特許第5793873号(P5793873)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5793873
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/01 20060101AFI20150928BHJP
   B60C 11/00 20060101ALI20150928BHJP
   B60C 11/13 20060101ALI20150928BHJP
【FI】
   B60C11/01 B
   B60C11/00 Z
   B60C11/13 B
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-17037(P2011-17037)
(22)【出願日】2011年1月28日
(65)【公開番号】特開2012-158195(P2012-158195A)
(43)【公開日】2012年8月23日
【審査請求日】2014年1月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】石坂 貴秀
【審査官】 平野 貴也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−283109(JP,A)
【文献】 特開平06−183209(JP,A)
【文献】 特開2009−179148(JP,A)
【文献】 特開平02−114005(JP,A)
【文献】 特開平06−247108(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/01
B60C 11/00
B60C 11/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ周方向に延在する複数の周方向主溝と、これらの周方向主溝に区画されて成る複数の陸部と、タイヤ幅方向の最も外側にある前記陸部(以下、ショルダー陸部という。)の踏面側かつタイヤ幅方向外側の縁部に配置されてタイヤ周方向に延在する細溝と、前記細溝により区画されて成る細リブとを備える空気入りタイヤであって、
前記細リブが、前記ショルダー陸部のプロファイルラインに対してタイヤ径方向内側にオフセットした踏面を有するオフセット部と、前記オフセット部に対してタイヤ径方向外側に突出すると共に前記ショルダー陸部のプロファイルラインに対して略面一となる頂部を有する凸部とを備え、
複数の前記オフセット部と複数の前記凸部とタイヤ周方向に配列され、
タイヤ子午線方向の断面視にて、前記オフセット部の踏面と前記凸部の頂部とが、前記シルダー陸部のプロファイルラインに対して平行であり、
タイヤ軸方向の平面視にて、前記オフセット部の踏面が、前記ショルダー陸部の踏面に平行にタイヤ周方向に延びる平面形状を有すると共に、前記凸部が、円弧形状ないしは正弦波形状を有して前記オフセット部の踏面に滑らかに接続し、且つ、
タイヤ接地時における前記凸部の接地長さの総和Aとタイヤ接地長Lとが0.30≦A/L≦0.70の範囲内にあることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記オフセット部のオフセット量gが1.0[mm]≦g≦3.0[mm]の範囲内にある請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記凸部の頂部と前記ショルダー陸部のプロファイルとの距離δが−0.5[mm]≦δ≦0.5[mm]の範囲内にある請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記細溝の溝幅dが0.3[mm]≦d≦4.0[mm]の範囲内にあり、且つ、前記細溝の溝深さhが前記ショルダー陸部を区画する前記周方向主溝の溝深さHに対して0.80≦h/H≦1.10の範囲内にある請求項1〜のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、空気入りタイヤに関し、さらに詳しくは、ショルダーリブの偏摩耗を抑制できる空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
