(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記装飾領域は、前記第1方向が同一方向の複数の前記リッジを備える装飾部を複数備え、前記装飾部は、隣接する前記装飾部と前記第1方向が異なることを特徴とする請求項
1から8のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施形態の構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。また、この実施形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
【0024】
以下の説明において、回転軸の軸方向を、Z軸方向とする。また、タイヤ幅方向とは、空気入りタイヤ1の回転軸(図示せず)と平行な方向をいう。タイヤ幅方向外側とは、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面(タイヤ赤道線)から離れる側をいう。タイヤ周方向とは、回転軸を中心軸とする周方向(図中Zθ方向)である。また、タイヤ径方向とは、XY平面上において、回転軸を中心とした方向である。タイヤ径方向とは、回転軸と直交する方向をいい、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向において回転軸に向かう側、タイヤ径方向外側とは、タイヤ径方向において回転軸から離れる側をいう。
【0025】
ここで、
図1は、本発明の実施形態に係る空気入りタイヤの側面図である。
図2は、
図1に示す空気入りタイヤのセレーション部を示す斜視図である。
図3Aは、
図1のA−A線断面図である。
図3Bは、
図1のB−B線断面図である。
図3Cは、
図1のC−C線断面図である。空気入りタイヤ1は、
図1に示すように、路面と接触するトレッド部2と、この空気入りタイヤ1をリム6にリム組みし、車両に装着した際に最もタイヤ幅方向外側で視認できるサイドウォール部3と、リム6にリム組みされた際にこのリム6と嵌合するビード部4とにより構成されている。
【0026】
サイドウォール部3は、
図1に示すように、その表面にセレーション部5を有する。セレーション部5は、サイドウォール部3のタイヤ径方向の所定範囲にタイヤ周方向に沿って延在した形状、つまり円環状に形成されている。セレーション部5は、基本的にタイヤ径方向の所定領域に、最もタイヤ幅方向外側の位置、空気入りタイヤ1の骨格をなすカーカス(図示せず)がビード部4で折り返された端部(カーカス巻上げ部)の位置及びカーカスが重なる部分(カーカススプライス部)を含む領域に設けられる。
【0027】
セレーション部5は、
図1及び
図2に示すように、内輪16と外輪18とで囲われた円環状の領域であり、多数のリッジ12を有する。本実施形態では、リッジ12が形成された領域を装飾領域とする。本実施形態のセレーション部5は、内輪16と外輪18とで囲われた円環状の領域の全域にリッジ12が形成されているため、内輪16と外輪18とで囲われた円環状の領域が全て装飾領域となる。また、セレーション部5は、マーク形成領域14を有する。マーク形成領域14は、タイヤを識別するための文字、商品名等が形成される領域である。マーク形成領域14に形成される文字等は、サイドウォール部3に形成する突起の形状や凹部の形状で文字を表現すればよい。本実施形態のセレーション部5は、マーク形成領域14にもリッジ12が配置されている。マーク形成領域14として、サイドウォール部3に形成する突起の形状や凹部は、リッジ12と重ねて形成してもよいし、リッジ12の一部の形状を調整してもよい。例えば、形成する文字の輪郭部分のリッジ12を切断して凹部を形成して、文字の輪郭を表示させるようにしてもよい。
【0028】
次に、セレーション部5に多数配置されているリッジ12の形状について説明する。リッジ12は、タイヤ幅方向に突出した突起であり、タイヤ表面の任意の一方向(第1方向)に延在している。本実施形態のリッジ12は、タイヤ径方向に内輪16から外輪18まで延在している。つまり、リッジ12は、セレーション部5の径方向の全域に延在している。セレーション部5は、リッジ12が延在方向に交差する方向、本実施形態では周方向(Zθ方向)に隣接して配置されている。つまり、セレーション部5は、複数のリッジ12が延在方向に略直交する方向に列状に配置されている。
【0029】
リッジ12は、
図2及び
図3Aから
