(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
1.オレフィン重合用触媒成分およびその製造方法
本発明のオレフィン重合用触媒成分には、次の特性1、特性2及び特性3を有するイオン交換性層状珪酸塩を使用する。
特性1:イオン交換性層状珪酸塩の窒素吸着法により測定した平均細孔径が2〜6nmであること。
特性2:イオン交換性層状珪酸塩の窒素吸着法により測定した細孔径2〜6nmの範囲の微小細孔容積が0.14ml/g以上であること。
特性3:下記式(1)で表されるR以下の粒径を有するイオン交換性層状珪酸塩粒子の含有量有量が10重量%以下であること。
R=(イオン交換性層状珪酸塩粒子の平均粒径)×0.50・・・式(1)
【0015】
ここで窒素吸着法による平均細孔径、細孔容積およびBET比表面積の測定方法について、以下に示す。
固体による気体の吸着量は、温度一定の場合、固体と気体が決まれば、吸着相互作用のポテンシャルは、ほぼ一定であると考えることができるので、吸着量は、圧力のみの関数となり、これを一般的に吸着等温線と呼ぶ。吸着ガスを窒素として、液体窒素温度下で吸着等温線を測定し、得られた吸着等温線を用いて、BET多点法解析を実施し、比表面積を求めた。
BET比表面積は、一般的に相対圧P/P
0(P
0は大気圧)=0.05〜0.35付近で、良い直線が得られる範囲で解析され、BETプロットを確認しながら、解析範囲を決めた。
また、細孔容積は、吸着側及び脱離側吸着等温線を用いて、BJH法解析により細孔分布を求めた。求めた細孔容積の範囲は、イオン交換性層状珪酸塩の粒子内細孔であることを考慮して、メソ孔細孔(細孔径2〜50nm)を対象とした。尚、細孔の大きさによってミクロ孔、メソ孔、マクロ孔に分けられ、IUPACでは、直径2nm以下の細孔をミクロ孔、直径2〜50nmの細孔をメソ孔、直径50nm以上の細孔をマクロ孔と定義している。
【0016】
本発明では、平均細孔径は、細孔構造を円筒形と仮定して、細孔容積とBET比表面積から、以下の式に従い、算出した。
(平均細孔径)=(4×全細孔容積)/(BET多点法による比表面積)
【0017】
本発明において、イオン交換性層状珪酸塩の窒素吸着法により測定した平均細孔径は、2〜6nmであり、好ましくは4〜6nmである。平均細孔径が2nm以下になると、金属錯体が担持する部位がなくなってしまうと考えられ、活性が低下する。一方、平均細孔径が6nmを超えると、大きいサイズの細孔が多くなって、触媒の均一な活性化が損なわれ、また、活性点が減少してしまうと考えられ、活性が低下してしまう。
【0018】
また、そのメソ孔細孔のうち、細孔径が2〜6nmの範囲の細孔を微小細孔とした。
本発明では、窒素吸着法により測定したイオン交換性層状珪酸塩の細孔径2〜6nmの範囲の微小細孔容積は、0.14ml/g以上であり、好ましくは0.15ml/g以上である。上限は、0.4ml/gである。
微小細孔容積が0.14ml/gより小さいと、活性が低下してしまう。この容量は、大きいほうが好ましいが、大きすぎると、粒子が脆くなって形状を保てなくなり、粉体性状が悪化してしまう。
【0019】
また、本発明では、下記式(1)で表されるR以下の粒径を有するイオン交換性層状珪酸塩粒子の含有量が10重量%以下であることに特徴がある。
R=(イオン交換性層状珪酸塩粒子の平均粒径)×0.50・・・式(1)
【0020】
ここで、オレフィン重合において、微粉や凝集体、塊状物の発生は、重合ポリマーの反応器壁への付着、配管等の閉塞等を生じ、安定運転の阻害になる。重合工程において、それら微粉や凝集体を除去することも、可能であるが、オレフィン重合においては、オレフィン重合用触媒の形態や粒径、粒径分布が重合ポリマーの形態や粒径、粒径分布を反映するため、オレフィン重合触媒の微粉を防止することが、重合ポリマーの反応器への微粉付着や凝集体生成による配管閉塞などを防止することができる。
【0021】
本発明において、イオン交換性層状珪酸塩粒子は、オレフィン重合触媒の担体兼助触媒として作用するが、その担体機能を反映し、上記R以下の粒径を有する粒子の含有量が少ない場合に、重合ポリマーの微粉の発生を抑制でき、上述の重合時の問題の発生を防止できることを見出した。ここで、イオン交換性層状珪酸塩粒子の平均粒径は、適用する重合プロセスや製造する重合ポリマーの特性によって変わってくるが、5μm以上、200μm以下であり、球状であることが好ましい。好ましくは、10μm以上100μm以下である。微粒子が多く存在すると、反応器への付着等が起こりやすく、ポリマー同士の凝集、重合プロセスによっては、ショートパスあるいは長期滞留の要因となってしまい、好ましくない。R以下の粒径を有するイオン交換性層状珪酸塩粒子の含有量が10重量%以下であり、好ましくは8重量%以下であり、さらに好ましくは5重量%以下である。
イオン交換性層状珪酸塩粒子の平均粒径および粒径分布の測定は、公知の粒径分布測定方法によって、測定することができる。
【0022】
本発明のイオン交換性層状珪酸塩粒子は、上記3つの特性を有することが好ましいが、更に、窒素吸着法により測定したイオン交換性層状珪酸塩粒子のBET比表面積が270m
2/g以上である特性を有することがより好ましい。比表面積は、活性種となり得る金属錯体の担持部位を制御し、より大きい方が好ましい。これより小さくなると、活性が低下する。一方、活性に対しては大きいことが好ましいが、大きすぎると、粒子が脆くなって形状を保てなくなり、粉体性状が悪化してしまう。BET比表面積の上限は、400m
2/gである。
【0023】
上記特性を有するイオン交換性層状珪酸塩は、以下の方法によって製造することができる。
本発明に使用されるイオン交換性層状珪酸塩の原料は、イオン結合などによって構成される面が互いに結合力で並行に積み重なった結晶構造を有し、かつ、含有されるイオンが交換可能である珪酸塩化合物をいう。多くのイオン交換性層状珪酸塩は、天然には粘土鉱物の主成分として産出されるため、その以外の夾雑物(石英やクリストバライト等が挙げられる。)が含まれることが多いが、それらを含んでいても良い。
また、本発明のイオン交換性層状珪酸塩は、天然のものに限らず、人工合成物であっても良い。当該、珪酸塩の具体例としては、例えば、「粘土鉱物学」(白水春雄著、朝倉書店、1995年)に記載されている次のようなものが挙げられる。
i)1:1層が主要な構成層であるデッカイト、ナクライト、カオリナイト、アノーキサイト、メタハロイサイト、ハロイサイト等のカオリン族、クリソタイル、リザルタイト、アンチゴライト等の蛇紋石族。
ii)2:1層が主要な構成層であるモンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト等のスメクタイト族珪酸塩、バーミキュライト等のバーミキュライト族珪酸塩、雲母、イライト、セリサイト、海緑石等の雲母族珪酸塩、アタパルジャイト、セピオライト、パリゴルスカイト、ベントナイト、パイロフィライト、タルク、緑泥石群等。
これらは混合層を形成していてもよい。
【0024】
これらの中では、膨潤性を有するイオン交換性層状珪酸塩が好ましい。また、主成分が2:1型構造を有するイオン交換性層状珪酸塩がより好ましい。さらに好ましくは、主成分がスメクタイト族珪酸塩であり、特に好ましくは、主成分がモンモリロナイトである。
八面体層を構成する金属の種類としては、アルミニウム、マグネシウム、鉄、チタンなどであり、その含有量は5〜20wt%である。他にも微量層間イオン(イオン交換性層状珪酸塩の層間に含有されるイオン)の種類としては、特に限定されないが、リチウム、ナトリウム等の周期律表第1族のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム等の周期律表第2族のアルカリ土類金属等、工業原料として比較的容易にかつ、安価に入手し得る観点から好ましい。
【0025】
本発明のイオン交換性層状珪酸塩は、造粒することが可能であり、また好ましい。造粒方法としては、特に制限されないが、好ましい造粒手法としては、撹拌造粒法、噴霧造粒法、転動造粒法、ブリケッティング、コンパクティング、押出造粒法、流動層造粒法、乳化造粒法、液中造粒法、圧縮成型造粒法等が挙げられる。より好ましくは、噴霧乾燥造粒や噴霧冷却造粒、流動層造粒、噴流層造粒、液中造粒、乳化造粒等が挙げられ、特に好ましくは噴霧乾燥造粒や噴霧冷却造粒が挙げられる。
【0026】
噴霧造粒を行う場合、原料スラリーの分散媒として、水あるいはメタノール、エタノール、クロロホルム、塩化メチレン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン等の有機溶媒を用いる。好ましくは水を分散媒として用いる。
