特許第5794388号(P5794388)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社島津製作所の特許一覧

<>
  • 特許5794388-光生体計測装置 図000002
  • 特許5794388-光生体計測装置 図000003
  • 特許5794388-光生体計測装置 図000004
  • 特許5794388-光生体計測装置 図000005
  • 特許5794388-光生体計測装置 図000006
  • 特許5794388-光生体計測装置 図000007
  • 特許5794388-光生体計測装置 図000008
  • 特許5794388-光生体計測装置 図000009
  • 特許5794388-光生体計測装置 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5794388
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】光生体計測装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 10/00 20060101AFI20150928BHJP
   A61B 5/1455 20060101ALI20150928BHJP
【FI】
   A61B10/00 E
   A61B5/14 322
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-512220(P2014-512220)
(86)(22)【出願日】2012年4月25日
(86)【国際出願番号】JP2012061059
(87)【国際公開番号】WO2013161018
(87)【国際公開日】20131031
【審査請求日】2014年7月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100114030
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿島 義雄
(72)【発明者】
【氏名】石川 亮宏
(72)【発明者】
【氏名】井上 芳浩
(72)【発明者】
【氏名】網田 孝司
(72)【発明者】
【氏名】河野 理
(72)【発明者】
【氏名】増田 善紀
(72)【発明者】
【氏名】宇田川 晴英
【審査官】 門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−172177(JP,A)
【文献】 特開2010−119660(JP,A)
【文献】 特開2009−95380(JP,A)
【文献】 特開2008−64675(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 10/00
A61B 5/1455
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の頭皮表面上に配置される複数の送光プローブと、当該頭皮表面上に配置される複数の受光プローブとを有し、各受光プローブは送光プローブから第二設定距離r2で離れた位置に配置されている送受光部と、
前記送光プローブから受光プローブまでの第二受光量情報ΔA2を用いて、脳活動に関する測定データを算出する第二受光量情報算出部と、
被検者の脳の計測位置を示して各測定データをそれぞれ表示することで、被検者の脳の所定範囲における測定データを表示するデータ表示制御部とを備える光生体計測装置であって、
前記送光プローブから第二設定距離r2より短い第一設定距離r1で離れた位置に配置された参照受光プローブと、
前記送光プローブから前記参照受光プローブまでの第一受光量情報ΔA1を用いて、皮膚血流に関する皮膚血流データを算出する第一受光量情報算出部とを備え、
前記データ表示制御部は、被検者の脳の所定範囲における測定データを表示するとともに、被検者の頭皮の計測位置を示して皮膚血流データを表示することで、被検者の頭皮の所定位置における皮膚血流データを表示することを特徴とする光生体計測装置。
【請求項2】
前記データ表示制御部は、被検者の脳の所定範囲における測定データをマップで表示するとともに、
当該マップでの被検者の頭皮の所定位置近傍に皮膚血流データを表示することを特徴とする請求項1に記載の光生体計測装置。
【請求項3】
複数の参照受光プローブを備え、
前記データ表示制御部は、被検者の脳の所定範囲における測定データをマップで表示するとともに、
被検者の頭皮の所定範囲における皮膚血流データをマップで表示することを特徴とする請求項1に記載の光生体計測装置。
【請求項4】
被検者の頭皮表面を示す頭皮表面形態画像及び/又は被検者の脳表面を示す脳表面形態画像を取得して表示する形態画像表示制御部を備え、
頭皮表面形態画像及び/又は脳表面形態画像上に、前記マップを重畳して表示することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の光生体計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光生体計測装置に関し、さらに詳細には非侵襲で脳活動を測定する光生体計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、脳の活動状況を観察するために、光を用いて簡便に非侵襲で測定する光脳機能イメージング装置が開発されている。このような光脳機能イメージング装置では、被検者の頭皮表面上に配置した送光プローブにより、異なる3種類の波長λ、λ、λ(例えば、780nmと805nmと830nm)の近赤外光を脳に照射するとともに、頭皮表面上に配置した受光プローブにより、脳から放出された各波長λ、λ、λの近赤外光の強度変化(受光量情報)ΔA(λ)、ΔA(λ)、ΔA(λ)をそれぞれ検出する。
