(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図17に示した特許文献1のアンテナ装置においては、プリント基板の長手方向の一方の辺に2つのチップアンテナとT字状の接地導電部(グランド電極)を配置することで2つのアンテナのアイソレーションが大きくなり、互いの不要結合を抑制できる。またT字状の接地導電部の形状により指向性の制御も可能となる。
【0006】
しかし、
図17に示した特許文献1のアンテナ装置においては、次に挙げる問題を有している。
【0007】
(1)マルチバンド化
MIMO(Multiple Input Multiple Output)システムやダイバシティ用のアンテナとして、単一バンドしか使用できない。特許文献1には2.4/5GHzで用いる例が挙げられているが、2個のアンテナをそれぞれ別々のバンドに割り当てるものであり、同じ周波数帯で2つのチップアンテナが動作するものではない。アンテナの共振周波数を使用するバンドにそれぞれ設定する必要があるためこのような問題が発生する。
【0008】
(2)アンテナ素子の実装領域の制限
特許文献1には、放射効率を高めるために、接地導体104に重ならないようにチップアンテナが実装されるべきと記載されている。すなわち、プリント基板上のアンテナ領域が狭くなるにしたがい、チップアンテナの実装領域が限定されて、給電位置やアンテナサイズに制約が発生する。
【0009】
(3)指向性
図17に示した特許文献1のアンテナ装置100においては、第1接地導電部104aからT字状の接地導電部方向への指向性が弱い。このアンテナ装置100を例えばTVやBlu-ray Disc(登録商標)プレーヤ/レコーダなどへ搭載する場合、アンテナ部を前方にして、機器の正面に搭載されることが多いと予想されるが、上記指向性では、機器の前方へ飛ばず、横方向から後方への指向性が強くなる可能性がある。機器の背面は壁側になり、部屋の中央に向かってTVやBDP、BDRが設置されることが多いので、例えばWiFi(登録商標)では他の機器との通信において、思うようにスループットが上がらないという状況が発生する可能性がある。
【0010】
特に2.4GHz帯では、電子レンジ、コードレスフォンなどのノイズ源が多いこと、チャンネル数が少ないこと(実質3チャンネルで隣接チャンネルと周波数が重なっている。)、WiFi(登録商標)の爆発的な普及により、使用者間での干渉問題が発生していること、5GHz帯に対して製品そのもののノイズ(ハードディスクドライブ、HDMI(登録商標)など)の影響を受けやすいことから、指向性の制御は重要である。
【0011】
そこで、本発明は、基板のアンテナ部側(前方)への指向性を高め、またマルチバンド化を可能としたアンテナ装置およびそれを備えた電子機器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)本発明のアンテナ装置は、グランド導体が形成されたグランド導体形成領域と、グランド導体が形成されていないグランド導体非形成領域とを備える基板を備えたアンテナ装置において、
第1方向に延びる横電極およびこの横電極の途中(中央)に前記第1方向に対する直交方向に突出する縦電極を有するT字状の第1放射電極、この第1放射電極の前記横電極に近接する第2放射電極を前記グランド導体非形成領域に備え、
前記第1放射電極は(低周波数側である)第1周波数の信号を放射する放射素子として作用する長さを備え、
前記第1放射電極の前記縦電極は前記グランド導体に導通するか、またはスリットを介して前記グランド導体と対向し、
前記第2放射電極は(高周波数側である)第2周波数の信号を放射する放射素子として作用する長さを備え、
前記第2放射電極は給電ポートに接続され、
前記第2放射電極は、前記第1放射電極との間に容量を生じさせて、前記第1周波数の信号を前記第1放射電極に対して容量給電する、
ことを特徴としている。
【0013】
(2)前記第2放射電極は、この第2放射電極の横電極の端部と前記グランド導体との間に容量が生じる位置に配置されていることが好ましい。
【0014】
(3)前記基板の第1面に前記第1放射電極が形成され、第2面に前記第2放射電極が形成されていることが好ましい。
【0015】
(4)前記基板の前記第1放射電極の対向面に前記グランド導体から延びるスタブが設けられていることが好ましい。
【0016】
(5)前記第2放射電極は前記第1放射電極の縦電極との間に容量が生じる位置に配置されていることが好ましい。
【0017】
(6)前記第2放射電極は二つあって、この二つの第2放射電極は個別の給電ポートに接続され、前記二つの第2放射電極は、前記第1放射電極との間にそれぞれ容量を生じさせて、前記第1周波数の信号を前記第1放射電極の横電極の端部に対して容量給電することが好ましい。
