(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記調整抵抗の抵抗値は、前記第3経路を流れる電流の大きさが、前記第2経路を流れる電流の大きさの2%以上かつ70%以下となる値である、請求項1に記載の駆動回路。
前記バイアス電流供給回路は、バースト光信号を送信するための送信イネーブル信号が活性化されると前記バイアス電流の供給を開始する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の駆動回路。
【発明を実施するための形態】
【0019】
最初に、本発明の実施形態の内容を列記して説明する。
【0020】
(1)本発明の実施の形態に係る駆動回路は、光信号を送信するための発光素子にバイアス電流を供給するためのバイアス電流供給回路と、送信すべきデータの論理値に応じた大きさの変調電流を前記発光素子に供給するための変調電流供給回路とを備え、前記バイアス電流が流れる第1経路と、前記変調電流供給回路から前記変調電流を前記発光素子に供給するための経路を含み、前記バイアス電流が流れる際に電流が前記バイアス電流供給回路から前記発光素子を経由せずに前記変調電流供給回路を通って前記バイアス電流供給回路へ戻る第2経路と、前記変調電流供給回路において前記第2経路と合流し、合流前において調整抵抗が設けられ、前記バイアス電流が流れる際に、電流が前記調整抵抗を介して前記バイアス電流供給回路との間で流れる第3経路とを有する。
【0021】
このような構成により、第3の経路のうち、第2の経路と合流する前の部分においてキャパシタのみを設ける構成と比べて、バースト応答特性の温度依存性を低減し、光信号の送信特性の劣化を抑制することができる。したがって、光信号の送信回路における温度依存性を抑制し、良好な通信を実現することができる。
【0022】
(2)好ましくは、前記調整抵抗の抵抗値は、前記第3経路を流れる電流の大きさが、前記第2経路を流れる電流の大きさの2%以上かつ70%以下となる値である。
【0023】
このような構成により、第3の経路がバイアス電流供給回路とDC的に絶縁されなくても、発光素子の駆動に寄与しない無効電流、すなわち第3の経路とバイアス電流供給回路との間で流れる電流を低減することができる。
【0024】
(3)好ましくは、前記変調電流供給回路は、前記データの論理値に応じて、前記発光素子に電流を供給するか否かが切り替わる差動駆動回路と、前記差動駆動回路の差動出力間に直列接続された第1の終端抵抗および第2の終端抵抗とを含み、前記第3経路は、前記第1の終端抵抗および第2の終端抵抗間において前記第2経路と合流する。
【0025】
このように、終端抵抗である第1の終端抵抗および第2の終端抵抗を用いる構成により、特に高周波の光信号を送信する場合において、差動駆動回路における送信特性の劣化を抑制することができる。また、第1の終端抵抗および第2の終端抵抗の接続ノードの電位が不安定となることによるリンギングの発生を抑制することができる。
【0026】
(4)好ましくは、前記バイアス電流供給回路は、バースト光信号を送信するための送信イネーブル信号が活性化されると前記バイアス電流の供給を開始する。
【0027】
このような構成により、特に送信イネーブル信号の活性化に応答してバイアス電流の供給が開始されるバースト光信号の送信回路において、バイアス電流の供給開始時における当該回路の挙動を安定化することができる。
【0028】
(5)好ましくは、前記光信号のビットレートは2.5ギガビット/秒より大きい。
【0029】
このような構成により、特に2.5ギガビット/秒より大きい高速なビットレートの光信号を伝送する光通信システムにおいて、光信号の送信回路における温度依存性を抑制し、良好な通信を実現することができる。
【0030】
(6)本発明の実施の形態に係る宅側装置は、複数の宅側装置から局側装置への光信号が時分割多重される通信システムにおける宅側装置であって、前記光信号を送信するための発光素子と、前記発光素子を駆動するための駆動回路とを備え、前記駆動回路は、前記発光素子にバイアス電流を供給するためのバイアス電流供給回路と、送信すべきデータの論理値に応じた大きさの変調電流を前記発光素子に供給するための変調電流供給回路とを含み、前記バイアス電流が流れる第1経路と、前記変調電流供給回路から前記変調電流を前記発光素子に供給するための経路を含み、前記バイアス電流が流れる際に電流が前記バイアス電流供給回路から前記発光素子を経由せずに前記変調電流供給回路を通って前記バイアス電流供給回路へ戻る第2経路と、前記変調電流供給回路において前記第2経路と合流し、合流前において調整抵抗が設けられ、前記バイアス電流が流れる際に、電流が前記調整抵抗を介して前記バイアス電流供給回路との間で流れる第3経路とを有する。
【0031】
このような構成により、第3の経路のうち、第2の経路と合流する前の部分においてキャパシタのみを設ける構成と比べて、バースト応答特性の温度依存性を低減し、光信号の送信特性の劣化を抑制することができる。したがって、光信号の送信回路における温度依存性を抑制し、良好な通信を実現することができる。
【0032】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。また、以下に記載する実施の形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0033】
図1は、本発明の実施の形態に係るPONシステムの構成を示す図である。
【0034】
図1を参照して、PONシステム301は、宅側装置202A,202B,202C,202Dと、局側装置201と、スプリッタSP1,SP2とを備える。宅側装置202A,202B,202Cと局側装置201とは、スプリッタSP1およびSP2ならびに光ファイバOPTFを介して接続され、互いに光信号を送受信する。宅側装置202Dと局側装置201とは、スプリッタSP2および光ファイバOPTFを介して接続され、互いに光信号を送受信する。PONシステム301では、宅側装置202A,202B,202C,202Dから局側装置201への光信号が時分割多重される。PONシステム301においては、たとえば、光信号のビットレートは2.5ギガビット/秒より大きい。以下、PONシステム301は、10G−EPONであると仮定して説明する。
【0035】
図2は、本発明の実施の形態に係るPONシステムにおける宅側装置の構成を示す図である。
【0036】
図2を参照して、宅側装置202は、光トランシーバ21と、PON受信処理部22と、バッファメモリ23と、UN送信処理部24と、UNI(User Network Interface)ポート25と、UN受信処理部26と、バッファメモリ27と、PON送信処理部28と、制御部29とを備える。
【0037】
光トランシーバ21は、宅側装置202に対して脱着可能である。光トランシーバ21は、局側装置201から送信される下り光信号を受信し、電気信号に変換して出力する。
【0038】
PON受信処理部22は、光トランシーバ21から受けた電気信号からフレームを再構成するとともに、フレームの種別に応じて制御部29またはUN送信処理部24にフレームを振り分ける。具体的には、PON受信処理部22は、データフレームをバッファメモリ23経由でUN送信処理部24へ出力し、制御フレームを制御部29へ出力する。
