特許第5794435号(P5794435)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5794435画像表示システム、及び、反射型スクリーン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5794435
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】画像表示システム、及び、反射型スクリーン
(51)【国際特許分類】
   G03B 21/60 20140101AFI20150928BHJP
   G03B 21/00 20060101ALI20150928BHJP
   H04N 5/74 20060101ALI20150928BHJP
   G02B 27/48 20060101ALN20150928BHJP
【FI】
   G03B21/60
   G03B21/00 D
   H04N5/74 C
   !G02B27/48
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-197825(P2013-197825)
(22)【出願日】2013年9月25日
(65)【公開番号】特開2015-64463(P2015-64463A)
(43)【公開日】2015年4月9日
【審査請求日】2015年2月13日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森安 研吾
(72)【発明者】
【氏名】山田 裕貴
【審査官】 中村 直行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−145770(JP,A)
【文献】 特開平09−080626(JP,A)
【文献】 特開2006−259575(JP,A)
【文献】 特開2013−156373(JP,A)
【文献】 特開2012−252097(JP,A)
【文献】 特開平04−366939(JP,A)
【文献】 特開2008−065026(JP,A)
【文献】 特開2010−204460(JP,A)
【文献】 特開平09−230506(JP,A)
【文献】 特開2012−252112(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/123613(WO,A1)
【文献】 特開2011−164537(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B5/00−5/08
5/10−5/136
G03B21/56−21/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源にレーザを用いたプロジェクタと、プロジェクタからの映像を投映する反射型スクリーンとを備える画像表示システムであって、
前記反射型スクリーンは、可視光に対して透明な透明材料に、前記透明材料とは屈折率が異なる粒子が分散された半透過層と、前記半透過層のプロジェクタとは反対の面側に、可視光を反射させる反射層とを有し、
前記半透過層は、その表面から垂直方向に層内に進行する光の強度Iinと当該表面からの深さ方向の位置dとの関係が、下記式(1)を満たし、
前記半透過層の厚さは、0.1〜3mmの範囲内であり、
前記粒子の最大粒径は、50μm以下であり、前記粒子の最小粒径は、100nm以上であり、
前記粒子の添加量は、前記透明材料を100体積%としたときに、0.3〜5体積%であることを特徴とする画像表示システム。
<式(1)>
log(Iin)=ad+b(a,bは定数)
【請求項2】
前記粒子は、MgO、CaO、CaCO、SrO、SrCO、BaO、BaCO、Al、Sc、Y、TiO、ZrO、ZnO、B、Al、SiO、SnO、及び、PbOの群からなる少なくとも1種類以上であることを特徴とする請求項1に画像表示システム。
【請求項3】
光源にレーザを用いたプロジェクタからの映像を投映する反射型スクリーンであって、
可視光に対して透明な透明材料に、前記透明材料とは屈折率が異なる粒子が分散された半透過層と、
可視光を反射させる反射層とを有し、
前記半透過層は、その表面から垂直方向に層内に進行する光の強度Iinと当該表面からの深さ方向の位置dとの関係が、下記式(1)を満たし、
前記半透過層の厚さは、0.1〜3mmの範囲内であり、
前記粒子の最大粒径は、50μm以下であり、前記粒子の最小粒径は、100nm以上であり、
前記粒子の添加量は、前記透明材料を100体積%としたときに、0.3〜5体積%であることを特徴とする反射型スクリーン。
<式(1)>
log(Iin)=ad+b(a,bは定数)
【請求項4】
