(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、
図1〜
図14を参照して、この発明を電子レジスタに適用した一実施形態について説明する。
この電子レジスタは、
図1および
図2に示すように、機器本体1を備えている。この機器本体1には、入力表示ユニット2、プリンタユニット3、および回転表示器4が搭載されている。
【0012】
入力表示ユニット2は、
図1〜
図4に示すように、ユニットケース5の上面にタッチ入力表示部6を設けたものであり、顧客が購入する商品の情報をオペレータがタッチ入力表示部6のタッチ操作によって入力するように構成されている。この場合、タッチ入力表示部6は、図示しないが、表示パネルの上面に透明なタッチパネルを配置した構成になっている。
【0013】
このタッチ入力表示部6は、
図1〜
図4に示すように、表示パネルに表示された情報を見ながらタッチパネルをタッチ操作して、売買する商品の情報を入力すると共に、その入力された情報が表示パネルに表示されるように構成されている。この場合、ユニットケース5は、
図1〜
図4に示すように、機器本体1の一部分(
図1では左側の部分)を除いた箇所の機器本体1上に、前下がりに傾斜した状態で配置されている。
【0014】
プリンタユニット3は、
図1〜
図5に示すように、機器本体1上に開閉可能に配置されたプリンタカバー7と、このプリンタカバー7の下側に位置する機器本体1の内部に設けられたプリンタ部8と、このプリンタ部8の近傍に位置する機器本体1内に設けられた記録紙収納部9とを備え、機器本体1における入力表示ユニット2の左隣に配置されている。
【0015】
プリンタカバー7は、
図1〜
図5に示すように、入力表示ユニット2の上面とほぼ同じ高さで、且つ前下がりに傾斜した状態で、機器本体1上に配置されている。プリンタ部8は、印字部とプラテン部とを備え、これらの間に記録紙収納部9に収納された記録紙10が送り込まれ、この送り込まれた記録紙10に印刷情報を印刷して送り出するように構成されている。
【0016】
すなわち、このプリンタ部8は、
図5(a)および
図5(b)に示すように、記録紙収納部9内に収納されたロール状の記録紙10を順次引き出し、この引き出した記録紙10に印刷情報を印刷し、この印刷した記録紙10をプリンタカバー7に設けられた記録紙排出口7aから機器本体1の外部に排出するように構成されている。
【0017】
また、回転表示器4は、
図1〜
図5に示すように、オペレータが入力した情報を表示し、この表示した情報を顧客が見えるようにするためのものである。すなわち、この回転表示器4は、表示ケース11に情報を表示する表示パネル12を設け、この表示ケース11を支持機構13によって機器本体1に対して上下方向に伸縮移動可能に支持するように構成されている。
【0018】
この場合、表示ケース11は、
図1〜
図5に示すように、横長の長方形の箱状に形成されている。また、表示パネル12は、液晶表示素子やEL(エレクトロ・ルミネッセンス)表示素子などの平面型の表示素子からなり、表示ケース11の背面側に位置する側面に横長状態で配置され、オペレータが入力した情報などの電子レジスタに必要な各種の情報を電気光学的に表示するように構成されている。これにより、この回転表示器4は、
図1〜
図5に示すように、機器本体1の背面に設けられた表示収納部14内に出没可能に収納されるように構成されている。
【0019】
ところで、入力表示ユニット2は、
図2および
図6に示すように、支持装置15によって機器本体1上に傾きが可変可能な状態で支持されるように構成されている。すなわち、この支持装置15は、
図6および
図7に示すように、機器本体1に対する入力表示ユニット2の傾き角度を可変可能な状態で、入力表示ユニット2を機器本体1に対して支持する回転支持機構部16を備えている。
【0020】
また、この支持装置15は、回転支持機構部16のほかに、
図7〜
図14に示すように、回転支持機構部16を駆動させて機器本体1に対する入力表示ユニット2の傾きを変化させるための駆動機構部17と、この駆動機構部17の駆動状態において予め定められた以上の負荷が回転支持機構部16に加わった際に、駆動機構部17の駆動力を逃がすためのトルクリミッタ部18とを更に備えている。
【0021】
回転支持機構部16は、
図6および
