(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
溝部と、溝部に連通した流入口と流出口が設けられ、上記流入口と流出口は薄板の部材により閉塞されていて、上記流入口と流出口の周辺部には段差部が形成されている第1のマイクロチップ基板の上記段差部に、自己修復性機能を有するシリコーンゲルが流し込まれる工程と、
上記第1のマイクロチップ基板の溝部が形成されている面と、第2のマイクロチップ基板の一方の面とを接合して、流路を内包するマイクロチップを得る工程とを含む
ことを特徴とするマイクロチップの製造方法。
【背景技術】
【0002】
近年、例えばシリコン、シリコーン、ガラスなどよりなる小さな基板上に、半導体微細加工の技術によってマイクロスケールの分析用チャネルなどを形成したマイクロチップよりなるマイクロリアクタを用いて微量の試薬の分離、合成、抽出、分析などが行われている(マイクロチップおよびその製造については例えば特許文献1、特許文献2等参照)。
マイクロチップでは、マイクロチャンネルとも呼ばれる流路に、試薬が配置された反応領域など、各種機能を有する領域を設けることにより、様々な用途に適したチップを構成できる。マイクロチップの用途としては、遺伝子解析、臨床診断、薬物スクリーニングなどの化学、生化学、薬学、医学、獣医学の分野における分析、あるいは、化合物の合成、環境計測などが代表的である。
【0003】
上記したマイクロチップは、典型的には一対の基板が対向して接着された構造を有し、少なくとも1つの上記基板の表面に微細な流路(例えば、幅10〜数100μm、深さ10〜数100μm程度)が形成されている。これまでマイクロチップには、製造が容易であり、光学的な検出も可能であることから、主にガラス基板が用いられている。また、最近では、軽量でありながらガラス基板に比べて破損しにくく、かつ、安価な、樹脂基板を用いたマイクロチップの開発が進められている。
【0004】
医学分野において、臨床検査等で免疫反応などの分子間相互作用を利用した測定(表面プラズモン共鳴(SPR)測定技術、水晶発振子マイクロバランス(QCM)測定技術、金のコロイド粒子から超微粒子までの機能化表面を使用した測定技術など)に使用されるマイクロチップにおいては、例えば、流路内に予め抗体が固定される。そして流路内に抗原を含む試薬を流通させることにより発生する抗体抗原反応に関する測定が、当該マイクロチップを用いて行われる。
図9(a)は、マイクロチップ10の模式図である。
図9(b)は、
図9(a)のA−A断面図である。
図9(a)に示すように、マイクロチップ10は、一対の基板(第1のマイクロチップ基板11、第2のマイクロチップ基板12)が対向して接合された構造である。マイクロチップ10には、流入口13aと排出口13bを有する、例えば、幅10〜数100μm、深さ10〜数100μm程度の微細な流路14が形成されている。具体的には、
図9(b)に示すように、第1のマイクロチップ基板11に形成された微細な溝部と第2のマイクロチップ基板12表面とにより上記流路14が構成される。流路内には金属薄膜15が設置される。金属薄膜15は流路内の第2のマイクロチップ基板12の表面(すなわち、第1および第2のマイクロチップ基板11,12の接合面)上に設けられる。金属薄膜15はクロム(Cr)薄膜上に金(Au)薄膜が積層された構造を有する。
【0005】
マイクロチップの流路14内への抗体の固定は、例えば、以下のように行われる。
図10(a)に示すように、マイクロチップ10の流入口13aに試薬溶液注入管101がセットされる。同様に、マイクロチップ10の排出口13bには試薬溶液排出管102がセットされる。試薬溶液注入管101、試薬溶液排出管102の先端にはジョイント103が設けられており、各ジョイント103が流入口13a、排出口13bと接続される。
【0006】
試薬溶液注入管101からりん酸緩衝生理食塩水(Phosphate buffered saline, 以下、PBSと呼称する)をマイクロチップ10の流路14に注入し、当該流路14を洗浄する。流路14を通過したPBSは、流路14の排出口13bと接続された試薬溶液排出管102により外部へ排出される。
【0007】
次に、
図10(b)に示すように、試薬溶液注入管101からSAM形成用液(例えば、アルカンチオール含有溶液)をマイクロチップ10の流路14に注入する。アルカンチオール含有溶液中のアルカンチオールは上記したAu薄膜と反応し、当該Au薄膜上に自己組織化膜(Self-Assembled Monolayer:SAM膜16)が形成される。なお、SAM膜形成に寄与しなかったアルカンチオール含有溶液は、試薬溶液排出管102により外部へ排出される。
次に、
図10(c)に示すように、試薬溶液注入管101からPBSをマイクロチップ10の流路14に注入し、流路14に残留するアルカンチオール含有溶液を除去する。流路14を通過したPBSは、試薬溶液排出管102により外部へ排出される
【0008】
次に、
図11(d)に示すように、試薬溶液注入管101から抗体含有溶液をマイクロチップ10の流路14に注入する。抗体含有溶液中の抗体は、アルカンチオールのSAM膜16と反応して化学的に結合し、前記SAM膜16上に固定される。すなわち、金属薄膜15上に抗体Igが固定される。
なお、SAM膜16に固定された抗体Ig表面に固定されていない抗体が残留していたり、流路14のSAM膜16以外の領域に抗体が残留していたりするので、
図11(e)に示すように、試薬溶液注入管101からPBSをマイクロチップ10の流路14に注入し、このような残留した抗体をPBSによりパージする。残留抗体を含むPBSは、流路14の排出口13bと接続された試薬溶液排出管102により外部へ排出される。
【0009】
なお、抗体は空気と接触すると失活するものが多い。よって、空気と接触しないように、PBSによる残留抗体のパージが終わった流路14内は、
図11(f)に示すようにPBSを充填し、マイクロチップ10の流入口13a、排出口13bはパラフィンフィルム等の封止材104でシールしておく。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
図9(b)に示すように、マイクロチップ10の流入口13a、排出口13b付近の流路形状は直角形状になっていることが多い。このような流路14に対し抗体含有溶液を流通させると流路14を流れる抗体含有溶液は乱流となる。この乱流の影響により、
図12に示すように、抗体含有溶液中の抗体とアルカンチオールのSAM膜16との接触が乱れ、抗体とSAM膜16との反応が阻害され、SAM膜16上に抗体を固定し難くなる。
【0012】
また、
図13に示すように、マイクロチップ10の流路14から試薬溶液注入管101、試薬溶液排出管102を離脱させる際に、流入口13a、排出口13bから試薬溶液注入管101、試薬溶液排出管102の先端に設けられているジョイント103を外すと、流入口13a、排出口13bにおいてバブルが発生しやすい。
【0013】
同様に、流路14内に固定した抗体に対して抗原を含む試薬を流通させるのに先立ち、マイクロチップ10の流入口13a、排出口13bをシールしているパラフィンフィルム等の封止材104を除去する際においても、
