは原子の空間配置であり、これは三次元空間中でタイルにされた場合に結晶構造を記載する。このような結晶構造が“ゼオライトフレームワーク型のアトラス”, 第五編, 2001(その全内容が参考として含まれる)に説明されている);
・一つの単位セル厚さ、好ましくは一つのc-単位セル厚さの単層を形成する、このようなMWWフレームワークトポロジー単位セルの2次元のタイリング(tiling)である、普通の第二級(second degree)ビルディングブロックからつくられたモレキュラーシーブ;
・一つ以上の単位セル厚さの層である、普通の第二級ビルディングブロックからつくられたモレキュラーシーブ(一つより多い単位セル厚さの層が一単位セル厚さの少なくとも二つの単層を積み重ね、充填し、又は結合することからつくられる。このような第二級ビルディングブロックの積み重ねは規則的な様式、不規則な様式、ランダム様式、又はこれらのあらゆる組み合わせであってもよい);及び
・MWWフレームワークトポロジーを有する単位セルのあらゆる規則的又はランダムな2次元又は3次元の組み合わせによりつくられたモレキュラーシーブ
の一つ以上を含む。
【0014】
MCM-22ファミリーのモレキュラーシーブは一般に12.4±0.25、6.9±0.15、3.57±0.07及び3.42±0.07 Åにd-間隔最大を含むX線回折パターンを有する。その物質を特性決定するのに使用されるX線回折データは通常の技術により、入射放射線としての銅のK-α二重線及び収集システムとしてのシンチレーションカウンター及び関連コンピュータを備えたディフラクトメーターを使用して得られる。MCM-22ファミリーのモレキュラーシーブとして、MCM-22 (米国特許第4,954,325号に記載されている)、PSH-3 (米国特許第4,439,409号に記載されている)、SSZ-25 (米国特許第4,826,667号に記載されている)、ERB-1 (欧州特許第0293032号に記載されている)、ITQ-1 (米国特許第6,077,498号に記載されている), ITQ-2 (国際特許公開WO97/17290に記載されている)、MCM-36 (米国特許第5,250,277号に記載されている)、MCM-49 (米国特許第5,236,575号に記載されている)、MCM-56 (米国特許第5,362,697号に記載されている)、UZM-8 (米国特許第6,756,030号に記載されている)、及びこれらの混合物が挙げられる。モレキュラーシーブは(a) MCM-49、(b) MCM-56 並びに(c) MCM-49 及びMCM-56のイソタイプ、例えば、ITQ-2から選ばれることが好ましい。
あらゆる既知の水素化金属がヒドロアルキル化触媒中に使用し得るが、好適な金属として、パラジウム、ルテニウム、ニッケル、亜鉛、スズ、及びコバルトが挙げられ、パラジウムが特に有利である。一般に、触媒中に存在する水素化金属の量は触媒の約0.05質量%〜約10質量%、例えば、約0.1質量%〜約5質量%である。一実施態様において、MCM-22ファミリーモレキュラーシーブがアルミノシリケートである場合、存在する水素化金属の量はモレキュラーシーブ中のアルミニウム対水素化金属のモル比が約1.5から約1500まで、例えば、約75から約750まで、例えば、約100から約300までであるような量である。
【0015】
水素化金属は、例えば、含浸又はイオン交換によりMCM-22ファミリーモレキュラーシーブに直接担持されてもよい。しかしながら、更に好ましい実施態様において、水素化金属の少なくとも50質量%、例えば、少なくとも75質量%、一般に実質的に全てがモレキュラーシーブとは別だが、モレキュラーシーブと複合された無機酸化物で担持される。特に、水素化金属を無機酸化物で担持することにより、触媒の活性並びにシクロヘキシルベンゼン及びジシクロヘキシルベンゼンへのその選択率が均等触媒(この場合、水素化金属がモレキュラーシーブで担持される)と較べて増大されることがわかる。
このような複合ヒドロアルキル化触媒中に使用される無機酸化物は、それがヒドロアルキル化反応の条件下で安定かつ不活性であることを条件として狭く特定されない。好適な無機酸化物として、元素の周期律表の2族、4族、13族及び14族の酸化物、例えば、アルミナ、チタニア、及び/又はジルコニアが挙げられる。本明細書に使用される周期律表グループについてのナンバリングスキームはChemical and Engineering News, 63(5), 27 (1985)に開示されているようなものである。
水素化金属は都合良くは含浸により無機酸化物に付着され、その後に金属含有無機酸化物がモレキュラーシーブと複合される。典型的には、触媒複合材料は同時ペレット化により生成され、その場合、モレキュラーシーブ及び金属含有無機酸化物の混合物が高圧(一般に約350kPa〜約350,000kPa)で、又は同時押出(この場合、モレキュラーシーブ及び金属含有無機酸化物のスラリーが、必要により別のバインダーと一緒に、ダイに押しやられる)によりペレットに成形される。必要により、付加的な水素化金属がその後に得られる触媒複合材料に付着し得る。