前記粒子は、MgO、CaO、CaCO、SrO、SrCO、BaO、BaCO、Al、Sc、Y、TiO、ZrO、ZnO、B、Al、SiO、SnO、及び、PbOの群からなる少なくとも1種類以上であることを特徴とする請求項に記載の反射型スクリーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源にレーザを用いたプロジェクタからの映像を反射型スクリーンに投映する画像表示システム、及び、反射型スクリーンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光源にレーザを用いたプロジェクタと、このプロジェクタからの映像を投影する反射型スクリーンとを有する画像表示システムが知られている。しかしながら、プロジェクタの光源にレーザを用いる場合、レーザ光はコヒーレンス性の強い光であるため、スクリーンで散乱された光が干渉し、スクリーン上にランダムな明点および暗点のパターン(スペックルノイズ)が発生する場合がある。そして、このようなスペックルノイズは、肉眼ではぎらついて見えるため、観察者に不快感を与える可能性がある。
【0003】
このようなスペックルノイズを低減させる方法として、従来、スクリーンを振動させて、パターンを平均化させ、スペックルノイズを見えにくくする方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−191533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のような方法では、スクリーンに振動を起こさせるために、モーターなどの動力源が必要となり、システム全体としての消費電力が大きくなるといった問題がある。また、モーターなどの駆動部を有する構成とすると、故障の可能性が高くなるといった問題や、振動によって騒音が生じ、映像の鑑賞者に不快感を生じさせるといった問題等もある。
【0006】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、装置を大掛かりなものとすることなく、簡便にスペックルノイズを低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の画像表示システムは、光源にレーザを用いたプロジェクタと、プロジェクタからの映像を投映する反射型スクリーンとを備える画像表示システムであって、
前記反射型スクリーンは、可視光に対して透明な透明材料に、前記透明材料とは屈折率が異なる粒子が分散された半透過層と、前記半透過層のプロジェクタとは反対の面側に、可視光を反射させる反射層とを有することを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、反射型スクリーンは、可視光に対して透明な透明材料に、前記透明材料とは屈折率が異なる粒子が分散された半透過層と、前記半透過層のプロジェクタとは反対の面側に、可視光を反射させる反射層とを有する。従って、プロジェクタから出射されたレーザ光は、半透過層内部を透過する過程で光が順次拡散されるとともに、反射層により観察者側に反射される。その結果、レーザ光線の角度多重度が大きくなり、スペックルを低減させることができる。
このように、上記構成によれば、反射型スクリーンに半透過層を設けて、スペックルを低減させたため、装置を大掛かりなものとすることなく、簡便にスペックルノイズを低減することが可能となる。
【0009】
前記した本発明の構成において、前記粒子は、MgO、CaO、CaCO、SrO、SrCO、BaO、BaCO、Al、Sc、Y、TiO、ZrO、ZnO、B、Al、SiO、SnO、及び、PbOの群からなる少なくとも1種類以上であることが好ましい。前記粒子が前記群からなる少なくとも1種類以上であると、より好適にスペックルを低減することができる。
【0010】
また、本発明の反射型スクリーンは、光源にレーザを用いたプロジェクタからの映像を投映する反射型スクリーンであって、
可視光に対して透明な透明材料に、前記透明材料とは屈折率が異なる粒子が分散された半透過層と、
可視光を反射させる反射層とを有することを特徴とする。
【0011】
上記構成によれば、反射型スクリーンは、可視光に対して透明な透明材料に、前記透明材料とは屈折率が異なる粒子が分散された半透過層と、前記半透過層のプロジェクタとは反対の面側に、可視光を反射させる反射層とを有する。従って、プロジェクタから出射されたレーザ光は、半透過層内部を透過する過程で光が順次拡散されるとともに、反射層により観察者側に反射される。その結果、レーザ光線の角度多重度が大きくなり、スペックルを低減させることができる。
このように、上記構成によれば、反射型スクリーンに半透過層を設けて、スペックルを低減させたため、装置を大掛かりなものとすることなく、簡便にスペックルノイズを低減することが可能となる。
【0012】
前記した本発明の構成において、前記粒子は、MgO、CaO、CaCO、SrO、SrCO、BaO、BaCO、Al、Sc、Y、TiO、ZrO、ZnO、B、Al、SiO、SnO、及び、PbOの群からなる少なくとも1種類以上であることが好ましい。前記粒子が前記群からなる少なくとも1種類以上であると、より好適にスペックルを低減することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の画像表示システム、及び、反射型スクリーンによれば、装置を大掛かりなものとすることなく、簡便にスペックルノイズを低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係る反射型スクリーンを模式的に示す側面断面図である。
