【実施例】
【0059】
(材料と方法)
1. 細胞培養
ヒトBリンパ芽球細胞株のNamalwa細胞(ATCC CRL-1432)を、ウシ胎児血清 (FCS; GIBCO)を10%含むRPMI1640培地(Wako) (R10)を用い、37℃, 5% CO
2条件下で培養した。
【0060】
2. 細胞感染に用いるウイルスの準備と力価の測定
孵化鶏卵(10日齢)の漿尿膜腔に10,000倍希釈したSendai virus (SeV) (5,120 HA units/ ml)を200μl接種し、35℃で72時間感染後、4℃で一夜冷蔵した。この感染孵化鶏卵から回収した漿尿液中のSeVの力価を、初日ヒナ赤血球を用いた赤血球凝集試験により測定した。
【0061】
3. アンチセンスRNA (asRNA)発現プラスミドの作製
ヒトIFN-α1遺伝子 (WT; nt 1-876 (配列番号1に示される塩基配列の塩基番号に相当))並びにそのタンパク質コーディング領域の5’側断片 (ED7; nt 68-487)を、それぞれphuIFN-α1 (Kimura et al., JCS, 117: 2259, 2004)、phuIFN-α1/ED7発現ベクターからHindIII/XbaI断片として切り出した。また、CSS+断片 (nt: 182-488)、CSS断片(nt: 208-452)、SL2断片 (nt:308-434)、BSL断片(nt: 322-352)は、phuIFN-α1プラスミドDNAから、PCR反応によりHindIII/XbaI断片として増幅、作製した。これらを、CMV immediate early regionプロモーターを用いた発現ベクターpCG-BLのXbaI/HindIIIクローニングサイトにアンチセンス方向に挿入し、それぞれヒトIFN-α1/WT asRNA、IFN-α1/ED7 asRNA、IFN-α1/CSS+ asRNA、IFN-α1/CSS asRNA、IFN-α1/SL2 asRNA、IFN-α1/BSL asRNAをそれぞれ発現する、phuIFN-α1R、pIFN-α1/ED7R、pIFN-α1/CSS+R、pIFN-α1/CSSR、pIFN-α1/SL2R、pIFN-α1/BR発現ベクターとした。
【0062】
4. DNAトランスフェクションによるasRNAのノックダウン (KD)と過剰発現ならびにRNAトランスフェクションによるasRNA機能中心の過剰発現
asRNAのノックダウンにあたっては、実験前日に培養Namalwa細胞を、6-ウエルプレート(Nunc)に3 x 10
6 cells/2 ml/wellとなるように播種し、37℃, 5% CO
2条件下で24時間培養した。その後、室温で150 x g, 4分間遠心沈澱させ、必要ウエル数分相当のNamalwa細胞を回収した。この細胞沈渣をウエル数x 1 mlのR10に浮遊後、30 μl/3 x 10
6cellsのMAT-S Immobilizer (IBA; 7-2002-100)を添加し、5分毎に撹拌しながら、室温で15分間反応させた。その後、6-ウエルプレートを必要枚数使い、R10培地を予めウエルあたり1 ml宛分注したそれぞれのウエルに対しImmobilizerを吸着させたNamalwa細胞浮遊液各1 mlを分注し、専用のマグネットプレート (IBA 7-2004-000)上に室温で、20分間留置した。この間に、3 x 10
6 cellsあたりセンスオリゴヌクレオチド(hIFN-α1/Se1)3 μgを含むRPMI1640 200 μlをMAT-A Reagent (IBA 7-2001-100) 3 μlに加え、混和後、室温で15分間留置し、トランスフェクション ミックスを作製した。所定の時間が経過したマグネットプレート上のImmobilizer吸着のNamalwa細胞に対し、このトランスフェクション ミックスを各ウエル毎に加え、10分間静置したのち、CO
2インキュベーターに移し、37℃で6時間培養した。但し、センスオリゴヌクレオチドによるasRNA KD効果の特異性を検討する場合には、hIFN-α1/Se1に加えて、hIFN-α1/Se2, Se3, Se4, NSe1, NSe2も使用し、細胞への添加後48時間迄培養したが、これらの細胞にはウイルスを感染させなかった。
[センスオリゴヌクレオチド]
hIFN-α1/Se1: 5’-C*C*A*GCAGATCTTCAACC*T*C*T-3’(配列番号3)
hIFN-α1/Se2: 5’-A*T*C*TTCAACCTCTTTAC*C*A*C-3’(配列番号4)
hIFN-α1/Se3: 5’-G*A*T*GAGGACCTCCTAGA*C*A*A-3’(配列番号5)
hIFN-α1/Se4: 5’-G*A*C*CTCCTAGACAAATT*C*T*G-3’(配列番号6)
[陰性対照センスオリゴヌクレオチド]
hIFN-α1/NSe1: 5’-A*A*T*CTCTCCTTCCTCCT*G*T*C-3’(配列番号7)
hIFN-α1/NSe2: 5’-C*C*A*GGAGGAGTTTGATG*G*C*A-3’(配列番号14)
(*はS化したヌクレオチドを示す。)
