(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5794495
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】経緯台式反射望遠鏡及び経緯台式反射望遠鏡の駆動機構
(51)【国際特許分類】
G02B 23/02 20060101AFI20150928BHJP
【FI】
G02B23/02
【請求項の数】8
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-101898(P2015-101898)
(22)【出願日】2015年5月19日
(62)【分割の表示】特願2010-249714(P2010-249714)の分割
【原出願日】2010年11月8日
【審査請求日】2015年5月29日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514321312
【氏名又は名称】有限会社アストロエアロスペース
(73)【特許権者】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人名古屋大学
(74)【代理人】
【識別番号】100167689
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 征二
(72)【発明者】
【氏名】栗田 光樹夫
【審査官】
井亀 諭
(56)【参考文献】
【文献】
特開平03−161645(JP,A)
【文献】
特開2002−214537(JP,A)
【文献】
特開平10−145128(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/00
G02B 7/18 − 7/24
G02B 23/00 − 23/22
H01Q 1/12 − 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)高度軸駆動部分は、
鏡筒部分の仮想回転軸を中心とし半径Rの円孤状のアークレールであって、仮想回転軸に対し垂直に配置され、主鏡トラス及び主鏡を下方から支持し、主鏡を取り囲むように互いに平行に位置する2個のアークレールと、
前記アークレールを支える円弧部を有し、方位軸回転盤の上に配置される2個のレール台座と、
前記レール台座の円孤部に案内されて前記アークレールが仮想回転軸のまわりに回転運動するように前記アークレールを駆動する駆動部と、
を有し、
(2)鏡筒部分は、
前記アークレールに接続する複数の骨組み軸材を含む主鏡トラスと、
前記主鏡トラスによって前記アークレールの上方に支持される主鏡と、
副鏡と、
前記主鏡と前記副鏡との位置を維持する鏡筒トラスと、
を有し、
回転軸であるセンターピースを有しない、
方位軸回転盤と高度軸駆動部分と鏡筒部分とを備えた経緯台式反射望遠鏡。
【請求項2】
テープエンコーダが前記アークレールの円孤に沿って取り付けられ、センサーが前記レール台座に取り付けられて、高度軸の位置角が測定されることを特徴とする請求項1に記載の経緯台式反射望遠鏡。
【請求項3】
地震が予測された時、あるいは地震が発生した時に、前記アークレールを自動的に、あるいは手動的に把持する把持固定装置を前記レール台座に設置していることを特徴とする請求項1または2に記載の経緯台式反射望遠鏡。
【請求項4】
経緯台式反射望遠鏡の鏡筒部分を回転駆動するための高度軸駆動部分と方位軸回転盤とを備える経緯台式反射望遠鏡の駆動機構において、
前記高度軸駆動部分は、
鏡筒部分の仮想回転軸を中心として半径Rの円孤状のアークレールであって、仮想回転軸に対し垂直に配置され、前記鏡筒部分を下方から支持する互いに平行に位置する2個のアークレールと、
前記アークレールを支える円弧部を有し、方位軸回転盤の上に配置される2個のレール台座と、
前記レール台座の円孤部に案内されて前記アークレールが仮想回転軸のまわりに回転運動するように前記アークレールを駆動する駆動部と、
を有し、
高度軸は、回転軸であるセンターピースを有しない仮想の回転軸であることを特徴とする経緯台式反射望遠鏡の駆動機構。
【請求項5】
前記アークレールに接続される複数の骨組み軸材を含む主鏡トラス及び当該主鏡トラスによって前記アークレールの上方に支持される主鏡を取り付けることができ、
前記アークレールは、前記主鏡を取り囲むように支持することを特徴とする請求項4に記載の経緯台式反射望遠鏡の駆動機構。
【請求項6】
前記アークレールは、トラス構造により前記鏡筒部分を支持することを特徴とする請求項4または5に記載の経緯台式反射望遠鏡の駆動機構。
【請求項7】
テープエンコーダが前記アークレールの円孤に沿って取り付けられ、センサーが前記レール台座に取り付けられて、高度軸の位置角が測定されることを特徴とする請求項4から6までのいずれか1項に記載の経緯台式反射望遠鏡の駆動機構。
【請求項8】
