特許第5794444号(P5794444)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5794444
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】非接触電力伝送システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 17/00 20060101AFI20150928BHJP
【FI】
   H02J17/00 C
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-510064(P2014-510064)
(86)(22)【出願日】2013年2月5日
(86)【国際出願番号】JP2013052634
(87)【国際公開番号】WO2013153841
(87)【国際公開日】20131017
【審査請求日】2014年6月4日
(31)【優先権主張番号】特願2012-91479(P2012-91479)
(32)【優先日】2012年4月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100103056
【弁理士】
【氏名又は名称】境 正寿
(72)【発明者】
【氏名】酒井 博紀
【審査官】 馬場 慎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−70574(JP,A)
【文献】 特表2010−537613(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/150317(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/093438(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/125091(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1筐体の第1主面に沿って設けられて交流電圧が印加される第1送電電極および第2送電電極を備える送電装置と、第2筐体の第2主面に沿って設けられて前記第1送電電極および前記第2送電電極と電界結合される第1受電電極および第2受電電極を備える受電装置とによって形成された非接触電力送システムであって、
前記第1送電電極および前記第1受電電極の各々のサイズは前記第2主面を前記第1主面に対向させた特定状態において前記第2主面に直交する方向から眺めて前記第1受電電極が前記第1送電電極の外縁内に収まるように調整され、
前記第1送電電極は切り欠きによって第1方向に並ぶ複数の部分電極に分割され、
前記複数の部分電極の各々は前記第1方向に直交する第2方向に延びる短冊をなし、そして
前記複数の部分電極のいずれか1つを交流電圧の印加先として選択する選択手段を備え、
前記第1受電電極の輪郭に割り当てられた2点間の最大距離は前記切り欠きの幅と前記短冊の幅との和に相当する距離を上回り、
前記切り欠きの配置は前記特定状態において前記第2受電電極の一部が前記切り欠きと対向するように調整された、非接触電力伝送システム。
【請求項2】
前記第2受電電極の主面は長方形をなし、
前記第2送電電極は前記第1送電電極を収める長方形の開口を有し、
前記第2受電電極の主面をなす長方形の短辺の長さは前記開口をなす長方形の短辺の長さよりも大きい、請求項記載の非接触電力伝送システム。
【請求項3】
前記第2受電電極の主面は前記第1受電電極の主面を覆うサイズを有し、
前記第1受電電極は前記第2筐体の外側に向かって前記第2受電電極に一定の距離を隔てて積層される、請求項1または2記載の非接触電力伝送システム。
【請求項4】
前記第2主面は前記第1主面によって覆われるサイズを有し、
前記特定状態は前記第2主面に直交する方向から眺めて前記第2主面が前記第1主面の外縁内に収まる位置関係を前提とする、請求項1ないしのいずれかに記載の非接触電力伝送システム。
【請求項5】