asRNAの過剰発現にあたっては、前日に播種し、24時間培養したNamalwa細胞に対し、上記3に述べた各種asRNA発現ベクター0.5 μgに2.5 μgのpUC12を加え、計3 μgにしたプラスミドDNAミックスを先に述べたようにして導入し、37℃で20時間培養した。
これらのasRNA発現ベクター導入によるIFN-α1 mRNAの発現量の変化の検討からIFN-α1 asRNA機能ドメインをマッピング(下記結果9、
図6参照)した。得られた結果を検証する目的で、機能ドメインの中心となるIFN-α1 mRNAのCSS二次構造中BSL領域に対応するアンチセンスRNAシークエンスを持つ下記のアンチセンスリボオリゴヌクレオチドをNamalwa細胞に導入し、37℃で6時間培養した。
IFNA1/346-322ORN: 5’-U(M*)G(M*)U(M*)G(M*)G(M*)U(M*)A(M*)A(M*)A(M*)G(M*)A(M*)G(M*)G(M*)U(M*)U(M*)G(M*)A(M*)A(M*)G(M*)A(M*)U(M*)C(M*)U(M*)G(M*)C(M)-3’(配列番号28)
陰性対照:IFNA1/224-205 ncORN: 5’-G(M*)A(M*)C(M*)A(M*)G(M*)G(M*)A(M*)G(M*)G(M*)A(M*)A(M*)G(M*)G(M*)A(M*)G(M*)A(M*)G(M*)A(M*)U(M*)U(M)-3’(配列番号29)
(*: S化、M: 2’-o-Me化したヌクレオチドを示す。)
【0063】
5. Namalwa細胞へのSeV感染
上述のセンスオリゴヌクレオチド、asRNA発現プラスミドまたはアンチセンスリボオリゴヌクレオチドのトランスフェクションにより、asRNAの発現をノックダウンあるいは過剰発現、さらにはasRNAの機能中心を過剰発現するNamalwa細胞 (asRNA-minus、asRNA-overexpressedならびにasORN) (6-ウエルプレートで、1ウエルあたり3 x 10
6 cells)または同一細胞数で何も導入していないNamalwa細胞 (mock)をそれぞれ、室温で150 x g, 4分間、2回遠心・洗浄し、最終沈渣を2 mlのRPMI1640に再浮遊した。その後SeVを50 HA units/10
6 cellsの割合で加え、室温で1時間感染させた。終了後、再度室温で150 x g, 4分間、2回遠心・洗浄し、3 x 10
6cells/2 ml/wellとなるようにR10培地に浮遊後、6-ウエルプレートに再度播種した。各感染細胞は37℃で静置培養し、0, 1, 3, 6, 12, 24, 30, 36及び48時間経過後に回収し、以下のRNA抽出、精製実験に供した。
また、asRNAのノックダウンあるいは過剰発現による同RNAの安定性に対する影響を検討する目的で、SeV感染後一定時間を経過したノックダウンあるいは過剰発現細胞に対しActinomycin D (ActD) (Sigma A9415)を0.75あるいは1 μg/mlになるよう添加し、所定に時間の経過後、下記の細胞総RNA分画の抽出に供した。
【0064】
6. 細胞総RNA分画あるいは核RNA分画ならびに細胞質RNA分画の抽出並びに各種酵素を用いたRNAの精製
6-a. 細胞総RNA分画の抽出
上記所定の時間経過後、asRNA-minus/感染細胞またはasRNA-overexpressed/感染細胞並びにmock/感染細胞を回収し、4℃で150 x g, 4分間遠心後、各細胞沈渣に対しTRIzol (Invitrogen; 15596-018) 1 mlを加えた。TRIzol中でピペッティングにより細胞を溶解後、室温で5分間留置した。その後、クロロフォルム (Wako; 試薬特級、 038-02606)0.2 mlを加え、15秒間用手にて震盪混和後、室温に再度2-3分間静置した。続いて、4℃にて12,000 x g, 15分間遠心分離した。この操作により試料は三層に分離したので、最上層の無色の水層(約600 μl)から400 μlを新しい滅菌済み1.5 ml微量遠心チューブに分取した。このチューブに、使用したTRIzol 1 mlあたり0.5 mlのイソプロピルアルコール (Wako; 試薬特級)を加え転倒混和し、室温に10分間留置後、再度4℃にて12,000 x g, 10分間遠心した。上清を吸引、除去し、RNA沈渣に1 mlの75%エチルアルコールを加えた。4℃にて7,500 x g, 5分間遠心し、上清を吸引、除去後、1 mlの99.5%エチルアルコール (Wako; 試薬特級)を加え、再度4℃にて7,500 x g, 5分間遠心した。上清を吸引、除去後、沈渣を風乾し、滅菌再蒸留水に溶解した。このRNA溶液に対し、滅菌再蒸留水を最終210 μlになるように添加後、20 mg/mlのグリコーゲン (Roche Applied Science; 901 393)を1 μl, 7.5 Mの酢酸アンモニウム(Wako; 分子生物学用01820485)を1/2溶加え、撹拌後2.5溶の99.5%エチルアルコールを添加し、4℃にて10分間留置した。その後、4℃, 15,300 x gにて30分間遠心し、得られたRNA沈渣を上述のように75%, 99.5%のエチルアルコールで洗浄、風乾後、50 μlのTE
8.0(10 mM Tris・HCl, pH 8.0/ 0.1 mM EDTA)に溶解し、以下の酵素反応に供する迄-20℃に保存した。