図2】本実施形態に係る画像表示システムの概略図である。
図3】効果検証実験で用いた投射系の概略図である。
図4】効果検証実験で用いたスペックル測定系の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態に係る画像表示システム、及び、反射型スクリーンにつき、図面を参照しつつ説明する。なお、各図において図面の寸法比と実際の寸法比は必ずしも一致しない。
【0016】
以下では、まず、反射型スクリーンについて説明することとする。図1は、本実施形態に係る反射型スクリーンを模式的に示す側面断面図である。
【0017】
図1に示すように、反射型スクリーン10は、反射層12と半透過層14とが積層された構成を有している。反射型スクリーン10においては、半透過層14側(図1では左側)からレーザ光が照射され、半透過層14内部を透過する過程で光が順次拡散されるとともに、反射層12により観察者側に反射される。なお、本実施形態では、反射層12と半透過層14とが他の層を間に介在させることなく積層されている場合について説明するが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において他の層が間に介在していてもよい。
【0018】
反射型スクリーン10は、保管、搬送等の観点から、ロール状に巻回可能なものが好ましい。このような観点から、反射型スクリーン10を構成する各部材は、ある程度可撓性を有する材料で形成されていることが好ましい。
【0019】
反射層12は、プロジェクタからのレーザ光を反射し、プロジェクタ側の観察者に映像として観察可能に映像光を反射させる層である。反射層12としては、従来公知の反射型スクリーンに用いられているものと同様のものを用いることができる。具体的には、例えば、白色等の塗料が塗布されたマット仕上げの布地、マット仕上げの樹脂シートを挙げることができる。また、他の具体例としては、蒸着等によって形成された金属層や、スプレーコーティングによって吹き付けられた反射性塗料からなる層を挙げることができる。
【0020】
半透過層14は、可視光に対して透明な透明材料に、前記透明材料とは屈折率が異なる粒子が分散されている。なお、本明細書において、「可視光に対して透明」とは、前記透明材料を膜厚1mmのフィルム状にした際に、波長400〜760nmの範囲内における全波長域において光線透過率が70%以上であることをいう。なお、光線透過率は、測定用のフィルムを透過させる前の強度と透過させた後の強度の比をいい、下記式により求められる。
光線透過率=[(透過後の強度)/(透過前の強度)]×100(%)
【0021】
前記透明材料の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート、アクリロニトリル、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリウレタン樹脂、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート樹脂等を挙げることができる。なかでも、耐久性、加工の容易性、前記粒子の分散容易性の観点から、ポリ塩化ビニルが好ましい。
【0022】
前記粒子としては、前記透明材料とは屈折率が異なるものであれば特に制限されない。前記透明材料と屈折率が異なれば、レーザ光を散乱させることができるからである。
【0023】
前記粒子としては、MgO、CaO、CaCO、SrO、SrCO、BaO、BaCO、Al、Sc、Y、TiO、ZrO、ZnO、B、Al、SiO、SnO、及び、PbOの群からなる少なくとも1種類以上であることが好ましい。前記粒子が前記群からなる少なくとも1種類以上であると、より好適にスペックルを低減することができる。なかでも、白色であること、及び、耐久性の観点から、TiO、Alが好ましい。
【0024】
前記粒子の添加量としては、前記透明材料を100体積%としたときに、0.3〜5体積%とすることが好ましい。前記粒子の添加量を、前記透明材料を100体積%としたときに、0.3〜5体積%とすることにより、スペックル抑制効果が好適に得られる。
【0025】
前記粒子の平均粒径としては、500nm〜30μmの範囲内にあることが好ましく、1μm〜25μmの範囲内にあることがより好ましい。前記粒子の平均粒径を500nm以上とすることにより、粒子の凝集を抑え、取扱を容易にすることができる。また、前記粒子の平均粒径を30μm以下とすることにより、粒子を取り扱う工程における装置の摩耗を抑制し、意図しない不純物の混入を少なくすることができる。
【0026】