そして、このようにして得られた受光量情報ΔA(λ)、ΔA(λ)、ΔA(λ)から、脳血流中のオキシヘモグロビンの濃度変化・光路長積[oxyHb]と、デオキシヘモグロビンの濃度変化・光路長積[deoxyHb]とを求めるために、例えば、Modified Beer Lambert則を用いて関係式(1)(2)(3)に示す連立方程式を作成して、この連立方程式を解いている。さらには、オキシヘモグロビンの濃度変化・光路長積[oxyHb]と、デオキシヘモグロビンの濃度変化・光路長積[deoxyHb]とから総ヘモグロビンの濃度変化・光路長積([oxyHb]+[deoxyHb])を算出している。
ΔA(λ)=E(λ)×[oxyHb]+E(λ)×[deoxyHb]・・・(1)
ΔA(λ)=E(λ)×[oxyHb]+E(λ)×[deoxyHb]・・・(2)
ΔA(λ)=E(λ)×[oxyHb]+E(λ)×[deoxyHb]・・・(3)
なお、E(λm)は、波長λmの光におけるオキシヘモグロビンの吸光度係数であり、E(λm)は、波長λmの光におけるデオキシヘモグロビンの吸光度係数である。
【0003】
ここで、送光プローブと受光プローブとの間の距離(チャンネル)と、測定部位との関係について説明する。図7は、一対の送光プローブ及び受光プローブと、測定部位との関係を示す図である。送光プローブ12が被検者の頭皮表面の送光点Tに押し当てられるとともに、受光プローブ13が被検者の頭皮表面の受光点Rに押し当てられる。そして、送光プローブ12から光を照射させるとともに、受光プローブ13に頭皮表面から放出される光を入射させる。このとき、頭皮表面の送光点Tから照射された光のうちで、バナナ形状(測定領域)を通過した光が頭皮表面の受光点Rに到達する。すなわち、光は、送光点T近傍の皮膚に存在する血管と、脳に存在する血管と、受光点R近傍の皮膚に存在する血管とを通過することになる。
【0004】
そこで、脳に存在する血管のみによる受光量情報ΔAを取得するために、送光プローブ12と受光プローブ13との間の距離(チャンネル)を、短距離r1としたものと長距離r2としたものとを備えるものが開示されている(例えば、特許文献1や非特許文献1参照)。図8は、送光プローブ12と短距離r1となる参照受光プローブ14及び長距離r2となる受光プローブ13と、測定部位との関係を示す断面図である。これにより、長距離r2のチャンネルで、送光点T近傍の皮膚に存在する血管と、脳に存在する血管と、受光点R2近傍の皮膚に存在する血管とによる受光量情報ΔA2を取得するとともに、短距離r1のチャンネルで、送光点T近傍の皮膚に存在する血管(受光点R1近傍の皮膚に存在する血管)のみによる受光量情報ΔA1を取得している。
【0005】
そして、このようにして得られた受光量情報ΔA1、ΔA2から式(4)を用いて、脳に存在する血管のみによる受光量情報ΔAを求めている。
ΔA=ΔA2−KΔA1・・・(4)
ところで、式(4)において受光量情報ΔAを求めるためには係数Kを決定する必要があり、この係数Kを算出する算出方法が開示されている(例えば、非特許文献2参照)。この算出方法では、最小二乗誤差を用いて係数Kを算出している。
【0006】
また、光脳機能イメージング装置では、脳の複数箇所の測定部位に関するオキシヘモグロビンの濃度変化・光路長積[oxyHb]、デオキシヘモグロビンの濃度変化・光路長積[deoxyHb]及び総ヘモグロビンの濃度変化・光路長積([oxyHb]+[deoxyHb])をそれぞれ測定することが行われている。
このような光脳機能イメージング装置においては、8個の送光プローブ12と8個の受光プローブ13とを所定の配列で被検者の頭皮表面に接触させるために、ホルダ(送受光部)130が使用される。図9は、8個の送光プローブと8個の受光プローブとが挿入されるホルダ130の一例を示す平面図である。
送光プローブ12T1〜12T8と受光プローブ13R1〜13R8とは、縦方向に4個と横方向に4個とに交互となるように配置される。このとき、送光プローブ12T1〜12T8と受光プローブ13R1〜13R8との間の間隔(チャンネル)である第二設定距離r2は、30mmとなっている。これにより、脳の24箇所の計測位置に関する受光量情報ΔA2(λ)、ΔA2(λ)、ΔA2(λ)を得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−136434号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Rolf B. Saager, and Andrew J. Berger "Direct characterization and removal of interfering absorption trends in two-layer turbid media" J. Opt. Soc. Am. A/Vol.22, No.9/September 2005.