【0065】
6-b. 核RNA分画ならびに細胞質RNA分画の抽出
asORNあるいはncORNを導入し、SenVの感染後24時間を経過したNamalwa細胞を回収し、細胞沈渣を490 μlのTNMバッファー(10 mM Tris-HCl, pH 7.4/10 mM NaCl, 3 mM MgCl
2, 0.1 mM EDTA, 0.4 units RNase inhibitor, 1 mM DTT)に浮遊させた。その後10% NP-40を10 μl加え(最終濃度0.2%)、先太のチップを使ってピペッティング後、5分間氷冷した。次いで、4℃において500 x g、5分間で遠沈後、上清400 μlに対しTRIzol 1.2 mlを加え、細胞質RNA分画用試料とした。続いて、TNMバッファー400 μlを用いて、4℃において800 x gで1分間遠沈し、これを三回繰り返した。最終核沈渣物に対しTRIzol 0.7 mlを加え、核RNA分画用試料とした。その後、6-aに記したように細胞質RNA分画ならびに核RNA分画を租抽出した。
【0066】
6-c. プロテアーゼ消化
上述の粗抽出した細胞総RNA、細胞質並びに核RNAにProteinase K (PCR grade; Roche Applied Science, 03115 887 001) 20μgを加え、Tris/SDS buffer (100 mM Tris-HCl, pH 7.4/ 50 mM EDTA, 2.5% SDS) 100μl中で、37℃, 15分間混入するNamalwa細胞由来のタンパク質成分を消化した。その後RNase-freeのTE
8.0飽和フェノール(日本ジーン、319-90093):クロロフォルム:イソアミルアルコール (Wako; 試薬特級; 135-12015)=25:24:1混合液 (PCIAA)を1容加え、4℃で15,300 x g, 2分間遠心した。分取した水層のRNA溶液に対し、イソアミルアルコール=24:1混合液 (CIAA)をさらに1容加え同様に遠心後、6-aで行ったと同様に水層中の細胞総RNAを塩析し、RNA沈渣を50μlのTE
8.0に溶解した。
【0067】
6-d. DNase I 消化
この細胞総RNA溶液に対し、TURBO DNA-free
TM Kit (Applied Biosystems, AM1907) 添付のTURBO DNase 2単位を加え、添付のバッファー100 μl中で、37℃, 30分間混入するゲノムDNAを消化した。その後、同酵素をさらに2単位追加し、計60分間経過後に添付のDNase Inactivation Reagentを10 μl加え、十分に撹拌後、室温に2分間放置し、酵素反応を停止させた。その後、4℃にて、9,100 x gで2分間遠心し、上清中の細胞総RNAを6-aで行ったと同様に塩析させた。mock/感染細胞並びにasRNA-minus/感染細胞またはasRNA-overexpressed/感染細胞由来のRNA沈渣を各々60 μl並びに30 μlのTE
8.0に溶解し、260, 280, 320 nmの吸光度の測定から、RNA濃度並びにフェノールとタンパク質成分の混入度を測定した。精製したRNA標品のA260/A280比は常に1.95-2.05であり、A320値は0.006以下であった。
【0068】
6-e. ポリA鎖の有無に基づく精製RNAの分画
PolyATract mRNA isolation system (Promega)を用いて、ビオチン化オリゴ(dT)プライマーとストレプトアビジン標識磁性粒子への吸着を指標に、上記のDNaseI処理を施したRNA標品のうち、mock/感染細胞(24時間)由来の細胞総RNAから、ポリA鎖を有するmRNA画分とポリA鎖を有さないRNA画分を分画した。
【0069】
7. 逆転写反応並びにPCR
7-a. 逆転写反応
前項で精製したasRNA-minus/感染またはasRNA-overexpressed/感染並びにmock/感染の全細胞RNA、あるいはポリA鎖陽性または陰性のRNA画分各2 μgに対し最終14 μlとなるように滅菌再蒸留水を加えた(但し、ポリA鎖陽性RNAは、26.2 ngの同RNAに対して1973.8 ngの大腸菌tRNAを加えて、全量を2 μgとした)。続いて、IFN-α1 mRNAの逆転写用に、2 μMのプラス鎖特異的なhIFN-α1/R2 primerを、IFN-α1またはIFN-α1/ED7 asRNA の逆転写用に2 μMのマイナス鎖特異的なhIFN-α1/5UF1 primer、hIFN-α1/F1 primerまたはhIFN-α1/F1A primerを各1 μl加え、70℃で10分間保温後、4℃に留置した。これらのRNA溶液に対し、5倍濃度の逆転写酵素バッファー(東洋紡、TRT-1B)を5 μl、100 mM dNTPsを25 μl、滅菌再蒸留水1.2 μl、RNase阻害剤(RNase OUT; invitrogen、10777-019)0.3 μl、逆転写酵素(ReverTra Ace; 東洋紡、TRT-101) 1 μlを各々加え、47℃で30分間逆転写反応を進めた。その後、70℃に15分間保温し酵素を失活させた後に4℃に留置した。次いで、上述の逆転写酵素バッファーで5単位/μlとなるように希釈したRNaseH (TakaraBio, 2150A)を1 μl添加し、37℃、20分間鋳型RNAを消化後、前記のように作製したcDNAを塩析した。得られたcDNA沈渣は、mRNA由来を40 μl、asRNA由来は20 μlのTE