図14に示すように、流入口13a、排出口13bにおいてバブルが発生しやすい。
また、流路14に抗原を含む試薬を流通させるため、マイクロチップ流路14に試薬溶液注入管101、試薬溶液排出管102を着装させる際に、流入口13a、排出口13bから試薬溶液注入管101、試薬溶液排出管102の先端に設けられているジョイントを接続する場合においても、流入口13a、排出口13bにおいてバブルが発生しやすい。
【0014】
流路14内にバブルが発生し、流路14から試薬溶液等を排出する際に上記バブルが流路14内を移動すると、バブルと抗体との接触が起こる。その場合、抗体は空気と接触することになるので、抗体によっては失活する。
すなわち、従来のマイクロチップ10を用いて、流路14内に抗体含有溶液を流通させて当該流路14内に抗体を固定する場合、流路14で発生する乱流の影響により、前記流路14内に抗体を固定し難いという問題が発生する。
また、試薬を流路14内に流通させるために試薬溶液注入管101、排出管102を着脱する場合や、マイクロチップ10を一時的に保管するために流路14の流入口13a、排出口13bをシールする封止材104を除去する際、流路14内でバブルが発生しやすく、流路14内に抗体を固定している場合は抗体が失活するという問題が発生する。
【0015】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであって、本発明の目的は、嫌気性の抗体を固定する試薬配置領域を有するマイクロチップにおいて、当該試薬配置領域に殆ど空気と接触させることなく、また、ばらつき無く安定に嫌気性抗体等の嫌気性試薬を供給することが可能なマイクロチップ及び該マイクロチップの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するため、本発明においては、内部に試薬配置領域を有する空間として流路が形成され該流路に連通する流入口と排出口を有するマイクロチップにおいて、流入口、排出口を自己修復性機能を有するシリコーンゲルにより気密に閉塞した。
そして、先端部が針状に形成され流体放出口となる開口を有する流体放出手段と、この流体放出手段と同様な形状を有する流体回収手段を、上記流入口、排出口に設けられたシリコーンゲルをそれぞれ貫通させて、上記試薬配置領域を有する空間に進入させ、上記試薬配置領域である流路に、嫌気性抗体等の試薬を上記流体放出手段の開口から供給し、また、該流路に供給された試薬を上記流体改出手段の開口から回収するようにした。
これにより、殆ど空気と接触させることなく、嫌気性抗体等の試薬を試薬配置領域に供給したり該領域から試薬を回収することができる。
なお、シリコーンゲルは金型では成型しにくいので、後述するように例えば流入口、排出口の周辺部等に凹部(段差部)を形成し、シリコーンゲルをこの凹部(段差部)に流し込んで流入口、排出口を閉塞するようにしてもよい。この場合には、シリコーンゲルを流し込んで流出口、排出口を閉塞する際、シリコーンゲルが上記流路内に流入しないように、例えば薄板の部材により上記流入口、排出口を閉塞しておくのが望ましい。
上記薄板の部材は、上記流体放出手段と流体回収手段が容易に貫通可能な厚さにしておくことが望ましく、例えば、上記流入口、排出口を形成する際、マイクロチップを構成する部材と一体の薄板の部材で、上記流入口、排出口を覆うようにしてもよい。
また、上記マイクロチップに試薬を供給する試薬供給装置を、上記流体放出手段と流体回収手段と、この流体放出手段と流体回収手段を、上記自己修復性機能を有するシリコーンゲルを貫通して試薬配置領域を有する空間に進入させ、また、該空間から離脱させる手段とから構成する。
試薬供給装置を上記構成とすることにより、殆ど空気と接触させることなく、また、ばらつき無く安定に嫌気性抗体等の試薬を上記マイクロチップの試薬配置領域に供給したり、該領域から回収することができる。
すなわち、本発明は前記課題を次のように解決する。
(1)マイクロチップにおいて、内部に試薬配置領域を有する空間として流路を形成し、該流路に連通する流入口と排出口となる開口を設け、上記流入口、排出口は薄板の部材により閉塞され、上記流入口、排出口の周辺部に段差部を形成し、自己修復性機能を有するシリコーンゲルがこの段差部に流し込まれ、流入口、排出口を気密に閉塞する。
(2)溝部と、溝部に連通した流入口と流出口が設けられ、上記流入口と流出口は薄板の部材により閉塞されていて、上記流入口と流出口の周辺部には段差部が形成されている第1のマイクロチップ基板の上記段差部に、自己修復性機能を有するシリコーンゲルが流し込まれる工程と、上記第1のマイクロチップ基板の溝部が形成されている面と、第2のマイクロチップ基板の一方の面とを接合して、流路を内包するマイクロチップを得る工程とによりマイクロチップを製造する。
【発明の効果】
【0017】
本発明においては、以下の効果を得ることができる。
(1)内部に試薬配置領域を有する空間として流路が形成され、該流路に連通する流入口、排出口を有するマイクロチップにおいて、流入口、排出口を自己修復性機能を有するシリコーンゲルにより気密に閉塞したので、先端部が針状に形成され流体放出口となる開口を有する流体放出手段と流体回収手段を、上記流入口、排出口に設けられたシリコーンゲルをそれぞれ貫通させて上記試薬配置領域を有する空間に進入させることにより、殆ど空気と接触させることなく、嫌気性抗体等の嫌気性試薬を試薬配置領域に供給したり、該領域から試薬を回収することができる。
また、従来例のように試薬溶液注入管、試薬溶液排出管を装着する必要がないので、流路内にバブルが発生するのを防ぐことができる。
さらに、シリコーンゲルは接着性が強く、金型を用いた射出成形を行うことが難しいが、段差部にシリコーンゲルを流し込むことにより、金型の代わりに、マイクロチップ基板そのものを使用して、粘着性ゲルを成形することができる。
また、流入口、排出口を薄板部により閉塞された構造であるので、段差部にシリコーンゲルを流し込む際、流路(流路となる空間)にシリコーンゲルが流入しないようにすることができる。
(2)上記流入口、排出口を閉塞するシリコーンゲルは自己修復性機能を有し、力が印加されると変形し、力の印加を解除すると力の印加前の形状に戻る性質があるので、流体放出手段、流体回収手段がシリコーンゲルを貫通して試薬配置領域に進入した場合においても、シリコーンゲルと流体放出手段、流体回収手段との接触部における密着性が良好であり、この接触部から外部の空気が閉塞空間である試薬配置領域に進入するのを防ぐことができる。
(3)上記流路中に順次注入する試薬に嫌気性抗体含有溶液が含まれる場合において、試薬の液面レベルが、試薬配置領域に固定される嫌気性抗体を完全に浸漬する高さとなるように注入することにより、上記嫌気性抗体が空気に接触するのを防ぐことができる。
(4)流入口と排出口となる開口が自己修復性機能を有するシリコーンゲルで閉塞されたマイクロチップへの試薬供給装置として、中空筒状部材からなり先端部が閉鎖され、先端部は針状に形成され上記中空筒状部材の内部空洞と連通する開口部が上記中空筒状部材の円筒部側面に設けられた流体放出手段と、該流体放出手段と同様の形状の流体回収手段を有し、該流体放出手段と流体回収手段が、上記シリコーンゲルを貫通して、マイクロチップの上記試薬配置領域を有する空間へ進入し、かつ、該空間から離脱されるように構成された試薬供給装置を用いることにより、殆ど空気と接触させることなく、また、ばらつき無く安定に嫌気性抗体等の嫌気性試薬を上記マイクロチップの試薬配置領域に供給したり、該領域から試薬を回収することができる。