重荷重用空気入りラジアルタイヤなどに適用される空気入りタイヤは、ショルダーリブの偏摩耗(例えば、ステップ摩耗)を抑制すべき課題を有している。このため、従来の空気入りタイヤは、ショルダーリブのタイヤ幅方向外側の縁部に沿ってタイヤ周方向に延在する細溝と、この細溝により区画されて成る細リブとを備える。この細リブは、いわゆる摩耗犠牲リブであり、タイヤ転動時にて積極的に摩耗することにより、ショルダーリブの偏摩耗を抑制できる。かかる構造を採用する従来の空気入りタイヤとして、特許文献1に記載される技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2002−512575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明は、ショルダーリブの偏摩耗を抑制できる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、この発明にかかる空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在する複数の周方向主溝と、これらの周方向主溝に区画されて成る複数の陸部と、タイヤ幅方向の最も外側にある前記陸部(以下、ショルダー陸部という。)の踏面側かつタイヤ幅方向外側の縁部に配置されてタイヤ周方向に延在する細溝と、前記細溝により区画されて成る細リブとを備える空気入りタイヤであって、前記細リブが、前記ショルダー陸部のプロファイルラインに対してタイヤ径方向内側にオフセットした踏面を有するオフセット部と、前記オフセット部に対してタイヤ径方向外側に突出すると共に前記ショルダー陸部のプロファイルラインに対して略面一となる頂部を有する凸部とを備え、複数の前記オフセット部と複数の前記凸部とタイヤ周方向に配列され、タイヤ子午線方向の断面視にて、前記オフセット部の踏面と前記凸部の頂部とが、前記シルダー陸部のプロファイルラインに対して平行であり、タイヤ軸方向の平面視にて、前記オフセット部の踏面が、前記ショルダー陸部の踏面に平行にタイヤ周方向に延びる平面形状を有すると共に、前記凸部が、円弧形状ないしは正弦波形状を有して前記オフセット部の踏面に滑らかに接続し、且つ、タイヤ接地時における前記凸部の接地長さの総和Aとタイヤ接地長Lとが0.30≦A/L≦0.70の範囲内にあることを特徴とする。
【0006】
また、この発明にかかる空気入りタイヤは、前記オフセット部のオフセット量gが1.0[mm]≦g≦3.0[mm]の範囲内にあることが好ましい。
【0007】
また、この発明にかかる空気入りタイヤは、前記凸部の頂部と前記ショルダー陸部のプロファイルとの距離δが−0.5[mm]≦δ≦0.5[mm]の範囲内にあることが好ましい。
【0009】
また、この発明にかかる空気入りタイヤは、前記細溝の溝幅dが0.3[mm]≦d≦4.0[mm]の範囲内にあり、且つ、前記細溝の溝深さhが前記ショルダー陸部を区画する前記周方向主溝の溝深さHに対して0.80≦h/H≦1.10の範囲内にあることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
この発明にかかる空気入りタイヤでは、細リブが接地用の凸部を有するので、この凸部が摩耗犠牲リブとして機能することより、タイヤ新品時から摩耗初期におけるショルダー陸部の偏摩耗が抑制される。これにより、タイヤの耐偏摩耗性能および耐久性能が向上する利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤを示すタイヤ子午線方向の断面図である。
図2図2は、図1に記載した空気入りタイヤの細リブを示す拡大斜視図である。
図3図3は、図1に記載した空気入りタイヤの細リブを示すタイヤ子午線方向の断面図である。
図4図4は、図1に記載した空気入りタイヤの細リブを示すトレッド平面図である。
図5図5は、図1に記載した空気入りタイヤの細リブ作用を示す説明図である。
図6図6は、図1に記載した空気入りタイヤの変形例を示す説明図である。