8.0に溶解した。
[逆転写用プライマー]
プラス鎖特異的プライマー(IFN-α1 mRNAの逆転写用)
hIFN-α1/R2: 5’-GGATCTCATGATTTCTGCTCTGAC-3’(配列番号8)
マイナス鎖特異的プライマー(IFN-α1 asRNAの逆転写用)
hIFN-α1/5UF1: 5’-GAACCTAGAGCCCAAGGTTCAGAG-3’(配列番号9)
hIFN-α1/F1: 5’-TGGTGCTCAGCTGCAAGTCAAGC-3’(配列番号10)
hIFN-α1/F1A: 5’-CTCTCTGGGCTGTGATCTCCCTG-3'(配列番号11)
変異IFN-α1 asRNA特異的プライマー
bglR1: 5’-ACAACACCCTGAAAACTTTGC-3’(配列番号12)
18S rRNA逆転写用ランダムプライマー
nonadeoxyribonucleotide mixture; pd(N)9 (Takara, 3802)
【0070】
7-b. PCRと Agarose gel 電気泳動
7-aで得たcDNA溶液の各2 μlに対し、滅菌再蒸留水29.6 μl, 10倍濃度のGene taqバッファー(日本ジーン、314-02873)を4 μl、2.5 mMのdNTPsを3.2 μl、100 μMのForwardprimerとReverse primer を各0.4 μl加えた。次に、0.2 μlのanti-Taq high (東洋紡、TCP-101)と0.2 μlのtaq polymerase (Gene taq;日本ジーン、314-02873)を混和後、室温で5分間保温し、この混合液0.4 μlを各サンプルに添加後、DNA Engine PTC-0200G (Bio-Rad)を用いて、PCRを以下のように行った。
1サイクル: 95℃, 1分
22-38サイクル: 95℃, 15秒/72℃, 1分 (1サイクル毎に、95℃ から0.3℃ずつプライマーアニール温度を順次降下させる)
1サイクル: 72℃, 30秒
[使用プライマー]
IFN-α1 mRNA由来のcDNA用:
IFN-α1/F2B: 5’-CTCTACCAGCAGCTGAATGACTT-3’(配列番号13)
IFN-α1/R2: 5’-GGATCTCATGATTTCTGCTCTGAC-3’(配列番号8)
asRNA由来のcDNA用:
IFN-α1/5UF1B:5’-ATCTCAGCAAGCCCAGAAGTATC-3’(配列番号15)
IFN-α1/R0: 5’-GAGATTCTGCTCATTTGTGCCAG-3’(配列番号16)
IFN-α1/F1B: 5’-CTGGGCTGTGATCTCCCTGAGAC-3’(配列番号17)
IFN-α1/R1: 5’-AGAGATGGCTGGAGCCTTCTG-3’(配列番号18)
IFN-α1/3UF1:5’-TGAAAACAATTCTTATTGACTCATAC-3’(配列番号19)
IFN-α1/3UR3: 5’-CAGTGTAAAGGTGCACATGACG-3’(配列番号20)
IFN-α1/DF1: 5’-GGAACTTCCTGTATGTGTTCATTC-3’(配列番号21)
IFN-α1/DR2: 5’-ATACAACCTGGTTTAGAGAAAGGTC-3’(配列番号22)
IFN-α1/DF2: 5’-GACCTTTCTCTAAACCAGGTTGTAT-3’(配列番号23)
IFN-α1/DR3: 5’-GCTCCTTCTTCTCATAGTATTTAGG-3’(配列番号24)
IFN-α1 mRNAおよびasRNA由来の各cDNA量の同時比較定量用(下記の両プライマーペアを用いてそれぞれのcDNA量を定量し両cDNA量を比較するとともに、定量結果に使用したプライマーペアの違いによる結果の食い違いがない事を確認する):
IFN-α1/F2B: 5’-CTCTACCAGCAGCTGAATGACTT-3’(配列番号13)
IFN-α1/R2: 5’-GGATCTCATGATTTCTGCTCTGAC-3’(配列番号8)
IFN-α1/F1B: 5’-CTGGGCTGTGATCTCCCTGAGAC-3’(配列番号17)
IFN-α1/R1: 5’-AGAGATGGCTGGAGCCTTCTG-3’(配列番号18)
変異IFN-α1 asRNA由来のcDNA用:
RseF1: 5’-GTAAAGAGGTTGAAGATCTGC-3’(配列番号25)
bglR1: 5’-ACAACACCCTGAAAACTTTGC-3’(配列番号12)
18S rRNA由来のcDNA用:
18S-F: 5’-CTTAGAGGGACAAGTGGCG-3’(配列番号26)
18S-R: 5’-ACGCTGAGCCAGTCAGTGTA-3’(配列番号27)
各精製RNA試料濃度を検定するための内部標準として増幅した18S rRNA由来のcDNAは22サイクル、IFN-α1 mRNA由来のcDNAは35+αサイクル、asRNA由来のcDNAは37+αサイクル増幅し、PCR産物は3% アガロース(アガロースS;日本ジーン、312-01193)による電気泳動で解析した。