図7に示すように、機器本体1の上面から側面に亘ってほぼ半円弧形状に窪んで形成された支持凹部20と、入力表示ユニット2のユニットケース5の下面にほぼ半円筒形状に突出して形成されて回転凸部21とを備えている。これにより、この回転支持機構部16は、回転凸部21が支持凹部20上に回転移動可能な状態で配置されるように構成されている。
【0022】
この場合、ユニットケース5の回転凸部21は、
図7〜
図10に示すように、ほぼ半円筒形状に形成されている。これにより、回転凸部21の外面(
図10では上面)はほぼ半円弧状の凸曲面に形成されており、この回転凸部21の内面(
図7では上面)はほぼ半円弧状の凹曲面に形成されている。また、機器本体1の支持凹部20は、その外面(
図7では上面)がほぼ半円弧形状の凹曲面に形成されており、この支持凹部20は、その内面(
図9では下面)がほぼ半円弧形状の凸曲面に形成されている。
【0023】
また、この回転支持機構部16は、
図7および
図9に示すように、回転凸部21を支持凹部20に回転移動可能に押し付けて保持するための保持部材22を備えている。この保持部材22は、回転凸部21の内周面に沿って相対的に回転移動する複数のローラ23と、この複数のローラ23の各軸23aに回転自在に取り付けられ、且つ回転凸部21の第1スリット溝24および支持凹部20の第2スリット溝25を通して支持凹部20の内部に挿入して取り付けられたローラ保持部26とを備えている。
【0024】
この場合、回転凸部21の第1スリット溝24は、
図7および
図10に示すように、回転凸部21の回転移動に伴ってローラ保持部26が相対的に移動する細長い孔であり、回転凸部21の軸方向における両側にそれぞれ位置した状態で、回転凸部21の円周方向に沿って後部から前部に亘って連続して形成されている。この第1スリット溝24の両側部には、ローラ23をガイドする一対のガイドリブ27が第1スリット溝24に沿ってそれぞれ形成されている。
【0025】
また、支持凹部20の第2スリット溝25は、
図7および
図9に示すように、ローラ保持部26が移動することなく挿入する長さの短い孔であり、支持凹部20の軸方向における両側にそれぞれ位置する箇所において、回転凸部21の第1スリット溝24に対応する複数個所、つまり支持凹部20の円周方向における後部と中間部とに位置する2箇所にそれぞれ設けられている。
【0026】
複数のローラ23は、
図7および
図9に示すように、それぞれ第1スリット溝24の両側に位置する一対のガイドリブ27内に回転移動可能に配置され、この状態で第1スリット溝24に沿って回転凸部21の内周面上を相対的に回転移動するように構成されている。ローラ保持部26は、板状部材からなり、回転凸部21の第1スリット溝24および支持凹部20の第2スリット溝25に挿入された状態で、一端部(
図9では上端部)が回転凸部21内に挿入し、他端部(
図9では下端部)が支持凹部20の内部に挿入するように構成されている。
【0027】
すなわち、このローラ保持部26は、
図7および
図9に示すように、回転凸部21内に挿入した一端部(
図9では上端部)がローラ23の軸部20aに回転自在に取り付けられ、支持凹部20の内部に挿入した他端部(
図9では下端部)が支持凹部20内の取付部28に取付ピン28aによって回転可能に取り付けられている。これにより、ローラ保持部26は、その一端部に取り付けられたローラ23を回転凸部21の一対のガイドリブ27内で回転可能に保持し、この状態でローラ23を一対のガイドリブ27内において回転凸部21の内周面上を相対的に回転移動させるように構成されている。
【0028】
従って、保持部材22は、
図7および
図9に示すように、ローラ23が回転凸部21の一対のガイドリブ27間に位置する回転凸部21の内周面上を相対的に回転移動可能な状態で、ローラ保持部26によって回転凸部21の内周面に押し付けられていることにより、回転凸部21を支持凹部20上に回転移動可能な状態で押し付けて保持するように構成されている。
【0029】
この場合、支持凹部20の下辺部に位置する機器本体1内には、
図7に示すように、複数のガイドローラ29が回転自在に設けられている。この複数のガイドローラ29は、その上部側の一部が支持凹部20の下辺部における両側に設けられたガイド挿入孔29aから回転凸部21の外周面に向けて突出し、この突出した部分が回転凸部21の外周面に当接し、この状態で回転凸部21を回転移動可能に支持するように構成されている。これにより、ガイドローラ29は、回転凸部21の回転移動時に支持凹部20に対する回転凸部21の摩擦抵抗を軽減するように構成されている。
