(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1には、電磁波識別装置100の構成が、ブロック図により示されている。電磁波識別装置100は、取得部101と、特徴量算出部102と、記憶部103と、類似度算出部104と、分類部105と、識別部106と、出力部108とを備える。
【0014】
取得部101は、電磁波を受信し、受信した電磁波(到来電波)の波形を所定時間毎にサンプリングして特徴量算出部102に入力する。また、取得部101は、受信した電磁波の測定日時(受信時刻)を、所定時間毎に特徴量算出部102に入力する。取得部101は、例えば、波形の振幅を測定するスペクトラムアナライザ(測定器)であってもよい。また、取得部101は、波形又は波形の振幅を示すデータを、他の装置から取得してもよい。
【0015】
特徴量算出部102には、受信した電磁波の振幅データと、測定日時(受信時刻)が、所定時間毎に入力される。特徴量算出部102は、所定時間毎に出力された識別情報を付加し「波形サンプル」を生成する(例えば、サンプル1,サンプル2,…)。また、各波形サンプル毎に、受信した電磁波の特徴量を算出する。ここで、特徴量とは、例えば、振幅確率分布である。また、振幅確率分布とは、波形の全時間長と、波形が所定の振幅を超えていた時間長との比を示す確率分布である。特徴量算出部102は、識別情報が付加された所定時間毎の受信電波に対して、それぞれ特徴量を出力する。
【0016】
なおまた、受信電波の特徴量は、振幅確率分布に限られなくてもよい。例えば、受信電波の特徴量は、振幅ヒストグラム、平均値、標準偏差、歪度、尖度、ピーク係数、確率分布のモーメント等の統計量、及び測定日時のうち、少なくとも1つ以上を含んでいてもよい。
【0017】
記憶部103は、受信電波の特徴量を波形サンプル毎に記憶する。
図2には、波形サンプル毎の特徴量のデータ構成例が示されている。一例として、
図2には、受信電波の特徴量が、振幅確率分布、振幅ヒストグラム、及び測定日時である場合が示されている。また、記憶部103は、受信した電磁波について予め定められた受信頻度及び受信時刻を記憶してもよい。
【0018】
図1に戻り、電磁波識別装置100の構成の説明を続ける。類似度算出部104には、受信した電磁波の特徴量が、波形サンプル毎に入力される。類似度算出部104は、波形サンプル間における特徴量の類似度を算出し、類似度行列を形成する。
【0019】
図3は、類似度を算出する手順を示すフローチャートである。類似度算出部104は、波形サンプルの特徴量を所定時間毎に取得する(S1)。類似度算出部104は、波形サンプル間における特徴量の類似度を算出する(S2)。類似度算出部104は、算出した類似度を出力する(S3)。
【0020】
図4には、類似度算出部104で算出した類似度の例が示されている。ここでは、一例として、類似度が、ピアソンの相関係数である場合が示されている。電磁波を識別する精度を高めるには、波形サンプルの標本数は、十分に多いことが望ましい。相関係数として、波形サンプルの数がn(nは、2以上の整数)であった場合、最大でnC2個の類似度が算出され、相関行列を形成る。以下では、一例として、サンプル2とサンプル3との間の類似度が「0.61」であり、この類似度が、全ての波形サンプル間の類似度の中で、最も小さい類似度であるものとして説明する。
【0021】
図1に戻り、電磁波識別装置100の構成の説明を続ける。分類部105は、波形サンプル毎に類似度を取得し、取得した類似度に基づいて、波形サンプルをクラスタ化する。
【0022】
図5は、波形サンプルをクラスタ化する手順を示すフローチャートである。分類部105は、類似度算出部104から、波形サンプル間毎に類似度を取得する(Sa1)。分類部105は、類似度が最小である波形サンプル(ここでは、サンプル2及び3)を選択する(Sa2)。分類部105は、波形サンプルをクラスタ化する(Sa3)。分類部105は、クラスタ識別情報を波形サンプル毎に出力する(Sa4)。ここで、クラスタ識別情報とは、分類したクラスタを識別するための識別情報である。以下、クラスタ識別情報を、CN(Nは、1以上の整数)と表記するものとし、C1,C2,…と表記する。
【0023】
図6には、類似度に基づいて波形サンプルをクラスタ化する処理が示されている。クラスタの分類に用いる変数(波形サンプルの特徴量)は、互いに独立し、且つ類似性がないことが理想である。なぜなら、クラスタ間の距離が離れることで、電磁波の識別精度が向上するためである。そこで、分類部105は、類似度行列の中で類似度が最も小さい一組の波形サンプルを選択する。