(5)上記(4)において、上記流体放出手段の開口部および流体回収手段の開口部を互いに対向するように配置することにより、流体放出手段から供給される試薬は、マイクロチップ内の流路をスムースに流れて流体回収手段の開口部から回収され、流路に流れる試薬が乱流になるのを抑制することができる。
また、上記流体回収手段の開口部の下端の位置を、上記流路に供給される試薬の液面レベルが上記試薬配置領域に固定される嫌気性抗体を完全に浸漬する高さとなるように設定することより、上記嫌気性抗体が空気に接触するのを防ぐことができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1に本発明の試薬配置領域を有するマイクロチップの構成例を示す。
図1(a)は本発明に係るマイクロチップの外観図であり、
図1(b)は、
図1(a)のA−A断面図である。
図1に示すように、本発明のマイクロチップ10は、一対の基板(第1のマイクロチップ基板11、第2のマイクロチップ基板12)が対向して接合された構造である。第1のマイクロチップ基板11は、例えば、PDMS(ポリジメチルシロキサン:Polydimethylsiloxane)などからなるシリコーン樹脂基板であり、第2のマイクロチップ基板12はガラス基板である。
マイクロチップ10には、流入口13aと排出口13bを有する、例えば幅10〜数100μm、深さ10〜数100μm程度の微細な流路14が形成されている。具体的には、第1のマイクロチップ基板11に形成された微細な溝部と第2のマイクロチップ基板12表面とにより、上記流路14が構成される。流路14内には金属薄膜15が設置される。金属薄膜15は流路14内の第2のマイクロチップ基板12の表面(すなわち、第1および第2のマイクロチップ基板11,12の接合面)上に設けられる。金属薄膜15はクロム(Cr)薄膜上に金(Au)薄膜が積層された構造を有する。
【0020】
本発明のマイクロチップは、更に、流路14の流入口13a、排出口13bが、厚み100μm以下の薄板部11aにより閉塞され、更に第1のマイクロチップ基板11の上面に自己修復性封止材17が設けられた構造を有する。自己修復性封止材17としては、力が印加されると変形し、力の印加を解除すると力の印加前の形状に戻るものを用いる。例えば、粘着性ゲルであるシリコーンゲルを採用する。
今回、シリコーンゲルとしては、信越シリコーン社製のシリコーン粘着剤X−40−3331−2を使用した。なお、以下では、上記自己修復性封止材17により流入口13a、排出口13bが閉塞されたものを、マイクロチップ10と呼ぶこことする。
【0021】
以下、
図2、
図3を用いて、本発明のマイクロチップの製造例について、説明する。
第1のマイクロチップ基板11は、例えば、信越シリコーン社製のシリコーン樹脂X−32からなるシリコーン樹脂基板であり、第2のマイクロチップ基板12はガラス基板である。
図2(a)に示すように、まずシリコーン樹脂(X−32)が第1の金型71および第2の金型72により成形され、第1のマイクロチップ基板11が形成される。
次に、
図2(b)に示すように、シリコーン樹脂73が固化後、第2の金型72が取り外される。
【0022】
次に、
図2(c)に示すように、シリコーン樹脂73の上面に構成された段差部11bに粘着性ゲル(例えば上記信越シリコーン社製X−40−3331−2)17が流し込まれる。その後、熱成形により、粘着性ゲル17とシリコーン樹脂73(例えば上記信越シリコーン製X−32)とが一体化される。
粘着性ゲルは接着性が強く、金型を用いた場合、金型と粘着性ゲルとが接着されて当該金型を取り外すことができない。すなわち、金型を用いた射出成形を行うことが難しい。
よって、今回は金型の代わりに、シリコーン樹脂基板73そのものを使用することにより、粘着性ゲルを成形した。
【0023】
次に、
図3(d)に示すように、熱成形により、粘着性ゲル17とシリコーン樹脂73とが一体化後、第1の金型71が取り外され、上部に粘着性ゲル(シリコーンゲル)からなる自己修復性封止材17が設けられた第1のマイクロチップ基板11が得られる。
次いで、
図3(e)に示すように、上部に自己修復性封止材17が設けられた第1のマイクロチップ基板11とガラス基板である第2のマイクロチップ基板12とを接合することにより、
図3(f)(
図1(b))に示すように、本発明のマイクロチップ10を得る。
第1のマイクロチップ基板11と第2のマイクロチップ基板12との接合は、例えば、特許文献2に示されているように、両マイクロチップ基板の接合面に波長220nm以下の紫外線(例えば、キセノンエキシマランプから放出される中心波長172nmの紫外線)を照射して、紫外線が照射された接合面同士を密着させることにより行われる。
【0024】
すなわち、微細な溝部が形成された第1のマイクロチップ基板11の上部に設けた段差部11bに自己修復性封止材17を配置して一体化し、当該一体化された第1のマイクロチップ基板11と第2のマイクロチップ基板12とを接合して内部に流路14が構成されたマイクロチップ10を形成して、本発明のマイクロチップを得る。
なお、
図1(b)に示す本発明のマイクロチップにおいて、流路14の流入口13a、排出口13bが厚み100μm以下の薄板部11aにより閉塞された構造である理由は、
図2(c)において、シリコーン樹脂表面上面に設けられた段差部11bに粘着性ゲル(X−40−3331−2)を流し込む際、薄板部11aが無いと、流路14(流路となる空間)に粘着性ゲル(自己修復性封止材17)が流入してしまうためである。
【0025】
後で示すように、試薬供給装置の注射針状流体放出手段、注射針状流体回収手段を自己修復性封止材17を貫通させて試薬配置領域に進入させる場合、薄板部11aは厚みが100μm以下と薄いので、注射針状流体放出手段、注射針状流体回収手段は、容易に薄板部を貫通することができる。
図1に示す本発明のマイクロチップにおいて、嫌気性抗体等の嫌気性試薬を配置することが可能な試薬配置領域は流路内空間であり、より具体的には流路14内に設置されるのは金属薄膜15の領域である。
【0026】
上記したように、本発明のマイクロチップ10は、流路14の流入口13a、排出口13bが、例えばシリコーンゲルからなる自己修復性封止材17により封止されている構造である。すなわち、本発明のマイクロチップ10は、自己修復性封止材17により、試薬配置領域(流路内空間)が閉塞された構造である。よって、閉塞空間内への外部からの空気の流入を防止することが可能である。
また、後に示す試薬供給装置の注射針状流体放出手段、注射針状流体回収手段がマイクロチップの薄板部11aと自己修復性封止材17を貫通して試薬配置領域に進入した場合においても、自己修復性封止材17は力が印加されると変形し、力の印加を解除すると力の印加前の形状に戻る性質があるので、当該自己修復性封止材17と注射針状流体放出手段、注射針状流体回収手段との接触部における密着性が良好であり、この接触部から外部の空気は閉塞空間である試薬配置領域に殆ど進入しない。
【0027】