【0030】
一方、駆動機構部17は、
図8および
図11に示すように、回転支持機構部16を動作させて機器本体1に対する入力表示ユニット2の傾きを変化させるためのものである。この駆動機構部17は、機器本体1内に設けられたモータ部30と、支持凹部20に設けられた開口部31から回転凸部21に向けて上部側の一部が突出し、この状態でモータ部30の回転に応じて回転する駆動歯車32と、支持凹部20に対面する回転凸部21の外面にその円周方向に沿って設けられ、且つ駆動歯車部32の上部側の一部が噛み合って回転する従動歯車33とを備えている。
【0031】
駆動歯車32は、
図8および
図11に示すように、支持凹部20に対応する機器本体1内に回転自在に取り付けられた回転軸34に、その円周方向に回転可能な状態および軸方向にスライド可能な状態で取り付けられている。この回転軸34は、モータ部30によって駆動されて回転するように構成されている。また、駆動歯車32は、後述するトルクリミッタ部18によって回転軸34の回転が伝達されて回転軸34と共に回転するように構成されている。
【0032】
従動歯車33は、
図10および
図11に示すように、回転凸部21の外周面にその円周方向に沿って設けられた円弧状に湾曲したラックギアであり、支持凹部20に設けられた開口部31から回転凸部21に向けて突出した駆動歯車32の上部側の一部が噛み合うように構成されている。これにより、従動歯車33は、駆動歯車32の回転に応じて回転凸部21と共に回転移動することにより、回転凸部21を支持凹部20に対して回転移動させるように構成されている。
【0033】
トルクリミッタ部18は、
図12〜
図14に示すように、駆動機構部17によって駆動されて回転する回転軸34と、この回転軸34にその円周方向に回転可能な状態および軸方向にスライド可能な状態で取り付けられた駆動歯車32と、回転軸34に取り付けられてこの回転軸34と共に回転するピン部材35と、駆動歯車32の側面に設けられてピン部材35が係脱可能に係合する係止リング部36と、この係止リング部36にピン部材35を係合させる方向に向けて駆動歯車32を弾力的に付勢する付勢部材37とを備えている。
【0034】
ピン部材35は、
図12および
図13に示すように、回転軸34にその軸方向に対して直交する方向に設けられた取付孔34aに挿入されて両端部が突出した状態で、回転軸34に取り付けられている。係止リング部36は、駆動歯車32の側面(
図12では左側に位置する側面)にリング形状に突出して設けられている。この係止リング部36の突出した側面には、ピン部材35の両端部が係脱可能に弾力的に係合する複数の係止溝36aが設けられている。
【0035】
この複数の係止溝36aは、
図12〜
図14に示すように、ピン部材35の円形断面のほぼ半分の大きさに対応する断面半円弧状の溝であり、係止リング部36の回転中心に対して放射状に形成されている。これにより、係止リング部36は、その複数の係止溝36aのいずれかにピン部材35が係合している状態のときに、回転軸34の回転を駆動歯車32に伝達し、またピン部材35が複数の係止溝36a内から弾力的に押し出されて離脱している状態のときに、回転軸34の回転が駆動歯車32に伝達されずに、駆動歯車32を空転させるように構成されている。
【0036】
付勢部材37は、
図12および
図13に示すように、コイルばねなどのばね部材であり、駆動歯車32を挟んでピン部材35と反対側に位置する回転軸34の外周面に配置され、この状態でEリングなどの取付リング38によって回転軸34に取り付けられている。すなわち、この付勢部材37は、係止リング部36と反対に位置する駆動歯車32の側面(
図12では右側面)を弾力的に押圧して、ピン部材35を駆動歯車32の係止リング部36のいずれかの係止溝36aに弾力的に係合させるように構成されている。
【0037】
これにより、このトルクリミッタ部18は、
図12〜
図14に示すように、駆動歯車32が付勢部材37の付勢力によってピン部材35に向けて弾力的に押し付けられ、この駆動歯車32の係止リング部36に設けられた複数の係止溝36aのいずれかにピン部材35が係合している状態で、回転軸34が駆動機構部17のモータ部30によって駆動されて回転すると、その回転を駆動歯車32に伝達して駆動歯車32を回転させるように構成されている。
【0038】
また、このトルクリミッタ部18は、