【0039】
制御部29は、各種制御情報を含む制御フレームを生成し、UN送信処理部24へ出力する。
【0040】
UN送信処理部24は、PON受信処理部22から受けたデータフレームおよび制御部29から受けた制御フレームをUNIポート25経由で図示しないパーソナルコンピュータ等のユーザ端末へ送信する。
【0041】
UN受信処理部26は、UNIポート25経由でユーザ端末から受信したデータフレームをバッファメモリ27経由でPON送信処理部28へ出力し、UNIポート25経由でユーザ端末から受信した制御フレームを制御部29へ出力する。
【0042】
制御部29は、MPCPおよびOAM等、局側装置201および宅側装置202間のPON回線の制御および管理に関する宅側処理を行なう。すなわち、PON回線に接続されている局側装置201とMPCPメッセージおよびOAMメッセージをやりとりすることによって、アクセス制御等の各種制御を行なう。制御部29は、各種制御情報を含む制御フレームを生成し、PON送信処理部28へ出力する。また、制御部29は、宅側装置202における各ユニットの各種設定処理を行なう。
【0043】
PON送信処理部28は、UN受信処理部26から受けたデータフレームおよび制御部29から受けた制御フレームを光トランシーバ21へ出力する。
【0044】
光トランシーバ21は、PON送信処理部28から受けたデータフレームおよび制御フレームを光信号に変換し、局側装置201へ送信する。
【0045】
図3は、本発明の実施の形態に係る宅側装置における光トランシーバの送信側の構成を詳細に示す図である。
【0046】
図3を参照して、光トランシーバ21は、プリバッファ回路61と、イコライザ回路62と、駆動回路51と、電源64〜66と、タイミング回路67と、発光回路75と、マスタI/F(インタフェース)69と、CPU(Central Processing Unit)70と、スレイブI/F71と、制御レジスタ72と、キャパシタC1,C2とを含む。駆動回路51は、出力バッファ回路(変調電流供給回路)63と、バイアス電流供給回路68とを含む。プリバッファ回路61は、終端抵抗R11を含む。発光回路75は、発光素子LDと、インダクタ31,32とを含む。CPU70は、たとえばEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)である記憶部73を含む。
【0047】
プリバッファ回路61は、UN受信処理部26からのデータフレームおよび制御部29からの制御フレームである送信データを、キャパシタC1およびC2を介して終端抵抗R11において受け、当該送信データを増幅して出力する。たとえば、プリバッファ回路61は、当該送信データを、信号線INP,INNからバランス信号として受ける。
【0048】
イコライザ回路62は、プリバッファ回路61から受けた送信データの波形整形たとえば位相歪みの補正を行なって出力する。
【0049】
駆動回路51は、発光回路75における発光素子LDを駆動する。より詳細には、出力バッファ回路63は、たとえば2つのトランジスタを有する差動駆動回路を含み、イコライザ回路62から受けた送信データに基づいて、発光回路75に差動変調電流を供給する。この変調電流は、局側装置201へ送信すべきデータの論理値に応じた大きさの電流である。差動駆動回路を用いる構成により、送信データの論理値の変化に対する変調電流の応答速度を向上させることができる。
【0050】
発光回路75は、上り光信号を局側装置201へ送信する。発光回路75において、発光素子LDは、電源電圧Vcc2の供給される電源ノードにインダクタ31を介して接続され、また、バイアス電流供給回路68にインダクタ32を介して接続されている。発光素子LDは、バイアス電流供給回路68から供給されたバイアス電流、および出力バッファ回路63から供給された変調電流に基づいて発光し、かつ発光強度を変更する。
【0051】
電源64〜66は、プリバッファ回路61、イコライザ回路62および出力バッファ回路63にそれぞれ電力としてたとえば電流を供給し、電力供給の開始および停止を制御することが可能である。より詳細には、電源64〜66は、制御部29から受けた送信イネーブル信号に基づいて、プリバッファ回路61、イコライザ回路62および出力バッファ回路63に電力を供給するか否かをそれぞれ切り替える。
【0052】
具体的には、電源64〜66は、送信イネーブル信号が活性化されている場合にプリバッファ回路61、イコライザ回路62および出力バッファ回路63への電力供給をそれぞれ行ない、送信イネーブル信号が非活性化されている場合に当該電力供給を停止する。
【0053】
また、タイミング回路67は、出力バッファ回路63から発光素子LDへの変調電流の供給を強制的に停止する制御を行なう。
【0054】
バイアス電流供給回路68は、発光回路75に電力としてバイアス電流を供給する。バイアス電流供給回路68は、バースト光信号を送信するための送信イネーブル信号が活性化されるとバイアス電流Ibiasの供給を開始する。すなわち、バイアス電流供給回路68は、制御部29から受けた送信イネーブル信号に基づいて、発光回路75にバイアス電流を供給するか否かを切り替える。ここで、光トランシーバ21では、発光素子LDへの変調電流の大きさがゼロの状態において、バイアス電流が発光素子LDに供給されると発光素子LDが発光するように、バイアス電流の値が設定される。
【0055】
発光回路75において、インダクタ31は、電源電圧Vcc2の供給される電源ノードに接続された第1端と、第2端とを有する。発光素子LDは、たとえばレーザダイオードであり、インダクタ31の第2端に接続されたアノードと、インダクタ32の第1端に接続されたカソードとを有する。出力バッファ回路63から出力された変調電流は、発光素子LDのアノードからカソードへ流れる。
【0056】
電源電圧Vcc2は、電源電圧Vcc1よりもレベルが高い。電源電圧Vcc1は、たとえばプリバッファ回路61およびイコライザ回路62に供給される。また、電源電圧Vcc2は、たとえば出力バッファ回路63に供給される。電源電圧Vcc1および電源電圧Vcc2は直流電圧である。
【0057】
CPU70は、たとえば、信号線SCLおよび信号線SDAからなるI2Cバス経由で制御部29との間で各種データをやりとりする。
【0058】
マスタI/F69は、CPU70およびI2Cバス間のインタフェース機能を提供する。
【0059】
スレイブI/F71は、CPU70および制御レジスタ72間のインタフェース機能を提供する。
【0060】
CPU70は、スレイブI/F71を介して種々の制御データを制御レジスタ72に書き込む。
【0061】
電源66は、制御レジスタ72に書き込まれた制御データAPC1に基づいて、出力バッファ回路63への供給電流量を変更する。
【0062】
バイアス電流供給回路68は、制御レジスタ72に書き込まれた制御データAPC2に基づいて、発光回路75への供給電流量を変更する。
【0063】
