特許第5794245号(P5794245)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5794245
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】微細気泡発生装置および風呂給湯装置
(51)【国際特許分類】
   B01F 5/04 20060101AFI20150928BHJP
   B01F 5/00 20060101ALI20150928BHJP
   B01F 3/04 20060101ALI20150928BHJP
   A47K 3/00 20060101ALI20150928BHJP
【FI】
   B01F5/04
   B01F5/00 G
   B01F3/04 C
   A47K3/00 F
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-42682(P2013-42682)
(22)【出願日】2013年3月5日
(65)【公開番号】特開2014-168759(P2014-168759A)
(43)【公開日】2014年9月18日
【審査請求日】2013年11月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504237050
【氏名又は名称】独立行政法人国立高等専門学校機構
(74)【代理人】
【識別番号】100082175
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 守
(74)【代理人】
【識別番号】100106150
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100115543
【弁理士】
【氏名又は名称】小泉 康男
(72)【発明者】
【氏名】逸見 憲一
(72)【発明者】
【氏名】竹内 史朗
(72)【発明者】
【氏名】星崎 潤一郎
(72)【発明者】
【氏名】秦 隆志
(72)【発明者】
【氏名】西内 悠祐
【審査官】 関口 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−229516(JP,A)
【文献】 特開平08−131800(JP,A)
【文献】 実開平05−013528(JP,U)
【文献】 実開平03−007932(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 5/04
A47K 3/00
B01F 3/04
B01F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の流路内に旋回液流を生成する旋回液流生成部と、
前記旋回液流の旋回径を縮径させる縮径部と、
前記旋回液流の負圧によって外部から気体を取り込む気体導入部と、
前記旋回液流と、前記気体導入部から取り込まれた気体とにより、微細気泡を発生させる気泡生成部と、
前記液体の流量に応じて前記気体導入部の気体通路の流路断面積を可変にする流路断面積可変手段と、
を備え
前記流路断面積可変手段は、前記液体の流量が大きい場合には、前記液体の流量が小さい場合に比して、自動的に、前記気体通路の流路断面積を小さくする微細気泡発生装置。
【請求項2】
前記流路断面積可変手段が前記気体通路の流路断面積を最小にしたときにも前記気体通路を気体が通過可能である請求項記載の微細気泡発生装置。
【請求項3】
前記流路断面積可変手段は、前記気体通路内に発生する吸引力を受けることで動作する請求項1または2記載の微細気泡発生装置。
【請求項4】
前記流路断面積可変手段のほぼ全体が前記気体導入部内に配置されている請求項1乃至の何れか1項記載の微細気泡発生装置。
【請求項5】
前記流路断面積可変手段は、前記気体通路内に設けられた可動部材を有し、
前記可動部材は、前記気体通路の流路断面積を最大にする第1の位置と、前記気体通路の流路断面積を最小にする第2の位置との間を移動可能である請求項1乃至の何れか1項記載の微細気泡発生装置。
【請求項6】
前記可動部材は、前記気体通路内に発生する吸引力を受けることで前記第1の位置から前記第2の位置に向かう方向に移動する請求項記載の微細気泡発生装置。
【請求項7】
前記流路断面積可変手段は、前記可動部材を前記第2の位置から前記第1の位置に向かう方向に付勢する付勢手段を備える請求項または記載の微細気泡発生装置。
【請求項8】
前記可動部材は、前記第1の位置と前記第2の位置との間を回転移動可能である請求項乃至の何れか1項記載の微細気泡発生装置。
【請求項9】