好適なバインダー材料として、合成物質又は天然産物質だけでなく、無機物質、例えば、クレー、シリカ及び/又は金属酸化物が挙げられる。後者は天然産であってもよく、又はシリカ及び金属酸化物の混合物を含むゼラチン質の沈殿又はゲルの形態であってもよい。バインダーとして使用し得る天然産クレーとして、モンモリロナイトファミリー及びカオリンファミリーのクレー(これらのファミリーはサブベントナイトを含む)並びにディキシイクレー、マックナミイクレー、ジョージアクレー及びフロリダクレーとして普通知られているカオリン又はその他(その場合、主鉱物成分がハロイサイト、カオリナイト、ジッカイト、ナクライト又はアナウキサイトである)が挙げられる。このようなクレーは初期に微粉砕され、又は最初に焼成、酸処理もしくは化学変性にかけられた生の状態で使用し得る。好適な金属酸化物バインダーとして、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、シリカ-アルミナ、シリカ-マグネシア、シリカ-ジルコニア、シリカ-トリア、シリカ-ベリリア、シリカ-チタニアだけでなく、3成分組成物、例えば、シリカ-アルミナ-トリア、シリカ-アルミナ-ジルコニア、シリカ-アルミナ-マグネシア及びシリカ-マグネシア-ジルコニアが挙げられる。
【0016】
本明細書に記載された方法により活性化されたMCM-22ファミリーゼオライト触媒を使用するヒドロアルキル化反応はシクロヘキシルベンゼンに対して高度に選択的であるが、ヒドロアルキル化反応からの流出物が若干のジシクロヘキシルベンゼン副生物を不可避に含むであろう。このジシクロヘキシルベンゼンの量に応じて、(a) ジシクロヘキシルベンゼンを追加のベンゼンでトランスアルキル化し、又は(b) ジシクロヘキシルベンゼンを脱アルキル化して所望のモノアルキル化種の生成を最大にすることが望ましいかもしれない。
追加のベンゼンによるトランスアルキル化は典型的にはヒドロアルキル化反応器とは別の、トランスアルキル化反応器中で、好適なトランスアルキル化触媒、例えば、MCM-22ファミリーのモレキュラーシーブ、ゼオライトベータ、MCM-68(米国特許第6,014,018号を参照のこと)、ゼオライトY、及びモルデナイト上で行なわれる。トランスアルキル化反応は典型的には少なくとも部分液相条件(これらは好適には約100 ℃〜約300 ℃の温度、約800kPa〜約3500kPaの圧力、全供給原料につき約1hr-1〜約10hr-1の毎時の質量空間速度、及び約1:1 〜約5:1 のベンゼン/ジシクロヘキシルベンゼン質量比を含む)下で行われる。
脱アルキル化又はクラッキングはまた典型的にはヒドロアルキル化反応器とは別の反応器、例えば、反応性蒸留ユニット中で、約150 ℃〜約500 ℃の温度及び15psig〜500psig (200kPa〜3550kPa)の圧力で酸触媒、例えば、アルミノシリケート、アルミノホスフェート、シリコアルミノホスフェート、無定形シリカ-アルミナ、酸性クレー、混合金属酸化物、例えば、WOx/ZrO2、リン酸、硫酸処理ジルコニア及びこれらの混合物上で行なわれる。一般に、酸触媒として、FAU 、AEL 、AFI 、及びMWWファミリーの少なくとも一種のアルミノシリケート、アルミノホスフェート又はシリコアルミノホスフェートが挙げられる。トランスアルキル化と違って、脱アルキル化は添加されるベンゼンの不在下で行い得るが、ベンゼンを脱アルキル化反応に加えてコーク生成を減少することが望ましいかもしれない。この場合には、脱アルキル化反応への供給原料中のベンゼン対ポリ-アルキル化芳香族化合物の質量比は典型的には0〜約0.9 まで、例えば、約0.01から約0.5 までである。同様に、脱アルキル化反応は添加される水素の不在下で行ない得るが、水素が一般に脱アルキル化反応器に導入されてコーク減少を助ける。好適な水素添加速度は脱アルキル化反応器への全供給原料中の水素対ポリ-アルキル化芳香族化合物のモル比が約0.01から約10までであるような速度である。
【0017】
ヒドロアルキル化反応の別の重大な副生物はシクロヘキサンである。シクロヘキサン及び未反応のベンゼンを含むC6に富む流れがヒドロアルキル化反応流出物から蒸留により直ぐに除去し得るが、ベンゼンとシクロヘキサンの沸点の類似性のために、C6に富む流れは簡単な蒸留により更に分離し難い。しかしながら、C6に富む流れの一部又は全部がヒドロアルキル化反応器に循環されてベンゼン供給原料の一部だけでなく、上記希釈剤の一部を与え得る。
【0018】