【非特許文献2】Francesco Fabbri, Angelo Sassaroli, Michael e Henry, and Sergio Fantini "Optical measurements of absorption changes in two-layered diffusive media" Phys. Med. Biol. 49(2004) 1183 - 1201.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上述したような受光量情報ΔA1、ΔA2や係数Kを用いた算出方法で受光量情報ΔAを算出しているが、これは一対の送光プローブ12及び受光プローブ13の組み合わせを考慮しており、上述したような光脳機能イメージング装置のホルダ130のような複数の送光プローブ12T1〜12T8及び複数の受光プローブ13R1〜13R8の組み合わせを考慮したものではなかった。つまり、脳の複数箇所(24箇所)の計測位置に関する受光量情報ΔAを算出するものではなかった。
なお、上述したような算出方法で受光量情報ΔAを算出するために、全ての送光プローブ12T1〜12T8及び受光プローブ13R1〜13R8の組み合わせに対して短距離r2とした複数の参照受光プローブ14を設けることも考えられるが、全ての送光プローブ12T1〜12T8及び受光プローブ13R1〜13R8の組み合わせに対して参照受光プローブ14を設けることはコストがかかる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本件発明者らは、上記課題を解決するために、少数の参照受光プローブであっても、脳の複数箇所の測定部位に関して脳に存在する血管のみによる受光量情報ΔAを考察することができる方法について検討を行った。そこで、被検者の脳の所定範囲における測定データを表示するとともに、被検者の頭皮の所定位置における皮膚血流データを同時に表示することを見出した。これにより、医師や検査技師等は皮膚血流データを参考にしながら、測定データを考察することができる。
【0011】
すなわち、本発明の光生体計測装置は、被検者の頭皮表面上に配置される複数の送光プローブと、当該頭皮表面上に配置される複数の受光プローブとを有し、各受光プローブは送光プローブから第二設定距離r2で離れた位置に配置されている送受光部と、前記送光プローブから受光プローブまでの第二受光量情報ΔA2を用いて、脳活動に関する測定データを算出する第二受光量情報算出部と、被検者の脳の計測位置を示して各測定データをそれぞれ表示することで、被検者の脳の所定範囲における測定データを表示するデータ表示制御部とを備える光生体計測装置であって、前記送光プローブから第二設定距離r2より短い第一設定距離r1で離れた位置に配置された参照受光プローブと、前記送光プローブから前記参照受光プローブまでの第一受光量情報ΔA1を用いて、皮膚血流に関する皮膚血流データを算出する第一受光量情報算出部とを備え、前記データ表示制御部は、被検者の脳の所定範囲における測定データを表示するとともに、被検者の頭皮の計測位置を示して皮膚血流データを表示することで、被検者の頭皮の所定位置における皮膚血流データを表示するようにしている。
【0012】
ここで、「第二設定距離r2」は、送光点T近傍の皮膚に存在する血管と、脳に存在する血管と、受光点R近傍の皮膚に存在する血管とによる受光量情報を取得するための距離であり、「第一設定距離r1」は、送光点T又は受光点R近傍の皮膚に存在する血管による受光量情報を取得するための距離である。
また、「被検者の脳の所定範囲」とは、計測したい任意の脳の範囲のことをいい、送受光部の大きさ等によって決定されるものであり、「被検者の頭皮の所定位置」とは、脳に存在しない血管を計測するための位置のことをいい、例えば、頭皮から1.5cm以内に存在する主要動脈や主要静脈や送受光部付近の動脈や送受光部付近の静脈を計測するための位置等が挙げられる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明の光生体計測装置によれば、医師や検査技師等は皮膚血流データとその計測位置を参考にしながら、測定データを考察することができるので、測定データ中にアーティファクトが生じているか否かを判断したり、どの測定データ中にどのようなアーティファクトが生じているかを判断したりすることができる。その結果、医師や検査技師等は、ある測定データを破棄することができ、被検者の脳活動を正確に診断することができる。