前記可動部材は、前記第1の位置と前記第2の位置との間を前記気体通路の長手方向に沿って移動可能である請求項乃至の何れか1項記載の微細気泡発生装置。
【請求項10】
請求項1乃至の何れか1項記載の微細気泡発生装置を備える風呂給湯装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導入気体を微細化して液体に混合することにより微細気泡を発生させる微細気泡発生装置およびこれを備えた風呂給湯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液中に気体を均一に混合したり、微細気泡を発生したりする手段として、ベンチュリー式、キャビテーション式、加圧溶解式、旋回液流式などの微細気泡発生装置が知られている。ベンチュリー式は、流路にくびれ部分を設け、該くびれ部分で流速が上がり負圧が形成されることで外部より吸気し、くびれが広がる部分で圧力が上昇するために気泡が微細化される発生原理である。キャビテーション式は、ポンプ内に気液混合体を送り、例えば超音波振動を与えることでキャビテーションを利用して気泡を発生させる。また、加圧溶解式は、液体を流れる配管外から導入した外気をコンプレッサ等で加圧して液中に溶解し、減圧開放時に気泡が再析出する方式であり、装置が大型化するが、大量の気体を溶解させることが可能である。また、旋回液流式では、液体の旋回液流を形成し、気体と合一させることで、旋回液流により気体がせん断破砕されて微細化される。旋回液流式の例として、有機廃液等を旋回させることで有機物分解をする装置や、旋回した液流で空気を破砕した気泡を用いた水浄化装置が知られている。
【0003】
有機物分解や水浄化を目的とする装置においても、微細かつ多量の気泡を発生することが効果発現のための重要な要素となる。多量かつ微細な気泡を低流量で発生させる場合、旋回液流式が好ましく用いられる。旋回液流式には、液流を円錐形状からなる旋回液流生成部底面の接線方向から導入して、円錐形状の壁面に向かって旋回させる方式、液流を翼によって旋回させ旋回液流を生成する旋回翼方式などがある(例えば、特許文献1乃至3参照)。その中でも、旋回翼方式を用いることで、多量かつ微細な気泡の生成をより低圧損で実現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−254951号公報
【特許文献2】特開2010−162149号公報
【特許文献3】特開2008−229516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
旋回液流式の微細気泡発生装置において、液体の流量(単位時間当たりの流量。以下同じ。)が増加し、形成される負圧が大きくなることで外部から吸気される気体の量が多くなると、液体による気体のせん断が不十分になる結果、径の大きい気泡が生成されてしまい、径が十分に小さい微細気泡を安定的に生成できないという課題がある。
【0006】
特許文献1に記載された微細気泡発生装置では、雌ねじ部に螺合する雄ねじが形成されたエアー調整ロッドの締め込み位置を変更することにより吸気量を手動で調整可能な構成を設けている。しかしながら、この構成では、吸気量を手動で調整する必要があり、液体流量の変化に自動で対応することはできない。
【0007】
特許文献2に記載された微細気泡発生装置では、吸気用管路内に配置された球体が吸気用管路内を移動することで、空気を流入させたり、空気の流入を止めたりする。しかしながら、この構成では、空気の流入と停止を繰り返すことでしか空気の導入量を調整することができないため、吸気が断続的になる結果、液体と気体との混合状態が不均一となり、微細気泡を安定的に生成することは困難である。
【0008】
特許文献3に記載された微細気泡発生装置では、シリンダ、通気孔の開閉を行う杭状の前半部を有するピストン、高圧力部と低圧力部とを分けるダイアフラム、ばね、渦崩壊部の入口の圧力を高圧力部に導く圧力検出器、渦崩壊部の出口の圧力を低圧力部に導く圧力検出器などの多数の部材から構成される給気装置を備え、渦崩壊部の入口の圧力と出口の圧力との差を利用してピストンを動かすことにより、気体の供給を制御する構成としている。この微細気泡発生装置では、渦崩壊部内に圧力差があれば、正常に渦崩壊(マイクロバブルの発生)が起きているとし、通気孔が開くようにピストンが移動し、給気を行う。一方、渦崩壊部内に圧力差がない場合には、渦崩壊が起きていないとし、通気孔を閉じるようにピストンが移動し、給気を抑制する。しかしながら、特許文献3の装置では、マイクロバブルが発生していない場合に給気を抑制するのみであるので、液体流量の増加時に径の大きい気泡が生成されることを抑制することはできない。また、特許文献3の装置では、給気装置の構造が極めて複雑であり、かつ給気装置が微細気泡発生装置とは別体であり、両者を3本の管を介して接続する必要がある。このため、装置が大型化し、コストが増大する。また、複雑な構造のため、圧力検出器等の不良による誤動作の懸念がある。
