(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5794490
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】車両のランプ構造
(51)【国際特許分類】
F21S 8/12 20060101AFI20150928BHJP
B60Q 1/06 20060101ALI20150928BHJP
F21W 101/10 20060101ALN20150928BHJP
【FI】
F21S8/12 253
B60Q1/06 A
F21W101:10
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-206207(P2011-206207)
(22)【出願日】2011年9月21日
(65)【公開番号】特開2013-69492(P2013-69492A)
(43)【公開日】2013年4月18日
【審査請求日】2014年8月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100107238
【弁理士】
【氏名又は名称】米山 尚志
(72)【発明者】
【氏名】藤井 和敬
(72)【発明者】
【氏名】豊田 順一
(72)【発明者】
【氏名】橋本 秀直
(72)【発明者】
【氏名】古谷 和敬
【審査官】
大屋 静男
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−334462(JP,A)
【文献】
特開2001−351407(JP,A)
【文献】
特開2005−347009(JP,A)
【文献】
特開2002−083508(JP,A)
【文献】
特開2007−042288(JP,A)
【文献】
特開2003−272415(JP,A)
【文献】
特開2002−373510(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/068
F21S 8/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側に固定されるランプボディと、
バルブを支持するとともに当該バルブからの出射光を反射するリフレクタと、
前記リフレクタの光軸を調整可能に前記ランプボディに対して前記リフレクタを支持するエイミング機構とを備え、
前記エイミング機構は、前記ランプボディに対して前記リフレクタを回転自在に連結する1箇所の支点部と、前記ランプボディに対して前記リフレクタを移動可能に連結する2箇所のエイミング機構部とを有し、
前記2箇所のエイミング機構部は、前記リフレクタのナット挿着部に形成されたナット係合孔と、当該ナット係合孔と係合して前記ナット挿着部に保持されるエイミングナットと、前記ランプボディに回転自在に支持されて前記エイミングナットと螺合するエイミングスクリュとをそれぞれ有する車両のランプ構造であって、
前記2箇所のナット挿着部の少なくとも一方に、当該ナット挿着部から一体的に突出して前記エイミングスクリュの回転軸と交叉する方向から前記ランプボディに当接し、当該ナット挿着部を前記回転軸と交叉する方向から前記エイミングナットを介することなく支持する脚部を設けた
ことを特徴とする車両のランプ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のランプ構造に関し、特にランプ内に内装されるリフレクタの光軸角度を調整するためのエイミング機構を備えたランプ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、バルブが挿着されたリフレクタを、エイミング機構によって上下左右方向に傾動調整可能に構成した自動車用前照灯が記載されている。エイミング機構は、ランプボディを貫通して前方に延出する左右一対のエイミングスクリュと、リフレクタの左右の側縁部にそれぞれ挿着された形態で、エイミングスクリュにそれぞれ螺合する左右一対のエイミングナットと、エイミングナットのほぼ真下であって、ランプボディとリフレクターユニット間に介装された玉継手とによって構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−146722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エイミングナットは、リフレクタに形成されたナット係合孔と係合することによってリフレクタに保持される。
【0005】
しかし、上記従来の灯具のような3点支持によるエイミング機構では、車両走行中の車体側から灯具への振動入力が大きい場合、慣性力によるリフレクタの動きによって、エイミングナットとリフレクタのナット係合孔とが相対移動し、両者の接触部分に摩耗が発生する可能性がある。
【0006】
このような摩耗の発生は、リフレクタの姿勢のがたつきによる光軸の不安定化を招くとともに、摩耗粉によるレンズ内面の汚れを招く。
【0007】
