(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び2に記載のレジスト下層膜形成用組成物は、レジスト下層膜から基板へエッチングによりパターンを転写する際に下層膜パターンが曲がるなどの不具合が生じ、パターンを基板に良好に転写することできなくなるという問題があった。特に、最近では集積回路素子の微細化が進んでいるため、熱に起因する下層膜パターンの曲がりなどにより不具合が問題になっている。ここで、下層膜パターンが曲がることの原因としては、樹脂同士の架橋が十分でないため、レジスト下層膜の弾性率が不足していることが考えられる。
【0007】
また、特許文献3に記載のレジスト下層膜形成用組成物は、光重合性の化合物を含有しているが、エッチング耐性の低い材料を得ることを目的としており、本発明のレジスト下層膜とは異なる用途の材料を開示している。
【0008】
本発明は、上述のような従来技術の課題を解決するためになされたものであり、定在波防止効果を維持しつつ、弾性率及びエッチング耐性が高いレジスト下層膜を形成することができるレジスト下層膜形成用組成物及びパターン形成方法を提供することを目的とする。
【0009】
本発明者らは前記課題を達成すべく鋭意検討した結果、特定の構造を有する化合物を光重合させて架橋構造を形成させることによって、前記課題を達成することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明により、以下のレジスト下層膜形成用組成物及びパターン形成方法が提供される。
【0011】
[1](A)下記一般式(1)で表される光重合性化合物及び下記一般式(2
−1)で表される光重合性化合物からなる群より選択される少なくとも1種の光重合性化合物と、(B)溶剤と、を含有するレジスト下層膜形成用組成物。
【0012】
【化1】
(一般式(1)中、R
11〜R
13は、相互に独立に、芳香族化合物から誘導される1価の基、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、ニトロ基、シアノ基、−COR
2、−COOR
2または−CON(R
2)
2を示す(但し、−COR
2、−COOR
2、及び−CON(R
2)
2中、R
2は、相互に独立に、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、または芳香族化合物から誘導される1価の有機基を示し、置換基を有していてもよい)。但し、R
11〜R
13のいずれか一つは芳香族化合物から誘導される1価の基、ニトロ基、シアノ基、−COR
2、−COOR
2または−CON(R
2)
2である。R
3は、置換基を有していてもよい、
炭素数6〜10の芳香族炭化水素から(n1)個の水素原子を除いた基を示す。n1は2〜4の整数を示す。)
【0013】
【化2】
(一般式(2
−1)中、
R41は、相互に独立に、
水素原子またはシアノ基を示す。R6は、n2価の炭化水素基を示す。n2は2〜10の整数を示す
。RPは置換基を示す。npは0〜5の整数を示す。)
【0014】
[2]前記一般式(1)で表される光重合性化合物が、下記一般式(1−1)で表される化合物で
ある前記[1]に記載のレジスト下層膜形成用組成物。
【0015】
【化3】
(一般式(1−1)中、R
1は、相互に独立に、水素原子またはシアノ基を示す。R
2は、相互に独立に、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、または芳香族化合物から誘導される1価の有機基を示し、置換基を有していてもよい。R
3は、置換基を有していてもよい、
炭素数6〜10の芳香族炭化水素から(n1)個の水素原子を除いた基を示す。n1は2〜4の整数を示す。)
【0017】
[3]前記一般式(1)で表される光重合性化合物が、下記一般式(1−11)で表される化合物である前記[1]または[2]に記載のレジスト下層膜形成用組成物。
【0018】
【化5】
(一般式(1−11)中、R
1は、相互に独立に、水素原子またはシアノ基を示す。R
2は、相互に独立に、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、または芳香族化合物から誘導される1価の有機基を示し、置換基を有していてもよい。n1は2〜4の整数を示す。)
【0019】
[4]前記一般式(1)で表される光重合性化合物が、下記一般式(1−111)で表される化合物である前記[1]〜[3]のいずれかに記載のレジスト下層膜形成用組成物。
【0020】
【化6】
(一般式(1−111)中、R
1は、相互に独立に、水素原子またはシアノ基を示す。R
2は、相互に独立に、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、または芳香族化合物から誘導される1価の有機基を示し、置換基を有していてもよい。)
【0021】
[5]前記[1]〜[4]のいずれかに記載のレジスト下層膜形成用組成物を被加工基板上に塗工して塗膜を形成する塗膜形成工程と、形成された前記塗膜に放射線を照射し、前記塗膜を硬化させることによって前記被加工基板上にレジスト下層膜を形成する下層膜形成工程と、前記レジスト下層膜上にレジスト組成物を塗工し乾燥させてレジスト被膜を形成するレジスト被膜形成工程と、前記レジスト被膜に、放射線を選択的に照射して前記レジスト被膜を露光する露光工程と、露光された前記レジスト被膜を現像して所定のパターンを有するレジストパターンを形成するパターン形成工程と、前記レジストパターンをマスクとして前記レジスト下層膜
をエッチングすることによって前記レジスト下層膜に前記所定のパターンと同じパターンを形成し、ついで前記パターンが形成された前記レジスト下層膜をマスクとして、前記被加工基板をエッチングすることによって前記被加工基板に前記所定のパターンと同じパターンを形成するエッチング工程と、を備えるパターン形成方法。