或る場合には、C6に富む流れの一部を脱水素化反応ゾーンに供給することが望ましいかもしれず、そこでは、C6に富む流れがC6に富む流れ部分中のシクロヘキサンの少なくとも一部をベンゼンに変換するのに充分な脱水素化条件下で脱水素化触媒と接触され、これが再度ヒドロアルキル化反応に循環し得る。脱水素化触媒は一般に(a) 担体、(b) 水素化-脱水素化成分、及び(c)無機促進剤を含む。都合良くは、担体(a) がシリカ、シリケート、アルミノシリケート、ジルコニア、及びカーボンナノチューブからなる群から選ばれ、シリカを含むことが好ましい。好適な水素化-脱水素化成分(b) は元素の周期律表の6〜10族から選ばれた少なくとも一種の金属、例えば、白金、パラジウム並びにこれらの化合物及び混合物を含む。典型的には、水素化-脱水素化成分は触媒の約0.1 質量%〜約10質量%の量で存在する。好適な無機促進剤(c) は元素の周期律表の1族から選ばれた少なくとも一種の金属又はその化合物、例えば、カリウム化合物を含む。典型的には、促進剤は触媒の約0.1 質量%〜約5質量%の量で存在する。好適な脱水素化条件は約250 ℃〜約500 ℃の温度、ほぼ大気圧から約14.5psig〜500psig(100kPa〜3550kPa)までの圧力、約0.2hr-1〜50hr-1の毎時の質量空間速度、及び約0〜約20の水素対炭化水素供給原料モル比を含む。
ヒドロアルキル化反応のその他の不利な不純物はビシクロヘキシル(BCH) 及びメチルシクロペンチルベンゼン(MCPB)異性体であり、それらはそれらの沸点の類似性のために、所望のシクロヘキシルベンゼンから蒸留により分離し難い。更に、1,2-メチルシクロペンチルベンゼン(2-MCPB)、及び1,3-メチルシクロペンチルベンゼン(3-MCPB)はその後の酸化/開裂工程でフェノール及びメチルシクロペンタノン(これらは有益な生成物である)に直ぐに変換されるが、1,1-メチルシクロペンチルベンゼン(1-MCPB)は酸化工程に実質的に不活性であり、こうして、除去されないと、C12 流中に蓄積するであろう。同様に、ビシクロヘキシル(BCH) は下流で分離問題をもたらし得る。こうして、ヒドロアルキル化反応生成物の少なくとも一部が少なくとも1,1-メチルシクロペンチルベンゼン、及び/又はビシクロヘキシルを生成物から除去するための条件下で触媒で処理されてもよい。その触媒は一般に酸触媒、例えば、アルミノシリケートゼオライト、特にホージャサイトであり、その処理は約100 ℃〜約350 ℃、例えば、約130 ℃〜約250 ℃の温度で、約0.1 時間〜約3時間、例えば、約0.1 時間〜約1時間の時間にわたって行なわれる。その接触処理は1,1-メチルシクロペンチルベンゼンを一層直ぐに酸化できる1,2-メチルシクロペンチルベンゼン(2-MCPB)、及び1,3-メチルシクロペンチルベンゼン(3-MCPB)に異性化すると考えられる。そのビシクロヘキシルは下記の反応に従ってヒドロアルキル化反応生成物中に存在するベンゼンと反応してシクロヘキサンそして多くの所望のシクロヘキシルベンゼンを生成すると考えられる。
【0019】
【化3】
【0020】
その接触処理はヒドロアルキル化反応の直接の生成物について、又はC6及び/又はそれよりも重質の留分を分離するためのヒドロアルキル化反応生成物の蒸留後に行ない得る。
ヒドロアルキル化反応及び先に説明された不純物を除去するためのあらゆる下流の反応からのシクロヘキシルベンゼン生成物が一種以上の反応流出物から分離され、以下に更に詳しく記載される酸化反応に供給される。
シクロヘキシルベンゼン酸化
シクロヘキシルベンゼンをフェノール及びシクロヘキサノンに変換するために、シクロヘキシルベンゼンが最初に相当するヒドロペルオキシドに酸化される。これはシクロヘキシルベンゼンを空気及び空気の種々の誘導体の如き酸素含有ガスと接触させることにより達成される。例えば、圧縮され、粒状物を除去するために濾過された空気、圧縮され、水を凝縮し、除去するために冷却された空気、又は空気の膜濃縮、空気の低温分離もしくはその他の通常の手段により空気中の自然の約21モル%より上に酸素を濃縮された空気を使用することが可能である。
【0021】
