特許第5794509号(P5794509)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5794509
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】ボイルオフガスの再液化装置および方法
(51)【国際特許分類】
   F17C 13/00 20060101AFI20150928BHJP
   B63B 25/16 20060101ALI20150928BHJP
【FI】
   F17C13/00 302A
   B63B25/16 D
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2010-17678(P2010-17678)
(22)【出願日】2010年1月29日
(65)【公開番号】特開2011-157979(P2011-157979A)
(43)【公開日】2011年8月18日
【審査請求日】2012年9月14日
【審判番号】不服-19191(P-19191/J1)
【審判請求日】2014年9月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000126115
【氏名又は名称】エア・ウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109472
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 直之
(72)【発明者】
【氏名】末長 純也
【合議体】
【審判長】 渡邊 豊英
【審判官】 栗林 敏彦
【審判官】 千葉 成就
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭54−163783(JP,A)
【文献】 特開昭62−142980(JP,A)
【文献】 特開平04−337198(JP,A)
【文献】 特開平06−094199(JP,A)
【文献】 特開平09−221098(JP,A)
【文献】 特開2009−204026(JP,A)
【文献】 実開昭55−117697(JP,U)
【文献】 実開昭57−021897(JP,U)
【文献】 実開平05−006299(JP,U)
【文献】 米国特許第3303660(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C1/00−13/12
B63B25/16
F25J1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低温液化ガスを貯留する低温貯留槽と、上記低温貯留槽で発生したボイルオフガスを取り出して圧縮する第1の圧縮機と、上記第1の圧縮機で圧縮されたボイルオフガスを第1の冷媒で冷却して再液化する第1の凝縮器と、上記第1の凝縮器で再液化した液化ガスを膨張させて上記低温貯留槽に戻すボイルオフガスの再液化装置であって、
上記第1の凝縮器内の気相から取り出したガスを第2の冷媒により冷却して再液化する第2の凝縮器と、上記第1の凝縮器の上部空間からボイルオフガスを取り出して第2の凝縮器に導入する取出路とをさらに備え、上記第2の凝縮器で再液化した液化ガスを膨張させて上記低温貯留槽に戻すように構成され、
さらに、上記取出路には、上記第1の凝縮器で再液化が十分行われずに非凝縮成分が気相に蓄積されてきたときに、その気相の圧力を検知して所定圧力以上になったときにガスを取り出して第2の凝縮器に送る調節弁が設けられていることを特徴とするボイルオフガスの再液化装置。
【請求項2】
第2の冷媒を第1の冷媒よりも低温に冷却して第2の凝縮器に供給する冷却手段をさらに備えている請求項1記載のボイルオフガスの再液化装置。
【請求項3】
上記冷却手段は、第2の冷媒の温度が一定になるよう制御する請求項2記載のボイルオフガスの再液化装置。
【請求項4】
上記第1の凝縮器内の気相から取り出したガスを第2の凝縮器に導入する際にさらに圧縮する第2の圧縮機をさらに備えた請求項1記載のボイルオフガスの再液化装置。
【請求項5】
上記調節弁が開弁して第2の凝縮器内の圧力が上昇したときに、圧力検知器でそれを検知して冷却手段の運転を開始し、第2の凝縮器内のボイルオフガスが再液化して内部の圧力が低下したときに、それを検知して冷却手段の運転を停止するよう制御する請求項2記載のボイルオフガスの再液化装置。
【請求項6】