地震が予測された時、あるいは地震が発生した時に、前記アークレールを自動的に、あるいは手動的に把持する把持固定装置を前記レール台座に設置していることを特徴とする請求項4から7までのいずれか1項に記載の経緯台式反射望遠鏡の駆動機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経緯台式反射望遠鏡
及び経緯台式反射望遠鏡の駆動機構に関し、特に、回転軸であるセンターピースを有しない、高度軸駆動部分と鏡筒部分とを備えた経緯台式反射望遠鏡
及び経緯台式反射望遠鏡の駆動機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の反射望遠鏡は、
図2(b)に図示されているように、垂直軸の周りに回転可能な周知のターンテーブル方位回転部20上に設置された土台1と、該土台に担持され、水平軸の周りに回転可能なセンターピース13と、センターピース13の下方に備えられた鏡筒トラス4b及び主鏡セル14と、該主鏡セル14により支持される主鏡8と、センターピースの上方に備えられた鏡筒トラス4a及びトップリング5と、該トップリング5に備えられた図示しないスパイダにより支持される副鏡9と、から成り、図示しない観測装置を用いて観測する構造であった。(例えば、特開平2−15227号公報に記載の従来技術参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−15227号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の反射望遠鏡は、センターピース等と呼ばれる鏡筒と高度軸を接続する長大な部品が存在し、強固で長大なセンターピースを担持するのに十分に強固で長大な土台を設置する必要がある為に軽量化が困難であった。
【0005】
さらに、従来の反射望遠鏡は、主鏡がセンターピースの下方に備えられた鏡筒トラス及び主鏡セルにより支持されていたので、主鏡及び主鏡セルに曲げモーメントが働くので、更なる望遠鏡の巨大化及び性能の向上が困難であった。
【0006】
さらに、従来の反射望遠鏡は、センターピースの水平軸の端部周辺に固定された小径の円盤等を駆動要素によって回転させることにより、高度軸を操作していたので、エンコーダ等を用いて正確に高度角を制御することが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、請求項1に記載の(1)高度軸駆動部分は
、鏡筒部分の仮想回転軸を中心とし半径Rの円孤状のアークレールであって、仮想回転軸に対し垂直に配置され、
主鏡トラス及び主鏡を下方から支持し、主鏡を取り囲むように互いに平行に位置する2個のアークレールと、
前記アークレールを支える円弧部を有し、方位軸回転盤の上に配置される2個のレール台座と、
前記レール台座の円孤部に案内されて
前記アークレールが仮想回転軸のまわりに回転運動するように
前記アークレールを駆動する駆動
部と、を有し
、
(2)鏡筒部分は、
前記アークレール
に接続する複数の骨組み軸材を含む主鏡トラスと、
前記主鏡トラスによって
前記アークレールの上方に支持される主鏡と、
副鏡と、前記主鏡と前記副鏡との位置を維持する鏡筒トラスと
、を有し、
回転軸であるセンターピースを有しない、
方位軸回転盤と高度軸駆動部分と鏡筒部分とを備えた経緯台式反射望遠鏡、
によって、解決される。
【0008】
さらに、上記課題は、請求項2に記載のテープエンコーダがアークレールの円孤に沿って取り付けられ、センサーがレール台座に取り付けられて、高度軸の位置角が測定されることを特徴とする請求項1に記載の経緯台式反射望遠鏡によって、解決される。
【発明の効果】
【0009】
本願の請求項1に係る発明により、従来の反射望遠鏡に存在したセンターピース等と呼ばれる鏡筒と高度軸を接続する長大な部品を無くすことができ、その上、強固で長大なセンターピースを担持する必要性がないので、土台を小型化することができるので、反射望遠鏡の構造を従来の反射望遠鏡に比べて画期的に軽量化することができるという利点を有する。
【0010】
さらに、本願の請求項1に係る発明により、主鏡トラス及び主鏡をアークレールによって真下から均等に支えることができるので、主鏡トラス及び主鏡に曲げモーメントが働かず、軽量で固い構造が実現され、更なる望遠鏡の巨大化及び性能の向上が容易になるという利点を有する。
【0011】
さらに、本願の請求項1に係る発明により、主鏡を取り囲む大きなアークレールを直接駆動モーターによって動かすので、大きな減速比の伝達機構と鏡筒にねじれトルクの発生しない構造が得られるという利点を有する。
【0012】
また、本願の請求項2に係る発明により、エンコーダが大きな円弧のアークレールに取り付けられるので高い分解能が得やすく、さらに、駆動モーターによって駆動される部分と同じアークレールに取り付けられるので、モーターの駆動量とエンコーダの検出量に差が生じにくく制御しやすい機構が得られるという利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の経緯台式反射望遠鏡の実施形態の概略図である。
【