図4は、本発明の実施の形態に係る宅側装置の光トランシーバにおける光出力および送信イネーブル信号を示す図である。なお、光出力の波形において、「データ」で示している部分は、実際には、送信データの論理値に応じて「バイアス」部分のみのレベルと「バイアス」部分および「データ」部分を合わせたレベルとで変化する波形となる。
【0064】
図4を参照して、まず、局側装置201から上り光信号の送信を許可されていない期間において、送信イネーブル信号は非活性化される。この場合、バイアス電流供給回路68は動作せず、バイアス電流は生成されない。
【0065】
次に、局側装置201から上り光信号の送信が許可されると、宅側装置202から上り光信号を送信するために、送信イネーブル信号が活性化される。そうすると、バイアス電流供給回路68が動作を開始し、バイアス電流を生成して発光素子LDに供給する。
【0066】
また、送信イネーブル信号が活性化されると、電源64〜66が動作を開始し、それぞれプリバッファ回路61、イコライザ回路62および出力バッファ回路63に電流が供給される。ただし、出力バッファ回路63からの変調電流は、タイミング回路67の制御により、発光素子LDには供給されない(タイミングt1)。
【0067】
すなわち、タイミング回路67は、タイミングt1から時間TDL経過後のタイミングt2までの期間、出力バッファ回路63から発光素子LDへの変調電流の供給を強制的に停止する。これにより、バイアス電流のレベルが不安定な状態で変調電流が流れることに起因するオーバーシュート等の発生を防ぐことができるため、回路動作を安定させることができる。
【0068】
次に、時間TDLが経過し、発光素子LDへの変調電流の供給が開始されると(タイミングt2)、無効データであるプリアンブルが送信され始め、その後、有効なデータの送信が開始される。
【0069】
次に、宅側装置202からの上り光信号の送信を停止するために、送信イネーブル信号が非活性化されると(タイミングt3)、出力バッファ回路63およびバイアス電流供給回路68が動作を停止し、バイアス電流および変調電流の生成が停止される。
【0070】
ここで、特許文献1に記載のレーザ駆動回路をPONシステムの宅側装置において使用すると仮定した場合、当該差動駆動回路とレーザダイオード等の発光素子とが容量素子によってAC結合されることから、終端抵抗および容量素子の時定数により、バースト応答特性が劣化してしまう。
【0071】
このようなバースト応答特性の劣化を防ぐために、AC結合の代わりにたとえば抵抗によるDC結合を行なう構成が考えられる。しかしながら、このような構成では、差動駆動回路からバイアス回路へDC結合を介して発光素子の駆動に寄与しない無効電流が流れてしまう場合がある。
【0072】
図5は、本発明の実施の形態に係る光トランシーバの駆動回路において、無効電流対策を行なわないと仮定した場合の構成を示す図である。
【0073】
図5を参照して、駆動回路51は、さらに、抵抗13,14と、フィルタ回路17とを含む。出力バッファ回路63は、抵抗11,12と、差動駆動回路41とを含む。差動駆動回路41は、NチャネルMOSトランジスタ15,16を含む。バイアス電流供給回路68は、電流源33を含む。
【0074】
差動駆動回路41は、送信データの論理値に応じて、発光素子LDに電流を供給するか否かを切り替える。
【0075】
抵抗11,12は、差動駆動回路41の差動出力間に接続されている。抵抗11および抵抗12は、NチャネルMOSトランジスタ15のドレインおよびNチャネルMOSトランジスタ16のドレイン間に直列接続されている。
【0076】
より詳細には、抵抗11は、電源電圧Vcc2の供給される電源ノードに接続された第1端と、第2端とを有する。抵抗12は、電源電圧Vcc2の供給される電源ノードに接続された第1端と、第2端とを有する。NチャネルMOSトランジスタ15は、抵抗11の第2端に接続されたドレインと、電源66の第1端に接続されたソースと、データノードN0に接続されたゲートとを有する。NチャネルMOSトランジスタ16は、抵抗12の第2端に接続されたドレインと、電源66の第1端に接続されたソースと、データノードN1に接続されたゲートとを有する。電源66の第2端は、接地電圧の供給される接地ノードに接続されている。また、バイアス電流供給回路68における電流源33は、インダクタ32の第2端と接地ノードとの間に接続されている。
【0077】
データノードN0は、送信データが論理値「0」のときに活性化され、データノードN1は、送信データが論理値「1」のときに活性化される。
【0078】
差動駆動回路41および発光回路75はDC結合(直流結合)されている。すなわち、NチャネルMOSトランジスタ15および抵抗11の接続ノードが発光素子LDのアノードおよび直流電源電圧である電源電圧Vcc2が供給される電源ノードの接続ノードと直流結合されている。NチャネルMOSトランジスタ16および抵抗12の接続ノードが発光素子LDのカソードおよびバイアス電流供給回路68の接続ノードと直流結合されている。
【0079】
より詳細には、抵抗11の第2端およびNチャネルMOSトランジスタ15のドレインの接続ノードとインダクタ31の第2端および発光素子LDのアノードの接続ノードとが抵抗13を介して接続されている。抵抗12の第2端およびNチャネルMOSトランジスタ16のドレインの接続ノードとインダクタ32の第1端および発光素子LDのカソードの接続ノードとが抵抗14を介して接続されている。
【0080】
出力バッファ回路63において、抵抗11,12は、インピーダンス整合用の終端抵抗である。特に10G−EPONでは、バースト光信号のリンギングを防ぐために有用である。
【0081】
発光素子LDは、たとえばアセンブリされた発光モジュールに内蔵されている。出力バッファ回路63、フィルタ回路17、抵抗13,14、発光回路75およびバイアス電流供給回路68は、プリント基板(PCB:Print Circuit Board)に実装されている。発光回路75および上記発光モジュールは、フレキシブルプリント基板(FPC:Flexible Print Circuit Board)を介して接続されている。
【0082】
出力バッファ回路63における差動駆動回路41の差動出力と発光素子LDとの間は伝送路で接続されている。より詳細には、NチャネルMOSトランジスタ15のドレインおよび抵抗11の接続ノードと発光素子LDのアノードとの間が、マイクロストリップライン等の伝送路で接続されている。また、NチャネルMOSトランジスタ16のドレインおよび抵抗12の接続ノードと発光素子LDのカソードとの間が、マイクロストリップライン等の伝送路で接続されている。この伝送路の長さは、たとえば25mm〜30mmであり、特性インピーダンスはたとえば25Ωである。
【0083】
発光回路75およびバイアス電流供給回路68は、特にインピーダンスを考慮する必要はなく、好ましくは、DC的にローインピーダンス、かつAC的にハイインピーダンスである。
【0084】
抵抗13,14は、バースト光信号の周波数特性を補正し、かつ出力バッファ回路63側の寄生容量によるインピーダンスの低下を補償するために設けられたダンピング抵抗である。抵抗13,14により、前述のように、バースト応答特性の劣化を防ぐことができる。
【0085】
