特許第5794523号(P5794523)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5794523-放射化コンクリートの処理方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5794523
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】放射化コンクリートの処理方法
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/30 20060101AFI20150928BHJP
   G21F 9/10 20060101ALI20150928BHJP
【FI】
   G21F9/30 561F
   G21F9/30 535Z
   G21F9/30 531M
   G21F9/10 E
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-98219(P2011-98219)
(22)【出願日】2011年4月26日
(65)【公開番号】特開2012-229984(P2012-229984A)
(43)【公開日】2012年11月22日
【審査請求日】2014年3月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 義文
(72)【発明者】
【氏名】木村 博
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 和敬
(72)【発明者】
【氏名】松尾 浄
【審査官】 藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−197094(JP,A)
【文献】 特開2002−341088(JP,A)
【文献】 特開2010−066047(JP,A)
【文献】 特開平06−285454(JP,A)
【文献】 特開平11−012003(JP,A)
【文献】 特開2008−116275(JP,A)
【文献】 特開平08−194094(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/30
G21F 9/10
B09B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射化コンクリートを粉砕する粉砕工程と、
前記粉砕工程で得られた粉砕物を処理液に浸し前記粉砕物に含まれる決定核種のコバルトおよびユーロピウムを抽出する第一の洗浄工程と、
前記第一の洗浄工程後の粉砕物と処理液とを固液分離する固液分離工程と、
前記固液分離工程で分離した処理液からコバルト、ユーロピウムを非決定核種とともに回収する回収工程を備え、
前記第一の洗浄工程では、前記処理液は70℃以上150℃以下の硝酸であり、前記処理液に前記粉砕物を3時間以上30時間以下浸し、
前記回収工程では、前記固液分離工程で分離した処理液を中和させて、コバルト、ユーロピウムを水酸化物として沈殿させるとともに前記非決定核種を水酸化物として沈殿させ、沈殿したコバルト、ユーロピウムの水酸化物と前記非決定核種の水酸化物とをそれぞれに分別せずに回収することを特徴とする放射化コンクリートの処理方法。
【請求項2】
前記粉砕工程で得られた粉砕物を所定の粒径を超える第一の粉砕物と前記所定の粒径以下の第二の粉砕物とに分級する分級工程と、
前記分級工程で得られた第二の粉砕物を硝酸である処理液に浸して前記第二の粉砕物に含まれるコバルトおよびユーロピウムを抽出する第二の洗浄工程とを備え、
前記分級工程で得られた第一の粉砕物を前記第一の洗浄工程および固液分離工程で処理し、前記固液分離工程で分離した処理液および前記第二の洗浄工程後の処理液を前記回収工程で処理することを特徴とする請求項1に記載の放射化コンクリートの処理方法。
【請求項3】
前記分級工程で得られた第二の粉砕物を、骨材とセメント粉に分ける骨材セメント分離工程を備え、前記骨材、または、前記骨材およびセメント粉を前記第二の洗浄工程以降の工程で処理することを特徴とする請求項2に記載の放射化コンクリートの処理方法。
【請求項4】
