(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記隠蔽用文字列生成手段は、前記文字列種別判別手段により文字列データが英字、数字又は記号と判別される部分に対しては、英字、数字又は記号による隠蔽用の文字列を生成し、前記文字列種別判別手段により文字列データがひらがな又はカタカナと判別される部分に対しては、ひらがな又はカタカナによる隠蔽用の文字列を生成し、前記文字列種別判別手段により文字列データが漢字と判別される部分に対しては、漢字による隠蔽用の文字列を生成することを特徴とする請求項1に記載の印字装置。
前記隠蔽用文字列生成手段は、前記文字列種別判別手段により文字列データの種別が電話番号と判別された際に、任意の数字列とハイフン又は括弧の区切り記号を組み合せた隠蔽用の電話番号データを生成する電話番号データ生成手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の印字装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。ここでは、印字装置としてスキャナー付きハンディプリンタ等の走査型印字装置1を適用して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る走査型印字装置1の側面断面を示す模式図である。
【0013】
走査型印字装置1は、
図1に示すように、紙などの印字物40上に押し当てながら移動させることで印字物40又は紙等に文字や模様等を印字する装置である。また、走査型印字装置1は、印字物40上で装置本体をローラ8を回転させて移動させたときに印字物40の画像を読み取って画像データを得る読み取り手段を有するものである。そして、この走査型印字装置1は、把持することのできる大きさに形成された中空方形状の筐体2を有している。そして、筐体2の上方には液晶表示面上にタッチセンサー面が積層されて成るタッチパネル4が形成されている。
【0014】
タッチパネル4は、入力されたデータに関する文字や模様等の画像の全部又は一部、各種の設定のための選択メニュー、各種の処理に関するメッセージ等が表示されるものであって、手指やタッチペン等によって各種の設定や、文字データの入力、表示中の印字候補等から印字データを決定するための選択入力が行えるようになっている。
【0015】
また、筐体2の側面には印字を実行させるキー入力部である動作スイッチ5、電源スイッチ3、動作モード切替スイッチ7などのスイッチが形成されている。動作モード切替スイッチ7は、印字物40上で装置本体を移動させたときに読み取り手段を動作させる読み取りモード又は印字手段を動作させる印字モードの何れかに設定する動作モード設定手段とされる。
【0016】
そして、筐体2の下面にはインクジェットヘッド6に対応した位置に開口が形成され、筐体2の下方両端部近傍には印字物40に接触されるローラ8が配設されている。
【0017】
また、筐体2の下方内部には、インクジェットヘッド6や、読み取り手段である一次元イメージセンサ21、LEDアレイ20及びレンズ22を備えている。インクジェットヘッド6は、印字手段とされるものであり、筐体2の下面の開口に対応して配設され、筐体2のローラ8を平面台などに載置された印字物40の面に接触させたとき、インクジェットヘッド6のノズルから印字物40の面に対して垂直方向にインクを吐出させることで、印字を行うことができるようになっている。
【0018】
LEDアレイ20は、読み取り対象の印字物40を照明するものである。一次元イメージセンサ21は、読み取り幅24mm、解像度8dots/mmのラインCCD等から構成され、LEDアレイ20により照明された印字物40上の画像をレンズ22を介して読み取る。
【0019】
また、筐体2の内部にはロータリーエンコーダ9が配設されており、不図示のギア列を介してローラ8の回転にロータリーエンコーダ9のスリット円盤の回転機構が連動している。したがって、ローラ8を印字物40上に載置して装置本体を移動させたとき、ローラ8の回転に応じたパルス信号がロータリーエンコーダ9から発生されて後述する制御部に送信され、制御部はそのパルス信号をタイミング信号として一次元イメージセンサ21或はインクジェットヘッド6を駆動して、読み取り動作或は印字動作を行う。即ち、このロータリーエンコーダ9は、装置本体の移動時にその移動量を検出する移動量検出手段として機能する。さらに、図示しないが、筐体2には、パーソナルコンピュータ等の外部機器と接続するための入力端子、メモリーカード等の記憶媒体が挿入される挿入口等も形成されている。
【0020】
図2は、この走査型印字装置1の回路構成を示す回路ブロック図である。この走査型印字装置1は、
図2に示すように、制御部10、ROM12、RAM13、記憶装置37、タッチパネル4、インクジェットヘッド6、ロータリーエンコーダ9、キー入力部14、印字制御部16、電圧調整部17、LEDアレイ20、一次元イメージセンサ21、画像データ制御部23、画像データメモリ24及びバッテリ18を備える。
