特許第5794047号(P5794047)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スズキ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5794047-自動二輪車の制御装置 図000002
  • 特許5794047-自動二輪車の制御装置 図000003
  • 特許5794047-自動二輪車の制御装置 図000004
  • 特許5794047-自動二輪車の制御装置 図000005
  • 特許5794047-自動二輪車の制御装置 図000006
  • 特許5794047-自動二輪車の制御装置 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5794047
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】自動二輪車の制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 29/02 20060101AFI20150928BHJP
   B62K 23/04 20060101ALI20150928BHJP
   B62M 7/02 20060101ALN20150928BHJP
【FI】
   F02D29/02 321B
   F02D29/02 321A
   B62K23/04
   !B62M7/02 Z
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-193105(P2011-193105)
(22)【出願日】2011年9月5日
(65)【公開番号】特開2013-53587(P2013-53587A)
(43)【公開日】2013年3月21日
【審査請求日】2014年6月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100103539
【弁理士】
【氏名又は名称】衡田 直行
(72)【発明者】
【氏名】照屋 洋志
【審査官】 立花 啓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−029191(JP,A)
【文献】 特開平01−115792(JP,A)
【文献】 特開2007−106346(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 29/00−29/06
B62K 23/04
B62M 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドルバーのスイッチユニットに設けられるモード切替スイッチによって走行モードを切り替えるための自動二輪車の制御装置であって、
前記スイッチユニットに設けられるエンジン始動用のスタータスイッチと、
ブレーキレバーの操作を検知するブレーキスイッチと、
運転者が前記エンジンの始動を要求したか否かを判定するエンジン始動要求判定手段と、
を備え、
前記エンジン始動要求判定手段は、前記ブレーキレバーが操作されて前記ブレーキスイッチがオン状態の時に前記エンジンが停止中であると判断した場合には前記エンジンの始動要求ありと判定してスタータモータを駆動し、前記ブレーキスイッチがオフ状態にあると判断した場合には前記エンジンが停止中か否かに拘わらず前記エンジンの始動要求なしと判定し、
前記エンジン始動要求手段が前記エンジンの始動要求なしと判定した場合、前記スタータスイッチを前記モード切替スイッチとして機能させることを特徴とする自動二輪車の制御装置。
【請求項2】
前記走行モードは、アイドルストップ制御を許可するアイドルストップ許可モードと、前記アイドルストップ制御を許可しないアイドルストップ不許可モードと、を含んでおり、前記モード切替スイッチは、前記アイドルストップ許可モードと前記アイドルストップ不許可モードとを切り換える機能を有していることを特徴とする請求項1に記載の自動二輪車の制御装置。
【請求項3】