その酸化は触媒の存在下で行なわれる。好適な酸化触媒として、米国特許第6,720,462号(これがこの目的のために参考として本明細書に含まれる)に記載されたN-ヒドロキシ置換環状イミドが挙げられる。例えば、N-ヒドロキシフタルイミド(NHPI)、4-アミノ-N-ヒドロキシフタルイミド、3-アミノ-N-ヒドロキシフタルイミド、テトラブロモ-N-ヒドロキシフタルイミド、テトラクロロ-N-ヒドロキシフタルイミド、N-ヒドロキシヘチミド、N-ヒドロキシヒミミド、N-ヒドロキシトリメリチミド、N-ヒドロキシベンゼン-1,2,4-トリカルボキシミド、N,N’-ジヒドロキシ(ピロメリットジイミド)、N,N’-ジヒドロキシ(ベンゾフェノン-3,3’,4,4’-テトラカルボキシルジイミド)、N-ヒドロキシマレイミド、ピリジン-2,3-ジカルボキシミド、N-ヒドロキシスクシンイミド、N-ヒドロキシ(酒石酸イミド)、N-ヒドロキシ-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシミド、エキソ-N-ヒドロキシ-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシミド、N-ヒドロキシ-シス-シクロヘキサン-1,2-ジカルボキシミド、N-ヒドロキシ-シス-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボキシミド、N-ヒドロキシナフタルイミドナトリウム塩又はN-ヒドロキシ-o-ベンゼンジスルホンイミドが使用し得る。触媒がN-ヒドロキシフタルイミドであることが好ましい。別の好適な触媒はN,N’,N”-トリヒドロキシイソシアヌル酸である。
これらの酸化触媒は単独で、又は遊離基開始剤と連係して使用でき、液相、均一触媒として使用でき、又は不均一触媒を用意するために固体担体で担持し得る。典型的には、N-ヒドロキシ置換環状イミド又はN,N’,N”-トリヒドロキシイソシアヌル酸がシクロヘキシルベンゼンの0.0001質量%〜15質量%、例えば、0.001質量%〜5質量%の量で使用される。
酸化工程に適した条件として、約70℃〜約200℃、例えば、約90℃〜約130℃の温度、及び約50kPa〜10,000kPaの圧力が挙げられる。塩基性緩衝剤が酸化中に生成し得る酸性副生物と反応するために添加されてもよい。加えて、水相が導入されてもよい。その反応はバッチ式又は連続流式で起こり得る。
【0022】
その酸化反応に使用される反応器はシクロヘキシルベンゼンへの酸素の導入を可能にするあらゆる型の反応器であってもよく、更に酸素とシクロヘキシルベンゼンの接触を更に効果的に与えて酸化反応を行ない得る。例えば、酸化反応器は酸素含有流のためのディストリビューター入口を備えた簡単な、大きく開いた容器を含んでもよい。種々の実施態様において、酸化反応器がその内容物の一部を好適な冷却装置を通って取り出し、ポンプ輸送し、冷却された部分を反応器に戻すための手段を有してもよく、それにより酸化反応で生じられた熱を処理する。また、例えば、冷却水による、間接冷却を与える冷却コイルが、生じられた熱を除去するために酸化反応器内で運転されてもよい。その他の実施態様において、酸化反応器が直列の複数の反応器を含んでもよく、夫々が酸化反応の一部を行ない、必要によりシクロヘキシルベンゼンもしくは酸素、又はその両方の持続的な転化率範囲で酸化反応を夫々中で増進するのに選ばれた異なる条件で運転してもよい。酸化反応器はバッチ式、半バッチ式、又は連続流式で運転されてもよい。
典型的には、シクロヘキシルベンゼン酸化反応の生成物は酸化反応流出物の合計質量を基準として少なくとも5質量%、例えば、少なくとも10質量%、例えば、少なくとも15質量%、又は少なくとも20質量%のシクロヘキシル-1-フェニル-1-ヒドロペルオキシドを含む。一般に、酸化反応流出物は酸化反応流出物の合計質量を基準として80質量%以下、もしくは60質量%以下、又は40質量%以下、或いは30質量%以下、又は25質量%以下のシクロヘキシル-1-フェニル-1-ヒドロペルオキシドを含む。酸化反応流出物は更にイミド触媒及び未反応のシクロヘキシルベンゼンを含んでもよい。例えば、酸化反応流出物は酸化反応流出物の合計質量を基準として少なくとも50質量%、もしくは少なくとも60質量%、又は少なくとも65質量%、或いは少なくとも70質量%、もしくは80質量%、又は少なくとも90質量%の量の未反応のシクロヘキシルベンゼンを含んでもよい。
【0023】
次いで酸化反応流出物の少なくとも一部が直接に、又は先の分離もしくは処理を受けた後に、開裂反応にかけられる。例えば、酸化反応流出物の全部又は一部が高真空蒸留にかけられて未反応のシクロヘキシルベンゼンに富む生成物を生成し、所望のシクロヘキシル-1-フェニル-1-ヒドロペルオキシドが濃縮される残渣を残してもよく、これが開裂反応にかけられる。しかしながら、一般に、シクロヘキシル-1-フェニル-1-ヒドロペルオキシドのこのような濃縮は必要ではなく、また好ましくない。更に、又は別に、酸化流出物の全部もしくは一部、又は真空蒸留残渣の全部もしくは一部が冷却されて未反応のイミド酸化触媒の結晶化を生じてもよく、次いでこれが濾過又は結晶化を行なうのに使用された熱交換機表面からこすり落とすことにより分離し得る。イミド酸化触媒が減少され、又は除かれた得られる酸化組成物の少なくとも一部が開裂反応にかけられてもよい。