【0014】
(その他の課題を解決するための手段及び効果)
また、本発明の光生体計測装置においては、前記データ表示制御部は、被検者の脳の所定範囲における測定データをマップで表示するとともに、当該マップでの被検者の頭皮の所定位置近傍に皮膚血流データを表示するようにしてもよい。
ここで、「マップ」とは、2次元若しくは3次元の空間に位置が対応付けられたものをいう。
【0015】
そして、本発明の光生体計測装置においては、複数の参照受光プローブを備え、前記データ表示制御部は、被検者の脳の所定範囲における測定データをマップで表示するとともに、被検者の頭皮の所定範囲における皮膚血流データをマップで表示するようにしてもよい。
【0016】
さらに、本発明の光生体計測装置においては、被検者の頭皮表面を示す頭皮表面形態画像及び/又は被検者の脳表面を示す脳表面形態画像を取得して表示する形態画像表示制御部を備え、頭皮表面形態画像及び/又は脳表面形態画像上に、前記マップを重畳して表示するようにしてもよい。
ここで、「被検者の頭皮表面を示す頭皮表面形態画像」とは、核磁気共鳴画像診断装置(以下、MRIと略す)やCT画像等により作成された被検者の映像データから、頭皮表面を示す映像データを抽出することにより作成された3次元形態画像のことをいう。また、「被検者の脳表面を示す脳表面形態画像」とは、MRIやCT画像等により作成された被検者の映像データから、脳表面を示す映像データを抽出することにより作成された3次元形態画像のことをいう。
以上のように、本発明の光生体計測装置によれば、頭皮表面や脳表面を示す3次元形態画像を作成するので、脳の解剖学的構造の個人差にかかわらず、脳活動を詳細に考察することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態である光生体計測装置の構成を示すブロック図。
図2】8個の送光プローブと8個の受光プローブと4個の参照受光プローブとが挿入されるホルダの一例を示す平面図。
図3】生体計測装置により得られた画像が表示されたモニタ画面の一例を示す図。
図4】生体計測装置により得られた画像が表示されたモニタ画面の他の一例を示す図。
図5】生体計測装置により得られた画像が表示されたモニタ画面の他の一例を示す図。
図6】生体計測装置により得られた画像が表示されたモニタ画面の他の一例を示す図。
図7】一対の送光プローブ及び受光プローブと、測定部位との関係を示す図。
図8】送光プローブと短距離r1となる参照受光プローブ及び長距離r2となる受光プローブと、測定部位との関係を示す断面図。
図9】8個の送光プローブと8個の受光プローブとが挿入されるホルダの一例を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明は、以下に説明するような実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の態様が含まれる。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態である光生体計測装置の構成を示すブロック図である。また、図2は、8個の送光プローブと8個の受光プローブと4個の参照受光プローブとが挿入されるホルダ(送受光部)の一例を示す平面図である。そして、図3は、計測結果として画像表示されたモニタ画面の一例を示す図である。
光生体計測装置1は、ホルダ30と、発光部2と、光検出部3と、光生体計測装置1全体の制御を実行する制御部(コンピュータ)20とにより構成される。
【0020】