また、前記粒子の最大粒径は、50μm以下であることが好ましく、40μm以下であることがより好ましい。前記最大粒径を50μm以下とすることにより、肉眼で視認しにくくすることができ、画質の劣化を抑制することができる。
また、前記粒子の最小粒径は、100nm以上であることが好ましく、250nm以上であることがより好ましい。前記最小粒子径を100nm以上とすることにより、波長によって散乱の特性が変わりやすいレイリー散乱が生じることを抑制することができる。
【0027】
半透過層14の厚さは、0.1〜3mmの範囲内であることが好ましく、0.2〜1mmの範囲内であることがより好ましい。半透過層14の厚さを、0.1mm以上とすることにより、好適にスペックル抑制の効果を得ることができる。また、半透過層14の厚さを、3mm以下とすることにより、ある程度の強度を確保でき、取り扱い性に優れる。
【0028】
半透層14は、その表面から垂直方向に層内に進行する光の強度Iinと当該表面からの深さ方向の位置dとの関係が、下記式(1)を満たすことが好ましい。
<式(1)>
log(Iin)=ad+b(a,bは定数)
【0029】
半透層14が上記式(1)を満たすということは、表面からの深さを例えば、d1、d2、d3・・・とすると、d1、d2、d3・・・の各深さの面においてレーザ光が同等に拡散されている(例えば、深さd1の面に届いたレーザ光の20%が拡散され、深さd2の面に届いたレーザ光の20%が拡散され、深さd3の面に届いたレーザ光の20%が拡散されている)ことを意味する。従って、半透層14が上記式(1)を満たすと、レーザ光線の角度多重度がより大きくなり、スペックルをより低減させることが可能となる。半透層14が上記式(1)を満たすように半透層14を製造する方法としては、前記透明材料に前記粒子を均一に分散させる方法を挙げることができる。また、他の製造方法としては、例えば、前記透明材料に前記粒子のうち粒径の大きな粒子を小さな数密度、粒径の小さな粒子を大きな数密度になるようグラデーションをつけて分散させる方法を挙げることができる。
【0030】
反射型スクリーン10の製造方法としては、まず、半透層14を製造する。半透層14の製造方法は特に限定されないが、前記透明材料に前記粒子を分散させ、得られた分散物をシート状に塗工する方法が挙げられる。前記透明材料に前記粒子を分散させる方法としては、ディゾルバー、ホモジナイザーなどの各種ミキサー、ニーダー、ロール、ビーズミル、自公転式撹拌装置等により行なうことができる。また、分散の際には溶剤を用い、シート状に塗工した後に乾燥させてもよい。
【0031】
次に、反射層12を有する従来公知のスクリーンを準備し、反射層12上に半透層14を貼り合わせる。貼り合わせは、圧着により行なうことができる。この際、加温(例えば、30〜150℃)しながら圧着してもよい。
【0032】
以上、反射型スクリーン10について説明した。
【0033】
次に、本実施形態に係る画像表示システムについて説明する。図2は、本実施形態に係る画像表示システムの概略図である。
【0034】
図2に示すように、画像表示システム50は、プロジェクタ20と反射型スクリーン10とを備える。
【0035】
本発明において、プロジェクタには、光源にレーザを用いたプロジェクタを採用する。光源にレーザを用いたプロジェクタとしては、従来公知のプロジェクタを採用することができる。
【0036】
本実施形態に係るプロジェクタ20は、赤色レーザ光源50R、緑色レーザー光源50G、及び、青色レーザー光源50Bからなるレーザ光源50と、ダイクロックミラー52と、レンズ54と、ロッドインテグレータ56と、レンズ58と、ミラー60と、光変調素子62と、プロジェクションレンズ64とを備える。
【0037】
プロジェクタ20では、まず、赤色レーザ光源50R、緑色レーザー光源50G、及び、青色レーザー光源50Bから放射されたレーザ光を、ダイクロイックミラー52で合成する。次に、ダイクロイックミラー52で合成された光をレンズ54で集光して、ロッドインテグレータ56に入射させる。ロッドインテグレータ56では、光の強度分布が均一化される。その後、ロッドインテグレータ56の端面の像を、レンズ58とミラー60を用いて反射型の光変調素子62上に結像させ、光変調素子62により作られた画像をプロジェクションレンズ64で反射型スクリーン10上に投映する。
【0038】
上述した通り、反射型スクリーン10は、可視光に対して透明な透明材料に、前記透明材料とは屈折率が異なる粒子が分散された半透過層14と、半透過層14のプロジェクタ20とは反対の面側に、可視光を反射させる反射層12とを有する。従って、プロジェクタ20から出射されたレーザ光は、半透過層14内部を透過する過程で光が順次拡散されるとともに、反射層12により観察者側(プロジェクタ20側)に反射される。その結果、レーザ光線の角度多重度が大きくなり、スペックルを低減させることができる。
このように、反射型スクリーン10、及び、画像表示システム50によれば、反射型スクリーン10に半透過層14を設けて、スペックルを低減させたため、装置を大掛かりなものとすることなく、簡便にスペックルノイズを低減することが可能となる。