球状粒子が得られる噴霧造粒の原料スラリー液中における層状珪酸塩の濃度は、0.1〜70wt%、好ましくは5〜50wt%、特に好ましくは7〜45wt%、非常に好ましくは10〜40wt%である。上記濃度の上限を超えると、球状粒子が得られず、また上記濃度の下限を下回ると、造粒体の平均粒径が小さくなりすぎる。球状粒子が得られる噴霧造粒の熱風の入口の温度は、分散媒により異なるが、水を例にとると、80〜260℃、好ましくは100〜220℃で行う。
【0027】
また、造粒の際に、有機物、無機溶媒、無機塩、各種バインダーを用いてもよい。用いられるバインダーとしては、例えば砂糖、デキストローズ、コーンシロップ、ゼラチン、グルー、カルボキシメチルセルロース類、ポリビニルアルコール、水ガラス、塩化マグネシウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硫酸マグネシウム、アルコール類、グリコール、澱粉、カゼイン、ラテックス、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、タール、ピッチ、アルミナゾル、シリカゲル、アラビアゴム、アルギン酸ソーダ等が挙げられる。
造粒前のイオン交換性層状珪酸塩の形状については、特に制限はなく、天然に産出する形状、人工的に合成した時点の形状でもよいし、また、粉砕、造粒、分級などの操作によって形状を加工したものを用いてもよい。
【0028】
造粒したイオン交換性層状珪酸塩の粒径は、5μm以上、200μm以下であり、球状であることが好ましい。5μm未満の微粒子が多く存在すると、酸処理時の洗浄時間に時間を要し、ろ過時の閉塞などが生じ、製造が困難となる。
本発明の特性を示すイオン交換性層状珪酸塩粒子は、酸処理を行うことによって製造できる。
【0029】
イオン交換性層状珪酸塩を酸で処理すると、先ず、交換性陽イオンが酸中に溶出し、次いで、結晶構造に影響を与えて分解し、八面体層を構成する金属が溶出していくようになる。
分解の程度は、酸の濃度、処理時間、酸の種類によって異なるが、マグネシウムを多く含むものが一般に大きく、次いで鉄の多いもの、アルミニウムの多いものの順になる。また、結晶度が高く粒子の大きいものほど分解性が低いが、これは、酸が結晶層間や結晶構造内に侵入することと関係している。
また、溶出については、結晶格子の全ての八面体層にミクロな空隙を有する均一な構造が生成すると考えられる均一溶出と、ある特定の部位の金属イオンが溶出して生成した珪酸と層状珪酸塩の複合体が生成する不均一溶出の機構が、考えられる。
高濃度な酸によって長時間酸処理を行うと、不均一溶出が優先して進行して、局所的に酸処理が進行したようになり、細孔構造としては、大きな細孔が増加することになる。従来、細孔容積を増加させることを目的とすれば、高濃度で処理することで得られ、製造効率も高いが、本発明の特性を示すイオン交換性層状珪酸塩は、得られない。
【0030】
本発明の特性を示すイオン交換性層状珪酸塩を製造するには、低い濃度の酸によって、または低い温度の処理温度によって、酸処理を行い、均一溶出が優先して進行するように、調製する。
それは、イオン交換性層状珪酸塩が酸処理される際に、粒子の崩壊が起こらない条件であり、かつイオン交換性層状珪酸塩が膨潤する状態において、穏やかな条件で酸処理し、膨潤させつつ酸により八面体構造層を構成する金属成分の溶出を均一にさせることによって、本発明のイオン交換性層状珪酸塩の特定の細孔構造が得られるためである。
【0031】
酸処理の条件としては、イオン交換性層状珪酸塩の八面体構造層を構成する主金属原子が均一に溶出する条件であれば、特に制限されないが、温度は40〜100℃がよく、好ましくは50〜95℃である。あまり温度を低下させると、極端に金属成分の溶出速度が低下し、製造効率が低下する。一方、温度を上げ過ぎると、平均細孔径の大きい細孔が増加し、微小細孔が減少してしまい、好ましくない。
また、酸処理時の酸濃度(反応系全体重量に対する酸の重量百分率)は、反応温度にもよるが、3〜20wt%がよく、好ましくは5〜15wt%、より好ましくは7〜12wt%である。濃度が低くなると、金属成分の溶出が進行せず、製造効率が低下する。一方、酸濃度が高いと、平均細孔径の大きい細孔が増加し、微小細孔が減少してしまい、好ましくない。
【0032】
また、イオン交換性層状珪酸塩の濃度は、3〜50wt%の範囲で調製できる。好ましくは5〜30wt%、さらに好ましくは5〜20wt%である。濃度が低くなると、金属成分の溶出が進行せず、製造効率が低下する。一方、濃度が高いと、スラリーの粘度が上昇してしまい、均一に攪拌混合が困難になる。
【0033】
使用する酸化合物は、塩酸、硫酸、硝酸、シュウ酸、安息香酸、ステアリン酸、プロピリオン酸、フマル酸、マレイン酸、フタル酸などの無機酸および有機酸が例示される。その中でも、無機酸が好ましく、塩酸、硝酸、硫酸がより好ましい。さらに好ましくは塩酸、硫酸であり、特に好ましくは硫酸である。
また、酸処理は、酸化合物単独だけでなく、酸化合物と塩化合物との共存下に処理を行うことが可能であり、また好ましい。さらに、酸処理を複数回に分けて行うことも、可能である。この場合には、反応系中のイオン強度を0.05mol/L以上、8.00mol/L以下にすることが好ましい。より好ましくは0.75mol/L以上、8.00mol/L以下であり、さらに好ましくは1.00mol/L以上、7.50mol/L以下である
上記イオン強度とは、一般的に理化学辞典などに記載されているように、溶液中に存在するイオンのモル濃度にイオンの電荷数の二乗をかけた総和に、0.5をかけたものとして定義する。すなわち、イオン強度は、下記の数式(2)で定義される。
イオン強度(mol/l)=0.5×Σ(溶液中のイオンのモル濃度(mol/L)×(イオンの電荷)
2) ・・・数式(2)
イオン強度を好ましい範囲にすることで、溶液中でイオン交換性層状珪酸塩粒子が過度の分散に起因する微粒子の発生を抑制し、酸処理の時間を短縮でき、製造効率を高めることができる。また、溶液中でイオン交換性層状珪酸塩粒子は、過度に膨潤が抑制されることなく、さらに凝集を抑制でき、より均一な処理が可能になる。
【0034】
また、造粒前、造粒時に、特定の微粒子状固体化合物をイオン交換性層状珪酸塩に添加することもよく、この場合には、通常の珪酸塩の酸処理と同時に微粒子状固体を溶出させることも目的の一つである。この場合、微粒子状固体は、中性付近の水中では難溶性を示し、酸性水溶液中では、溶解するものを使用することによって、微粒子状固体が存在していた部分を空孔に変えることが可能となる。
【0035】
酸処理によって溶出する八面体構造層を構成する主金属原子の割合は、酸処理前の含有量に対して、10〜70%であることが好ましい。より好ましくは10〜50%、さらに好ましくは30〜50%、特に好ましくは35〜45%である。溶出割合が小さいと、細孔容積が小さく、また、比表面積が小さくなってしまう。一方、溶出割合が大きいと、平均細孔径の大きい細孔が増加し、微小細孔が減少してしまい、好ましくない。
ここで、酸によって溶出する溶出割合とは、酸処理前のイオン交換性層状珪酸塩の八面体層を構成する主金属原子が、酸処理によって溶出する割合を示すが、その算出方法としては、イオン交換性層状珪酸塩の珪素原子に対する八面体層を構成する主金属原子とのモル比を、酸処理によって減少する割合として、求めたものである。
本発明において、主金属原子とは、モル数が最多の金属原子を指し、具体的には、アルミニウム(Al)原子、マグネシウム(Mg)原子などが該当する。
【0036】
上記酸処理を実施した後に、洗浄することが好ましい。この際、一般的には、水や有機溶媒などの液体を使用する。洗浄および脱水後は、乾燥を行う。一般的には、乾燥温度は100〜800℃、好ましくは150〜600℃で実施可能であり、特に好ましくは150〜300℃である。800℃を超えると、イオン交換性層状珪酸塩の構造破壊を生じるおそれがあるので、好ましくない。
【0037】
これらのイオン交換性層状珪酸塩は、構造破壊されなくとも、乾燥温度により特性が変化するために、用途に応じて乾燥温度を変えることが好ましい。乾燥時間は、通常1分〜24時間、好ましくは5分〜4時間であり、雰囲気は、乾燥空気、乾燥窒素、乾燥アルゴン、又は減圧下であることが好ましい。乾燥方法に関しては、特に限定されず各種方法で実施可能である。
【0038】
本発明のイオン交換性層状珪酸塩粒子は、膨潤する状態において、穏やかな条件で酸処理し、膨潤させつつ酸で端面を処理することが処理を均一にさせるため、酸処理を施していることが好ましいが、酸処理前、酸処理中または後に、さらに、塩類処理、インターカレーションなどの化学処理を施しても良い。酸処理中に塩を共存させることにより、より酸処理が均一に進行し、好ましい。