図3Cに示すように、延在方向に直交する方向の断面形状が、サイドウォール部3の表面に対して、凸、つまり、タイヤ幅方向外側に突出した形状となる。リッジ12は、サイドウォール部3の表面から最も離れた部分である頂部20と、頂部20の両端にそれぞれ設けられサイドウォール部3の表面と接続されている側辺22とを有する。また、側辺22とサイドウォール部3の表面とが繋がっている点、つまり、リッジ12の端の部分を端部23とする。また、リッジ12は、タイヤ径方向(第1方向)に延在しているため、頂部20が頂面20となり、側辺22が側面22となり、端部23が端辺23となる。
【0030】
リッジ12は、
図2及び
図3Aから
図3Cに示すように、延在方向に直交する方向の断面形状が、延在方向の位置によって異なる形状となる。つまり、リッジ12は、延在方向の一方の端部(内輪16)から他方の端部(外輪18)に向かって断面形状が連続的に変化する。本実施形態のリッジ12は、延在方向の一方の端部(内輪16)の断面形状が、
図3Aに示すように頂部20が、一方側(
図3A中左側)に傾斜しており、一方側の側辺22が他方側の側辺22よりも短い形状となる。リッジ12は、延在方向の他方の端部(外輪18)の断面形状が、
図3Bに示すように頂部20が、他方側(
図3B中右側)に傾斜しており、他方側の側辺22が一方側の側辺22よりも短い形状となる。また、リッジ12は、延在方向の中央付近の対象形状線26で示す位置の断面形状が、
図3Cに示すように左右対称の形状となる。このようにリッジ12は、一方の端部(内輪16)から他方の端部(外輪18)に向かって、頂面20が
図2中左側から右側に移動する形状となる。また、リッジ12は、端辺23が径方向と平行な形状となる。つまり、リッジ12は、タイヤ周方向(第2方向)における形成領域の端部は、タイヤ径方向の位置によらず同じであり、頂面20の位置がタイヤ径方向の位置によって変動することで、断面形状がタイヤ径方向の一方の端部から他方の端部に向かって連続的に変化する。
【0031】
リッジ12は、同じ形状のリッジがタイヤ周方向に所定の間隔でタイヤ周方向の全域に配置されている。ここで、リッジの配列ピッチは、0.8mm以上3.0mm以下とし、かつ、等間隔とすることが好ましい。リッジの配列ピッチを上記範囲とすることで、装飾領域に適切な間隔でリッジを配置することができ、モアレを好適に発生させることができる。
【0032】
空気入りタイヤ1は、以上のような構成である。空気入りタイヤ1は、サイドウォール部3に複数のリッジ12が形成されたセレーション部5を設け、かつ、リッジ12をタイヤ径方向(第1方向)の一方の端部から他方の端部に向かって断面形状を連続的に変化させることで、セレーション部5に好適に光の濃淡(グラデーション)を生じさせることができる。これにより、セレーション部5の模様をより目立たせることができ、空気入りタイヤのデザイン性を高くすることができる。
【0033】
また、空気入りタイヤ1は、最もタイヤ幅方向外側の位置に設けられ、かつ空気入りタイヤ1の骨格をなすカーカス(図示せず)がビード部4で折り返された端部(カーカス巻上げ部)の位置及びカーカスが重なる部分(カーカススプライス部)を含む領域にセレーション部5を設けることで、最もタイヤ幅方向外側(サイドウォール部3)の見た目を良くしつつ、カーカス巻上げ部及びカーカススプライス部のサイドウォール部3の表面での隆起を目立たなくさせることができる。
【0034】
ここで、
図4は、参考例に係る空気入りタイヤの側面図である。
図5は、
図4に示す空気入りタイヤのセレーション部を示す斜視図である。
図6は、
図4のAa−Aa線、Ba−Ba線及びCa−Ca線、断面図である。
図4に示す空気入りタイヤ101は、路面と接触するトレッド部102と、この空気入りタイヤ101をリム106にリム組みし、車両に装着した際に最もタイヤ幅方向外側で視認できるサイドウォール部103と、リム106にリム組みされた際にこのリム106と嵌合するビード部104とにより構成されている。
【0035】
サイドウォール部103は、
図4に示すように、その表面にセレーション部105を有する。セレーション部105は、サイドウォール部103のタイヤ径方向の所定範囲にタイヤ周方向に沿って延在した形状、つまり円環状に形成されている。セレーション部105は、マーク形成領域114を有する。セレーション部105は、
図4及び
図5に示すように、内輪116と外輪118とで囲われた円環状の領域であり、多数のリッジ112を有する。空気入りタイヤ101のリッジ112は、
図5及びAa−Aa線、Ba−Ba線及びCa−Ca線の断面図の
図6に示すように、延在方向(第1方向)に直交する方向の断面の形状が同じ形状となる。リッジ112は、
図5及び