記選択手段の動作をインピーダンス特性を参照して制御する制御手段をさらに備える、請求項1ないしのいずれかに記載の非接触電力伝送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、非接触電力伝送システムに関し、特に電界を利用して送電装置から受電装置に電力を伝送する、非接触電力伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のシステムの一例が、特許文献1に開示されている。この背景技術によれば、給電装置は、共振部の一方端および他方端とそれぞれ接続された2つの給電電極を有する。共振部で生成された交流信号はこの2つの給電電極に印加され、静電界における電位差として外部に放射される。一方、受電装置は、給電装置から放射された電位差を感知する16個の受電電極と、これらの受電電極を第1の集合および第2の集合に分類する選択判定部とを有する。第1の集合に属する受電電極から出力された電気信号は共振部の一方端に印加され、第2の集合に属する受電電極から出力された電気信号は共振部の他方端に印加され、そして共振部の出力が整流部を経て負荷に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−296857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、背景技術では、給電電極が受電電極よりも格段に大きいため、第1給電電極と逆の極性である第2の集合に属する側の受電電極との容量が増大し、これによって電力伝送効率が低下するおそれがある。
【0005】
それゆえに、この発明の主たる目的は、電力伝送効率の低下を回避することができる、非接触電力伝送システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に従う非接触電力伝送システムは、第1筐体(CB1:実施例で相当する参照符号。以下同じ)の第1主面に沿って設けられて交流電圧が印加される第1送電電極(E1)および第2送電電極(E2)を備える送電装置(10)と、第2筐体(CB2)の第2主面に沿って設けられて第1送電電極および第2送電電極と電界結合される第1受電電極(E3)および第2受電電極(E4)を備える受電装置(20)とによって形成された非接触電力送システムであって、第1送電電極および第1受電電極の各々のサイズは第2主面を第1主面に対向させた特定状態において第2主面に直交する方向から眺めて第1受電電極が第1送電電極の外縁内に収まるように調整され、第1送電電極は切り欠きによって第1方向に並ぶ複数の部分電極(E1_1~E1_6)に分割され、複数の部分電極の各々は第1方向に直交する第2方向に延びる短冊をなし、そして複数の部分電極のいずれか1つを交流電圧の印加先として選択する選択手段(SW2)を備え、第1受電電極の輪郭に割り当てられた2点間の最大距離は前記切り欠きの幅と短冊の幅との和に相当する距離を上回り、切り欠きの配置は特定状態において第2受電電極の一部が切り欠きと対向するように調整される。
【0009】
好ましくは、第2受電電極の主面は長方形をなし、第2送電電極は第1送電電極を収める長方形の開口を有し、第2受電電極の主面をなす長方形の短辺の長さは開口をなす長方形の短辺の長さよりも大きい。
【0010】
好ましくは、第2受電電極の主面は第1受電電極の主面を覆うサイズを有し、第1受電電極は第2筐体の外側に向かって第2受電電極に積層される。
【0011】
好ましくは、第2主面は第1主面によって覆われるサイズを有し、特定状態は第2主面に直交する方向から眺めて第2主面が第1主面の外縁内に収まる位置関係を前提とする。
【0012】
好ましくは、選択手段の動作をインピーダンス特性を参照して制御する制御手段(16)がさらに備えられる。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、第2主面が第1主面に対向する姿勢で受電装置を送電装置に近づけると、交流電圧が第1送電電極,第2送電電極,第1受電電極および第2受電電極を介して送電装置から受電装置に伝送される。
【0014】
ここで、第1送電電極および第1受電電極の各々は、第2主面を第1主面に対向させた特定状態において第2主面に直交する方向から眺めて第1受電電極が第1送電電極の外縁内に収まるサイズを有する。これによって、受電装置の相対位置を第1主面に沿って変動させたとき、第1送電電極と第1受電電極との結合容量の変動量は、相対位置の変動量に比べて抑制される。
【0015】