低温液化ガスを貯留する低温貯留槽で発生したボイルオフガスを取り出して圧縮する第1の圧縮工程と、上記第1の圧縮工程で圧縮されたボイルオフガスを第1の凝縮器において第1の冷媒で冷却して再液化する第1の凝縮工程と、上記第1の凝縮工程で再液化した液化ガスを膨張させて上記低温貯留槽に戻す再液化工程とを行うボイルオフガスの再液化装置であって、
上記第1の凝縮工程における第1の凝縮器の気相からガスを取り出して第2の凝縮器において第2の冷媒により冷却して再液化する第2の凝縮工程をさらに行ない、上記第2の凝縮工程で再液化した液化ガスを膨張させて上記低温貯留槽に戻し、
さらに、上記第1の凝縮工程を行う第1の凝縮器から取り出したボイルオフガスを第2の凝縮工程を行う第2の凝縮器に送る取出路には、上記第1の凝縮工程を行う第1の凝縮器で再液化が十分行われずに非凝縮成分が気相に蓄積されてきたときに、その気相の圧力を検知して所定圧力以上になったときにガスを取り出して第2の凝縮工程を行う第2の凝縮器に送る調節弁が設けられていることを特徴とするボイルオフガスの再液化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LNGやLPGのような低温液体を輸送・貯蔵する場合に、外部からの自然入熱などにより気化したボイルオフガスを再び液化するボイルオフガスの再液化装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液化石油ガス(LPG)は、陸上もしくは輸送船舶上に設置された貯留槽に貯留されている。このような貯留槽の内部温度は、通常、外気温よりも低温であるため、外部からの侵入熱によって液化ガスが蒸発してボイルオフガスが発生し、内部圧力の上昇要因となる。そこで、ボイルオフガスの発生による貯留槽の異常昇圧を防止するため、ボイルオフガスを圧縮・凝縮(再液化)し、貯留槽に戻す再液化装置が用いられている。
【0003】
図3は、上記のような再液化装置の一般的な構造を示している。
【0004】
この装置において、LPG低温貯留槽1はエタンとプロパンを主成分とする液化ガスが貯留されている。LPG低温貯留槽1で発生したボイルオフガスは、圧縮機2で圧縮されて凝縮器3内に導入される。凝縮器3には、冷媒として水もしくは海水が用いられ、ボイルオフガスが冷却されて再液化する。凝縮器3で再液化した再液化ガスは、膨張弁4を通して減圧されるとともに温度も下げられた後、再びLPG低温貯留槽1に戻される。
【0005】
このような装置の場合、圧縮機2で圧縮されたボイルオフガスが、凝縮器3で完全に液化しなければ、凝縮器3の内部に、より低沸点成分であるエタンが液化されずに気相に濃縮、蓄積されることとなる。凝縮器3に液化されないエタンが蓄積されると、次第に凝縮器3の内部圧力が上昇し、液化能力の低下を引き起こす。そして、最終的には、装置の再液化メカニズムが機能しない状態に陥ってしまう。
【0006】
また、凝縮器3の冷媒として用いられる水や海水が、季節変動や航行海域によって温度上昇したときにも同様に、ボイルオフガスは凝縮器3において完全に液化されず、再液化メカニズムが機能しない状態に陥る。
【0007】
このような技術に関連する装置として、下記の特許文献1および2に示す装置が開示されている。
【0008】
下記の特許文献1に記載された低温式LPG船の再液化装置では、低温式LPG船が寒冷地を航行する場合に冷媒として用いられる海水が凍結することに起因する不具合を解決するため、冷媒として不凍液を用いることが提案されている。
【0009】
また、下記の特許文献2に記載された低温タンクの再液化装置では、凝縮器で液化されたボイルオフガスを、消費のために払い出されるLPGと熱交換することにより、さらに冷却し、膨張弁で減圧した際のフラッシュ(気化)を抑制し、再液化装置の負荷を軽減することが提案されている。
【0010】
これらの再液化装置では、ボイルオフガスの組成(エタンとプロパンが主成分である)と凝縮器3における冷却温度、すなわち使用する冷水もしくは海水の温度に応じて、その温度でボイルオフガスが凝縮器3において完全に液化しうる圧縮機2の吐出圧力を決定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平09−221098号公報
【特許文献2】実開平05−006299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところが、かつて、LPGなどの化石燃料は、ある程度安定した組成のものが用いられてきたところ、昨今の厳しいエネルギー事情により、近年では、従来のLPGと比較して低炭素成分の存在比率が増加するなど、同じLPGでも従来と異なる組成のものが使用されはじめてきている。