図6に示すように、延在方向に直交する方向の断面形状が、サイドウォール部103の表面に対して、凸、つまり、タイヤ幅方向外側に突出した形状となる。リッジ112は、サイドウォール部103の表面から最も離れた部分である頂部120と、頂部120の両端にそれぞれ設けられサイドウォール部103の表面と接続されている側辺122とを有する。また、側辺122とサイドウォール部103の表面とが繋がっている点、つまり、リッジ112の端の部分を端部123とする。また、リッジ112は、タイヤ径方向(第1方向)に延在しているため、頂部120が頂面120となり、側辺122が側面122となり、端部123が端辺123となる。リッジ112は、2つの側辺122が同じ形状となり、断面の形状が頂部120の中点を通り、サイドウォール部103の表面に垂直な線を軸とした対称形状となる。
【0036】
また、空気入りタイヤ1は、空気入りタイヤ101のように、断面の形状が変化しないリッジ112を備えるセレーション部105では、観察者に見せることができない光の濃淡をセレーション部5で見せることができる。これにより、空気入りタイヤ1は、リッジ12の形状によって、セレーション部105のデザイン性をより高くすることができ、セレーション部としての機能をより高くすることができる。
【0037】
また、空気入りタイヤ1は、リッジ12をタイヤ径方向(第1方向)の一方の端部から他方の端部に向かって断面形状を連続的に変化させることでセレーション部5に異物を付着しにくくすることができる。
【0038】
ここで、リッジ12は、延在方向に沿って位置を移動すると断面形状が徐々に変化する形状であればよく、種々の規則で変化させることができる。以下、
図7Aから
図10を用いて、リッジの変形例について説明する。
【0039】
図7Aは、変形例のリッジの概略構成を示す斜視図である。
図7Bは、
図7Aに示すリッジの正面図である。
図7A及び
図7Bに示すリッジ212aは、サイドウォール部の表面から最も離れた部分である頂部220aと、頂部220aの両端にそれぞれ設けられサイドウォール部の表面と接続されている側辺222aとを有する。また、側辺222aとサイドウォール部の表面とが繋がっている点、つまり、リッジ212aの端の部分を端部223aとする。また、リッジ212aも、タイヤ径方向(第1方向)に延在しているため、頂部220aが頂面220aとなり、側辺222aが側面222aとなり、端部223aが端辺223aとなる。
【0040】
リッジ212aは、頂面220aがタイヤ径方向と平行な形状となり、頂面220aの延在方向に直交する方向の中点を結んだ基準線230aがタイヤ径方向と平行な形状となる。また、リッジ212aは、端辺223aが延在方向の一方の端部から他方の端部に向かって、
図7B中左側から右側に移動する形状となる。なお、リッジ212aは、頂面220aと側面222aとのなす角は一定となる。つまり、リッジ212aは、基準線230aを支点として同一の断面形状の向きが変わった形状となる。リッジ212aは、頂面220aの中心の位置が一定となり、基準線230aに対する頂面220aと側面222aと端辺223aの位置がタイヤ径方向の位置によって変動することで、断面形状がタイヤ径方向の一方の端部から他方の端部に向かって連続的に変化する。具体的には、
図7A及び7Bに示すように、基準線230aを通りサイドウォール部の表面に垂直な線と基準線230aと対象位置とを結んだ線のなす角が徐々に変動する。
【0041】
図7A及び
図7Bに示すように、リッジ212aは、基準線(断面形状における基準点)230aを断面形状の頂部とし、対象位置を頂部220aの両端にそれぞれ繋がっている側辺222aで、頂部220aから同一距離の点を結んだ線の中点として、延在方向の位置によって形状が変化する形状となることで、延在方向における断面形状を徐々に変化させることができる。
【0042】
リッジは、
図7A及び
図7Bの形状とすることが好ましいが、少なくとも、断面形状の延在方向に直交する方向(第2方向)の端部の位置が、延在方向(第1方向)の一方の端部から他方の端部に向かって連続的に変化していればよい。
【0043】
図8Aは、変形例のリッジの概略構成を示す斜視図である。
図8Bは、
図8Aに示すリッジの正面図である。
図8A及び
図8Bに示すリッジ212bは、頂部220bと、側辺222bとを有する。また、側辺222bとサイドウォール部の表面とが繋がっている点、つまり、リッジ212bの端の部分を端部223bとする。また、リッジ212bも、タイヤ径方向(第1方向)に延在しているため、頂部220bが頂面220bとなり、側辺222bが側面222bとなり、端部223bが端辺223bとなる。
【0044】