また、第1送電電極は切り欠きによって複数の部分電極に分割され、切り欠きの配置は特定状態において第2受電電極の一部が切り欠きと対向するように調整される。これによって、第2受電電極と第1送電電極との容量が抑制される。こうして、電力伝送効率の低下が回避される。
【0016】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】この実施例の非接触電力電送システムに適用される送電装置の外観の一例を示す斜視図である。
図2】この実施例の非接触電力伝送システムに適用される受電装置の外観の一例を示す斜視図である。
図3】(A)は電極素材の一例を示す図解図であり、(B)は電極素材に切り欠きを形成して作製された送電側アクティブ電極の一例を示す図解図である。
図4】(A)は電極素材の他の一例を示す図解図であり、(B)は電極素材に開口を形成して作製された送電側パッシブ電極の一例を示す図解図である。
図5】受電側アクティブ電極および受電側パッシブ電極の一例を示す図解図である。
図6】送電装置および受電装置の間のサイズの相違の一例を示す図解図である。
図7】(A)は送電装置および受電装置の位置関係の一例を示す図解図であり、(B)は送電装置および受電装置の位置関係の他の一例を示す図解図である。
図8】(A)は送電装置および受電装置の位置関係のその他の一例を示す図解図であり、(B)は送電装置および受電装置の位置関係のさらにその他の一例を示す図解図である。
図9】(A)は送電装置および受電装置の位置関係の他の一例を示す図解図であり、(B)は送電装置および受電装置の位置関係のその他の一例を示す図解図である。
図10】この実施例の非接触電力伝送システムの構成の一例を示すブロック図である。
図11】送電装置に適用されるスイッチ回路の構成の一例を示す図解図である。
図12】送電装置に適用されるCPUの動作の一部を示すフロー図である。
図13】送電装置に適用されるCPUの動作の他の一部を示すフロー図である。
図14】(A)は送電側アクティブ電極の他の一例を示す図解図であり、(B)は送電側アクティブ電極のその他の一例を示す図解図である。
図15】他の実施例に適用される送電装置および受電装置の一例を示す図解図である。
図16】他の実施例に適用される送電装置の構成の一部を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
この実施例の非接触電力電送システムは、図1に示す送電装置10と図2に示す受電装置30とによって形成される。送電装置10は、送電側アクティブ電極E1および送電側パッシブ電極E2が設けられた板状の筐体CB1を有し、受電装置30は受電側アクティブ電極E3および受電側パッシブ電極E4が設けられた板状の筐体CB2を有する。より詳しくは、送電側アクティブ電極E1および送電側パッシブ電極E2は筐体CB1の上面に沿って設けられ、受電側アクティブ電極E3および受電側パッシブ電極E4は筐体CB2の上面に沿って設けられる。また、送電側アクティブ電極E1は、6つの部分電極E1_1〜E1_6によって形成される。
【0019】
送電側アクティブ電極E1は、図3(A)に示す電極素材EM1に基づいて作製される。電極素材EM1は、長辺および短辺がX方向およびY方向にそれぞれ延びる長方形の主面を有して、板状に形成される。ここで、電極素材EM1の厚みは、筐体CB1の厚みよりも格段に小さい。
【0020】
電極EM1には、各々が“W1”に相当する幅を有してY方向に延びる切り欠きCT1〜CT5が図3(B)に示すように形成される。切り欠きCT1〜CT5は、X方向に同じ距離を隔てて形成される。これによって、サイズが共通する短冊状の部分電極E1_1〜E1_6が得られる。部分電極E1_1〜E1_6の各々の主面は、X方向に延びる短辺とY方向に延びる長辺とを有し、短辺の長さは“X1”に相当する一方、長辺の長さは“Y1”に相当する。
【0021】
送電側パッシブ電極E2は、図4(A)に示す電極素材EM2に基づいて作製される。電極素材EM2は、長辺および短辺がX方向およびY方向にそれぞれ延びる長方形の主面を有して、板状に形成される。ここで、電極素材EM2の厚みもまた、筐体CB1の厚みよりも格段に小さい。また、長辺の長さは“X2a”に相当する一方、短辺の長さは“Y2a”に相当する。さらに、電極素材EM2の主面のサイズは筐体CB1の上面のサイズと一致する。
【0022】