別の例として、酸化流出物の全部又は一部が水洗浄次いで吸着剤、例えば、3Aモレキュラーシーブ中の通過にかけられて、水及びその他の吸着性化合物を分離し、減少された水又はイミド含量を有する酸化組成物を得てもよく、これが開裂反応にかけられてもよい。同様に、酸化流出物の全部又は一部が化学的吸着又は物理的吸着、例えば、炭酸ナトリウムの床上の通過を受けてイミド酸化触媒(例えば、NHPI)又はその他の吸着性成分を除去し、酸化触媒又はその他の吸着性成分含量の減少された酸化組成物を得てもよく、これが開裂反応にかけられてもよい。別の可能な分離は酸化流出物の全部又は一部を塩基を含む液体、例えば、アルカリ金属炭酸塩又は炭酸水素塩の水溶液と接触させて、イミド酸化触媒の塩を含む水相、及びイミド酸化触媒が減少された有機相を生成することを伴なう。塩基性物質処理による分離の例が国際特許出願WO 2009/025939(その全内容が参考として本明細書に含まれる)に開示されている。
別の実施態様において、酸化流出物の全部又は一部がFAU 型のアルミノシリケートゼオライトと接触されてゼオライトへの吸着により流出物中の未反応のイミド触媒を減少してもよい。酸化触媒を除去するのに使用されるFAU 型ゼオライトは開裂反応に使用されるFAU 型ゼオライトと同じであってもよく、即ち、24.50Å未満、もしくは24.45Å未満、又は24.40Å未満、或いは24.35Å未満、例えば、24.30Å未満の単位セルサイズを有し、酸化触媒を除去するための接触が開裂反応の前又は同時に行ない得る。吸着されたイミド触媒は極性溶媒、例えば、アセトン又はシクロヘキサノンで洗浄することによりFAU 型ゼオライトから脱着でき、溶媒をフラッシすることにより、かつ/又は再結晶により回収し得る。次いで、回収されたイミドが酸化反応に循環し得る。
【0024】
ヒドロペルオキシド開裂
フェノール及びシクロヘキサノンへのシクロヘキシルベンゼンの変換における別の工程は酸化工程で生成されたシクロヘキシル-1-フェニル-1-ヒドロペルオキシドの酸触媒開裂を伴なう。
本開裂反応に使用される酸触媒は24.50オングストローム(“Å”)未満、例えば、24.45Å以下、もしくは24.40Å以下、又は24.35Å以下、或いは24.30Å以下、又は更には24.25Å以下の単位セルサイズを有するFAU 型ゼオライトを含む。単位セルサイズはASTM D-3942 に記載されたX線回折により測定される。本明細書に使用される“FAU 型ゼオライト”又は“FAU 型のゼオライト”はAtlas of Zeolite Framework Types, Ch. Baerlocherら(第6編、2007年)に記載されたFAU 型構造を有するゼオライトを意味する。そのゼオライトは未結合形態で使用でき、又は全触媒(ゼオライト+バインダー)がゼオライトの約5質量%から約95%を構成するようにバインダー、例えば、シリカ又はアルミナと合わされる。
種々の実施態様において、開裂触媒が0.3cc/gより大きく、もしくは0.4cc/gより大きく、又は0.5cc/gより大きい孔体積(窒素(N2)吸着により測定される)を有する。種々の実施態様において、開裂触媒が触媒の質量を基準として、6質量%未満、もしくは3質量%未満、又は1質量%未満、或いは0.5質量%未満の3族〜12族の金属(ランタニド系列を含む)を含む。
【0025】
FAU 型ゼオライト触媒を使用する開裂反応は30%より大きく、もしくは50%より大きく、又は70%より大きく、或いは90%より大きく、もしくは95%より大きく、又は99%より大きく、或いは更には100%のシクロヘキシルベンゼンヒドロペルオキシド転化率を有し得る。フェノール選択率は60%より大きく、もしくは70%より大きく、又は90%より大きく、或いは95%より大きいかもしれない。シクロヘキサノン選択率は27%より大きく、もしくは50%より大きく、又は70%より大きく、或いは80%より大きく、もしくは85%より大きく、又は90%より大きいかもしれない。本明細書に使用される“シクロヘキシルベンゼンヒドロペルオキシド転化率”はいずれかの生成物に変換されたシクロヘキシルベンゼンヒドロペルオキシドの量を意味する。“フェノール選択率”は変換されたシクロヘキシルベンゼンヒドロペルオキシドの量を基準とする理論的フェノール選択率に対するものである。“シクロヘキサノン選択率”は変換されたシクロヘキシルベンゼンヒドロペルオキシドの量を基準とする理論的シクロヘキサノン選択率に対するものである。
種々の実施態様において、その開裂反応が24.50Å以下の単位セルサイズを有するFAU型ゼオライト触媒を使用して行なわれ、その反応が30%より大きいシクロヘキシルベンゼンヒドロペルオキシド転化率、60%より大きいフェノール選択率、及び27%より大きいシクロヘキサノン選択率を有する。
種々の実施態様において、その開裂反応が24.35Å以下の単位セルサイズを有するFAU型ゼオライト触媒を使用して行なわれ、その反応が98%以上のシクロヘキシルベンゼンヒドロペルオキシド転化率、93%以上のフェノール選択率、及び87%以上のシクロヘキサノン選択率を有する。