リッジ212bは、リッジ12と同様に、タイヤ径方向の位置によって、頂面220bの位置が変動する。リッジ212bは、端辺223bが延在方向と平行な線となる。リッジ212bは、タイヤ周方向(第2方向)における形成領域の端部が、タイヤ径方向の位置によらず同じとなる。したがって、2つの端辺223bの頂面220bの延在方向に直交する方向の中点を結んだ基準線230bがタイヤ径方向と平行な形状となる。リッジ212bは、頂面220bの位置がタイヤ径方向の位置によって変動することで、断面形状がタイヤ径方向の一方の端部から他方の端部に向かって連続的に変化する。
【0045】
このように、リッジ212bは、基準点を断面形状の第2方向の端部の中点であり、対象位置が、断面形状の頂部220bとなり、基準点を基準として対象位置の位置をずらした形状となる。これにより、断面形状がタイヤ径方向の一方の端部から他方の端部に向かって連続的に変化する。また、
図8A及び
図8Bに示すように、基準線230bを通りサイドウォール部の表面に垂直な線と基準線230bと対象位置とを結んだ線のなす角が徐々に変動する。
【0046】
リッジは、
図8A及び
図8Bの形状とすることが好ましいが、少なくとも、断面形状の頂部の位置が、延在方向(第1方向)の一方の端部から他方の端部に向かって連続的に変化していればよい。
【0047】
空気入りタイヤは、リッジ212a及びリッジ212bのように、断面形状の基準点を軸とし、基準点と対象位置とを結んだ線と、基準点を通過しサイドウォール部の表面に直交する線と、のなす角が第1方向の一方の端部から他方の端部に向かって連続的に変化することが好ましい。これにより、リッジの形状を周期的に変化させることができ、光の濃淡をより顕著に生じさせることができ、デザイン性を高くすることができる。デザイン性を高くすることで、他の部分を目立たなくすることができ、サイドウォール部の凹凸を目立たなくすることができる。
【0048】
また、リッジは、第1方向の一方の端部から他方の端部までの間になす角が1周期分変化することが好ましい。つまり、上述した基準線を通りサイドウォール部の表面に垂直な線と基準線と対象位置とを結んだ線のなす角が所定の周期で1周期分となる形状とすることが好ましい。ここで、1周期の基準とする波形は、種々の波形を用いることができるが値が徐々に変化する波形である。
【0049】
リッジは、第1方向の一方の端部から他方の端部までの間になす角が1周期より多く変化する形状としてもよい。
図9及び
図10は、変形例のリッジの概略構成を示す正面図である。
図9に示すリッジ212cは、頂面220cの中点を基準線230cとし、当該基準線230cを基準として、頂面220cと側面222cと端辺233cを延在方向の位置に応じて変動させている。ここで、リッジ212cは、基準線230cを通りサイドウォール部の表面に垂直な線と、基準線230cと対象位置とを結んだ線のなす角が2周期変化する形状である。
図10に示すリッジ212dは、端辺223dの中点を基準線230dとし、頂面220dの位置を延在方向の位置に応じて変動させている。また、頂面220dと端辺223dとを結ぶ側面222dは、頂面220dの位置の変動に対応して形状が変化する。ここで、リッジ212dは、基準線230dを通りサイドウォール部の表面に垂直な線と、基準線230cと対象位置とを結んだ線のなす角が2周期変化する形状である。
図9及び
図10に示すように、なす角を2周期以上変化させることで、光の陰影をより複雑な形状としてセレーション部のデザイン性をより高くすることができる。
【0050】
また、リッジは、基準線を通りサイドウォール部の表面に垂直な線と基準線と対象位置とを結んだ線のなす角を10度以上30度以内の範囲で変化させることが好ましい。これにより、セレーション部で光の陰影をより好適に表示させることができ、上記効果を好適にえることができる。
【0051】
次に、セレーション部のリッジの配置パターンは、これに限定されず種々の形状とすることができる。空気入りタイヤは、リッジを、第1方向の一方の端部から他方の端部に向かって断面形状を連続的に変化させればよく、リッジの配置は種々の配置とすることができる。以下、
図11から
図19を用いて、セレーション部でのリッジの配置位置及び配置パターンについて説明する。
【0052】
図11は、他の実施形態に係る空気入りタイヤの側面図である。
図12は、
図11に示す空気入りタイヤのセレーション部を示す斜視図である。
図13Aは、
図11のAb−Ab線断面図である。
図13Bは、
図11のBb−Bb線断面図である。
図13Cは、
図11のCb−Cb線断面図である。
図11から
図13Cに示す空気入りタイヤ1aは、セレーション部5aの形状以外は、空気入りタイヤ1と同様であるので、説明は省略する。
【0053】
セレーション部5aは、多数のリッジ12aが形成されている。リッジ12aは、タイヤ幅方向に突出した突起であり、タイヤ径方向の全域に延在している。セレーション部5aは、リッジ12aが延在方向に交差する方向、本実施形態では周方向(Zθ方向)に隣接して配置されている。