【0021】
また、この走査型印字装置1は、住所、氏名又は電話番号等の個人情報を示す文字列が印字されている印字物40の個人情報を隠蔽するべく、印字物40上に印字を行う印字装置である。つまり、この走査型印字装置1は、印字物40の個人情報を隠蔽するためのセキュリティスタンプ機能を有する。
【0022】
制御部10は、制御手段とされるマイクロコンピュータとしてのCPUであって、ROM12に予め記憶されているシステムプログラム、メモリカードなどの記憶媒体に記憶された制御プログラム、外部機器から読み込まれた制御プログラムや外部通信ネットワーク上のWebサーバから読み込んだ制御プログラムなどを起動させ、RAM13をワークメモリとして回路各部の動作を制御する。
【0023】
そして、制御部10は、セキュリティスタンプ機能を実施するにあたって、画像データ制御部23を制御して、住所、氏名、電話番号又はEメールアドレスの個人情報を示す文字列が印字されている印字物40の文字列を自動認識するための読み取り手段である一次元イメージセンサ21で画像を読み取り、OCR(OPTICAL CHARACTER READER)技術を利用して、画像データの文字情報を得る。
【0024】
画像データ制御部23は、画像の読み取り時にLEDアレイ20をオンし、走査型印字装置1が所定量移動(スキャン)されて制御部23を介して受信するロータリーエンコーダ9からのパルス信号を受信することにより、一次元イメージセンサ21の1ライン分の出力を読み込み、これを画像データとして制御部10に供給する。制御部10は供給された画像データを画像データメモリ24に保存する。
【0025】
制御部10は、個人情報判別手段として、画像データメモリ24に保存された画像データからOCR技術を利用して、文字情報を得て住所、氏名、電話番号又はEメールアドレスの個人情報の種別を判別する。制御部10は、例えば、文字情報に大字・丁目・街区符号・地番やマンション・アパート名を検出すると、その検出した文字列を住所と判別する。また、制御部10は、文字情報から得た漢字を人名辞書39と照合することにより人名漢字が検出されれば人名と判別する。また、制御部10は、検出した文字情報から得た文字について、名字と名前と想定される文字の間に間隔が空いていれば人名と判別させても構わない。
【0026】
さらに、制御部10は、文字情報に数字のみや、数字とハイフン又は数字を挟む小括弧からなる文字列を検出した場合や、数字の前に「TEL」の文字を検出するとその検出した文字列を電話番号と判別する。そして、制御部10は、検出した文字情報に英数字記号のみからなる文字列を検出した場合や、文字列の途中に「アットマーク」の文字を検出するとその検出した文字列をEメールアドレスと判別する。
【0027】
そして、制御部10は、印字データ設定手段として、判別される個人情報の種別と同じ種別に属する複数の文字列を印字すべき文字列データとして入力設定する。
【0028】
さらに、制御部10は、住所、氏名、電話番号又はEメールアドレスの個人情報を示す文字列が印字されている印字物40の文字列を隠蔽するべく、印字データ設定手段として設定した複数の文字列データをランダム又は周期的にずらすなどの規則的に位置を変化させて重ねるように組み合せて配置してなる隠蔽パターンデータを作成する隠蔽パターンデータ作成手段としても機能する。
【0029】
また、制御部10は、個人情報判別手段により個人情報の種別としてその検出した文字列を住所と判別すると、印字データ設定手段として、個人情報の種別と同じ種別に属する複数の文字列を印字すべき文字列データとして設定するために、検出した住所データから郵便番号データを抽出し、その郵便番号データの一部又は全部の桁の数字を変更して実在する郵便番号データを複数生成し、後述の郵便番号辞書30から文字列データである複数の住所データを読み出すデータ読み出し手段としても機能する。
【0030】
制御部10は、データ読み出し手段として判別された郵便番号データの少なくとも一部の桁の数字を変更させる変更レベルとして「町村」、「市区」、「都道府県」の3種類を有する。そして、制御部10は、郵便番号データのこの変更レベルを予めユーザに設定させる。
【0031】
制御部10は、設定された変更レベルが、郵便番号データの下4桁の数字を変更させる「町村」であれば、隠蔽させる個人情報の住所とは、「都道府県・市区」については変化せず、「町村」部分が異なる所謂近隣の住所データにより隠蔽パターンデータを生成することとなる。
【0032】
また、制御部10は、設定された変更レベルが、郵便番号データの下5桁の数字を変更させる「市区」であれば、隠蔽させる個人情報の住所とは、「都道府県」については変化せず、「市区」部分が異なる住所データにより隠蔽パターンデータを生成することとなる。
【0033】
そして、制御部10は、設定された変更レベルが郵便番号データの全桁の数字を変更させる「都道府県」であれば、日本全国のあらゆる地域を対象とする住所データをランダムに抽出して隠蔽パターンデータを生成することとなる。