【0039】
一方で、酸処理する際に膨潤させすぎると、イオン交換性層状珪酸塩粒子が反応液中で分散して微粒子が発生し、微粉が生成することや、微粒子同士が凝集して、凝集体や塊状物を生成してしまい、好ましくない。酸処理前のイオン交換性層状珪酸塩粒子の膨潤力を23ml/2g以下にして処理すると、酸処理中の粒子の崩壊を抑制でき、形状を良好に保つことができることを見出した。好ましくは、20ml/2gである。
【0040】
イオン交換性層状珪酸塩は、水を吸着することで水との濡れ性が良くなり、水中で分散しやすくなる。さらに、層間に水が入り込むことで膨潤し、層状珪酸塩シートが一枚に剥離するような性質を持っている。その様な条件下で酸処理を行なうと、酸処理中に分散が生じ、酸処理前の粒径および粒径分布が変化してしまう。特性3の様な粒径分布を得るためには、酸処理において、適度に膨潤させ、均一に八面体構造層を構成する主金属原子を溶出させることが好ましい。
膨潤力が23ml/2gのイオン交換性層状珪酸塩を用いることが、微粉発生を抑制するために必要であるが、そもそも膨潤力の低い原料を用いても良いし、23ml/2gより高い膨潤力のイオン交換性層状珪酸塩を用いた場合には、それを23ml/2g以下に制御して用いても良い。
【0041】
膨潤力を制御するには、水との濡れ性を抑制するため、酸処理する前に加熱することで制御できる。加熱温度は、150〜500℃で行なうことが好ましい。さらに好ましくは180〜290℃であり、最も好ましくは180〜250℃である。加熱時間は、5分から24時間、好ましくは30分から10時間の範囲で行なわれる。一般的には150〜500℃の間で、イオン交換性層状珪酸塩表面の吸着水と層間水の脱離が進行する。この層間水の脱離により、水中での分散を適度に抑制することができ、粒子形態を維持したまま、均一な酸処理が可能となる。また、500℃以上の加熱では、イオン交換性層状珪酸塩の結晶構造中の水酸基の脱水縮合が進行し始めるため、化学的性質も変化し、触媒成分としての効果も低下する。
【0042】
酸処理前の好ましい状態であることを確認する方法として、イオン交換性層状珪酸塩の粉末X線測定による底面間距離も重要な因子である。イオン交換性層状珪酸塩の底面間距離は、層間水が完全に脱離した状態で1.0nmを示し、層間に水が挿入して広がっていくと1.2nm、1.4nmと段階的に大きくなっていき、さらに拡大していく。層間水を脱離した状態としては、層間が1.2nm以下であることが好ましい。
【0043】
膨潤力の測定方法は、日本ベントナイト工業会標準試験方法のベントナイトの膨潤試験方法(JBAS−104−77)に準じて行う。
具体的には、試料を2.0gとり、試料が親水性であるならば水、又は試料が疎水性であるならばトルエンのような有機溶媒100mlを入れたメスシリンダーに、試料を10回に分けて加える。このとき、先に加えた試料がほとんど沈着した後に、次の試料を加える。これを24時間静置して、沈降した器底の塊の見かけ容積を読み取る。本発明では、試料は、親水性なので、分散媒は水を用いた。単位はml/2gで示す。
また、酸処理後の形態については、特性3を満たすために、粉砕、分級などを行なっても良い。
【0044】
2.オレフィン重合用触媒
本発明のイオン交換性層状珪酸塩は、オレフィン重合用触媒成分として、好適に用いられる。オレフィン重合用触媒とは、一般的に、チーグラーナッタ触媒やメタロセン触媒などが挙げられる。
本発明では、好適には成分(a)、成分(b)および必要に応じて成分(c)を接触させて、オレフィン重合用触媒を調製することがきる。
成分(a):周期率表4〜6族遷移金属のメタロセン化合物
成分(b):上述したイオン交換性層状珪酸塩
成分(c):有機アルミニウム化合物
【0045】
(1)成分(a)
本発明で使用する成分(a)の周期率表4〜6族遷移金属のメタロセン化合物は、共役5員環配位子を少なくとも一個有するメタロセン化合物である。かかる遷移金属化合物として好ましいものは、下記一般式(1)〜(4)で表される化合物である。
【0047】
上記一般式(1)〜(4)中、AおよびA’は、置換基を有してもよい共役五員環配位子(同一化合物内においてAおよびA’は同一でも異なっていてもよい)を示し、Qは、二つの共役五員環配位子を任意の位置で架橋する結合性基を示し、Zは、窒素原子酸素原子、珪素原子、リン原子またはイオウ原子を含む配位子を示し、Q’は、共役五員環配位子の任意の位置とZを架橋する結合性基を示し、Mは、周期律表4〜6族から選ばれる金属原子を示し、XおよびYは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、アルコキシ基、アミノ基、リン含有炭化水素基または珪素含有炭化水素基(同一化合物内においてX及びX’は、同一でも異なっていてもよい。)を示す。
【0048】
AおよびA’としては、例えば、シクロペンタジエニル基を挙げることができる。シクロペンタジエニル基は、水素原子を五個有するもの[C
5H
5−]であってもよく、また、その誘導体、すなわちその水素原子のいくつかが置換基で置換されているものであってもよい。
この置換基の例としては、炭素数1〜40、好ましくは炭素数1〜30の炭化水素基である。この炭化水素基は、一価の基としてシクロペンタジエニル基と結合していても、また、これが複数存在するときに、その内の2個がそれぞれ他端(ω−端)で結合してシクロペンタジエニルの一部と共に環を形成していてもよい。後者の例としては、2個の置換基がそれぞれω−端で結合して、該シクロペンタジエニル基中の隣接した2個の炭素原子を共有して縮合六員環を形成しているもの、即ちインデニル基、テトラヒドロインデニル基、フルオレニル基、および縮合七員環を形成しているもの、即ちアズレニル基、テトラヒドロアズレニル基が挙げられる。
AおよびA’で示される共役五員環配位子の好ましい具体的例としては、置換または非置換のシクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基、またはアズレニル基等が挙げられる。この中で、特に好ましいものは、置換または非置換のインデニル基、またはアズレニル基である。
【0049】
シクロペンタジエニル基上の置換基としては、前記の炭素数1〜40、好ましくは炭素数1〜30の炭化水素基に加え、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子基、炭素数1〜12のアルコキシ基、例えば、−Si(R
1)(R
2)(R
3)で示される珪素含有炭化水素基、−P(R
1)(R
2)で示されるリン含有炭化水素基、または−B(R
1)(R
2)で示されるホウ素含有炭化水素基が挙げられる。これらの置換基が複数ある場合、それぞれの置換基は同一でも異なっていてもよい。上述のR
1、R
2、R
3は、同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜24、好ましくは炭素数1〜18のアルキル基を示す。
【0050】
さらに、シクロペンタジエニル基上の置換基として、少なくとも1つの第15〜16族元素(すなわち、ヘテロ元素)を有しても良い。この場合、ヘテロ元素自身を活性点近傍に、しかも金属と結合、配位することなく存在させて、活性点の性質を向上させようという思想から、第15〜16族元素と共役五員環配位子とを結合する原子数が1以下であるメタロセン錯体がさらに好ましい。
第15〜16族元素の配位子上の位置は、特に制限は無いが、2位の置換基上に有することが好ましい。さらに好ましくは2位の置換基が、5員又は6員環中に酸素原子、硫黄原子、窒素原子、及びリン原子よりなる群から選択されるヘテロ原子を含有する単環式又は多環式であることが好ましい。また、好ましくはケイ素もしくはハロゲンを含んでもよい炭素数4〜20のヘテロ芳香族基であり、ヘテロ芳香族基は、5員環構造が好ましく、ヘテロ原子は、酸素原子、硫黄原子、窒素原子が好ましく、酸素原子、硫黄原子がより好ましく、酸素原子がさらに好ましい。
【0051】
Qは、二つの共役五員環配位子間を任意の位置で架橋する結合性基を、Q’は、共役五員環配位子の任意の位置とZで示される基を架橋する結合性基を表す。
QおよびQ’の具体例としては、次の基が挙げられる。
(イ)メチレン基、エチレン基、イソプロピレン基、フェニルメチルメチレン基、ジフェニルメチレン基、シクロヘキシレン基等のアルキレン基類
(ロ)ジメチルシリレン基、ジエチルシリレン基、ジプロピルシリレン基、ジフェニルシリレン基、メチルエチルシリレン基、メチルフェニルシリレン基、メチル−t−ブチルシリレン基、ジシリレン基、テトラメチルジシリレン基等のシリレン基類