【0054】
リッジ12aは、リッジ12と同様に頂部20aと、側辺22aとを有する。また、側辺22aとサイドウォール部3の表面とが繋がっている点が端部23aとなる。また、リッジ12aも、タイヤ径方向(第1方向)に延在しているため、頂部20aが頂面20aとなり、側辺22aが側面22aとなり、端部23aが端辺23aとなる。
【0055】
リッジ12aは、
図12及び
図13Aから
図13Cに示すように、延在方向に直交する方向の断面形状が、延在方向の位置によって異なる形状となる。つまり、リッジ12aは、延在方向の一方の端部(内輪16)から他方の端部(外輪18)に向かって断面形状が連続的に変化する。さらに、リッジ12aは、断面の形状が同じとなる同一位相線40が、タイヤ周方向に対して傾斜している。具体的には、同一位相線40は、タイヤ周方向の時計回りに移動すると、タイヤ径方向内側から外側に徐々に移動する形状である。つまり、セレーション部5aは、タイヤ径方向が同じ位置におけるリッジ12aと隣接するリッジ12aとがずれて、時計回りに隣接するリッジ12aの同一位相の部分がタイヤ径方向外側にある形状となる。これにより、本実施形態のセレーション部5aは、延在方向の一方の端部(内輪16)の断面形状が、
図13Aに示すようにリッジ12aの位置により形状が変化する。同様に、セレーション部5aは、延在方向の他方の端部(外輪18)の断面形状が、
図13Bに示すようにリッジ12aの位置により形状が変化する。本実施形態のセレーション部5aは、
図13Cに示すように同一位相線で切断したリッジ12aの形状が同じ形状となる。
【0056】
空気入りタイヤ1aは、セレーション部5aの装飾領域を、リッジ12aのなす角が同一となる第1方向における位置が第2方向に隣接するリッジ12aとの間で徐々に変化する形状とすることで、光の濃淡の変化をタイヤ周方向及びタイヤ径方向により明確に表すことが可能となりデザイン性を向上させることができる。
【0057】
図14は、他の実施形態に係る空気入りタイヤの側面図である。
図14に示す空気入りタイヤ1bは、セレーション部5bの形状以外、空気入りタイヤ1と同様であるので説明を省略する。セレーション部5bは、リッジ12bがタイヤ径方向及びタイヤ周方向に対して所定角度傾斜した形状である。具体的にはリッジ12bは、点線42の方向が延在方向となり、内輪16との接点におけるタイヤ周方向の接線44とのなす角がθaとなる。つまり、リッジ12bは、タイヤ径方向とのなす角が90度−θaとなる。空気入りタイヤ1bのようにリッジ12bは、タイヤ径方向及びタイヤ周方向に対して所定角度傾斜した向きで配置してもよい。
【0058】
図15は、他の実施形態に係る空気入りタイヤの側面図である。
図15に示す空気入りタイヤ1cは、セレーション部5cの形状以外は、空気入りタイヤ1と同様であるので説明を省略する。セレーション部5cは、リッジ12cが曲線形状となる。具体的には、リッジ12cは、曲線の仮想線46に沿った形状であり、仮想線46に直交する方向に隣接して配置されている。空気入りタイヤ1cのようにリッジ12cを、直線以外の形状としてもよい。なお、
図15では、曲線としたが、リッジを直線と曲線を組み合わせた形状としてもよいし、折れ曲がっている形状としてもよい。リッジは、繋がっており伸びている方向が延在方向(第1方向)となる。
【0059】
図16は、他の実施形態に係る空気入りタイヤの側面図である。
図16に示す空気入りタイヤ1dは、セレーション部5dの形状以外、空気入りタイヤ1と同様であるので説明を省略する。セレーション部5dは、リッジ12dがタイヤ周方向に延在している。リッジ12dは、セレーション部5dのタイヤ周方向の全周に配置されたリング形状となる。この場合リッジ12dは、任意の位置(1つの位置)が一方の端部及び他方の端部となる。セレーション部5dは、複数のリッジ12dがタイヤ径方向に隣接している。空気入りタイヤ1dのようにリッジ12dを、タイヤ周方向が延在方向となる形状としてもよい。
【0060】
図17は、他の実施形態に係る空気入りタイヤの側面図である。
図18は、
図17に示す空気入りタイヤのセレーション部を拡大した拡大図である。
図17及び
図18に示す空気入りタイヤ1eは、セレーション部5eの形状以外、空気入りタイヤ1と同様であるので説明を省略する。セレーション部5eは、複数のリッジ52と、複数のリッジ54と、を有する。リッジ52は、リッジ12と同様にそれぞれタイヤ径方向に延在し、タイヤ周方向に隣接して配置されている。リッジ54は、リッジ12dと同様にそれぞれタイヤ周方向に延在し、タイヤ径方向に隣接して配置されている。つまり、セレーション部5eは、リッジ52とリッジ54とが格子状に配置されている。空気入りタイヤ1eのようにリッジを格子状に配置してもよい。なお、格子形状は、タイヤ径方向のリッジとタイヤ周方向のリッジに限定されず、タイヤ径方向とタイヤ周方向に対して傾斜したリッジで格子を形成してもよい。また、3方向以上のリッジを重ねて格子を形成してもよい。