【0034】
さらに、制御部10は、個人情報判別手段により個人情報の種別としてその検出した文字列を氏名と判別すると、印字データ設定手段として、複数の姓データが格納される姓データ記憶手段とされる後述の姓データメモリ31と、複数の名データが格納される名データ記憶手段とされる後述の名データメモリ32とから夫々複数の姓データ及び名データを読み出し、その姓データと名データを組み合せて、文字列データとして複数の氏名データを生成する氏名データ生成手段としても機能する。
【0035】
そして、制御部10は、個人情報判別手段により個人情報の種別としてその検出した文字列を電話番号と判別すると、印字データ設定手段として、所定桁数で任意数字の組合せの数字列からなり所定位置にハイフン又は数字を挟む小括弧を介在させて、文字列データとして複数の電話番号データを生成する電話番号データ生成手段としても機能する。
【0036】
ROM12は、記憶手段であって、タッチパネル4から選択入力された文字列等を印字するためのプログラム、印字フォント、表示フォント、記号、模様等が記憶され、CPUで読み取り可能な印字制御プログラムが記憶された記憶媒体としても機能する。
【0037】
RAM13は、一時記憶手段であって、キー入力部14やタッチパネル4で入力された文字等の文字列データや文章の編集情報をワークメモリとして記憶する処理や、タッチパネル4に表示される各種設定メニューを記憶する処理等を行う。
【0038】
記憶装置37は、磁気的、光学的記憶媒体、若しくは半導体メモリなどCPUで読み取り可能なメモリである。この記憶装置37は、メモリーカード等の可搬型の媒体や、ハードディスク等の固定的な媒体を含む。
【0039】
そして、記憶装置37は、
図2に示すように、郵便番号辞書30、住所辞書38、人名辞書39、番地データが格納される番地データメモリ33、姓データが格納される姓データメモリ31、名データが格納される名データメモリ32及びドメインデータが格納されるドメインデータメモリ35を有する。
【0040】
郵便番号辞書30は、日本全国の各地域毎に7桁表記の郵便番号データと都道府県名、市区名、町村名から成る住所データとを対応付けて成る最新の辞書である。
【0041】
住所辞書38は、都・道・府・県・市・区・町・村等の住所データが記憶されており、特定の地名が設定されると、その地名が使われる日本全国の住所候補を抽出することに使用される。例えば、「茨城県つくば市田倉」という地名は、「田倉」部分の漢字を認識できれば「山口県下関市田倉御殿町」「千葉県富津市田倉」等とともに住所候補として検出することができる。住所辞書38は、一次元イメージセンサ21に読み込まれた画像データの文字情報において、住所の特定に使用される。
【0042】
人名辞書39は、常用漢字表に掲げられた漢字を含め、人名に用いることのできる人名漢字が格納されている辞書である。人名辞書39は、一次元イメージセンサ21に読み込まれた画像データの文字情報において、検出された文字が人名漢字かどうかを判断することにより氏名か否かを判別することに使用される。
【0043】
番地データメモリ33には、番地、ビル名、アパート名、階数、部屋番号等の住所データ生成のための追加文字列データとして例えば「9丁目8番地7号」「1234番地」等の複数の番地情報と「ABCマンション302号」「コーポABC101号」等の架空のアパート・マンション情報とが複数格納されている。なお、アパート・マンションの部屋番号はランダムに設定されるようにしても構わない。
【0044】
そして、個人情報判別手段として個人情報の種別が住所であると判別すると、データ読み出し手段である制御部10は、文字認識して得た住所データから郵便番号データを抽出し、その郵便番号データの少なくとも一部の数字を変更して実在する郵便番号データを複数生成し、郵便番号辞書30から複数の住所データを読み出す。そして、制御部10は、その読み出した複数の住所データに先述の追加文字列データを組み合せて文字列データである複数の住所データを生成し、隠蔽パターンデータ作成手段として、隠蔽パターンデータを作成する。
【0045】
姓データメモリ31は、個人情報として氏名が記載されている印字物40の氏名を隠蔽するために予め「佐藤」「高橋」等の姓データの文字列データが複数格納されているメモリである。名データメモリ32は、個人情報として氏名が記載されている印字物40の氏名を隠蔽するために予め「大輔」「翔太」等の名データの文字列データが複数格納されているメモリである。
【0046】
そして、先述のとおり氏名データ生成手段である制御部10は、個人情報判別手段として個人情報の種別が氏名であると判別すると、複数の姓データが格納される姓データ記憶手段とされる姓データメモリ31と、複数の名データが格納される名データ記憶手段とされる名データメモリ32とから夫々複数の姓データ及び名データを読み出し、その姓データと名データを組み合せて、文字列データである複数の氏名データを生成し、隠蔽パターンデータ作成手段として、隠蔽パターンデータを作成する。
