特許第5794445号(P5794445)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5794445
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】高周波伝送線路の接続・固定方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 43/02 20060101AFI20150928BHJP
   H01R 12/62 20110101ALI20150928BHJP
【FI】
   H01R43/02 A
   H01R12/62
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-522522(P2014-522522)
(86)(22)【出願日】2013年6月12日
(86)【国際出願番号】JP2013066146
(87)【国際公開番号】WO2014002757
(87)【国際公開日】20140103
【審査請求日】2014年8月5日
(31)【優先権主張番号】特願2012-146426(P2012-146426)
(32)【優先日】2012年6月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100103056
【弁理士】
【氏名又は名称】境 正寿
(72)【発明者】
【氏名】加藤 登
【審査官】 山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−105104(JP,A)
【文献】 特開2006−100566(JP,A)
【文献】 実開平02−035320(JP,U)
【文献】 特開2011−071403(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 43/02
H01R 12/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性の基材の内部に設けられた信号電圧が印加される信号導体を含む線状導体を有し、かつ前記線状導体の位置に対応して前記基材に貫通孔が形成された高周波伝送線路を準備する第1工程、
前記貫通孔の一方端の位置を基板に設けられた基板側端子の位置に合わせた状態で前記高周波伝送線路を前記基板に配置する第2工程、および
前記貫通孔の他方端に付与された導電性接合材を流動化させ、前記貫通孔を介して前記導電性接合材を前記貫通孔の一方端側に到達させることで、前記基材の内部に設けられた信号導体を含む線状導体を前記基板側端子に電気的に接続する第3工程を備える、高周波伝送線路の接続・固定方法。
【請求項2】
前記第2工程において、前記高周波伝送線路を前記基板上に設けられたガイド部材に嵌合させて位置決めする、請求項1記載の接続・固定方法。
【請求項3】
前記貫通孔の内周面に金属膜が形成されている、請求項1または2記載の接続・固定方法。
【請求項4】
前記貫通孔の一方端および/または他方端の周囲に金属膜が形成されている、請求項1ないし3のいずれかに記載の接続・固定方法。
【請求項5】
前記基板は配線基板と前記配線基板上に設けられたガイド部材の絶縁体とを含み、
前記基板側端子は、前記ガイド部材の絶縁体上に設けられている、請求項1ないし4のいずれかに記載の接続・固定方法。
【請求項6】
前記線状導体は、グランド電圧が印加されるグランド導体をさらに含み、
前記基板側端子は、前記信号導体に接続された信号端子、および前記グランド導体に接続されたグランド端子を含む、請求項1ないし5のいずれかに記載の接続・固定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、高周波伝送線路の接続・固定方法に関し、特に高周波伝送線路に設けられた線状導体が基板の端子と電気的に接続された状態で高周波伝送線路を基板に固定する、高周波伝送線路の接続・固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高周波回路や高周波素子を接続するための高周波伝送線路としては、同軸ケーブルが代表的である。同軸ケーブルは、中心導体(信号線路導体)とその周囲に設けられたシールド導体とからなり、曲げや変形に強く、安価なことから、各種の高周波電子機器に多用されている。
【0003】