【0013】
このような事態に対し、従来のボイルオフガスの再液化装置では、貯蔵や輸送されるLPGの組成が変化することについては、全く考慮されていなかったのが実情である。例えば、上述した特許文献1および2では、LPGの組成が変化した場合の対策については全く言及されていない。また、冷媒である海水等の温度上昇があった場合の対策についても言及されていない。
【0014】
そのため、LPGの組成が変化し、LPG中の低沸点成分であるエタン濃度が上昇した場合、ボイルオフガス中のエタン濃度も上昇し、凝縮器3において完全に液化されない場合が生じる。また、冷媒である海水等の温度上昇があった場合も、凝縮器3において完全に液化されない場合が生じる。ボイルオフガスが凝縮器で完全に液化されないと、最終的には再液化のメカニズムが機能しない状態となってしまう。
【0015】
このように、ボイルオフガスが凝縮器3で完全に液化されずに再液化メカニズムが機能しなくなることに対処するためには、圧縮機2の吐出圧力を上昇させる必要が生じる。そのためには、圧縮機2を高圧用の装置に交換したり、凝縮器3を耐圧使用のものに変更するなど、装置自体を大幅に改造する必要があった。
【0016】
このように、再液化装置のユーザは、従来から使用している既設の装置をベースとして大幅な設備改造や条件変更をすることなく低コストで利用し続けることを希望しているものの、実際には、設備面、システム操業面、コスト面等において、多大な負担を強いられているのが実情である。したがって、既設の装置を利用した簡易な設備変更で上記問題に対処できる装置の開発が待たれていた。
【0017】
本発明は、上記のような事情に鑑みなされたもので、LPGの組成が変化した場合や海水温が上昇した場合に、既設の装置を利用した簡易な設備変更でボイルオフガスを完全に液化でき、再液化の機能不全を防止するボイルオフガスの再液化装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するため、本発明のボイルオフガスの再液化装置は、低温液化ガスを貯留する低温貯留槽と、上記低温貯留槽で発生したボイルオフガスを取り出して圧縮する第1の圧縮機と、上記第1の圧縮機で圧縮されたボイルオフガスを第1の冷媒で冷却して再液化する第1の凝縮器と、上記第1の凝縮器で再液化した液化ガスを膨張させて上記低温貯留槽に戻すボイルオフガスの再液化装置であって、
上記第1の凝縮器内の気相から取り出したガスを第2の冷媒により冷却して再液化する第2の凝縮器と、上記第1の凝縮器の上部空間からボイルオフガスを取り出して第2の凝縮器に導入する取出路とをさらに備え、上記第2の凝縮器で再液化した液化ガスを膨張させて上記低温貯留槽に戻すように構成され、
さらに、上記取出路には、上記第1の凝縮器で再液化が十分行われずに非凝縮成分が気相に蓄積されてきたときに、その気相の圧力を検知して所定圧力以上になったときにガスを取り出して第2の凝縮器に送る調節弁が設けられていることを要旨とする。
【0019】
また、上記目的を達成するため、本発明のボイルオフガスの再液化方法は、低温液化ガスを貯留する低温貯留槽で発生したボイルオフガスを取り出して圧縮する第1の圧縮工程と、上記第1の圧縮工程で圧縮されたボイルオフガスを第1の凝縮器において第1の冷媒で冷却して再液化する第1の凝縮工程と、上記第1の凝縮工程で再液化した液化ガスを膨張させて上記低温貯留槽に戻す再液化工程とを行うボイルオフガスの再液化装置であって、
上記第1の凝縮工程における第1の凝縮器の気相からガスを取り出して第2の凝縮器において第2の冷媒により冷却して再液化する第2の凝縮工程をさらに行ない、上記第2の凝縮工程で再液化した液化ガスを膨張させて上記低温貯留槽に戻し、
さらに、上記第1の凝縮工程を行う第1の凝縮器から取り出したボイルオフガスを第2の凝縮工程を行う第2の凝縮器に送る取出路には、上記第1の凝縮工程を行う第1の凝縮器で再液化が十分行われずに非凝縮成分が気相に蓄積されてきたときに、その気相の圧力を検知して所定圧力以上になったときにガスを取り出して第2の凝縮工程を行う第2の凝縮器に送る調節弁が設けられていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0020】