尚、mRNA画分又はasRNA画分に混入するゲノムDNA由来の増幅シグナルを検出する目的で、逆転写反応に用いたmock/感染、asRNA-minus/感染並びにasRNA-overexpressed/感染の各細胞に由来する全細胞RNAを各々100 ng又は200 ng使用して同様にPCRを行った。
また、リアルタイムPCR法により、上記の各cDNA量を定量した。cDNAの増幅と定量解析には、THUNDERBIRD
TM SYBR(登録商標)qPCR Mix (東洋紡、QPS-201)とChromo 4 real-time解析システム (Bio-Rad)を使用した。得られたIFN-α1 mRNA及びIFN-α1 asRNAのC
T値は、2
-AACT法により、18S rRNAのC
T値を用いて標準化後、陰性対象のサンプルに対する相対量(Relative IFN-α1 mRNA expression またはRelative IFN-α1 asRNA expression)で表した。
【0071】
8. IFN-α1 mRNA並びにasRNAの発現に及ぼすActive Hexose correlated Compound (AHCC)の効果判定
AHCC(アミノアップ化学)0.5 mg/ml存在下に培養したNamalwa細胞に、上記5のようにSeVを感染させた。感染0、12、24時間後に細胞を回収し、上記6で述べたようにして、細胞総RNA分画を抽出した。このRNA画分を使用して、IFN-α1 asRNAとIFN-α1 mRNAの発現に及ぼすAHCCの影響を、AHCC未添加細胞と比較、検討した。
【0072】
9. ELISAによるhIFN-αタンパク質の定量
asRNAの発現の変動がIFN-αタンパク質発現に与える影響を検討する目的で、SenVを感染させてIFN-α1 mRNAの発現を誘導した上記のNamalawa細胞培養上清を回収し、上清中に遊離したIFN-αタンパク質をヒトインターフェロン-α ELISAキット(PBL Biomedical Laboratories, #41100-4)を用いて定量した。具体的には、添付のヒト精製IFN-αを適宜に希釈して作製した0-500 pg/ml溶液と各時間毎に回収した培養上清の希釈液を、キット添付の抗IFN-α特異抗体を吸着させた96ウエルプレートに一定量添加後添付試薬を用いて呈色反応させ、450 nmの吸光度を各々測定した。既知濃度のIFN-αタンパク質の吸光度の測定結果から作製した検量線を用い、各時間毎の回収サンプルの吸光度から培養上清中に分泌されたIFN-αタンパク質量を算出した。
【0073】
(結果)
1.ヒトIFN-α1遺伝子 (IFNA1)に由来する内因性asRNAの存在の同定
上述のmock/感染細胞から24時間を経過後に回収した細胞総RNA分画を用い、マイナス鎖特異的プライマーの5UF1およびF1を用いて、それぞれ個別にIFN-α1 asRNAからcDNAを逆転写した。それぞれのcDNAはRT1 (nt: 2より開始)、RT2 (nt: 102より開始)と名付け、
図1A中に示す。続いて、PCRプライマーペアとして、5UF1B (nt: 32-54; 5’非翻訳領域に相当する)/R0 (nt: 210-188; タンパク質コーディング領域に相当する)、F1B (nt: 131-153; タンパク質コーディング領域に相当する)/R1 (nt: 301-281; タンパク質コーディング領域に相当する)、3UF1 (nt: 652-677; 3’非翻訳領域に相当する)/3UR3 (nt: 839-818; 3’非翻訳領域に相当する)、DF1 (IFNA1遺伝子ポリA鎖付加部位よりnt: 40-63下流領域に相当する)/DR2 (IFNA1遺伝子ポリA鎖付加部位よりnt: 188-164下流領域に相当する)、DF2 (IFNA1遺伝子ポリA鎖付加部位よりnt: 164-188下流領域に相当する)/DR3 (IFNA1遺伝子ポリA鎖付加部位よりnt: 326-302下流領域に相当する)を用い、RT1、RT2の各cDNAを増幅した。各PCR 産物を5’側から、PCR1、PCR2、PCR3、PCR4、PCR5と名付け、IFNA1遺伝子上の相当する位置を
図1A中に示す。提示したPCRの結果から、RT1 cDNAは、最下流に位置するDF2/DR3を除く、他の全てのプライマー対において増幅された。これに対し、nt: 102から逆転写されたRT2 cDNAにおいては、DF2/DR3プライマー対で増幅されるPCR5に加えて、逆転写開始点より上流に位置するPCR1(5UF1B/R0)においても増幅産物は確認できなかった(
図1A)。以上の結果から、IFN-α1 asRNAは、同遺伝子のpolyA付加部位 (nt: 877)より188塩基から326塩基下流領域において転写が開始され、IFNA1遺伝子上少なくともnt: 2までに到る、IFN-α1 mRNAの全長を含む領域にわたることが示された。
さらに、ポリA鎖陽性mRNA分画を用いたIFN-α1 asRNAに対するRT-PCR結果から、同RNAにはポリA鎖が存在することが明らかになった(