図2】本発明の経緯台式反射望遠鏡(a)と従来の経緯台式反射望遠鏡(b)の概略比較図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0015】
図1は、本発明の経緯台式反射望遠鏡の高度軸駆動部分及び鏡筒部分を示す図である。
【0016】
まず、高度軸駆動部分に関して説明する。符号1で示される部品はレール台座であり、一般的に土台と呼ばれる部品である。レール台座1は2本のアークレール2を支え、図示しない方位軸回転盤上に設置される。アークレール2は、2本のアークレールの円弧中心を通る仮想軸を回転軸として回転運動を行う。この駆動力は駆動モーター10によって実現される。駆動モーターとしては、摩擦駆動により駆動力が伝達される駆動モーター等の様々な周知の装置及びその変形を使用することができる。
【0017】
次に、鏡筒部分に関して説明する。符号3で示される部品は主鏡トラスであり、トラス構造によって製作される。主鏡トラス3はアークレール2に接続され、主鏡8を支えており、アークレール2から主鏡8に向かって半径方向に伸びる骨組み軸材を含んでいる。主鏡トラス3はさらに、第3鏡も支えるように構成することができる。符号4で示される部品は鏡筒トラスであり、トラス構造によって製作される。鏡筒トラス4は主鏡トラス3又はアークレール2に接続され、トップリング5を支える。さらに、鏡筒トラス4はトップリング5、スパイダ6及びハブ7を介して副鏡9を支える。ただし、副鏡9を支える構成はこの限りではなく、鏡筒トラス4の上部を直接ハブ7に接続してもかまわない。
【0018】
また、高度軸の位置角を検出するテープエンコーダはアークレール2上のエンコーダ取り付け面11に取り付けられる。そして、レール台座1等の鏡筒部分以外の場所に取り付けられた読み取りヘッド等の図示しないセンサーにより高度軸の位置角が測定される。
【0019】
さらに、地震が予測された時、あるいは地震が発生した時に、アークレール2を自動的に、あるいは手動的に把持する図示しない把持固定装置をレール台座1に設置することもできる。把持固定装置としては、アークレール2を側方から把持し、レール台座1に押し付けて固定する装置等の様々な周知の装置及びその変形を使用することができる。
【0020】
本発明の経緯台式反射望遠鏡の使用方法に関しては、従来の反射望遠鏡と同じであり、第3鏡を用いずにカセグレン式とし、観測装置を主鏡の下方の接眼部に設置して観測してもいいし、第3鏡を用いてナスミス式とし、観測装置を鏡筒の直角方向の接眼部に設置して観測してもよく、第3鏡を可動式に設置し、カセグレン式とナスミス式の両方に切り換えて使用することもでき、様々の周知の方法及びその変形を使用することができる。また、観測装置も撮像及び分光を目的とした様々な周知の装置及びその変形を使用することができる。
【0021】
以上説明したように、本発明の主要な特徴は、
図2(a)に概略的に図示されているように、主鏡トラスにより主鏡を支持することにより、センターピース等と呼ばれる鏡筒と高度軸を接続する長大な部品を無くすことができ、その上、強固で長大なセンターピースを担持する必要性がないので、土台を小型化することができることであり、その特徴により、反射望遠鏡の構造を
図2(b)に図示されている従来の反射望遠鏡に比べて画期的に軽量化することができるという利点を有するものである。
【0022】
したがって、本発明は添付の図面に示し、例として説明した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく、様々な形態で具体化することができるものである。
【符号の説明】
【0023】
1 レール台座、土台
2 アークレール
3 主鏡トラス
4 鏡筒トラス
4a 鏡筒トラス
4b 鏡筒トラス
5 トップリング
6 スパイダ
7 ハブ
8 主鏡
9 副鏡
10 駆動モーター
11 エンコーダ取り付け面
12 第三鏡
13 センターピース
14 主鏡セル
20 ターンテーブル方位回転部
【要約】
【課題】従来の反射望遠鏡は、センターピース等と呼ばれる鏡筒と高度軸を接続する長大な部品が存在し、強固で長大なセンターピースを担持するのに十分に強固で長大な土台を設置する必要がある為に軽量化が困難であった。
【解決手段】(1)高度軸駆動部分は
、鏡筒部分の仮想回転軸を中心とし半径Rの円孤状のアークレールであって、仮想回転軸に対し垂直に配置され、
主鏡トラス及び主鏡を下方から支持し、主鏡を取り囲むように互いに平行に位置する2個のアークレールと、
前記アークレールを支える円弧部を有し、方位軸回転盤の上に配置される2個のレール台座と、
前記レール台座の円孤部に案内されて
前記アークレールが仮想回転軸のまわりに回転運動するように
前記アークレールを駆動する駆動
部と、を有し
、
(2)鏡筒部分は、
前記アークレールか
ら伸びる複数の骨組み軸材を含む主鏡トラスと、
前記主鏡トラスによって
前記アークレールの上方に支持される主鏡と、
副鏡と、前記主鏡と前記副鏡との位置を維持する鏡筒トラスと
、を有し、
回転軸であるセンターピースを有しない、
方位軸回転盤と高度軸駆動部分と鏡筒部分とを備えた経緯台式反射望遠鏡。
【選択図】
図1