【0061】
図19は、他の実施形態に係る空気入りタイヤの側面図である。
図19に示す空気入りタイヤ1fは、セレーション部5fの形状以外、空気入りタイヤ1と同様であるので説明を省略する。セレーション部5fは、複数の装飾部62を有し複数の装飾部62によって、装飾領域がタイヤ周方向に複数に分割されている。装飾部62と装飾部62とは、境界64で分離されている。装飾部62は、上述した複数のリッジを有している。装飾部62は、隣接する装飾部62とリッジの配置パターンが異なる。例えば、境界位置でリッジのなす角の変動の位相が変化したり、リッジの延在方向が異なる向きであったり、リッジのなす角の変動幅が異なる幅であったりする。空気入りタイヤ1fのように、装飾領域を複数に分割してもよい。なお、分割する方向はタイヤ周方向に限定されず、タイヤ径方向に分割してもよい。また、タイヤ径方向及びタイヤ周方向に対して所定角度傾斜した境界で分割してもよい。
【0062】
また、空気入りタイヤは、本出願人が出願した特開2011−37388号公報に記載されているように、多数のリッジとして、それぞれ径方向に延びるとともに互いに0.8mm以上3.0mm以下の所定のピッチで略等間隔に並ぶように配置された複数のリッジから成る第1リッジ群と第1リッジ群と略同一仕様のリッジから成る第2リッジ群とを重ね合わせて形成されたリッジ群を設け、第1リッジ群と第2リッジ群とをタイヤ径方向に所定距離だけずらして配置し、ピッチに対して所定距離を10倍以上25倍以下としてもよい。また、本出願人の特開2012−56416号公報のように、複数のリッジグループを、リッジの束がタイヤ周方向の一方から他方に向かってタイヤ径方向の内側から外側に延びる第1部分と、リッジの束がタイヤ周方向の一方から他方に向かってタイヤ径方向の外側から内側に延びる第2部分とを、タイヤ周方向に交互に配置することにより、それぞれ全体としてタイヤ周方向に延びる波形状に形成し、各リッジグループが互いにタイヤ周方向の複数箇所で交差するように構成するにしてもよい。この場合、各リッジグループが交差する各交差部分は、あるリッジグループの第1部分が他のリッジグループの第2部分と交差し、あるリッジグループの第2部分が他のリッジグループの第1部分と交差するように構成する。これにより、セレーション部のデザイン性をより向上させることができる。
【0063】
また、上記実施形態の空気入りタイヤは、セレーション部の全域をリッジが形成される装飾領域とすることで、タイヤ周方向の全域でデザイン性を高くすることができるが、これに限定されない。空気入りタイヤは、セレーション部の少なくとも一部を装飾領域とすればよい。空気入りタイヤは、セレーション部の装飾領域を一部のみに形成した場合も当該一部のデザイン性を向上させることができる。
【0064】
次に、
図20から
図24Bを用いて、上述した空気入りタイヤの製造時に用いるタイヤ成形金型について説明する。
図20は、本実施形態にかかるタイヤ成形金型を示す子午線方向の断面図である。
図21は、タイヤ成形金型のリッジ形成領域を示す側面図である。
図22Aは、
図21のAc−Ac線断面図である。
図22Bは、
図21のBc−Bc線断面図である。
図22Cは、
図21のCc−Cc線断面図である。
【0065】
タイヤ成形金型250は、内周面が製造する空気入りタイヤに対応する形状である。タイヤ成形金型250は、タイヤ周方向、タイヤ幅方向に分割可能な形状である。タイヤ成形金型250は、例えば、トレッド部に対応するセンターモールドとサイドウォール部に対応するサイドプレートに分割してもよい。タイヤ成形金型250は、トレッド部に対応する領域にトレッドパターン(主溝、ラグ溝、サイプ等)に対応する凹凸を形成するための凸部253a、253b、253c、253d、253eが形成されている。
【0066】
タイヤ成形金型250は、サイドウォール部を形成するサイドウォール形成領域にリッジ形成領域260が形成されている。リッジ形成領域260は、複数の溝262が形成されている。溝270は、セレーションのリッジ12を形成する凹部であり、径方向に延在して配置されている。また、複数の溝262は、周方向に隣接して配置されている。
【0067】
溝262は、
図22Aから
図22C示すように頂面20に対応する底面270と、側面22に対応する側面272とを有する。側面272とタイヤ成形金型250のサイドウォール形成領域の表面との接点が端辺23に対応する端辺273となる。溝262は、