フィルタ回路17は、差動駆動回路41および発光回路75間を流れる変調電流等の高周波成分を除去するために、抵抗13および抵抗14間に設けられている。
【0086】
駆動回路51の動作は、以下のようになる。すなわち、送信データが論理値「1」のとき、NチャネルMOSトランジスタ15がオフし、NチャネルMOSトランジスタ16がオンする。これにより、発光回路75の電源ノードから発光素子LDおよび差動駆動回路41のNチャネルMOSトランジスタ16経由で出力バッファ回路63の接地ノードへ電流IM1が流れる。すなわち、発光素子LDにはある程度の大きさの変調電流が供給される。
【0087】
また、送信データが論理値「0」のとき、NチャネルMOSトランジスタ15がオンし、NチャネルMOSトランジスタ16がオフする。これにより、発光回路75の電源ノードから発光素子LDを介さずに差動駆動回路41のNチャネルMOSトランジスタ15経由で出力バッファ回路63の接地ノードへ電流IM0が流れる。すなわち、発光素子LDへの変調電流の大きさはゼロになる。
【0088】
また、送信データの論理値に関わらず、電流源33により、発光回路75の電源ノードから発光素子LDを介してバイアス電流供給回路68の接地ノードへバイアス電流Ibiasが流れる。
【0089】
図6は、
図5に示す駆動回路において流れる無効電流を示す図である。
【0090】
図6を参照して、駆動回路51では、送信データが論理値「1」のとき、出力バッファ回路63の電源ノードから、抵抗12および抵抗14を介して電流源33の接地ノードへ無効電流INEが流れてしまう。
【0091】
ここで、抵抗11および抵抗12の各々の抵抗値をRoutとし、抵抗13および抵抗14の各々の抵抗値をRdampとし、発光素子LDの順方向電圧および微分抵抗をそれぞれVfおよびRdとし、発光素子LDを通して流れるバイアス電流および変調電流をIbiasおよびImodとすると、無効電流INEは以下の式で表される。
INE=Vf/(Rout+Rdamp)
【0092】
また、電源66の出力電流yは、以下の式で表される。
y=Imod+[{Vf+(Rd+Rdamp)×Imod}/Rout]
【0093】
ここで、電源66の入力はハイインピーダンスであることから、無効電流INEはすべて電流源33へ流れる。すなわち、電流源33の出力電流xは、以下の式で表される。
x=Ibias+Vf/(Rout+Rdamp)
【0094】
具体的には、たとえば、Vf=1.4[V]、Rout=25[Ω]、Rdamp=6[Ω]とすると、電流源33の出力電流xは、以下の式で表される。
x=Ibias+45.2
【0095】
そこで、光トランシーバ21の駆動回路において以下のような構成を採用することにより、無効電流INEを低減することが可能である。
【0096】
図7は、本発明の実施の形態に係る光トランシーバにおいて、無効電流を低減するための対策の一例を採用した駆動回路の構成を示す図である。
【0097】
図7を参照して、駆動回路52は、
図5に示す駆動回路51と比べて、抵抗11の第1端および抵抗12の第1端が電源ノードに接続されていない。これにより、差動駆動回路41が発光素子LDに供給する電流の電源が発光回路75から供給される。すなわち、差動駆動回路41は、発光回路75から供給される電力によって発光素子LDに電流を供給する。抵抗11および抵抗12の接続ノードは、発光回路75の電源ノードよりも、抵抗13および抵抗11の電圧降下分だけ低い電位となる。すなわち、抵抗11および抵抗12の接続ノードの電位は、発光回路75の電源ノードから供給される電源電圧Vcc2によって決まる。
【0098】
ここで、たとえば出力バッファ回路63および発光回路75間がDC結合ではなくAC結合されている構成では、差動駆動回路41への直流電力の供給経路が存在しなくなる。このため、出力バッファ回路63における抵抗11および抵抗12の接続ノードを電源ノードに接続する必要がある。
【0099】
しかしながら、駆動回路52では、出力バッファ回路63および発光回路75間がDC結合されている。このため、当該DC結合を介して発光回路75から直流電力を供給することが可能であることから、抵抗11および抵抗12の接続ノードを電源ノードに接続する必要が無くなる。
【0100】
すなわち、
図7に示すように、抵抗11および抵抗12の接続ノードと電源ノードとを非接続とする構成により、出力バッファ回路63およびバイアス電流供給回路68間を発光回路75経由で流れる無効電流INEの経路は、発光回路75の電源ノードおよび出力バッファ回路63間の経路を含むことになる。
【0101】
具体的には、無効電流INEが、発光回路75の電源ノードからインダクタ31、抵抗13、抵抗11、抵抗12、抵抗14、インダクタ32およびバイアス電流供給回路68をこの順番で経由して接地ノードへ流れる。これにより、無効電流INEの経路のインピーダンスが
図5に示す駆動回路51と比べて増加することから、無効電流INEを低減することができる。
【0102】
駆動回路52において、無効電流INEは以下の式で表される。
INE=Vf/{2×(Rout+Rdamp)
【0103】
また、電源66の出力電流yは、以下の式で表される。
y=Imod+[{Vf+(Rd+Rdamp)×Imod}/Rout]
【0104】
ここで、電源66の入力はハイインピーダンスであることから、無効電流INEはすべて電流源33へ流れる。すなわち、電流源33の出力電流xは、以下の式で表される。
x=Ibias+Vf/{2×(Rout+Rdamp)}
【0105】
具体的には、たとえば、Vf=1.4[V]、Rout=25[Ω]、Rdamp=6[Ω]とすると、電流源33の出力電流xは、以下の式で表される。
x=Ibias+22.6
【0106】
すなわち、駆動回路52では、
図5に示す駆動回路51と比べて、消費電流を22.6mA削減することができる。
【0107】
駆動回路52では、送信データのデューティ比が一定であれば、抵抗11および抵抗12の接続ノードの電位は変動しないため、当該接続ノードにおいてAC的なグランド電位は安定している。すなわち、光トランシーバ21が連続的な光信号を送信する場合には、安定した送信特性を得ることができる。
【0108】
一方、光トランシーバ21がバースト光信号を送信する場合には、光信号を送信しない期間における送信データのデューティ比はゼロであり、光信号の送信開始タイミングにおいてデューティ比が変動する。このため、抵抗11および抵抗12の接続ノードの電位が不安定となり、バースト光信号においてリンギングが生じる場合がある。
【0109】
そこで、本発明の実施の形態では、光トランシーバ21の駆動回路において以下のような構成をさらに採用して上記問題点を解決することが可能である。
【0110】
図8は、本発明の実施の形態に係る光トランシーバにおいて、リンギングを低減するための対策の一例を採用した駆動回路の構成を示す図である。
【0111】
図8を参照して、駆動回路53では、
図7に示す駆動回路52と比べて、出力バッファ回路63が、さらに、キャパシタ19を含む。
【0112】
キャパシタ19は、固定電圧である電源電圧Vcc2が供給される電源ノードと抵抗11および抵抗12の接続ノードとの間に接続されている。すなわち、抵抗11の第1端および抵抗12の第1端がキャパシタ19を介して電源ノードに接続されている。キャパシタ19の容量値は、たとえば1000pFである。