図12〜
図14に示すように、回転軸34が駆動機構部17のモータ部30によって駆動されて回転し、その回転が駆動歯車32に伝達されて駆動歯車32が回転している状態で、予め定められた以上の負荷が駆動歯車32に加わると、付勢部材37の付勢力に抗してピン部材35が係止リング部36の係止溝36aから弾力的に押し出され、回転軸34の回転が駆動歯車32に伝達されず、駆動歯車32を空転させるように構成されている。
【0039】
すなわち、このトルクリミッタ部18の予め定められた以上の負荷とは、付勢部材37の付勢力によってピン部材35が駆動歯車32の係止リング部36に設けられた複数の係止溝36aのいずれかに係合する係合力、つまり付勢部材37の付勢力程度の負荷のことであり、駆動機構部17のモータ部30の駆動状態において、付勢部材37の付勢力以上の負荷が駆動歯車32に加わった際に、ピン部材35を係止リング部36の係止溝36aから押し出して離脱させる程度の負荷である。
【0040】
次に、このような電子レジスタの作用について説明する。
この電子レジスタでは、オペレータが入力表示ユニット2のタッチ入力表示部6を操作して、顧客が購入する商品の値段や商品名などの情報を入力すると、その入力された情報がタッチ入力表示部6および回転表示器4の表示パネル12に表示される。これにより、オペレータは入力表示ユニット2のタッチ入力表示部6に表示された情報を見て、入力した情報を確認することができると共に、顧客は回転表示器4の表示パネル12に表示された情報を見て、入力された情報を確認することができる。
【0041】
このように表示された情報をプリンタ部8で記録紙10に印刷して、レシートとして発行する。このときには、オペレータがタッチ入力表示部6をタッチ操作してプリンタ部8を動作させる。すると、プリンタ部8がロール状の記録紙10を順次引き出し、この引き出した記録紙10に印刷情報を順次印刷する。この印刷された記録紙10は、プリンタカバー7の記録紙排出口7aから機器本体1の外部に送り出され、レシートとして発行される。
【0042】
次に、入力表示ユニット2をオペレータが見やすい角度に傾ける場合について説明する。
このときには、入力表示ユニット2のスイッチ部2aを操作して駆動機構部17のモータ部30を駆動する。すると、モータ部30によって回転軸34が駆動されて回転する。このときには、トルクリミッタ部18の付勢部材37の付勢力によって駆動歯車32がピン部材35に弾力的に押し付けられている。
【0043】
このため、駆動歯車32の係止リング部36に設けられた複数の係止溝36aのいずれかにピン部材35が係合しているので、回転軸34の回転が駆動歯車32に伝達され、この回転軸34の回転に応じて駆動歯車32が回転する。このときには、駆動歯車32が入力表示ユニット2のユニットケース5における回転凸部21の外周面に設けられた従動歯車33に駆動歯車32が噛み合っているので、この駆動歯車32の回転が従動歯車33に伝達される。これにより、従動歯車33が駆動歯車32の回転に伴って回転移動する。
【0044】
すると、従動歯車33と共にユニットケース5の回転凸部21が機器本体1の支持凹部20上を回転移動し、ユニットケース5を徐々に傾けながら起立させる。このときには、保持部材22のローラ23がローラ保持部26によって回転凸部21の一対のガイドリブ27間に位置する内周面に相対的に回転移動可能な状態で押し付けられている。このため、回転凸部21は支持凹部20に押し付けられた状態で、支持凹部20の外周面に沿って回転移動する。
【0045】
また、このときには、支持凹部20に対応する箇所の機器本体1内に設けられたガイドローラ29の一部が支持凹部20のガイド挿入孔29aから回転凸部21に向けて突出し、この突出したガイドローラの一部が回転凸部21の外周面に当接し、この状態で回転凸部21を回転移動可能に支持しているので、このガイドローラ29によって支持凹部20に対する回転凸部21の摩擦抵抗が軽減され、これにより回転凸部21が滑らかに回転移動する。
【0046】
そして、入力表示ユニット2のユニットケース5が機器本体1に対して最も傾斜して起立した際には、保持部材22のローラ保持部26が回転凸部21の第1スリット溝24の端部(
図7では下端部)に当接し、回転凸部21の回転移動が停止する。すると、回転凸部21の従動歯車33に噛み合っている駆動歯車32に大きな負荷、つまり予め定められた以上の負荷が加わる。すなわち、ピン部材35を駆動歯車32の係止リング部36に設けられた複数の係止溝36aのいずれかに係合させるための係合力である付勢部材37の付勢力よりも大きい負荷が加わる。