一般に、開裂反応が約20℃〜約200 ℃、例えば、約40℃〜約120 ℃の温度及び約100kPa(ゲージ圧)〜約2000kPa(ゲージ圧)、例えば、約100kPa(ゲージ圧)〜約1000kPa(ゲージ圧)の圧力を含む条件下で行なわれ、その結果、開裂反応混合物が開裂反応中に完全に、又は主として液相中にある。毎時の質量空間速度が全供給原料について約1hr-1〜約1000hr-1、好ましくは1hr-1〜約500hr-1、更に好ましくは約1hr-1〜300hr-1であってもよい。
【0026】
その開裂反応は種々の反応器配置で単一反応器又は複数の反応器中で行ない得る。例えば、その反応が直列に連結された少なくとも第一反応器及び第二反応器中で行なわれてもよく、第一反応器が約20℃〜約120 ℃の温度及び約100kPa(ゲージ圧)〜約500kPa(ゲージ圧)の圧力で運転され、また第二反応器が約40℃〜約180 ℃の温度及び約100kPa(ゲージ圧)〜約1000kPa(ゲージ圧)の圧力で運転される。第一反応器及び第二反応器が同じであってもよく、又は異なっていてもよい。
一実施態様において、開裂反応がスラリー反応器、例えば、撹拌タンク、ポンプ付近でループ又はその他の好適な配置で行なわれる。一実施態様において、開裂反応の少なくとも一部が連続撹拌タンク反応器(CSTR)中で行なわれ、触媒が開裂反応媒体中でスラリーにされる。典型的には、触媒が開裂反応媒体の約50wppm〜約20,000wppmの量で添加される。この配置の利点として、容易な熱処理及び触媒が失活するにつれての転化率を維持するための触媒の添加/取り出しの融通性が挙げられる。ペルオキシド開裂がイミド触媒を含む酸化生成物で行なわれる場合、後者が触媒に吸着して、その性能を抑制するであろう。触媒に吸着されたイミド触媒が除去でき、又はイミド負荷触媒を開裂反応器から回収し、この使用済み触媒を極性溶媒、例えば、アセトン又はシクロヘキサノンで洗浄してその開裂活性及びイミド吸着能を回復すること(触媒の復活)により回収し得る。失活触媒はまたコークを空気中で燃焼することにより再生し得る。触媒がまたイミド触媒の回収に使用される場合には、この空気再生が吸着された触媒を回収した後に有利に行なわれる。スラリー開裂方法では、触媒が種々のスケジュールで再生し得る。有利には、触媒が開裂反応器から連続的に取り出され、外部循環ループで再生され、次いで開裂反応器に戻されるであろう。このような運転レジメ下で、触媒活性の定常状態が再生中に循環触媒の一部を新しい触媒と連続的に交換することにより維持し得る。
【0027】
FAU 触媒はまた最初にイミド触媒を開裂供給原料流から除去して、又はそうしないで固定床プラグ流反応器中で使用し得る。イミド触媒が除去されない場合、FAU 床がそれを吸着し、その回収及び酸化方法への循環を可能にする。このような方法設計では、二つ以上の平行な開裂反応器トレインがペルオキシド供給原料の中断されない加工を可能にするために配置し得る。こうして、FAU 触媒がイミド触媒で飽和されてそれを一つの反応器トレインで失活させるにつれて、開裂供給原料が別の反応器(これは新しい触媒又は再生触媒を含む)に切り換えられる。イミド飽和触媒は、例えば、極性溶媒、例えば、アセトン又はシクロヘキサノンでフラッシすることによりオフラインで復活し得る。回収されたイミド触媒が酸化に再使用し得る。次いで触媒のコークがまた空気中で燃焼することにより除去でき、その後に再生反応器トレインが開裂操作に戻されて今再生のためにオフラインにされ得る先の運転反応器トレインを置換する。次いで一つ以上の反応器トレインが許容レベルまで最早再生し得なくなるまでこのサイクルが繰り返し得る。このような場合には、廃棄触媒が新しい仕込みで単に置換されて、その後にそのトレインを開裂操作に戻すことができる。
開裂反応混合物は極性溶媒、例えば、6個未満の炭素を含むアルコール、例えば、メタノール、エタノール、イソ-プロパノール、及び/又はエチレングリコール;ニトリル、例えば、アセトニトリル及び/又はプロピオニトリル;ニトロメタン;及び6個以下の炭素を含むケトン、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、2-又は3-ペンタノン、シクロヘキサノン、及びメチルシクロペンタノンを含んでもよい。好ましい極性溶媒は冷却後に開裂生成物から循環されたフェノール及び/又はシクロヘキサノンである。一般に、極性溶媒は、混合物中の極性溶媒対シクロヘキシルベンゼンヒドロペルオキシドの質量比が約1:100 〜約100:1、例えば、約1:20〜約10:1の範囲であるように開裂反応混合物に添加され、その混合物が約10質量%〜約40質量%のシクロヘキシルベンゼンヒドロペルオキシドを含む。極性溶媒の添加は開裂反応中のシクロヘキシルベンゼンヒドロペルオキシドの転化の程度を増大するだけでなく、フェノール及びシクロヘキサノンへの変換の選択率を増大することがわかる。そのメカニズムは充分に理解されていないが、極性溶媒が望ましくない生成物、例えば、ヘキサノフェノン及びフェシクロヘキサノールへのシクロヘキシルベンゼンヒドロペルオキシドの遊離基誘導変換を減少すると考えられる。