図3では、頭皮表面画像24aと脳表面画像24bとの位置関係を示す3次元形態画像24cの画像表示が行われている。また、脳表面画像24bの24個の所定位置上に測定データ24dの画像表示が行われており、頭皮表面画像24aの4個の所定位置上に皮膚血流データ24eの画像表示が行われている。なお、測定データ24dと皮膚血流データ24eとは、ある計測時間tでのオキシヘモグロビンの濃度変化・光路長積[oxyHb]の数値に対応する色で表現されている。また、頭皮表面画像24aと皮膚血流データとは、半透明で画像表示されている。
【0021】
ホルダ30は、8個の送光プローブ12T1〜12T8と、8個の受光プローブ13R1〜13R8と、4個の参照受光プローブ14a〜14dとを有する。送光プローブ12T1〜12T8は、光を出射するものであり、一方、受光プローブ13R1〜13R8と参照受光プローブ14a〜14dとは、光の量を検出するものである。
送光プローブ12T1〜12T8と受光プローブ13R1〜13R8とは、行方向及び列方向に交互となるように正方格子状に配置されている。このとき、送光プローブ12T1〜12T8と受光プローブ13R1〜13R8との間の間隔(チャンネル)である第二設定距離r2は、30mmとなっている。
【0022】
また、参照受光プローブ14aは、送光プローブ12T1と受光プローブ13R3との間で、送光プローブ12T1と第一設定距離r1で離れた位置に配置されており、送光プローブ12T1と参照受光プローブ14aとの間の間隔である第一設定距離r1は、10mmとなっている。そして、参照受光プローブ14bは、送光プローブ12T4と受光プローブ13R2との間で、送光プローブ12T4と第一設定距離r1で離れた位置に配置され、参照受光プローブ14cは、送光プローブ12T5と受光プローブ13R7との間で、送光プローブ12T5と第一設定距離r1で離れた位置に配置され、参照受光プローブ14dは、送光プローブ12T8と受光プローブ13R6との間で、送光プローブ12T8と第一設定距離r1で離れた位置に配置されている。
【0023】
発光部2は、コンピュータ20から入力された駆動信号により8個の送光プローブ12T1〜12T8のうちから選択される1個の送光プローブ12に光を送光する。上記光としては、近赤外光(例えば、780nmと805nmと830nmとの3波長光)が用いられる。
光検出部3は、8個の受光プローブ13R1〜13R8で受光した近赤外光(例えば、780nmと805nmと830nmとの3波長光)を個別に検出することにより、8個の第二受光量情報ΔA2(λ)、ΔA2(λ)、ΔA2(λ)(y=1,2,・・・,8)をコンピュータ20に出力するとともに、4個の参照受光プローブ14a〜14dで受光した近赤外光(例えば、780nmと805nmと830nmとの3波長光)を個別に検出することにより、4個の第一受光量情報ΔA1(λ)、ΔA1(λ)、ΔA1(λ)(m=1,2,・・・,4)をコンピュータ20に出力する。
【0024】
コンピュータ20においては、CPU21とメモリ25と備え、モニタ画面23a等を有する表示装置23と、キーボード22aやマウス22b等を有する入力装置22とが連結されている。また、CPU21が処理する機能をブロック化して説明すると、送受光部制御部40と、形態画像表示制御部31と、第二受光量情報取得部32と、第一受光量情報取得部33と、データ表示制御部34とを有する。さらに、メモリ25には、受光量情報ΔA1(λ)、ΔA1(λ)、ΔA1(λ)、ΔA2(λ)、ΔA2(λ)、ΔA2(λ)を記憶していく受光量情報記憶領域25aと、画像データを記憶する画像データ記憶領域25bとが形成されている。
【0025】