前記粉砕工程で得られた粉砕物を粒径別に分別し、分別された前記粉砕物ごとに第一の洗浄工程を行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の放射化コンクリートの処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射化したコンクリートから決定核種を除去して、該放射化コンクリートを処理する放射化コンクリートの処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば原子力発電所などの原子力関連施設においては、十分な強度を有するとともに放射線の遮蔽性に優れることから、構造躯体をコンクリートで構築するようにしている。
そして、このような原子力関連施設のコンクリートは、放射線に暴露されて放射化されるため、施設のリプレイス(廃炉)などを行う際に、放射性廃棄物として保管管理の必要が生じている。
このため、近年では、放射化コンクリートの処理方法が提案されている(例えば非特許文献1参照)。
【0003】
ところで、コンクリートには、種々の元素が含まれているが、この中で放射化する決定核種は、Co(コバルト)およびEu(ユーロピウム)である。また、コンクリートには、非決定核種のFe(鉄)やAl(アルミニウム)なども含まれている。
非特許文献1の放射化コンクリートの処理方法では、コンクリートを硝酸などの酸性の処理液で溶解・加熱し、処理液中に抽出された金属(Co、Eu、Fe、Alなど)を回収している。
【0004】
処理液中の金属の回収工程では、処理液にアルカリを添加して中和させ、水酸化物となって沈殿した金属を回収している。ここで、Fe、Alなどは、処理液がpH3〜5となると水酸化物となって沈殿し、Co、Euは、処理液がpH7〜8となると水酸化物となって沈殿するため、処理液のpHを段階的にあげて、pH3〜5の段階でFe、Alなどを回収し、pH7〜8の段階でCo、Euを回収している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】“世界初、放射化コンクリートの放射能低減化技術を開発”、[online]、平成22年3月2日、清水建設、[平成23年3月25日検索]、インターネット<URL:http://www.shimz.co.jp/news_release/2010/770.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、非特許文献1による放射化コンクリートの処理方法では、非決定核種のFe、Alなどを回収するときに、その処理液中に決定核種のCo、Euが溶解しているため、回収されたFe、AlなどにCo、Euが付着している虞がある。このため、回収されたFe、Alなどを洗浄したり、脱水したりする必要があり、この作業に労力とコストがかかっている。
【0007】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、放射化コンクリートから決定核種のCo、Euを効率的に除去することができる放射化コンクリートの処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る放射化コンクリートの処理方法は、放射化コンクリートを粉砕する粉砕工程と、前記粉砕工程で得られた粉砕物を処理液に浸し前記粉砕物に含まれる決定核種のコバルトおよびユーロピウムを抽出する第一の洗浄工程と、前記第一の洗浄工程後の粉砕物と処理液とを固液分離する固液分離工程と、前記固液分離工程で分離した処理液からコバルト、ユーロピウムを非決定核種とともに回収する回収工程を備え、前記第一の洗浄工程では、前記処理液は70℃以上150℃以下の硝酸であり、前記処理液に前記粉砕物を3時間以上30時間以下浸し、前記回収工程では、前記固液分離工程で分離した処理液を中和させて、コバルト、ユーロピウムを水酸化物として沈殿させるとともに前記非決定核種を水酸化物として沈殿させ、沈殿したコバルト、ユーロピウムの水酸化物と前記非決定核種の水酸化物とをそれぞれに分別せずに回収することを特徴とする。
【0009】
本発明は、第一の洗浄工程では、処理液は70℃以上150℃以下の硝酸であり、処理液に粉砕物を3時間以上30時間以下浸すことにより、粉砕物に含まれるコバルトおよびユーロピウムの安定した抽出を行うことができる。
また、回収工程では、固液分離工程によって分離された処理液からコバルトおよびユーロピウムと非決定核種とを別々に回収する従来の方法と比べて、非決定核種に付着したコバルトやユーロピウムを除去する作業が必要ないため、1つの工程でコバルトおよびユーロピウムを確実にかつ効率的に回収することができるとともに、作業にかかる労力を軽減できてコストを削減することができる。