前記エンジン始動要求判定手段は、前記エンジンが停止中でないと判断した場合には前記ブレーキスイッチがオン状態でも前記エンジンの始動要求なしと判定し、前記エンジン始動要求判定手段が前記エンジンの始動要求なしと判定した場合、且つ、前記スタータスイッチが数秒間長押しされた場合に、該スタータスイッチを前記モード切替スイッチとして機能させることを特徴とする請求項1又は2に記載の自動二輪車の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンドルバー上のスイッチユニットに設けられたモード切替スイッチによって走行モードを切り替えるための自動二輪車の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、小型自動車の走行モードを切り替えるための制御装置としては、例えば、特許文献1には、気筒の圧縮工程で燃料を噴射し、燃料の混合気を点火プラグの周りに偏在させることで成層燃焼を行い、機関効率を高める成層燃焼モードと、気筒の吸気工程で燃料を噴射し、理論空燃比又はそれよりリッチな均一混合気を形成して燃焼させる均一燃焼モードとを切り替えてエンジンを制御するエンジンの燃料噴射制御装置が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、駆動プーリと従動プーリとの間にVベルトを巻き掛け、このVベルトの巻き掛け径を連続的に変えて、変速比を制御するVベルト式無断変速機が備えられた自動二輪車であって、上記変速比を自動的に制御する自動モードと変速比を手動で設定可能にする手動モードとをさらに備え、これらのモードをハンドル端部に設けられたスイッチユニットのスイッチによって切り替え可能に構成した自動二輪車の制御装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献3には、運転者が任意にアイドリングストップ制御を解除できるよう、アイドルストップのオフスイッチが設けられたアイドルストップ制御装置が開示されている。
【0005】
ところで、自動二輪車やATV(All Terrain Vehicle)に代表される鞍乗型小型自動車は、上記した特許文献2にも見られるように、アクセル操作及びブレーキ操作をしながら走行モードの切り替えを行うには、ハンドルグリップに隣接して配置されたスイッチユニットに、モード切り替え用のスイッチを新たに設ける方が安全且つ容易に操作し易い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006‐9704号公報
【特許文献2】特許第4659374号公報
【特許文献3】特開2000‐289454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このスイッチユニットに新たにモード切り替え用のスイッチを設けると、スイッチユニット自体が大型化し、スイッチに運転者の指が届き難くなり、操作性が良くないといった問題がある。
【0008】
また、スイッチの数が増えることにより、スイッチユニットが複雑になり、運転者が誤操作するおそれがあるといった問題や、製造コストが増大する要因となるといった問題などもある。
【0009】
そこで、本発明は上記した課題に鑑みて成されたものであり、スイッチユニットを大型化及び複雑化することなく、走行モード切替スイッチを設けることのできる小型自動車の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した目的を達成するため、本発明は、ハンドルバーのスイッチユニットに設けられるモード切替スイッチによって走行モードを切り替えるための小型自動車の制御装置であって、前記スイッチユニットに設けられるエンジン始動用のスタータスイッチと、運転者が前記エンジンの始動を要求したか否かを判定するエンジン始動要求判定手段と、を備え、該エンジン始動要求手段が前記エンジンの始動要求なしと判定した場合、前記スタータスイッチを前記モード切替スイッチとして機能させることを特徴とする。
【0011】
この特徴によれば、スタータスイッチをモード切替スイッチとして共通に使用することができるため、スイッチユニットが大型化することがなく、運転者が簡単且つ確実に各スイッチを操作することができ、操作性の向上を図ることができる。また、スイッチの数を減らすことができ、スイッチユニットが簡略化されるため、運転者の誤操作を防止することができ、製造コストの削減を図ることができる。
【0012】
そして、本発明に係る小型自動車の制御装置において、前記走行モードは、アイドルストップ制御を許可するアイドルストップ許可モードと、前記アイドルストップ制御を許可しないアイドルストップ不許可モードと、を含んでおり、前記モード切替スイッチは、前記アイドルストップ許可モードと前記アイドルストップ不許可モードとを切り換える機能を有していることを特徴としてもよい。
【0013】
この特徴によれば、運転者がアイドルストップ許可モードとアイドルストップ不許可モードとの切り換え操作を簡単且つ確実に行うことができ、操作性の向上を図ることができる。
【0014】