【0018】
(7)本発明の電子機器は、(1)〜(6)のいずれかに記載のアンテナ装置を備え、前記グランド導体形成領域から前記T字状電極の横電極への方向が電子機器の前方を向くように前記アンテナ装置が前記電子機器内に収納されたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、基板中央から見て端部(アンテナ部)方向への指向性が高く、またマルチバンド化可能なアンテナ装置およびそれを備えた電子機器が構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は第1の実施形態のアンテナ装置を備えた通信モジュール201の平面図である。
【
図2】
図2(A)は低周波数側である第1周波数の信号を給電したときの電流分布を示す図、
図2(B)は高周波数側である第2周波数の信号を給電したときの電流分布を示す図である。
【
図3】
図3(A)は基板上のアンテナ部の拡大平面図、
図3(B)は、第1周波数(2.4GHz帯)の信号を給電したときの、アンテナ部に流れる電流の瞬時の強度と向きを示す図である。
【
図4】
図4は通信モジュール201内のアンテナ装置について、右側第2放射電極21の給電ポートから見たリターンロス(SパラメータのS11)の周波数特性図である。
【
図5】
図5(A)は2.4GHz帯でのx−y面のアンテナの指向性を示す図、
図5(B)は5GHz帯でのx−y面のアンテナの指向性を示す図である。
【
図6】
図6は第2の実施形態の通信モジュール202の平面図である。
【
図7】
図7(A)は、通信モジュール202内のアンテナ装置について、右側第2放射電極21に第2周波数(5GHz帯)の信号を給電したときの電流分布を示す図、
図7(B)は、
図6に示したスタブ4を形成しないアンテナ装置(すなわち第1の実施形態で示したアンテナ装置)に第2周波数(5GHz帯)の信号を給電したときの電流分布を示す図である。
【
図8】
図8は5.8GHzでのx−y面のアンテナの指向性を示す図である。
【
図9】
図9は通信モジュール202内のアンテナ装置と、スタブ4を形成しないアンテナ装置についての右側第2放射電極21の給電ポートから見たリターンロスの周波数特性図である。
【
図10】
図10は第3の実施形態のアンテナ装置を備えた通信モジュール203の平面図である。
【
図11】
図11は第1周波数(2.4GHz)の信号を給電したときの電流分布を示す図である。
【
図12】
図12は2.4GHz帯でのx−y面のアンテナの指向性を示す図である。
【
図13】
図13は通信モジュール203内のアンテナ装置と、スリットを形成しないアンテナ装置についての右側第2放射電極21の給電ポートから見たリターンロスの周波数特性図である。
【
図14】
図14は第1周波数(2.4GHz帯)と第2周波数(5GHz帯)についてアンテナの効率を示す図である。
【
図15】
図15は第4の実施形態のアンテナ装置を備えた通信モジュール204の平面図である。
【
図16】
図16は第3の実施形態である電子機器の前面パネルを取り外した状態での部分斜視図である。
【
図17】
図17(A)は特許文献1に示されているアンテナ装置10の平面図、
図17(B)はその底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態を複数の実施形態に分けて各図を参照して例示する。
【0022】
《第1の実施形態》
図1は第1の実施形態のアンテナ装置を備えた通信モジュール201の平面図である。この通信モジュール201は、グランド導体形成領域GAおよびグランド導体非形成領域NGAを備える基板1を有する。グランド導体形成領域GAは、基板1の両面にグランド導体2が形成され、この両面のグランド導体2の複数箇所がスルーホール導体(不図示)で接続されたものである。グランド導体非形成領域NGAは基板1の両面ともにグランド導体が形成されていない領域である。
【0023】
基板1のグランド導体非形成領域NGAの第1面(下面)には第1放射電極10が形成されていて、グランド導体非形成領域NGAの第2面(上面)には右側第2放射電極21および左側第2放射電極22が形成されている。
【0024】
第1放射電極10は、第1方向に延びる横電極11およびこの横電極の途中(中央)に第1方向に対する直交方向に突出する縦電極12を有する。この縦電極12はグランド導体2に導通している。第1放射電極10の横電極11の第1端13および第2端14はグランド導体2に接近する方向に延びている。そのため、第1端13とグランド導体2との対向部分に浮遊容量Cs1が生じ、第2端14とグランド導体2との対向部分に浮遊容量Cs2が生じる。
【0025】