図7図7は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤの性能試験の結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施の形態の構成要素には、発明の同一性を維持しつつ置換可能かつ置換自明なものが含まれる。また、この実施の形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
【0013】
[空気入りタイヤ]
図1は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤを示すタイヤ子午線方向の断面図である。同図は、空気入りタイヤの一例として、トラック、バスなどの重荷重車両に装着される重荷重用空気入りラジアルタイヤを示している。
【0014】
空気入りタイヤ1は、ビードコア11と、ビードフィラー12と、カーカス層13と、ベルト層14と、トレッドゴム15と、サイドウォールゴム16とを備える(図1参照)。ビードコア11は、環状構造を有し、左右一対を一組として構成される。ビードフィラー12は、アッパーフィラー122およびローアーフィラー121から成り、ビードコア11のタイヤ径方向外周に配置されてタイヤのビード部を補強する。カーカス層13は、単層構造を有し、左右のビードコア11、11間にトロイダル状に架け渡されてタイヤの骨格を構成する。また、カーカス層13の両端部は、ビードフィラー12を包み込むようにタイヤ幅方向外側に折り返されて係止される。ベルト層14は、積層された複数のベルトプライ141〜143から成り、カーカス層13のタイヤ径方向外周に配置される。これらのベルトプライ141〜143は、スチール繊維材あるいは有機繊維材から成る複数のベルトコードを圧延加工して構成される。トレッドゴム15は、カーカス層13およびベルト層14のタイヤ径方向外周に配置されてタイヤのトレッド部を構成する。サイドウォールゴム16は、左右一対を一組として構成され、カーカス層13のタイヤ幅方向外側に配置されてタイヤのサイドウォール部を構成する。
【0015】
また、空気入りタイヤ1は、タイヤ周方向に延在する複数の周方向主溝21、22と、これらの周方向主溝21、22に区画されて成る複数の陸部31〜33とをトレッド部に備える。例えば、この実施の形態では、空気入りタイヤ1が4本の周方向主溝21、22と、5本の陸部31〜33とを備え、これらにより、リブ状の陸部31〜33を基調とした左右対称のトレッドパターンが形成されている。ここでは、タイヤ赤道線CL上にある陸部31をセンター陸部と呼び、このセンター陸部に隣り合う左右の陸部32、32をセカンド陸部と呼び、タイヤ幅方向の最も外側にある左右の陸部33、33をショルダー陸部と呼ぶ。
【0016】
[ショルダー陸部の細リブ]
図2は、図1に記載した空気入りタイヤの細リブを示す拡大斜視図である。図3は、図1に記載した空気入りタイヤの細リブを示すタイヤ子午線方向の断面図である。図4は、図1に記載した空気入りタイヤの細リブを示すトレッド平面図である。図5は、図1に記載した空気入りタイヤの細リブの作用を示す説明図である。図6は、図1に記載した空気入りタイヤの変形例を示す説明図である。これらの図において、図2図4および図6は、タイヤ新品時の様子を示しており、図5は、摩耗中期の様子を示している。
【0017】
この空気入りタイヤ1は、細溝4と、この細溝4により区画されて成る細リブ5とをショルダー陸部33に備える(図2参照)。
【0018】
細溝4は、ショルダー陸部33の踏面側かつタイヤ幅方向外側の縁部に配置されて、タイヤ周方向に延在する(図2参照)。このとき、細溝4の溝幅dが0.3[mm]≦d≦4.0[mm]の範囲内に設定される(図3参照)。また、細溝4の溝深さhがショルダー陸部33を区画する周方向主溝22の溝深さHに対して0.80≦h/H≦1.10の範囲内に設定される。これにより、細リブ5の形状が適正化される。また、この実施の形態では、タイヤ子午線方向の断面視にて、細溝4が溝深さ方向に向かってタイヤ幅方向外側に傾斜することにより、ショルダー陸部33がタイヤ径方向内側に拡幅した台形状断面を有している。これにより、ショルダー陸部33の剛性が確保されている。なお、周方向主溝22の溝深さHおよび細溝4の溝深さhは、ショルダー陸部33の踏面から溝底までの距離である。
【0019】