図21及び
図22Aから
図22Cに示すように、延在方向に直交する方向の断面形状が、延在方向の位置によって異なる形状となる。つまり、溝262は、延在方向の一方の端部から他方の端部に向かって断面形状が連続的に変化する。本実施形態の溝262は、延在方向の一方の端部の断面形状が、
図22Aに示すように底面270が、一方側(
図22A中左側)に傾斜しており、一方側の側辺272が他方側の側辺272よりも短い形状となる。溝262は、延在方向の他方の端部の断面形状が、
図22Bに示すように底面270が、他方側(
図22B中右側)に傾斜しており、他方側の側辺272が一方側の側辺272よりも短い形状となる。また、溝262は、延在方向の中央付近の断面形状が、
図22Cに示すように左右対称の形状となる。このように溝262は、延在方向の一方の端部から他方の端部に向かって、底面270が延在方向に直交する方向の一方から他方に移動する形状となる。また、溝262は、端辺273が径方向と平行な形状となる。つまり、溝262は、周方向(延在方向に直交する方向)における形成領域の端部は、タイヤ径方向の位置によらず同じであり、底面270の位置が径方向の位置によって変動することで、断面形状が径方向の一方の端部から他方の端部に向かって連続的に変化する。上記形状の溝262をリッジ形成領域260に形成したタイヤ成形金型250を用いて、空気入りタイヤを製造することで、上述した空気入りタイヤ1等を製造することができる。
【0068】
次に
図23A及び
図23Bを用いて、溝262の形成方法について説明する。
図23A及び
図23Bは、それぞれタイヤ成形金型の作製方法を説明するための説明図である。
図23A及び
図23Bは、頂面20の中心が基準線となる形状のリッジ12を作製する場合の溝262を形成する手順を示している。この場合、
図23A及び
図23Bに示すように、タイヤ成形金型250のリッジ形成領域260を削る加工具280をリッジ形成領域260に押し当て、加工具280を延在方向(第1方向)に直交する方向に先端290を基点として回転させつつ、延在方向(第1方向)に移動させる。このとき、加工具280の先端290の中心線291とリッジ形成領域260に直交する方向292とのなす角θbが、リッジのなす角となる。これにより、頂面20の中心が基準線となる形状のリッジ12に対応する溝262を形成することができる。
【0069】
図24A及び
図24Bは、それぞれタイヤ成形金型の作製方法を説明するための説明図である。
図24A及び
図24Bは、端部の中点が基準線となる形状のリッジ212bを作製する場合の溝262を形成する手順を示している。この場合、
図24A及び
図24Bに示すように、タイヤ成形金型250のリッジ形成領域260を削る加工具280をリッジ形成領域260に押し当て、リッジ形成領域260の表面と加工具280の中心とが重なる点を基点として回転させつつ、延在方向(第1方向)に移動させる。このとき、、加工具280の先端290aの中心線291aとリッジ形成領域260に直交する方向292aとのなす角θbが、リッジのなす角となる。これにより、端部の中点が基準線となる形状のリッジ212bに対応する溝262を形成することができる。
【0070】
次に、実施例を用いて、空気入りタイヤについてより詳細に説明する。
図25は、実施例1の空気入りタイヤの概略構成を示す斜視図である。
図26は、実施例1のセレーション部の概略構成を示す斜視図である。
図27は、実施例2の空気入りタイヤの概略構成を示す斜視図である。
図28は、実施例2のセレーション部の概略構成を示す斜視図である。
図29は、実施例3の空気入りタイヤの概略構成を示す斜視図である。
図30は、実施例3のセレーション部の概略構成を示す斜視図である。
図31は、比較例の空気入りタイヤのセレーション部の概略構成を示す斜視図である。
図32は、比較例の空気入りタイヤのセレーション部の概略構成を示す斜視図である。
図33は、実施例の空気入りタイヤのセレーション部の概略構成を示す斜視図である。
図34は、実施例の空気入りタイヤのセレーション部の概略構成を示す斜視図である。
【0071】
本実施例では、リッジの形状を種々に変化させた空気入りタイヤを作製し、セレーション部の見た目を評価した。具体的には、セレーション部のリッジが光を反射した場合の陰影の見え方を官能評価で評価した。官能評価では、後述する比較例1の評価を100とし、比較例1よりも陰影の見え方が好適であり、タイヤ側面のデザイン性が向上した場合を100よりも大きいとした。値が大きくなるほど、デザイン性が高くなり、他の部分を目立たなくすることができる。
【0072】