【0009】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、装置の大型化および誤動作を抑制することのできる簡易的な構造で、液体の流量増加に伴う過剰吸気を抑制し、吸気量を自動的かつ液体流量に対し適切な精度で制御し、微細気泡を安定的に生成することのできる微細気泡発生装置、および当該微細気泡発生装置を備えた風呂給湯装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る微細気泡発生装置は、液体の流路内に旋回液流を生成する旋回液流生成部と、旋回液流の旋回径を縮径させる縮径部と、旋回液流の負圧によって外部から気体を取り込む気体導入部と、旋回液流と、気体導入部から取り込まれた気体とにより、微細気泡を発生させる気泡生成部と、液体の流量に応じて気体導入部の気体通路の流路断面積を可変にする流路断面積可変手段と、を備え、流路断面積可変手段は、液体の流量が大きい場合には、液体の流量が小さい場合に比して、自動的に、気体通路の流路断面積を小さくするものである。

【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、装置の大型化および誤動作を抑制することのできる簡易的な構造で、液体の流量増加に伴う過剰吸気を抑制し、吸気量を自動的かつ液体流量に対し適切な精度で制御することができ、径が十分に小さい微細気泡を安定的に生成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態1の微細気泡発生装置を示す断面図である。
図2図1に示す微細気泡発生装置が備える旋回翼を示す斜視図である。
図3図1に示す微細気泡発生装置1が備える流路断面積可変手段を説明するための図である。
図4図1に示す微細気泡発生装置1が備える流路断面積可変手段を説明するための図である。
図5】本発明の実施の形態1の微細気泡発生装置における流路断面積可変手段の第1変形例を示す図である。
図6】本発明の実施の形態1の微細気泡発生装置における流路断面積可変手段の第2変形例を示す図である。
図7】本発明の実施の形態2の微細気泡発生装置が備える気体導入部および流路断面積可変手段の断面図である。
図8】本発明の実施の形態2の微細気泡発生装置が備える気体導入部および流路断面積可変手段の断面図である。
図9】本発明の風呂給湯装置の実施の形態を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において共通する要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0014】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1の微細気泡発生装置を示す断面図である。図1に示すように、本実施の形態1の微細気泡発生装置1は、旋回翼2と、縮径部3と、気体導入部4と、気泡生成部5とを備えている。水などの液体は、図1中の左側から微細気泡発生装置1に流入する。
【0015】
図2は、旋回翼2を示す斜視図である。旋回翼2は、液体の流路内に旋回液流を生成する旋回液流生成部として機能する。図2に示すように、旋回翼2は、水流などの液流に旋回力を付加する翼6と、翼6を固定する円筒管部7とを備える。本実施形態では、旋回翼2は2枚の翼6を有している。各翼6は、その上流部は液流と平行な方向に配置され、その下流部は液流と垂直方向に立ち上がるような円弧形状をなす湾曲した構造になっている。
【0016】
縮径部3は、旋回翼2により発生させた旋回液流の半径を縮小して旋回液流を高速化する。図1に示すように、縮径部3は、旋回翼2の円筒管部7の下流側に同軸的に設けられている。縮径部3の内部は、下流側に向かって略円錐状に縮径している。気体導入部4は、縮径部3の下流側の位置に径方向外側から空気などの気体を導入する。気体導入部4には、導入する気体の通路となる気体通路41が形成されている。本実施形態では、気体導入部4は、縮径部3の流出端付近の、最縮径部に接続されている。気泡生成部5は、縮径部3の下流側に同軸的に設けられている。本実施形態では、気泡生成部5の内部は、下流側に向かって略円錐状に拡径している。気泡生成部5は、旋回翼2により発生した旋回液流と、気体導入部4から取り込まれた気体とを利用して、液体中に微細気泡を発生させる。