細リブ5は、いわゆる摩耗犠牲リブであり、タイヤ転動時にて積極的に摩耗することによりショルダー陸部33の偏摩耗(例えば、ステップ摩耗)を抑制する。この細リブ5は、ショルダー陸部33に対して細溝4により区画され、ショルダー陸部33のタイヤ幅方向外側の縁部に沿ってタイヤ周方向に延在する(図2参照)。また、細リブ5の幅W2と、ショルダー陸部33の踏面の幅W1とが0.10≦W2/W1≦0.40の関係を有する。これにより、細リブ5の摩耗犠牲リブとしての機能が確保される。
【0020】
[細リブのオフセット形状]
また、細リブ5は、オフセット部51と、凸部52とを有する(図2図4参照)。
【0021】
オフセット部51は、ショルダー陸部33のプロファイルラインに対してタイヤ径方向内側にオフセットした部分である(図2および図3参照)。このオフセット部51の踏面は、ショルダー陸部33のプロファイルラインに対して所定のオフセット量gを有する。このオフセット量gは、摩耗中期における細リブ5の接地面とショルダー陸部33の接地面の段差g’(図5参照)を想定して適宜設定される。例えば、オフセット量gが1.0[mm]≦g≦3.0[mm]の範囲内で設定される。
【0022】
また、オフセット部51の踏面は、タイヤ子午線方向の断面視にて、ショルダー陸部33のプロファイルラインに対して平行となる。なお、オフセット部51の踏面とショルダー陸部33のプロファイルラインとのなす角θ(図示省略)が−5[deg]≦θ≦5[deg]の範囲内にあれば、両者は平行といえる。
【0023】
凸部52は、オフセット部51に対してタイヤ径方向外側に突出した部分である(図2および図3参照)。この凸部52は、ショルダー陸部33のプロファイルラインに対して略面一となる頂部(踏面)を有する。言い換えると、凸部52は、ショルダー陸部33のプロファイルライン上に頂部を有する。具体的には、凸部52の頂部と、ショルダー陸部33の踏面との距離δが−0.5[mm]≦δ≦0.5[mm]の範囲内にあれば、両者が略面一にあるといえる。これにより、ショルダー陸部33の踏面が接地するときに、凸部52の頂部が確実に接地できる。
【0024】
また、凸部52の頂部は、タイヤ子午線方向の断面視にて、ショルダー陸部33のプロファイルラインに対して平行となる。なお、凸部52の頂部とショルダー陸部33のプロファイルラインとのなす角φ(図示省略)が−5[deg]≦φ≦5[deg]の範囲内にあれば、両者が平行といえる。
【0025】
また、細リブ5は、複数のオフセット部51と複数の凸部52とをタイヤ周方向に配置して構成される(図2および図4参照)。このとき、タイヤ接地面に、少なくとも1つの凸部52が配置される。具体的には、凸部52の配置間隔(ピッチ)Pがタイヤ接地長Lに対してP≦Lの関係を有する。これにより、タイヤ転動時にて、少なくとも一つの凸部52が必ず接地する。
【0026】
また、タイヤ接地時における凸部52の接地長さa1、a2、・・・の総和A(=a1+a2+・・・)と、タイヤ接地長Lとが0.30≦A/L≦0.70の関係を有することが好ましい。これにより、細リブ5の接地長さが適正に確保される。
【0027】
なお、この実施の形態では、オフセット部51と凸部52とがタイヤ周方向に交互に配置されて、細リブ5が構成されている(図2参照)。また、凸部52の配置間隔Pがタイヤ全周に渡って一定に設定されている。したがって、オフセット部51と凸部52とが、タイヤ周方向に一定の周期で交互に配置されている。また、タイヤ全周では、凸部52の接地長さa1、a2、・・・の総和Aがタイヤ周方向全体長さの30%〜70%に設定されている。
【0028】
また、この実施の形態では、タイヤ子午線方向の断面視にて、凸部52がタイヤ周方向に一様な矩形断面あるいは台形断面のブロック形状を有し、オフセット部51の踏面からタイヤ径方向に突出している(図4参照)。このため、凸部52の頂部が、矩形断面あるいは台形断面の上辺により構成されている。また、凸部52の頂部とオフセット部51の踏面とが平行となっている。かかる構成では、凸部52の頂部が平面形状となり安定的に接地する点で好ましい。また、細リブ5の踏面の位置がタイヤ周方向に向かうに連れてステップ状かつ一定の周期でタイヤ径方向に上下している。
【0029】