また、後に示す試薬供給装置の注射針状流体放出手段、注射針状流体回収手段がマイクロチップの薄板部11aと自己修復性封止材17を貫通後、再び離脱しても、自己修復性封止材17は力が印加されると変形し、力の印加を解除すると力の印加前の形状に戻る性質があるので、前記自己修復性封止材17を貫通、離脱する注射針状流体放出手段、注射針状流体回収手段により前記自己修復性封止材17に生じる孔も速やかに閉塞される。よって、注射針状流体放出手段、注射針状流体回収手段が自己修復性封止材17を離脱後も閉塞空間である試薬配置領域への外部からの空気の流入を防止することが可能である。
【0028】
よって、後に示す試薬供給装置の注射針状流体放出手段、注射針状流体回収手段を用いて、嫌気性抗体等の嫌気性試薬を試薬配置領域に固定する際、上記注射針状流体放出手段、注射針状流体回収手段を用いて閉塞空間である試薬配置領域内部に残留する空気を試薬溶液等でパージすることにより、殆ど空気と接触させることなく嫌気性抗体等の嫌気性試薬を試薬配置領域に配置することが可能となる。
【0029】
次に、本発明のマイクロチップ10の試薬配置領域に対して、殆ど空気と接触させることなく嫌気性抗体等の嫌気性試薬を供給するための試薬供給装置の実施例について説明する。
図4、
図5に、
図1(a)のマイクロチップ10の流路14内に嫌気性試薬(ここでは、嫌気性抗体を例に取る)を供給する試薬供給装置の構成ブロック図の例を示す。
図4に示す試薬供給装置は、試薬注入機構40、試験体保持機構20、試薬回収機構50、制御部60からなる。
図5は、後で示す注射針状流体放出手段21、注射針状流体回収手段22の理解を容易にするための拡大図である。
【0030】
I.試薬注入機構
図4に示すように、試薬注入機構40には、注射針状流体放出手段21、流体放出手段駆動機構23、ジョイント28b、試薬溶液注入管26、ジョイント28a、温度制御部31、制御バルブ42、試薬貯蔵部41が含まれる。
注射針状流体放出手段21は、マイクロチップ10の流路14の流入口13aに設けられたマイクロチップの薄板部11aと自己修復性封止材17を貫通し、試薬をマイクロチップ10の流路14内に放出するものである。
図5に示すように、注射針状流体放出手段21は、ステンレス製の中空筒状部材からなる。注射針状流体放出手段21の先端部21bは閉鎖されており、先端部形状は針状(例えば注射針のようにベベル形状(斜め形状))になっている。中空筒状部材の内部空洞と連通し内部空洞より供給される試薬を流路14内に放出する開口部21aは、中空筒状部材の円筒部側面における先端部21bにできるだけ近い部位に設けられている。以降、注射針状流体放出手段21を単に流体放出手段21と称する。
【0031】
すなわち、流体放出手段21は、注射針のように先端部21bがベベル形状となっているので、容易にマイクロチップの薄板部11aと自己修復性封止材17を貫通することが可能となる。さらに、先端部21bが閉鎖されていて、開口部21aが中空筒状部材の円筒部21cの側面に設けられているので、流体放出手段21が自己修復性封止材17を貫通する際に自己修復性封止材17の切屑はほとんど発生せず、また、開口部21aが自己修復性封止材17の切屑により詰まることもない。
【0032】
流体放出手段21は流体放出手段駆動機構23により、上下方向に駆動される。すなわち、流体放出手段駆動機構23は、流体放出手段21の開口部21aがマイクロチップ10の薄板部11aと自己修復性封止材17を貫通して当該マイクロチップ10の流路14内に進入するように流体放出手段21を駆動したり、流体放出手段21がマイクロチップ10の薄板部11aと自己修復性封止材17を経由して完全にマイクロチップ10から離脱するように流体放出手段21を駆動する。
流体放出手段駆動機構23は、例えば、流体放出手段21と試薬が輸送されてくる試薬溶液注入管26とを連結するジョイント28bに連結される。
【0033】
試薬溶液注入管26は、上記したように、一方が上記ジョイント28bを介して流体放出手段21と接続され、他方が試薬貯蔵部41から送出されてくる試薬の温度を制御するための温度制御部31によって温度制御される配管に接続される。なお、流体放出手段21およびジョイント28bは、流体放出手段駆動機構23により上下方向に駆動されるので、試薬溶液注入管26もこれらの動作に対応可能なように可撓管から構成される。
【0034】
試薬貯蔵部41は、マイクロチップ10の流路14内に供給するための試薬を貯蔵する。
図4に示す例では、試薬貯蔵部41は、PBS貯蔵部41a、アルカンチオール含有溶液貯蔵部41b、抗体含有溶液貯蔵部41c、抗原含有溶液貯蔵部41d、温度制御部33からなる。
ここで、抗体は一般に低温状態にて貯蔵しておくと安定であるので、抗体含有溶液貯蔵部41cは、温度制御部33により温度制御される。抗体の保存温度は、例えば4°Cである。
【0035】
試薬貯蔵部41の各貯蔵部は、三方弁からなる制御バルブ42と接続される。
図4に示す例では、試薬貯蔵部41は4つの貯蔵部から構成されるので、試薬貯蔵部41と制御バルブ42からなる配管系統は4系統となる。制御バルブ42としては三方電磁弁等が採用される。
図4において、制御バルブ42である三方弁は、a,b,cの三つのポートを持ち、ここでは、a−c流路とb−c流路とを切り替えるものとする。各制御バルブ42は、それぞれのb−c流路が一本の流路となるようにマニホールド状に接続されている。一方、各制御バルブ42のaポートは、試薬貯蔵部41にそれぞれ接続されている。また、PBS貯蔵部41aと接続されている制御バルブ42のbポートには封止用の栓が接続されていて、抗原含有溶液貯蔵部41dと接続されている制御バルブ42のcポートには、温度制御部31によって温度制御される配管に接続されている。
【0036】
すなわち、
図4に示すように、試薬貯蔵部41の4つの配管系統は最終的には1つの配管系統に統合され、温度制御部31によって温度制御される配管に接続される。各制御バルブ42の流路の切替を制御することにより、温度制御部31を経由して流体放出手段21からマイクロチップ10の流路14に放出する試薬を切り替えることが可能となる。
温度制御部31は、抗体等の試薬の温度を制御するためのものであり、具体的には上記した1つの配管系統に統合された試薬貯蔵部41からの配管と接続される配管の温度を制御する。温度制御部31により温度制御される配管の一方は、上記したように試薬貯蔵部41と接続され、他方はジョイント28aにより試薬溶液注入管26と接続される。
【0037】
II.試験体保持機構
図4に示すように、試験体保持機構20は、温度制御部32を備える温調ステージ34からなる。温調ステージ34はマイクロチップ10が載置されるとともに、マイクロチップ10の温度を調整する機能を有する。具体的には、温度制御部32により温調ステージ34の温度を制御して、温調ステージ34に載置されるマイクロチップ10の温度を調整する。
【0038】
III.試薬回収機構
図4に示すように、試薬回収機構50には、注射針状流体回収手段22、流体回収手段駆動機構24、ジョイント28c、試薬溶液排出管27、ポンプ51、廃液槽52が含まれる。
注射針状流体回収手段22は、マイクロチップの流路14の排出口13bに設けられた自己修復性封止材17を貫通し、マイクロチップの流路14内に残存する試薬の少なくとも一部を廃液槽52に回収するものである。