【0017】
次に、微細気泡発生装置1の基本的な動作について説明する。まず、流路内を軸方向に流れる液体が旋回翼2の円筒管部7に流入すると、旋回翼2の作用により、旋回液流が発生する。円筒管部7から流出した旋回液流は、縮径部3を通過することにより旋回半径が縮小しつつ、旋回方向の流速が上昇する。この結果、縮径部3と気体導入部4との間には圧力差(負圧)が生じるので、縮径部3の流出端側には、この圧力差により気体導入部4から気体が吸い込まれる。吸い込まれた気体は、旋回液流と合一する位置で旋回液流によりせん断され、気泡生成部5内に微細気泡を発生させる。
【0018】
このような微細気泡発生装置1において、液体の流量が大きくなる、すなわち微細気泡発生装置1に流入する液体の流速が速くなると、ベルヌーイの定理より、縮径部3と気体導入部4との間に生じる負圧が大きくなる。その結果、気体導入部4から導入される気体の流量が大きくなる、すなわち気体通路41の気体の流速が速くなる。逆に、液体の流量が小さいと、形成される負圧が小さくなることにより、気体導入部4から導入される気体の流量は小さくなる。
【0019】
微細気泡発生装置1に流入する液体の流量が大きくなると、負圧の増大によって増加する吸気量に対して、旋回液流の、気体をせん断する能力が追いつかなくなる場合がある。そのような場合には、生成する気泡の径が大きくなってしまい、十分に径の小さい微細気泡を安定的に生成することが困難になる。
【0020】
このような点を改善するため、本実施形態の微細気泡発生装置1では、液体の流量に応じて気体導入部4の気体通路41の流路断面積を可変にする流路断面積可変手段8を設け、液体の流量が大きい場合には、液体の流量が小さい場合に比して、気体通路41の流路断面積を小さくすることにより、吸気量を抑制する。
【0021】
図3および図4は、図1に示す微細気泡発生装置1が備える流路断面積可変手段8を説明するための図である。図3および図4は、気体導入部4を透視した状態を示す。これらの図に示すように、本実施形態の流路断面積可変手段8は、その全体が、気体導入部4内(気体通路41内)に配置されている。流路断面積可変手段8は、支持部9と、可動部材としての板状の弁10および遮蔽板11とを有している。支持部9は、気体通路41の内壁に固定されている。支持部9は、弁10および遮蔽板11を連結するとともに、弁10および遮蔽板11を回転可能に支持する。弁10と遮蔽板11とは、一定の角度を成している。弁10および遮蔽板11は、図3に示す第1の位置と、図4に示す第2の位置との間で、回転移動可能になっている。
【0022】
図3に示すように、弁10および遮蔽板11が第1の位置にあるとき、弁10は、気体通路41の内壁面から直径方向に向かって突出するように位置し、遮蔽板11は、気体通路41の内壁面に沿って位置する。このようにして弁10および遮蔽板11が第1の位置にあるときには、気体通路41の流路断面積が最大になる。微細気泡発生装置1に流入する液体の流量が小さく、気体通路41を通る気体の流速が遅い場合には、弁10および遮蔽板11が第1の位置になり、気体通路41の流路断面積が最大になる。
【0023】
弁10および遮蔽板11は、気体通路41内に発生する気体の吸引力が弁10または遮蔽板11に加わることにより、第1の位置から第2の位置に向かって回転する。気体通路41の気体の流速が速くなるほど、すなわち気体通路41の気体の流量が大きくなるほど、気体の吸引力が大きくなることにより、弁10および遮蔽板11が回転し、第2の位置に近づく。弁10および遮蔽板11の回転位置が第2の位置に近づくほど、遮蔽板11が傾斜し、その結果、気体通路41の流路断面積が縮小する。支持部9は、図4に示す第2の位置で弁10および遮蔽板11の回転が止まるように構成されている。あるいは、弁10または遮蔽板11が気体通路41の内壁面に接触することで弁10および遮蔽板11の回転が止まるように構成されていてもよい。弁10および遮蔽板11の回転角度が最大になったとき、すなわち弁10および遮蔽板11が第2の位置にあるときに、気体通路41の流路断面積が最小になる。
【0024】
気体通路41の気体の流速が遅くなる、すなわち気体通路41の気体の流量が小さくなると、気体通路41内に発生する気体の吸引力が小さくなる。これにより、弁10および遮蔽板11は、支持部9が発生させる回転力により、第2の位置から第1の位置に戻る。なお、弁10および遮蔽板11を第2の位置から第1の位置に向かって回転させるように付勢する、例えばばねのような付勢手段が支持部9に設けられていてもよい。
【0025】