【0047】
ドメインデータメモリ35は、個人情報としてEメールアドレスが記載されている印字物40のEメールアドレスを隠蔽するために予め実在する「docomo.ne.jp」「ezweb.ne.jp」等のドメインデータの文字列データが複数格納されているメモリである。
【0048】
そして、制御部10は、個人情報の種別がEメールアドレスと判別すると、Eメールアドレス生成手段として、任意の文字の組合せにアットマークを合成し、さらにドメインデータメモリ35に複数格納されている「docomo.ne.jp」「ezweb.ne.jp」等のドメインデータの文字列データと合成することにより文字列データであるEメールアドレスデータを生成し、隠蔽パターンデータ作成手段として、隠蔽パターンデータを作成する。
【0049】
画像データメモリ24は、一次元イメージセンサ21により読み取られた画像データを記憶する領域と、該画像データから文字情報を検出するための作業領域を備える。
【0050】
印字制御手段である印字制御部16は、キー入力部14である電源スイッチ3が押下されて装置本体が起動され、ユーザにより印字開始となる動作スイッチ5を押しながら印字物40上で装置本体を移動されると、制御部10により制御されて隠蔽パターンデータ作成手段により作成された隠蔽パターンデータの印字を行う印字手段とされるインクジェットヘッド6を制御する。
【0051】
ロータリーエンコーダ9は、インクリメンタル式のエンコーダであり、ローラ8が回転したときに回転されるスリット列を有する回転板と、該回転板を挟むように配設される2組の発光素子及び受光素子とを備えている。また、このロータリーエンコーダ9は、回転板が回転したときに発光素子から射出されてスリットを通る光を受光素子に受光させることで、走査型印字装置1の移動量を検出する信号としてパルス信号を制御部10に送信する。
【0052】
そして、制御部10は、ロータリーエンコーダ9からの移動量検出信号としてのパルス信号に基づいて、つまり、走査型印字装置1の移動量に対応して、印字制御手段とされる印字制御部16を制御して、走査方向に配列されるノズル列から1ライン動作毎にインクが吐出されるように印字手段とされるインクジェットヘッド6を駆動制御する。また、制御部10は、パルス信号の入力をカウントすることにより、装置本体の移動量を算出することで、印字終了の判定も行う。
【0053】
バッテリ18は、装置内の各部に電圧を供給する。そして、電圧調整部17は、そのバッテリ18の残留電圧レベルをモニターする働きを有し、装置本体が適正に印字できるように電圧レベルを監視し、所定の電圧レベルを下回ると警告等を案内してユーザに充電又はバッテリ18の交換を促す。
【0054】
次に、
図3のフローチャートを参照して本発明の実施形態の走査型印字装置1におけるセキリュティスタンプの印字方法の具体的な流れについて説明する。また、
図4乃至
図12には、印字方法の具体的な流れを説明するにあたって各処理の具体例を示す。
【0055】
制御部10は、電源がON状態となり、ユーザによりセキリュティスタンプの設定メニューを選択されると、オプション設定処理(ステップS100)を実行する。
【0056】
制御部10は、オプション設定処理(ステップS100)として、セキリュティスタンプのオプション設定である文字フォント種、文字体、濃度又はフォントサイズの何れかの設定メニューをタッチパネル4に表示させる。ユーザは、これにより各種オプション設定を逐次設定していく。
【0057】
例えば、文字フォント種の設定であれば、明朝体、ゴシック体、毛筆流麗体、毛筆楷書体、ランダムのいずれかをユーザに選択させる。また、文字体の設定であれば、標準、太字、白抜き、影付き、立体、ランダムのいずれかをユーザに選択させる。
【0058】
また、濃度の設定であれば、「薄い」から「濃い」までを5段階に分割して濃度をユーザに選択させる。そして、フォントサイズの設定であれば、フォントサイズとして例えば8ポイント(1/9インチ)から36ポイント(1/2インチ)において適宜、ユーザに選択させる。なお、これらの設定にはそれぞれデフォルト値を設けておく。
【0059】
制御部10は、セキリュティスタンプの各種の設定が完了したか否かを監視して設定変更完了判断処理(ステップS110)を行う。制御部10は、設定変更完了判断処理(ステップS110)としてユーザによるセキリュティスタンプの各種オプション設定の変更が完了した場合又は各設定についてデフォルト値が選択された場合に、動作モードを読み取りモードに遷移させるために読み取りモード設定処理(ステップS112)を実行する。
【0060】
制御部10は、読み取りモード設定処理(ステップS112)として、タッチパネル4に例えば「読み取りモードに設定して、隠蔽箇所のスキャンを開始してください。」等のメッセージを表示させる。
【0061】