しかし、これに限らず、凸部52がタイヤ周方向断面視にて円弧形状ないしは正弦波形状を有することにより、オフセット部51と凸部52との段差が滑らかに構成されても良い(図6参照)。ただし、かかる構成においても、この凸部52の頂部とショルダー陸部33の踏面との距離δが−0.5[mm]≦δ≦0.5[mm]の範囲内にあることを要する。このとき、凸部52の頂部が曲面形状を有しても良い。
【0030】
また、この実施の形態では、オフセット部51と凸部52との段差が1段であるが、これに限らず、オフセット部51と凸部52との段差部が階段状に複数段で構成されても良い(図示省略)。このとき、最もタイヤ径方向内側にある踏面がオフセット部51となり、このオフセット部51に対してタイヤ径方向に突出した部分が凸部52となる。また、この凸部52の頂部とショルダー陸部33の踏面との距離δが−0.5[mm]≦δ≦0.5[mm]の範囲内にあることを要する。
【0031】
また、この実施の形態では、凸部52の配置間隔Pがタイヤ全周に渡って一定に設定されている(図4参照)。具体的には、トレッドパターンのピッチ(ブロックやサイプの配置間隔)にあわせて、凸部52の配置間隔Pが設定されている。かかる構成では、凸部52の配置に起因する細リブ5の偏摩耗を抑制できる点で好ましい。しかし、これに限らず、凸部52の配置間隔Pがタイヤ周方向に向かうに連れて変化しても良い(図示省略)。かかる構成としても、細リブ5の摩耗犠牲リブとしての機能が適正に確保される。
【0032】
また、この実施の形態では、タイヤ左右の細リブ5、5がオフセット部51および凸部52から成る上記の構成(図2参照)を有している。しかし、これに限らず、少なくとも一方の細リブ5が上記の構成を有すればよい。また、タイヤ左右の細リブ5、5が凸部52を有する場合には、左右の細リブ5、5における凸部52が相互に対称な構造を有しても良いし、相異する構造を有しても良い(図示省略)。例えば、タイヤ左右の細リブ5、5において、凸部52の配置間隔Pが同一であっても良いし、相異しても良い。また、凸部52がタイヤ周方向に対して同位置に配置されても良いし、タイヤ周方向にズラされて配置されても良い(図示省略)。
【0033】
なお、この空気入りタイヤ1において、上記した細溝4の形状、細リブ5(オフセット部51および凸部52)の形状などは、タイヤが規定リムに装着されて規定内圧を付与されると共に無負荷状態とされた状態で測定される。また、凸部52の接地長さa1、a2およびタイヤ接地長Lは、タイヤが規定リムに装着されて規定内圧を付与されると共に規定荷重を付与された状態で測定される。このとき、タイヤ接地長Lは、ショルダー陸部のタイヤ幅方向外側端部における接地長さとして測定される。
【0034】
ここで、規定リムとは、JATMAに規定される「適用リム」、TRAに規定される「Design Rim」、あるいはETRTOに規定される「Measuring Rim」をいう。また、規定内圧とは、JATMAに規定される「最高空気圧」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「INFLATION PRESSURES」をいう。また、規定荷重とは、JATMAに規定される「最大負荷能力」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「LOAD CAPACITY」をいう。ただし、JATMAにおいて、乗用車用タイヤの場合には、規定内圧が空気圧180[kPa]であり、規定荷重が最大負荷能力の88[%]である。
【0035】
この空気入りタイヤ1では、タイヤ転動時にて、細リブ5の剛性がショルダー陸部33よりも小さいので、細リブ5が積極的に摩耗して摩耗犠牲リブとして機能する(図2参照)。これにより、本体となるショルダー陸部33の偏摩耗が抑制される。また、摩耗中期には、細リブ5の接地面とショルダー陸部33の接地面とが一定の段差g’を維持しつつ均等に摩耗する(図5参照)。そして、これを安定形状として細リブ5が摩耗することにより、細リブ5の摩耗犠牲リブとしての機能が適正に確保される。
【0036】