【0047】
このときには、トルクリミッタ部18のピン部材35が付勢部材37の付勢力に抗して駆動歯車32の側面に設けられた係止リング部36の係止溝36aから弾力的に押し出されて離脱する。すなわち、駆動機構部17のモータ部30の駆動状態で、予め定められた以上の負荷、つまり付勢部材37の付勢力以上の負荷が駆動歯車32に加わると、回転軸34に取り付けられたピン部材35が付勢部材37の付勢力に抗して係止リング部36の係止溝36aから弾力的に押し出され、回転軸34の回転が駆動歯車32に伝達されず、駆動歯車32が空転する。
【0048】
この状態で、ピン部材35が回転軸34と共に回転して係止リング部36の次に位置する係止溝36aに係合しても、再び、ピン部材35が付勢部材37の付勢力に抗して係止リング部36の係止溝36aから弾力的に離脱する。このため、保持部材22のローラ保持部26が回転凸部21の第1スリット溝24の端部に当接し、回転凸部21の回転移動が停止している状態では、駆動機構部17のモータ部30によって回転軸34が回転しても、その回転が駆動歯車32には伝達されない。これにより、トルクリミッタ部18によってモータ部30の回転を良好に逃がすことができる。
【0049】
また、この入力表示ユニット2を支持する支持装置15では、駆動機構部17のモータ部30が動作しているときにおいても、またモータ部30が停止しているときにおいても、入力表示ユニット2のユニットケース5をオペレータが手動操作によって自由に傾けることができる。すなわち、この支持装置15は、駆動機構部17のモータ部30の駆動状態で、予め定められた以上の負荷、つまり付勢部材37の付勢力以上の負荷が回転支持機構部16に加わった際に、駆動機構部17のモータ部30による駆動力をトルクリミッタ部18によって逃がすことにより、オペレータが手動操作によってユニットケース5を自由に傾けることができる。
【0050】
このときには、オペレータが駆動機構部17のモータ部30の駆動状態で、予め定められた以上の負荷、つまり付勢部材37の付勢力よりも大きい力でユニットケース5を傾けると、ユニットケース5の従動歯車33によって駆動歯車32が回転する。すると、回転軸34に取り付けられたピン部材35が付勢部材37の付勢力に抗して係止リング部36の係止溝36aから弾力的に押し出される。このため、駆動歯車32がユニットケース5の従動歯車33によって回転しても、この駆動歯車32の回転が回転軸34に伝達されず、駆動歯車32が空転する。
【0051】
このように、この入力表示ユニット2の支持装置15によれば、機器本体1に対する入力表示ユニット2の傾き角度を可変可能な状態で、入力表示ユニット2を機器本体1に対して支持する回転支持機構部16と、この回転支持機構部16を駆動させて機器本体1に対する入力表示ユニット2の傾きを変化させるための駆動機構部17と、この駆動機構部17の駆動状態で予め定められた以上の負荷が回転支持機構部16に加わった際に、駆動機構部17の駆動力を逃がすトルクリミッタ部18とを備えているので、複雑な制御回路を必要とせず、安全に且つ円滑に入力表示ユニット2を所定の傾斜角度に傾斜させることができる。
【0052】
すなわち、この支持装置15では、駆動機構部17によって回転支持機構部16を動作させることにより、入力表示ユニット2を機器本体1に対して円滑に且つ良好に回転させて傾けることができると共に、駆動機構部17によって回転支持機構部16が動作している際に、この回転支持機構部16に予め定められた以上の負荷が加わると、トルクリミッタ部18によって駆動機構部17の駆動力を逃がして、回転支持機構部16を空転させることができる。
【0053】
このため、複雑な制御回路を必要とせず、安全に且つ円滑に入力表示ユニット2を所定の傾斜角度に傾斜させることができると共に、駆動機構部17によって入力表示ユニット2を自動的に傾かせることができるほか、トルクリミッタ部18によって回転支持機構部16を強制的に回転させることができるので、オペレータが手動操作によって入力表示ユニット2の傾きを自由に可変させることができる。
【0054】