本実施形態によれば、微細気泡発生装置1に流入する液体の流量が大きくなった際に、形成される負圧が大きくなることで、気体導入部4から導入される気体の流速が高くなるほど、流路断面積可変手段8によって気体通路41の流路断面積を小さくすることができる。このため、微細気泡発生装置1に流入する液体の流量が大きくなり、形成される負圧が大きくなった場合に、気体導入部4からの吸気量の増加を自動的に抑制することができる。その結果、旋回液流による気体のせん断が不十分になることを回避することができるので、径の大きい気泡の生成を抑制し、十分に径の小さい微細気泡を安定的に生成することができる。また、本実施形態によれば、旋回液流と大気圧との圧力差によって吸引される気体量に応じて、気体通路41の流路断面積を自動的に可変できるため、液体の流量が大きくなることで生じる過剰吸気を、自動的かつ適切な精度で抑制可能になる。
【0026】
また、本実施形態では、気体導入部4内(気体通路41内)に配置可能な小型かつ簡単な構造の流路断面積可変手段8によって上記効果を奏することができる。このため、装置の大型化および誤動作を抑制することができる。更に、本実施形態の流路断面積可変手段8は、気体通路41内に発生する吸引力を可動部材(弁10および遮蔽板11)が直接受けることで動作するので、誤動作、故障などを確実に抑制することができる。
【0027】
また、本実施形態では、流路断面積可変手段8が気体通路41の流路断面積を最小にしたとき(図4に示す状態)にも、気体通路41が完全に塞がることがなく、気体通路41を気体が通過可能である。このため、液体の流量が大きくなったときにも気体の流入が停止することがないので、微細気泡の発生が停止することを防止でき、微細気泡をより安定的に生成することができる。
【0028】
また、本実施形態の流路断面積可変手段8では、流入する気体の吸引力に応じて、弁10および遮蔽板11の面積、支持部9の回転力などを調節することにより、液体流量の増減に対する吸気量の調整精度を適切に設定することができる。
【0029】
次に、本実施形態の微細気泡発生装置1が備える流路断面積可変手段8の変形例について説明するが、上述した流路断面積可変手段8との相違点のみを説明し、同様の事項は省略する。図5は、本発明の実施の形態1の微細気泡発生装置1における流路断面積可変手段の第1変形例を示す図である。図5は、気体導入部4をその長手方向に垂直な平面で切断した断面を図1中の上側から見た図に相当する。図5に示す第1変形例の流路断面積可変手段8Aは、遮蔽板11Aを有している。遮蔽板11Aは、気体通路41の円形断面に比べて径の小さい円形をなしている。図5は、流路断面積可変手段8Aが気体通路41の流路断面積を最小にした状態を示している。この状態では、気体通路41の内周面と遮蔽板11Aの外縁との間を、気体が通過可能である。
【0030】
図6は、本発明の実施の形態1の微細気泡発生装置1における流路断面積可変手段の第2変形例を示す図である。図6は、気体導入部4を透視した状態を示す。図5に示す第2変形例の流路断面積可変手段8Bは、支持部9と遮蔽板11Bとで構成されている。遮蔽板11Bの、支持部9側と反対側の端部には、気体の吸引力を受けるための被吸引部15が設けられている。被吸引部15は、例えば円形の板状をなしている。被吸引部15には、気流を受けるための凹部151が形成されていてもよい。
【0031】
実施の形態2.
次に、図7および図8を参照して、本発明の実施の形態2について説明するが、上述した実施の形態1との相違点を中心に説明し、同一部分または相当部分は同一符号を付し説明を省略する。図7および図8は、本発明の実施の形態2の微細気泡発生装置1が備える気体導入部4Cおよび流路断面積可変手段8Cの断面図である。これらの図に示すように、本実施の形態2における流路断面積可変手段8Cは、その全体が、気体導入部4Cの気体通路41内に配置されている。流路断面積可変手段8Cは、可動部材としての遮蔽板11Cと、付勢手段としてのばね12と、ばね固定部13と、突出部14とを有している。
【0032】
気体導入部4Cの気体通路41は、その内径が下流側に向かって連続的に縮小するテーパー部411を有している。遮蔽板11Cは、このテーパー部411内に配置されている。遮蔽板11Cの形状は、気体通路41の断面形状と相似形であることが好ましく、例えば円形であることが好ましい。遮蔽板11Cの外縁と、テーパー部411の内周面との間には、隙間があり、この隙間を気体が通過可能である。ばね12は、コイルばねで構成されている。突出部14は、遮蔽板11Cの一方の面から突出している。突出部14は、ばね12の一方の端部からばね12の内側に挿入されている。突出部14は、図示しない係止部がばね12に係止することにより、ばね12から抜け出ないように固定されている。ばね12の他方の端部は、ばね固定部13に固定されている。ばね固定部13は、気体通路41の内壁に連結されている。ばね固定部13から流出端部までの気体通路41は、内径がほぼ一定の円柱状の通路になっている。