そして、ユーザが動作モード切替スイッチ7を読み取りモードに設定させ、動作スイッチ5を押しながら装置本体を印字物40上に押し当てるようにして移動させると、制御部10は、画像データ制御部23を制御してLEDアレイ20を点灯させて、読み取り対象の印字物40を照明する。さらに、制御部10は、画像データ制御部23を制御して一次元イメージセンサ21を駆動し、LEDアレイ20により照明された印字物40上の個人情報の種別である項目を判別するべく、レンズ22を介して印字物40上の個人情報を読み取って画像データを画像データメモリ24に格納させる項目スキャン操作の処理(ステップS114)を実行する。
【0062】
個人情報判別手段である制御部10は、項目スキャン操作の処理(ステップS114)として、先ず画像データメモリ24に格納された画像データからOCR技術を利用して文字情報と、その文字情報の範囲を示す印字幅や印字長と、更に横向きか縦向きかを示す印字方向等を解析し、先ず、その文字情報から住所、氏名、電話番号又はEメールアドレスかの項目を判別する項目判別処理(ステップS118)を実行する。制御部10は、項目判別処理(ステップS118)により判別した個人情報の種別である項目をRAM13のワークエリアに格納させる。
【0063】
次に制御部10は、項目に応じた隠蔽パターンデータを作成するために、判別した項目が電話番号であるか否かを判定する電話番号判定処理(ステップS120)を実行する。RAM13に格納された個人情報の種別である項目が「電話番号」であれば、個人情報の電話番号を隠蔽するための複数の電話番号データを生成する電話番号データ生成処理(ステップS155)に進み、「電話番号」以外であれば、次の項目種類判定処理(ステップS125)に進む。
【0064】
項目種類判定処理(ステップS125)において、RAM13に格納された個人情報の種別である項目が「住所」であれば、画像データから読み取った文字情報による住所データを郵便番号辞書30と照合して、郵便番号データを取得する郵便番号抽出処理(ステップS130)を実行する。
【0065】
さらに、項目種類判定処理(ステップS125)において、RAM13に格納された個人情報の種別が「氏名」であれば、個人情報の氏名を隠蔽するための文字列データである複数の氏名データを生成する氏名データ生成処理(ステップS150)を実行する。
【0066】
そして、項目種類判定処理(ステップS125)において、RAM13に格納された個人情報の種別が「Eメールアドレス」であれば、個人情報のEメールアドレスを隠蔽するための複数のEメールアドレスデータを生成するEメールアドレスデータ生成処理(ステップS160)を実行する。
【0067】
制御部10は、郵便番号抽出処理(ステップS130)により、文字情報から得た住所データを郵便番号辞書30と照合して郵便番号データを取得すると、予め設定されるアパートマンション情報を付加させるか否かの設定と郵便番号データの変更レベル(都道府県レベル、市区レベル、町村レベル)の設定を確認する。ここで、個人情報の種別を「住所」と判別し、その個人情報の住所を隠蔽するまでの動作について説明する。
図4は、個人情報の種別を「住所」と判別して郵便番号データを抽出し、その個人情報の住所を隠蔽するまでの動作を示す説明図である。
【0068】
制御部10は、
図4に示すように、個人情報の種別を「住所」と判別し、文字情報による住所データ「北海道寿都郡黒松内町チョポシナイ」から郵便番号データ「0480132」を抽出する。そして、制御部10は、例えば、郵便番号データの下5桁の数字を変更して「市区」(ここでは郡町)が異なる「北海道山越郡都長万部町国縫」や「北海道寿都郡寿都町矢追町」などの実在する住所データにより隠蔽パターン56を生成することとなる。この隠蔽パターン56は、予め読み取りモードで読み取った文字情報から抽出された印字幅、印字長で生成される。
【0069】
つまり、制御部10は、取得した郵便番号データ、アパートマンション情報の設定、及び変更レベルの設定を確認すると、データ読み出し手段として、その判別した郵便番号データと変更レベルの設定に基づいた処理を実行し実在する郵便番号データを例えば、7個生成し、郵便番号辞書30からその生成された郵便番号データに対応する住所データを読み出すデータ読み出し処理(ステップS140)を実行する。
図5は、取得した郵便番号データ、変更レベルの設定により生成される複数の住所データの生成例を示す。
【0070】
制御部10は、
図5に示すように、「山形県米沢市御廟」の地域を示す郵便番号データとして「9920055」を取得し、例えば、変更レベル設定が近隣を示す町村レベルであれば、郵便番号データの下4桁を変更し、郵便番号辞書30に格納される「9920054」、「9920062」、「9921443」等の実在する郵便番号データを生成する。そして、データ読み出し手段である制御部10は、「9920054」に対応する住所データとして「山形県米沢市城西」、「9920062」に対応する住所データとして「山形県米沢市林泉寺」、「9921443」に対応する住所データとして「山形県米沢市笹野」を郵便番号辞書30から読み出す。