ここで、細リブが凸部を有さない構成(例えば、特許文献1参照)では、細リブの踏面とショルダー陸部の踏面とがタイヤ新品時から一定の段差を有する。かかる構成では、タイヤ使用条件(例えば、空気圧、荷重、整備状況など)にバラツキがあると、タイヤ新品時から摩耗初期にて、細リブが接地しない場合がある。すると、細リブが摩耗犠牲リブとして機能せず、ショルダー陸部に偏摩耗が発生するという課題がある。一方で、タイヤ新品時にて、細リブの踏面とショルダー陸部の踏面とが段差を有しつつ細リブの踏面が必ず接地するように設定することは、タイヤ使用条件のバラツキを考慮すると非常に困難であるという課題もある。
【0037】
この点において、この空気入りタイヤ1では、細リブ5が接地用の凸部52を有するので(図2図4参照)、タイヤ新品時にて、この凸部52が摩耗犠牲リブとして機能する。これにより、細リブ5の機能が確保されて、タイヤ新品時から摩耗初期におけるショルダー陸部33の偏摩耗が抑制される。また、この凸部52が摩耗中期に至る途中で摩耗して消滅することにより、細リブ5が上記した安定形状となる(図5参照)。また、この空気入りタイヤ1では、細リブ5が、接地用の凸部52を有することにより、タイヤ新品時に確実に接地できる。したがって、細リブが凸部を有さない構成と比較して、タイヤ新品時に細リブを接地させるための設定が不要となる。
【0038】
[効果]
以上説明したように、この空気入りタイヤ1は、タイヤ周方向に延在する複数の周方向主溝21、22と、これらの周方向主溝21、22に区画されて成る複数の陸部31〜33と、タイヤ幅方向の最も外側にあるショルダー陸部33の踏面側かつタイヤ幅方向外側の縁部に配置されてタイヤ周方向に延在する細溝4と、この細溝4により区画されて成る細リブ5とを備える(図1参照)。また、細リブ5が、ショルダー陸部33のプロファイルラインに対してタイヤ径方向内側にオフセットした踏面を有するオフセット部51と、このオフセット部51に対してタイヤ径方向外側に突出すると共にショルダー陸部33のプロファイルラインに対して略面一となる頂部を有する凸部52とを備える(図2図4参照)。また、細リブ5が、複数のオフセット部51と複数の凸部52とをタイヤ周方向に配列して構成される。
【0039】
かかる構成では、細リブ5が接地用の凸部52を有するので(図2図4参照)、この凸部52が摩耗犠牲リブとして機能することより、タイヤ新品時から摩耗初期におけるショルダー陸部33の偏摩耗が抑制される。これにより、タイヤの耐偏摩耗性能および耐久性能が向上する利点がある。
【0040】
また、この空気入りタイヤ1では、オフセット部51のオフセット量gが1.0[mm]≦g≦3.0[mm]の範囲内にある(図3参照)。かかる構成では、オフセット部51のオフセット量gが適正化されることにより、摩耗中期以降におけるショルダー陸部33の偏摩耗が適正に抑制される利点がある。例えば、g<1.0[mm]となると、タイヤの耐ティア性能が悪化し、また、3.0[mm]<gとなると、タイヤの耐偏摩耗性能が悪化するため、好ましくない。
【0041】
また、この空気入りタイヤ1では、凸部52の頂部とショルダー陸部33のプロファイルとの距離δが−0.5[mm]≦δ≦0.5[mm]の範囲内にある(図3参照)。かかる構成では、凸部52の頂部とショルダー陸部33のプロファイルとの距離δが適正化されることにより、ショルダー陸部33の偏摩耗が適正に抑制される利点がある。
【0042】
また、この空気入りタイヤ1では、タイヤ接地時における凸部52の接地長さの総和Aとタイヤ接地長Lとが0.30≦A/L≦0.70の範囲内にある(図4参照)。かかる構成では、タイヤ接地時における凸部52の接地長さが適正化されるので、ショルダー陸部33の偏摩耗が適正に抑制される利点がある。例えば、A/L<0.30となると、細リブの接地領域がほとんど無くなることにより、摩耗犠牲リブとしての効力を発揮できない使用条件が発生して、タイヤの耐偏摩耗性能が悪化するため、好ましくない。また、0.70<A/Lとなると、細リブの接地領域が新品時から多く、縁石への乗り上げ等により細リブのティアを発生する可能性が高くなって、耐ティア性が低下するため、好ましくない。
【0043】