種々の実施態様において、開裂反応混合物が開裂反応混合物の合計質量を基準として、少なくとも50質量%、もしくは少なくとも60質量%、又は少なくとも65質量%、或いは少なくとも70質量%、もしくは少なくとも80質量%、又は少なくとも90質量%の量のシクロヘキシルベンゼンを含む。
開裂反応の主要生成物はフェノール及びシクロヘキサノンであり、これらの夫々が開裂反応生成物の一般に約40質量%〜約60質量%、又は約45質量%〜約55質量%を構成し、このような質量%は未反応のシクロヘキシルベンゼン及び酸触媒を除いた開裂反応生成物の質量を基準とする。
【0028】
シクロヘキサノン及びフェノールの使用
本明細書に開示された方法により製造されたシクロヘキサノンは、例えば、工業用溶媒、酸化反応における活性剤として、またアジピン酸、シクロヘキサノン樹脂、シクロヘキサノンオキシム、カプロラクタム及びナイロン、例えば、ナイロン6及びナイロン6,6 の製造に使用し得る。
本明細書に開示された方法により製造されたフェノールは、例えば、フェノール樹脂、ビスフェノールA、ε-カプロラクタム、アジピン酸、及び/又は可塑剤を製造するのに使用し得る。
今、本発明が下記の非限定実施例を参照して更に特別に記載される。
【実施例】
【0029】
実施例1:シクロヘキシルベンゼンの酸化
631gの量のシクロヘキシルベンゼン(TCI アメリカ社)を1リットルの4口ガラスフラスコ(これにN-ヒドロキシフタルイミド(NHPI) (TCI アメリカ社)0.6702gを添加した)に添加した。次いでフラスコに還流冷却器、メカニカルスターラー、ガススパージャー、及び温度計を取り付けた。250cc/分の空気流をガススパージャーによりその液体に吹き込み、内容物を6時間にわたって撹拌(560rpm)しながら110 ℃で加熱した。フラスコを室温に冷却し、酸化生成物を回収した。GC分析は生成物が17.9質量%のシクロヘキシルベンゼンヒドロペルオキシド(CHBHP) を含むことを示した。
実施例2:NHPIの除去
300gの量の実施例1からの酸化生成物を500mLのガラスフラスコに入れ、無水炭酸ナトリウム(顆粒形態、アルドリッチ)30gと混合した。その混合物を一夜撹拌し、固体がレンガ色-赤色の色になった。次いで固体を濾過により除去し、液体を無水硫酸マグネシウムの床により更に濾過した。透明な、明黄色の液体を得た。GC分析は生成物が17.5質量%のCHBHPを含むことを明らかにした。
実施例3:硫酸触媒を使用するCHBHP(15質量%)のバッチ式開裂
30g の量のCHBHP/CHBの混合物(約15/85の質量比)及びドデカン(質量バランスのため)を循環温度浴を備えた50mLのジャケット付きガラス反応器に仕込んだ。浴を所望の温度にセットし、反応器内容物を平衡にした。温度が一旦安定化すると、GCサンプルをその熱供給原料について採取した。次いで所望の量の濃硫酸(96%、3回蒸留、アルドリッチ)をマイクロシリンジにより添加した。反応器内の温度上昇により示されるような、短い反応発熱後に、1mLのアリコートを或る時間間隔で採取し、化学量論量のジヘキシルアミンで中和した。生成したサンプルをGCにより分析し、結果を表1に要約する。
【0030】
表1
【0031】
実施例4:硫酸触媒を使用するCHBHP(3質量%)のバッチ式開裂
CHBHP/CHB/フェノール/シクロヘキサノンの混合物(約3/81/8/8の質量比)30g 及びドデカン(質量バランスのため)を用いて方法実施例3を繰り返した。結果を表2に要約する。
実施例5〜11:固体酸触媒を使用するCHBHP(3質量%)のバッチ式開裂
一連の実験の夫々において、CHBHP/CHB/フェノール/シクロヘキサノンの混合物(約3/81/8/8の質量比)30g 及びドデカン(質量バランスのため)を循環温度浴を備えた50mLのジャケット付きガラス反応器に仕込んだ。浴を60℃にセットし、反応器内容物を平衡にした。温度が一旦安定化すると、GCサンプルを熱供給原料について採取した。次いで所望の量の異なる固体酸触媒(表2を参照のこと)を夫々の混合物に添加した。反応器内の温度上昇により示されるような、短い反応発熱後に、1mLのアリコートを或る時間間隔で採取し、固体を濾過した。生成されたサンプルをGCにより分析し、結果を表2に要約する。
【0032】
表2
【0033】
実施例12:固体酸触媒としてFAU を使用するCHBHP(3質量%)のバッチ式開裂