そこで、本発明は、エイミングナットとリフレクタのナット係合孔との接触部分の摩耗を抑制することが可能な車両のランプ構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成すべく、本発明に係る車両のランプ構造は、車体側に固定されるランプボディと、バルブを支持するとともにバルブからの出射光を反射するリフレクタと、リフレクタの光軸を調整可能にランプボディに対してリフレクタを支持するエイミング機構とを備える。エイミング機構は、ランプボディに対してリフレクタを回転自在に連結する1箇所の支点部と、ランプボディに対してリフレクタを移動可能に連結する2箇所のエイミング機構部とを有する。2箇所のエイミング機構部は、リフレクタのナット挿着部に形成されたナット係合孔と、このナット係合孔と係合してナット挿着部に保持されるエイミングナットと、ランプボディに回転自在に支持されてエイミングナットと螺合するエイミングスクリュとをそれぞれ有する。2箇所のナット挿着部の少なくとも一方には、このナット挿着部から一体的に突出して
エイミングスクリュの回転軸と交叉する方向からランプボディ
に当接し、ナット挿着部を
上記回転軸と交叉する方向から
エイミングナットを介することなく支持する脚部が設けられている。
【0009】
上記構成では、車両走行中に車体側からランプボディに振動が入力した場合であっても、脚部が設けられたナット挿着部では、エイミングナットとナット係合孔との相対移動が脚部によって抑制され、両者の接触部分の摩耗を抑制することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、エイミングナットとリフレクタのナット係合孔との接触部分の摩耗を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係るヘッドランプを前方から視た正面図である。
【
図2】
図1のヘッドランプが備えるリフレクタを後方から視た背面図である。
【
図6】本実施形態の構造を有さない場合のナット挿着部及びエイミングナットの加速度を各周波数毎に測定した結果を示す図である。
【
図7】本実施形態の構造を有する場合のナット挿着部及びエイミングナットの加速度を各周波数毎に測定した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のランプ構造を適用した車両のヘッドランプに係る一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、図中FRは車両前方を、UPは車両上方を、OUTは車幅方向外側をそれぞれ示している。
【0013】
図1〜
図5に示すように、ヘッドランプ1は、ランプボディ2とレンズ3とバルブ(電球)5とリフレクタ6とを備える。
【0014】
ランプボディ2は、底面部25と、底面部25の周縁から前方へ延びる側面部26とを一体的に有し、車体側に固定される。レンズ3は、ランプボディ2の前端に固定され、ランプボディ2の前面開口を覆う。リフレクタ6は、リフレクタ本体7と、リフレクタ本体7の後面側にネジ10によってそれぞれ固定された樹脂製の第1及び第2のブッシュ8,9とを有し、ランプボディ2とレンズ3とが画成する灯室4内に配置される。バルブ5は、リフレクタ本体7に形成されたバルブ固定孔20に固定され、リフレクタ本体6の前面は、バルブ5からの出射光をレンズ3に向けて反射する。
【0015】
リフレクタ6は、エイミング機構によって上下及び左右に傾動可能な状態でランプボディ2に支持され、この傾動によってリフレクタ6の光軸角度が調整される。エイミング機構は、ランプボディ2に対してリフレクタ6を回転自在に連結する1箇所の支点部11と、ランプボディ2に対してリフレクタ6を移動可能に連結する2箇所のエイミング機構部(第1のエイミング機構部12と第2のエイミング機構部13)とによって構成される。第1のエイミング機構部12は、支点部11の略鉛直下方に配置され、第2のエイミング機構部13は、第1のエイミング機構部12と略水平方向に並んで配置されている。第1のエイミング機構部12は、支点部11を中心としてリフレクタ6を上下に傾動させる。また、第2のエイミング機構部13は、支点部11を中心としてリフレクタ6を左右に傾動させる。
【0016】
支点部11は、ランプボディ2の底面部25に固定されるピボット軸21と、リフレクタ本体7の裏面に固定されるピボット受け23とから構成されている。ピボット軸21は、ランプボディ2の底面部25から前方へ突出し、ピボット軸21の先端の球状部22は、ピボット受け23内に回転自在に嵌合される。これにより、リフレクタ6は支点部11を支点として回転可能に連結される。
【0017】
第1のエイミング機構部12は、リフレクタ6に形成されたナット係合孔31と、樹脂製のエイミングナット32と、ランプボディ2の底面部25に回転自在に支持されたエイミングスクリュ33とから構成されている。ナット係合孔31は、第1のブッシュ8のナット挿着部34に形成された矩形状の貫通孔である。エイミングナット32は、その外周に矩形状の係合面を有し、ナット係合孔31に挿入されることによってナット係合孔31に係合して保持される。エイミングスクリュ33は、ランプボディ2の底面部25から前方へ延びてエイミングナット32の内径部と螺合する。エイミングスクリュ33の後端には円板状の操作部35が固定されている。操作部35の外周面には歯部が形成され、ランプボディ2の外部から歯部と噛み合う冶具(例えばプラスドライバ)を挿入し、冶具によって操作部35を回転させると、エイミングスクリュ33が回転し、エイミングナット32が前後方向に移動する。これにより、リフレクタ6は支点部11を支点として傾動する。