図6に示す表の最左列にあるように、分類部105は、全ての波形サンプル間の類似度の中で(
図4を参照)、最も小さい類似度であるサンプル2及びサンプル3を選択する。
【0024】
分類部105は、選択したサンプル2及びサンプル3と、他のサンプルとの類似度に基づいて、波形サンプルをクラスタに分類する。具体的には、分類部105は、サンプル2との類似度が、サンプル3との類似度よりも高いサンプルを、クラスタC2に分類する。
また、分類部105は、サンプル3との類似度が、サンプル2との類似度よりも高いサンプルを、クラスタC1に分類する。このような分類によって、選出したサンプル2と同種の電磁波成分と、サンプル3と同種の電磁波成分とに分類することができる。
【0025】
なおまた、分類部105が波形サンプルを分類する際には、クラスタ分析手段として、階層的クラスタ分析法(例えば、最短距離法、メジアン法、重心法、群平均法、ウォード法)、及び非階層的クラスタ分析法(例えば、k−means法、ファジー型クラスタリング法、自己組織化処理法)を適用してもよい。分類部105は、クラスタの形状が歪にならないよう、クラスタ分析法を適宜選択する。
【0026】
図7には、2つのクラスタ(C1及びC2)に分類された波形サンプルの例が示されている。ここで、X軸により、サンプル2と他のサンプル(サンプル3を除く)との間の相関係数が示されている。また、Y軸により、サンプル3と他のサンプル(サンプル2を除く)との間の相関係数が示されている。
【0027】
電磁波を識別するには、少なくとも2つのクラスタが必要である。このクラスタ数の最適値は、電磁環境、及び電磁波を受信するセンサ局の設置場所に応じて変化するので、クラスタ数の最適値が定められる際には、適宜のアルゴリズムが用いられてよい。
【0028】
図1に戻り、電磁波識別装置100の構成の説明を続ける。識別部106は、クラスタ識別情報が示すクラスタを構成する波形サンプル群が対応する電磁波の特徴を識別する。ここで、識別部106は、クラスタを構成する波形サンプル群の数及びデータ(
図2、4及び6を参照)と、受信頻度及び時刻等を示す情報とを比較参照することによって、電磁波の特徴を識別する。これにより、識別部106は、例えばクラスタC1を構成する波形サンプルに対応する電磁波は被害波であり、クラスタC2を構成する波形サンプルに対応する電磁波は妨害波である、と識別することができる。
【0029】
出力部108は、例えば、ディスプレイ、又はプリンタであり、識別部106から識別結果を取得して、識別結果を出力(表示)する。出力部108は、識別結果として、例えば、クラスタC1を構成する波形サンプル群に対応する電磁波は被害波であり、クラスタC2を構成する波形サンプル群に対応する電磁波は妨害波である旨を表示する。
【0030】
以上のように、電磁波識別装置100は、受信された電磁波の波形を所定時間毎にサンプリングする取得部101と、波形の特徴量を波形サンプル毎に算出する特徴量算出部102と、波形サンプル間における特徴量の類似度を算出する類似度算出部104と、類似度に基づいて、波形サンプルをクラスタに分類する分類部105と、クラスタを構成する波形サンプル群に対応する電磁波を識別する識別部106と、を備える。
【0031】
電磁波識別装置は、受信された電磁波の波形を、波形の特徴量の類似度に基づいて分類するので、精度よく電磁波の特徴を識別できる。
【0032】
また、特徴量は、波形の振幅に応じた量(例えば、振幅確率分布)を複数使用してもよい。これにより、電磁波識別装置は、複数の電磁波が混在する環境下でも、受信された電磁波の波形の振幅に応じた量に基づいて、より精度の高い識別をすることができる。
【0033】
また、電磁波識別装置100は、記憶部103に電磁波について予め定められた頻度及び時刻の情報を格納し、識別部106が、予め定められた頻度及び時刻のうち少なくとも1つに基づいて、電磁波を識別する。これにより、電磁波識別装置は、突発的に発生した電磁波を精度よく識別することができる。
【0034】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態について図面を参照して詳細に説明する。第2実施形態では、電磁干渉が電磁波に発生しているか否かを、電磁波識別装置が教師データに基づいて判定する点が、第1実施形態と異なる。
【0035】