形態画像表示制御部31は、計測前にMRI50により作成された映像データを取得することにより、頭皮表面を示す映像データを抽出することで頭皮表面形態画像データを取得するとともに、脳表面を示す映像データを抽出することで脳表面形態画像データを取得して、頭皮表面形態画像データと脳表面形態画像データとを画像データ記憶領域25bに記憶させる。ここで、MRI50は、3方向の2次元画像を示す映像データを作成するものである。なお、映像データは、頭皮表面と脳表面とを含む被険者を示すものである。また、映像データは、MR信号の強度情報や位相情報等の数値を有する複数のピクセルから構成される。そして、上述した抽出する方法としては、例えば、MRI信号の強度情報や位相情報等の数値を有する複数のピクセルを用いることにより、領域拡張法、領域併合法、ヒューリスティック法等の画像領域分割方法、境界要素を連結して領域を抽出する方法、閉曲線を変形させて領域を抽出する方法等を利用する方法等が挙げられる。
【0026】
また、形態画像表示制御部31は、測定後等に入力装置22から出力された入力信号に基づいて、画像データ記憶領域25bに記憶された頭皮表面形態画像データと脳表面形態画像データとを合成することにより、頭皮表面画像24aと脳表面画像24bとの位置関係を示す3次元形態画像24dを作成して、モニタ画面23aに3次元形態画像24cの画像表示を行う制御を行う(図3参照)。
【0027】
送受光部制御部40は、発光部2に駆動信号を出力する発光制御部42と、光検出部3からの受光量情報ΔA1(λ)、ΔA1(λ)、ΔA1(λ)、ΔA2(λ)、ΔA2(λ)、ΔA2(λ)を受けることにより受光量情報記憶領域25aに記憶させる光検出制御部43とを有する。発光制御部42は、送光プローブ12に光を送光する駆動信号を発光部2に出力する制御を行う。光検出制御部43は、光検出部3からの4個の第一受光量情報ΔA1(λ)、ΔA1(λ)、ΔA1(λ)と8個の第二受光量情報ΔA2(λ)、ΔA2(λ)、ΔA2(λ)とを受光量情報記憶領域25aに記憶させる制御を行う。つまり、1個の送光プローブ12から光が送光されるごとに、4個の第一受光量情報ΔA1(λ)、ΔA1(λ)、ΔA1(λ)と8個の第二受光量情報ΔA2(λ)、ΔA2(λ)、ΔA2(λ)とが受光量情報記憶領域25aに記憶されていくことになる。
【0028】
第二受光量情報取得部32は、受光量情報記憶領域25aに記憶された第二受光量情報ΔA2(λ)、ΔA2(λ)、ΔA2(λ)の中から、送光プローブ12から第二設定距離r2で離れた受光プローブ13で検出された第二受光量情報ΔA2(λ)、ΔA2(λ)、ΔA2(λ)(チャンネル番号x=1,2,・・・,24)を取得する制御を行う。つまり、24個の第二受光量情報ΔA2(λ)、ΔA2(λ)、ΔA2(λ)(x=1,2,・・・,24)を取得する。
【0029】
第一受光量情報取得部33は、受光量情報記憶領域25aに記憶された第一受光量情報ΔA1(λ)、ΔA1(λ)、ΔA1(λ)の中から、送光プローブ12から第一設定距離r1で離れた参照受光プローブ14で検出された第一受光量情報ΔA1(λ)、ΔA1(λ)、ΔA1(λ)(チャンネル番号n=1,2,・・・,4)を取得する制御を行う。つまり、4個の第一受光量情報ΔA1(λ)、ΔA1(λ)、ΔA1(λ)(n=1,2,・・・,4)を取得する。
【0030】
データ表示制御部34は、受光量情報記憶領域25aに記憶された第二受光量情報ΔA2(λ)、ΔA2(λ)、ΔA2(λ)(x=1,2,・・・,24)に基づいて、関係式(1)(2)(3)を用いて、オキシヘモグロビンの濃度変化・光路長積[oxyHb]、デオキシヘモグロビンの濃度変化・光路長積[deoxyHb]及び総ヘモグロビンの濃度変化・光路長積([oxyHb]+[deoxyHb])を測定データとして求め、脳表面画像24bの24個の所定位置上に測定データ24dの画像表示を行う制御を行う。このとき、例えば、ある計測時間tにおける24個の所定位置でのオキシヘモグロビンの濃度変化・光路長積[oxyHb]を、数値とカラーとの対応関係を示すカラーテーブルに基づいて、色で表現する。また、脳表面画像24bの24個の所定位置は、送光点Tと受光点Rとを被検者の頭皮表面に沿って最短距離で結んだ線の中点Mから、送光点Tと受光点Rとを被検者の頭皮表面に沿って最短距離で結んだ線の距離の半分の深さである被検者の部位Sとする。
【0031】
