特許第5794487号(P5794487)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5794487
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】消泡装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 19/00 20060101AFI20150928BHJP
【FI】
   B01D19/00 G
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-21780(P2011-21780)
(22)【出願日】2011年2月3日
(65)【公開番号】特開2012-161710(P2012-161710A)
(43)【公開日】2012年8月30日
【審査請求日】2014年1月29日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089886
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 雅雄
(72)【発明者】
【氏名】石田 定久
(72)【発明者】
【氏名】中村 友邦
【審査官】 神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−298962(JP,A)
【文献】 特開2007−090297(JP,A)
【文献】 実開平05−022092(JP,U)
【文献】 特開昭50−113044(JP,A)
【文献】 特開2008−127914(JP,A)
【文献】 特開昭62−049009(JP,A)
【文献】 実開昭51−125993(JP,U)
【文献】 実公昭41−009240(JP,Y1)
【文献】 実開昭56−031803(JP,U)
【文献】 特開昭51−028261(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 17/00−17/12
B01D 19/00−19/04
C02F 1/40
E02B 1/00−9/08
F15D 1/00−1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水口より排水される際に発生する泡を消す消泡装置において、
前記排水口から放水方向に向けた放水路を備え、該放水路には前記排水口より下流側に消泡用構造体収容部が形成され、該消泡用構造体収容部に、繊維状材を絡み合わせて形成された通水性素材により両端が開口した筒状に形成された複数の消泡用筒材を、その長さ方向を放水方向に向けて消泡用構造体収容部の幅方向に互いに隣接して並べるとともに上下方向多段配置に組み合せて形成されてなる消泡用構造体を収容し、前記排水口より前記消泡用構造体を通して排水されるようにしたことを特徴としてなる消泡装置。
【請求項2】
前記消泡用構造体収容部は、上流側より下流側の幅が広く形成され、前記消泡用構造体は、上流側端面の断面積より下流側端面の断面積が広く形成された請求項1に記載の消泡装置。
【請求項3】
前記消泡用構造体収容部は、前記消泡用構造体の外側を覆う保持用籠状具を備え、該保持用籠状具を前記放水路に固定させた請求項1又は2に記載の消泡装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火力・原子力発電所や工場等の排水を場外に放出する際に生じる泡を消す消泡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、火力・原子力発電所や製鉄所のように大量の冷却水等を必要とする施設においては、その施設を海に近い場所に建設し、海より汲み上げた海水を冷却水等として使用した後、その海水を海へ排水するようにしている。
【0003】
このような海水循環系では、排水口より海水が放出される際に空気と混合して多くの泡が発生し、このような泡は、水上に浮き上がるまでの過程において水中の有機物や疎水性粒子を吸着して変色することがあり、また、水上に浮上しても消滅せずに沖合まで流れて行くことがあった。
【0004】
そこで、このような泡を拡散させないようにするために、排水口の出口部付近を消泡用フェンス等により取り囲み、泡の拡散範囲を制限する方法(例えば、特許文献1)や、泡に消泡剤を散布する方法(例えば特許文献2)、或いは散水を吹きかけて泡を消滅させる方法(例えば特許文献3)等が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−194583号公報
【特許文献2】特開2000−342905号公報
【特許文献3】特開平09−276745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上述した如き消泡用フェンス等を使用した従来の技術では、消泡用フェンスとして使用する汚濁防止膜等を設置するために広いスペースを確保しなければならず、また、その管理が煩雑であり、特に台風等の災害発生時には汚濁防止膜を一時撤去し、その後復旧作業をしなければならないという問題があった。
【0007】