【0018】
同様に、第2のエイミング機構部13は、リフレクタ6に形成されたナット係合孔41と、樹脂製のエイミングナット42と、ランプボディ2の底面部25に回転自在に支持されたエイミングスクリュ43とから構成されている。ナット係合孔41は、第2のブッシュ9のナット挿着部44に形成された矩形状の貫通孔である。エイミングナット42は、その外周に矩形状の係合面を有し、ナット係合孔41に挿入されることによってナット係合孔41に係合して保持される。エイミングスクリュ43は、ランプボディ2の底面部25から前方へ延びてエイミングナット42の内径部と螺合する。エイミングスクリュ43の後端には円板状の操作部45が固定されている。操作部45の外周面には歯部が形成され、ランプボディ2の外部から歯部と噛み合う冶具(例えばプラスドライバ)を挿入し、冶具によって操作部45を回転させると、エイミングスクリュ43が回転し、エイミングナット42が前後方向に移動する。これにより、リフレクタ6は支点部11を支点として傾動する。
【0019】
第1のブッシュ8のナット挿着部34には、ナット挿着部34から一体的に突出してランプボディ2の側面部26と当接し、ナット挿着部34をエイミングスクリュ33の回転軸と交叉する方向(本実施形態では略水平方向)から支持する第1の脚部36が設けられている。第1の脚部36は、略水平方向に延びる板形状であり、エイミングスクリュ33の回転軸を含む略水平面に配置されている。すなわち、第1の脚部36は、ナット係合孔31の近傍であるナット挿着部34を略水平方向から支持する。
【0020】
同様に、第2のブッシュ9のナット挿着部44には、ナット挿着部44からから一体的に突出してランプボディ2の側面部26と当接し、ナット挿着部44をエイミングスクリュ43の回転軸と交叉する方向(本実施形態では略鉛直下方)から支持する第2の脚部46が設けられている。第2の脚部46は、略鉛直方向に延びる板形状であり、エイミングスクリュ43の回転軸を含む略鉛直平面に配置されている。すなわち、第2の脚部46は、ナット係合孔41の近傍であるナット挿着部44を略鉛直下方から支持する。
【0021】
第1及び第2の脚部36,46の形状や材質等は、ランプボディ2との当接によって適度な撓み変形を生じてナット挿着部34,44に対し好適な支持剛性が得られるように設定される。
【0022】
次に、上記脚部36,46を設けた場合の効果について、
図6及び
図7を参照して説明する。
【0023】
図6は、脚部が設けられていないナット挿着部にエイミングナットを挿着した場合の加速度を各周波数毎に測定した結果であり、
図7は、脚部が設けられたナット挿着部にエイミングナットを挿着した場合の加速度を各周波数毎に測定した結果である。なお、
図6及び
図7において、1点鎖線はナット挿着部の加速度を示し、実線はエイミングナットの加速度を示す。
【0024】
図6と
図7との比較から明らかなように、脚部が設けられていない場合(
図6)には、広範囲の周波数において、ナット挿着部の加速度とエイミングナットの加速度とが乖離して、両者の間に相対移動が発生する可能性が高く、一方、脚部が設けられた場合(
図7)には、ほぼ全ての周波数において、ナット挿着部の加速度とエイミングナットの加速度とが殆ど乖離せず、両者の間に相対移動が発生し難いことが判る。
【0025】
このように、本実施形態によれば、車両走行中に車体側からランプボディ2に振動が入力した場合であっても、エイミングナット32,42とナット係合孔31,41との相対移動が脚部36,46によって抑制されるので、両者の接触部分の摩耗を抑制することができる。
【0026】
また、第1の脚部36による支持方向と第2の脚部46による支持方向とが略90°異なるので、リフレクタ6の振動を効果的に抑制することができる。
【0027】
以上、本発明について、上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明は上記実施形態の内容に限定をされるものではなく、当然に本発明を逸脱しない範囲では適宜の変更が可能である。
【0028】
例えば、上記実施形態では、2箇所のナット挿着部34,44の双方にそれぞれ脚部36,46を設けたが、これらのうち一方のみを設けてもよい。なお、2箇所のナット挿着部のうち一方を選択して脚部を設ける場合、支点部11との間の水平方向の距離が大きい方のナット挿着部(上記実施形態ではナット挿着部44)を選択して脚部を設けることが好適である。
【0029】
また、ブッシュ8,9を省略し、ナット挿着部34,44をハウジング本体7に設けてもよい。また、エイミングスクリュ33,43を回転する駆動部(例えばモータ)を設け、光軸の調整を駆動部の制御によって行ってもよい。さらに、ヘッドランプ1以外の車両用のランプに本発明のランプ構造を適用してもよい。
【符号の説明】
【0030】
1:ヘッドランプ
2:ランプボディ
3:レンズ
4:灯室
5:バルブ
6:リフレクタ
7:リフレクタ本体
8,9:ブッシュ
11:支点部(エイミング機構)
12,13:エイミング機構部(エイミング機構)
31,41:ナット係合孔
32,42:エイミングナット
33,43:エイミングスクリュ
34,44:ナット挿着部