また、この支持装置15では、回転支持機構部16が、機器本体1の上面から側面に亘ってほぼ半円弧形状に窪んで形成された支持凹部20と、入力表示ユニット2におけるユニットケース5の下面にほぼ半円筒形状に突出して形成された回転凸部21とを備え、この回転凸部21を支持凹部20上に回転移動可能な状態で配置していることにより、支持凹部20のほぼ半円弧形状の凹曲面に沿って回転凸部21を安定させた状態で滑らかに回転移動させることができ、これによりユニットケース5を良好に傾けることができる。
【0055】
この場合、支持凹部20に対応する箇所の機器本体1内にガイドローラ29が設けられ、このガイドローラ29の一部が支持凹部20のガイド挿入孔29aから回転凸部21に向けて突出し、この突出したガイドローラの一部が回転凸部21の外周面に当接し、この状態で回転凸部21を回転移動可能に支持しているので、支持凹部20に対して回転凸部21が回転移動する際に、ガイドローラ29によって支持凹部20に対する回転凸部21の摩擦抵抗を軽減することができ、これにより回転凸部21を滑らかに且つ良好に回転移動させることができる。
【0056】
また、この回転支持機構部16は、回転凸部21を支持凹部20に回転移動可能な状態で保持する保持部材22を備えていることにより、支持凹部20上に配置された回転凸部21を支持凹部20に対して良好に保持させることができ、この状態で支持凹部20の凹曲面に沿って安定させて良好に回転移動させることができ、これによりユニットケース5を円滑に且つ良好に傾けることができる。
【0057】
すなわち、この保持部材22は、回転凸部21の内周面に沿って相対的に回転移動するローラ23と、このローラ23の軸23aに一端部が回転自在に取り付けられ、他端部が回転凸部21の第1スリット溝24および支持凹部20の第2スリット溝25を通して支持凹部20の内部に挿入して取り付けられたローラ保持部26とを備えていることにより、回転凸部21を支持凹部20に対して確実に且つ良好に保持することができると共に、回転凸部21を支持凹部20に沿って安定した状態で滑らかに回転移動させることができる。
【0058】
この場合には、支持凹部20の内部に取り付けられたローラ保持部26によって、ローラ23を回転凸部21の内周面に押し付けることができるので、回転凸部21を支持凹部20に対して良好に保持することができる。また、この保持部材22は、回転凸部21が支持凹部20上に沿って回転移動する際に、ローラ23が回転しながら回転凸部21の内周面に沿って相対的に移動するので、回転凸部21を安定した状態で支持凹部20に沿って滑らかに且つ良好に回転移動させることができる。
【0059】
また、この入力表示ユニット02の支持装置15によれば、駆動機構部17が、機器本体1内に設けられたモータ部30と、支持凹部20に設けられた開口部31から回転凸部21に向けて一部が突出し、この状態でモータ部31によって駆動されて回転する駆動歯車32と、支持凹部20に対面する回転凸部21の外周面にその円周方向に沿って設けられ、且つ駆動歯車部32の一部が噛み合って回転凸部21と共に回転する従動歯車33とを備えていることにより、モータ部30によって回転凸部21を自動的に回転移動させてユニットケース5を良好に傾けることができる。
【0060】
すなわち、この駆動機構部17は、モータ部30によって駆動歯車32が駆動されて回転し、その回転が回転凸部21の外周面にその円周方向に沿って設けられた従動歯車33に伝達されると、この従動歯車33が駆動歯車32の回転に応じて回転移動するので、この従動歯車33の回転移動に伴って回転凸部21を安定した状態で支持凹部20に沿って滑らかに且つ良好に回転移動させることができる。
【0061】
この場合、従動歯車33は回転凸部21の外周面に設けられた円弧状に湾曲したラックギアであり、駆動歯車32は従動歯車33よりも曲率半径が大幅に小さい小歯車であることにより、この駆動歯車32が従動歯車33に噛み合って回転する際に、駆動歯車32の回転速度よりも従動歯車33の回転移動の速度を遅くして減速させることができる。このため、回転凸部21をゆっくり回転移動させることができるので、ユニットケース5をゆっくり傾けることができ、これによっても安定させた状態で安全にユニットケース5を傾けることができる。
【0062】
