特許第5793932号(P5793932)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5793932
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】鞍乗型車両
(51)【国際特許分類】
   B62J 11/00 20060101AFI20150928BHJP
   B62K 19/30 20060101ALI20150928BHJP
【FI】
   B62J11/00 G
   B62K19/30
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-95467(P2011-95467)
(22)【出願日】2011年4月21日
(65)【公開番号】特開2012-224285(P2012-224285A)
(43)【公開日】2012年11月15日
【審査請求日】2014年3月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】特許業務法人東京国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100078765
【弁理士】
【氏名又は名称】波多野 久
(74)【代理人】
【識別番号】100078802
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 俊三
(74)【代理人】
【識別番号】100130731
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 修
(74)【代理人】
【識別番号】100150957
【弁理士】
【氏名又は名称】松長 純
(72)【発明者】
【氏名】脇本 洋治郎
【審査官】 加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−246886(JP,A)
【文献】 実開平03−060190(JP,U)
【文献】 特開2002−187586(JP,A)
【文献】 特開2009−179268(JP,A)
【文献】 特開2011−070801(JP,A)
【文献】 特開2002−211465(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 11/00
B62K 19/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前端部にヘッドパイプと、このヘッドパイプから車両斜め下方へ延びたメインチューブと、このメインチューブに結合されて車両後方へ延びる左右一対のシートレールを備えた車体フレームと、
前記ヘッドパイプの後方で前記車体フレームに支持された燃料タンクと、
この燃料タンクの下方で前記車体フレームに搭載され、後部にエンジン吸気系を構成するエアクリーナを接続したエンジンと、
このエンジンを含む車載機器へ電力または電気信号を適切に供給するための電装品と、を有する鞍乗型車両において、
前記電装品は、前記エンジンにおけるシリンダヘッドの後方であって、少なくともその一部が、前記燃料タンクの後部下方の底面に形成された上方へ窪む凹部の内側領域に位置し、且つ前記エンジンに接続した前記エアクリーナの上方に配置されたことを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項2】
前記電装品は、車両平面視で前記車体フレームを構成する前記左右一対のシートレール間に配置され、上方が前記燃料タンクで覆われると共に、車両側面視で少なくとも一部が前記シートレールと重なるよう構成されたことを特徴とする請求項1に記載の鞍乗型車両。
【請求項3】
前記左右一対のシートレールは上方が前記燃料タンクで覆われたブリッジ部材により連結され、このブリッジ部材に前記電装品が支持されたことを特徴とする請求項2に記載の鞍乗型車両。
【請求項4】
前記電装品は、メインハーネスから延びるハーネスに接続され、このハーネスが前記電装品から後方、下方、または後ろ斜め下方に延出されたことを特徴とする請求項1に記載の鞍乗型車両。
【請求項5】
前記エアクリーナは、前記燃料タンクとこの燃料タンクの後方に隣接して前記シートレールに支持されたシートとの境界位置の下方に設置されると共に、前記電装品は、車両平面視で少なくともその一部が前記エアクリーナと重なるように配置されたことを特徴とする請求項1に記載の鞍乗型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鞍乗型車両に係り、特に電装品のレイアウトを改良した鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