ところで、近年、移動体通信端末をはじめとする高周波電子機器の高機能化や小型化が活発に進められており、端末筺体内に同軸ケーブルを収容するためのスペースを十分に確保できない場合がある。そこで、たとえば特許文献1に開示されているように、薄い基材シートにて積層化されたトリプレート型のフラットケーブルが利用されることがある。このフラットケーブルは、2つのグランド導体間に信号線路導体を挟み込んだ構造を有していて、薄板状である。同軸ケーブルに比べて幅方向の寸法はやや大きいものの、厚み方向の寸法を小さくできるため、端末筺体に薄い隙間しかない場合に有用である。
【0004】
このようなフラットケーブルを用いてたとえばアンテナ素子をたとえば給電回路に接続する場合、その接続にはコネクタが利用される。すなわち、ケーブルの一端に設けられたオス型コネクタとアンテナ素子の一端に接続されたメス型コネクタとを嵌合する一方、ケーブルの他端に設けられたオス型コネクタと給電回路に接続されたメス型コネクタとを嵌合することによって、フラットケーブルを介して、アンテナ素子を給電回路に接続することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−71403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、オス型コネクタやメス型コネクタは、金属薄板に折り曲げ加工を施し、これを樹脂モールドする等、複雑な製造プロセスを必要とするため、小型で高精度のものを作るのが難しく、高価である。また、コネクタをフラットケーブルに搭載するための実装工程も必要となり、コネクタが小型化するほど、その位置精度のバラツキを抑えるのが難しくなる。
【0007】
それゆえに、この発明の主たる目的は、信頼性の高い接続構造を簡易な工程で実現することができる、高周波伝送線路の接続・固定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に従う高周波伝送線路の接続・固定方法は、絶縁性の基材(54:実施例で相当する参照符号。以下同じ)の内部に設けられた信号電圧が印加される信号導体(50)を含む線状導体(50, 52a, 52b)を有しかつ線状導体の位置に対応して基材に貫通孔(HL_S, HL_G1, HL_G2)が形成された高周波伝送線路(40)を準備する第1工程、貫通孔の一方端の位置を基板(36, 12)に設けられた基板側端子(22, 24a, 24b, 14, 16a, 16b)の位置に合わせた状態で高周波伝送線路を基板に配置する第2工程、および貫通孔の他方端に付与された導電性接合材(PS1)を流動化させ、貫通孔を介して導電性接合材を貫通孔の一方端側に到達させることで、基材の内部に設けられた信号導体を含む線状導体を基板側端子に電気的に接続する第3工程を備える。
【0009】
好ましくは、第2工程において、高周波伝送線路を基板上に設けられたガイド部材(36)に嵌合させて位置決めする。好ましくは、貫通孔の内周面に金属膜(EL_S, EL_G1, EL_G2)が形成されている。
【0010】
好ましくは、貫通孔の一方端および/または他方端の周囲に金属膜(EL_S, EL_G1, EL_G2)が形成されている。
【0011】
好ましくは、基板は配線基板(12)と配線基板上に設けられたガイド部材(20)の絶縁体(36)とを含み、基板側端子は、ガイド部材の絶縁体上に設けられている。
【0012】
好ましくは、線状導体は、グランド電圧が印加されるグランド導体(52a, 52b)を含み、基板側端子は、信号導体に接続された信号端子(22, 14)、およびグランド導体に接続されたグランド端子(24a, 24b, 14a, 14b)を含む。
【発明の効果】
【0013】
通孔の他方端に設けられた導電性接合材は、貫通孔の一方端と基板端子とを位置合わせした状態で高周波伝送線路を基板に配置した後に流動化される。流動化された導電性接合材は貫通孔の一方端側に到達し、これによって基材に設けられた線状導体が基板端子と電気的に接続される。これによって、信頼性の高い接続構造を簡易な工程で実現できる。
【0014】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】この実施例に適用されるプリント配線板を示す斜視図である。
図2】(A)はこの実施例に適用されるガイド部材を示す斜視図であり、(B)は(A)に示すガイド部材のA−A断面図である。
図3】(A)はこの実施例に適用される高周波伝送線路を斜め上から眺めた状態を示す斜視図であり、(B)はこの実施例に適用される高周波伝送線路を斜め下から眺めた状態を示す斜視図である。
図4図3(A)〜図3(B)に示す高周波伝送線路のB−B断面図である。