図8には、電磁波識別装置の構成が、ブロック図により示されている。電磁波識別装置200は、波形サンプルの特徴量と教師データとの類似度を算出することにより、電磁干渉が電磁波に発生しているか否かを判定する。電磁波識別装置200は、取得部201と、特徴量算出部202と、記憶部203と、類似度算出部204と、教師データ選出部210(分類部205、識別部206)と、判定部207と、出力部208とを備える。
【0036】
取得部201の機能は、第1実施形態における取得部101と同様である。特徴量算出部202の機能は、第1実施形態における特徴量算出部102と同様である。記憶部203は、特徴量算出部202が算出した波形サンプルの特徴量を、波形サンプル毎に記憶する。
【0037】
教師データ選出部210は、分類部205と、識別部206とを備える。教師データ選出部210は、波形サンプルの特徴量を波形サンプル毎に記憶部203から取得する。教師データ選出部210は、取得した複数の波形サンプルから1つの波形サンプルを選出し、選出した波形サンプルの特徴量を教師データに決定する。
【0038】
分類部205は、第1実施形態における分類部105と同様である。識別部206は、前段分類部205におけるクラスタ分類結果に基づいて、波形サンプル群から1つの波形サンプルを選出し、選出した波形サンプルの特徴量を教師データに決定する。教師データを決定する手法として、例えば、クラスタの重心位置を算出し、算出した重心位置に最も近い波形サンプルを選出する。
【0039】
識別部206は、クラスタ識別情報が示すクラスタを構成する波形サンプルに対応する電磁波の特徴量を識別する。一般に、不法無線局による不法電波を電磁波識別装置が受信している時間は僅かであり、合法無線局による合法電波のみを受信している時間が大部分であると期待される。従って、識別部206は、クラスタを構成する波形サンプル群の数をカウントすることにより、合法無線局による合法電波と、その他の不法無線局による不法電波とを識別することができる。
【0040】
図9は、教師データを選出する手順を示すフローチャートである。識別部206は、クラスタ識別情報を波形サンプル毎に取得する(Sb1)。また、識別部206は、クラスタを構成する波形サンプルの数をカウントする(Sb2)。また、識別部206は、クラスタを構成する波形サンプル群の数が最大であるクラスタを選択する(Sb3)。更に、識別部206は、選択したクラスタから1つの波形サンプルを選出する(Sb4)。そして、識別部206は、選出した波形サンプルの特徴量を教師データと定め、定めた教師データを記憶部203に記憶させる(Sb5)。
【0041】
図8に戻り、電磁波識別装置200の構成の説明を続ける。類似度算出部204は、取得部201により新たにサンプリングした受信電波の特徴量と、記憶部203に記憶された教師データとに基づいて、これらの類似度を算出する。
【0042】
判定部207は、所定のしきい値と類似度との大小を比較することにより、取得部201がサンプリングした波形サンプルに対応する電磁波に電磁干渉が発生しているか否かを判定する。電磁波に電磁干渉が発生している場合、電磁干渉の影響により波形サンプルの特徴量が変化するので、類似度が変化する。このため、予め設定したしきい値と類似度との大小を比較することにより、判定部207は、電磁波に電磁干渉が発生しているか否かを判定することができる。
【0043】
出力部208は、例えば、ディスプレイ、又はプリンタであり、電磁波に電磁干渉が発生していると判定部207が判定した場合、電磁干渉が電磁波に発生している旨を出力する。
【0044】
図10は、電磁干渉が電磁波に発生しているか否かを判定する手順を示すフローチャートである。類似度算出部204は、取得部201が新たにサンプリングした波形サンプルの特徴量と、記憶部203に記憶された教師データとを取得する(Sc1)。類似度算出部204は、波形サンプルの特徴量と教師データとの類似度を算出する(Sc2)。
【0045】
判定部207は、所定のしきい値と類似度との大小を比較する。具体的には、判定部207は、類似度が所定しきい値以下であるか否かを判定する(Sc3)。類似度が所定しきい値以下である場合(Sc3−YES)、出力部208は、電磁干渉が電磁波に発生していることを通知する。一方、類似度が所定しきい値より大きい場合(Sc3−NO)、判定部207は、電磁干渉が電磁波に発生していることを判定する手順を終了する。なおまた、電磁干渉が電磁波に発生しているか否かを判定する処理は、繰り返し実行されてもよい。
【0046】