【0113】
これにより、抵抗11,12は、固定電圧が供給されるノードと、発光回路75を経由せずに交流結合される。なお、この固定電圧は、電源電圧Vcc2に限らず、たとえば接地電圧であってもよい。
【0114】
このように、駆動回路53では、
図7に示す駆動回路52において電位が不安定になる可能性のある各終端抵抗の接続ノードと、電源ノードとの間に容量素子を接続する。
【0115】
これにより、当該接続ノードの電位を、電源電圧Vcc2で安定させることができる。また、当該電源ノードと各終端抵抗とはAC結合されることになるため、
図6で示したような当該電源ノードからの無効電流INEが流れることを防ぐことができる。駆動回路53では、
図7に示す駆動回路52と同様の無効電流INEが流れることになる。
【0116】
駆動回路53において、無効電流INEは以下の式で表される。
INE=Vf/{2×(Rout+Rdamp)
【0117】
また、電源66の出力電流yは、以下の式で表される。
y=Imod+[{Vf+(Rd+Rdamp)×Imod}/Rout]
【0118】
ここで、電源66の入力はハイインピーダンスであることから、無効電流INEはすべて電流源33へ流れる。すなわち、電流源33の出力電流xは、以下の式で表される。
x=Ibias+Vf/{2×(Rout+Rdamp)}
【0119】
具体的には、たとえば、Vf=1.4[V]、Rout=25[Ω]、Rdamp=6[Ω]とすると、電流源33の出力電流xは、以下の式で表される。
x=Ibias+22.6
【0120】
すなわち、駆動回路53では、
図7に示す駆動回路52と同様に、
図5に示す駆動回路51と比べて、消費電流を22.6mA削減することができる。
【0121】
一方、駆動回路53では、キャパシタ19および抵抗11,12の時定数がバースト応答特性に影響する。そして、キャパシタ19が、たとえば−5℃〜+70℃の範囲で±5%の温度依存性を有する場合、この温度依存性によって当該時定数が変化し、その結果、バースト応答特性が温度依存性を有することになる。
【0122】
ここで、10G−EPONのONUでは、たとえば、発光素子に供給するバイアス電流および変調電流を直接制御する直接変調方式が採用されている。
【0123】
この直接変調方式では、バイアス電流については、たとえば、発光素子の前方光に比例した後方光をモニタ用受光素子で受光し、受光量をバイアス電流供給回路へフィードバックする方法が採用されている。
【0124】
光トランシーバ21において、送信データが論理値「0」のとき、すなわち発光素子LDにバイアス電流Ibiasが供給されるとともに発光素子LDへの変調電流Imodの大きさがゼロである状態の発光素子LDの光出力P0を測定することにより、バイアス電流Ibiasを測定することが可能である。
【0125】
しかしながら、上述のようにバースト応答特性が温度依存性を有すると、バイアス電流の測定結果が温度に応じて変化してしまい、バイアス電流の制御を適切に行なうことが困難となる。
【0126】
また、送信データが論理値「1」のとき、すなわち発光素子LDにバイアス電流Ibiasおよびある程度の大きさの変調電流Imodが供給されている状態の発光素子LDの光出力P1と光出力P0との比が消光比である。したがって、変調電流Imodの大きさを調整することにより、発光素子LDの消光比を調整することができる。変調電流Imodを調整して発光素子LDの消光比を一定に保つことにより、環境温度の変化および経年劣化による発光素子LDの特性変動の影響を抑えることができる。
【0127】
しかしながら、上述のようにバースト応答特性が温度依存性を有すると、バイアス電流の測定結果が温度に応じて変化してしまい、変調電流の制御を適切に行なうことが困難となる。
【0128】
そこで、本発明の実施の形態では、光トランシーバ21の駆動回路において以下のような構成を採用することにより、上記問題点を解決する。
【0129】
図9は、本発明の実施の形態に係る光トランシーバの駆動回路の構成を示す図である。
【0130】
図9を参照して、駆動回路54では、
図8に示す駆動回路53と比べて、キャパシタ19の代わりに抵抗(調整抵抗)20を含む。
【0131】
抵抗20は、固定電圧である電源電圧Vcc2が供給される電源ノードと抵抗11および抵抗12の接続ノードとの間に接続されている。すなわち、抵抗11の第1端および抵抗12の第1端が抵抗20を介して電源ノードに接続されている。たとえば、抵抗20の抵抗値は、抵抗11および抵抗12の各々の抵抗値より大きい。
【0132】
駆動回路54は、バイアス電流Ibiasが流れる経路81を有する。また、駆動回路54は、出力バッファ回路63から変調電流Imodを発光素子LDに供給するための経路を含み、バイアス電流Ibiasが流れる際に電流がバイアス電流供給回路68から発光素子LDを経由せずに出力バッファ回路63を通ってバイアス電流供給回路68へ戻る経路82を有する。また、駆動回路54は、出力バッファ回路63において経路82と合流し、合流前において抵抗20が設けられ、バイアス電流Ibiasが流れる際に、電流が抵抗20を介してバイアス電流供給回路68との間で流れる経路83を有する。たとえば、経路83は、抵抗11および抵抗12間において経路82と合流する。
【0133】
言い換えれば、経路81および経路82は、電源電圧Vcc2が供給される電源ノードを一方の端部として、両経路が一体化されている状態からインダクタ31の後段において分離してそれぞれ発光素子LDおよび出力バッファ回路63へ向かう。そして、出力バッファ回路63において経路83が経路82と合流し、両経路が一体化されている状態で、抵抗14および発光素子LDの後段において経路81と合流し、経路81〜83が一体化されている状態でインダクタ32および電流源33を経由して他方の端部である接地ノードへ到達する。
【0134】
より詳細には、経路81は、電源電圧Vcc2が供給される電源ノードからインダクタ31、発光素子LD、インダクタ32、電流源33をこの順番で経由して接地ノードへ到達するまでの経路である。経路82は、電源電圧Vcc2が供給される電源ノードからインダクタ31、抵抗13、抵抗11、抵抗12、抵抗14、インダクタ32、電流源33をこの順番で経由して接地ノードへ到達するまでの経路である。経路83は、電源電圧Vcc2が供給される電源ノードから抵抗20、抵抗12、抵抗14、インダクタ32、電流源33をこの順番で経由して接地ノードへ到達するまでの経路である。
【0135】
これにより、抵抗11,12は、固定電圧が供給されるノードと、発光回路75を経由せずに直流結合される。なお、この固定電圧は、電源電圧Vcc2に限らず、たとえば接地電圧であってもよい。すなわち、光トランシーバ21において、各電流の流れる方向は上記に限定されるものではなく、各電流の流れる方向が上記と逆になるように、電源ノードと接地ノードとの位置関係を逆にし、トランジスタ等の部品を変更することも可能である。
【0136】
このように、駆動回路54では、
図7に示す駆動回路52において電位が不安定になる可能性のある各終端抵抗の接続ノードと、電源ノードとの間に抵抗を接続する。