図5に示すように、注射針状流体回収手段22は、流体放出手段21と同様、ステンレス製の中空筒状部材からなる。流体回収手段22の先端部22bは閉鎖されており、先端部形状は、針状(例えば注射針のようにベベル形状(斜め形状))になっている。中空筒状部材の内部空洞と連通し内部空洞より供給される試薬を流体内に放出する開口部22aは、中空筒状部材の円筒部22cの側面の先端部22bにできるだけ近い部位に設けられている。以降、注射針状流体回収手段22を単に流体回収手段22と称する。
【0039】
すなわち、流体回収手段22は、注射針のように先端部22bがベベル形状となっているので、容易にマイクロチップの薄板部11aと自己修復性封止材17を貫通することが可能となる。さらに、先端部22bが閉鎖されていて、開口部22aが中空筒状部材の円筒部22c側面に設けられているので、流体回収手段22が自己修復性封止材17を貫通する際に自己修復性封止材17の切屑はほとんど発生せず、また、開口部22aが自己修復性封止材17の切屑により詰まることもない。
【0040】
流体回収手段22は流体回収手段駆動機構24により、上下方向に駆動される。すなわち、流体回収手段駆動機構24は、流体回収手段22の開口部22aがマイクロチップ10の薄板部11aと自己修復性封止材17を貫通して当該マイクロチップ10の流路14内に進入するように流体回収手段22を駆動したり、流体回収手段22がマイクロチップ10の薄板部11aと自己修復性封止材17を経由して完全にマイクロチップ10から離脱するように流体回収手段22を駆動する。
流体回収手段駆動機構24は、例えば、流体回収手段22と流路14内の試薬の少なくとも一部が廃液槽52へ輸送される試薬溶液排出管27とを連結するジョイント28cに連結される。
【0041】
試薬溶液排出管27は、上記したように、一方が上記ジョイント28cを介して流体回収手段22と接続され、他方がポンプ51に接続される。なお、流体回収手段22およびジョイント28cは、流体回収手段駆動機構24により上下方向に駆動されるので、試薬溶液排出管27もこれらの動作に対応可能なように可撓管から構成される。
上記したように、ポンプ51は試薬貯蔵部41に貯蔵されている試薬を流体放出手段21を介してマイクロチップの流路14内に供給させ、流路14内の試薬の少なくとも一部を廃液槽52に送出するためのものであり、ポンプ51から送出される試薬(廃液)は廃液槽52に貯蔵される。
【0042】
IV.制御部
制御部60は、試薬注入機構40に属する流体放出手段駆動機構23、温度制御部31、制御バルブ42、温度制御部33と、試験体保持機構20の温度制御部32と、試薬回収機構50に属する流体回収手段駆動機構24、ポンプ51の動作を制御する。
【0043】
V.マイクロチップ流路内への抗体の固定手順
図1に示すマイクロチップ流路14内への抗体の固定は、例えば、以下のように行われる。この固定手順については、
図4、
図5、
図6、
図7、
図8を参照しながら説明する。
【0044】
(1)注射針状流体放出手段、注射針状流体回収手段のマイクロチップへのセッティング
試験体であるマイクロチップ10が温調ステージ34に載置される。なお、温調ステージ34へのマイクロチップ10の載置は作業者が行っても良いし、図示を省略した公知の搬送機構を用いてもよい。なお、搬送機構を用いる場合、搬送機構の制御は上記した制御部60が行ってもよい。
【0045】
なお、マイクロチップ10が温調ステージ34に載置されるのに先立って、温調ステージ34の温度制御部32は、制御部60の指令に基づき、温調ステージ34の温度が所定の温度、例えば、25〜37°Cとなるように制御する。
同様に、制御部60の指令に基づき、
図4に示す温度制御部31は、予め温度制御部31の配管の温度が所定の温度、例えば、25〜37°Cとなるように制御する。
【0046】
制御部60の指令に基づき、流体放出手段駆動機構23は、流体放出手段21(注射針状流体放出手段)を所定の位置まで下側に駆動する。
図6(a)に示すように、この駆動により、流体放出手段21の開口部21aはマイクロチップ10の流入口13aに設けられた自己修復性封止材17を貫通して該マイクロチップ10の流路14内に進入する。なお、上記した所定の位置とは、流体放出手段21の先端部がマイクロチップ10の第2のマイクロチップ基板12に接触しない位置である。
【0047】
同様に、制御部60の指令に基づき、流体回収手段駆動機構24は、流体回収手段22(注射針状流体回収手段)を所定の位置まで下側に駆動する。
図6(a)に示すように、この駆動により、流体回収手段22の開口部22aはマイクロチップ10の排出口13bに設けられた薄板部11aと自己修復性封止材17を貫通して当該マイクロチップの流路14内に進入する。なお、上記した所定の位置とは、流体回収手段22の先端部がマイクロチップ10の第2のマイクロチップ基板12に接触しない位置である。
【0048】
なお、制御部60は、流体回収手段22の開口部22aの下端の位置が流体放出手段21の開口部21aの上端の位置より上側になるように、流体放出手段21、流体回収手段22をセットする。
ここで、流体放出手段21の開口部21aと流体回収手段22の開口部22aとは、互いに対向するように設定されている。
【0049】
(2)PBSによる流路内洗浄
図4において、各制御バルブ42の流路は、b−c流路に設定されているものとする。
制御部60は、複数の制御バルブ42のうち、PBS貯蔵部41aに繋がる配管系統(以下、PBS配管系統と称する)に属する制御バルブ42の流路をa−c流路に切り替える。
【0050】
次いで、制御部60はポンプ51の駆動を開始する。これにより、まず流体回収手段22の開口部22aからマイクロチップ10の流路14の空気が吸引され、その後、PBS貯蔵部41aに貯蔵されているPBSがPBS配管系統に属する制御バルブ42のa−c流路、その他の制御バルブ42のb−c流路、温度制御部31、試薬溶液注入管26を経由して流体放出手段21の開口部21aからマイクロチップ10の流路14内にPBSが流入する。流路14内に流入したPBSの液面が流体回収手段22の開口部22aに到達すると、PBDは流体回収手段22の開口部22aから吸引され、試薬溶液排出管27を経由して廃液槽52に送出される。
【0051】
以上の手順により、
図6(b)に示すように、流体放出手段21の開口部21aからマイクロチップの流路14に注入されたPBSは、流路14を洗浄しながら通過し、流体回収手段22の開口部22aから流路外部へと排出され廃液槽52に送られる。すなわち、流路内にて流路を洗浄するためのPBSの流れが発生する。
流体回収手段22の開口部22aの下端の位置は、流体放出手段21の開口部21a上端の位置より上側になるようにセットされているので、
図5に示すように、流路14内を流れるPBSの液面レベルは、流体回収手段22の開口部22aの下端の位置となる。
【0052】
(3)SAM膜形成
洗浄が一定時間行われたあと、制御部60は、複数の制御バルブ42のうち、PBS配管系統に属する制御バルブ42の流路をb−c流路に切り替えるとともに、SAM形成用溶液であるアルカンチオール含有溶液を貯蔵するアルカンチオール含有溶液貯蔵部41bに繋がる配管系統(以下、SAMs配管系統と称する)に属する制御バルブ42の流路をa−c流路に切り替える。