さらに、データ表示制御部34は、脳表面画像24bの24個の所定位置上に測定データ24dの画像表示を行うとともに、受光量情報記憶領域25aに記憶された第一受光量情報ΔA1(λ)、ΔA1(λ)、ΔA1(λ)(n=1,2,・・・,4)に基づいて、関係式(1)(2)(3)を用いて、オキシヘモグロビンの濃度変化・光路長積[oxyHb]、デオキシヘモグロビンの濃度変化・光路長積[deoxyHb]及び総ヘモグロビンの濃度変化・光路長積([oxyHb]+[deoxyHb])を皮膚血流データとして求め、頭皮表面画像24aの4個の所定位置上に皮膚血流データ24eの画像表示を行う制御を行う。このとき、例えば、ある計測時間tにおける4個の所定位置でのオキシヘモグロビンの濃度変化・光路長積[oxyHb]を、数値とカラーとの対応関係を示すカラーテーブルに基づいて、色で表現する。また、頭皮表面画像24aの4個の所定位置は、送光点Tと受光点Rとを被検者の頭皮表面に沿って最短距離で結んだ線の中点Mとする。これにより、モニタ画面23aに図3のような画像が表示される。
【0032】
以上のように、光生体計測装置1によれば、医師や検査技師等は、図3のような画像を用いて皮膚血流データ24eとその計測位置を参考にしながら、測定データ24dを考察することができるので、測定データ24d中にアーティファクトが生じているか否かを判断したり、どの測定データ24d中にどのようなアーティファクトが生じているかを判断したりすることができる。その結果、医師や検査技師等は、ある測定データ24dを破棄することができ、被検者の脳活動を正確に診断することができる。また、頭皮表面画像24aや脳表面画像24bを作成するので、脳の解剖学的構造の個人差にかかわらず、脳活動を詳細に考察することができる。
【0033】
<他の実施形態>
(1)上述した光生体計測装置1では、データ表示制御部34は、脳表面画像24bの24個の所定位置上に測定データ24dの画像表示を行う構成を示したが、脳表面画像24bの所定範囲上に測定データ24dの等高線マップの画像表示を行う構成としてもよい。また、データ表示制御部34は、頭皮表面画像24aの4個の所定位置上に皮膚血流データ24eの画像表示を行う構成を示したが、頭皮表面画像24aの所定範囲上に皮膚血流データ24eの等高線マップの画像表示を行う構成としてもよい。図4は、画像表示されたモニタ画面の他の一例を示す図である。
【0034】
(2)上述した光生体計測装置1では、データ表示制御部34は、脳表面画像24bの24個の所定位置上に測定データ24dの画像表示を行う構成を示したが、脳表面画像24bを用いず測定データ24dの等高線マップの画像表示を行う構成としてもよい。また、データ表示制御部34は、頭皮表面画像24aの4個の所定位置上に皮膚血流データ24eの画像表示を行う構成を示したが、頭皮表面画像24aを用いず皮膚血流データ24eの等高線マップの画像表示を行う構成としてもよい。図5は、画像表示されたモニタ画面の他の一例を示す図である。
【0035】
(3)上述した光生体計測装置1では、データ表示制御部34は、頭皮表面画像24aの4個の所定位置上に皮膚血流データ24eの画像表示を行う構成を示したが、頭皮表面画像24aを用いず、測定データ24dの等高線マップでの被検者の頭皮の所定位置近傍に皮膚血流データ24eの画像表示を行う構成としてもよい。図6は、画像表示されたモニタ画面の他の一例を示す図である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、非侵襲で脳活動を測定する光生体計測装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0037】
1: 光生体計測装置
12: 送光プローブ
13: 受光プローブ
14: 参照受光プローブ
22: 入力装置
23: 表示装置
30: ホルダ(送受光部)
31: 形態映像データ取得部
32: 第二受光量情報算出部
33: 第一受光量情報算出部
34: データ表示制御部
50: MRI
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9