【0137】
これにより、当該接続ノードの電位を、電源電圧Vcc2以下の電圧で安定させることができる。
【0138】
具体的には、抵抗20の抵抗値をRctとすると、抵抗14、抵抗12および抵抗20からなる回路のDC的なインピーダンスZは、以下の式で表される。
Z=(Rdamp+Rout)×Rct/(Rdamp+Rout+Rct)
【0139】
Rctが(Rdamp+Rout)よりも十分に大きい場合、インピーダンスZは、以下の式で表される。
Z=(Rdamp+Rout)
【0140】
すなわち、キャパシタ19の代わりに抵抗20を用いる場合でも、
図8に示す駆動回路53と同様に、抵抗11および抵抗12の接続ノードの電位が不安定となることによるリンギングの発生を抑制しながら、無効電流INEを低減することができる。
【0141】
そして、キャパシタ19を用いないことにより、バースト応答特性の温度依存性を低減することができる。また、キャパシタ19を用いないことにより、バースト応答を速くすることができる。
【0142】
なお、駆動回路54は、
図8に示す駆動回路53と比べて、キャパシタ19の代わりに抵抗20のみを含む構成に限定されるものではない。経路83のうち、経路82と合流する前の部分において抵抗を含む構成であればよい。たとえば、当該部分において、抵抗およびキャパシタの直列回路が設けられる構成であってもよいし、抵抗およびキャパシタの並列回路が設けられる構成であってもよい。
【0143】
図10は、本発明の実施の形態に係る駆動回路の経路82および経路83における等価回路を示す図である。
【0144】
Rdamp=0[Ω]、Rout=25[Ω]、発光素子LDの順方向電圧Vf=1.5[V]、インダクタ31に抵抗成分はない、とすると、抵抗11〜14および抵抗20からなる回路は、
図10に示すような並列回路Aで表される。
【0145】
すなわち、抵抗値Routの抵抗11および抵抗値Rctの抵抗20が並列に接続され、この並列回路Aの一方端が電圧Vfの供給されるノードに接続され、他方端が抵抗値Routの抵抗12の第1端に接続される。抵抗12の第2端が接地ノードに接続される。
ここで、
図9における、電源電圧Vcc2が供給される電源ノードと抵抗20との接続ノードN11a、および抵抗11と抵抗13との接続ノードN11bが、
図10における、電圧Vfの供給されるノードと抵抗11および抵抗20との接続ノードN11に相当する。また、
図9における、抵抗20と抵抗11と抵抗12との接続ノードN12が、
図10における、抵抗20と抵抗11と抵抗12との接続ノードN12に相当する。また、
図9における、抵抗12と抵抗14との接続ノードN13が、
図10における、接地ノードと抵抗12との接続ノードN13に相当する。
【0146】
図11は、
図10に示す等価回路における、抵抗値Rct、並列回路Aのインピーダンスおよび無効電流の関係を示す図である。
【0147】
図11を参照して、抵抗値Rctが1000[pF]、すなわち
図8に示す構成のようにキャパシタ19を用いることで各終端抵抗の接続ノードがDC的にオープン状態となる場合、並列回路Aのインピーダンスは25[Ω]となり、無効電流INEの大きさは、Vf/等価回路の合成抵抗=1.5/50=30[mA]となる。また、抵抗値Rctが100[Ω]である場合、並列回路Aのインピーダンスは20[Ω]となり、無効電流INEの大きさは、Vf/等価回路の合成抵抗=1.5/45=33[mA]となる。また、抵抗値Rctが37.5[Ω]である場合、並列回路Aのインピーダンスは15[Ω]となり、無効電流INEの大きさは、Vf/等価回路の合成抵抗=1.5/40=37.5[mA]となる。また、抵抗値Rctが16.7[Ω]である場合、並列回路Aのインピーダンスは10[Ω]となり、無効電流INEの大きさは、Vf/等価回路の合成抵抗=1.5/35=42.9[mA]となる。また、抵抗値Rctが6.25[Ω]である場合、並列回路Aのインピーダンスは5[Ω]となり、無効電流INEの大きさは、Vf/等価回路の合成抵抗=1.5/30=50[mA]となる。また、抵抗値Rctが0[Ω]、すなわち
図6に示す構成のように抵抗11および抵抗12と電源電圧Vcc2の供給される電源ノードとが短絡状態となる場合、並列回路Aのインピーダンスは0[Ω]となり、無効電流INEの大きさは、Vf/等価回路の合成抵抗=1.5/25=60[mA]となる。
【0148】
無効電流INEの変化率は、抵抗値Rctが1000[pF]の場合を基準すなわち±0%として、抵抗値Rctが100[Ω]の場合に+10%となり、抵抗値Rctが37.5[Ω]の場合に+25%となり、抵抗値Rctが16.7[Ω]の場合に+43%となり、抵抗値Rctが6.25[Ω]の場合に+67%となり、抵抗値Rctが0[Ω]の場合に+100%となる。
【0149】
無効電流INEの変化率に着目すると、0%より大きく100%未満であれば、本発明の実施の形態に係る駆動回路を実施可能であり、2%以上かつ70%以下が好ましく、7%以上かつ30%以下であればより好ましい。
【0150】
すなわち、抵抗20の抵抗値Rctは、経路83を流れる電流の大きさが、経路82を流れる電流、すなわち抵抗20が設けられず、抵抗11および抵抗12の接続ノードがDC的にオープン状態となるときに流れる無効電流の大きさの2%以上かつ70%以下となる値である。
【0151】
より好ましくは、抵抗20の抵抗値Rctは、経路83を流れる電流の大きさが、経路82を流れる電流の大きさの7%以上かつ30%以下となる値である。
【0152】
図12は、駆動回路53が出力する光信号の温度特性の測定結果を示す図である。
図12において、横軸は時間であり、縦軸はパワーである。そして、「バースト(プリバイアス)」の列は、バースト光信号のプリバイアス区間、すなわちバイアス電流Ibiasの供給開始タイミング後、かつ変調電流Imodの供給開始タイミングから遡って所定時間以内のタイミングを拡大した波形である。また、「バースト(ハイレベル)」の列は、変調電流Imodの供給開始タイミング後に着目した波形であり、「バースト(プリバイアス)」と比べて横軸を縮めて表示している。「バースト(プリバイアス)」および「バースト(ハイレベル)」において、Bは、光信号が論理ハイレベルおよび論理ローレベルを繰り返している部分である。また、「アイパターン」の列は、光信号のアイパターンである。
【0153】
また、−5℃、25℃および70℃の各々において、横軸および縦軸のスケールは同じであり、マーカMK1およびMK2の縦軸における大きさは同じである。
【0154】
図12は、終端Cすなわちキャパシタ19の容量値が1000pFであり、光信号のビットレートが10.3125Gbps(ギガビット/秒)である場合を示している。
【0155】
図12を参照して、各温度における「バースト(プリバイアス)」の波形から、温度が上がるほどプリバイアス区間におけるバースト光信号のレベルが下がっている。そして、各温度の「アイパターン」の波形から、−5℃における消光比が6.59dB、25℃における消光比が6.96dB、70℃における消光比が7.53dBとなる。すなわち、バースト応答特性が温度依存性を有していることが分かる。
【0156】