電極素材EM2の中央に長方形の開口OP1を形成すると、図4(B)に示す送電側パッシブ電極E2が得られる。ここで、開口OP1をなす長方形の長辺および短辺はX方向およびY方向に延び、長辺の長さは“X2b”に相当する一方、短辺の長さは“Y2b”に相当する。また、開口OP1をなす長方形の短辺の長さは、電極部材EM1の主面をなす長方形の短辺の長さよりも大きく、開口OP1をなす長方形の長辺の長さは、電極部材EM1の主面をなす長方形の長辺の長さよりも大きい。
【0023】
図1に示すように、送電側アクティブ電極E1は筐体CB1の上面の中央に設けられる。また、送電側パッシブ電極E2は、筐体CB1の上面の外縁が送電側パッシブ電極E2の主面の外縁と一致するように筐体CB1の上面に設けられる。送電側アクティブ電極E1および送電側パッシブ電極E2のサイズは上述のとおりであるため、送電側アクティブ電極E1は、送電側パッシブ電極E2に設けられた開口OP1に収められる。
【0024】
図5を参照して、受電側アクティブ電極E3は、各辺がX方向またはY方向に延びる正方形の主面を有して、板状に形成される。ここで、各辺の長さは“X3”または“Y3”に相当する。また、受電側パッシブ電極E4は、短辺および長辺がX方向およびY方向にそれぞれ延びる長方形の主面を有して、板状に形成される。ここで、短辺の長さは“X4”に相当する一方、長辺の長さは“Y4”に相当し、短辺および長辺のいずれの長さも受電側アクティブ電極E3をなす正方形の各辺の長さよりも大きい。
【0025】
受電側パッシブ電極E4の主面のサイズは筐体CB2の上面のサイズと一致し、受電側パッシブ電極E4は筐体CB2の上面の外縁が送電側パッシブ電極E2の主面の外縁と一致するように筐体CB2の上面に平行な平面に設けられる。受電側アクティブ電極E3は、筐体CB2の上面の中央位置に対応して、受電側パッシブ電極E4の上に(つまり筐体CB2の外側に向かって)一定の距離を隔てて積層される。
【0026】
送電側アクティブ電極E1,送電側パッシブ電極E2,受電側アクティブ電極E3および受電側パッシブ電極E4のサイズが上述のように設定されるため、送電装置10および受電装置30は、図6に示すサイズ関係を示す。
【0027】
また、送電装置10の上に受電装置30を載置した状態を示す図7(A)〜図7(B),図8(A)〜図8(B)および図9(A)〜図9(B)から分かるように、筐体CB2の上面は筐体CB1の上面によって覆われるサイズを有する。また、送電側アクティブ電極E1および受電側アクティブ電極E3の各々のサイズは、筐体CB1の上面を筐体CB2の上面に対向させた特定状態で各上面に直交する方向から眺めて、受電側アクティブ電極E3が送電側アクティブ電極E1の外縁ないし輪郭内に収まるように調整される(外縁ないし輪郭は、図6において破線で定義)。また、上述した特定状態において、受電側パッシブ電極E4の一部は、切り欠きCT1〜CT5の一部と対向する。
【0028】
なお、特定状態は、筐体CB2の上面に直交する方向から眺めて、筐体CB2の上面が筐体CB1の上面の外縁ないし輪郭内に収まる位置関係を前提とする。
【0029】
また、受電側アクティブ電極E3の輪郭に割り当てられた2点間の最大距離は、切り欠きCT1〜CT5の各々の幅W1と部分電極E1_1〜E1_6の各々の主面をなす短辺の長さX1との和に相当する距離を上回る。さらに、受電側パッシブ電極E4の主面をなす長方形の短辺の長さX4は、送電側パッシブ電極E2に設けられた開口OP1をなす矩形の短辺の長さYb2よりも大きい。
【0030】
図10を参照して、送電装置10は直流電源12を含む。直流電源12は、端子T1およびT2のいずれか一方と接続されるスイッチSW1の入力端に直流電圧を印加する。端子T1は直接的にインバータ18と接続され、端子T2は抵抗R1を介してインバータ18と接続される。したがって、スイッチSW1が端子T1と接続されるときは直流電圧がインバータ18に供給され、スイッチSW1が端子T2と接続されるときは抵抗R1で電圧降下された電圧がインバータ18に供給される。
【0031】
インバータ18は、PWM発生回路14から出力されたPWM信号がHレベルを示す期間にオン状態となり、PWM発生回路14から出力されたPWM信号がLレベルを示す期間にオフ状態となる。インバータ18はまた、トランス20を形成する一次巻線Np1および二次巻線Ns1のうち、一次巻線Np1と接続される。
【0032】