図5図3(A)〜図3(B)に示す高周波伝送線路を分解した状態の一例を示す図解図である。
図6】(A)はガイド部材をプリント配線板に実装した状態の一例を示す斜視図であり、(B)は(A)に示す実装構造のC−C断面図である。
図7】(A)は高周波伝送線路をガイド部材に装着する工程の一部を示す図解図であり、(B)は(A)に示す構造のD−D断面図である。
図8】(A)は高周波伝送線路をガイド部材に装着する工程の他の一部を示す図解図であり、(B)は(A)に示す構造のE−E断面図である。
図9】(A)はこの実施例の高周波伝送線路,ガイド部材およびプリント配線板を収納した携帯通信端末の一例を示す上面図であり、(B)は(A)に示す通信端末の要部断面図である。
図10】(A)は高周波伝送線路の製造工程の一部を示す図解図であり、(B)は高周波伝送線路の製造工程の他の一部を示す図解図であり、(C)は高周波伝送線路の製造工程のその他の一部を示す図解図である。
図11】(A)は他の実施例において高周波伝送線路をプリント配線板に固定する工程の一部を示す図解図であり、(B)は(A)に示す状態のF−F断面図である。
図12】(A)は他の実施例において高周波伝送線路をプリント配線板に固定する工程の他の一部を示す図解図であり、(B)は(A)に示す状態のG−G断面図である。
図13】(A)はその他の実施例において高周波伝送線路をプリント配線板に固定する工程の一部を示す図解図であり、(B)は(A)に示す状態のF−F断面図である。
図14】(A)はその他の実施例において高周波伝送線路をプリント配線板に固定する工程の他の一部を示す図解図であり、(B)は(A)に示す状態のG−G断面図である。
図15】(A)はさらにその他の実施例において高周波伝送線路をプリント配線板に固定する工程の一部を示す図解図であり、(B)は(A)に示す状態のF−F断面図である。
図16】(A)はさらにその他の実施例において高周波伝送線路をプリント配線板に固定する工程の他の一部を示す図解図である。
図17】他の実施例に適用される高周波伝送線路を分解した状態の一例を示す図解図である。
図18】(A)は図17に示す高周波伝送線路とガイド部材およびプリント配線板を収納した携帯通信端末の一例を示す上面図であり、(B)は(A)に示す通信端末の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1を参照して、この実施例のプリント配線板10は、各々が長方形をなす上面および下面を有する絶縁性(誘電性)の配線基板12を含む。配線基板12の上面または下面をなす長方形の長辺および短辺はそれぞれX軸およびY軸に沿って延び、配線基板12の厚みはZ軸に沿って延びる。
【0017】
配線基板12の内部には、配線導体およびグランド導体が埋め込まれる(いずれも図示せず)。また、配線基板12の上面には、配線導体と電気的に接続された単一の信号端子14が設けられ、さらにグランド導体と電気的に結合された2つのグランド端子16aおよび16bが設けられる。信号端子14,グランド端子16a,16bのいずれも、各々が長方形をなす上面および下面を有して板状に形成される。
【0018】
ここで、信号端子14,グランド端子16a,16bは、各々の上面または下面をなす長方形の長辺がX軸に沿い、かつグランド端子16aおよび16bがY軸方向において信号端子14を挟む姿勢で、配線基板12の上面の既定位置に設けられる。
【0019】
図2(A)および図2(B)を参照して、ガイド部材20は、絶縁体(誘電体)36を素体として、X軸に沿う長さL1とY軸に沿う幅W1とZ軸に沿う厚みT1とを有する。絶縁体36の上面中央には、凹みDT1が形成される。凹みDT1は、X軸に沿う長さL1とY軸に沿う幅W2とZ軸に沿う深さD1とを有する。ここで、幅W2は幅W1よりも小さく、深さD1は厚みT1よりも小さい。凹みDT1の底面つまり“T1−D1”に相当する高さ位置に形成された平坦面には、単一の信号端子22と2つのグランド端子24aおよび24bとが設けられる。
【0020】
信号端子22,グランド端子24a,24bのいずれも、各々が長方形をなす上面および下面を有して板状に形成される。また、信号端子22,グランド端子24a,24bは、各々の上面または下面をなす長方形の長辺がX軸に沿い、かつグランド端子24aおよび24bがY軸方向において信号端子22を挟む姿勢で、凹みDT1の底面に設けられる。
【0021】