一方、従来の消泡剤やシャワーを使用した技術では、泡の発生している間継続して散布作業を行わなければならず、管理が煩雑でコストが嵩むという問題があった。
【0008】
本発明は、このような従来の問題に鑑み、安価且つ管理が容易で設置スペースの限られた場所にも設置できる消泡装置の提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の如き従来の問題を解決するための請求項1に記載の発明の特徴は、排水口より排水される際に発生する泡を消す消泡装置において、前記排水口から放水方向に向けた放水路を備え、該放水路には前記排水口より下流側に消泡用構造体収容部が形成され、該消泡用構造体収容部に、繊維状材を絡み合わせて形成された通水性素材により両端が開口した筒状に形成された複数の消泡用筒材を、その長さ方向を放水方向に向けて消泡用構造体収容部の幅方向に互いに隣接して並べるとともに上下方向多段配置に組み合せて形成されてなる消泡用構造体を収容し、前記排水口より前記消泡用構造体を通して排水されるようにしたことにある。
【0010】
請求項2に記載の発明の特徴は、請求項1の構成に加え、前記消泡用構造体収容部は、上流側より下流側の幅が広く形成され、前記消泡用構造体は、上流側端面の断面積より下流側端面の断面積が広く形成されたことにある。
【0011】
請求項3に記載の発明の特徴は、請求項1又は2の構成に加え、前記消泡用構造体収容部は、前記消泡用構造体の外側を覆う保持用籠状具を備え、該保持用籠状具を前記放水路に固定させたことにある。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る消泡装置は、上述したように、排水口より排水される際に発生する泡を消す消泡装置において、前記排水口から放水方向に向けた放水路を備え、該放水路には前記排水口より下流側に消泡用構造体収容部が形成され、該消泡用構造体収容部に繊維状材を絡み合わせて形成された通水性素材からなる消泡用構造体を収容し、前記排水口より前記消泡用構造体を通して排水されるようにしたことにより、狭い箇所であっても設置可能で且つ安価に設置することができ、更に、排水に含有された泡を物理的に消して泡が排水先の水面に広がることを抑制することができる。
【0013】
また、本発明において、前記消泡用構造体は、前記通水性素材により両端が開口した筒状に形成された複数の消泡用筒材を、その長さ方向を放水方向に向けて消泡用構造体収容部の幅方向に互いに隣接して並べるとともに上下方向多段配置に組み合せて形成されたことにより、内部に空隙部を多くとることができ、高い排水性能を確保することができるとともに、容易に加工や管理をすることができる。
【0014】
更に本発明において、前記消泡用構造体収容部は、上流側より下流側の幅が広く形成され、前記消泡用構造体は、上流側端面の断面積より下流側端面の断面積が広く形成されたことにより、放水時の水の流速を抑えて勢いを減じるとともに、泡の浮上速度を速めて泡が遠くへ広がるのを抑えることができる。
【0015】
更にまた本発明において、前記消泡用構造体収容部は、前記消泡用構造体の外側を覆う保持用籠状具を備え、該保持用籠状具を前記放水路に固定させたことにより、排水口より排水された水の水圧や波浪、潮の干満等に対しても消泡用構造体を安定した状態で放水路上に保持することができ、台風等の災害時においても撤去する必要がなく容易に管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る消泡装置の使用状態の一例を示す側面図である。
図2図1中の消泡装置を示す平面図である。
図3】同上の縦断面図である。
図4図2中のa−a線断面図である。
図5】同上の保持用籠状具を取り外した状態を示す平面図である。
図6】消泡用筒材の概略を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施の態様を図1図6に示す実施例に基づいて説明する。尚、図中符号Aは海、符号Bは火力・原子力発電所や製鉄所等で冷却水として使用された海水を海に放水するための排水管である。
【0018】
排水管Bは、その下端部に水平方向に向けて開口した排水口1が形成され、この排水口1付近に消泡装置2が設置されている。
【0019】
この消泡装置2は、排水口1から放水方向に向けた溝状の放水路3の下流側の該放水路の全断面内に消泡用構造体4を設置し、放水路3により排水口1より排出された海水を下流側にある海へ誘導するとともに消泡用構造体4を通して海水に含まれた泡を低減するようになっている。
【0020】
放水路3は、海辺に形成された捨石マウンド5上に導水ブロック6を設けることにより形成され、その排水口1より下流側に所定の距離を隔てた位置に消泡用構造体4が収容される消泡用構造体収容部3aが形成されており、該消泡用構造体収容部3a内に消泡用構造体4が収容されている。尚、上記所定の距離は、排水管Bからの排水量等に基づき適宜決定することができるが、排水管Bの直径より長くすることが好ましい。
【0021】
この導水ブロック6は、コンクリートをもって一体に形成され、捨石マウンド5の上面部に、底版部6a上面、即ち放水路内底面が捨石マウンド5の表面に露出した状態で設置されている。