右側第2放射電極21は第1放射電極10の横電極11の第1端13に近接していて、左側第2放射電極22は第1放射電極10の横電極11の第2端14に近接している。基板1は、x軸方向の幅が35mm、y軸方向の長さが45mm、厚みが1.2mmである。また、アンテナ部(グランド導体非形成領域)のサイズは、x軸方向が35mm、y軸方向が10mmである。
【0026】
第1放射電極10(特に横電極11)は、低周波数側である第1周波数の信号を放射する放射素子として作用する長さを備えている。右側第2放射電極21および左側第2放射電極22は、高周波数側である第2周波数の信号を放射する放射素子として作用する長さを備えている。
【0027】
右側第2放射電極21の一つの角は給電ポートであり、ここに第1の給電回路91が接続されている。同様に、左側第2放射電極22の一つの角は給電ポートであり、ここに第2の給電回路92が接続されている。
図1では給電回路91,92はそれぞれ記号化して表している。
【0028】
右側第2放射電極21は、第1放射電極10の横電極11の第1端13との間に容量を生じさせて、第1放射電極10に対して容量給電する。同様に、左側第2放射電極22は、第1放射電極10の横電極11の第2端14との間に容量を生じさせて、第1放射電極10に対して容量給電する。
【0029】
図2(A)は低周波数側である第1周波数の信号を給電したときの電流分布を示す図、
図2(B)は高周波数側である第2周波数の信号を給電したときの電流分布を示す図である。いずれも
図1に示した第1の給電回路91により給電し、第2の給電回路92は開放状態にした例である。ここで、第1周波数は2.4GHz帯、第2周波数は5GHz帯である。
【0030】
図2から明らかなように、アンテナ部に電流が集中していて、グランド導体2に流れる電流は相対的に小さい。なお、グランド導体2(
図1参照)のアンテナ部寄りの辺に沿って電流強度の高い部分があるが、これは、右側第2放射電極21および左側第2放射電極22とそれぞれの給電回路に繋がる給電線路に流れる電流である。
図1ではこれらの給電線路を省略したが、
図2は実際の回路をシミュレーションした結果である。
【0031】
図3(A)は基板上のアンテナ部の拡大平面図、
図3(B)は、第1周波数(2.4GHz帯)の信号を給電したときの、アンテナ部に流れる電流の瞬時の強度と向きを示す図である。この図から明らかなように、グランド導体2の辺→第1放射電極10の縦電極12→第1放射電極10の横電極11→右側第2放射電極21の経路で電流が流れる。また、左側第2放射電極22→第1放射電極10の横電極11→第1放射電極10の縦電極12→グランド導体2の辺の経路で電流が流れる。
【0032】
なお、浮遊容量Cs1,Cs2は第1放射電極10の横電極11の開放端付近とグランド導体との間に装荷される容量成分として作用するので、第1放射電極10の横電極11に要する長さを短縮化でき、その分、アンテナ装置を小型化できる。
【0033】
図2(A)から明らかなように、グランド導体2のx方向(幅方向)の電流は揃っていて、前方(グランド導体2から第1放射電極10への方向)へ放射する電流位相、分布となっている。
図2(A)および
図3(B)から、第1周波数(2.4GHz帯)では、右側第2放射電極21は容量給電用の電極として作用し、第1放射電極10が1/2波長共振する放射素子として作用することがわかる。また、
図2(B)から、第2周波数(5GHz帯)では、右側第2放射電極21が1/4波長共振する放射素子として作用することがわかる。
【0034】
図4は前記通信モジュール201内のアンテナ装置について、右側第2放射電極21の給電ポートから見たリターンロス(SパラメータのS11)の周波数特性図である。この図から、2.45GHzで約−9.5dB、5.5GHzで約−7dBのリターンロスとなっている。また、
図4では表していないが、アンテナの効率は2.45GHzで−2.7dB、5.5GHzで−2.8dBとなった。これらのことから、通信モジュール201のアンテナ装置は2.4GHz帯と5GHz帯のデュアルバンドのアンテナ装置として作用する。
【0035】
図1に示したとおり、通信モジュール201内のアンテナ装置は左右対称形であるので、第2の給電回路92が左側第2放射電極22に給電し、第1の給電回路91を開放状態にすれば、
図2(A)、
図2(B)および
図3(B)に示した電流分布のパターンは左右反転した形状となる。この場合もリターンロス特性および効率は同じ特性となる。
【0036】
図5(A)は2.4GHz帯でのx−y面のアンテナの指向性を示す図、
図5(B)は5GHz帯でのx−y面のアンテナの指向性を示す図である。いずれも、右側第2電極に対して給電した特性をD1、左側第2電極に対して給電した特性をD2で表している。また、いずれも0°方向は、前方(グランド導体2の形成領域から第1放射電極10の横電極11への方向)である。