なお、信号端子22,グランド端子24a,24bの各々の上面または下面をなす長方形の短辺の長さは、凹みDT1の幅である“W2”よりも格段に短く、さらにこれらの短辺の長さの合計もまた幅W2よりも短い。したがって、信号端子22,グランド端子24a,24bは、互いに接触することなく凹みDT1の底面に設けられる。
【0022】
絶縁体36の下面には、単一の信号端子26と2つのグランド端子28aおよび28bとが設けられる。信号端子26,グランド端子28a,28bもまた、各々が長方形をなす上面および下面を有して板状に形成される。また、信号端子26は信号端子22の真下に設けられ、グランド端子28aはグランド端子24aの真下よりもY軸方向の正側に設けられ、そしてグランド端子28bはグランド端子24bの真下よりもY軸方向の負側に設けられる。
【0023】
絶縁体36は、複数の絶縁シートを積層しかつ一体化することで得られるものであり、その内部には、板状導体30aおよび30bが埋め込まれる。板状導体30aは、Z軸方向から眺めてグランド端子24aおよび28aに部分的に重なる位置に埋め込まれる。また、板状導体30bは、Z軸方向から眺めてグランド端子24bおよび28bに部分的に重なる位置に埋め込まれる。
【0024】
信号端子22および26は、ビアホール導体34を介して互いに接続される。また、グランド端子24aはビアホール導体321aを介して板状導体30aと接続され、板状導体30aはビアホール導体322aを介してグランド端子28aと接続される。さらに、グランド端子24bはビアホール導体321bを介して板状導体30bと接続され、板状導体30bはビアホール導体322bを介してグランド端子28bと接続される。
【0025】
図3(A)〜図3(B)を参照して、高周波伝送線路(フラットケーブル)40は、可撓性を有する薄板状の絶縁体(誘電体)54を素体として、X軸に沿う任意の長さとY軸に沿う幅W2とZ軸に沿う厚みT2とを有する。なお、厚みT2は、上述の深さD1よりも僅かに小さい。
【0026】
絶縁体54の上面には、幅W2とほぼ同じ幅を有してX軸方向に延びるレジスト層46が設けられる。絶縁体54の下面にも、幅W2とほぼ同じ幅を有してX軸方向に延びるレジスト層48が設けられる。ただし、レジスト層46は絶縁体54のX軸方向における正側の端部まで延びる一方、レジスト層48は絶縁体54のX軸方向における正側の端部よりも手前まで延びるに留まる。このため、絶縁体54の下面のうち、レジスト層48のX軸方向における正側の端部から絶縁体54のX軸方向における正側の端部までの領域は、外部に露出する。
【0027】
この露出領域には、信号端子42とグランド端子44aおよび44bとが設けられる。信号端子42,グランド端子44a,44bもまた、各々が長方形をなす上面および下面を有して板状に形成される。また、信号端子42,グランド端子44a,44bは、各々の上面または下面をなす長方形の長辺がX軸に沿い、かつグランド端子44aおよび44bがY軸方向において信号端子42を挟む姿勢で、露出領域に設けられる。
【0028】
また、この露出領域には、高周波伝送線路40の上面まで貫通する3つの貫通孔HL−S,HL−G1,HL−G2が形成される。貫通孔HL−Sは信号端子42を貫く位置に形成され、貫通孔HL−G1はグランド端子44aを貫く位置に形成され、貫通孔HL−G2はグランド端子44bを貫く位置に形成される。なお、貫通孔HL−S,HL−G1,HL−G2については後段で詳述する。
【0029】
絶縁体54のX軸方向における正側の端部の近傍には、Y軸方向の正側の側面から突出する板状の凸部CV1と、Y軸方向の負側の側面から突出する板状の凸部CV2とが形成される。凸部CV1およびCV2もまた可撓性の絶縁体(誘電体)であり、絶縁体54と一体的に成形される。
【0030】
凸部CV1およびCV2のいずれも、各々が矩形をなす上面および下面を有し、矩形の各辺はX軸方向またはY軸方向に沿って延びる。また、凸部CV1およびCV2の各々の厚みは“T2”に相当し、凸部CV1およびCV2の上面は絶縁体54の上面と面一とされ、凸部CV1およびCV2の下面は絶縁体54の下面と面一とされる。
【0031】
凸部CV1のX軸方向における正側の側面から絶縁体54のX軸方向における正側の側面までの距離は、“L1”に相当する。凸CV2のX軸方向における正側の側面から絶縁体54のX軸方向における正側の側面までの距離もまた、“L1”に相当する。
【0032】