また、本発明に係る小型自動車の制御装置において、前記エンジン始動要求判定手段は、前記スイッチユニットに設けられたブレーキスイッチがオン状態の時に前記エンジンが停止中であると判断した場合には前記エンジンの始動要求ありと判定し、前記スイッチユニットに設けられたブレーキスイッチがオフ状態にあると判断した場合或いは前記エンジンが停止中でないと判断した場合には前記エンジンの始動要求なしと判定することを特徴としてもよい。
【0015】
この特徴によれば、エンジンの始動要求のありなしの判定を確実に行うことができ、誤作動を防止し、小型自動車の信頼性を高めることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、スイッチユニットを大型化及び複雑化することなく、走行モード切替スイッチを設けることができる等、種々の優れた効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態に係る小型自動車の一例を示す側面図である。
図2】本発明の実施の形態に係る小型自動車の前部を後方から示す斜視図である。
図3図2の右側ハンドル部分を拡大して示す斜視図である。
図4】本発明の実施の形態に係る小型自動車の制御装置の構成を示すブロック図である。
図5】本発明の実施の形態に係る小型自動車の制御装置のメインの処理フローを示すフローチャートである。
図6】本発明の実施の形態に係る小型自動車の制御装置のエンジン始動要求判定処理フローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。本実施の形態では、本発明をスクータ型の自動二輪車1に適用した場合について例示して説明する。なお、以下の説明では、上下、左右、及び前後の方向は、自動二輪車1に乗車する運転者から見た方向を示すこととする。
【0019】
先ず、図1及び図2を参照しつつ、自動二輪車1の全体の構成について説明する。ここで、図1は自動二輪車1を示す側面図、図2は自動二輪車1の前部を後方から示す斜視図である。
【0020】
自動二輪車1には、車体の骨組みを構成する車体フレームが設けられており、この車体フレームは車体カバー2によって全体を覆われている。前記車体フレームの前端部にはフロントフォーク3が支持され、フロンフォーク3の下端に前輪4が軸支され、前輪4の上方を覆うようにフロントフェンダ5が設けられている。フロントフォーク3の上端には前輪4を操向する左右一対のハンドルバー6,7が設けられ、各ハンドルバー6、7の上方にはそれぞれバックミラー8,9が設けられている。
【0021】
左右のハンドルバー6,7の端部にはそれぞれハンドルグリップ10,11が装着され、各ハンドルグリップ10,11の前方にはそれぞれブレーキバー12,13が配置されている。また、各ハンドルグリップ10,11に隣接した位置には、スイッチユニット14,15がそれぞれ装着されている。
【0022】
前記車体フレームの後部にはスイングアーム16の前端部が支持され、スイングアーム16に駆動輪としての後輪17が軸支され、後輪17の上方を覆うようにリヤフェンダ18が設けられている。また、前記車体フレームの後部上方には運転者シート19が設けられている。
【0023】
図3図2の右側ハンドル部分を拡大して示す斜視図であり、スイッチユニット15には、自動二輪車1に乗車する運転者側から目視可能な位置に複数のスイッチ群が配置されている。なお、左側のスイッチユニット14に関しては公知の技術が採用されているため、詳細な説明は省略する。
【0024】
スイッチユニット15について具体的に説明すると、スイッチユニット15の上面寄りにはエンジン停止スイッチ(キルスイッチ)20が配置され、スイッチユニット15の後面中央付近には車幅方向に揺動可能なハザードスイッチ21が配置されている。また、スイッチユニット15には、ハザードスイッチ21の下方に近接してスタータスイッチ22が配置されており、このスタータスイッチ22は、自動二輪車1の走行モードを切り替えるためのモード切替スイッチとしても機能するように構成されている。そして、この走行モードは、アイドルストップ制御を許可するアイドルストップ許可モードと、前記アイドルストップ制御を許可しないアイドルストップ不許可モードと、を含んでいる。
【0025】
図4は自動二輪車1の制御装置30の構成を示すブロック図であり、図4中、実線は電源回路を示し、破線は信号の流れを示している。この制御装置30は、バッテリ32により電源を供給されるコントローラ31を備えており、このコントローラ31はエンジン始動要求判定手段としても機能する。コントローラ31には、ブレーキスイッチ34やスタータスイッチ22等のスイッチ群や、車速センサ24、クランク回転センサ25、水温センサ26、スロットルポジションセンサ27等のセンサ群から各種信号が入力され、これらの信号に基づき、スタータモータリレー28や燃料噴射・点火部品29等が制御される。