【0071】
同様に、制御部10は、郵便番号データとして「山形県米沢市御廟」地域を示す「9920055」を取得し、例えば変更レベル設定が同県の異なる市区を示す市区レベルであれば、郵便番号データの下5桁を変更し、郵便番号辞書30に格納される「9900042」、「9970035」、「9996835」等の実在する郵便番号データを生成する。そして、データ読み出し手段である制御部10は、「9900042」に対応する住所データとして「山形県山形市七日町」、「9970035」に対応する住所データとして「山形県鶴岡市馬場町」、「9996835」に対応する住所データとして「山形県酒田市本町」を郵便番号辞書30から読み出す。
【0072】
さらに、制御部10は、郵便番号データとして「山形県米沢市御廟」地域を示す「9920055」を取得し、例えば変更レベル設定が都道府県レベルであれば、郵便番号データの上2桁(又は全桁)を変更し、郵便番号辞書30に格納される「0100951」、「9800803」、「9608111」等の実在する郵便番号データを生成する。そして、データ読み出し手段である制御部10は、「0100951」に対応する住所データとして「秋田県秋田市山王」、「9800803」に対応する住所データとして「宮城県仙台市青葉区国分町」、「9608111」に対応する住所データとして「福島県福島市五老内町」を郵便番号辞書30から読み出す。
【0073】
そして、制御部10は、データ読み出し処理(ステップS140)により生成された7個の住所データと、番地データメモリ33にある番地、ビル名、アパート名、階数、部屋番号等の追加文字列データからランダムに7個の追加文字列データを抽出して組み合せて7個の住所データを生成する印字データ設定処理における住所データ生成処理(ステップS145)を実行する。これにより、個人情報の住所を隠蔽させるための7個の住所データが生成される。
図6は、先述の番地データメモリ33に格納される番地、ビル名、アパート名、階数、部屋番号等の追加文字列データからランダムに抽出して組み合せて住所データを生成する住所データ生成例を示す。
【0074】
制御部10は、
図6に示すように、先述の変更レベル設定が近隣を示す町村レベルで生成された「山形県米沢市城西」、「山形県米沢市林泉寺」、「山形県米沢市笹野」などの実在する住所データに対して、番地データメモリ33にある追加文字列データとして例えば、「9丁目8番地7号」、「1丁目2号」、「1234号」等の番地情報と、アパートマンション情報を付加させるか否かの設定に応じて組み合わせられる「ABCマンション302号」、「コーポABC101号」、「エリシオン米沢803号」等のアパートマンション情報を組合わせることにより、「山形県米沢市城西9−8−7」、「山形県米沢市城西9−8−7ABCマンション302」等の住所データを生成する。
【0075】
そして、個人情報の住所を隠蔽させるための7個の住所データが生成されると、制御部10は、隠蔽パターンデータ作成手段として、これらの文字列データである住所データにオプション設定処理(ステップS100)に基づいた文字フォント種、文字体等の設定で編集をして、重ねるように組み合せて配置することにより隠蔽パターンデータを作成する隠蔽パターンデータ作成処理(ステップS170)を実行する。
図7及び
図8は、先述の7個の住所データにオプション設定に基づいた処理を実行し、重ねるように組み合せて配置して生成された隠蔽パターンの生成例を示す。
【0076】
制御部10は、
図7に示すように、例えば「山形県米沢市浅川11−2−5」「山形県米沢市梓川1234」等の複数生成された住所データを、予め設定された各種オプション設定における文字体の設定が「太字」であれば、図示する隠蔽パターン51となって、個人情報の住所を隠蔽することとなる。また、制御部10は、「影付き」であれば、図示する隠蔽パターン52となって、個人情報の住所を隠蔽することとなる。さらに、制御部10は、「ランダム」であれば、図示する隠蔽パターン53となって、個人情報の住所を隠蔽することとなる。
【0077】
また、制御部10は、
図8に示すように、例えば「山形県米沢市浅川11−2−5」「山形県米沢市梓川1234」等の複数生成された住所データを、予め読み取りモードで読み取った文字情報から印字方向を抽出し、その抽出結果が「横方向」であれば、図示する隠蔽パターン54となって、個人情報の住所を隠蔽することとなる。また、制御部10は、抽出結果が「縦方向」であれば、図示する隠蔽パターン55となって、個人情報の住所を隠蔽することとなる。
【0078】
隠蔽パターンデータを作成すると制御部10は、動作モードを印字モードに遷移させるために印字モード設定処理(ステップS172)を実行する。制御部10は、印字モード設定処理(ステップS172)として、タッチパネル4に例えば、「印字モードに設定して、隠蔽箇所に装置をセットし、印字操作を開始してください。」等のメッセージを表示させる。
【0079】