【0010】
また、本発明に係る放射化コンクリートの処理方法では、前記粉砕工程で得られた粉砕物を所定の粒径を超える第一の粉砕物と前記所定の粒径以下の第二の粉砕物とに分級する分級工程と、前記分級工程で得られた第二の粉砕物を硝酸である処理液に浸して前記第二の粉砕物に含まれるコバルトおよびユーロピウムを抽出する第二の洗浄工程とを備え、前記分級工程で得られた第一の粉砕物を前記第一の洗浄工程および固液分離工程で処理し、前記固液分離工程で分離した処理液および前記第二の洗浄工程後の処理液を前記回収工程で処理してもよい。
本発明は、放射化コンクリートを所定の粒径を超える第一の粉砕物と所定の粒径以下の第二の粉砕物とに分級し、第二の粉砕物は第二の洗浄工程で処理することにより、第二の洗浄工程では第一の洗浄工程と比べて処理液の温度を低くすることができると共に、処理液に第二の粉砕物を浸す時間を短縮することができる。
回収工程では、固液分離工程で分離した処理液および第二の洗浄工程後の処理液を一緒に処理してもよいし、別々に処理して処理液中の決定核種であるコバルトおよびユーロピウムを沈殿させて回収してもよい。
【0011】
また、本発明に係る放射化コンクリートの処理方法は、前記分級工程で得られた第二の粉砕物を、骨材とセメント粉に分ける骨材セメント分離工程を備え、前記骨材、または、前記骨材およびセメント粉を前記第二の洗浄工程以降の工程で処理することが好ましい。
本発明では、第一の粉砕物は、主に骨材の粉砕物であり、第二の粉砕物を骨材とセメント粉に分けて処理するので、骨材とセメント粉とをそれぞれ再利用する場合、処理後に骨材とセメント粉とを分離する必要がなく作業性がよい。
また、例えば、セメント粉の放射線量が所定の値よりも低い場合は、第二の洗浄工程および回収工程を行わなくてもよく、処理にかかる労力を軽減させることができる。
【0012】
また、本発明に係る放射化コンクリートの処理方法では、前記粉砕工程で得られた粉砕物を粒径別に分別し、分別された前記粉砕物ごとに第一の洗浄工程を行ってもよい。
本発明では、粉砕工程で得られた粉砕物を粒径別に分別し、分別された粉砕物ごとに第一の洗浄工程を行うことにより、粒径別に処理液の硝酸の温度や硝酸に浸す時間を設定できるので、処理時間や硝酸の保温に無駄がなく処理時間が短縮できると共に、コストを削減できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、放射化コンクリート粉砕物に含まれるコバルトおよびユーロピウムの安定した抽出を行うことができるとともに、回収工程では、固液分離工程によって分離された処理液からコバルトおよびユーロピウムと非決定核種とを別々に回収する従来の方法と比べて、非決定核種に付着したコバルトやユーロピウムを除去する作業が必要ないため、1つの工程でコバルトおよびユーロピウムを確実にかつ効率的に回収することができて、作業にかかる労力を軽減できコストを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第一の実施の形態による放射化コンクリートの処理方法を示すフロー図である。
図2】本発明の第二の実施の形態による放射化コンクリートの処理方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第一の実施の形態)
以下、第一の発明の実施の形態による放射化コンクリートの処理方法について、図1に基づいて説明する。
第一の実施の形態による放射化コンクリートの処理方法は、例えば、原子力発電所などの原子力関連施設の改修・解体などに伴い固体廃棄物として発生する放射化コンクリートを処理する方法に関するものである。
【0016】
第一の実施形態の放射化コンクリートの処理方法は、図1に示すように、原子力関連施設等で生じる放射化コンクリート(廃コンクリート塊)1を粉砕する粉砕工程2と、粉砕工程2で得られた放射化コンクリートの粉砕物S1を処理液W1に浸して粉砕物S1の金属成分を処理液W1に抽出する第一の洗浄工程3と、第一の洗浄工程3後の粉砕物S2と処理液W2を分離する固液分離工程4と、固液分離工程4で分離した処理液W3から金属成分を回収する回収工程5と、固液分離工程4で分離した粉砕物S2を乾燥処理する乾燥工程6とを備えている。