高周波伝送線路40の分解図を図5に示す。絶縁体54,凸部CV1,CV2は、可撓性を有する複数の絶縁シート(誘電体シート)SH1〜SH3を積層して作製される。絶縁シートSH1〜SH3は互いに同じサイズを有し、各シートの上面および下面は略十字をなす。ただし、絶縁シートSH1の下面にはグランド層44が形成され、絶縁シートSH2の上面には信号を伝送するための線状導体50が形成され、そして絶縁シートSH3の上面にはグランド層52および補強層58が形成される。
【0033】
グランド層44は、上述したグランド端子44aおよび44bと、上面および下面が長方形をなす板状のグランド導体44cとによって一体的に形成される。グランド導体44cのZ軸方向における厚みはグランド端子44aおよび44bの各々のZ軸方向における厚みと一致し、グランド導体44cの上面はグランド端子44aおよび44bの上面と面一とされ、グランド導体44cの下面はグランド端子44aおよび44bの下面と面一とされる。グランド導体44cはレジスト層48によって完全に覆われ、グランド端子44aおよび44bはレジスト層48によって部分的に覆われる。
【0034】
線状導体50は、図3(A)に示す幅W2よりも格段に小さい幅を有して、絶縁シートSH2の上面のY軸方向中央をX軸方向に延びる。線状導体50の端部と信号端子42とは、図示しない導体によって電気的に接続される。
【0035】
グランド層52は、幅W2よりも格段に小さい幅を有してX軸方向に平行に延びる2つの線状導体52aおよび52bと、Y軸方向に平行に延びて線状導体52aおよび52bと接続される複数の線状導体52c,52c,…とによって形成される。すなわち、グランド層52は、線状導体50に沿って開口部とブリッジ部とを交互に有する構造となっている。線状導体52a,52bおよび52cは共通の厚みを有し、各々の上面は面一とされ、各々の下面も面一とされる。
【0036】
補強層56は板状に形成され、その主面は長方形をなす。また、補強層56は、グランド層52と接触しないように、絶縁シートSH2の端部に設けられる。グランド層52および補強層56は、レジスト層46によって完全に覆われる。
【0037】
高周波伝送線路40は、これらの素材を積層した状態で熱圧着することで作製される。作製された高周波伝送線路40の端部のX軸に直交する断面は、図4に示すように、線状導体50がグランド層52寄りにオフセット配置された構造を有する。
【0038】
また、図4から分かるように、線状導体50および補強層56は信号端子42の真上に存在する。同様に、線状導体52aはグランド端子44aの真上に存在し、線状導体52bはグランド端子44bの真上に存在する。したがって、貫通孔HL−Sは信号端子42に加えて線状導体50および補強層56を貫き、貫通孔HL−G1はグランド端子44aに加えて線状導体52aを貫き、そして貫通孔HL−G2はグランド端子44bに加えて線状導体52bを貫く。
【0039】
さらに、貫通孔HL−Sの内周面には導電膜EL−Sが形成され、貫通孔HL−G1の内周面には導電膜EL−G1が形成され、貫通孔HL−G2の内周面には導電膜EL−G2が形成される。補強層56,線状導体50および信号端子42は導電膜EL−Sによって互いに接続され、線状導体52aおよびグランド端子44aは導電膜EL−G1によって互いに接続され、線状導体52bおよびグランド端子44bは導電膜EL−G2によって互いに接続される。
【0040】
貫通孔HL−S,HL−G1,HL−G2のいずれについても、レジスト層46に形成された内径は絶縁体54に形成された内径よりも僅かに大きく、この内径の分だけ補強層56,線状導体52a,52bが絶縁体54の上面側に露出する。一方、信号端子42,グランド端子44a,44bは、当初から絶縁体54の下面側に露出する。
【0041】
導電膜EL−S,EL−G1,EL−G2は、絶縁体22の上面側に露出した補強層56,線状導体52a,52bを覆い、さらに絶縁体22の下面側に露出した信号端子42,グランド端子44a,44bを部分的に覆う。
【0042】
ガイド部材20は図6(A)〜図6(B)に示す要領でプリント配線板10に実装され、高周波伝送線路40は図7(A)〜図7(B),図8(A)〜図8(B)に示す要領でガイド部材20に固定される。
【0043】
図6(A)〜図6(B)を参照して、ガイド部材20は、プリント配線板10に設けられた信号端子14,グランド端子16a,16bの位置に対応して、半田ペースト等の導電性接合材72によってプリント配線板10に固定される。この結果、ガイド部材20に設けられた信号端子26,グランド端子28a,28bは、プリント配線板10に設けられた信号端子14,グランド端子16a,16bとそれぞれ接続される。
【0044】