制御部10は、作成された隠蔽パターンデータによる印字データをセットし、ユーザにより動作スイッチ5が押下されると印字処理(ステップS175)を実行する。制御部10は、ユーザが動作スイッチ5を押しながら印字物40上に載置した装置本体を移動させると、装置本体が所定距離移動する毎にロータリーエンコーダ9から発生されるパルス信号をタイミング信号として、印字制御部16を制御してインクジェットヘッド6を駆動させて印字物40上に隠蔽パターンデータを1ラインずつ印字させ、所定位置まで移動されると処理を終了する。
【0080】
一方、項目種類判定処理(ステップS125)で個人情報の種別である項目を「氏名」と判別すると制御部10は、氏名データ生成手段として複数の氏名データを生成することにより隠蔽パターンデータを生成して個人情報の氏名を隠蔽させる。
図9は、個人情報の種別を「氏名」と判別し、その個人情報の氏名を隠蔽するまでの動作を示す説明図である。
【0081】
制御部10は、
図9に示すように、個人情報の種別が「氏名」と判別し、さらに文字情報から印字幅、印字長を検出し、予め設定されたセキリュティスタンプの各種オプション設定における文字フォント種が「ゴシック体」と設定されていると、所定の隠蔽パターン60を生成し印字処理を実行する。
【0082】
制御部10は、氏名データ生成手段として、複数の姓データが格納される姓データ記憶手段とされる姓データメモリ31と、複数の名データが格納される名データ記憶手段とされる名データメモリ32とから夫々複数の姓データ及び名データを読み出す。そして、制御部10は、その姓データと名データを組み合せて、印字させる複数の氏名データを生成する氏名データ生成処理(ステップS150)を実行する。
図10は、姓データと名データを組み合せて複数の氏名データを生成させる動作に関する説明図である。
【0083】
図10に示すように、先述の姓データメモリ31には、予め「佐藤」、「高橋」、「鈴木」、「渡辺」等の姓データが複数格納されている。また、名データメモリ32には、予め「大輔」、「翔太」、「愛」、「陽菜」等の名データが複数格納されている。
【0084】
そして、先述のとおり氏名データ生成手段である制御部10は、夫々のメモリから夫々複数の姓データ及び名データを読み出し、その姓データと名データを組み合せて、「佐藤大輔」、「鈴木翔太」等の複数の氏名データを生成する。
【0085】
さらに、制御部10は、隠蔽パターンデータ作成手段として、これらの氏名データをオプション設定処理(ステップS100)に基づいて編集しながら、ランダム又は周期的にずらすなどの規則的に位置を変化させて各文字列を重ねるように組み合せて配置することにより隠蔽パターンデータを作成する隠蔽パターンデータ作成処理(ステップS170)を実行する。そして、印字モードに設定(ステップS172)されて、ユーザにより印字操作を開始されると印字処理(ステップS175)を実行し、処理を終了する。
図11は、先述の氏名データをオプション設定に基づいて編集しながら、重ねるように組み合せて配置して生成された隠蔽パターン57,58,59の生成例を示す。
【0086】
制御部10は、
図11に示すように、氏名データとして「高橋瑛太」、「山本蓮」、「中村健太」等の20個の氏名データを生成する。そして、制御部10は、予め設定された各種オプション設定における文字フォント種の設定が「ゴシック体」であれば、図示する隠蔽パターン57となって、個人情報の氏名を隠蔽することとなる。また、制御部10は、文字フォント種が「明朝体」に設定されていれば、図示する隠蔽パターン58となって、個人情報の氏名を隠蔽することとなる。さらに、制御部10は、文字フォント種が「ランダム」に設定されていれば、図示する隠蔽パターン59となって、個人情報の氏名を隠蔽することとなる。
【0087】
また、電話番号判定処理(ステップS120)で個人情報の種別である項目を「電話番号」と判別すると制御部10は、電話番号データ生成手段として、所定桁数で任意の数字の組合せの数字列からなり所定位置にハイフン又は数字を挟む小括弧を合成して、印字すべき文字列データとして複数の電話番号データを生成する印字データ設定処理である電話番号データ生成処理(ステップS155)を実行する。
【0088】
制御部10は、個人情報の電話番号を隠蔽させるための複数の電話番号データを生成すると、隠蔽パターンデータ作成手段として、これらの文字列データをオプション設定処理(ステップS100)に基づいて編集しながら、ランダム又は周期的にずらすなどの規則的に位置を変化させて各文字列を重ねるように組み合せて配置することにより隠蔽パターンデータを作成する隠蔽パターンデータ作成処理(ステップS170)を実行する。そして、印字モードに設定(ステップS172)されて、ユーザにより印字操作を開始されると生成された隠蔽パターンデータによる印字処理(ステップS175)を実行し、処理を終了する。
図12は、個人情報の種別を「電話番号」と判別し、その個人情報の電話番号を隠蔽するまでの動作を示す説明図である。
【0089】
制御部10は、