図1B)。続いて、SenV感染24時間を経過したNamalwa細胞において、誘導されたIFN-α1 mRNAとIFN-α1 asRNAをリアルタイムPCR法により比較定量した。その結果、IFN-α1 asRNA量は、SenV感染による発現誘導のピーク時(24時間、
図3A参照)において、IFN-α1 mRNA発現の3-3.7%相当量しか発現していなかった。又、両者の定量値は、使用したプライマーペアの異同により影響されなかった。
【0074】
2.IFN-α1 mRNAの核外輸送と発現を調節するRNA二次構造
これまでの研究から、核内で転写、プロセッシングを受けたIFN-α1 mRNAが核外輸送されるにあたっては、同mRNA上の輸送責任領域(CSS; nt: 208-452)が形成する二つのステムループ (SL1, SL2)からなるRNA二次構造が核外輸送因子により認識されることが必要な事を明らかにした(Kimura et al., Medical Mol. Morphol.,43:145, 2010)。中でも、SL2構造が必須であり、本ステムループ領域を削除したmRNA変異体 (IFN-α1 mRNA/ΔSL2)は核外輸送されず、核内への滞留が認められた(
図2A、パネルC)。一方、SL1領域の削除は変異体mRNA(IFN-α1 mRNA/ΔSL1)の核外輸送に影響を与えなかった(
図2A、パネルB)。興味深いことに、SL2領域中のBulged SL(nt: 322-352)領域を削除した場合、変異体mRNA (IFN-α1 mRNA/ΔBSL)の発現低下が観察 (
図2A、パネルD) されたことから、本領域がIFN-α1 mRNAの転写および/あるいは安定性の調節に関わる可能性が示唆された。
【0075】
3.IFN-α1 mRNAの核外輸送責任領域に対するセンスオリゴヌクレオチドによるasRNA発現の阻害とその特異性の検討
上記2.(
図2A、パネルD)の結果を踏まえ、CSS二次構造中Bulged SL構造とasRNAの相互作用ならびにasRNAによるIFN-α1 mRNA発現調節への関与の可能性を検討する目的で、Bulged SL構造を形成する遺伝子配列に相同なセンスオリゴヌクレオチド (
図2B; Se1, Se2)を作製し、Namalwa細胞に導入した。合わせて、SL2領域を構成する他のステムループ構造とIFN-α1 asRNAの相互作用を検討する目的で、センスオリゴヌクレオチドSe3, Se4を作製し、同様にNamalwa細胞に導入した。
図2Bに、導入後6-48時間のIFN-α1 asRNA発現の解析結果を示す。導入前(0時間)と比較し、Bulged SL領域のループ構造に対して作製したセンスオリゴヌクレオチドSe1, Se2を導入した細胞においてのみ、asRNA発現の阻害(ノックダウン、KD)が観察され、その抑制効果はSe1導入細胞において48時間継続した(
図2B, Se1)が、Se2の場合、導入後24時間で初めて確認され、48時間では既に消失していた (
図2B, Se2)。一方、CSS二次構造中、基部並びにSL1領域のRNA二本鎖構造を形成する遺伝子配列から作製したセンスオリゴヌクレオチド (
図2B、NSe1, NSe2)を導入した場合には、IFN-α1 asRNAの発現抑制効果は全く認められなかった(
図2B、Nse1, Nse2)。
【0076】
4.asRNAのノックダウンがIFN-α1 mRNAの発現に及ぼす効果
Se1を導入したSenV感染Namalwa (asRNA-minus/感染)細胞ならびに未導入感染(mock/感染) 細胞において、発現したIFN-α1 asRNAとmRNAシグナルを、感染後経時的に鎖特異的RT-PCR法で解析した。その結果を
図3Aに、Realtime PCR法による定量結果を
図3Bに示す。
mock/感染細胞においては、IFN-α1 asRNAは、ウイルス感染前に既に認められ(
図3A、KD (-)/IFN-α1 asRNA, 0hr;
図3B、IFN-α1 asRNA, KD (-), 0hr)、Namalwa細胞において構成的に発現していることが確認された。このasRNAの発現は、SenV感染後24時間まで増大し(
図3A、KD (-)/IFN-α1 asRNA)、0時間の発現量の約5倍に達した後(
図3B、IFN-α1 asRNA, KD (-))漸減した。一方、asRNA-minus/感染細胞においては、asRNAの発現はSe1センスオリゴヌクレオチドの導入により著明に阻害されているのが確認できたが、感染によりその発現は急速に回復し、感染6時間後に対照細胞の発現レベルを超え、24時間後に0時間発現量の約23倍量の発現を見たのち急速に減衰した(
図3A、KD (+)/IFN-α1 asRNA;
図3B、IFN-α1 asRNA, KD (+))。
Mock/感染細胞において、IFN-α1 mRNAもasRNAと同様、感染前において低レベルの構成的発現が確認されたが、その発現レベルはウイルス感染に伴い急速に増大し、12時間後に0時間の35倍のレベルに到達したが、その後漸減した (
図3A、KD (-)/IFN-α1 mRNA;