【0026】
次に、本発明の実施の形態に係る自動二輪車1の制御装置30の動作について図4及び図5図6を参照しながら説明する。ここで、図5は自動二輪車1の制御装置30のメインの処理フローを示すフローチャート、図6は自動二輪車1の制御装置30のエンジン始動要求判定処理フローを示すフローチャートである。
【0027】
図5に示すように、先ず、コントローラ31は、スタータスイッチ22がオン操作されたか否かを判断する(S10参照)。その結果、コントローラ31は、スタータスイッチ22がオン操作されたと判断した場合、次のステップのS20に進み、そうでない場合には、前記ステップのS10の処理を繰り返す。
【0028】
次のステップのS20では、コントローラ31はエンジン始動要求判定処理を実行する。
【0029】
図6に示すように、このエンジン始動要求判定処理では、先ず、コントローラ31はブレーキレバー12,13が操作されたか否かを判断する(S21参照)。その結果、コントローラ31は、ブレーキレバー12,13が操作されてブレーキスイッチ34がオン状態にあると判断した場合には、さらに、クランク回転センサ25から出力される信号によりエンジンが停止中か否かを判断し(S22参照)、エンジンが停止中であると判断した場合には、エンジンの始動要求ありと判定する(S23参照)。
【0030】
一方、コントローラ31は、前記ステップのS21においてブレーキスイッチ34がオン状態にないと判断した場合、或いは前記ステップのS22においてエンジンが停止中でないと判断した場合には、エンジンの始動要求なしと判定する(S24参照)。
【0031】
このように前記エンジン始動要求処理においてエンジンの始動要求ありと判定した場合、コントローラ31は、図4に示すように、スタータモータリレー28にオン信号を出力し、スタータモータ33に電源を供給させてスタータモータ33を駆動する(図5のS40参照)。
【0032】
一方、前記エンジン始動要求処理においてエンジンの始動要求なしと判定した場合、コントローラ31は、図4に示すように、スタータモータリレー28にオフ信号を出力し、スタータモータ33への電源を遮断させる。この結果、コントローラ31は、スタータスイッチ22をモード切替スイッチとして機能させ、アイドルストップ許可モードとアイドルストップ不許可モードと間での走行モード切り替え動作を実行する(S50参照)。
【0033】
そして、アイドルストップ許可モードに切り替えられた場合に、車速センサ24、クランク回転センサ25、水温センサ26等の検出値が所定条件を満たすと、コントローラ31は、自動的にエンジンを停止させる一方、エンジン停止後、スロットルポジションセンサ27によりスロットル開度を検知することにより、自動的にエンジンを始動させる。
【0034】
なお、スタータスイッチ22をモード切替スイッチとして機能させる場合、スタータスイッチ22が数秒間長押しされた場合にのみ走行モード切り替え動作を実行するように構成するのが好ましい。これにより、運転者の意図に反して走行モード切り替え動作が実行されるのをより確実に防止することができる。
【0035】
上記したように本発明の実施の形態によれば、スタータスイッチ22をモード切替スイッチとして共通に使用することができるため、スイッチユニット14,15が大型化することがなく、運転者が簡単且つ確実に各スイッチを操作することができ、操作性の向上を図ることができる。
【0036】
また、スイッチの数を減らすことができ、スイッチユニットが簡略化されるため、運転者の誤操作を防止することができ、コストの削減を図ることができる。
【0037】
なお、上記した実施の形態では、走行モードとしてアイドルストップ許可モードとアイドルストップ不許可モードを例示して説明したが、本発明はこの種の走行モードに限定されるものではなく、例えば、燃焼モードの切り替えや、変速比の自動モードと手動モードとの切り替え等、他の走行モードについても適用可能である。
【0038】
また、上記した実施の形態の説明においては、本発明をスクータ型の自動二輪車1に適用した場合について説明したが、これは単なる例示に過ぎず、本発明は他のタイプの小型自動車にも適用可能であることは言う迄もない。
【符号の説明】
【0039】
1 自動二輪車(小型自動車)
6,7 ハンドルバー
14,15 スイッチユニット
22 スタータスイッチ
30 制御装置
31 コントローラ(エンジン始動要求判定手段)
34 ブレーキスイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6