したがって、インバータ18が上述の要領でオン/オフされると、二次巻線Ns1に交流電圧が励起される。ただし、二次巻線Ns1の巻き数は一次巻線Np1の巻き数よりも大きく、二次巻線Ns1に現われる交流電圧は一次巻線Np1に現われる交流電圧よりも高い値を示す。また、一次巻線Np1および二次巻線Ns1の各々に現われる交流電圧の周波数および高さはそれぞれ、PWM信号の周波数およびデューティ比に依存する。
【0033】
二次巻線Ns1の一方端はスイッチ回路SW2を介して送電側アクティブ電極E1と接続され、二次巻線Ns1の他方端は直接的に送電側パッシブ電極E2と接続される。図11に示すように、スイッチ回路SW2は、部分電極E1_1〜E1_6にそれぞれ割り当てられて択一的にオンされるスイッチSW2_1〜SW2_6によって形成される。したがって、二次巻線Ns1に励起された交流電圧は、部分電極E1_1〜E1_6のいずれか1つと送電側パッシブ電極E2とに印加される。
【0034】
受電側アクティブ電極E3およびパッシブ側受電電極E4には、電界結合によって交流電圧が励起される。励起される交流電圧は、送電側アクティブ電極E1および送電側パッシブ電極E2に印加された交流電圧の周波数に相当する周波数と電界結合度に依存する高さとを有する。
【0035】
こうして励起された交流電圧は、トランス32を形成する一次巻線Np2および二次巻線Ns2を介して負荷34に供給される。ただし、二次巻線Ns2の巻き数は一次巻線Np2の巻き数よりも小さく、負荷34に供給される交流電圧は受電側アクティブ電極E3およびパッシブ側受電電極E4に励起された交流電圧よりも低い値を示す。
【0036】
送電装置10に設けられたCPU16は、電界結合された受電装置30への給電を開始する際に、以下のようにしてスイッチSW2の設定とPWM信号の周波数を調整する。
【0037】
CPU16はまず、スイッチSW1の接続先を端子T2に接続し、PWM信号の周波数およびデューディ比を初期化する。PWM発生回路14は、初期の周波数およびデューディ比を有するPWM信号をインバータ18に与える。これによって、デューディ比および周波数に依存する高さおよび周波数を有する交流電圧がトランス20の二次巻線Ns1に励起される。
【0038】
CPU16は続いて、変数Kを“1”〜“6”の各々に設定し、スイッチSW2_1〜SW2_6のうちスイッチSW2_Kのみをオンする。PWM信号の周波数を掃引し、これと並行してインバータ18よりもトランス20側のインピーダンス特性を測定する。測定にあたっては、インバータ18の入力端の電圧が参照される。測定されたインピーダンス特性を参照して、極大値が既定範囲に収まるインピーダンス特性を示すときのスイッチSW2の接続状態と極大値に対応するPWM信号の周波数を探索する。スイッチSW2は探知された接続状態に設定され、PWM信号の周波数は探知された周波数に設定される。設定が完了すると、スイッチSW1を端子T1に接続する。これによって、受電装置30への給電が開始される。
【0039】
CPU16は、具体的には、図12図13に示すフロー図に従う処理を実行する。なお、このフロー図に対応する制御プログラムは、フラッシュメモリ16mに記憶される。
【0040】
図12を参照して、ステップS1ではスイッチSW1を端子T2に接続し、ステップS3ではPWM信号の周波数およびデューティ比を初期化する。PWM発生回路14は、設定された周波数およびデューディ比を有するPWM信号をインバータ18に与える。
【0041】
ステップS5では変数Kを“1”に設定し、ステップS7ではスイッチSW2_1〜SW2_6のうちスイッチSW2_Kのみをオンする。ステップS9ではPWM信号の周波数を掃引し、これと並行してインバータ18よりもトランス20側のインピーダンス特性を測定する。測定にあたっては、インバータ18の入力端の電圧が参照される。ステップS11では、測定されたインピーダンス特性を参照してインピーダンスの極大値を探索する。
【0042】
ステップS13では極大値が探知されたか否かを判別し、判別結果がNOであればステップS17に進む一方、判別結果がYESであればステップS15に進む。ステップS15では、探知された極大値が既定範囲に属するか否かを判別し、判別結果がNOであればステップS17に進む一方、判別結果がYESであればステップS25に進む。
【0043】