さらに、この入力表示ユニット02の支持装置15によれば、トルクリミッタ部18が、駆動機構部17によって駆動されて回転する回転軸34と、この回転軸34にその円周方向に回転可能な状態および軸方向にスライド可能な状態で取り付けられた駆動歯車32と、回転軸34に取り付けられてその回転軸34と共に回転する係合部であるピン部材35と、駆動歯車32の側面に設けられてピン部材35が係脱可能に係合する係止リング部36と、この係止リング部36にピン部材35を係合させる方向に向けて駆動歯車32を付勢する付勢部材37とを備えていることにより、駆動機構部17の駆動状態で予め定められた以上の負荷が回転支持機構部16に加わった際に、駆動機構部17の駆動力を確実に且つ良好に逃がすことができる。
【0063】
すなわち、このトルクリミッタ部18によれば、付勢部材37の付勢力によって駆動歯車32の係止リング部36がピン部材35に弾力的に押し付けられ、この係止リング部36に設けられた複数の係止溝36aのいずれかにピン部材35が係合している状態で、モータ部30によって回転軸34が駆動されて回転すると、この回転軸34の回転を駆動歯車32に確実に且つ良好に伝達することができ、これによりユニットケース5を徐々に傾けながら安全に起立させることができる。
【0064】
また、このトルクリミッタ部18によれば、駆動機構部17の駆動状態で予め定められた以上の負荷、つまり付勢部材37の付勢力以上の負荷が回転支持機構部16に加わると、付勢部材37の付勢力に抗してピン部材35を駆動歯車32の係止リング部36の係止溝36aから弾力的に押し出して離脱させることができ、これにより回転軸34の回転が駆動歯車32に伝達されず、駆動歯車32を確実に空転させることができる。
【0065】
このため、駆動機構部17のモータ部30によって回転軸34が回転しても、その回転が駆動歯車32には伝達されず、トルクリミッタ部18によってモータ部30の駆動力を良好に逃がすことができる。これにより、モータ部30に必要以上の負荷が加わることがないので、モータ部30が焼き付けを起したり、駆動歯車32や回転軸34などの破損を防ぎ、駆動機構部17の故障を防ぐことができる。
【0066】
さらに、このトルクリミッタ部18によれば、駆動機構部17のモータ部30が動作しているときにおいても、またモータ部30が停止しているときにおいても、入力表示ユニット2のユニットケース5を手動操作によって自由に傾けることができる。
【0067】
すなわち、駆動機構部17のモータ部30の駆動状態で予め定められた負荷、つまり付勢部材37の付勢力よりも大きい力でユニットケース5を傾けると、回転凸部21の従動歯車33によって駆動歯車32が回転するが、回転軸34のピン部材35が付勢部材37の付勢力に抗して係止リング部36の係止溝36aから弾力的に押し出されるので、駆動歯車32の回転が回転軸34に伝達されず、駆動歯車32を空転させることができ、これによりユニットケース5を手動操作によって自由に傾けることができる。
【0068】
なお、上述した実施形態では、トルクリミッタ部18が回転軸34に取り付けられたピン部材35を駆動歯車32に設けられた係止リング部36の係止溝36aに付勢部材37の付勢力によって係脱可能に係合させた場合について述べたが、これに限らず、回転軸34に固定板を設け、この固定板に係止リング部36の係止溝36aに係脱可能に弾力的に係合する突起部を設けた構成であっても良い。
【0069】
このようなトルクリミッタ部では、固定板の突起部が係止リング部36の係止溝36aに弾力的に係合する程度以上の負荷が駆動歯車32に加わった際に、その負荷によって固定板の突起部が弾性変形することにより、駆動機構部17の駆動力を逃がして、駆動歯車32を回転軸34に対して空転させることができ、このため付勢部材37を用いる必要がないので、部品点数を削減することができる。
【0070】
また、これに限らず、トルクリミッタ部は、例えば、回転軸34の一部の断面形状と、これが嵌合する駆動歯車32の軸孔の孔形状とを、それぞれ四角形、五角形、六角形などの多角形状や、楕円形状などの非円形状に形成すると共に、駆動歯車32を合成樹脂で形成し、この駆動歯車32の軸孔に弾力を持たせて軸孔を弾性変形可能に形成した構成であっても良い。
【0071】
このようなトルクリミッタ部では、駆動歯車32の軸孔が弾性変形する程度以上の負荷が駆動歯車32に加わった際に、その負荷によって駆動歯車32の軸孔が弾性変形することにより、駆動機構部17の駆動力を逃がして、駆動歯車32を回転軸34に対して空転させることができ、このためこのトルクリミッタ部においても、付勢部材37を用いる必要がないので、部品点数を削減することができる。
【0072】
さらに、上述した実施形態では、電子レジスタに適用した場合について述べたが、これに限らず、表示ユニットを備えた電子機器に広く適用することができる。