(ハ)ゲルマニウム、リン、窒素、ホウ素あるいはアルミニウムを含む炭化水素基類
【0052】
さらに、具体的には、(CH
3)
2Ge、(C
6H
5)
2Ge、(CH
3)P、(C
6H
5)P、(C
4H
9)N、(C
6H
5)N、(C
4H
9)B、(C
6H
5)B、(C
6H
5)Al(C
6H
5O)Alで示される基等である。好ましいものは、アルキレン基類およびシリレン基類である。
【0053】
また、Mは、周期律表第4〜6族から選ばれる金属原子遷移金属を、好ましくは周期律表第4属金属原子を示し、具体的にはチタン、ジルコニウム、ハフニウム等である。特に、ジルコニウム、ハフニウムが好ましい。
【0054】
Zは、窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、リン原子またはイオウ原子を含む配位子、水素原子、ハロゲン原子又は炭化水素基を示す。好ましい具体例としては、酸素原子、イオウ原子、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜12のチオアルコキシ基、炭素数1〜40、好ましくは炭素数1〜18のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜40、好ましくは炭素数1〜18の窒素含有炭化水素基、炭素数1〜40、好ましくは炭素数1〜18のリン含有炭化水素基、水素原子、塩素、臭素、炭素数1〜20の炭化水素基である。
【0055】
XおよびYは、各々水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10の炭化水素基、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10のアルコキシ基、アミノ基、ジフェニルフォスフィノ基等の炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜12のリン含有炭化水素基、またはトリメチルシリル基、ビス(トリメチルシリル)メチル基等の炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜12のケイ素含有炭化水素基である。XとYは同一でも異なってもよい。これらのうちハロゲン原子、炭素数1〜10の炭化水素基、および炭素数1〜12のアミノ基が特に好ましい。
【0056】
一般式(1)で表される化合物としては、例えば、
(1)ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(2)ビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(3)ビス(1,3−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(4)ビス(1−n−ブチル−3−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(5)ビス(1−メチル−3−トリフルオロメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(6)ビス(1−メチル−3−トリメチルシリルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(7)ビス(1−メチル−3−フェニルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(8)ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、
(9)ビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、
(10)ビス(2−メチル−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、
等が挙げられる。
【0057】
一般式(2)で表される化合物としては、例えば、
(1)ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−イソプロピル−4H−アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、
(2)ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、
(3)ジメチルシリレンビス〔1−{2−メチル−4−(4−フルオロフェニル)−4H−アズレニル}〕ジルコニウムジクロリド、
(4)ジメチルシリレンビス[1−{2−メチル−4−(2,6−ジメチルフェニル)−4H−アズレニル}]ジルコニウムジクロリド、
(5)ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4,6−ジイソプロピル−4H−アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、
(6)ジフェニルシリレンビス{1−(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、
(7)ジメチルシリレンビス{1−(2−エチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、
(8)エチレンビス{1−[2−メチル−4−(4−ビフェニリル)−4H−アズレニル]}ジルコニウムジクロリド、
(9)ジメチルシリレンビス{1−[2−エチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニリル)−4H−アズレニル]}ジルコニウムジクロリド、
(10)ジメチルシリレンビス{1−[2−メチル−4−(2’,6’−ジメチル−4−ビフェニリル)−4H−アズレニル]}ジルコニウムジクロリド、
(11)ジメチルシリレン{1−[2−メチル−4−(4−ビフェニリル)−4H−アズレニル]}{1−[2−メチル−4−(4−ビフェニリル)インデニル]}ジルコニウムジクロリド、
(12)ジメチルシリレン{1−(2−エチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}{1−(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(13)ジメチルシリレンビス{1−(2−エチル−4−フェニル−7−フルオロ−4H−アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、
(14)ジメチルシリレンビス{1−(2−エチル−4−インドリル−4H−アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、
(15)ジメチルシリレンビス[1−{2−エチル−4−(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)−4H−アズレニル}]ジルコニウムジクロリド、
(16)ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ジルコニウムビス(トリフルオロメタンスルホン酸)、
(17)ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(18)ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(19)ジメチルシリレンビス〔1−{2−メチル−4−(1−ナフチル)インデニル}〕ジルコニウムジクロリド、
(20)ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4,6−ジイソプロピルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
【0058】
(21)ジメチルシリレンビス{1−(2−エチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(22)エチレン−1,2−ビス{1−(2−メチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(23)エチレン−1,2−ビス{1−(2−エチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(24)イソプロピリデンビス{1−(2−メチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(25)エチレン−1,2−ビス{1−(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、