すなわち、例えば、仮に貯留する液化ガスの組成に変更があったり、第1の凝縮器に導入する第1の冷媒の温度上昇があり、第1の凝縮器における再液化能力が低下したとしても、上記第1の凝縮器内の気相から取り出したガスを、第2の冷媒により冷却して再液化する第2の凝縮器に導入して再液化し、その液化ガスを膨張させて上記低温貯留槽に戻すことができる。このように再液化の機能不全を未然に防ぐことができる。また、既設の装置を利用して、それに第2の凝縮器を取り付ければ、既設の第1の圧縮機や第1の凝縮器をそのまま改造せずに使用することができ、簡易な設備変更でボイルオフガスを完全に再液化できる。
また、上記第1の凝縮器の上部空間からボイルオフガスを取り出して第2の凝縮器に導入する取出路を備え、上記取出路には、上記第1の凝縮器で再液化が十分行われずに非凝縮成分が気相に蓄積されてきたときに、その気相の圧力を検知して所定圧力以上になったときにガスを取り出して第2の凝縮器に送る調節弁が設けられている。このため、第1の凝縮器における再液化能力が低下して内部の圧力が上昇してきたときに、自動的に気相のボイルオフガスを第2の凝縮器に送って再液化することができる。したがって、通常時は第1の凝縮器で運転を行ない、液化ガスの組成が変更されたり第1の冷媒に温度上昇があったときに第2の凝縮器を併用して再液化することが可能となる。
【0021】
本発明において、第2の冷媒を第1の冷媒よりも低温に冷却して第2の凝縮器に供給する冷却手段をさらに備えている場合には、第1の凝縮器で再液化しなかったボイルオフガスを、第2の凝縮器において、第1の凝縮器よりも低温の冷媒により確実に再液化し、再液化の機能不全を未然に防ぐことができる。
【0022】
本発明において、上記冷却手段は、第2の冷媒の温度が一定になるよう制御する場合には、第2の凝縮器に使用する冷媒の温度制御を一定にするため、必要以上に制御が複雑にならず、簡易な制御による第2の凝縮器においてボイルオフガスを確実に再液化し、再液化の機能不全を未然に防ぐことができる。
【0023】
本発明において、上記第1の凝縮器内の気相から取り出したガスを第2の凝縮器に導入する際にさらに圧縮する第2の圧縮機をさらに備えた場合には、第1の凝縮器で再液化しなかったボイルオフガスを、さらに圧縮して圧力を高めることにより、第2の凝縮器において確実に再液化し、再液化の機能不全を未然に防ぐことができる。
【0024】
本発明において、上記調節弁が開弁して第2の凝縮器内の圧力が上昇したときに、圧力検知器でそれを検知して冷却手段の運転を開始し、第2の凝縮器内のボイルオフガスが再液化して内部の圧力が低下したときに、それを検知して冷却手段の運転を停止するよう制御する場合には
2の凝縮器による再液化が必要なときだけ冷却手段を稼動することができ、第2の冷媒を冷却するために用いられるエネルギーを省力化できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の第1実施形態のボイルオフガスの再液化装置を示す概略構成図である。
図2】本発明の第2実施形態のボイルオフガスの再液化装置を示す概略構成図である。
図3】従来のボイルオフガスの再液化装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
つぎに、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0027】
図1は、本発明が適用されたボイルオフガスの再液化装置の一実施形態を示す図である。
【0028】
この装置は、低温液化ガスを貯留する低温貯留槽11と、上記低温貯留槽11で発生したボイルオフガスを取り出して圧縮する第1の圧縮機12と、上記第1の圧縮機12で圧縮されたボイルオフガスを第1の冷媒で冷却して再液化する第1の凝縮器13とを備えている。
【0029】
より詳しく説明すると、上記低温貯留槽11は、低温液化ガスとして、例えばLPG、LNG等が貯留される。
【0030】
例えば、LPGであれば、プロパンガスをベースとしてエタンガスが3〜6容量%程度含まれたものを適用することができる。
【0031】
上記低温貯留槽11の外壁には、内部の低温液化ガスを外気温からできるだけ遮断するように断熱構造が採用されている。内部の上部空間には、外部から侵入した熱によって貯留された液化ガスが気化したボイルオフガスが充満している。上記低温貯留槽11の上部には、上部空間のボイルオフガスを取り出す第1の取出路15が接続されている。
【0032】