本実施例では、基準線を通りサイドウォール部の表面に垂直な線と基準線と対象位置とを結んだ線のなす角θを変化させる範囲を−10度から10度、−20度から20度、−30度から30度とした。また、それぞれの場合について、隣接するリッジ間での同一位相の位置のズレ量を0、10mm、20mm、30mmとした場合として12通りの組み合わせで空気入りタイヤを作製した。
【0073】
また、本実施例では、比較例として基準線を通りサイドウォール部の表面に垂直な線と基準線と対象位置とを結んだ線のなす角θを変化させていない、つまり上述した
図4に示す空気入りタイヤ101のセレーション部を備える空気入りタイヤを作製し、評価した。評価結果を下記表1から表4に示す。
【0078】
また、
図25及び
図26に示す実施例1の空気入りタイヤ301のセレーション部305は、基準線を通りサイドウォール部の表面に垂直な線と基準線と対象位置とを結んだ線のなす角θを変化させる範囲が−10度から10度であり、ズレ量が0である。
【0079】
また、
図27及び
図28に示す実施例2の空気入りタイヤ301aのセレーション部305aは、基準線を通りサイドウォール部の表面に垂直な線と基準線と対象位置とを結んだ線のなす角θを変化させる範囲が−20度から20度であり、ズレ量が0である。
【0080】
また、
図29及び
図30に示す実施例3の空気入りタイヤ301bのセレーション部305bは、基準線を通りサイドウォール部の表面に垂直な線と基準線と対象位置とを結んだ線のなす角θを変化させる範囲が−30度から30度であり、ズレ量が0である。
【0081】
また、
図31及び
図32に示す比較例1の空気入りタイヤ401のセレーション部405は、基準線を通りサイドウォール部の表面に垂直な線と基準線と対象位置とを結んだ線のなす角θを変化させる範囲が0度であり、ズレ量が0である。
【0082】
表1から表4に示すように、比較例よりも実施例の方が、デザイン性が向上していることがわかる。また、
図25から
図32に示すように、比較例1のセレーション部405よりも実施例1から3のセレーション部305、305a、305bの方が、位置によって陰影が変化しており、変化に飛んだ見た目であり、デザイン性が高いことがわかる。
【0083】
また、本実施例では、セレーション部を複数の装飾部に分けた空気入りタイヤを作製した。
図33は、実施例の空気入りタイヤのセレーション部505の一部を示している。セレーション部505は、4つの装飾部510a、510b、510c、510dを含む。装飾部510a、510b、510c、510dは、隣接するリッジ間で、基準線を通りサイドウォール部の表面に垂直な線と基準線と対象位置とを結んだ線のなす角θの位相が延在方向に直交する方向に徐々にずれる形状である。また、装飾部510a、510b、510c、510dは、同じ形状であり、隣接する装飾部との一方の境界と他方の境界の位相が同じずれとなっている。
図33に示すセレーション部505は、4つの装飾部510a、510b、510c、510dの陰影のパターンが同じとなり、同じ傾斜の陰影が延在方向に直交する方向に装飾部510a、510b、510c、510d毎に形成されている。
【0084】
図34は、実施例の空気入りタイヤのセレーション部505aの一部を示している。セレーション部505aは、4つの装飾部520a、520b、520c、520dを含む。装飾部520a、520b、520c、520dは、隣接するリッジ間で、基準線を通りサイドウォール部の表面に垂直な線と基準線と対象位置とを結んだ線のなす角θの位相が延在方向に直交する方向に徐々にずれる形状である。また、セレーション部505aは、装飾部520a、520cと、装飾部520b、520dとで位相がずれる向きが逆となる。また、装飾部520aと装飾部520bとの境界、装飾部520bと装飾部520cとの境界、装飾部520cと装飾部520dと境界で隣接するリッジは、基準線を通りサイドウォール部の表面に垂直な線と基準線と対象位置とを結んだ線のなす角θが同じとなる。
図34に示すセレーション部505aは、4つの装飾部520a、520b、520c、520dの陰影のパターンが交互に逆転し、2つの装飾部でV字の陰影が形成される。
図33、
図34に示すように、セレーション部505、505aを構成するリッジのなす角θのズレ量や、ずれる方向を調整することで形成される陰影のパターンを種々のパターンとすることができることがわかる。これにより、リッジを第1方向の一方の端部から他方の端部に向かって連続的に変化する形状とすることで、セレーション部に陰影を生じさせることができ、さらに陰影のパターンも種々の形状にできることがわかる、これにより、本発明によればデザイン性を高くできることがわかる。