【0022】
この導水ブロックの底版部6aは、上面視台形状を成しており、その両側部には、上向きに立ち上げた形状の側壁版6b、6bが形成され、この両側壁版6b,6bが堤の役割を担い排水口1より排出された海水を海Aへ誘導するようになっている。
【0023】
また、両側壁版6b,6b間の距離は、上流側が狭く、下流側が広くなっており、放水路3の消泡用構造体収容部3aにおける流路断面積は、海側に行くにつれて広くなっている。
【0024】
この消泡用構造体収容部3aには、保持用籠状具7が設けられており、この保持用籠状具7内に消泡用構造体4が設置されている。
【0025】
保持用籠状具7は、消泡用構造体4の上面側を覆う配置の上側蓋部材7aと、消泡用構造体4の下流側(海側)を覆う配置の下流側蓋部材7bと、消泡用構造体4の上流側を覆う配置の上流側蓋部材7cとを備えて構成され、消泡用構造体4の外側を覆うようになっている。
【0026】
即ち、各蓋部材7a〜7c及び両側壁版6b,6bに囲まれて消泡用構造体4は、排水管Bより排水された海水の水圧や波浪、潮の干満等に対しても安定した状態で導水ブロック6上に保持されるようになっている。
【0027】
各蓋体7a〜7cは、格子状部材をもって形成され、消泡用構造体4の移動を規制する一方、海水の流れを阻害しないようになっている。
【0028】
尚、図中符号7dは上側蓋部材7aを導水ブロック6の側壁版6b上面部に固定するための固定用部材であり、上側蓋部材7aが固定用部材7d,7d......を介して側壁版6bに固定されるとともに、海側蓋部材7a及び排水口側蓋部材7cを上側蓋部材7aに支持させている。
【0029】
消泡用構造体4は、図4に示すように、通水性素材により両端が開口した肉厚円筒状に形成された複数の消泡用筒材8,8......を、その長手方向を放水方向に向けて互いに消泡用構造体収容部の幅方向に隣接して並べるとともに、その消泡用筒材8,8......からなる列を上下方向多段配置に積み上げて形成されている。
【0030】
また、各段の両側部側に配置された消泡用筒材8は、図5に示すように、側壁版6bの内側面に沿って切断され、消泡用構造体4は、上流側端面の面積より下流側端面の面積が広くなるように形成されている。
【0031】
尚、消泡用構造体の上面部には、消泡用筒材8と同じ通水性素材からなるマット状の消泡部材9が敷設されている。
【0032】
この消泡用筒材8及び消泡部材9を構成する通水性素材は、図6に示すように、樹脂製繊維状材10,10......を不規則に絡み合せて立体網目状に形成され、乾燥ヘチマの如き断面構造となっている。
【0033】
よってこの通水性素材は、内部空隙率が高く、高い通水性を有している。また、このような通水性素材は、軽量で加工も容易な構造となっており、また目詰まりしたような場合であっても高圧ジェット等を噴射することにより容易に清掃することができる。
【0034】
尚、この通水性素材としては、例えば、新光ナイロン株式会社製のヘチマロン(登録商標)等を使用することができる。
【0035】
このように構成された消泡装置では、消泡用構造体4を構成する消泡用筒材8,8......が上述のように乾燥ヘチマの如く立体網目状の構造を有していることから、泡を含有する海水が消泡用構造体4を構成する繊維状材10,10......間を通る際、泡が物理的に破裂して消泡されるようになっている。
【0036】
その一方で消泡用構造体4を構成する消泡用筒材8,8......は筒状であり、その中空部を通しても排水がなされることから高い排水量を確保することができるようになっている。
【0037】
また、消泡用構造体4の下流側端面の断面積が上流側端面の断面積より広い為、消泡用構造体4内を通過する海水の流速は上流側より下流側で遅くなり排水される際の勢いが減ぜられる。一方、海水の流速が低下することで泡の浮上速度は速くなるので、消泡用構造体4にて消泡されずに泡が残ったとしても、その泡は消泡装置に近い位置で海面に浮上し、海上における泡の拡散を抑えることができる。
【0038】
この消泡装置を使用した場合の泡の拡散範囲は、排水口から半径2〜5m程度の範囲であり、消泡装置2を使用しなかった場合の泡の拡散範囲(排水口より半径15〜30m程度)に比べて大幅に縮小した。
【0039】
尚、上述の実施例では、消泡筒体に円筒状のものを使用した例について説明したが、消泡筒体は角筒状や多角形筒状であってもよい。また、消泡用構造体には、上述した消泡筒体に代えて樋状のもの等を使用してもよく、マット状の消泡部材を積み重ねて形成した後放流方向に貫通孔を形成するようにしてもよい。
【0040】
更には、消泡用構造体は、前記通水性素材からなる部材とその他の素材からなる部材とを組み合わせて構成されたものであってもよい。
【0041】
また、本発明における排水は、海水に限定されるものではなく、その排水先についても河川、湖沼等の淡水面であってもよい。
【符号の説明】
【0042】
A 海
B 排水管
1 排水口
2 消泡装置
3 放水路
4 消泡用構造体
5 捨石マウンド
6 導水ブロック
7 保持用籠状具
8 消泡用筒材
9 消泡部材
10 繊維状材
図1
図2
図3
図4
図5
図6