以上のように、電磁波識別装置200は、電磁干渉が電磁波に発生しているか否かを判定する判定部207を備え、識別部206は、クラスタを構成する波形サンプル群の数が最大であるクラスタにおいて、該クラスタを構成する波形サンプル群から特徴量を教師データとして選出し、類似度算出部204は、該教師データと取得部201が新たにサンプリングした波形サンプルの特徴量との類似度を算出し、判定部207は、該類似度が所定しきい値以下である場合、電磁干渉が電磁波に発生していると判定する。
【0047】
これにより、電磁波識別装置は、教師データに基づいて、電磁干渉が電磁波に発生しているか否かを判定することができる。また、電磁波識別装置は、教師データに基づいて、合法電波と不法電波とを識別することができる。
【0048】
[第3実施形態]
第3実施形態は、更に、有線もしくは無線による通信に、他の通信や電気、電磁ノイズによる通信妨害(干渉)が発生していることを判別できるシステムの形態を、より具体的な実例を以て説明する。
【0049】
以下、無線通信における実施形態を説明する。
図8の取得部201は、通信信号が電磁ノイズ等の外乱を含む電磁波(到来電波)を受信する。このとき用いられる受信機は電磁波の周波数毎に振幅が測定可能な電圧計、電界強度計、スペクトラムアナライザ等である。この取得部201で得られた振幅データは、取得部201に内蔵もしくは外部から取り込む振幅データ取得時の時刻データと関連づけられている。更に、この取得部201は所定時間毎にサンプリング(周波数と振幅値の測定)を繰り返す機能を有している。
【0050】
この取得データはサンプリング毎に次段の特徴量算出部202に送られ、特徴量算出部202ではAPD(振幅確率分布)を算出する。APDは前段201から送られてきた振幅値データと取得時刻データを元に、規定の振幅値を超えた時間と、全測定時間の比で求められる特徴量である。
【0051】
ここで、算出される特徴量は振幅値によって大きく影響されるため、変調方式(例えば
図11)毎に異なるものとなる。また、同じ変調方式であっても、干渉、すなわち通信妨害の度合いにより、その特徴量には変化が生ずる。
【0052】
例として、変調方式にPSKを用いた通信Aに対し、FSKを用いた通信Bが妨害しているケースで説明する。特徴量算出部202で計算されるAPDは、通信A、通信Bそれぞれの単一波のみ受信している場合と、干渉が発生している場合において、
図12のような違いが生じる。この分布の違いを用いて電磁干渉を識別する。
【0053】
また、特徴量として、
図13に示したような振幅ヒストグラムを用いてもよい。振幅ヒストグラムは、APDの微分量であり、振幅の変動に対してより高感度な識別が可能である。
【0054】
このような処理により算出された波形サンプル毎の特徴量のデータは、次段である記憶部203に格納される。記憶部203では、特徴量算出部202で得られた特徴量を数値化して保存する。このときデータ取得時の時刻データを含んでいれば、干渉すなわち妨害発生の時刻を知ることができる。
図2に格納されるデータの例を示す。
【0055】
類似度算出部204では、特徴量算出部202で得られた特徴量の違いを判別するための処理を行う。通信や電気、電磁ノイズによる通信妨害(干渉)が発生していることを判別するにあたっては、取得部201では妨害波監視のために測定を繰り返し、その都度、特徴量算出部202で特徴量が算出される。このような状態で干渉の強度に変化が生じたことを判断するために、特徴量間の類似性を数値化する処理が類似度算出部204で行われる。
図3は類似度算出部204におけるデータ処理の手順を示すフローチャートである。ここでの処理は統計処理で一般に用いられる手法であり、2変数間の類似度を示す相関係数が用いられる。相関係数の算出方法を式(1)に示す。数字が1に近いほど、両者の特徴量に類似性が高く、同じ電磁波成分に関連していると判断できる。ピアソンの相関係数C(x,y)は、2組の数値からなるデータ列(x,y)={(xi,yi)}(i=0,1,…,n)が与えられたとき、式(1)で定義される。
【0057】
この処理により、相関行列が作成される。識別情報が付加された波形サンプルに対して、全組み合わせの相関係数を算出する。算出したデータは次段の記憶部203に格納される。
図4に格納されるデータの例を示す。
【0058】
次に、分類部205では前記波形サンプルをクラスタ群に振りわけるために、前記相関行列に基づくクラスタ分析を適用する。相関行列の類似性の高い波形サンプル毎にクラスタ化することによって、特徴量毎の分類、すなわち電磁波成分毎の分類が可能となる。ここで用いるクラスタ化には、例えば、第1実施例における