【0073】
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明は、これに限られるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲を含むものである。
以下に、本願の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0074】
(付記)
請求項1に記載の発明は、機器本体に対する表示ユニットの傾き角度を可変可能な状態で、前記表示ユニットを前記機器本体に対して支持する回転支持機構部と、この回転支持機構部を駆動させて前記機器本体に対する前記表示ユニットの傾きを変化させるための駆動機構部と、この駆動機構部の駆動状態において予め定められた以上の負荷が前記回転支持機構部に加わった際に、前記駆動機構部の駆動力を逃がすトルクリミッタ部と、を備えていることを特徴とする表示ユニットの支持装置である。
【0075】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の表示ユニットの支持装置において、前記回転支持機構部は、前記機器本体の上面から側面に亘ってほぼ半円弧形状に窪んで形成された支持凹部と、前記表示ユニットの下面にほぼ半円筒形状に突出して形成された回転凸部とを備え、この回転凸部が前記支持凹部上に回転移動可能な状態で配置されていることを特徴とする表示ユニットの支持装置である。
【0076】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の表示ユニットの支持装置において、前記支持凹部には、前記回転凸部の外周面に当接した状態で、前記支持凹部に対する前記回転凸部の回転移動に伴って回転するガイドローラが設けられていることを特徴とする表示ユニットの支持装置である。
【0077】
請求項4に記載の発明は、請求項2または請求項3に記載の表示ユニットの支持装置において、前記回転凸部を前記支持凹部に回転移動可能な状態で保持する保持部材を備えていることを特徴とする表示ユニットの支持装置である。
【0078】
請求項5記載の発明は、請求項4に記載の表示ユニットの支持装置において、前記保持部材は、前記回転凸部の内周面に沿って相対的に回転移動するローラと、このローラの軸に一端部が回転自在に取り付けられ、他端部が前記回転凸部の第1スリット溝および前記支持凹部の第2スリット溝を通して前記支持凹部の内部に挿入して取り付けられたローラ保持部とを備えていることを特徴とする表示ユニットの支持装置である。
【0079】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5のいずれかに記載の表示ユニットの支持装置において、前記駆動機構部は、前記機器本体内に設けられたモータ部と、前記支持凹部に設けられた開口部から前記回転凸部に向けて一部が突出し、この状態で前記モータ部によって駆動されて回転する駆動歯車と、前記支持凹部に対面する前記回転凸部の外周面にその円周方向に沿って設けられ、且つ前記駆動歯車の前記一部が噛み合って前記回転凸部と共に回転移動する従動歯車とを備えていることを特徴とする表示ユニットの支持装置である。
【0080】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜請求項6のいずれかに記載の表示ユニットの支持装置において、前記トルクリミッタ部は、前記駆動機構部によって駆動されて回転する回転軸と、この回転軸にその円周方向に回転可能な状態で取り付けられた前記駆動歯車と、前記回転軸に設けられた係合部と、前記駆動歯車に設けられて前記係合部が係脱可能に弾力的に係合する係止部とを備えていることを特徴とする表示ユニットの支持装置である。
【0081】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の表示ユニットの支持装置において、前記トルクリミッタ部の前記駆動歯車は、前記回転軸にその円周方向に回転可能な状態および軸方向にスライド可能な状態で取り付けられており、前記トルクリミッタ部の前記係合部は、前記回転軸に取り付けられたピン部材であり、前記トルクリミッタ部の前記係止部は、前記駆動歯車の側面に設けられ、且つ付勢部材の付勢力によってピン部材が係脱可能に係合する方向に向けて付勢されていることを特徴とする表示ユニットの支持装置である。