なお、PBSでの洗浄時間(上記した一定時間)、PBS配管系統およびSAMs配管系統に属する制御バルブ42の流路切替のタイミングは、予め制御部60に記憶されているものとする。
【0053】
このような流路切替により、流体回収手段22の開口部22aからマイクロチップの流路14内の残留しているPBSが吸引されるとともに、アルカンチオール含有溶液貯蔵部41bに貯蔵されているアルカンチオール含有溶液がSAMs配管系統に属する制御バルブ42のa−c流路、抗体含有貯蔵部41cに繋がる配管系統(以下、AB配管系統と称する)および抗原含有溶液貯蔵部41dに繋がる配管系統(以下、AC配管系統と称する)に属する制御バルブ42のb−c流路、温度制御部31、試薬溶液注入管26を経由して流体放出手段21の開口部21aからマイクロチップ10の流路14内に流入する。なお、PBS貯蔵部41aと接続されている制御バルブ42のbポートには封止用の栓が接続されているので、アルカンチオール含有溶液は、PBS配管系統に属する制御バルブ42のb−c流路側には流れない。
【0054】
以上の手順により、
図6(c)に示すように、流体放出手段21の開口部21aからマイクロチップの流路14に注入されたアルカンチオール含有溶液は、当初はアルカンチオール含有溶液流入前に流路14内に残存するPBSと混合されながら流路14を通過し、流体回収手段22の開口部22aから流路14の外部へと排出され廃液槽52に送られる。やがて、徐々にPBSの濃度は減少し、最終的にはほぼアルカンチオール含有溶液からなる流れが流路14内にて発生する。アルカンチオール含有溶液中のアルカンチオールは上記したAu薄膜と反応し、当該Au薄膜上に自己組織化膜(Self-Assembled Monolayer:SAM膜)が形成される。
【0055】
流体回収手段22の開口部22aの下端の位置は、流体放出手段21の開口部21aの上端の位置より上側になるようにセットされているので、
図5に示すように、流路14内を流れるアルカンチオール含有溶液の液面レベルは、流体回収手段22の開口部22aの下端の位置となる。
【0056】
(4)PBSによる流路内洗浄
ある一定時間経過し、Au膜上にSAM膜16が形成されたあと、制御部60は、複数の制御バルブ42のうち、SAMs配管系統に属する制御バルブ42の流路をb−c流路に切り替えるとともに、PBS配管系統に属する制御バルブ42の流路をa−c流路に切り替える。
なお、Au膜上にSAM膜16が形成されるまでのアルカンチオール含有溶液がマイクロチップの流路14を流れる時間(上記したある一定時間)、SAMs配管系統およびPBS配管系統に属する制御バルブ42の流路切替のタイミングは、予め制御部60に記憶されているものとする。
【0057】
このような流路切替により、流体回収手段22の開口部22aからマイクロチップの流路14内の残留しているアルカンチオール含有溶液が吸引されるとともに、PBSがPBS配管系統に属する制御バルブ42のa−c流路、その他の制御バルブ42のb−c流路、温度制御部31、試薬溶液注入管26を経由して流体放出手段21の開口部21aからマイクロチップの流路14内に流入する。
【0058】
以上の手順により、
図7(d)に示すように、流体放出手段21の開口部21aからマイクロチップの流路14に注入されたPBSは、当初は流路14内に残存するアルカンチオール含有溶液と混合されながら流路14を通過し、流体回収手段の開口部22aから流路14外部へと排出され廃液槽52に送られる。やがて、徐々にアルカンチオール含有溶液の濃度は減少し、最終的にはほぼPBSからなる流れが流路14内にて発生する。すなわち、SAM膜16形成に寄与しなかったアルカンチオール含有溶液は、PBSとともに試薬溶液排出管27により外部へ排出される。
【0059】
流体回収手段22の開口部22aの下端の位置は、流体放出手段21の開口部21a上端の位置より上側になるようにセットされているので、
図5に示すように、流路14内を流れるPBSの液面レベルは、流体回収手段22の開口部22a下端の位置となる。
【0060】
(5)抗体固定
洗浄が一定時間行われたあと、制御部60は、複数の制御バルブ42のうち、PBS配管系統に属する制御バルブ42の流路をb−c流路に切り替えるとともに、抗体含有溶液を貯蔵する抗体含有溶液貯蔵部41cに繋がる配管系統(AB配管系統)に属する制御バルブ42の流路をa−c流路に切り替える。
なお、PBSでの洗浄時間(上記した一定時間)、PBS配管系統およびAB配管系統に属する制御バルブ42の流路切替のタイミングは、予め制御部60に記憶されているものとする。
【0061】
このような流路切替により、流体回収手段22の開口部22aからマイクロチップの流路14内に残留しているPBSが吸引されるとともに、抗体含有溶液がAB配管系統に属する制御バルブ42のa−c流路、抗原含有溶液貯蔵部41cに繋がる配管系統(AB配管系統)に属する制御バルブ42のb−c流路、温度制御部31、試薬溶液注入管26を経由して流体放出手段21の開口部21aからマイクロチップの流路14内に流入する。
なお、PBS貯蔵部41aと接続されている制御バルブ42のbポートには封止用の栓が接続されているので、抗体含有溶液は、SAMs配管系統に属する制御バルブ42のb−c流路側、およびPBS配管系統に属する制御バルブ42のb−c流路側には流れない。
【0062】
なお、抗体含有溶液貯蔵部41cにおいて、例えば4°Cである低温状態にて貯蔵されていた抗体含有溶液は、
図4に示す温度制御部31によって温度制御されている温度制御部31の配管を通過することにより、例えば25〜37°Cに加熱される。
上記したように、温調ステージ34に載置されるマイクロチップ10の温度は、温度制御部32に温度制御される温調ステージ34により例えば25〜37°Cに維持されているので、マイクロチップの流路14内に流入した抗体含有溶液の温度が下がることはない。
【0063】
以上の手順により、
図7(e)に示すように、流体放出手段21の開口部21aからマイクロチップの流路14に注入された抗体含有溶液は、当初は抗体含有溶液流入前に流路14内に残存するPBSと混合されながら流路14を通過し、流体回収手段22の開口部22aから流路14外部へと排出され廃液槽52に送られる。やがて、徐々にPBSの濃度は減少し、最終的にはほぼ抗体含有溶液からなる流れが流路14内にて発生する。抗体含有溶液中の抗体は、アルカンチオールのSAM膜16と反応して化学的に結合し、前記SAM膜16上に固定される。すなわち、金属薄膜15上に抗体Igが固定される。
【0064】
流体回収手段22の開口部22aの下端の位置は、流体放出手段21の開口部21a上端の位置より上側になるようにセットされているので、
図5に示すように、流路14内を流れる抗体含有溶液の液面レベルは、流体回収手段22の開口部22a下端の位置となる。
ここで上記液面レベルがSAM膜16に固定される抗体Igが抗体含有溶液により完全に浸漬される高さとなるように流体回収手段22の開口部22aの下端の位置を設定しておくことにより、SAM膜16に固定される抗体Igは空気には接触しない。
【0065】