【0017】
(粉砕工程2)
まず、粉砕工程2では、粉砕機を用いて放射化コンクリート1を8mm以下の粒径となるように粉砕する。このとき、例えばロールクラッシャーなどの粉砕機を用いて、表面積を極力大きくした粉砕物S1が得られるように放射化コンクリート1を薄片状に粉砕することが望ましい。このとき、篩などで粉砕物S1の粒径が8mm以下であることを確認し、8mm以上のものに対しては、再度粉砕工程2を行い8mm以下にする。
このとき、粉砕物S1は、粒径が8mm以下であれば、それぞれの粒径が不揃いであってもよい。
【0018】
(第一の洗浄工程3)
続いて、粉砕物S1を洗浄する第一の洗浄工程3を行う。
第一の洗浄工程3では、まず、粉砕物S1を反応層に投入すると共に、この反応層に処理液W1を供給する。処理液W1には硝酸を使用する。硝酸の濃度は30重量%以上70重量%以下とする。
そして、処理液W1を約120℃の状態に保ち、処理液W1中に粉砕物S1を約24時間浸す。粉砕物S1が処理液W1に浸されることにより、粉砕物S1に含まれていた金属成分が処理液W1中に抽出される。
処理液W1中に抽出される金属成分は、決定核種のCo(コバルト)およびEu(ユーロピウム)や、非決定核種のFe(鉄)やAl(アルミニウム)などである。
第一の洗浄工程3後の、金属成分が溶け出て除去された粉砕物を粉砕物S2とし、金属成分が抽出された処理液を処理液W2とする。
【0019】
(固液分離工程4)
続いて、第一の洗浄工程3後の粉砕物S2と処理液W2を分離する固液分離工程4を行う。
粉砕物S2と処理液W2は、テフロン(登録商標)製のフィルタやスクリーンまたはかご等を用いて簡便に固液分離され、固形分である粉砕物S2は必要に応じて再度第一の洗浄工程3に返送され、液体分である処理液W2は回収工程5に送られる。
このとき、第一の洗浄工程3で、粉砕物S1をテフロン(登録商標)製のフィルタやスクリーンまたはかごなどに入れた状態で反応層の処理液W1浸しておき、固液分離工程4で、反応層からこのテフロン(登録商標)製のフィルタやスクリーンまたはかごなどを粉砕物S2と共に取り出すことで粉砕物S2と処理液W2の分離を行うことができる。
なお、固液分離工程4後の処理液W2を、他の粉砕物S1を対象とする第一の洗浄工程3に再利用してもよい。この場合、再利用されて、再度固分離工程4で分離された処理液W2に回収工程5を行う。
【0020】
(回収工程5)
続いて、固液分離工程4後の処理液W2から金属成分を回収する回収工程5を行う。
回収工程5では、決定核種のCoおよびEuを非決定核種のFeやAlなどとともに回収する。
【0021】
回収工程5では、固液分離工程4後の強酸性の処理液W2を、アンモニア水や水酸化ナトリウム溶液などのアルカリ、コンクリートを砕いたときのセメント粉を用いて中和させ、pH値が7〜8の処理液W3にする。
処理液W2が、中和される段階で、pH値が3〜5の弱酸域となると、非決定核種のFeやAlなどが、水酸化物となり沈殿する。そして、処理液W2のpH値が7〜8となると、決定核種のCoおよびEuが水酸化物となり沈殿する。
【0022】
そして、pH値が7〜8となり金属成分が沈殿した処理液W3をフィルタープレスを用いて固液分離して、沈殿した決定核種のCoとEuの水酸化物および非決定核種のFeやAlなどの水酸化物を回収する。これらの回収された水酸化物を、金属成分乾燥工程6に送り、乾燥処理した後に、放射性廃棄物として処分する。
また、高塩水となった処理液W3は、希釈して放流する。
なお、固液分離の際には、フィルタープレス以外に遠心脱水機や多重円盤型脱水機などを用いてもよい。
【0023】
(乾燥工程7)
回収工程5と前後して固液分離工程4で得られた固形分の粉砕物S2を一般廃棄物として処分する前に乾燥させ乾燥工程7を行う。
粉砕物S2を乾燥機で乾燥処理し、所定の含水率以下に調整する。乾燥後の粉砕物S3の放射線量を測定し、決定核種が確実に取り除かれていることを確認した上で、粉砕物S3を一般廃棄物として処分する。
なお、粉砕物S2をリサイクルする場合には、この乾燥工程7を行わない場合もある。
【0024】
したがって、第一の実施形態の放射化コンクリートの処理方法によれば、第一の洗浄工程3において、処理液W1に硝酸を使用することにより、粉砕物S1に含まれる金属成分の安定した抽出を行うことができる。そして、粉砕物S1を約120℃に保たれた硝酸である処理液W1に24時間浸すことにより、粉砕物S1に含まれる金属成分が効率的に抽出されると共に、粉砕物S1の各粒径が8mm以下で不揃いであったとしても、一括して処理することができる。