鞍乗型車両、特に自動二輪車にあっては、電装品であるスタータモータリレーがサイドカバーの内側に固定して取り付けられたものが開示されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−187586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上述のようにスタータモータリレーがサイドカバーの内側に配置されていると、泥水等の飛沫や雨滴がスタータモータリレーに当たり易く、スタータモータリレーの防水性が低下してしまう。
【0005】
また、スタータモータリレーがプラスチック製のサイドカバーで保護されただけでは、このサイドカバーが壊されてアクセスされ易いので、スタータモータリレーの防犯性が低下してしまう。
【0006】
更に、スタータモータリレーがサイドカバーの内側の領域でスペースを要するので、この領域に配置される他の電装品のレイアウトの自由度が低下したり、このスタータモータリレーとのクリアランス確保のためにサイドカバーのデザインの自由度も低下してしまう。
【0007】
また、スタータモータリレーがサイドカバーの内側に配置された場合には、このスタータモータリレーが、エンジンにおけるクランクケースの前下部に設置されたスタータモータに対して離れて設置されることになる。このため、バッテリからスタータモータリレーを経てスタータモータへ至るハーネスの長さが長くなり、送電ロスやコストが上昇してしまう。
【0008】
本発明の目的は、上述の事情を考慮してなされたものであり、電装品の防水性及び防犯性を向上できる鞍乗型車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前端部にヘッドパイプと、このヘッドパイプから車両斜め下方へ延びたメインチューブと、このメインチューブに結合されて車両後方へ延びる左右一対のシートレールを備えた車体フレームと、前記ヘッドパイプの後方で前記車体フレームに支持された燃料タンクと、この燃料タンクの下方で前記車体フレームに搭載され、後部にエンジン吸気系を構成するエアクリーナを接続したエンジンと、このエンジンを含む車載機器へ電力または電気信号を適切に供給するための電装品と、を有する鞍乗型車両において、前記電装品は、前記エンジンにおけるシリンダヘッドの後方であって、少なくともその一部が、前記燃料タンクの後部下方の底面に形成された上方へ窪む凹部の内側領域に位置し、且つ前記エンジンに接続した前記エアクリーナの上方に配置されたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電装品は、エンジンにおけるシリンダヘッドの後方で、且つ燃料タンクの後部下方に配置されたことから、上部領域が燃料タンクで覆われ、前斜め下方がエンジンにて隠される。このため、電装品には、泥水等の飛沫や雨滴が当たり難くなり、更に車両外部から容易にアクセスされ難くなるので、電装品の防水性及び防犯性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る鞍乗型車両の一実施形態である自動二輪車を示す右側面図。
図2図1の自動二輪車における車両前半部を示す右側面図。
図3図2の車両前半部においてサイドカバーなどを取り外してスタータモータ及びスタータモータリレーの配線状態を示す右側面図。
図4図2のシートを外して示すIV矢視図。
図5図4のV矢視図。
図6図4のVI−VI線に沿う断面図。
図7図5のVII−VII線に沿う断面図。
図8図3のVIII矢視図。
図9図8のIX矢視図。
図10図9のX−X線に沿う断面図。
図11図8のスタータモータリレーを支持するブリッジメンバの取り付け状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための実施形態を図面に基づき説明する。但し、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではない。図1は、本発明に係る鞍乗型車両の一実施形態である自動二輪車を示す右側面図である。図2は、図1の自動二輪車における車両前半部を示す右側面図である。
【0013】
これらの図1及び図2に示す鞍乗型車両としての自動二輪車10は、前端部にヘッドパイプ12を備える車体フレーム11を有する。この車体フレーム11は、前記ヘッドパイプ12、メインチューブ13、左右一対のダウンチューブ14、及び左右一対のシートレール15を有して構成される。
【0014】