【0022】
本発明のレジスト下層膜形成用組成物は、一般式(1)で表される光重合性化合物及び一般式(2)で表される光重合性化合物からなる群より選択される少なくとも1種の光重合性化合物を含有するため、光が照射されたときに、これらの化合物が重合反応を起こして形成される架橋構造が強固なものになり、定在波防止効果を維持しつつ、弾性率、及びエッチング耐性が高いレジスト下層膜を形成することができる。
【0023】
本発明のパターン形成方法によれば、レジスト下層膜形成用組成物を被加工基板上に塗工して塗膜を形成する塗膜形成工程と、形成された塗膜に放射線を照射し、塗膜を硬化させることによって被加工基板上にレジスト下層膜を形成する下層膜形成工程とを備えるため、形成されるレジスト下層膜の弾性率が高く、パターン曲がりなどの欠陥が効果的に防止される。そのため、被加工基板に良好なパターンを形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。即ち、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に属することが理解されるべきである。
【0025】
本明細書において「置換基」とは、特に限定されるものではないが、例えば、−R
S1、−R
S2−O−R
S1、−R
S2−CO−R
S1、−R
S2−CO−OR
S1、−R
S2−O−CO−R
S1、−R
S2−OH、−R
S2−COOH、−R
S2−CN、−R
S2−NH
2、−R
S2−NR
S12などを挙げることができる。但し、R
S1は、相互に独立に、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基または炭素数6〜30のアリール基を示し、これらの基の有する水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されていてもよい。R
S2は、相互に独立に、単結合、炭素数1〜10のアルカンジイル基、炭素数3〜20のシクロアルカンジイル基、炭素数6〜30のアリーレン基、または、これらの基の有する水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換された基を示す。また、「置換基を有する」とは、前記置換基を1種単独で1つ以上有すること、または、前記置換基のうち複数種を各1つ以上有することを示す。
【0026】
[1]レジスト下層膜形成用組成物:
本発明のレジスト下層膜形成用組成物は、(A)前記一般式(1)で表される光重合性化合物及び前記一般式(2)で表される光重合性化合物からなる群より選択される少なくとも1種の光重合性化合物と、(B)溶剤と、を含有するものである。このレジスト下層膜形成用組成物は、前記(A)光重合性化合物を含有するため、光が照射されたときに、これらの化合物が重合反応を起こして形成される架橋構造が強固なものになり、定在波防止効果を維持しつつ、弾性率、及びエッチング耐性が高い。従って、このようなレジスト下層膜形成用組成物によれば、パターン曲がりが生じ難いレジスト下層膜を形成することができる。
【0027】
[1−1](A)光重合性化合物:
前記一般式(1)で表される光重合性化合物と一般式(2)で表される光重合性化合物は、それぞれ、光が照射されることにより炭素−炭素二重結合が他の炭素−炭素二重結合と結合の組み換えを起こしてシクロブタン環を形成する化合物である。即ち、前記(A)光重合性化合物を含有することにより、レジスト下層膜(本発明のレジスト下層膜形成用組成物により形成された塗膜中)において、(A)光重合性化合物が二つの炭素−炭素結合で強固に架橋されて架橋構造を形成することになる。従って、このような化合物((A)光重合性化合物)を用いることによって、硬いレジスト下層膜を形成することが可能になる。ここで、従来のレジスト下層形成用組成物は、架橋剤などを用いることによりレジスト下層膜中に架橋構造を形成したいたが、この架橋構造は単結合によるものであるため、結合の強さが十分でなかった(結合力が十分ではなかった)。そのため、エッチング時にパターンが曲がってしまうこと(いわゆるパターン曲がりが生じること)があった。一方、前記(A)光重合性化合物によって形成された架橋構造は、単結合によるものに比べて結合力が強いために、硬いレジスト下層膜が得られ、エッチング時にパターンが曲がらないと考えられる。
【0028】
一般式(1)中、R
11〜R
13として表される、芳香族化合物から誘導される1価の基としては、炭素数6〜10の芳香族炭化水素から水素原子を1つ除いた基を挙げることができる。前記芳香族炭化水素としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン等の芳香族炭化水素;ピロール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、インドール等の含窒素芳香族炭化水素;フラン等の含酸素芳香族炭化水素;チオフェン等の含硫黄芳香族炭化水素が挙げられる。これらの中でも、エッチング耐性が高いため、ベンゼン、ナフタレン、ピリジン由来の基が好ましい。また、前記芳香族化合物から誘導される1価の基は置換基を有していてもよい。
【0029】
一般式(1)中、R
11〜R
13として表される炭素数1〜10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、n−オクタデシル基などの直鎖アルキル基、イソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基、ネオペンチル基、2−エチルヘキシル基などの分岐アルキル基を挙げることができる。これらの中でも、メチル基、エチル基、i−プロピル基、i−ブチル基が好ましい。また、前記アルキル基は置換基を有していてもよい。