【0025】
そして、回収工程5では、固液分離工程によって分離された処理液W2からコバルトおよびユーロピウムと非決定核種とを別々に回収する従来の方法と比べて、非決定核種に付着したコバルトやユーロピウムを除去する作業が必要ないため、1つの回収工程5でコバルトおよびユーロピウムを確実にかつ効率的に回収することができて、作業にかかる労力を軽減できコストを削減することができる。
【0026】
(第二の実施の形態)
次に、他の第二の実施の形態について、添付図面に基づいて説明するが、上述の第一の実施の形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、第一の実施の形態と異なる構成について説明する。
【0027】
(分級工程11)
図2に示すように、第二の実施の形態による放射化コンクリートの処理方法では、粉砕工程2の後に、粉砕工程2で得られた粉砕物S1を篩などを用いて粒径0.5mmを超える粉砕物(第一の粉砕物)Saと、粒径0.5mm以下の微粉砕物(第二の粉砕物)Sbとに分級する分級工程11を行う。このとき、粉砕物Saは、放射化コンクリート1の骨材の粉砕物であり、微粉砕物Sbは、放射化コンクリート1の骨材の微粉Scおよびセメント粉Sdである。
そして、粉砕物Saに、第一の実施の形態の粉砕物S1と同様に、第一の洗浄工程3および固液分離工程4をおこなう。
なお、本実施の形態では、粒径0.5mmを境として、粉砕物Saと微粉砕物Sbに分級しているが、分級される粒径の境の値は0.5mm以外でもよい。このとき、分級される粒径の境の値は、後に行われる固液分離工程4で使用されるテフロン(登録商標)製のフィルタやスクリーンまたはかご等の目から粉砕物Saが脱落しない値とすることが好ましい。
【0028】
(骨材セメント分離工程12)
微粉砕物Sbを、骨材の微粉Scとセメント粉Sdに分離する骨材セメント分離工程12を行う。
骨材セメント分離工程12では、例えば、微粉砕物Sbをサイクロンを利用して骨材の微粉Scとセメント粉Sdに分離する。
【0029】
サイクロンは、骨材の微粉Scとセメント粉Sdとの粒子密度の差を利用して粉体を分離するもので、逆円錐状のサイクロン内の渦巻き気流によって、密度の大きな粒子は内周面側に、密度の小さい粒子は中央部側に集まる。そして、サイクロン内の内周面側には、逆円錐の形状による下降流が形成され、それに呼応する形で中央部には上昇流が形成されるので、骨材の微粉Scとセメント粉Sdの分離を行うことができる。
このように分離された骨材の微粉Scを後述の工程で処理し、セメント粉Sdは、そのまま一般廃棄物として処分したり、リサイクルしたりする。
【0030】
(第二の洗浄工程13)
第一の洗浄工程3および第一の固液分離工程4と前後して、骨材セメント分離工程12で得られた骨材の微粉Scを洗浄する第二の洗浄工程13を行う。以下、この骨材の微粉Scを微粉砕物Scとして説明する。
第二の洗浄工程13では、まず、微粉砕物Scを反応層に投入すると共に、この反応層に処理液W6を供給する。処理液W6には第一の洗浄工程3で使用する処理液W1と同様に、硝酸を使用する。硝酸の濃度は30重量%以上70重量%以下とする。
【0031】
そして、処理液W6を約100℃の状態に保ち、処理液W6中に微粉砕物Scを約24時間浸す。微粉砕物Scが処理液W6に浸されることにより、微粉砕物Scに含まれていた金属成分が処理液W1中に抽出される。
第二の洗浄工程13後の、金属成分が溶け出て除去された微粉砕物を微粉砕物S6とし、金属成分が抽出された処理液を処理液W7とする。
なお、第二の洗浄工程13では、処理液W6に代わって、固液分離工程4で分離された処理液W2を再利用してもよい。この場合は、処理液W2の余熱を利用して処理を行うこともできる。また、処理液W6中に微粉砕物Scを浸す時間は適宜設定されてもよい。
【0032】
続いて、第一の固液分離工程4で粉砕物S2と分離された処理液W2と、第二の洗浄工程13後の微粉砕物S6が混ざった処理液W7に、回収工程5以降の処理を行い、第一の実施の形態と同様に、決定核種のCoおよびEuを非決定核種とともに回収する。このとき、処理液W2と微粉砕物S6が混ざった処理液W7とは一緒に処理される。