【0033】
遮蔽板11Cは、ばね12が伸縮することにより、気体通路41の長手方向に移動可能になっている。図7は、ばね12が最も伸びている状態を示している。図7における遮蔽板11Cの位置を「第1の位置」と称する。遮蔽板11Cがこの第1の位置にあるときには、遮蔽板11Cの外縁とテーパー部411の内周面との間隔が最大になる、すなわち、気体通路41の流路断面積が最大になる。図8は、ばね12が図7の状態に比べて縮んだ状態を示している。ばね12が縮むほど、すなわち遮蔽板11Cが図8中の下方向に移動するほど、遮蔽板11Cの外縁とテーパー部411の内周面との間隔が縮小する、すなわち、気体通路41の流路断面積が縮小する。図示を省略するが、ばね12が縮み切った位置、または突出部14がばね固定部13に当接する位置で、遮蔽板11Cの外縁とテーパー部411の内周面との間隔が最小になる、すなわち、気体通路41の流路断面積が最小になる。このときの遮蔽板11Cの位置を「第2の位置」と称する。遮蔽板11Cが第2の位置にあるときにも、遮蔽板11Cの外縁とテーパー部411の内周面との間に隙間が確保され、気体通路41を気体が通過可能である。
【0034】
遮蔽板11Cは、気体通路41内に発生する気体の吸引力を受けて、第1の位置から第2の位置に向かって移動する。気体通路41の気体の流速が速くなるほど、すなわち気体通路41の気体の流量が大きくなるほど、気体の吸引力が大きくなることにより、ばね12が圧縮されて遮蔽板11Cが移動し、第2の位置に近づく。遮蔽板11Cの移動位置が第2の位置に近づくほど、気体通路41の流路断面積が縮小する。
【0035】
気体通路41の気体の流速が遅くなる、すなわち気体通路41の気体の流量が小さくなると、気体通路41内に発生する気体の吸引力が小さくなる。気体通路41内に発生する気体の吸引力が小さくなると、遮蔽板11Cは、ばね12が伸張する復元力により、第2の位置から第1の位置に戻る。
【0036】
本実施の形態2によれば、微細気泡発生装置1に流入する液体の流量が大きくなった際に、形成される負圧が大きくなることで、気体導入部4Cから導入される気体の流速が高くなるほど、流路断面積可変手段8Cによって気体通路41の流路断面積を小さくすることができる。このため、微細気泡発生装置1に流入する液体の流量が大きくなり、形成される負圧が大きくなった場合に、気体導入部4Cからの吸気量の増加を自動的に抑制することができる。その結果、旋回液流による気体のせん断が不十分になることを回避することができるので、径の大きい気泡の生成を抑制し、十分に径の小さい微細気泡を安定的に生成することができる。また、本実施の形態2によれば、旋回液流と大気圧との圧力差によって吸引される気体量に応じて、気体通路41の流路断面積を自動的に可変できるため、液体の流量が大きくなることで生じる過剰吸気を、自動的かつ適切な精度で抑制可能になる。
【0037】
また、本実施の形態2では、気体導入部4C内(気体通路41内)に配置可能な小型かつ簡単な構造の流路断面積可変手段8Cによって上記効果を奏することができる。このため、装置の大型化および誤動作を抑制することができる。更に、本実施の形態2の流路断面積可変手段8Cは、気体通路41内に発生する吸引力を可動部材(遮蔽板11C)が直接受けることで動作するので、誤動作、故障などを確実に抑制することができる。
【0038】
また、本実施の形態2では、流路断面積可変手段8Cが気体通路41の流路断面積を最小にしたときにも、気体通路41が完全に塞がることがなく、気体通路41を気体が通過可能である。このため、液体の流量が大きくなったときにも気体の流入が停止することがないので、微細気泡の発生が停止することを防止でき、微細気泡をより安定的に生成することができる。
【0039】
また、本実施の形態2の流路断面積可変手段8Cでは、流入する気体の吸引力に応じて、遮蔽板11Cの面積、ばね12のばね定数などを調節することにより、液体流量の増減に対する吸気量の調整精度を適切に設定することができる。特に、本実施の形態2の流路断面積可変手段8Cの構造によれば、気体の吸引力の増大に伴う気体通路41の流路断面積の縮小の割合を実施の形態1に比べて大きくすることが可能である。このため、液体の流量の増減が多い場合にも、自動的かつ適切な吸気量の制御が可能になる。
【0040】
実施の形態3.