車体フレーム11の前部上方に位置する前記ヘッドパイプ12には、ステアリング機構16が枢支される。このステアリング機構16に、前輪19を回転自在に軸支するフロントフォーク17及びハンドルバー18等が取り付けられている。ハンドルバー18を用いて、前輪19が左右に操舵される。また、フロントフォーク17には、前輪19の上部を覆うようにフロントフェンダ20が固定されている。
【0015】
メインチューブ13は、ヘッドパイプ12の上部後面から車両斜め下方へ延出されると共に、湾曲して車両下方へ延び、下端部が図2に示すピボットブラケット21に結合される。また、左右一対のダウンチューブ14は、ヘッドパイプ12の下部後面から車両下方へ延びると共に、湾曲して車両後方へ延び、後端部がピボットブラケット21に結合される。このピボットブラケット21にはピボット軸22が架設され、このピボット軸22に図示しないスイングアームが車両上下方向に揺動自在に枢支される。このスイングアームの後端に、図1に示す後輪24が回転自在に軸支される。
【0016】
メインチューブ13には、左右一対のシートレール15が結合されて車両後方へ延びる。これら左右一対のシートレール15が、クロスメンバ25(図8)などにより連結される。更に、このシートレール15が、図2に示すシートピラー29を介してピボットブラケット21に支持される。図1に示す前記メインチューブ13により燃料タンク26が、ヘッドパイプ12の後方位置で支持される。また、シートレール15によりシート27が、燃料タンク26の後方に隣接して支持される。更に、このシートレール15には、後輪24の上方を覆うリアフェンダ28が吊り下げ支持される。
【0017】
図3に示すように、メインチューブ13とダウンチューブ14との間にエンジン30が搭載される。このエンジン30は、燃料タンク26の下方に位置づけられ、その駆動力で後輪24を駆動する。このエンジン30を構成するシリンダヘッド31の後部には、エンジン吸気系を構成するキャブレタ32及びエアクリーナ33が順次接続される。このエアクリーナ33は、燃料タンク26とシート27との境界位置の下方に設置される。また、シリンダヘッド31の前部に、エンジン排気系であるエキゾーストパイプ34(図1)が接続される。このエキゾーストパイプ34は、車両後方へ延設され、後端に排気マフラ35が接続される。
【0018】
前記ステアリング機構16またはフロントフォーク17に、車両前方上部を覆うフロントカバー36が設置され、このフロントカバー36にヘッドライト39等が配設される。また、メインチューブ13及びシートレール15には、エンジン30の後方で燃料タンク26の下方の領域を覆う左右一対のサイドカバー37が取り付けられる。更に、シート25には、後輪24の上方でシート27の下方の領域を覆うリアカバー38が取り付けられる。
【0019】
ところで、上述のような自動二輪車10には、エンジン30を含む車載機器へ電力または電気信号を適切に供給するための電装品が装備されている。この電装品は、例えば図3に示すバッテリ40、スタータモータリレー41、及びヒューズボックス42、並びに図示しないをウィンカリレー、ECU(エンジン制御ユニット)、及びCDI(容量放電点火)ユニットなどである。
【0020】
このうち、バッテリ40は、図2及び図3に示すように、シート27の前部下方で、サイドカバー37に囲まれる空間に、エアクリーナ33に隣接して配置される。また、図3図5に示すように、スタータモータリレー41は、エンジン30におけるシリンダヘッド31の後方で、且つ燃料タンク26の後部下方に配置されると共に、更にエアクリーナ33の上方に配置される。燃料タンク26は、図6及び図7に示すように、その底面43に、上方へ窪む凹部44が形成されている。スタータモータリレー41は、少なくとも一部(例えば上部)が燃料タンク26の凹部44の内側領域に位置するように配置されている。
【0021】
ここで、スタータモータリレー41は、図3に示すエンジン30を始動させるスタータモータ45への給電を制御する機器(電装品)である。スタータモータ45は、エンジン30におけるクランクケース49の前部に設置されている。バッテリ40からの電力は、メインハーネス46、第1サブハーネス47(特に図10)、スタータモータリレー41、メインハーネス46、第2サブハーネス48を順次経てスタータモータ45へ給電される。スタータモータリレー41は、車両側面視でバッテリ40とスタータモータ45との間に配置されて、上述の給電経路、特に第1サブハーネス47のハーネス長が短縮される。
【0022】
第1サブハーネス47は、図6に示すように、スタータモータリレー41に対して後方から下方の角度範囲αにおいて、スタータモータリレー41から延出される。つまり、第1サブハーネス47は、スタータモータリレー41から後方、下方または後斜め下方に延出される。本実施形態では、図8図10に示すように、第1サブハーネス47は、スタータモータリレー41から後斜め下方へ延出されている。