そして、微粉砕物S6は、回収工程5で行うフィルタープレスを用いた固液分離によって、処理液W3中に沈殿した水酸化物と共に処理液W3から分離される。その後、金属成分乾燥工程6を経て放射性廃棄物として処分される。
また、固液分離工程4で分離された粉砕物S2は、第一の実施の形態と同様に、乾燥工程7に送られ、リサイクルまたは一般廃棄物として処理できる形態の粉砕物S3となる。
【0033】
第二の実施の形態による放射化コンクリートの処理方法では、放射化コンクリート1を骨材の粉砕物Sa、骨材の微粉砕物Sc、セメント粉Sdに分離して処理しているので、骨材とセメント粉Sdとをそれぞれ再利用する場合に、処理後に分別する必要がなく作業が行いやすい。
また、放射化コンクリート1を骨材の粉砕物Sa、骨材の微粉砕物Sc、セメント粉Sdに分離して処理することにより、微粉砕物Scを処理する第二の洗浄工程13では、粉砕物Saを処理する第一の洗浄工程3と比べて処理液W1の温度を低くすることができると共に、処理液W1にセメント粉Sbを浸す時間を短縮することができる。
【0034】
以上、本発明に係る放射化コンクリートの処理方法の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上述した実施の形態では、第一の洗浄工程3において、粉砕物S1を約120℃の処理液W1に約24時間浸しているが、処理液W1の温度は、70℃以上150℃以下であればよく、粉砕物S1を浸す時間は、3時間以上30時間以下であればよい。また、第一の洗浄工程3において、金属成分の溶出を促進するため、処理液W1を攪拌してもよい。
また、上述した実施の形態では、第二の洗浄工程13において、微粉砕物Scを約100℃の処理液W6に約24時間浸しているが、処理液W6の温度は、70℃以上150℃以下であればよく、微粉砕物Scを浸す時間は、3時間以上30時間以下であればよい。
また、第二の洗浄工程13において、金属成分の溶出を促進するため、処理液W6を攪拌しても良い。
【0035】
また、上述した実施の形態では、粉砕工程2で得られた粉砕物S1は粒径が8mm以下で、それぞれの粒径は不揃いであるが、粉砕物S1を粒径別に分級し、その粒径別に第一の洗浄工程3を行い、第一の洗浄工程3における処理液W1の温度や粉砕物S1を浸す時間を設定してもよい。例えば、ふるい目が8mm、5.6mm、3mm、1mmのふるいを用いて粉砕物S1を分級し、それぞれの粒径別に、処理液の温度を70℃以上150℃以下、処理液に浸す時間を3時間以上30時間以下で適宜設定しても良い。
また、粉砕物S1の粒径別に第一の洗浄工程3を行う場合には、比較的粒径の大きい粉砕物S1の第一の洗浄工程3を高温の処理液W1で行った後に、この処理液W1の余熱を利用して比較的粒径の小さい粉砕物S1の第一の洗浄工程3を行ってもよい。
【0036】
また、上述した第二の実施の形態では、分級工程11で得られた粒径0.5mm以下の微粉砕物Sbを、骨材セメント分離工程12で骨材の微粉砕物Scとセメント粉Sdに分離し、セメント粉Sdをそのまま一般廃棄物として処分したり、リサイクルしたりしているが、セメント粉Sdに含有される放射線量によっては、セメント粉Sdを骨材の微粉砕物Scと同様に第二の洗浄工程13以降の工程で処理してもよい。また、骨材セメント分離工程12を行わず、分級工程11で得られた微粉砕物Sbを第二の洗浄工程13以降の工程で処理してもよい。
また、上述した第二の実施の形態では、第二の洗浄工程13後の処理液W7と微粉砕物S6を分離せずに回収工程5で処理しているが、処理液W7と微粉砕物S6とを分離して、処理液W7のみを回収工程5で処理し、微粉砕物S6を乾燥処理し、一般廃棄物として処分したり、リサイクルしたりしてもよい。なお、微粉砕物S6をリサイクルする場合は、乾燥処理を行わなくてもよい。
また、上述した第二の実施の形態では、処理液W2と処理液W7とは、回収工程5で一緒に処理されるが、別々に処理しても良い。その場合、処理液W2と処理液W7に、それぞれ回収工程5を行えばよい。
【符号の説明】
【0037】
1 放射化コンクリート(廃コンクリート塊)
2 粉砕工程
3 第一の洗浄工程
4 固液分離工程
5 回収工程
11 分級工程
12 骨材セメント分離工程
13 第二の洗浄工程
S1、S2、S3 粉砕物
Sa 粉砕物(第一の粉砕物)
Sb、Sc 微粉砕物(第二の粉砕物)
W1、W2、W6、W7 処理液(硝酸)
W3 処理液
図1
図2