図5のフローチャートで示した手段により実行される。
図14に分析結果を示す。先述した相関行列から最も類似度の低い2つの波形サンプル(妨害波の波形サンプルと、被害波の波形サンプル)を軸にとることで、精度の高い分類が可能である。
【0059】
その他、クラスタ化の手段として、非階層的クラスタ分析、階層的クラスタ分析手段として知られる各手法が適宜選択される。
図15に階層的クラスタ分析の分析結果の例を示す。分類部205によって算出されたクラスタ分析結果は次段の識別部106に出力される。
【0060】
識別部206は、前段における分析結果に基づいて分類されたクラスタ群から教師データを選択するための識別を行う。識別手段としては、不法電波と合法電波(妨害波と被害波)の発生頻度を参照することが有効である。不法電波の発生頻度は、合法電波に比べてわずかであると期待されることから、クラスタ群を構成する波形サンプルの数をカウントし、当該波形の取得数を最も多く含むクラスタ群を合法電波の波形サンプルを含んだクラスタ群と特定することができる(
図16参照)。
【0061】
次に、こうして選ばれた合法電波を含んだクラスタから教師データとなる波形データを選出する。選出方法としては、例えば波形データ群のクラスタの重心を計算し、重心から最も近い距離の波形データを選ぶ等の手段が採られる。(
図8参照)選出された波形データのパラメータの情報は、記憶部203に格納された波形サンプルの中から検索され、教師データとしての波形パラメータとして新たに認識される。
【0062】
識別部206の処理結果であるクラスタ識別結果や、選出した教師データの特徴量は出力結果207に出力される。また、外部表示装置に結果が出力されてもよい。
【0063】
次に、記憶部203から選出した教師データに基づいて、電磁干渉を自動的に検出する処理について説明を続ける。類似度算出部204は、取得部201が新たにサンプリングした所定時間毎の受信電波の特徴量(新たな波形サンプル)と、記憶部103に記憶された教師データとに基づいて、これらの類似度を算出する。類似度算出手段204では、式(1)に示すピアソンの相関係数が用いられる。しかしここでの処理においては前記の類似度算出手段とは異なり、相関元として選出された教師データを用いるので、全ての波形データ相互の相関係数を算出する必要は無い。教師データを相関元とする受信電波の波形データの相関係数は所定時間毎に逐次出力される。
【0064】
判定部207は、所定のしきい値と類似度との大小を比較することにより、取得部201がサンプリングした所定時間毎の受信電波に対して、干渉が発生しているか否かを判定する。
図9は判別部207における手順を示すフローチャートである。電磁波に電磁干渉が発生している場合、電磁干渉の影響により特徴量であるAPDや振幅ヒストグラムが変化することにより、類似度が減少する。このため、予め設定したしきい値と類似度との大小関係を比較することにより、判定部207は、電磁波に電磁干渉が発生しているか否かを判定することができる。
【0065】
図17は、干渉の少ない被害波のみを受信した場合の特徴量を教師データとし、相関係数の妨害波強度の依存性を示している。
図17に示したように、干渉強度が増すにつれて、相関係数は減少する。干渉度により決まるしきい値を設定することで、しきい値より小さい相関係数が算出された場合に、干渉の発生を自動的に判定することができる。
【0066】
また、類似度算出部204において算出される類似度としてピアソンの相関係数を用いたが、前述のように距離関数を用いてもよい。
図18は、干渉の少ない被害波のみを受信した場合の特徴量を教師データとし、距離関数としてユークリッド距離を用いた場合における妨害波強度の依存性を示している。妨害波強度が大きくなるにつれて距離が増加する分布となっており、しきい値を設定することによって同様に妨害波発生の検出が可能であることがわかる。
【0067】
干渉を判定するしきい値の設定に関しては、所望の判定すべき干渉強度によって適宜選択されるが、識別部206のクラスタ分析結果に基づいて、自動的に決定してもよい。
図16に例示したように、識別結果より、被害波のクラスタと干渉を受けている合成波のクラスタ間がどの程度離れているかに関しての情報が得られる。
図16の階層的クラスタ分析の例では、被害波と合成波のクラスタ間距離は約3.8である。このことから、判定部207におけるしきい値の設定を、例えば、クラスタ間距離の半分(1.9)と設定することによって、しきい値を自動的に決定できる(