次に、図9を参照して、本発明の実施の形態3について説明するが、上述した実施の形態との相違点を中心に説明し、同一部分または相当部分は同一符号を付し説明を省略する。図9は、本発明の風呂給湯装置の実施の形態を示す構成図である。
【0041】
図9に示すように、本実施形態の風呂給湯装置150は、熱源機としてのヒートポンプユニット110と、タンクユニット120とを備えている。ヒートポンプユニット110は、圧縮機111と、沸き上げ用熱交換器112と、膨張弁113と、蒸発器114と、これらを環状に接続する循環配管115とによって構成された冷凍サイクル部117を有している。冷凍サイクル部117では、二酸化炭素等の冷媒が圧縮機111で圧縮されて高温、高圧となった後に沸き上げ用熱交換器112で放熱し、膨張弁113で減圧され、蒸発器114で吸熱してガス状態となって圧縮機111に吸入される。
【0042】
一方、タンクユニット120は、貯湯タンク20、給水管路30、貯湯用循環管路40、タンク側循環管路50、風呂側循環管路60、追焚き用熱交換器70、第1給湯管路75、風呂側湯水混合弁80a、一般側湯水混合弁80b、第2給湯管路90、第3給湯管路95等を有している。
【0043】
貯湯タンク20は、給水管路30から供給される水を貯留すると共にヒートポンプユニット110で沸き上げられた湯を貯留する積層式のタンクである。この貯湯タンク20の下部には、給水管路30が接続される水導入口20aと、貯湯用循環管路40の往き管40aが接続される水導出口20bとが設けられている。貯湯タンク20の上部には、貯湯用循環管路40の戻り管40bが接続される温水導入口20cと、第1給湯管路75が接続される温水導出口20dとが設けられている。貯湯タンク20は、給水管路30からの給水により常に満水状態に保たれる。
【0044】
給水管路30は、市水等の水を貯湯タンク20、風呂側湯水混合弁80a、一般側湯水混合弁80b、および一般給湯先180に供給する管路であり、減圧弁25と第1〜第3給水管部30a〜30cとを有している。減圧弁25は、第1給水管部30aの途中に設けられて、水道等の水源からの水圧を所定値に減じる。第1給水管部30aは、水源と貯湯タンク20の水導入口20aとを繋ぎ、第2給水管部30bは、減圧弁25で第1給水管部30aから分岐して該第1給水管部30aと風呂側湯水混合弁80a、一般側湯水混合弁80bとを繋ぎ、第3給水管部30cは、減圧弁25の上流側で第1給水管部30aから分岐して該第1給水管部30aと一般給湯先180とを繋ぐ。一般給湯先180とは、使用者が手で直接操作して開栓する(センサを感応させて開栓する場合を含む)給湯先であり、例えば、洗面台や流し台の蛇口、浴室のシャワー等である。
【0045】
貯湯用循環管路40は、貯湯タンク20下部の水導出口20bからヒートポンプユニット110の沸き上げ用熱交換器112を経由して貯湯タンク20上部の温水導入口20cに達する管路であり、貯湯用送水ポンプ33および電動式の三方弁35が設けられた往き管40aと、戻り管40bと、三方弁35で往き管40aから分岐したバイパス管40cとを有している。上記の往き管40aは水導出口20bと沸き上げ用熱交換器112とを繋ぎ、戻り管40bは沸き上げ用熱交換器112と温水導入口20cとを繋ぎ、バイパス管40cは三方弁35と戻り管40bとを繋ぐ。
【0046】
タンク側循環管路50は、貯湯タンク20上部の温水導出口20dから追焚き用熱交換器70を経由して貯湯タンク20下部に達する管路であり、往き管50aと、タンク側送水ポンプ45が設けられた戻り管50bとを有している。往き管50aは温水導出口20dと追焚き用熱交換器70上部の温水導入口70aとを繋ぎ、戻り管50bは追焚き用熱交換器70下部の温水導出口70bと貯湯タンク20の下部とを繋ぐ。
【0047】
風呂側循環管路60は、浴槽170から追焚き用熱交換器70を経由して浴槽170に戻る管路であり、往き管60aおよび戻り管60bを有している。往き管60aは浴槽170と追焚き用熱交換器70下部の浴水導入口70cとを繋ぎ、戻り管60bは追焚き用熱交換器70上部の浴水導出口70dと浴槽170とを繋ぐ。往き管60aには、追焚き用熱交換器70側から上流側(浴槽170側)に向かって、フロースイッチ53、水位センサ55、および風呂側送水ポンプ57(循環ポンプ)がこの順番で設けられている。風呂側送水ポンプ57は、浴槽170内から浴水を導出して風呂側循環管路60に循環させ、浴槽170内に戻す。往き管60aおよび戻り管60bと、浴槽170との連結部には、浴槽アダプタ165が設けられている。
【0048】