図13は、駆動回路53が出力する光信号の温度特性の測定結果を示す図である。図の見方は
図12と同様である。
【0157】
図13は、終端Cすなわちキャパシタ19の容量値が1000pFであり、光信号のビットレートが1.25Gbps(ギガビット/秒)である場合を示している。
【0158】
図13を参照して、各温度における「バースト(プリバイアス)」の波形から、温度が上がるほどプリバイアス区間におけるバースト光信号のレベルが下がっている。そして、各温度の「アイパターン」の波形から、−5℃における消光比が7.68dB、25℃における消光比が8.16dB、70℃における消光比が9.62dBとなる。すなわち、バースト応答特性が温度依存性を有していることが分かる。
【0159】
ここで、
図13に示す消光比の温度依存性は、
図12に示す消光比の温度依存性より大きい。これは、光信号のビットレートが10.3125Gbpsと高速の場合には、発光素子LDの周波数特性が、消光比の温度依存性を打ち消す方向に表れるためと考えられる。すなわち、−5℃〜70℃における消光比の変化量は、実際には約2dB弱であると考えられる。
【0160】
図14は、駆動回路51が出力する光信号の温度特性の測定結果を示す図である。図の見方は
図12と同様である。
【0161】
図14は、終端Rが0Ωすなわち抵抗11および抵抗12と電源電圧Vcc2の供給される電源ノードとが短絡状態となり、光信号のビットレートが10.3125Gbpsである場合を示している。
【0162】
図14を参照して、各温度における「バースト(プリバイアス)」の波形から、プリバイアス区間におけるバースト光信号のレベルが温度に関わらず略一定である。また、各温度の「アイパターン」の波形から、−5℃における消光比が7.14dB、25℃における消光比が6.75dB、70℃における消光比が6.62dBとなる。すなわち、
図12に示すバースト応答特性と比べて、バースト応答特性の温度依存性が少なくなっていることが分かる。
【0163】
なお、
図14では、温度が上がるほど消光比が小さくなっている。これは、前述のように発光素子LDの周波数特性が影響していると考えられる。
【0164】
図15は、駆動回路51が出力する光信号の温度特性の測定結果を示す図である。図の見方は
図12と同様である。
【0165】
図15は、終端Rが0Ωすなわち抵抗11および抵抗12と電源電圧Vcc2の供給される電源ノードとが短絡状態となり、光信号のビットレートが1.25Gbpsである場合を示している。
【0166】
図15を参照して、各温度における「バースト(プリバイアス)」の波形から、プリバイアス区間におけるバースト光信号のレベルが温度に関わらず略一定である。また、各温度の「アイパターン」の波形から、−5℃における消光比が8.54dB、25℃における消光比が8.42dB、70℃における消光比が8.50dBとなる。すなわち、消光比が温度に関わらず略一定である。
【0167】
これにより、光信号のビットレートが10.3125Gbpsである
図12および
図14に示す場合において、消光比が発光素子LDの周波数特性の影響を受けていることが裏付けられる。
【0168】
なお、
図14および
図15に示す構成すなわち駆動回路51では、前述のように、無効電流INEが大きくなり、消費電力が大きくなってしまう問題がある。
【0169】
図16は、
図12〜
図15に示す測定結果のまとめを示す図である。
図16を参照して、終端Cが1000pFかつ光信号のビットレートが10.3125Gbpsの場合、−5℃〜70℃における消光比の変化量は+0.94dBである。また、終端Cが1000pFかつ光信号のビットレートが1.25Gbpsの場合、−5℃〜70℃における消光比の変化量は+1.94dBである。また、終端Rが0Ωかつ光信号のビットレートが10.3125Gbpsの場合、−5℃〜70℃における消光比の変化量は−0.52dBである。また、終端Rが0Ωかつ光信号のビットレートが1.25Gbpsの場合、−5℃〜70℃における消光比の変化量は−0.04dBである。
【0170】
終端R=0Ωの構成において、光信号のビットレート=1.25Gbpsの場合、消光比に温度依存性が見られないのに対して、光信号のビットレート=10.3125Gbpsの場合には、高温において消光比が低下する傾向が見られる。
【0171】
これは、高温では光信号の立ち上がり時間および立ち下がり時間がそれぞれ短くなることが原因であると考えられる。
【0172】
また、終端C=1000pFの構成において、光信号のビットレート=10.3125Gbpsおよび1.25Gbpsのいずれの場合も、高温において消光比が増加する傾向が見られ、特に、1.25Gbpsの場合に顕著となる。
【0173】
ここで、終端R=0Ωの構成では、光信号のプリバイアス区間におけるレベルが各温度で略一定であり、また、高温において消光比が増加する傾向が見られないことから、終端C=1000pFの構成における消光比の温度依存性は、終端C=1000pFによる時定数の温度特性が原因であると考えられる。
【0174】
図17は、駆動回路53においてキャパシタ19の容量値を変更した場合の光信号の波形の測定結果を示す図である。図の見方は
図12と同様である。
図17は、25℃における測定結果を示している。
【0175】
図17を参照して、容量値1000pFのキャパシタ19を用いる駆動回路53では、バースト光信号の立ち上がり部分Eにおいてリンギングが無い。
【0176】
これに対して、駆動回路53においてキャパシタ19を取り外した構成、すなわち
図7に示す駆動回路52では、バースト光信号の立ち上がり部分D1においてリンギングが大きくなっている。また、駆動回路53においてキャパシタ19の容量値を47pFと小さくした構成では、同様に、バースト光信号の立ち上がり部分D2においてリンギングが大きくなっている。
【0177】
このように、キャパシタ19を取り外して各終端抵抗の接続ノードをオープン状態とするか、またはキャパシタ19の容量値を小さくするだけでは、バースト応答は速くなるが、リンギングが大きくなり、不適であることが分かる。
【0178】
図18は、駆動回路54が出力する光信号の温度特性の測定結果を示す図である。図の見方は
図12と同様である。
【0179】
図18は、終端Rすなわち抵抗20の抵抗値が100Ωであり、光信号のビットレートが10.3125Gbpsである場合を示している。
【0180】
図19は、
図12〜
図14および
図18に示す測定結果のまとめを示す図である。
図18および
図19を参照して、各温度における「バースト(プリバイアス)」の波形から、プリバイアス区間におけるバースト光信号のレベルの温度上昇による低下量は少ない。また、各温度の「アイパターン」の波形から、−5℃における消光比が7.00dB、25℃における消光比が6.95dB、70℃における消光比が6.81dBとなる。すなわち、−5℃〜70℃における消光比の変化量は−0.19dBと小さくなり、
図12および
図14に示す場合と比べて改善されていることが分かる。
【0181】
また、
図18に示すように、駆動回路54では、アイパターンの波形が崩れることなく、
図12および
図14と同様のアイパターンが得られている。すなわち、