上記第1の取出路15で取り出されたボイルオフガスは、第1の圧縮機12により所定の圧力以上に圧縮されて第1の凝縮器13に導入される。第1の凝縮器13は、第1の冷媒が通過する第1の冷却コイル16を備え、第1の圧縮機12で圧縮されたボイルオフガスを冷却して再液化する。
【0033】
上記第1の冷媒としては、例えば、上記低温貯留槽11が地上に設置されるものであれば通常の工業用水や水道水等の冷却水を使用することができ、上記低温貯留槽11が船舶に設置されるものであれば海水を使用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0034】
このとき、上記第1の圧縮機12におけるボイルオフガスの到達圧力は、例えば、液化ガスとしてLPGを使用する場合、1.86MPa程度に設定することができる。この程度の圧力に設定することにより、第1の凝縮器13において常温の冷却水や海水を第1の冷媒として用い、ボイルオフガスを40℃程度の液化ガスに再液化することができる。
【0035】
この場合、上記第1の凝縮器13内の気相および液相の組成は、例えば、1.86MPa、40℃における気液平衡組成が維持される。この気液平衡組成は、例えば、貯留するLPGの組成に変動があったとしても、第1の凝縮器13で再液化が行われているあいだは、同じ組成で維持される。上述した条件例では、第1の凝縮器13の液相は、エタン17.89容量%+プロパン82.11容量%、気相は、エタン34.64容量%+プロパン65.36容量%となる。
【0036】
上記第1の凝縮器13の下部には、再液化した液化ガスを再び低温貯留槽11に戻す第1の還流路17が接続されている。上記第1の還流路17には、第1の凝縮器13から取り出された液化ガスを膨張させるとともに温度も低下させる第1の膨張弁14が設けられている。これにより、上記第1の凝縮器13で再液化した液化ガスを膨張させて上記低温貯留槽11に戻すようになっている。
【0037】
ここまでに説明した低温貯留槽11、第1の圧縮機12、第1の凝縮器13、第1の膨張弁14等が既設設備として運転されている再液化装置である。
【0038】
そして、本発明の再液化装置は、上記第1の凝縮器13内の気相からガスを取り出して第2の冷媒により冷却して再液化する第2の凝縮器21をさらに備え、上記第2の凝縮器21で再液化した液化ガスを膨張させて上記低温貯留槽11に戻すように構成されている。
【0039】
さらに詳しく説明すると、上記第1の凝縮器13は、内部の上部空間に、第1の冷媒との熱交換で液化しきれなかった非凝縮分のボイルオフガスが充満している。そして、上記第1の凝縮器13の上部には、上部空間のボイルオフガスを取り出す第2の取出路22が接続されている。
【0040】
上記第2の取出路22で取り出されたボイルオフガスは、そのまま第2の凝縮器21に導入される。第2の凝縮器21は、第2の冷媒が通過する第2の冷却コイル23を備え、導入されたボイルオフガスを、第1の凝縮器13よりもさらに低温に冷却して再液化する。
【0041】
上記第2の冷媒としては、例えば、上記低温貯留槽11が地上に設置されるものであれば通常の工業用水や水道水等の冷却水を使用することができ、上記低温貯留槽11が船舶に設置されるものであれば海水を使用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
上記第2の凝縮器21には、第2の冷却コイル23に導入する第2の冷媒を、第1の冷媒よりも低温に冷却して第2の凝縮器21に供給する冷却手段としての冷凍機24が付設されている。
【0043】
上記冷凍機24は、第2の冷却コイル23に導入されて第2の凝縮器21に供給される際の第2の冷媒の温度が一定になるよう温度制御を行うことができる。
【0044】
すなわち、上述したように、上記第1の凝縮器13では、第1の冷媒の温度に変動があったり、あるいは液化ガスの組成に変更があった場合でも、第1の凝縮器13で再液化されるガス量(言い換えればここで再液化されずに第2の取出路22で取り出されるボイルオフガスの量)が変動する一方、第1の凝縮器13内は一定の気液平衡組成が維持されている。このため、第2の取出路22で取り出されるボイルオフガスの組成も一定の気液平衡組成なのであり、第2の冷却コイル23に導入する第2の冷媒の温度を一定に制御することで、ボイルオフガスの再液化を確実に行うことができるのである。
【0045】