固体酸触媒として、異なる単位セルサイズを有する種々の市販のFAU 型アルミノシリケートゼオライトを使用した以外は、実施例5〜11の方法を繰り返した。夫々の場合の触媒使用量は2質量%であり、結果を表3に要約する。
【0034】
表3
【0035】
CBV として表示されたゼオライトはゼオリスト・インターナショナルから入手でき、一方、HSZ として表示されたゼオライトはトーソー・コーポレーションから入手し得る。
実施例13:硫酸触媒を使用するCHBHP(15質量%)の半バッチ式開裂
10g の量のCHB/フェノール/シクロヘキサノン(80/5/5 の質量比)及びドデカン(内部標準物質、10質量%)の混合物を循環温度浴を備えた50mLのジャケット付きガラス反応器に仕込んだ。浴を所望の温度にセットし、反応器内容物を平衡にした。次いで所望の量の濃硫酸(96%、3回蒸留、アルドリッチ)をマイクロシリンジにより添加した。その混合物を絶えず撹拌し、シリンジポンプを使用してCHBHP 供給原料10g を反応器に送出した。CHBHP 添加の終了時に、1mLのアリコートを採取し、化学量論量のジヘキシルアミンで中和した。生成したサンプルをGCにより分析し、結果を表4に要約する。
【0036】
表4
【0037】
実施例14:FAU 触媒を使用するCHBHP(15質量%)の半バッチ式開裂
10g の量のCHB/フェノール/シクロヘキサノン(80/5/5 の質量比)及びドデカン(内部標準物質、10質量%)の混合物を循環温度浴を備えた50mLのジャケット付きガラス反応器に仕込んだ。浴を60℃にセットし、反応器内容物を平衡にした。次いで所望の量のFAU 型固体酸触媒を添加した。その混合物を絶えず撹拌し、シリンジポンプを使用してCHBHP 供給原料10g を反応器に送出した。CHBHP 添加の終了時に、1mLのアリコートを採取し、固体を濾過した。生成したサンプルをGCにより分析し、結果を表5に要約する。“触媒使用量”は単位量の供給原料混合物当りの触媒の量を意味する。
【0038】
表5
【0039】
実施例15:固定床運転中にホージャサイトを使用するCHBHP の開裂
実施例2からのCHBHP をCHB 及びドデカン(内部標準物質)で希釈して約5質量%のCHBHP を含む供給原料を生成した。ホージャサイト触媒をプレスし、20〜40メッシュのサイズにした。1gの量の触媒粒子を石英チップで5ccの体積に希釈し、3/8”(1cm)の直径の管状反応器の中央ゾーンに装填した。触媒を最初に200 ℃で流れているN2で乾燥させ、次いで温度を60℃に冷却した。CHBHP 供給原料をISCOインダストリィズにより供給されたポンプにより100psig(790kPa)の液体圧力で反応器に供給した。開裂生成物を集め、GCにより分析した。結果を表6に要約する。
実施例16:固定床運転中にホージャサイトを使用するCHBHP の開裂
実施例2からのCHBHP をCHB 、フェノール、シクロヘキサノン、及びドデカン(内部標準物質)で希釈して65/9/9/10/6の質量%比のCHB/フェノール/シクロヘキサノン/ドデカン/CHBHPを含む供給原料を生成した。ホージャサイト触媒をプレスし、60〜80メッシュのサイズにした。0.5gの量の触媒粒子を石英チップで5ccの体積に希釈し、3/8”(1cm)の直径の管状反応器の中央ゾーンに装填した。触媒を最初に200 ℃で流れているN2で乾燥させ、次いで温度を50℃に冷却した。CHBHP 供給原料をISCOインダストリィズにより供給されたポンプにより100psig(790kPa)の液体圧力で反応器に供給した。開裂生成物を集め、GCにより分析した。結果を表6に要約する。
実施例17:固定床運転中にホージャサイトを使用するCHBHP の開裂
実施例2からのCHBHP をCHB 、フェノール、シクロヘキサノン、及びドデカン(内部標準物質)で希釈して65/10/10/10/3の質量%比のCHB/フェノール/シクロヘキサノン/ドデカン/CHBHPを含む供給原料を生成した。ホージャサイト触媒をプレスし、60〜80メッシュのサイズにした。0.5gの量の触媒粒子を石英チップで5ccの体積に希釈し、3/8”(1cm)の直径の管状反応器の中央ゾーンに装填した。触媒を最初に200 ℃で流れているN2で乾燥させ、次いで温度を50℃に冷却した。CHBHP 供給原料をISCOインダストリィズにより供給されたポンプにより100psig(790kPa)の液体圧力で反応器に供給した。開裂生成物を集め、GCにより分析した。結果を表6に要約する。
【0040】
表6
【0041】
本発明が特別な実施態様を参照して記載され、説明されたが、当業者は本発明が本明細書に必ずしも説明されていない変化に適応されることを認めるであろう。この理由のために、本発明の真の範囲を決める目的のために特許請求の範囲のみが参照されるべきである。