図7(A)〜図7(B)を参照して、高周波伝送線路40の端部は、ガイド部材20に形成された凹みDT1に嵌合される。高周波伝送線路40に設けられた凸部CV1およびCV2は、高周波伝送線路40とガイド部材20との相対位置を決めるべく、ガイド部材20を形成する絶縁体36と係合する。具体的には、凸部CV1およびCV2のX軸方向における正側の側面が、絶縁体36のX軸方向における負側の側面と当接する。この結果、高周波伝送線路40に設けられた信号端子42,グランド端子44a,44bが、ガイド部材20に設けられた信号端子22,グランド端子24a,24bとそれぞれ接続される。
【0045】
貫通孔HL−S,HL−G1,HL−G2の上面側端部には、半田ペースト等の導電性接合材PS1がプリントされる。プリントの後に高周波伝送線路40を加熱すると、導電性接合材PS1が溶融する。溶融した導電性接合剤PS1は、表面張力または毛細管現象によって貫通孔HL−S,HL−G1,HL−G2の下面側端部に達する。この結果、図8(A)〜図8(B)から分かるように、補強層56,線状導体50および信号端子42が信号端子22と接続され、線状導体52aおよびグランド端子44aがグランド端子24aと接続され、線状導体52bおよびグランド端子44bがグランド端子24bと接続される。
【0046】
なお、図9(A)〜図9(B)に示すように、ガイド部材20が搭載されたプリント配線板10は、たとえば携帯通信端末80の筐体CB1に収められる。高周波伝送線路40は、上述の要領でプリント配線板10に実装される。これによって、プリント配線板10に実装された回路ないし素子が高周波伝送線路40を介して互いに接続される。高周波伝送線路40は薄型でかつ可撓性を有するため、筐体CB1内に薄い隙間しか確保できない場合に特に有用である。
【0047】
信号線路導体40は、図10(A)〜図10(C)に示す要領で作成される。まず、貫通孔HL−S,HL−G1,HL−G2が未形成の状態の高周波伝送線路40が準備され(図10(A)参照)、次に貫通孔HL−S,HL−G1,HL−G2が形成される(図10(B)参照)。貫通孔HL−Sは、レジスト層46,補強層56,線状導体50および信号端子42を貫き、貫通孔HL−G1はレジスト層46,線状導体52aおよびグランド端子44aを貫き、そして貫通孔HL−G2はレジスト層46,線状導体52bおよびグランド端子44bを貫く。
【0048】
続いて、導電膜EL−Sが貫通孔HL−Sの内周面と貫通孔HL−Sの両端周辺とに形成され、導電膜EL−G1が貫通孔HL−G1の内周面と貫通孔HL−G1の両端周辺とに形成され、そして導電膜EL−G2が貫通孔HL−G2の内周面と貫通孔HL−G2の両端周辺とに形成される(図10(C)参照)。
【0049】
以上の説明から分かるように、高周波伝送線路40は、絶縁体54を基材とし、信号を伝送するための線状導体50およびグランド層44,52を有する。貫通孔HL−Sは線状導体50の位置に対応して形成され、HL−G1,HL−G2はグランド層52を形成する線状導体52a,52bの位置に対応して形成される。
【0050】
高周波伝送線路40は、貫通孔HL−S,HL−G1,HL−G2の下端の位置がコネクタ36に設けられた信号端子22,24a,24bの位置に合わせられた状態でコネクタ36に配置される。貫通孔HL−S,HL−G1,HL−G2の上端に設けられた導電性接合材PS1は、加熱によって流動化され、表面張力または毛細管現象によって貫通孔HL−S,HL−G1,HL−G2の下端に達する。線状導体50,52a,52bは、信号端子22,24a,24bと電気的に接続される。これによって、信頼性の高い接続構造を簡易な工程で実現できる。
【0051】
なお、導電性接合材PS1は、図10(C)に示す工程に続いて貫通孔HL−S,HL−G1,HL−G2の上面側端部にプリントするようにしてもよい。
【0052】
図11(A)〜図11(B)を参照して、他の実施例に適用されるガイド部材20は、上面および下面の各々が長方形をなす板状の絶縁体(誘電体)36cを図2(A)〜図2(B)に示す絶縁体36の上部に設けた構造を有する。絶縁体36cは、X軸方向に延びる長さL1とY軸方向に延びる幅W1とZ軸方向に延びる厚みT3とを有し、絶縁体36cの側面が絶縁体36の側面と面一となるように絶縁体36に積層される。この結果、図2(A)〜図2(B)に示す凹みDT1に相当する大きさを有する貫通孔HL1がガイド部材20に形成される。
【0053】