浴槽アダプタ165内には、往き管60aと戻り管60bとが接続できるように2つの配管接続部が備えられている。浴槽アダプタ165と戻り管60bとの接続部付近の戻り管60bの途中には、本発明の微細気泡発生装置1が配置されている。微細気泡発生装置1の構成は、前述した実施の形態1または2で説明したものと同様である。微細気泡発生装置1が備える気体導入部に連通する吸気部には、開閉可能な電磁弁61が設けられている。
【0049】
風呂給湯装置150は、制御部100と、浴室や台所の壁等に設置されるリモコン装置101とを更に備えている。使用者は、リモコン装置101にて、給湯温度の設定や各種運転モードの設定等を行うことができる。制御部100は、上述した各センサで検出された情報、および、リモコン装置101から送信された情報に基づいて、ヒートポンプユニット110、貯湯用送水ポンプ33、三方弁35、タンク側送水ポンプ45、風呂側送水ポンプ57、風呂側湯水混合弁80a、一般側湯水混合弁80b、電磁弁61,56,59を制御することにより、風呂給湯装置150の各種の動作制御を行う。
【0050】
浴槽170に給湯する場合には、貯湯タンク20から供給される高温の湯と給水管路30から供給される水とが風呂側湯水混合弁80aにて設定温度となるように混合され、その混合された湯が第2給湯管路90、風呂側循環管路60を通って送られ、浴槽アダプタ165を介して浴槽170内に供給される。
【0051】
一般給湯先180に給湯する場合には、貯湯タンク20から供給される高温の湯と給水管路30から供給される水とが一般側湯水混合弁80bにて設定温度となるように混合され、その混合された湯が第3給湯管路95を通って送られて一般給湯先180に供給される。
【0052】
浴槽170内の浴水を保温または昇温する追焚き運転時には、タンク側送水ポンプ45および風呂側送水ポンプ57が駆動される。これにより、浴槽170から浴槽アダプタ165を通って往き管60aに吸入された浴水が追焚き用熱交換器70に送られ、貯湯タンク20からはタンク側循環管路50により高温の湯が追焚き用熱交換器70に供給され、追焚き用熱交換器70にて浴水が加熱される。この加熱された浴水は、戻り管60bを通って浴槽170へ戻り、浴槽アダプタ165から浴槽170内に流入する。この際、微細気泡発生装置1の気体導入部に連通する吸気部に設けられた電磁弁61を開くことにより、微細気泡発生装置1にて空気を浴水中に混合し、大量の微細気泡を発生させて浴槽170内に供給することができる。風呂側送水ポンプ57を継続して駆動することにより、微細気泡発生装置1にて連続して微細気泡を発生することができるため、浴槽170内の微細気泡濃度を増大化することができる。この際、タンク側送水ポンプ45を駆動せずに風呂側送水ポンプ57のみを駆動し、追焚き運転を伴わずに微細気泡発生装置1から浴槽170内に微細気泡を供給する運転のみを行っても良い。
【0053】
上述した実施の形態3では、本発明の微細気泡発生装置を風呂給湯装置に設けた実施の形態について説明したが、本発明の微細気泡発生装置は、このような用途に限らず、例えば、工場の製造工程における部品洗浄装置や、生体活性化を目的とした溶存酸素富化装置などとしても好ましく用いることができる。
【符号の説明】
【0054】
1 微細気泡発生装置、2 旋回翼、3 縮径部、4,4C 気体導入部、6 翼、7 円筒管部、8,8A,8B,8C 流路断面積可変手段、9 支持部、10 弁、11,11A,11B,11C 遮蔽板、12 ばね、13 ばね固定部、14 突出部、15 被吸引部、20 貯湯タンク、20a 水導入口、20b 水導出口、20c 温水導入口、20d 温水導出口、25 減圧弁、30 給水管路、30a 第1給水管部、30b 第2給水管部、30c 第3給水管部、33 貯湯用送水ポンプ、35 三方弁、40 貯湯用循環管路、40a 往き管、40b 戻り管、40c バイパス管、41 気体通路、45 タンク側送水ポンプ、50 タンク側循環管路、50a 往き管、50b 戻り管、53 フロースイッチ、55 水位センサ、57 風呂側送水ポンプ、60 風呂側循環管路、60a 往き管、60b 戻り管、61 電磁弁、70 追焚き用熱交換器、70a 温水導入口、70b 温水導出口、70c 浴水導入口、70d 浴水導出口、75 第1給湯管路、80a 風呂側湯水混合弁、80b 一般側湯水混合弁、90 第2給湯管路、95 第3給湯管路、100 制御部、101 リモコン装置、110 ヒートポンプユニット、111 圧縮機、112 沸き上げ用熱交換器、113 膨張弁、114 蒸発器、115 循環配管、117 冷凍サイクル部、120 タンクユニット、150 風呂給湯装置、151 凹部、165 浴槽アダプタ、170 浴槽、180 一般給湯先、411 テーパー部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9