図3B、IFN-α1 mRNA, KD (-))。一方、asRNA-minus/感染細胞においては、mRNAの発現は感染後24時間まで増加し、mock/感染細胞を上回る0時間の約76倍量のレベルに到達したのち急減した。asRNA-minus/感染細胞においてその減少は速やかで、感染後36時間には既にmock/感染細胞の発現レベルを下回った(
図3A、KD (+)/IFN-α1 mRNA;
図3B、IFN-α1 mRNA, KD (+))。
【0077】
5.IFN-α1 asRNAのノックダウンによるmRNAの不安定化効果
上記4 (
図3A, B) の実験結果から、asRNAによるIFN-α1 mRNAの発現調節の機作として同mRNAの安定化が示唆されたことから、asRNA-minus/感染細胞におけるIFN-α1 mRNAの半減期を、mock/感染細胞における値と比較・検討することを考えた。この目的で、両細胞に対しSenV感染12時間後にRNA転写阻害剤であるActinomycin Dを添加し、その後30分並びに1から4時間経過後に、IFN-α1 asRNAのノックダウンがIFN-α1 mRNAの分解に及ぼす影響を検討した。
asRNA-minus/感染細胞において、IFN-α1 mRNAの分解動態は、y = -0.369log(x)+0.489の近似式で表される分解曲線で近似された (
図3C, KD (+))。一方、mock/感染細胞におけるIFN-α1 mRNAの分解動態に対する近似式は、y = -0.097x + 0.996であった。したがって、Actinomycin D添加後0.5-4時間に得られたIFN-α1 mRNAの発現量の変化から、その半減期を計算すると、mock/感染細胞における半減期が5.11時間であるのに対し、asRNA-minus/感染細胞では0.93時間と著明に短縮していた。すなわち、asRNAのノックダウンにより、IFN-α1 mRNAが半減するのに必要な時間はほぼ18%に短縮しており、その著しい不安定化が明らかであった。
【0078】
6.AHCCがIFN-α1 asRNA並びにIFN-α1 mRNAの発現に及ぼす影響
AHCCがIFN-α1 asRNA並びにIFN-α1 mRNAの発現に及ぼす影響を検討する目的で、AHCCを0.5 mg/ml含む培養液で培養したNamalwa細胞にSeVを感染させ、誘導されるIFN-α1 asRNA並びに同mRNAの発現動態を対照細胞における発現動態と比較した。その結果、AHCCはNamalwa細胞におけるIFN-α1 asRNAの構成的な発現を強く阻害する(
図4A; AHCC(+)/IFN-α1 asRNA, 0hr)のみならず、ウイルス感染により誘導される経時的な発現量の増加も抑制した(
図4A; AHCC(+)/AHCC(-), IFN-α1 asRNA/12-24hr)。AHCCによる抑制効果は、IFN-α1 mRNAの発現においても同様に観察され、その発現量は、SenV感染後0-24時間の全経過時間において、AHCC(-)細胞に比較し減少した(
図4A; AHCC (+)/AHCC(-), IFN-α1 mRNA/0-24hr)。この結果、AHCC (+)細胞において培養上清に遊離されたIFN-α1タンパク質量は、ウイルス感染後12時間でAHCC (-)細胞の18.6%、また24時間では75%に減少していた(
図4B)。
【0079】
7.IFN-α1/WT asRNAの過剰発現によるIFN-α1 mRNAの発現増大効果
上記5(
図3C)の結果から考えられたIFN-α1 asRNAによる同mRNAの安定化効果をさらに検証する目的で、IFN-α1/WT asRNA発現プラスミドを予め導入したSenV感染Namalwa (Overexpression (+)/感染)細胞ならびに未導入感染 (Overexpression (-)/感染)細胞を用いて、ウイルス感染により誘導されるIFN-α1 asRNAとmRNAシグナルを経時的に比較検討した。その結果を
図5Aに、Realtime PCR法による定量結果を
図5Bに示す。Overexpression(-)/感染細胞において、IFN-α1 asRNAの発現は、前記(
図3A、KD (-)/IFN-α1 asRNA;
図3B、IFN-α1 asRNA, KD (-);
図4A、AHCC (-)/IFN-α1 asRNA)と同様、SenV感染後24時間まで継続して増大した(
図5A、Overexpression (-)/IFN-α1 asRNA)。一方、Overexpression (+)/感染細胞においては、asRNAの発現はウイルス感染前よりOverexpression(-)細胞における24時間レベルを上回り、この発現レベルは感染後24時間迄維持された(
図5A、Overexpression (+)/IFN-α1 asRNA)。
IFN-α1 mRNAの発現は、Overexpression (-)/感染細胞においては、前記 (
図3A、KD (-)/IFN-α1 mRNA;
図3B、IFN-α1 mRNA, KD (-);
図4A、AHCC (-)/IFN-α1 mRNA) と同様、ウイルス感染に伴い急速に増大し、12時間後にピークに達した後漸減した(
図5A、Overexpression (-)/IFN-α1 mRNA;