【0023】
前記スタータモータリレー41の具体的な支持構造を次に述べる。図8及び図11に示すように、左右一対のシートレール15がメインチューブ13に結合される近傍には、ブリッジ部材としてのブリッジメンバ50が固着される。左右一対のシートレレール15は、このブリッジメンバ50及び前述のクロスメンバ25等によって一体に連結される。スタータモータリレー41は、図8図10に示すように、このうちのブリッジメンバ50に着脱自在に支持されて、一対のシートレール15の間に配置される。
【0024】
更に、スタータモータリレー41は、特に図6及び図9に示すように、上方が燃料タンク26で覆われると共に、車両側面視で少なくとも一部(例えば下部)がシートレール15と重なるように設けられる。
【0025】
以上のように構成されたことから、本実施形態によれば、次の効果(1)〜(5)を奏する。
【0026】
(1)スタータモータリレー41は、図3及び図6に示すように、エンジン30におけるシリンダヘッド31の後方で、且つ燃料タンク26の後部下方に配置されたことから、上部領域が燃料タンク26で覆われ、前斜め下方がエンジン30にて隠される。このため、スタータモータリレー41には、泥水等の飛沫や雨滴が当たり難くなり、更に車両外部から容易にアクセスされ難くなるので、スタータモータリレー41の防水性及び防犯性を向上させることができる。
【0027】
(2)スタータモータリレー41から延びる第1サブハーネス47は、図6図8及び図10に示すように、スタータモータリレー41から後方、下方または後斜め下方に延出されている。このため、このスタータモータリレー41では、車両走行時における泥水などの飛沫の直撃を回避でき、また水滴や泥、塵埃などの滞留を防止できる。この結果、スタータモータリレー41の防水性を更に高めることができ、従って、スタータモータリレー41の耐久性を向上させ、且つ信頼性を確保できる。
【0028】
(3)スタータモータリレー41は、図6及び図8に示すように、ブリッジメンバ50を用いて左右一対のシーレール15の間に配置され、且つ車両側面視で少なくとも一部(例えば下部)が、シートレール15と重なるように設けられている。従って、スタータモータリレー41は車両幅方向の内側に配置され、上方が燃料タンク26で、両側方が左右一対のシートレール15で、前方が図3に示すエンジン30及びキャブレタ32などの吸気系で、後方が図2に示すシート27により囲まれるので、スタータモータリレー41の防犯性を更に向上させることができる。
【0029】
(4)スタータモータリレー41が左右一対のシートレール15に固着されたブリッジメンバ50に支持されて、上述のように車両幅方向内側に配置されたので、図2及び図3に示す左右一対のサイドカバー37で囲まれた領域に空きスペースが生ずる。この結果、この領域に配置される他の電装品におけるレイアウトの自由度が向上すると共に、車両デザインの自由度も向上する。
【0030】
(5)スタータモータリレー41は、図3に示す車両側面視でバッテリ40とスタータモータ45との間に配置され、このバッテリ40とスタータモータ45の間から外れた領域に配置されていない。この結果、バッテリ40からスタータモータリレー41を経てスタータモータ45へ至る給電経路を短縮、特に第1サブハーネス47(特に図10)のハーネス長を短縮できるので、送電ロス及びコストを低減できる。
【0031】
以上、本発明を上記実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々変形することができる。例えば、上記実施形態では、鞍乗型車両としての自動二輪車10の場合を述べたが、三輪または四輪のバギー車(不整地走行車両)に本発明を適用してもよい。
【0032】
また、上記実施形態では、図3及び図6に示すように、エンジン30におけるシリンダヘッド31の後方で、且つ燃料タンク26の後部下方で、更にエアクリーナ33の上方に、左右一対のシートレール15に固着されたブリッジメンバ50に支持されてスタータモータリレー41が配置されたものを述べたが、このスタータモータリレー41に代えて他の電装品、例えばヒューズボックス42、ウィンカリレー、ECU、CDIユニットなどが配置されてもよい。
【符号の説明】
【0033】
10 自動二輪車(鞍乗型車両)
11 車体フレーム
12 ヘッドパイプ
15 シートレール
26 燃料タンク
30 エンジン
31 シリンダヘッド
33 エアクリーナ
40 バッテリ
41 スタータモータリレー(電装品)
45 スタータモータ
46 メインハーネス
47 第1サブハーネス
50 ブリッジメンバ(ブリッジ部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11