【0030】
一般式(1)中、R
11〜R
13として表される炭素数3〜20のシクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等の単環のシクロアルキル基;トリシクロデカニル基、テトラシクロドデシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等の多環のシクロアルキル基を挙げることができる。前記シクロアルキル基は、置換基を有していてもよい。
【0031】
−COR
2、−COOR
2、−CON(R
2)
2におけるR
2としては、上述したように、相互に独立に、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、または芳香族化合物から誘導される1価の有機基である。これらの中でも、水素原子、メチル基、エチル基、i−プロピル基、i−ブチル基、フェニル基、ピリジル基が好ましい。
【0032】
一般式(1)中、「−CR
11=CR
12R
13」で表される基としては、例えば、下記一般式(a)〜(n)で表される基などを挙げることができる。なお、下記一般式(a)〜(n)中、R
21は、相互に独立に、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数3〜20のシクロアルキル基を示す。R
14は、置換基を有していてもよい、芳香族化合物から誘導される1価の基を示す。R
2は、相互に独立に、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、または芳香族化合物から誘導される1価の有機基である。また、波線は、結合の向きが不特定であることを示す。
【0034】
前記一般式(a)〜(n)中、R
14としては、R
11〜R
13として表される、芳香族化合物から誘導される1価の基と同様の芳香族化合物から誘導される1価の基を例示することができ、この芳香族化合物から誘導される1価の基は置換基を有していてもよい。これらの芳香族化合物から誘導される1価の基の中でも、エッチング耐性が高いレジスト下層膜を形成することが可能であるため、ベンゼン、ナフタレン、ピリジン由来の基が好ましい。
【0035】
前記一般式(a)〜(n)中、R
21として表される炭素数1〜10のアルキル基または炭素数3〜20のシクロアルキル基としては、前記R
2として表される炭素数1〜10のアルキル基または炭素数3〜20のシクロアルキル基と同様のものを例示することができる。これらの中でも、原料の入手が容易である等の観点から、下記一般式(a−1)で表される基が好ましい。
【0036】
【化8】
(一般式(a−1)中、R
1は、水素原子またはシアノ基を示す。R
2は、相互に独立に、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、または芳香族化合物から誘導される1価の有機基である。)
【0037】
一般式(1)中、R
3で表される芳香族化合物由来のn1価の有機基としては、炭素数6〜10の芳香族炭化水素から(n1)個の水素原子を除いた基などを挙げることができる。前記芳香族炭化水素としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン
等が挙げられる。これらの中でも、エッチング耐性が高いレジスト下層膜を形成することができるため、ベンゼン、ナフタレ
ン由来の基が好ましい。また、R
3は、置換基を有していてもよい。
【0038】
一般式(1)においてn1は、2または3であることが好ましく、2であることが更に好ましい。
【0039】
なお、一般式(1−1)で表わされる化合物は、前記一般式(1)中の「−CR
11=CR
12R
13」で表される基が前記一般式(a−1)で表される基であるものである。また、一般式(1−11)で表わされる化合物は、一般式(1−1)においてR
3がベンゼン由来の2価の基である場合の化合物である。更に、一般式(1−111)で表される化合物は、一般式(1−11)においてn1が2である場合の化合物である。
【0040】
一般式(1)で表される光重合性化合物としては、具体的には、以下に示す化合物などを挙げることができる。
【0047】
一般式(1−111)で表される光重合性化合物としては、具体的には、以下に示す化合物などを挙げることができる。
【0052】
前記化合物の中でも、光照射することによって容易に架橋が進み(架橋構造が形成され)、架橋密度が高くなるため、下記化合物が好ましい。
【0054】
一般式(1)で表される光重合性化合物は、例えば、ホルミル基を複数有する芳香環とシアノ酢酸エステル類を塩基存在下で縮合することによって得ることができる。
【0055】
一般式(2)中、R
5で表される芳香族化合物に誘導される1価の有機基としては、R
11〜R
13として表される、芳香族化合物から誘導される1価の基と同様の芳香族化合物から誘導される1価の基を例示することができ、この芳香族化合物から誘導される1価の基は置換基を有していてもよい。これらの中でも、エッチング耐性が高くなることから、ベンゼン、ピリジンに由来の基であることが好ましい。
【0056】
一般式(2)中、R
4で表される、芳香族化合物から誘導される1価の有機基、炭素数1〜10のアルキル基、及び、炭素数3〜20のシクロアルキル基としては、一般式(1)中のR
11〜R
13として表される、芳香族化合物から誘導される1価の基、炭素数1〜10のアルキル基、及び、炭素数3〜20のシクロアルキル基と同様のものを例示することができる。
【0057】