【0037】
図5(A)から明らかなように、2.4GHzでは0°方向(前方)への指向性が強い。これは
図2(A)に表れているように、グランド導体2の辺から前方へ突出した位置で、第1放射電極10が1/2波長共振する放射素子として作用するためであると推測される。一方、
図5(B)に表れているように、5GHz帯では前方だけでなく、後方へも放射している。これは、放射電極21,22が5GHz帯でλ/4で動作(1/4波長で共振)し、グランド導体2に電流が流れ、グランド導体2からも放射するからである。
【0038】
以上に示した第1の実施形態の通信モジュール201のアンテナ装置は、第1放射電極10の横電極11に電流が強く励起されるため、前方(グランド導体2から第1放射電極10への方向)へ強く指向する指向性が得られる。また、第1放射電極10、右側第2放射電極21および左側第2放射電極22によって少なくとも2つの周波数帯で放射素子として作用するので、デュアルバンドのアンテナとして使用できる。
【0039】
上述の例では、右側第2放射電極21に給電したが、MIMOシステムやアンテナダイバシティを構成する場合に、第1の給電回路91および第2の給電回路92の両方を用いて、二つの第2放射電極21,22の両方に給電することになる。
【0040】
《第2の実施形態》
図6は第2の実施形態の通信モジュール202の平面図である。この通信モジュール202内のアンテナ装置は、グランド導体形成領域GAおよびグランド導体非形成領域NGAを備える基板1を有する。第1の実施形態で
図1に示した通信モジュール201内のアンテナ装置と異なり、基板の前記第1放射電極の縦電極12の対向位置に、グランド導体2から延びるスタブ4が設けられている。この縦電極12とスタブ4との対向位置にはスルーホールは形成されていない。その他の構成は第1の実施形態で示したとおりである。
【0041】
図7(A)は、前記通信モジュール202内のアンテナ装置について、右側第2放射電極21に第2周波数(5GHz帯)の信号を給電したときの電流分布を示す図、
図7(B)は、
図6に示したスタブ4を形成しないアンテナ装置(すなわち第1の実施形態で示したアンテナ装置)に第2周波数(5GHz帯)の信号を給電したときの電流分布を示す図である。
【0042】
スタブ4を設けた場合、第1放射電極10の横電極11に流れる電流(x軸方向の電流)分布が拡がっている。これは、スタブ4が等価的にハイインピーダンスに見えるため、グランド導体2のy軸方向への電流分布が減少するためである。
図7(A)、
図7(B)において、楕円で囲んだ電流分布域DAを比較すれば、グランド導体2のy軸方向への電流分布が減少していることが分かる。
【0043】
図8は5.8GHzでのx−y面のアンテナの指向性を示す図である。この実施形態の通信モジュール202内のアンテナ装置の特性をA、
図6に示したスタブ4を形成しないアンテナ装置(すなわち第1の実施形態で示したアンテナ装置)の特性をBで表している。0°方向は、前方(グランド導体2の形成領域から第1放射電極10の横電極11への方向)である。
【0044】
このように、縦電極12に対向するスタブ4を設けると、第1放射電極10の横電極11に流れる電流の分布が拡がるため、0°方向(前方)への指向性が強くなったものと推測される。
【0045】
図9は前記通信モジュール202内のアンテナ装置と、スタブ4を形成しないアンテナ装置(第1の実施形態で示したアンテナ装置)についての右側第2放射電極21の給電ポートから見たリターンロス(SパラメータのS11)の周波数特性図である。この図から、スタブ4を設けることによって、5GHz帯のリターンロスがより小さくなることが分かる。
【0046】
これらのことから、第2の実施形態のアンテナ装置は5GHz帯での指向性および効率がより改善されることが分かる。
【0047】
《第3の実施形態》
図10は第3の実施形態のアンテナ装置を備えた通信モジュール203の平面図である。この通信モジュール203は、グランド導体形成領域GAおよびグランド導体非形成領域NGAを備える基板1を有する。基板1のグランド導体非形成領域NGAの下面には第1放射電極10が形成されていて、グランド導体非形成領域NGAの上面には右側第2放射電極21および左側第2放射電極22が形成されている。
【0048】
第1の実施形態で
図1に示した通信モジュール201と異なり、第1放射電極の縦電極12はグランド導体2に直接導通していない。第1放射電極の縦電極12とグランド導体2(基板1の裏面側のグランド導体2)との間にはスリットが形成されている。このスリットの間隙は例えば0.5mmである。
【0049】