ステップS17では変数Kをインクリメントし、ステップS19では現時点の変数Kの値が“6”を上回るか否かを判別する。判別結果がNOであれば、そのままステップS7に戻る。一方、判別結果がYESであれば、ステップS21で既定時間だけ待機し、ステップS23で変数Kを“1”に設定し、その後にステップS7に戻る。
【0044】
ステップS25ではインピーダンスが極大値を示す周波数をPWM信号の周波数として設定する。設定が完了すると、ステップS27でスイッチSW1を端子T1に接続し、その後に処理を終了する。
【0045】
以上の説明から分かるように、送電装置10は、筐体CB1の上面に沿って設けられて交流電圧が印加される送電側アクティブ電極E1および送電側パッシブ電極E2を備える。また、受電装置30は、筐体CB2の上面に沿って設けられて送電側アクティブ電極E1および送電側パッシブ電極E2と電界結合される受電側アクティブ電極E3および受電側パッシブ電極E4を備える。
【0046】
ここで、送電側アクティブ電極E1および受電側アクティブ電極E3の各々のサイズは、筐体CB1の上面を筐体CB2の上面に対向させた特定状態で、各上面に直交する方向から眺めて、受電側アクティブ電極E3が送電側アクティブ電極E1の外縁内に収まるように調整される。また、送電側アクティブ電極E1は切り欠きCT1〜CT5によって部分電極E1_1〜E1_6に分割され、切り欠きCT1〜CT6の配置は上述の特定状態において受電側パッシブ電極E4の一部が切り欠きCT1〜CT6の一部と対向するように調整される。
【0047】
送電側アクティブ電極E1および受電側アクティブ電極E3のサイズを上述のように調整することで、受電装置30の相対位置を各上面に沿う方向に変動させたとき、送電側アクティブ電極E1と受電側アクティブ電極E3との結合容量の変動量は、相対位置の変動量に比べて抑制される。
【0048】
また、送電側アクティブ電極E1を切り欠きCT1〜CT5によって部分電極E1_1〜E1_6に分割し、かつ特定状態において受電側パッシブ電極E4の一部が切り欠きCT1〜CT5の一部と対向するように切り欠きCT1〜CT5の配置を調整することで、受電側パッシブ電極E4と送電側アクティブ電極E1との結合容量が抑制される。こうして、電力伝送効率の低下が回避される。
【0049】
なお、この実施例では、部分電極E1_1〜E1_6の各々を長方形状に形成するようにしているが、部分電極E1_1〜E1_6の各々の形状は長方形に限られるものではなく、図14(A)に示す平行四辺形または図14(B)に示すひょうたん形を採用するようにしてもよい。また、受電側アクティブ電極E3は正方形状に形成しているが、前述の関係を満たす限りにおいて、辺X3とY3の長さが異なる長方形状としてもよい。
【0050】
また、この実施例では、二次巻線Ns1の一方端を部分電極E1_1〜E1_6の1つと接続し、二次巻線Ns1の他方端を送電側パッシブ電極E2に接続するようにしている。しかし、二次巻線Ns1の一方端を部分電極E1_1〜E1_6の1つと接続し、二次巻線Ns1の他方端を部分電極E1_1〜E1_6の他の1つと接続するようにしてもよい。
【0051】
この場合、図15に示すように送電側パッシブ電極E2が筐体CB1から省かれ、送電装置10は図16に示すように構成される。
【0052】
図16によれば、スイッチ回路SW2は、スイッチSW2_11〜スイッチSW2_16によって形成される。スイッチSW2_11〜SW2_13の各々の接続先は、二次巻線Ns1の一方端,二次巻線Ns1の他方端および開放端の間で切り換えられる。また、スイッチSW2_14〜SW2_16の各々の接続先は、二次巻線Ns1の一方端,二次巻線Ns1の他方端およびグランドの間で切り換えられる。さらに、スイッチ回路SW2の接続状態は、CPU16によって制御される。
【0053】
これによって、スイッチSW2_11〜スイッチSW2_16の1つは二次巻線Nsの一方端と接続され、スイッチSW2_11〜スイッチSW2_16の他の1つは二次巻線Nsの他方端と接続され、残りのスイッチは開放端またはグランドと接続される。
【符号の説明】
【0054】
10 …送電装置
14 …PWM発生回路
16 …CPU
18 …インバータ
20,32 …トランス
E1〜E2 …送電電極
E3〜E4 …受電電極
図1
図2
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図16