絶縁体36cの上面には、Y軸方向に並びかつ絶縁体36cの下面にまで貫通する貫通孔HL−CS,HL−CG1,HL−CG2が形成される。また、貫通孔HL−CSの端部周辺および内周面には導電膜EL−CSが形成され、貫通孔HL−CG1の端部周辺および内周面には導電膜EL−CG1が形成され、そして貫通孔HL−CG2の端部周辺および内周面には導電膜EL−CG2が形成される。
【0054】
高周波伝送線路40の端部が貫通孔HL1に嵌合されたとき、貫通孔HL−CSの下端は貫通孔HL−Sの上端と対向し、貫通孔HL−CG1の下端は貫通孔HL−G1の上端と対向し、そして貫通孔HL−CG2の下端は貫通孔HL−G2の上端と対向する。また、貫通孔HL−CS,HL−CG1,HL−CG2の上端には半田ペースト等の導電性接合材PS2が設けられ、上述した導電性接合材PS1は省かれる。
【0055】
高周波伝送線路40に設けられた凸部CV1およびCV2は、高周波伝送線路40とガイド部材20との相対位置を決めるべく、ガイド部材20を形成する絶縁体36と係合する。具体的には、凸部CV1およびCV2のX軸方向における正側の側面が、絶縁体36のX軸方向における負側の側面と当接する。この結果、高周波伝送線路40に設けられた信号端子42,グランド端子44a,44bが、ガイド部材20に設けられた信号端子22,グランド端子24a,24bとそれぞれ対向する。
【0056】
この状態で、ガイド部材20を加熱すると、導電性接合材PS2が溶融する。溶融した導電性接合剤PS2は、表面張力または毛細管現象によって貫通孔HL−CS,HL−CG1,HL−CG2の下端に達し、さらに貫通孔HL−S,HL−G1,HL−G2を経て信号端子22,グランド端子24a,24bに達する。この結果、図12(A)〜図12(B)から分かるように、補強層56,線状導体50および信号端子42が信号端子22と接続され、線状導体52aおよびグランド端子44aがグランド端子24aと接続され、線状導体52bおよびグランド端子44bがグランド端子24bと接続される。
【0057】
図13(A)〜図13(B)を参照して、その他の実施例では、ガイド部材20が省略され、高周波伝送線路20はプリント配線板10に直接実装される。高周波伝送線路20は、貫通孔HL−S,HL−G1,HL−G2の下端が配線基板12に設けられた信号端子14,グランド端子16a,16bと対向するようにプリント配線板10に載置される。
【0058】
この状態で導電性接合材PS1を貫通孔HL−S,HL−G1,HL−G2の上面側端部にプリントし、プリントの後に高周波伝送線路40を加熱すると、導電性接合材PS1が溶融し、表面張力または毛細管現象によって貫通孔HL−S,HL−G1,HL−G2の下端に達する。この結果、図14(A)〜図14(B)から分かるように、補強層56,線状導体50および信号端子42が信号端子14と接続され、線状導体52aおよびグランド端子44aがグランド端子16aと接続され、線状導体52bおよびグランド端子44bがグランド端子16bと接続される。
【0059】
図15(A)〜図15(B)を参照して、さらにその他の実施例では、ガイド部材20が省略され、プリント配線板10に設けられた信号端子14,グランド端子16a,16bの長さがX軸方向の正側に延長される。高周波伝送線路20は、プリント配線板10に直接実装される。高周波伝送線路20が実装された後も、信号端子14,グランド端子16a,16bは部分的に外部に露出する。
【0060】
高周波伝送線路20は、貫通孔HL−S,HL−G1,HL−G2の下端が配線基板12に設けられた信号端子14,グランド端子16a,16bと対向するようにプリント配線板10に載置される。
【0061】
この状態で導電性接合材PS1を貫通孔HL−S,HL−G1,HL−G2の上面側端部にプリントし、プリントの後に高周波伝送線路40を加熱すると、導電性接合材PS1が溶融し、表面張力または毛細管現象によって貫通孔HL−S,HL−G1,HL−G2の下端に達する。下端に達した導電性接合材PS1は、信号端子14,グランド端子16a,16bの上面を長さ方向に沿って移動し、高周波伝送線路40のX軸方向における端部から迫り出す(図16参照)。
【0062】
こうして迫り出した導電性接合材PS1を視認することで、すなわち外観検査で補強層56,線状導体50および信号端子42が信号端子14と接続され、線状導体52aおよびグランド端子44aがグランド端子16aと接続され、線状導体52bおよびグランド端子44bがグランド端子16bと接続されたことを確認することができる。
【0063】