また、上記したように、流体放出手段21の開口部21aは中空筒状部材の円筒部側面に設けられているので、流体放出手段21から供給される試薬(ここでは抗体含有溶液)は、中空筒状部材の軸方向と直交する方向に開口部から放出される。すなわち、試薬は、
図5、
図6、
図7において、横方向に放出される。
上記したように、流体放出手段21の開口部21aと流体回収手段22の開口部22aとは、互いに対向するように設定されており、また、開口部21aから横方向に放出される抗体含有溶液が直接流路の角部に衝突しないように流体放出手段21の開口部21aの位置を設定しておくことにより、流路14を流れる抗体含有溶液が乱流となるのが抑制される。
【0066】
すなわち、手順(1)における流体放出手段21、流体回収手段22のセッティングは、流体回収手段22の開口部22aの下端の位置、流体放出手段21の開口部21aの位置が上記したような位置に設定されるように行われる。
(6)PBSによる流路内洗浄
ある一定時間経過し、SAM膜16上に抗体Igが固定されたあと、制御部60は、複数の制御バルブ42のうち、AB配管系統に属する制御バルブ42の流路をb−c流路に切り替えるとともに、PBS配管系統に属する制御バルブ42の流路をa−c流路に切り替える。
なお、SAM膜16上に抗体Igが固定されるまでの抗体含有溶液がマイクロチップの流路14を流れる時間(上記したある一定時間)、AB配管系統およびPBS配管系統に属する制御バルブ42の流路切替のタイミングは、予め制御部60に記憶されているものとする。
【0067】
このような流路切替により、流体回収手段22の開口部22aからマイクロチップの流路14内の残留しているアルカンチオール含有溶液が吸引されるとともに、PBSがPBS配管系統に属する制御バルブ42のa−c流路、その他の制御バルブ42のb−c流路、温度制御部31、試薬溶液注入管26を経由して流体放出手段21の開口部21aからマイクロチップの流路14内に流入する。
以上の手順により、
図7(f)に示すように、SAM膜16に固定された抗体Ig表面に残留していた固定されていない抗体Igや、SAM膜16以外の領域に残留していた抗体Igは、PBSとともに試薬溶液排出管27により外部へ排出される。
【0068】
流体回収手段22の開口部22aの下端の位置は、流体放出手段21の開口部21a上端の位置より上側になるようにセットされているので、
図5に示すように、流路14内を流れるPBSの液面レベルは、流体回収手段22の開口部22a下端の位置となる。この液面レベルは、SAM膜16に固定される抗体IgがPBSにより完全に浸漬される高さであるので、SAM膜16に固定される抗体Igは空気には接触しない。
【0069】
上記した(1)〜(6)の手順により、マイクロチップの流路14内の試薬配置領域(金属薄膜15上のSAM膜形成領域)に抗体Igが固定される。
上記した手順から明らかなように、手順(2)において、流路14内がPBSに洗浄されて以降、金属薄膜15は常にPBS、SAM膜形成用溶液(上記した例ではアルカンチオール含有溶液)、抗体含有溶液中に浸漬される。手順(3)におけるSAM膜形成は金属薄膜15に空気が接触することなく行われる。そして、手順(5)におけるSAM膜16への抗体固定は、SAM膜16に空気が残留していない条件下で抗体Igに空気が接触することなく行われる。さらに、手順(6)におけるSAM膜16に固定されていない抗体Igの排出も、SAM膜16に固定されている抗体Igに空気が接触することなく行われる。
これは、上記したように、流路14内を流れる試薬の液面レベルが、SAM膜16に固定される抗体Igが当該試薬により完全に浸漬される高さとなるように流体回収手段22の開口部22aの下端の位置を設定したためである。
【0070】
すなわち、本発明のマイクロチップ10を用いた試薬供給装置は、マイクロチップ10の試薬配置領域に、空気を接触させることなく嫌気性抗体等の嫌気性試薬を供給することが可能となる。すなわち、マイクロチップ10の試薬配置領域に嫌気性抗体を失活させることなく固定することが可能となる。
また、マイクロチップ10の流路14への試薬の供給は、制御部60、試薬注入機構40、試薬回収機構50により機械的に実施しているので、ばらつき無く安定にマイクロチップ10の流路14への試薬の供給を行うことができる。
【0071】
また、流体放出手段21の開口部21aと流体回収手段22の開口部22aとを互いに対向するように設定するとともに、また開口部から横方向に放出される抗体含有溶液が直接流路14の角部に衝突しないように流体放出手段21の開口部21aの位置を設定しておくことにより、流路14を流れる抗体含有溶液が乱流となるのが抑制される。よって、抗体含有溶液中の抗体IgとアルカンチオールのSAM膜16との接触がほとんど乱れず、抗体IgとSAM膜16との反応が良好に進み、SAM膜16上に抗体Igを安定に固定することが可能となる。
【0072】
なお、マイクロチップ10としては、本発明の流路14の流入口13a、排出口13bが、例えばシリコーンゲルからなる自己修復性封止材17により封止されている構造を有するものを用いたので、本発明の試薬供給装置の流体放出手段21、流体回収手段22がマイクロチップの薄板部11aと自己修復性封止材17を貫通して試薬配置領域に進入した場合においても、自己修復性封止材17は力が印加されると変形し、力の印加を解除すると力の印加前の形状に戻る性質があるので、当該自己修復性封止材17と流体放出手段21、流体回収手段22との接触部における密着性が良好であり、この接触部から外部の空気は閉塞空間である試薬配置領域に殆ど進入しない。
【0073】
VI.マイクロチップ流路内での抗体抗原反応の発生手順
上記したマイクロチップ10への抗体固定に引き続き、固定された抗体Igに対して抗原を供給して抗体抗原反応を発生させる場合は、例えば、以下の手順を実施する。
【0074】
(7)抗体抗原反応
上記した手順(6)において、洗浄が一定時間行われたあと、制御部60は、複数の制御バルブ42のうち、PBS配管系統に属する制御バルブ42の流路をb−c流路に切り替えるとともに、抗原含有溶液を貯蔵する抗原含有溶液貯蔵部41dに繋がる配管系統(AC配管系統)に属する制御バルブ42の流路をa−c流路に切り替える。
なお、PBSでの洗浄時間(上記した一定時間)、PBS配管系統およびAC配管系統に属する制御バルブ42の流路切替のタイミングは、予め制御部60に記憶されているものとする。
【0075】
このような流路切替により、流体回収手段22の開口部22aからマイクロチップ10の流路内の残留しているPBSが吸引されるとともに、抗原含有溶液がAC配管系統に属する制御バルブ42のa−c流路、温度制御部31、試薬溶液注入管26を経由して流体放出手段21の開口部21aからマイクロチップの流路14内に流入する。なお、PBS貯蔵部と接続されている制御バルブ42のbポートには封止用の栓が接続されているので、抗原含有溶液は、AB配管系統に属する制御バルブ42のb−c流路側、SAMs配管系統に属する制御バルブ42のb−c流路側、およびPBS配管系統に属する制御バルブ42のb−c流路側には流れない。
【0076】
なお、抗原含有溶液は、
図4に示す温度制御部31によって温度制御されている温度制御部31の配管を通過することにより、例えば25〜37°Cに加熱される。