一般式(2)中、「−X−CR
4=CR
4R
5」で表される基としては、例えば、下記一般式(o)〜(z)で表される基などを挙げることができる。なお、下記一般式(o)〜(z)中、R
21は、相互に独立に、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数3〜20のシクロアルキル基を示す。R
5は、置換基を有していてもよい、芳香族化合物から誘導される1価の有機基を示す。R
8は、相互に独立に、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、または芳香族化合物から誘導される1価の有機基を示し、置換基を有していてもよい。また、波線は、結合の向きが不特定であることを示す。
【0059】
前記化合物の中でも、原料の入手が容易である等の観点から下記一般式(o−1)で表される基が好ましい。
【0060】
【化21】
(一般式(o−1)中、R
41は、水素原子またはシアノ基を示す。R
pは置換基を示す。n
pは0〜5の整数を示す。)
【0061】
一般式(2)中、R
6で表されるn2価の有機基としては、n2価の炭化水素基を挙げることができる。このような炭化水素基としては、例えば、メタン、エタン、n−プロピル基、n−ブタン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−オクタン、n−ドデカン、n−テトラデカン、n−オクタデカンなどの直鎖状アルカン;イソプロパン、イソブタン、t−ブタン、ネオペンタン、2−エチルヘキサンなどの分岐状アルカン等の鎖状炭化水素、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキシル基、シクロオクタン等の単環のシクロアルカン;トリシクロデカン、テトラシクロドデカン、ノルボルネン、アダマンタン等の多環のシクロアルカン等の環状炭化水素からn2個の水素原子を除いた基を挙げることができる。
【0062】
一般式(2)中のn2は、2〜8であることが好ましく、2〜6であることが特に好ましい。
【0063】
なお、一般式(2−1)で表わされる化合物は、前記一般式(2)中の「−X−CR
4=CR
4R
5」で表される基が前記一般式(o−1)で表される基である場合である。
【0064】
一般式(2)で表される光重合性化合物としては、具体的には、以下に示す式(B−1)〜(B−5)で表される化合物などを挙げることができる。これらの中でも、エッチング耐性が高いレジスト下層膜を形成することができるため、式(B−5)で表される化合物が好ましい。
【0067】
一般式(2)で表される光重合性化合物は、例えば、塩基存在下、ケイ皮酸と炭素源(例えば、ジメチルホルムアミドや臭化アルキル)を反応させることによって得ることができる。
【0068】
なお、本発明のレジスト下層膜形成用組成物は、前記一般式(1)で表される光重合性化合物、及び、前記一般式(2)で表される光重合性化合物を、それぞれ単独で含有していてもよいし、前記一般式(1)で表される光重合性化合物、及び、前記一般式(2)で表される光重合性化合物の両方を含有していてもよいが、前記一般式(1)で表される光重合性化合物を単独で含有していることが好ましい。一般式(1)で表される光重合性化合物は、その光架橋性部位が芳香環で連結されているのでエッチング耐性が高いレジスト下層膜を形成することができるためである。
【0069】
[1−2](B)溶剤:
(B)溶剤は、含有される(A)光重合性化合物を溶解し得るものであれば特に限定されるものでない。(B)溶剤としては、具体的には、塗布性の高いプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチル、酢酸n−ブチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、2−ヘプタノン、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノンなどを挙げることができる。
【0070】
(B)溶剤の含有量は、一般式(1)で表される光重合性化合物及び一般式(2)で表される光重合性化合物の総量100質量部に対して、5〜80質量部であることが好ましく、5〜40質量部であることが更に好ましく、8〜30質量部であることが特に好ましい。前記含有量が前記範囲内であると、(A)光重合性化合物を良好に溶解することができ、また、形成されるレジスト下層膜の膜厚が薄すぎることに起因してストリエーションが起こるおそれも少ない点で好ましい。
【0071】
[1−3]添加剤:
本発明のレジスト下層膜形成用組成物は、(A)光重合性化合物及び(B)溶剤以外に、添加剤を更に含有していてもよい。添加剤としては、例えば、バインダー樹脂、放射線吸収剤、界面活性剤、保存安定剤、消泡剤、接着助剤等が挙げられる。
【0072】
バインダー樹脂としては、種々の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を挙げることができる。熱可塑性樹脂は、添加した熱可塑性樹脂の流動性や機械的特性等を下層膜に付与する作用を有する成分である。また、熱硬化性樹脂は、加熱により硬化して溶剤に不溶となり、得られるレジスト下層膜と、その上に形成されるレジスト被膜との間のインターミキシングを防止する作用を有する成分であり、バインダー樹脂として好ましく使用することができる。これらの中でも、尿素樹脂類、メラミン樹脂類、芳香族炭化水素樹脂類等の熱硬化性樹脂が好ましい。なお、これらのバインダー樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0073】