図17を参照して、他の実施例に適用される高周波伝送線路40は、貫通孔HL−G1およびHL−G2がX軸に沿って等間隔で形成される。貫通孔HL−G1はグランド層52を形成する線状導体52aを貫く位置に形成され、貫通孔HL−G2はグランド層52を形成する線状導体52bを貫く位置に形成される。上述と同様、貫通孔HL−G1の端部周辺および内周面には導電膜EL−G1が形成され、貫通孔HL−G2の端部周辺および内周面には導電膜EL−G2が形成される。
【0064】
図18(A)〜図18(B)に示すように、ガイド部材20が搭載されたプリント配線板10は、たとえば携帯通信端末80の筐体CB1に収められる。高周波伝送線路40は、上述の要領でプリント配線板10に実装される。プリント配線板10は、高周波伝送線路40の長さ方向中央部の下側にも設けられる。等間隔で形成された貫通孔HL−G1,HL−G2は、このプリント配線板10に設けられたグランド端子16aおよび16bと対向する。
【0065】
この状態で導電性接合材PS1を貫通孔HL−G1,HL−G2の上面側端部にプリントし、プリントの後に高周波伝送線路40を加熱すると、導電性接合材PS1が溶融し、表面張力または毛細管現象によって貫通孔HL−G1,HL−G2の下端に達する。この結果、線状導体52aおよびグランド端子44aがグランド端子16aと接続され、線状導体52bおよびグランド端子44bがグランド端子16bと接続される。
【0066】
なお、上述した絶縁体36および54はいずれも、ポリイミドや液晶ポリマーなどの可撓性を有する熱可塑性樹脂によって構成される。熱可撓性樹脂で構成された絶縁シートSH1〜SH3は熱圧着時にガスを発生するため、このガスを逃がすべく複数の微小な孔をグランド層44に設けるようにしてもよい。
【0067】
さらに、信号端子14,22,26,42、グランド端子16a〜16b,24a〜24b、グランド層44,52、線状導体50は、銀や銅を主成分とする比抵抗の小さな金属材料、好ましくは金属箔により作製される。
【0068】
また、高周波伝送線路40を形成する絶縁体54の厚みは、100〜300μmの範囲で調整される。好ましくは、この厚みは200μmである。さらに、高周波伝送線路40に設けられた線状導体50の線幅は、100〜500μmの範囲で調整される。好ましくは、線幅は240μmである。また、グランド層52を形成する線状導体52a〜52cの各々の線福は、25〜200μmの範囲で調整される。好ましくは、これらの線幅は100μmである。さらに、線状導体52cの間の距離は、1000〜10000μmの範囲で調整される。好ましくは、この距離は、2500μmである。ガイド部材20のサイズは、このような高周波伝送線路40のサイズに適合するように調整される。
【0069】
さらに、上述のいずれの実施例においても、高周波伝送線路40に設けられた信号端子42,グランド端子44a〜44bは、導電性接合材を介して、プリント配線板10に設けられた信号端子14,グランド端子16a〜16bと垂直に接続される(たとえば図16参照)。したがって、たとえば50Ωの特性インピーダンスを示すように高周波伝送線路40を設計し、プリント配線板10に設けられた内部パターン,信号端子14,グランド端子16a〜16bを50Ω系で設計した場合、線状導体50,グランド層44,52によって形成されるTEM波の乱れが小さくなり、信号ロスを低減することができる。
【0070】
また、たとえば図16を参照して、高周波伝送線路40に設けられた線状導体50から補強層56に向かって延びる一部の導電性接合材は、オープンスタブとして位置付けられる。ただし、上述のいずれの実施例においても、線状導体50はZ軸方向において補強層56寄りの位置に設けられる。つまり、高周波伝送線路40をプリント配線板10に実装したとき、補強層56から線状導体50までの距離は、プリント配線板10の上面から線状導体50までの距離よりも短くなる。これによって、高周波伝送線路40の周波数特性の劣化を抑えることができる。
【符号の説明】
【0071】
10 …プリント配線板
20 …ガイド部材
40 …高周波伝送線路
14,22,42 …信号端子
16a,16b,24a,24b,44a,44b …グランド端子
36,54 …絶縁体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
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図11
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