【0039】
なお、上述の実施形態では、プロジェクタの備えるレーザ光源が、赤、緑、青の3色の場合について説明したが、本発明においてプロジェクタは、少なくとも1つのレーザ光源があればよく、光源の種類や数が異なっていてもよい。また、光学系は、図2に示されたものに限定されず、ミラーやレンズの数や位置が異なっていてもよい。また、上述の実施形態では、光を均一化するための手段として、ロッドインテグレータ56を用いる場合について説明したがフライアイレンズを用いてもよい。また、上述の実施形態では、光変調素子として反射型のものを用いる場合について説明したが透過型のものを用いてもよい。
【0040】
次に、スペックル抑制効果の検証実験について説明する。図3は、効果検証実験で用いた投射系の概略図である。
【0041】
(実施例1)
スペックル抑制効果の検証実験においては、図3に示すように、レーザ光源70から放射されたレーザ光を光ファイバ72に入射し、光ファイバ72の出射端に取り付けた六角柱型ロッドインテグレータ74で光の強度分布を均一化した。ロッドインテグレータ74の端面の像を、レンズ76、及び、レンズ78を用いてスクリーン80に約100倍の倍率で投映した。スクリーン80への投射実験に用いた各部材の特性は以下の通りである。
レーザ光源70:中心波長532nm、半値幅0.2nm、ビーム強度:2W
光ファイバ72:コア径0.8mm、長さ2m、NA=0.39
ロッドインテグレータ74:六角柱形状、対辺寸法2mm、長さ50mm
レンズ76(ロッドインテグレータ側):焦点距離7.9mm,ロッドインテグレータから7.9mm位置に設置
レンズ78(スクリーン側):焦点距離750mm、スクリーンから750mm位置に設置
【0042】
スクリーン80は、以下のようにして準備した。まず、半透層を製造した。半透層は、塩化ビニル系樹脂にAl粒子と、TiO粒子とを十分混合させた原材料を作製し、その後200℃で加熱、溶融させ、軟化した材料をスリットから押し出すことにより厚さ0.5mmのシート形状に加工した。
Al粒子の添加量は、半透層全体に対して4重量%とし、TiO粒子の添加量は、半透層全体に対して1重量%とした。
また、添加したAl粒子の粒径、TiO粒子の粒径は下記の通りである。
Al:平均粒子径:8μm、最小粒径の0.2μm、最大20μm
TiO:平均粒子径:8μm、最小粒径の0.2μm、最大20μm
【0043】
なお、製造した半透過層の直線透過率は、40%となった。ここで、直線透過率とは、スクリーンに対して垂直方向に入射する光の強度に対する、スクリーンに対して垂直方向に透過する光の強度の比をいう。直線透過率は、散乱によって光線の角度が変わると減少する。直線透過率が低すぎると、半透過層の表面のみでほとんどの光が散乱されることとなり、多重の効果が薄れ、スペックルの低減効果が小さくなる。また、直線透過率が高すぎると、ほとんどの光線が裏面の反射層で反射されるため、角度多重の効果が薄れ、スペックルの低減効果が小さくなる。本実施例1では、直線透過率は、40%であるため、スペックルの低減効果が得られるための条件として適当なものとなっている。なお、本発明において、半透過層の直線透過率は、20〜60%の範囲内であることが好ましい。
【0044】
次に、ハークネススクリーン社製の製品名:Stagelite Matt White 100(本発明の反射層に相当)を準備し、反射層上に製造した半透層を貼り合わせた。貼り合わせは、60℃の条件下で圧着により行なった。
【0045】
図4は、効果検証実験で用いたスペックル測定系の概略図である。図4に示すように、スクリーン80上に投映した像を、スクリーン80を垂直に見る向きに対して15度の方向からCCDカメラ82で撮影した。なお、カメラレンズ84の前にはφ1mmのアパ−チャー86を設置した。CCDカメラ82とスクリーン80との距離は700mmとした。CCDカメラ82は、測定用コンピュータ88にて制御した。撮影した撮影面内の信号強度の平均値Aと標準偏差σを求め、スペックルコントラストσ/Aを算出した。その結果、スペックルコントラストは9.9%となった。
【0046】
(比較例1)
ハークネススクリーン社製の製品名:Stagelite Matt White 100(本発明の反射層に相当)に半透過層を貼り合わせなかったこと以外は、実施例1と同様にして、スペックルコントラストσ/Aを算出した。その結果、スペックルコントラストは18.0%となった。
【0047】
(結果)
実施例1、比較例1の比較により、半透過層を用いたことによるスペックル抑制効果が確認できた。
【0048】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述した例に限定されるものではなく、本発明の構成を充足する範囲内で、適宜設計変更を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0049】
10 反射型スクリーン
12 反射層
14 半透過層
20 プロジェクタ
50 画像表示システム
図1
図2
図3
図4