バインダー樹脂の配合量は、(A)光重合性化合物100質量部(一般式(1)で表される光重合性化合物及び一般式(2)で表される光重合性化合物の総量100質量部)に対して、20質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることが更に好ましい。前記配合量が20質量部超であると、バインダー樹脂が(A)光重合性化合物の重合を阻害するおそれがある。そのため、高弾性率のレジスト下層膜が得られないおそれがある。
【0074】
放射線吸収剤としては、具体的には、油溶性染料、分散染料、塩基性染料、メチン系染料、ピラゾール系染料、イミダゾール系染料、ヒドロキシアゾ系染料等の染料類;ビクシン誘導体、ノルビクシン、スチルベン、4,4’−ジアミノスチルベン誘導体、クマリン誘導体、ピラゾリン誘導体等の蛍光増白剤類;ヒドロキシアゾ系染料、チヌビン234(商品名、チバガイギー社製)、チヌビン1130(商品名、チバガイギー社製)等の紫外線吸収剤類;アントラセン誘導体、アントラキノン誘導体等の芳香族化合物等を挙げることができる。これらの放射線吸収剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0075】
放射線吸収剤の配合量は、(A)光重合性化合物100質量部に対して、100質量部以下であることが好ましく、50質量部以下であることが更に好ましい。前記配合量が100質量部超であると、放射線吸収剤が(A)光重合性化合物の光反応を阻害するおそれがある。
【0076】
界面活性剤は、塗布性、ストリエーション、ぬれ性、現像性等を改良する作用を有する成分である。具体的には、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレン−n−オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン−n−ノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のノニオン系界面活性剤や、以下商品名で、KP341(信越化学工業社製)、ポリフローNo.75、同No.95(以上、共栄社油脂化学工業社製)、エフトップEF101、同EF204、同EF303、同EF352(以上、トーケムプロダクツ社製)、メガファックF171、同F172、同F173(以上、大日本インキ化学工業社製)、フロラードFC430、同FC431、同FC135、同FC93(以上、住友スリーエム社製)、アサヒガードAG710、サーフロンS382、同SC101、同SC102、同SC103、同SC104、同SC105、同SC106(以上、旭硝子社製)等を挙げることができる。これらの界面活性剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。これらの界面活性剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0077】
界面活性剤の配合量は、(A)光重合性化合物100質量部に対して、15質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることが更に好ましい。前記配合量が15質量部超であると、界面活性剤がレジスト下層膜の性能に影響を及ぼす(レジスト下層膜の性能を低下させる)おそれがある。
【0078】
[2]パターン形成方法:
本発明のパターン形成方法は、上述した本発明のレジスト下層膜形成用組成物を被加工基板上に塗工して塗膜を形成する塗膜形成工程(以下、「工程(1)」と記す場合がある)と、形成された塗膜に放射線を照射し、この塗膜を硬化させることによって被加工基板上にレジスト下層膜を形成する下層膜形成工程(以下、「工程(2)」と記す場合がある)と、形成されたレジスト下層膜上にレジスト組成物を塗工し乾燥させてレジスト被膜を形成するレジスト被膜形成工程(以下、「工程(3)」と記す場合がある)と、形成されたレジスト被膜に、放射線を選択的に照射してレジスト被膜を露光する露光工程(以下、「工程(4)」と記す場合がある)と、露光されたレジスト被膜を現像して所定のパターンを有するレジストパターンを形成するパターン形成工程(以下、「工程(5)」と記す場合がある)と、レジストパターンをマスクとしてレジスト下層膜及び被加工基板をエッチングすることによって前記被加工基板に所定のパターンと同じパターンを形成するエッチング工程(以下、「工程(6)」と記す場合がある)と、を備える方法である。
【0079】
このようなパターン形成方法によれば、工程(1)及び工程(2)を備えているため、形成されるレジスト下層膜の弾性率が高く、パターン曲がりなどの欠陥が効果的に防止される。そのため、被加工基板に良好なパターンを形成することができる。
【0080】
工程(1)は、本発明のレジスト下層膜形成用組成物を被加工基板上に塗工して塗膜を形成する工程である。
【0081】
被加工基板としては、例えば、シリコンウエハ、アルミニウムで被覆したウエハ等を使用することができる。
【0082】
また、被加工基板へのレジスト下層膜形成用組成物の塗布方法は特に限定されず、例えば、回転塗布、流延塗布、ロール塗布等の適宜の方法で実施することができる。
【0083】
次に、工程(2)は、形成された塗膜に放射線を照射し、この塗膜を硬化させることによって被加工基板上にレジスト下層膜を形成する工程である。
【0084】
照射する放射線は、例えば、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、電子線、γ線、分子線、イオンビーム等から適切に選択することができる。
【0085】
レジスト下層膜の膜厚は、通常、0.1〜5μmである。
【0086】