図9に示す駆動回路において、
図6〜
図8に示す駆動回路51〜53と同等の光信号の送信特性が得られていることが分かる。
【0182】
また、
図17の上側および下側に示すバースト光信号では、
図17の真中に示すバースト光信号と比べて、バースト光信号の立ち上がり部分D1およびD2においてそれぞれリンギングが大きくなっている。
【0183】
これに対して、
図18に示すバースト光信号では、
図17の上側および下側に示すバースト光信号と比べて、−5℃、25℃および70℃の各々のバースト光信号の立ち上がり部分Fにおいてリンギングが少なくなり、バースト光信号の送信特性が改善されていることが分かる。
【0184】
また、この測定では、
図12に示す70℃の場合および
図18に示す70℃の場合において、駆動回路の消費電流は、それぞれ96mAおよび98mAであった。すなわち、
図9に示す駆動回路54は、
図8に示す駆動回路53に対する無効電流INEの増加度合いが小さく、消費電力の点でも良好であることが分かる。
【0185】
ところで、特許文献1に記載のレーザ駆動回路等、バースト信号のラインにおいて容量素子を用いる構成では、容量素子が通常、温度依存性を有するため、バースト応答特性が温度依存性を有することになる。この温度依存性により、光信号の送信特性が劣化し、通信に悪影響を及ぼす場合がある。
【0186】
これに対して、本発明の実施の形態に係る駆動回路では、バイアス電流供給回路68は、光信号を送信するための発光素子LDにバイアス電流Ibiasを供給する。出力バッファ回路63は、送信すべきデータの論理値に応じた大きさの変調電流Imodを発光素子LDに供給する。そして、駆動回路54は、バイアス電流Ibiasが流れる経路81を有する。駆動回路54は、出力バッファ回路63から変調電流Imodを発光素子LDに供給するための経路を含み、バイアス電流Ibiasが流れる際に電流がバイアス電流供給回路68から発光素子LDを経由せずに出力バッファ回路63を通ってバイアス電流供給回路68へ戻る経路82を有する。駆動回路54は、出力バッファ回路63において経路82と合流し、合流前において抵抗20が設けられ、バイアス電流Ibiasが流れる際に、電流が抵抗20を介してバイアス電流供給回路68との間で流れる経路83を有する。
【0187】
このような構成により、経路83のうち、経路82と合流する前の部分においてキャパシタのみを設ける構成と比べて、バースト応答特性の温度依存性を低減し、光信号の送信特性の劣化を抑制することができる。したがって、本発明の実施の形態に係る駆動回路では、光信号の送信回路における温度依存性を抑制し、良好な通信を実現することができる。
【0188】
また、本発明の実施の形態に係る駆動回路では、抵抗20の抵抗値は、経路83を流れる電流の大きさが、経路82を流れる電流の大きさの2%以上かつ70%以下となる値である。
【0189】
このような構成により、経路83がバイアス電流供給回路68とDC的に絶縁されなくても、発光素子の駆動に寄与しない無効電流、すなわち経路83とバイアス電流供給回路68との間で流れる電流を低減することができる。
【0190】
また、本発明の実施の形態に係る駆動回路では、出力バッファ回路63は、データの論理値に応じて、発光素子LDに電流を供給するか否かが切り替わる差動駆動回路41と、差動駆動回路41の差動出力間に直列接続された抵抗11および抵抗12とを含む。そして、経路83は、抵抗11および抵抗12間において経路82と合流する。
【0191】
このように、終端抵抗である抵抗11および抵抗12を用いる構成により、特に高周波の光信号を送信する場合において、差動駆動回路41における送信特性の劣化を抑制することができる。また、抵抗11および抵抗12の接続ノードの電位が不安定となることによるリンギングの発生を抑制することができる。
【0192】
また、本発明の実施の形態に係る駆動回路では、バイアス電流供給回路68は、バースト光信号を送信するための送信イネーブル信号が活性化されるとバイアス電流Ibiasの供給を開始する。
【0193】
このような構成により、特に送信イネーブル信号の活性化に応答してバイアス電流の供給が開始されるバースト光信号の送信回路において、バイアス電流の供給開始時における当該回路の挙動を安定化することができる。
【0194】
また、本発明の実施の形態に係る駆動回路では、光信号のビットレートは2.5ギガビット/秒より大きい。
【0195】
このような構成により、特に2.5ギガビット/秒より大きい高速なビットレートの光信号を伝送する光通信システムにおいて、光信号の送信回路における温度依存性を抑制し、良好な通信を実現することができる。
【0196】
なお、本発明の実施の形態に係る駆動回路では、差動駆動回路41は、1段のトランジスタ回路を含む構成であるとしたが、これに限定するものではない。差動駆動回路41は、複数段のトランジスタ回路を含む構成であってもよい。この場合、最終段の回路に発光回路75から直流電源電流が供給されれば十分である。
【0197】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0198】
以上の説明は、以下に付記する特徴を含む。
【0199】
[付記1]
光信号を送信するための発光素子にバイアス電流を供給するためのバイアス電流供給回路と、
送信すべきデータの論理値に応じた大きさの変調電流を前記発光素子に供給するための変調電流供給回路とを備え、
前記バイアス電流が流れる第1経路と、
前記変調電流供給回路から前記変調電流を前記発光素子に供給するための経路を含み、前記バイアス電流が流れる際に電流が前記バイアス電流供給回路から前記発光素子を経由せずに前記変調電流供給回路を通って前記バイアス電流供給回路へ戻る第2経路と、
前記変調電流供給回路において前記第2経路と合流し、合流前において調整抵抗が設けられ、前記バイアス電流が流れる際に、電流が前記調整抵抗を介して前記バイアス電流供給回路との間で流れる第3経路とを有し、
前記変調電流供給回路、および前記発光素子は直流結合されており、
10G−EPONの宅側装置に用いられる、駆動回路。
【0200】
[付記2]
複数の宅側装置から局側装置への光信号が時分割多重される通信システムにおける宅側装置であって、
前記光信号を送信するための発光素子と、
前記発光素子を駆動するための駆動回路とを備え、
前記駆動回路は、
前記発光素子にバイアス電流を供給するためのバイアス電流供給回路と、
送信すべきデータの論理値に応じた大きさの変調電流を前記発光素子に供給するための変調電流供給回路とを含み、
前記バイアス電流が流れる第1経路と、
前記変調電流供給回路から前記変調電流を前記発光素子に供給するための経路を含み、前記バイアス電流が流れる際に電流が前記バイアス電流供給回路から前記発光素子を経由せずに前記変調電流供給回路を通って前記バイアス電流供給回路へ戻る第2経路と、
前記変調電流供給回路において前記第2経路と合流し、合流前において調整抵抗が設けられ、前記バイアス電流が流れる際に、電流が前記調整抵抗を介して前記バイアス電流供給回路との間で流れる第3経路とを有し、
前記変調電流供給回路、および前記発光素子は直流結合されており、
10G−EPONに用いられる、宅側装置。