(26)イソプロピリデンビス{1−(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、
(27)ジメチルゲルミレンビス{1−(2−メチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(28)ジメチルゲルミレンビス{1−(2−エチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(29)フェニルホスフィノビス{1−(2−エチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(30)ジメチルシリレンビス[3−(2−フリル)−2,5−ジメチル−シクロペンタジエニル]ジルコニウムジクロリド、
(31)ジメチルシリレンビス[2−(2−フリル)−3,5−ジメチル−シクロペンタジエニル]ジルコニウムジクロリド、
(32)ジメチルシリレンビス[2−(2−フリル)−インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(33)ジメチルシリレンビス[2−(2−(5−メチル)フリル)−4,5−ジメチル−シクロペンタジエニル]ジルコニウムジクロリド、
(34)ジメチルシリレンビス[2−(2−(2−(5−トリメチルシリル)フリル)−4,5−ジメチル−シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(35)ジメチルシリレンビス[2−(2−チエニル)−インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(36)ジメチルシリレン[2−(2−(5−メチル)フリル)−4−フェニルインデニル][2−メチル−4−フェニルインデニル]ジルコニウムジクロリド、
(37)ジメチルシリレンビス(2,3,5−トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(38)ジメチルシリレンビス(2,3−ジメチル−5−エチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(39)ジメチルシリレンビス(2,5−ジメチル−3−フェニルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
等が挙げられる。
【0059】
一般式(3)で表される化合物としては、例えば、
(1)(テトラメチルシクロペンタジエニル)チタニウム(ビスt−ブチルアミド)ジクロリド、
(2)(テトラメチルシクロペンタジエニル)チタニウム(ビスイソプロピルアミド)ジクロリド、
(3)(テトラメチルシクロペンタジエニル)チタニウム(ビスシクロドデシルアミド)ジクロリド、
(4)(テトラメチルシクロペンタジエニル)チタニウム{ビス(トリメチルシリル)アミド)}ジクロリド、
(5)(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)チタニウム{ビス(トリメチルシリル)アミド}ジクロリド、
(6)(2−メチルインデニル)チタニウム(ビスt−ブチルアミド)ジクロリド、
(7)(フルオレニル)チタニウム(ビスt−ブチルアミド)ジクロリド、
(8)(3,6−ジイソプロピルフルオレニル)チタニウム(ビスt−ブチルアミド)ジクロリド、
(9)(テトラメチルシクロペンタジエニル)チタニウム(フェノキシド)ジクロリド、
(10)(テトラメチルシクロペンタジエニル)チタニウム(2,6−ジイソプロピルフェノキシド)ジクロリド、
等が挙げられる。
【0060】
一般式(4)で表される化合物としては、例えば、
(1)ジメチルシランジイル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(t−ブチルアミド)チタニウムジクロリド、
(2)ジメチルシランジイル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(シクロドデシルアミド)チタニウムジクロリド、
(3)ジメチルシランジイル(2−メチルインデニル)(t−ブチルアミド)チタニウムジクロリド、
(4)ジメチルシランジイル(フルオレニル)(t−ブチルアミド)チタニウムジクロリド、等が挙げられる。
【0061】
本発明で使用する遷移金属化合物としては、一般式(2)で示される化合物が好ましく、さらに、置換基に縮合七員環を形成しているもの、即ちアズレニル基、テトラヒドロアズレニル基を有する化合物が特に好ましい。
なお、一般式(1)〜(4)で示される遷移金属化合物は、同一の一般式で示される化合物および/または異なる一般式で表される化合物の二種以上の混合物として用いることができる。
これらの例示化合物のジクロリドは、ジブロマイド、ジフルオライド、ジメチル、ジフェニル、ジベンジル、ビスジメチルアミド、ビスジエチルアミド等に置き換えた化合物も、同様に例示される。さらに、例示化合物中のジルコニウム、チタニウムは、ハフニウムに置き換えた化合物も、同様に、例示される。
【0062】
(2)成分(c)
成分(c)は、有機アルミニウム化合物である。
本発明で成分(c)として用いられる有機アルミニウム化合物は、一般式:(AlR
nX
3−n)
m で表される有機アルミニウム化合物が使用される。式中、Rは、炭素数1〜20のアルキル基を表し、Xは、ハロゲン、水素、アルコキシ基又はアミノ基を表し、nは1〜3の、mは1〜2の整数を各々表す。有機アルミニウム化合物は、単独であるいは複数種を組み合わせて使用することができる。
【0063】
有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリノルマルプロピルアルミニウム、トリノルマルブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリノルマルヘキシルアルミニウム、トリノルマルオクチルアルミニウム、トリノルマルデシルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムセスキクロライド、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムジメチルアミド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、ジイソブチルアルミニウムクロライド等が挙げられる。
これらのうち、好ましくは、m=1、n=3のトリアルキルアルミニウム及びアルキルアルミニウムヒドリドである。さらに好ましくは、Rが炭素数1〜8であるトリアルキルアルミニウムである。
【0064】
(3)オレフィン重合用触媒の調製
本発明のオレフィン重合用触媒は、成分(a)と成分(b)及び必要に応じて成分(c)を接触させて、触媒とする。
その接触方法は、特に限定されないが、以下のような順序で接触させることができる。また、この接触は、触媒調製時だけでなく、オレフィンによる予備重合時またはオレフィンの重合時に行ってもよい。これらの接触において、接触を充分に行うため溶媒を用いてもよい。溶媒としては、脂肪族飽和炭化水素、芳香族炭化水素、脂肪族不飽和炭化水素やこれらのハロゲン化物、また予備重合モノマーなどが例示される。
(i)成分(a)と成分(b)を接触させる。
(ii)成分(a)と成分(b)を接触させた後に、成分(c)を添加する。
(iii)成分(b)と成分(c)を接触させた後に、成分(a)を添加する。
(iv)成分(a)と成分(c)を接触させた後に、成分(b)を添加する。
その他、三成分を同時に接触させてもよい。
【0065】
好ましい接触方法は、成分(b)と成分(c)を接触させた後、未反応の成分(c)を洗浄等で除去し、その後再度必要最小限の成分(c)を成分(b)に接触させ、その後、成分(a)を接触させる方法である。この場合のAl/遷移金属のモル比は、0.1〜1,000、好ましくは2〜10、さらに好ましくは4〜6の範囲である。
【0066】
成分(b)と成分(c)を接触させる(その場合、成分(a)が存在していても良い)温度は、0℃〜100℃が好ましく、さらに好ましくは20〜80℃、特に好ましくは30〜60℃である。この範囲より低い場合は、反応が遅く、また、高い場合は、成分(a)の分解反応が進行するという欠点がある。