なお、工程(2)を行う前(即ち、工程(1)の後)に、必要に応じて、レジスト下層膜上に中間層(中間被膜)を形成する工程(1a)を更に備えていてもよい。この中間層は、レジストパターン形成において、レジスト下層膜及び/またはレジスト被膜が有する機能を更に補ったり、これらが有していない機能を得るために、これらの機能が付与された層のことである。例えば、反射防止膜を中間層として形成した場合、レジスト下層膜の反射防止機能を更に補うことができる。
【0087】
この中間層は、有機化合物や無機酸化物により形成することができる。有機化合物としては、例えば、Brewer Science社製の「DUV−42」、「DUV−44」、「ARC−28」、「ARC−29」等の商品名で市販されている材料や、ローム アンド ハース社製の「AR−3」、「AR−19」等の商品名で市販されている材料等を用いることができる。また、無機酸化物としては、例えば、JSR社製の塗布型スピンオングラス材料やCVD法により形成されるポリシロキサン、酸化チタン、酸化アルミナ、酸化タングステン等を用いることができる。
【0088】
中間層を形成するための方法は特に限定されないが、例えば、塗布法やCVD法等を用いることができる。これらの中でも、塗布法が好ましい。塗布法を用いた場合、レジスト下層膜を形成後、中間層を連続して形成することができる。
【0089】
また、中間層の膜厚は特に限定されず、中間層に求められる機能に応じて適宜選択されるが、10〜3000nmの範囲が好ましく、更に好ましくは20〜300nmである。
【0090】
次に、工程(3)は、形成されたレジスト下層膜上にレジスト組成物を塗工し乾燥させてレジスト被膜を形成する工程である。具体的には、得られるレジスト被膜が所定の膜厚となるようにレジスト組成物を塗布した後、プレベークすることによって塗膜中の溶剤を揮発させ、レジスト被膜が形成される。
【0091】
レジスト組成物としては、例えば、光酸発生剤を含有するポジ型またはネガ型の化学増幅型レジスト組成物、アルカリ可溶性樹脂とキノンジアジド系感光剤とからなるポジ型レジスト組成物、アルカリ可溶性樹脂と架橋剤とからなるネガ型レジスト組成物等が挙げられる。レジスト被膜をレジスト下層膜上に形成させる際に使用されるレジスト組成物は、固形分濃度が、通常、5〜50質量%程度であり、一般に、例えば、孔径0.2μm程度のフィルターでろ過した後、レジスト被膜の形成に供される。なお、この工程(工程(3))では、市販のレジスト組成物をそのまま使用することもできる。
【0092】
レジスト組成物の塗布方法は特に限定されず、例えば、スピンコート法等により実施することができる。
【0093】
また、プレベークの温度は、使用されるレジスト組成物の種類等に応じて適宜調整されるが、通常、30〜200℃程度、好ましくは50〜150℃である。
【0094】
次に、工程(4)は、形成されたレジスト被膜に、放射線を選択的に照射してレジスト被膜を露光する工程である。
【0095】
露光に用いられる放射線としては、レジスト組成物に使用される光酸発生剤の種類に応じて、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、電子線、γ線、分子線、イオンビーム等から適切に選択されるが、遠紫外線であることが好ましく、特にKrFエキシマレーザー(248nm)、ArFエキシマレーザー(193nm)、F
2エキシマレーザー(波長157nm)、Kr
2エキシマレーザー(波長147nm)、ArKrエキシマレーザー(波長134nm)、極紫外線(波長13nm等)等が好ましい。
【0096】
次に、工程(5)は、露光されたレジスト被膜を現像して所定のパターンを有するレジストパターンを形成する工程である。
【0097】
本工程で用いられる現像液は、使用されるレジスト組成物の種類に応じて適宜選択される。具体的には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン等のアルカリ性水溶液が挙げられる。
【0098】
なお、これらのアルカリ性水溶液には、水溶性有機溶剤、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール類や、界面活性剤を適量添加することもできる。
【0099】
また、前記現像液での現像後、洗浄し、乾燥することによって、所定のレジストパターンが形成される。
【0100】
本工程では、解像度、パターンプロファイル、現像性等を向上させるため、現像前の前記露光後に、ポストベークを行うことができる。このポストベークの温度は、使用されるレジスト組成物の種類等に応じて適宜調整されるが、通常、50〜200℃程度、好ましくは70〜150℃である。
【0101】
次に、工程(6)は、レジストパターンをマスクとしてレジスト下層膜及び被加工基板をエッチングすることによって前記被加工基板に所定のパターンと同じパターンを形成する工程である。ドライエッチングとしては、例えば、酸素プラズマ等のガスプラズマを挙げることができる。
【実施例】
【0102】
以下、本発明を実施例及び比較例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例及び比較例に限定されるものではない。なお、単に「部」及び「%」と記載した場合は、特記しない限り質量基準である。
【0103】
[重量平均分子量(Mw)]:
重量平均分子量(Mw)は、東ソー社製のGPCカラム(G2000HXL:2本、G3000HXL:1本)を用い、流量:1.0ml/分、溶出溶剤:テトラヒドロフラン、カラム温度:40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフ(検出器:示差屈折計)により測定した。
【0104】
(実施例1)