図12に示すように、予め読み取りモード時に読み取った画像の文字情報から個人情報の種別を電話番号と判別するとともに、文字情報から印字幅、印字長等を抽出して所定の隠蔽パターン61を生成し印字させる。
【0090】
また、項目種類判定処理(ステップS125)で個人情報の種別である項目を「Eメールアドレス」と判別すると制御部10は、Eメールアドレスデータ生成手段として、任意の文字の組合せにアットマークを合成し、ドメインデータメモリ35に複数格納されている「docomo.ne.jp」「ezweb.ne.jp」等のドメインデータの文字列データと合成することにより印字させる複数のEメールアドレスデータを生成する印字データ設定処理であるEメールアドレスデータ生成処理(ステップS160)を実行する。
【0091】
制御部10は、個人情報のEメールアドレスを隠蔽させるための複数のEメールアドレスデータを生成すると、隠蔽パターンデータ作成手段として、これらの文字列データをオプション設定処理(ステップS100)に基づいて編集しながら、ランダム又は周期的にずらすなどの規則的に位置を変化させて各文字列を重ねるように組み合せて配置することにより隠蔽パターンデータを作成する隠蔽パターンデータ作成処理(ステップS170)を実行する。そして、印字モードに設定(ステップS172)されて、ユーザにより印字操作を開始されると生成された隠蔽パターンデータによる印字処理(ステップS175)を実行し、処理を終了する。
【0092】
以上のように、本発明の実施形態によれば、印字物40の住所、氏名又は電話番号等の個人情報を隠蔽するために、自動で印字物上の個人情報の種別を識別して種別に合致した複数の文字列を重ねるように組み合せて配置することによる隠蔽パターンデータを作成し、しかも、その隠蔽パターンデータを随時変化させることができるため、個人情報の種々の文字の大きさや、個人情報の内容に合わせて個人情報の文字列を隠蔽することのできる印字装置、印字されている個人情報の文字列を隠蔽することのできる印字方法及びこの印字装置に文字列の隠蔽を実現させるための印字制御プログラムを提供することができる。
【0093】
また、本発明の実施形態によれば、印字物40の住所、氏名又は電話番号等の個人情報を隠蔽するために、個人情報の種別を自動で判別し、その種別に応じた隠蔽パターンデータを生成させることから、例えば、多数の名前が密集して印字されていれば、個人情報の氏名を特定することを困難にさせることができる。
【0094】
さらに、本発明の実施形態によれば、印字物40の個人情報である住所を隠蔽するために、その住所データに対応する郵便番号を抽出することにより、例えば、変更レベルを町村レベルとして隣接する地域の住所データを複数生成して、重ねるように組み合せて配置して印字させることにより、個人情報の住所がどれかを特定することを困難にさせることができる。
【0095】
そして、本発明の実施形態によれば、印字物40の個人情報である氏名を隠蔽するために、予め姓データメモリ31と名データメモリ32に複数の姓データ及び名データを格納し、組み合せて、多数の氏名データを生成して、重ねるように組み合せて配置して印字させることにより、個人情報の氏名がどれかを特定することを困難にさせることができる。
【0096】
また、本発明の実施形態によれば、印字物40の個人情報である電話番号を隠蔽するために、多数の電話番号データを生成して、重ねるように組み合せて配置して印字させることにより、隠蔽したい個人情報の電話番号がどれかを特定することを困難にさせることができる。
【0097】
なお、本発明の実施形態におけるフローチャートに示した処理は、コンピュータに実現させることのできるプログラムとして、例えば磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリ等の記憶媒体に書き込んだ状態で各種装置に適用する、或いは、通信媒体により伝送して各種装置に適用することも可能である。このように所望の記憶媒体に本発明の実施形態で述べた各処理を記憶させ、他のコンピュータ等でプログラムを実行させることにより、本発明の実施形態の装置を用いた場合と同様の作用効果が得られる。なお、コンピュータは、本発明の実施形態で述べた装置に内蔵されたコンピュータに限定されるわけではなく、記憶媒体に記憶されたプログラムを読み取り可能であって、読み取ったプログラムに従って制御動作を行うCPU等の演算装置を備えているあらゆるコンピュータを含む。
【0098】
さらに、本発明の実施形態では、印字装置として手動で装置本体を移動させて印字物40に印字させる走査型印字装置1を適用した場合について説明してきたが、印字物40上を自動で走査して印字させる印字装置にも適用できる。
【0099】
また、本発明は、以上の実施形態に限定されるものでなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で自由に変更、改良が可能である。以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。