また、成分(a)と成分(c)を接触させる(その場合、成分(b)が存在していても良い)場合には、有機溶媒を溶媒として存在させることが好ましい。この場合の成分(a)の有機溶媒中での濃度は、高い方が好ましい。好ましい成分(a)の有機溶媒中での濃度の下限は、好ましくは3mmol/L、より好ましくは4mmol/L、さらに好ましくは6mmol/Lである。下限を超えると、反応が遅く、十分に反応が進行しないおそれがある。
成分(b)1gにつき、遷移金属錯体が0.001〜10mmol、好ましくは0.001〜1mmolの範囲である。
成分(b)は、酸点を持つことが好ましい。好ましい酸点の量の下限は、成分(b)1gにつきpKa<−8.2以下の強酸点が30μmol、より好ましくは50μmol、さらに好ましくは100μmol、特に好ましくは150μmolである。酸点の量は、特開2000−158707号公報の記載の方法に従い、測定する。
【0067】
これらは、重合槽内で、あるいは重合槽外で接触させ、オレフィンの存在下で予備重合を行ってもよい。オレフィンとは、炭素間二重結合を少なくとも1個含む炭化水素をいい、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、3−メチルブテン−1、スチレン、ジビニルベンゼン等が例示されるが、特に種類に制限はなく、これらと他のオレフィンとの混合物を用いてもよい。好ましくは炭素数3以上のオレフィンがよい。
【0068】
また、本発明の触媒は、粒子性の改良のために、予めオレフィンを接触させて少量重合されることからなる予備重合処理に付すことが好ましい。使用するオレフィンは、特に限定はないが、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、ビニルシクロアルカン、スチレンなどを使用することが可能であり、特にプロピレンを使用することが好ましい。
オレフィンの供給方法は、オレフィンを反応槽に定速的にあるいは定圧状態になるように維持する供給方法やその組み合わせ、段階的な変化をさせるなど、任意の方法が可能である。
【0069】
予備重合時間は、特に限定されないが、5分〜24時間の範囲であることが好ましい。また、予備重合量は、予備重合ポリマー量が、成分(b)1gに対し、好ましくは0.01〜100g、さらに好ましくは0.1〜50gである。予備重合を終了した後に、触媒の使用形態に応じ、そのまま使用することが可能であるが、必要ならば乾燥を行ってもよい。
また、予備重合温度は、特に制限は無いが、0℃〜100℃が好ましく、より好ましくは10〜70℃、特に好ましくは20〜60℃、さらに好ましくは30〜50℃である。この範囲を下回ると、反応速度が低下したり、活性化反応が進行しないという弊害が生じる可能性があり、一方、上回ると、予備重合ポリマーが溶解したり、予備重合速度が速すぎて粒子性状が悪化したり、副反応のため活性点が失活するという弊害が生じる可能性がある。
【0070】
予備重合時には、有機溶媒等の液体中で実施することもでき、かつこれが好ましい。予備重合時の固体触媒の濃度には、特に制限は無いが、好ましくは50g/L以上、より好ましくは60g/L以上、特に好ましくは70g/L以上である。濃度が高い方がメタロセンの活性化が進行し、高活性触媒となる。
さらに、上記各成分の接触の際、もしくは接触の後に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどの重合体やシリカ、チタニアなどの無機酸化物固体を共存させることも可能である。
【0071】
予備重合後に触媒を乾燥してもよい。乾燥方法には、特に制限は無いが、減圧乾燥や加熱乾燥、乾燥ガスを流通させることによる乾燥などが例示され、これらの方法を単独で用いてもよいし、2つ以上の方法を組み合わせて用いてもよい。乾燥工程において触媒を攪拌、振動、流動させてもよいし、静置させてもよい。
【0072】
3.ポリオレフィンの製造方法
前記成分(a)、成分(b)、及び必要に応じて用いられる成分(c)からなるオレフィン重合用触媒を用いて行う重合は、オレフィン単独あるいは該オレフィンと他のコモノマーとを混合接触させることにより、行われる。
共重合の場合、反応系中の各モノマーの量比は、経時的に一定である必要はなく、各モノマーを一定の混合比で供給することも可能であるし、供給するモノマーの混合比を経時的に変化させることも可能である。また、共重合反応比を考慮してモノマーのいずれかを分割添加することもできる。
【0073】
重合し得るオレフィンとしては、炭素数2〜20程度のものが好ましく、具体的にはエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、スチレン、ジビニルベンゼン、7−メチル−1,7−オクタジエン、シクロペンテン、ノルボルネン、エチリデンノルボルネン等が挙げられる。好ましくは炭素数2〜8のα−オレフィンである。共重合の場合、用いられるコモノマーの種類は、前記オレフィンとして挙げられるものの中から、主成分となるもの以外のオレフィンを選択して用いることができる。
【0074】
重合様式は、触媒成分と各モノマーが効率よく接触するならば、あらゆる様式を採用しうる。具体的には、不活性溶媒を用いるスラリー法、不活性溶媒を実質的に用いずプロピレンを溶媒として用いる方法、溶液重合法あるいは実質的に液体溶媒を用いず各モノマーをガス状に保つ気相法などが採用できる。また、連続重合、回分式重合、又は予備重合を行う方法も適用される。
スラリー重合の場合は、重合溶媒として、ヘキサン、ヘプタン、ペンタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン等の飽和脂肪族又は芳香族炭化水素の単独又は混合物が用いられる。重合温度は、0〜150℃であり、また、分子量調節剤として補助的に水素を用いることができる。重合圧力は、0〜2000kg/cm
2G、好ましくは0〜60kg/cm
2Gが適当である。
【実施例】
【0075】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、物性測定に使用した分析機器および測定方法は、以下の通りである。
【0076】
(各種物性測定法)
(1)イオン交換性層状珪酸塩の組成分析:
JIS法による化学分析により検量線を作成し、蛍光X線測定にて定量した。
(2)細孔測定および比表面積測定:
窒素吸脱着法による細孔分布および比表面積を測定した。液体窒素温度下で吸着等温線を測定した。得られた吸着側等温線を用いてBET多点法解析を実施し、比表面積を求めた。吸着側および脱離側吸着等温線を用いて、BJH法解析によりメソ孔細孔分布を求め、メソ細孔容積および微小細孔容積を求めた。
装置:カンタークローム社製オートソーブ3B
測定手法:窒素ガス吸着法
前処理条件:試料を200℃、真空下(1.3MPa以下)で2時間減圧加熱
試料量:約0.2g
ガス液化温度:77K
【0077】
(3)粒径分布の測定:
堀場製作所社製レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置LA−920を用い、分散溶媒をエタノール、屈折率1.3、形状係数1.0の条件で測定した。
(4)膨潤力の測定:
日本ベントナイト工業会標準試験方法のベントナイトの膨潤試験方法(JBAS−104−77)に準じて行った。試料を2.0gとり、水100mlを入れたメスシリンダーに、試料を10回に分けて加える。このとき、先に加えた試料がほとんど沈着した後に、次の試料を加える。これを24時間放置して、沈降した器底の塊の見かけ容積を読み取った。
(5)MFR(メルトマスフローレート):
タカラ社製メルトインデクサーを用い、JIS K7210の「プラスチック−熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレート(MFR)及びメルトボリュームフローレート(MVR)の試験方法」の試験条件:230℃、2.16kg荷重に準拠して、測定した。
【0078】
(6)ポリマー嵩密度:
重合体(ポリマー)の嵩密度(BD)をASTM D1895−69に準ずる装置を使用し、測定した。
(7)ポリマーの粒径分布:
サンプルパウダー20gについて、レッチェテクノロジー社製、粒度分布測定装置カムサイザーを使用して、DIN66141のQ3(0.5)(質量基準による累積分布Q3(x)のX=0.5の値)の粒子径を、平均粒径とした。また、微粉量は、粒度分布測定結果から、粒径212μm以下の粒子の割合を求めた。
【0079】
[実施例1]
1.オレフィン重合用触媒成分の調製(イオン交換性層状珪酸塩粒子の調製)
膨潤力が28ml/2gであるモンモリロナイト(水澤化学社製、平均粒径18μm、Al含有量8.87重量%、Si含有量33.7重量%、主金属原子=Al)を150gステンレス製のバッドに入れ、乾燥機で180℃、120分間加熱した。粉体を乾燥機から取り出し粉温を室温に戻した後、膨潤力を測定したところ23ml/2gであった。