温度計を備えたセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下で、イソフタルアルデヒド100部、シアノ酢酸イソブチル200部、ピペリジン1部、及び、4−メチル−2−ペンタノール4000部を仕込み、攪拌しつつ60℃で1時間反応させて反応溶液を得た。その後、反応溶液を1日静置し、析出した固体をろ過後、4−メチル−2−ペンタノールで洗浄し、白色固体を得た。この白色固体は、下記式(3)で表される化合物であった。
【0105】
【化24】
【0106】
前記式(3)で表される化合物10部をプロピレングリコールモノメチルエーテル100部に溶解して混合溶液を得た。その後、この混合溶液を孔径0.1μmのメンブランフィルターでろ過することによりレジスト下層膜形成用組成物(1)を得た。そして、このレジスト下層膜形成用組成物(1)について以下の各種評価を行った。
【0107】
(1)ArF用ポジ型レジストパターンの形成:
まず、直径8インチのシリコンウエハ上に、レジスト下層膜形成用組成物(1)をスピンコート法により塗布して塗膜を形成した。次に、TOPCON社製の小型高精度R&D用露光装置により強度20mW/cm
2の光を300mJ前記ウエハ上の塗膜に照射することによって塗膜を硬化させ、膜厚0.3μmの下層膜を得た。次に、この下層膜上に3層レジストプロセス用の中間層組成物溶液(商品名「NFC SOG080」、JSR社製)をスピンコートした。その後、ホットプレート上にて、200℃で60秒間加熱した。その後更に300℃で60秒間加熱して、前記下層膜上に膜厚0.05μmの中間層被膜を形成した。次に、この中間層被膜上に、レジスト組成物をスピンコートし、ホットプレート上にて130℃で90秒間プレベークして、膜厚0.2μmのレジスト被膜を形成した。
【0108】
なお、レジスト組成物としては、以下のようにして調製したものを用いた。
【0109】
まず、還流管を装着したセパラブルフラスコに、窒素気流下で、8−メチル−8−t−ブトキシカルボニルメトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]ドデカ−3−エン(「単量体(a)」という)29部、8−メチル−8−ヒドロキシテトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]ドデカ−3−エン(「単量体(b)」という)10部、無水マレイン酸(「単量体(c)」という)18部、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオールジアクリレート4部、t−ドデシルメルカプタン1部、アゾビスイソブチロニトリル4部、及び1,2−ジエトキシエタン60部を仕込み、攪拌しつつ70℃で6時間重合させた。その後、反応溶液を大量のn−ヘキサン/i−プロピルアルコール(質量比=1/1)混合溶媒中に注いで凝固体を得た。得られた凝固体を前記混合溶媒で数回洗浄した後、真空乾燥させてレジスト組成物用樹脂を得た(収率60%)。その後、得られたレジスト組成物用樹脂とレジスト組成物用溶剤とを混合してレジスト組成物を調製した。
【0110】
なお、得られたレジスト組成物用樹脂は、前記単量体(a)、(b)及び(c)のそれぞれに由来する各繰り返し単位を有し、これらの各繰り返し単位のモル比が64:18:18であった。また、重量平均分子量(Mw)は27,000であった。なお、レジスト組成物用溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとシクロヘキサノンとの混合溶剤(質量比7:3)を用いた。
【0111】
次に、NIKON社製のArFエキシマレーザー露光装置(レンズ開口数0.78、露光波長193nm)を用い、マスクパターンを介して、最適露光時間の間だけ前記レジスト被膜を露光した。次に、ホットプレート上にて130℃で90秒間ポストベークした後、2.38質量%濃度のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いて、露光したレジスト被膜を25℃で1分間の条件で現像した。その後、水洗し、乾燥して、線幅70nmのラインアンドスペースパターン(1L/1S)をなすように形成されたレジスト被膜(ポジ型レジストパターンが形成されたレジスト被膜(レジストパターン))を得た。
【0112】
(2)定在波防止効果:
前記(1)ArF用ポジ型レジストパターンの形成の評価で得られたポジ型レジストパターンが形成されたレジスト被膜への定在波の影響の有無を、走査型電子顕微鏡により観察して以下の基準で評価した。レジストパターンの側面に下層膜からの反射による定在波の影響が観察されなかった場合を良好(表1中、「A」と記す)とし、定在波の影響が観察された場合を不良(表1中、「C」と記す)とし、定在波の影響がやや観察された場合を可(表1中、「B」と記す)とした。
【0113】
(3)弾性率:
直径8インチのシリコンウエハ上に、レジスト下層膜形成用組成物(1)をスピンコートして塗膜を形成した。次に、TOPCON社製の小型高精度R&D用露光装置を用いて強度20mW/cm
2の光を300mJで前記ウエハ上の塗膜に照射して塗膜を硬化させ、膜厚0.3μmのレジスト下層膜を得た。その後、この下層膜の弾性率(GPa)をナノインデンター法で測定して評価を行った。評価基準は、弾性率が10GPa以上のものを合格「G」とし、10GPa未満のものを不合格「N」とした。
【0114】
(4)エッチング耐性:
直径8インチのシリコンウエハ上に、レジスト下層膜形成用組成物(1)をスピンコートして塗膜を形成した。次に、TOPCON社製の小型高精度R&D用露光装置を用いて強度20mW/cm