また、この空気入りタイヤ1では、細溝4の溝幅dが0.3[mm]≦d≦4.0[mm]の範囲内にあり、且つ、細溝4の溝深さhがショルダー陸部33を区画する周方向主溝22の溝深さHに対して0.80≦h/H≦1.10の範囲内にある(図3参照)。かかる構成では、細溝4の溝幅dと周方向主溝22の溝深さHとの関係が適正化されることにより、ショルダー陸部33の形状が適正化される。これにより、ショルダー陸部33の偏摩耗が適正に抑制される利点がある。
【実施例】
【0044】
図7は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤの性能試験の結果を示す表である。この性能試験では、相互に異なる複数の空気入りタイヤについて、(1)耐偏摩耗性能および(2)耐ティア性能に関する性能試験が行われた。
【0045】
この性能試験では、タイヤサイズ295/75R22.5の空気入りタイヤがTRA規定の適用リムに組み付けられ、この空気入りタイヤにTRA規定の空気圧および荷重が付与される。また、空気入りタイヤが北米Class8の2−DDの試験車両のステア軸に装着され、この試験車両が10万マイル(約16万km)を走行する。
【0046】
(1)耐偏摩耗性能に関する性能試験では、ショルダー陸部に発生した偏摩耗の面積および深さが測定される。そして、この測定結果に基づいて従来例1を基準(100)とした指数評価が行われる。この評価は数値が大きいほど好ましい。
【0047】
(2)耐ティア性能に関する性能試験では、細リブに発生したティアの長さ(複数のティアが発生した場合には、その総長さ)が測定される。そして、この測定結果に基づいて従来例1を基準(100)とした指数評価が行われる。この評価は数値が大きいほど好ましい。
【0048】
実施例1〜10の空気入りタイヤ1は、図1に記載した空気入りタイヤであり、リブを基調としたトレッドパターンを有し、ショルダー陸部33が細溝4および細リブ5を有している。また、細リブ5が、オフセット部51と、このオフセット部51からステップ状に突出した凸部52を有している。また、細リブ5が、オフセット部51と凸部52とをタイヤ周方向に交互に配置して構成されている。また、実施例3の空気入りタイヤ1は、図2図4に記載した構成を有し、他の実施例の空気入りタイヤ1は、この実施例3の一部を変更した構成を有している。
【0049】
従来例1の空気入りタイヤは、ショルダー陸部が細溝および細リブを有するが、細リブがショルダー陸部に対してオフセットしていない(図示省略)。従来例2の空気入りタイヤは、ショルダー陸部が細溝および細リブを有し、また、細リブがショルダー陸部に対してオフセットしている(図示省略)。ただし、細リブが凸部を有していない。
【0050】
なお、これらの空気入りタイヤでは、ショルダー陸部の幅W1がW1=40[mm]であり、細リブの幅W2がW2=12[mm]である。また、ショルダー陸部を区画する周方向主溝の溝深さHが14.0[mm]であり、細溝の溝深さhおよび溝幅dがh=12.0[mm]およびd=1.5[mm]である。
【0051】
試験結果に示すように、従来例1と実施例1〜10とを比較すると、実施例1〜10では、タイヤの耐偏摩耗性能および耐ティア性能が向上することが分かる。また、従来例2と実施例1〜10とを比較すると、タイヤの耐偏摩耗性能が向上することが分かる。なお、従来例2は、耐偏摩耗性能の評価に大きなバラツキがあり、その平均値が図7の評価結果となっている。また、実施例1〜5を比較すると、細リブのオフセット量gを適正化することにより、タイヤの耐偏摩耗性能および耐ティア性能が向上することが分かる。また、実施例3、6、7を比較すると、凸部の頂部とショルダー陸部のプロファイルとの距離δが適正化されることにより、タイヤの耐偏摩耗性能が向上することが分かる。また、実施例3、8、9を比較すると、タイヤ接地時における凸部の接地長さが適正化されることにより、タイヤの耐偏摩耗性能が向上することが分かる。
【符号の説明】
【0052】
1 空気入りタイヤ、21、22 周方向主溝、31〜33 陸部、4 細溝、5 細リブ、51 オフセット部、52 凸部、11 ビードコア、12 ビードフィラー、121 ローアーフィラー、122 アッパーフィラー、13 カーカス層、14 ベルト層、141、142 ベルトプライ、15 トレッドゴム、16 サイドウォールゴム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7