上記第2の冷媒は、冷凍機24で冷却して第2の凝縮器21に供給することを行うため、第2の凝縮器21からの出口温度が第2の冷媒が供給源からの供給温度よりも低いときは、循環使用されることが好ましい。反対に、第2の冷媒の第2の凝縮器21からの出口温度が供給源からの供給温度よりも高いときは、循環使用はせずに、第2の凝縮器21から排出された第2の冷媒は廃棄して、新たな第2の冷媒を冷凍機24に供給して使用することが好ましい。
【0046】
また、上記第2の取出路22には、上記第1の凝縮器13における気相の圧力を検知して所定圧力以上になったときにボイルオフガスを取り出して第2の凝縮器21に送る調節弁25をさらに備えている。
【0047】
すなわち、第1の凝縮器13での再液化が十分行われずに非凝縮成分が気相に蓄積されてくると内部の圧力が高くなるので、調節弁25はそれを検知して自動的に開弁して、第1の凝縮器13からボイルオフガスを取出す。第1の凝縮器13での再液化が十分行われていると、内部の圧力は高くならないので、調節弁25は閉弁して、第1の凝縮器13からボイルオフガスを取出さない。
【0048】
このようにすることにより、通常時は第1の凝縮器13で運転を行ない、液化ガスの組成が変更されたり第1の冷媒に温度上昇があったときに第2の凝縮器21を併用して再液化することが可能となる。
【0049】
このとき、上記調節弁25の開閉等に伴う第2の凝縮器21内の圧力変動に同調させて冷凍機24の運転制御を行うことができる。すなわち、調節弁25が開弁して第2の凝縮器21内の圧力が上昇したときに、圧力検知器29でそれを検知して冷凍機24の運転を開始し、第2の凝縮器21内のボイルオフガスが再液化して内部の圧力が低下したときに、それを検知して冷凍機24の運転を停止するよう制御することができる。これにより、第2の凝縮器21による再液化が必要なときだけ冷凍機24を稼動することができ、第2の冷媒を冷却するために用いられるエネルギーを省力化できる。
【0050】
ここで、第2の凝縮器21内でのボイルオフガスの再液化の程度を上記圧力検知器29によって検知し、冷凍機24による第2の冷媒の温度変化させるよう制御することもできる。すなわち、圧力検知器29の圧力が高いときは、第2の凝縮器21内でのボイルオフガスの再液化が十分でないので、冷凍機24による第2の冷媒の温度を低下させるよう制御して再液化を促進することができる。反対に、圧力検知器29の圧力が低いときは、第2の凝縮器21内でのボイルオフガスの再液化が十分なので、冷凍機24による第2の冷媒の温度を上げるよう制御して省エネルギーを図ることができる。
【0051】
第2の凝縮器21の気相部分から第2の取出路22で一定流量のボイルオフガスを取り出すよう、上記調節弁25に代えて流量調節弁とすることも可能である。
【0052】
上記第2の凝縮器21の下部には、再液化した液化ガスを再び低温貯留槽11に戻す第2の還流路27が接続されている。上記第2の還流路27には、第2の凝縮器21から取り出された液化ガスを膨張させるとともに温度も低下させる第2の膨張弁26が設けられている。
【0053】
上記第2の凝縮器21で再液化した液化ガスを膨張させて上記低温貯留槽11に戻す構成として、図示で破線で示したように、第2の還流路27Aの先端を、第1の還流路17の第1の膨張弁14よりも上流側に合流させることもできる。こうすることにより、第2の膨張弁26の設備を省略化することも可能である。
【0054】
本実施形態によれば、下記のような作用効果を奏する。
【0055】
すなわち、例えば、仮に貯留する液化ガスの組成に変更があったり、第1の凝縮器13に導入する第1の冷媒の温度上昇があり、第1の凝縮器13における再液化能力が低下したとしても、上記第1の凝縮器13内の気相から取り出したガスを、第2の冷媒により冷却して再液化する第2の凝縮器21に導入して再液化し、その液化ガスを膨張させて上記低温貯留槽11に戻すことができる。このように再液化の機能不全を未然に防ぐことができる。また、既設の装置を利用して、それに第2の凝縮器21を取り付ければ、既設の第1の圧縮機12や第1の凝縮器13をそのまま改造せずに使用することができ、簡易な設備変更でボイルオフガスを完全に再液化できる。
【0056】
また、第2の冷媒を第1の冷媒よりも低温に冷却して第2の凝縮器21に供給する冷却手段としての冷凍機24をさらに備えているため、第1の凝縮器13で再液化しなかったボイルオフガスを、第2の凝縮器21において、第1の凝縮器13よりも低温の冷媒により確実に再液化し、再液化の機能不全を未然に防ぐことができる。