【0077】
以上の手順により、
図8(g)に示すように、流体放出手段21の開口部21aからマイクロチップの流路14に注入された抗原含有溶液は、当初は抗原含有溶液流入前に流路14内に残存するPBSと混合されながら流路14を通過し、流体回収手段22の開口部22aから流路14外部へと排出され廃液槽52に送られる。やがて、徐々にPBSの濃度は減少し、最終的にはほぼ抗原含有溶液からなる流れが流路14内にて発生する。抗原含有溶液中の抗原は、SAM膜16上に固定されている抗体Igと抗体抗原反応を行い化学的に結合する。なお、上記したように、手順(1)における流体放出手段21、流体回収手段22のセッティングにより、抗体抗原反応は、空気が存在しない抗原含有溶液中で行われる。
上記したように、温調ステージ34に載置されるマイクロチップ10の温度は、温度制御部32に温度制御される温調ステージ34により例えば25〜37°Cに維持されているので、マイクロチップの流路14内にて行われる抗体抗原反応は、25〜37°Cの温度条件にて行われる。この温度条件は、ヒトの体温に準じたものである。
【0078】
(8)PBSによる流路内洗浄
ある一定時間経過し、抗体抗原反応が完了したあと、制御部60は、複数の制御バルブ42のうち、AC配管系統に属する制御バルブ42の流路をb−c流路に切り替えるとともに、PBS配管系統に属する制御バルブ42の流路をa−c流路に切り替える。
なお、抗体抗原反応が完了するまでの抗原含有溶液がマイクロチップの流路14を流れる時間(上記したある一定時間)、AC配管系統およびPBS配管系統に属する制御バルブ42の流路切替のタイミングは、予め制御部60に記憶されているものとする。
【0079】
このような流路切替により、流体回収手段22の開口部22aからマイクロチップの流路14内の残留している抗原含有溶液が吸引されるとともに、PBSがPBS配管系統に属する制御バルブ42のa−c流路、その他の制御バルブ42のb−c流路、温度制御部31、試薬溶液注入管26を経由して流体放出手段21の開口部21aからマイクロチップの流路14内に流入する。
以上の手順により、
図8(h)に示すように、流路内に残留していた抗体抗原反応に寄与しなかった抗原は、PBSとともに試薬溶液排出管27により外部へ排出される。
【0080】
上記した(7)〜(8)の手順により、マイクロチップの流路14内に固定された抗体Igに対して抗原が供給され、抗体抗原反応を発生する。
上記した手順から明らかなように、手順(7)における抗体抗原反応の発生は、SAM膜16に固定されている抗体Igに空気が接触することなく行われる。そして、手順(8)における流路内に残留していた抗体抗原反応に寄与しなかった抗原の排出も、抗体Igに空気が接触することなく行われる。
これは、上記したように、流路内を流れる試薬の液面レベルがSAM膜16に固定される抗体Igが抗体含有溶液により完全に浸漬される高さとなるように流体回収手段の開口部の下端の位置を設定したためである。
【0081】
すなわち、本発明のマイクロチップ10を用いた試薬供給装置は、マイクロチップ10の試薬配置領域に、空気を接触させることなく抗原を供給することが可能となる。よって、マイクロチップ10の試薬配置領域に固定されている嫌気性抗体Igを失活させることなく抗原抗体反応を発生させることが可能となる。
また、マイクロチップの流路14への試薬の供給は、制御部60、試薬注入機構40、試薬回収機構50により機械的に実施しているので、ばらつき無く安定にマイクロチップの流路14への試薬の供給を行うことができる。
【0082】
(9)注射針状流体放出手段、注射針状流体回収手段のマイクロチップからの離脱
洗浄が一定時間行われたあと、制御部60は、複数の制御バルブ42のうち、PBS配管系統に属する制御バルブ42の流路14をb−c流路に切り替える。なお、PBSでの洗浄時間(上記した一定時間)、PBS配管系統に属する制御バルブ42の流路切替のタイミングは、予め制御部60に記憶されているものとする。
【0083】
次いで制御部60はポンプ51の駆動を停止する。これにより、マイクロチップの流路14内におけるほぼPBSからなる流れが停止する。上記したように、流体回収手段22(注射針状流体回収手段)の開口部の下端の位置は、流体放出手段21(注射針状流体放出手段)の開口部上端の位置より上側になるようにセットされているので、
図5に示すように、PBSの液面レベルは、流体回収手段22の開口部22a下端の位置となる。
ここで上記液面レベルがSAM膜16に固定されている抗体IgがPBSにより完全に浸漬される高さとなるように流体回収手段22の開口部22aの下端の位置が設定されているので、SAM膜16に固定されている抗体抗原反応が完了した抗体Igは空気には接触しない。
【0084】
制御部60の指令に基づき、流体放出手段駆動機構23は、流体放出手段21を所定の位置まで上側に駆動する。
図8(i)に示すように、この駆動により、流体放出手段21の開口部21aはマイクロチップの流路14を離脱する。なお、上記した所定の位置とは、流体放出手段21がマイクロチップ10の注入口に設けられた薄板部11aと自己修復性封止材17を経由して完全にマイクロチップ10から離脱するような位置である。
【0085】
同様に、制御部60の指令に基づき、流体回収手段駆動機構24は、流体回収手段22を所定の位置まで上側に駆動する。
図8(i)に示すように、この駆動により、流体回収手段22の開口部22aはマイクロチップの流路14を離脱する。なお、上記した所定の位置とは、流体回収手段22がマイクロチップ10の排出口13bに設けられた薄板部11aと自己修復性封止材17を経由して完全にマイクロチップ10から離脱するような位置である。
【0086】
なお、マイクロチップ10の薄板部11aと自己修復性封止材17を貫通していた流体放出手段21、流体回収手段22が薄板部11aと自己修復性封止材17を経由して離脱しても、自己修復性封止材17は力が印加されると変形し、力の印加を解除すると力の印加前の形状に戻る性質があるので、前記薄板部11aと自己修復性封止材17を貫通、離脱する流体放出手段21、流体回収手段22により薄板部11aに生じる孔は維持されるものの前記自己修復性封止材17に生じる孔は速やかに閉塞される。よって、流体放出手段21、流体回収手段22がマイクロチップの薄板部11aと自己修復性封止材17を離脱後も流路内への外部からの空気の流入は防止される。
【0087】
温調ステージ34に載置されていたマイクロチップ10が、抗体抗原反応を測定するための測定器へ搬出される。なお、上記測定器へのマイクロチップ10の搬出は作業者が行っても良いし、図示を省略した公知の搬送機構を用いてもよい。なお、搬送機構を用いる場合、搬送機構の制御は上記した制御部60が行ってもよい。
引き続き、次なるマイクロチップ10への抗体固定等を行わない場合、温調ステージ34の温度制御部32は、制御部60の指令に基づき、温調ステージ34の温度制御を停止する。同様に、制御部60の指令に基づき、
図14に示す温度制御部31は、温度制御部31の配管の温度制御を停止する。
【0088】
なお、上記説明では、マイクロチップへの試薬の供給を制御部60の制御により、自動的に行う場合について説明したが、上記手順の操作の一部あるいは全部を人がマニュアルで行うようにしてもよい。