撹拌翼と還流装置を取り付けた2Lセパラブルフラスコに、純水929gを投入し、96%硫酸104gを滴下した。内温が90℃になるまでオイルバスで加熱し、90℃に到達したところで、前述のモンモリロナイト100gを添加し撹拌した。このとき、酸濃度は8.8wt%で、粘土に対する酸濃度は10.1mmol/gだった。
その後90℃を保ちながら660分反応させた。この反応溶液を0.5Lの純水に移すことで反応を停止し、さらに、このスラリーをヌッチェと吸引瓶にアスピレータを接続した装置にて濾過し、その後1Lの純水で3回洗浄した。
回収したケーキは、120℃で終夜乾燥後、70g秤取り、次工程に用いた。
この粘土は、1Lプラスチックビーカーにて硫酸リチウム水和物108gを純水480mlに溶解した水溶液に加えて、室温で2時間反応させた。このスラリーをヌッチェと吸引瓶にアスピレータを接続した装置にて濾過し、0.7Lの純水で3回洗浄し、回収したケーキを120℃で終夜乾燥した。その結果、68.3gの化学処理モンモリロナイトを得た。
これを目開き53μmの篩にて篩い分けし、篩下部分を回収した。凝集体や塊状物はほとんどなく、篩回収率は98重量%であった。平均粒径が18μm、粒径R以下の割合は、4.8重量%であった。組成は、Alが4.72重量%、Siが31.5重量%であり、Alの溶出率は43%であった。なお、篩上下で組成は、変わらなかった。窒素吸着法により測定した平均細孔径は5.8nm、細孔径2〜6nmの範囲の微小細孔容積は0.17ml/gであった。BET比表面積は296m
2/gであった。結果を、表1に示す。
【0080】
2.触媒調製
以下の操作は、不活性ガス下、脱酸素、脱水処理された溶媒、モノマーを使用して実施した。
化学処理したモンモリロナイト粒子を容積200mlのフラスコに入れ、200℃でおよそ3時間(突沸がおさまってから2時間以上)減圧乾燥した。この乾燥モンモリロナイトの水分含量を測定したところ、水分値は0.92wt%であった。内容積1Lのフラスコに上記乾燥モンモリロナイト20.1gを秤量し、ヘプタン141ml、トリイソブチルアルミニウム(TiBA)のヘプタン溶液69.0ml(49.4mmol、濃度141.9mg/l)を加え、室温で1時間撹拌した。その後、ヘプタンで残液率1/100まで洗浄し、最後にスラリー量を100mlに調製した。これに、ヘプタン100mlとTnOAのヘプタン溶液3.1ml(濃度143.6mg/ml、1214μmol)を加えた。
ここに、別のフラスコ(容積200ml)中で、(r)−[1,1´−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウムジクロライド(合成は、特開平10−
226712号公報の実施例に従って実施した。)254mg(312.4μmol)にヘプタン(48mL)を加えたスラリーを加えて、60℃で60分間撹拌した。ヘプタンを追加して333mlに調製した。
窒素置換を行った内容積1Lの撹拌式オートクレーブに、上記調製したモンモリロナイト/メタロセン錯体を導入した。オートクレーブ内の温度が40℃に安定したところでプロピレンを10g/時間の速度で供給し、温度40℃を維持した。4時間後プロピレンの供給を停止し、さらに1時間維持して予備重合を行った。
予備重合終了後、残存プロピレンをパージして、予備重合触媒スラリーをオートクレーブより回収した。回収した予備重合触媒スラリーを静置し、上澄み液を215ml抜き出した。続いてTiBAのヘプタン溶液8.6ml(6.1mmol)を室温にて加え、その後、40℃にて1時間減圧乾燥した。これにより、触媒1g当たりポリプロピレン2.18g含む予備重合触媒が65.2g得られた。
【0081】
3.プロピレンの重合
内容積3Lの攪拌式オートクレーブ内をプロピレンで十分置換した後に、TiBAのヘプタン溶液2ml(2.02mmol)を加え、水素30ml、液体プロピレン750mlを導入し、70℃に昇温し、その温度を維持した。予備重合触媒をヘプタンでスラリー化し、触媒として(予備重合ポリマーの重量は除く)20mgを圧入し重合を開始した。内温を70℃に維持したまま、1時間重合を継続した。その後、エタノール5mlを加え重合反応を停止させた。残ガスをパージしてポリマーを得た。得られたポリマーを90℃で1時間乾燥した。
その結果、250gのポリマーが得られた。触媒活性は、12500g−PP/g−触媒であった。MFRは1.1g/10分、ポリマーの嵩密度は0.42g/cm
3であった。212μm以下の微粉の割合は0.3重量%であり、重合反応機の内壁には、微粉パウダーの付着はなかった。結果を表2に示す。
【0082】
[実施例2]
1.オレフィン重合用触媒成分の調製(イオン交換性層状珪酸塩粒子の調製)
モンモリロナイトの加熱温度を230℃にして、酸処理時の温度を80℃、反応時間360分とする以外は、実施例1のオレフィン重合用触媒成分の調製と同様に行なった。その結果、酸処理前の膨潤力は、18ml/2gであり、Alの溶出率は20%であった。
目開き53μmの篩いで篩い分けしたところ、篩下回収率は99重量%であり、凝集体や塊状物はなかった。窒素吸着法により測定した平均細孔径は5.7nm、細孔径2〜6nmの範囲の微小細孔容積は0.16ml/gであった。BET比表面積は275m
2/gであった。平均粒径は18μmであり、粒径R以下の割合は4.8重量%であった。結果を表1に示す。
【0083】
2.触媒の調製およびプロピレンの重合
上記で調製したオレフィン重合用触媒成分を用いて、実施例1と同様に、触媒の調製とプロピレンの重合を行なった。その結果、190gのポリマーが得られた。触媒活性は、9500g−PP/g−触媒であった。MFRは1.5g/10分、ポリマーの嵩密度は0.43g/cm
3であった。212μm以下の微粉の割合は0.2重量%であり、重合反応機の内壁には微粉パウダーの付着はなかった。結果を表2に示す。
【0084】
[実施例3]
1.オレフィン重合用触媒成分の調製(イオン交換性層状珪酸塩粒子の調製)
膨潤力が30ml/2gであるモンモリロナイト(水澤化学社製、平均粒径17μm、Al含有量9.55重量%、Si含有量32.9重量%、主金属原子=Al)を150gステンレス製のバッドに入れ、乾燥機で200℃、480分間加熱した。粉体を乾燥機から取り出し粉温を室温に戻した後、膨潤力を測定したところ23ml/2gであった。
酸処理時の反応時間540分とする以外は、実施例1のオレフィン重合用触媒成分の調製と同様に、行なった。その結果、Alの溶出率は36%であった。
目開き53μmの篩いで篩い分けしたところ、篩下回収率は90重量%であり、凝集体や塊状物はほとんどなかった。窒素吸着法により測定した平均細孔径は5.6nm、細孔径2〜6nmの範囲の微小細孔容積は0.16ml/gであった。BET比表面積は275m
2/gであった。平均粒径は17μmであり、粒径R以下の割合は3.8重量%であった。結果を表1に示す。
【0085】
2.触媒の調製およびプロピレンの重合
上記の調製したオレフィン重合用触媒成分を用いて、実施例1と同様に、触媒の調製とプロピレンの重合を行なった。その結果、230gのポリマーが得られた。触媒活性は、11500g−PP/g−触媒であった。MFRは1.2g/10分、ポリマーの嵩密度は0.43g/cm
3であった。212μm以下の微粉の割合は0.2重量%であり、重合反応機の内壁には微粉パウダーの付着はなかった。結果を表2に示す。
【0086】
[実施例4]
1.オレフィン重合用触媒成分の調製(イオン交換性層状珪酸塩粒子の調製)
400℃で、120分加熱する以外は、実施例3と同様の原料モンモリトナイトを用いて加熱処理したところ、膨潤力は13ml/2gであり、さらに、これを実施例3と同様に、酸処理を行なった結果、Alの溶出率は39%であった。
目開き53μmの篩いで篩い分けしたところ、篩下回収率は99重量%であり、凝集体や塊状物はなかった。窒素吸着法により測定した平均細孔径は5.8nm、細孔径2〜6nmの範囲の微小細孔容積は0.17ml/gであった。BET比表面積は290m
2/gであった。平均粒径は17μmであり、粒径R以下の割合は6.5重量%であった。結果を表1に示す。
【0087】
2.触媒の調製およびプロピレンの重合
上記の調製したオレフィン重合用触媒成分を用いて、実施例1と同様に、触媒の調製とプロピレンの重合を行なった。その結果、218gのポリマーが得られた。触媒活性は、10900g−PP/g−触媒であった。MFRは1.3g/10分、ポリマーの嵩密度は0.48g/cm
3であった。212μm以下の微粉の割合は0.1重量%であり、重合反応機の内壁には微粉パウダーの付着はなかった。結果を表2に示す。