【0057】
また、上記冷却手段としての冷凍機24は、第2の冷媒の温度が一定になるよう制御するため、第2の凝縮器21に使用する冷媒の温度制御を一定にするため、必要以上に制御が複雑にならず、簡易な制御による第2の凝縮器21においてボイルオフガスを確実に再液化し、再液化の機能不全を未然に防ぐことができる。
【0058】
また、上記第1の凝縮器13における気相の圧力を検知して所定圧力以上になったときにガスを取り出して第2の凝縮器21に送る調節弁25をさらに備えたため、第1の凝縮器13における再液化能力が低下して内部の圧力が上昇してきたときに、自動的に気相のボイルオフガスを第2の凝縮器21に送って再液化することができる。したがって、通常時は第1の凝縮器13で運転を行ない、液化ガスの組成が変更されたり第1の冷媒に温度上昇があったときに第2の凝縮器21を併用して再液化することが可能となる。
【0059】
図2は、本発明のボイルオフガスの再液化装置の第2実施形態を示す。
【0060】
この例では、上記第1の凝縮器13内の気相から取り出したガスを第2の凝縮器21に導入する際にさらに圧縮する第2の圧縮機28をさらに備えている。
【0061】
すなわち、第2の取出路22における調節弁25の下流側に、第2の圧縮機28が設けられ、第1の凝縮器13において再液化されなかったボイルオフガスを、第1の圧縮機12による圧縮圧力よりもさらに高圧に圧縮して第2の凝縮器21に導入する。
【0062】
それ以外は、第1実施形態と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。
【0063】
本実施形態によれば、下記のような作用効果を奏する。
【0064】
すなわち、上記第1の凝縮器13内の気相から取り出したガスを第2の凝縮器21に導入する際にさらに圧縮する第2の圧縮機28をさらに備えたため、第1の凝縮器13で再液化しなかったボイルオフガスを、さらに圧縮して圧力を高めることにより、第2の凝縮器21において確実に再液化し、再液化の機能不全を未然に防ぐことができる。
【0065】
すなわち、この例では、第2の凝縮器21に導入するボイルオフガスが、第1の凝縮器13よりも高圧に圧縮されるため、第2の凝縮器21に供給する第2の冷媒が、第1の冷媒と同じ温度であっても、十分な再液化を達成することができる。
【0066】
それ以外は、第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
【実施例】
【0067】
つぎに、比較例とともに実施例を説明する。
【0068】
(比較例)
図3に示す装置により、エタン3容量%+プロパン97容量%のLPGを大気圧で貯蔵したLPG低温貯留槽1では、槽内温度は約−45℃であり、エタン17容量%+プロパン83容量%のボイルオフガスが生成される。このボイルオフガスを圧縮機2で1.9MPa以上に圧縮して32℃の海水で40℃まで冷却すると完全に液化する。すなわち、上記組成のボイルオフガスを海水で40℃に冷却して完全に液化するには、圧縮機の吐出圧力を約2MPaとして設計・製作する必要がある。
【0069】
この装置において、LPGガスの組成が変更され、エタン6容量%+プロパン94容量%となった場合、同様に圧縮、冷却して完全に液化するためには、約2.3MPaの吐出圧力が必要となり、この装置では、完全に液化できなくなる。また、圧縮機2、凝縮器3、膨張弁4等が吐出圧力2MPaとして設計・製作されており、これらを改造するには多大なコストがかかる。
【0070】
(実施例)
図1に示す装置により、エタン6容量%+プロパン94容量%のLPGを貯蔵して再液化を行った。第1の凝縮器13ではボイルオフガスの容量の約22容量%しか再液化せず、残りの78容量%は第1の凝縮器13の気相に溜まり、圧力上昇をもたらせる。第1の凝縮器13の気相から非凝縮成分のボイルオフガスを取出して第2の凝縮器21に導入し、第2の冷媒によって27℃まで冷却することにより、完全に液化することができた。
【符号の説明】
【0071】
1:LPG低温貯留槽
2:圧縮機
3:凝縮器
4:膨張弁
11:低温貯留槽
12:第1の圧縮機
13:第1の凝縮器
14:第1の膨張弁
15:第1の取出路
16:第1の冷却コイル
17:第1の還流路
21:第2の凝縮器
22:第2の取出路
23:第2の冷却コイル
24:冷凍機
25:調節弁
26:第2の膨張弁
27:第2の還流路
27A:第2の還流路
28:第2の圧縮機
29:圧力検知器
図1
図2
図3