2の光を300mJで前記ウエハ上の塗膜に照射して塗膜を硬化させ、膜厚0.3μmのレジスト下層膜を得た。その後、この下層膜を、エッチング処理(エッチング条件は、圧力:0.03Torr、高周波電力:3000W、Ar/CF4=40/100sccm、基板温度:20℃とした)し、エッチング処理後の下層膜の膜厚を測定した。そして、膜厚の減少量と処理時間との関係からエッチングレート(nm/分)を算出した。算出された値が小さい程、レジスト下層膜のエッチング耐性が高いため好ましく、算出された値について以下の評価基準で評価を行った。0.9nm/分未満の場合を「A」とし、0.9nm/分以上で1.2nm/分以下の場合を「B」とし、1.2nm/分を超える場合を「C」とした。なお、表1中、本評価結果を「エッチングレート」の欄に記す。
【0115】
本実施例のレジスト下層膜形成用組成物(1)は、定在波防止効果の評価が「A」であり、弾性率の評価結果が「G」であり、エッチング耐性の評価結果が「A」であった。
【0116】
(実施例2)
温度計を備えたセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下で、ケイ皮酸100部、炭酸水素ナトリウム200部、テトラn−ブチルアンモニウムクロリド1部、及び、N,N−ジメチルホルムアルデヒド4000部を仕込み、攪拌しつつ110℃で40時間反応させて反応溶液を得た。その後、得られた反応溶液にメタノールを加えて析出物を得た。得られた析出物をろ過して白色固体を得た。この白色固体は、下記式(4)で表される化合物であった。
【0117】
【化25】
【0118】
前記式(3)で表される化合物に代えて、式(4)で表される化合物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2のレジスト下層膜形成用組成物(2)を得た。得られたレジスト下層膜形成用組成物(2)について、実施例1と同様にして前記各評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0119】
(実施例3)
前記式(3)で表される化合物に代えて、下記式(5)で表される化合物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3のレジスト下層膜形成用組成物(3)を得た。得られたレジスト下層膜形成用組成物(3)について、実施例1と同様にして前記各評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0120】
【化26】
【0121】
(実施例4)
前記式(3)で表される化合物に代えて、下記式(6)で表される化合物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例4のレジスト下層膜形成用組成物(4)を得た。得られたレジスト下層膜形成用組成物(4)について、実施例1と同様にして前記各評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0122】
【化27】
【0123】
(実施例5)
前記式(3)で表される化合物に代えて、下記式(7)で表される化合物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例5のレジスト下層膜形成用組成物(5)を得た。得られたレジスト下層膜形成用組成物(5)について、実施例1と同様にして前記各評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0124】
【化28】
【0125】
(比較例1)
温度計を備えたセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下で、2,7−ジヒドロキシナフタレン100部、ホルマリン30部、p−トルエンスルホン酸1部、及び、プロピレングリコールモノメチルエーテル150部を仕込み、攪拌しつつ80℃で6時間重合させて反応溶液を得た。その後、反応溶液を酢酸n−ブチル100部で希釈し、水/メタノール(質量比:1/2)混合溶媒を多量に使用して有機層を洗浄した。その後、前記混合溶媒を留去して重合体を得た。得られた重合体の重量平均分子量(Mw)は1800であった。
【0126】
前記式(3)で表される化合物に代えて、前記重合体10部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1のレジスト下層膜形成用組成物(6)を得た。得られたレジスト下層膜形成用組成物(6)を用いて、実施例1と同様にして前記各評価を行った。評価結果を表1に示す。なお、本比較例において、レジスト下層膜(膜厚0.3μm)は、基板(直径8インチのシリコンウエハ)上にレジスト下層膜形成用組成物(6)により塗膜を形成した後、この塗膜を形成した基板をホットプレート上に置いて300℃で120秒間加熱することにより前記基板上に形成した。
【0127】
(比較例2)
前記式(3)で表される化合物に代えて、ビス(4−グリシジルオキシフェニル)メタン(下記式(8)で表される化合物)10部及びトリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート1部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例2のレジスト下層膜形成用組成物(7)を得た。得られたレジスト下層膜形成用組成物(7)について、実施例1と同様にして前記各評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0128】
【化29】
【0129】
【表1】
【0130】
表1から明らかなように、実施例1〜5のレジスト下層膜形成用組成物は、比較例1,2のレジスト下層膜形成用組成物と同程度の定在波防止効果を有しながら、弾性率及びエッチング耐性が高いレジスト下層膜を形成することが可能であることが確認できた。