図18参照)。ただし、分類部205におけるクラスタ分析に用いる類似度と、干渉発生の判定に用いる類似度との間で、類似度として用いる関数定義を一致させることが必要である。
【0068】
出力部208は、例えば、ディスプレイ、又はプリンタ、あるいは干渉発生を伝えるアラームであり、電磁波に電磁干渉が発生していると判定部207が判定した場合、電磁干渉が電磁波に発生している旨を出力する。
【0069】
本発明の電磁干渉検出装置によれば、到来電波の測定データに基づいて、クラスタ分析により自動的に教師データ(例えば被害波のAPD、振幅ヒストグラム)となる波形データを識別して選択する。更に、教師データと到来電波との相関度を演算し、相関度を所定のしきい値と比較することによって電磁干渉波の発生の有無を自動判定する。
【0070】
これにより、電磁干渉が発生しているか否かを自動的に判定(検出)することができ、電波監視システムへの適用に有効である。また、簡素な構成で実現できることから、不法電波探査設備への搭載に適している。
【0071】
以上、ここで無線通信の場合には電磁波としたが、有線通信の場合には電気信号に置き換えることにより、同等の効果を得ることができる。
【0072】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【0073】
例えば、類似度は、ピアソンの相関係数に限られなくてもよい。例えば、類似度は、ケンドールの順位相関係数、スピアマンの順位相関係数であってもよい。また、類似度は、距離関数(非類似度)によって表現されてもよい。この場合、距離関数は、ユークリッド距離、チェビシェフ距離、マンハッタン距離、キャンベラ距離、ミンコフスキー距離であってもよい。類似度が距離関数によって表現される場合、
図10のステップSc3において、該距離関数が所定しきい値以上であれば、出力部は、電磁干渉が電磁波に発生していることを通知する。
【0074】
また、例えば、分類部は、クラスタに分類した結果をマッピングし、マッピングした結果(
図7を参照)を外部の表示装置に出力してもよい。
【0075】
また、例えば、分類部は、類似度が所定しきい値以上である組み合わせの一方の波形サンプルを、削除してもよい。また、分類部は、主成分分析、及び因子分析によって、直交する合成変量を求めることにより、分類に用いる変数を決定してもよい。
【0076】
また、例えば、有効な教師データが作成された後、電磁環境(電波利用状況)が変化しない限り、教師データ作成部は、電磁波識別装置から切り離されてもよい。これにより、電磁波識別装置は、小型化され、不法電波源の位置を特定する不法無線探査車両への搭載が容易となる。
【0077】
また、例えば、分類部は、波形サンプルをサンプリングした測定日時(受信時刻)に基づいて、波形サンプルをクラスタに分類してもよい。測定日時は、恒常的に使用される電磁波(例えば、携帯電話、テレビ、ラジオ)と、突発的に発生する電磁波(例えば、警察無線、消防無線、救急無線)とを識別する場合に、有効な特徴量となる。これにより、電磁波識別装置は、波形の振幅の統計量等の類似度分析結果と合わせて測定日時を比較すれば、電磁波を識別する精度を向上させることができる。
【0078】
また、例えば、分類部は、類似度が互いに小さい3つ以上の波形サンプルを選択してもよい(
図5のSa2)。例えば、分類部は、類似度が互いに小さい3つ以上の波形サンプルを選択した場合には、それぞれの波形サンプル間の類似度を変数とする多次元の変数を用いた分類(クラスタ分析)を実行してもよい。
【0079】
また、例えば、出力部は、三次元の変数により分類されたクラスタを、立体的なグラフにして表示してもよい。これにより、ユーザは、識別された電磁波を視覚的に把握することができる。
【0080】
また、例えば、電磁波が受信される予め定められた頻度及び時刻を示す情報は、外部の記憶媒体等に予め記憶されていてもよい。
【0081】
なおまた、以上に説明した装置を実現するためのプログラムを、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録し、そのプログラムをコンピュータシステムに読み込ませて実行するようにしてもよい。なおまた、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。更に「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。更に、前述した機能をコンピュータシステムに既に記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。