【0088】
[実施例5]
1.オレフィン重合用触媒成分の調製(イオン交換性層状珪酸塩粒子の調製)
モンモリロナイトスラリー(水澤化学社製、スラリー濃度4%、Al含有量9.25重量%、Si含有量32.8重量%、主金属原子=Al)を噴霧造粒して45μmの造粒モンモリロナイトを調製した。このとき、乾燥室入り口温度は180℃であった。膨潤力を測定したところ、20ml/2gであった。
これを用いて、酸処理時間を360分とする以外は、実施例1と同様に、酸処理を行なった。その結果、Alの溶出率は28%であった。
目開き75μmの篩いで篩い分けしたところ、篩下回収率は95重量%であり、凝集体や塊状物は、なかった。窒素吸着法により測定した平均細孔径は5.7nm、細孔径2〜6nmの範囲の微小細孔容積は0.15ml/gであった。BET比表面積は288m
2/gであった。平均粒径は45μmであり、粒径R以下の割合は4.5重量%であった。結果を表1に示す。
【0089】
2.触媒の調製およびプロピレンの重合
上記の調製したオレフィン重合用触媒成分を用いて、実施例1と同様に、触媒の調製とプロピレンの重合を行なった。その結果、210gのポリマーが得られた。触媒活性は、10500g−PP/g−触媒であった。MFRは1.2g/10分、ポリマーの嵩密度は0.46g/cm
3であった。212μm以下の微粉の割合は0.0重量%であり、重合反応機の内壁には微粉パウダーの付着はなかった。結果を表2に示す。
【0090】
[比較例1]
1.オレフィン重合用触媒成分の調製(イオン交換性層状珪酸塩粒子の調製)
事前の加熱乾燥を行なわない以外は、実施例1と同様に、酸処理を行なった。膨潤力は28ml/2gであった。Alの溶出率は44%であった。
目開き53μmの篩いで、篩い分けしたところ、篩下回収率は20重量%であり、凝集体や塊状物が多く生成した。また、回収した粒子中にも微粉が多く、平均粒径は15μmであり、粒径R以下の割合は15.5重量%であった。窒素吸着法により測定した平均細孔径は5.7nm、細孔径2〜6nmの範囲の微小細孔容積は0.17ml/gであった。BET比表面積は309m
2/gであった。結果を表1に示す。
【0091】
2.触媒の調製およびプロピレンの重合
上記の調製したオレフィン重合用触媒成分を用いて、実施例1と同様に、触媒の調製とプロピレンの重合を行なった。その結果、220gのポリマーが得られた。触媒活性は、11000g−PP/g−触媒であった。MFRは1.5g/10分、ポリマーの嵩密度は0.39g/cm
3であった。212μm以下の微粉の割合は12.5重量%であり、粒子同士の付着による凝集も見られた。重合反応機の内壁には、微粉パウダーの付着が見られた。結果を表2に示す。
【0092】
[比較例2]
1.オレフィン重合用触媒成分の調製(イオン交換性層状珪酸塩粒子の調製)
100℃で、120分加熱する以外は、実施例1と同様の原料モンモリトナイトを用いて、加熱処理したところ、膨潤力は25ml/2gであり、さらに、これを実施例1と同様に、酸処理を行なった結果、Alの溶出率は41%であった。
目開き53μmの篩いで篩い分けしたところ、篩下回収率は23重量%であり、凝集体や塊状物が多く生成した。また、回収した粒子中にも微粉が多く、平均粒径は17μmであり、粒径R以下の割合は13.0重量%であった。窒素吸着法により測定した平均細孔径は5.6nm、細孔径2〜6nmの範囲の微小細孔容積は0.16ml/gであった。BET比表面積は288m
2/gであった。結果を表1に示す。
【0093】
2.触媒の調製およびプロピレンの重合
上記の調製したオレフィン重合用触媒成分を用いて、実施例1と同様に、触媒の調製とプロピレンの重合を行なった。その結果、250gのポリマーが得られた。触媒活性は、12500g−PP/g−触媒であった。MFRは1.1g/10分、ポリマーの嵩密度は0.35g/cm
3であった。212μm以下の微粉の割合は15.0重量%であり、粒子同士の付着による凝集も見られた。重合反応機の内壁には微粉パウダーの付着が見られた。結果を表2に示す。
【0094】
[比較例3]
1.オレフィン重合用触媒成分の調製(イオン交換性層状珪酸塩粒子の調製)
実施例1と同様の原料モンモリロナイトを用いて、加熱乾燥した後、純水を45.6g、酸濃度を40.0%とし、反応時間を300分とする以外は、実施例1と同様にして、イオン交換性層状珪酸塩の酸処理を行った。Alの溶出率は37%であった。
目開き53μmの篩いで篩い分けしたところ、篩下回収率は98重量%であり、凝集体や塊状物はなかった。回収した粒子の平均粒径は18μmであり、粒径R以下の割合は8.3重量%であった。窒素吸着法により測定した平均細孔径は8.4nm、細孔径2〜6nmの範囲の微小細孔容積は0.08ml/gであった。BET比表面積は195m
2/gであった。結果を表1に示す。
【0095】
2.触媒の調製およびプロピレンの重合
上記の調製したオレフィン重合用触媒成分を用いて、実施例1と同様に、触媒の調製とプロピレンの重合を行なった。その結果、100gのポリマーが得られた。触媒活性は、5000g−PP/g−触媒であった。MFRは1.8g/10分、ポリマーの嵩密度は0.43g/cm
3であった。212μm以下の微粉の割合は0.7重量%であり、重合反応機の内壁には、微粉パウダーの付着はなかった。結果を表2に示す。
【0096】
[比較例4]
1.オレフィン重合用触媒成分の調製(イオン交換性層状珪酸塩粒子の調製)
モンモリロナイトスラリー(水澤化学社製、スラリー濃度3%、Al含有量9.25重量%、Si含有量32.8重量%、主金属原子=Al)を噴霧造粒して、18μmの造粒モンモリロナイトを調製した。このとき、乾燥室入り口温度は120℃であった。膨潤力を測定したところ、45ml/2gであった。
これを用いて、実施例2と同様に、酸処理を行なった。その結果、乾燥後は、硬い塊状物となり、粒子が得られなかった。Alの溶出率は25%であった。塊状物であったので、粒径分布の測定はできなかった。また、触媒の調製もできなかった。
【0097】
[比較例5]
1.オレフィン重合用触媒成分の調製(イオン交換性層状珪酸塩粒子の調製)
50gのベンクレイSLの造粒体を磁製の蒸発皿に秤量し、電気炉に入れた。電気炉内に窒素を流通させ、窒素雰囲気を維持した。1時間かけて電気炉の内温を300℃まで上げ、8時間保持した。8時間後、加熱を停止し、内温が200℃以下になってから、取り出した。このとき、用いたベンクレイSLの膨潤力は28ml/2gであり、加熱後の膨潤力は18ml/2gであった。
丸底フラスコに、脱塩水180ml、濃硫酸20g、硫酸リチウム・一水和物13gを添加して、攪拌して溶解させた。オイルバスにより加熱し、水溶液内温を85℃に保った。ここに、300℃で加熱したベンクレイSLの造粒体20gを添加し、攪拌しながら2時間加熱を行った。その後、吸引ろ過により処理粘土を分取した。水溶液から硫酸を除去するため、500mlの脱塩水で洗浄を5回繰り返した。得られた処理粘土は、乾燥機で水分を除去した。このとき、得られた処理粘土は、薬さじで軽く押さえると、ほぐれる程度であった。目開きが74μmの篩により、処理粘土の粗粒子を分取しようとしたが、ほとんど回収されなかった。
このときAlの溶出率は7%であった。回収した粒子の平均粒径は17μmであり、粒径R以下の割合は7.8重量%であった。窒素吸着法により測定した平均細孔径は5.5nm、細孔径2〜6nmの範囲の微小細孔容積は0.11ml/gであった。BET比表面積は138m
2/gであった。結果を表1に示す。
【0098】
2.触媒の調製およびプロピレンの重合
上記の調製したオレフィン重合用触媒成分を用いて、実施例1と同様に、触媒の調製とプロピレンの重合を行なった(上記オレフィン重合用触媒成分の調製を2回実施して、触媒調製に用いた。)。その結果、86gのポリマーが得られた。触媒活性は、4300g−PP/g−触媒であった。MFRは2.5g/10分、ポリマーの嵩密度は0.35g/cm
3であった。212μm以下の微粉の割合は3.7重量%であり、重合反応機の内壁には微粉パウダーが若干付着していた。結果を表2に示す。
【0099】
【表1】
【0100】
【表2】
【0101】
表1、2から、実施例1〜5の触媒は、用いたイオン交換性層状珪酸塩の平均細孔径が2〜6nmであり、微小細孔容量が0.14ml/g以上と大きく、また、粒径R以下の割合が10重量%以下であるため、同じ条件で評価した比較例1〜3、5の触媒に比べて,触媒活性が高く、かつ微粉割合が低く、重合反応器への重合体粒子の付着がないことがわかる。尚、比較例4では、イオン交換性層状珪酸塩の粒子が得られず、また、触媒の調製もできなかった。