図11は第1周波数(2.4GHz)の信号を給電したときの電流分布を示す図である。
図11から明らかなように、第1放射電極10の横電極11に流れる電流の強度が第1の実施形態のものに比べても全体的に増大していて、前方辺の電流強度も増大している。また、グランド導体2に流れる電流は第1の実施形態のものに比べても小さくなっている。
【0050】
図12は2.4GHz帯でx−y面でのアンテナの指向性を示す図である。前記スリットを形成した、この実施形態のアンテナ装置の特性をA、前記スリットを形成しない(第1の実施形態で示した)アンテナ装置の特性をBで表している。
【0051】
図12から明らかなように、第1放射電極の縦電極12とグランド導体2との間にスリットが形成されていると、前方への指向性がより強まることが分かる。これは、
図11では明確に表れていないが、グランド導体に流れる電流が下方へ拡がっていないことに起因しているものと推測される。
【0052】
図13は前記通信モジュール203内のアンテナ装置と、前記スリットを形成しないアンテナ装置(第1の実施形態で示したアンテナ装置)についての右側第2放射電極21の給電ポートから見たリターンロス(SパラメータのS11)の周波数特性図である。この図から、前記スリットが形成されていても、2.4GHz帯と5GHz帯でリターンロスが充分に小さくなることが分かる。なお、この例では、スリットを設けたことによる副次的な作用で3.5GHz、4GHz付近にもリターンロスの低下が生じている。
【0053】
図14は第1周波数(2.4GHz帯)と第2周波数(5GHz帯)についてアンテナの効率を示す図である。この図から、前記スリットが形成されていても、効率は殆ど変わらず、良好な特性が得られることが分かる。
【0054】
なお、第3の実施形態によれば、第1放射電極の縦電極12とグランド導体2との間のスリットに生じる容量が第1放射電極10に装荷されることになるので、第1放射電極10の1/2波長共振の周波数を下げる方向に作用し、その分、小型化できる。また、グランド導体形成領域に形成される回路から発生されるノイズや、この通信モジュール103が組み込まれる電子機器内のノイズがグランド導体に重畳されても、そのノイズが放射され難くなる。
【0055】
《第4の実施形態》
図15は第4の実施形態のアンテナ装置を備えた通信モジュール204の平面図である。この通信モジュール204は、グランド導体形成領域GAおよびグランド導体非形成領域NGAを備える基板1を有する。基板1のグランド導体非形成領域NGAの下面には第1放射電極10が形成されていて、グランド導体非形成領域NGAの上面には第2放射電極20が形成されている。
【0056】
第1〜第3の実施形態と異なり、第2放射電極20は単一であり、第2放射電極20は第1放射電極10の縦電極12との間に容量が生じる位置に配置されている。
【0057】
MIMOシステムやアンテナダイバシティを構成しない場合には、このように第2放射電極20は単一であってもよい。また、第1放射電極10に対して容量給電する位置は、このように中央または中央付近であってもよい。
【0058】
なお、第1〜第3の実施形態で二つの第2放射電極を設けた例を示したが、MIMOシステムやアンテナダイバシティを構成しない場合には、この二つの第2放射電極のうち、一方のみを設けることによって単一の第1放射電極10と単一の第2放射電極を備えたアンテナ装置を構成してもよい。
【0059】
《第5の実施形態》
第5の実施形態では第1・第2の実施形態で示した通信モジュールを備えた電子機器の構造について示す。
【0060】
図16は第3の実施形態である電子機器(例えばビデオレコーダー)の前面パネルを取り外した状態での部分斜視図である。通信モジュール201のアンテナ部、特にグランド導体非形成領域NGAが前面方向を臨んでいる。通信モジュール201は電子機器のモジュール固定金属板にネジ止め等によって取り付けられている。
【0061】
アンテナ装置を備える通信モジュール201をこのように電子機器301の筐体内に取り付けることによって、電子機器301の前方方向にある通信相手機器と高利得で通信を行うことができる。
【0062】
なお、各実施形態では、第1放射電極10の横電極11の両端をグランド導体2の辺方向に接近する方向に延びていることにより、浮遊容量Cs1,Cs2を形成するとともに、横電極11の両端と右側第2放射電極21および左側第2放射電極22との間に基板1の基材を挟んで容量を生じさせるようにしたが、第1放射電極10の横電極11は真っ直ぐな線状(長方形状)であってもよい。すなわち、浮遊容量Cs1,Cs2を形成することは必須ではない。
【0063】
また、各実施形態では、第1放射電極と第2放射電極を基板の互いに対向する面に形成したが、第1・第2の放射電極は基板の同一面に形成してもよい。