図5B、Overexpression (-))。これに対し、IFN-α1/WT asRNAを過剰発現した場合、IFN-α1 mRNAの発現は感染開始時点で、既にOverexpression (-)細胞におけるレベルの15倍に達していたが、感染の進行に伴い相対比は減少するものの、感染後24時間までその発現量は増加し続け、Overexpression (-)/感染細胞における発現量の約2倍のレベルになった (
図5B、Overexpression (+)/(-))。
【0080】
8.IFN-α1/WTasRNAの過剰発現によるIFN-α1 mRNAの安定化効果
上記7(
図5A, B)の実験で観察された、IFN-α1/WT asRNAの過剰発現によるIFN-α1 mRNAの発現量の増加のメカニズムを知る目的で、Overexpression (+)/感染細胞とOverexpression (-)/感染細胞におけるIFN-α1 mRNAの半減期を比較・検討することを考えた。この目的で、両細胞に対しSenV感染6時間後にActinomycin Dを添加し、その後30分ならびに1から4時間経過後に、IFN-α1/WT asRNAの過剰発現がIFN-α1 mRNAの分解に及ぼす影響を解析した。
Overexpression (+)/感染細胞において、IFN-α1 mRNAの分解動態は、y = -0.067x+1.059の近似式で表される分解曲線で近似された (
図5C、Overexpression (+))。一方、Overexpression (-)/感染細胞におけるIFN-α1 mRNAの分解動態に対する近似式は、y = -0.182x + 1.081であった (
図5C、Overexpression (-))。従って、Actinomycin D添加後0.5-4時間に得られたIFN-α1 mRNAの発現量の変化からその半減期を計算すると、Overexpression (-)/感染細胞における半減期が2.76時間であるのに対し、Overexpression (+)/感染細胞では8.12時間と著明に延長していた。すなわち、asRNAの過剰発現により、IFN-α1 mRNAの寿命は約3倍に延長され、その著しい安定化作用は明らかであった。
【0081】
9.IFN-α1 mRNAを安定化する同asRNAの機能中心の決定
上記5(
図3C)および8(
図5C)で証明したIFN-α1 asRNAの同mRNA安定化作用が、asRNA上のどの部位に由来するかを知る目的で、IFN-α1 mRNAのCSS二次構造中、安定化に寄与することが報告済みのSL2領域、BSL構造 (
図2) のアンチセンスシークエンス (
図6A/BSL) を中心に、5’と3’方向に塩基配列を順次延長し、
図6Aに示す各種変異IFN-α1 asRNAを発現するプラスミドベクターを作製した。それぞれの変異asRNA発現ベクターを導入したNamalwa細胞にSenVを感染させ、24時間後のIFN-α1 mRNAの発現量を計測した結果を、
図6A/IFN-α1 mRNAと
図6Bに示す。Mock/感染細胞 (
図6A/C) におけるIFN-α1 mRNAの発現量は、WT asRNAの共発現により、
図5と同様、2.3倍に増加するのに対し、最大の増加を達成したのは、CSSのSL2領域のアンチセンスRNAを共発現した場合で、その発現量は対照の3.1倍であった (
図6A/ IFN-α1 mRNA;
図6B)。
【0082】
10.IFN-α1 asRNAの機能中心シークエンスを持つアンチセンスリボオリゴヌクレオチドによるIFN-α1 mRNAの発現増大効果と細胞内の効果発現部位の決定
図6で示したIFN-α1 asRNAの機能中心のマッピング結果を検証する目的で、IFN-α1 mRNA CSS二次構造中のBSL領域に対応するアンチセンス鎖シークエンスからなるアンチセンスリボオリゴヌクレオチド (IFNA1/346-322ORN;
図7AのasORN)を作製し、そのIFN-a1 mRNA発現調節効果を解析した。陰性対照としては、asRNA発現のノックダウン実験 (上記3、
図2) において陰性対照(Nse1)として用いた、CSS RNA二次構造の基部二本鎖を形成するシークエンスに由来するアンチセンスリボオリゴヌクレオチド(IFNA1/224-205 ncORN;
図7AのncORN)を用いた。その結果、アンチセンスリボオリゴヌクレオチドは双方とも、IFN-α1 asRNAの発現に影響せず、その発現動態、発現量は、mockトランスフェクション/SeV感染細胞と同様であった(
図7B; IFN-α1 asRNA)。これに対し、IFN-α1 mRNAの発現は、機能中心シークエンスを有するアンチセンスリボオリゴヌクレオチド(IFNA1/346-322ORN)を導入した場合においてのみ増加し(
図7B; IFN-α1 mRNA, asORN)、感染開始時点で、IFNA1/224-205 ncORNを導入した場合(
図7B; IFN-α1 mRNA, ncORN)の約5倍、mockトランスフェクション(
図7B;IFN-α1 mRNA, mock Tfx)の約3倍量が発現していた。感染の進行に伴い相対比は減少するものの、感染後24時間までその発現量は増加し続け、最終的にIFNA1/224-205 ncORN導入細胞ならびにmockトランスフェクション細胞の約2倍量が発現した(
図7B)。このasORNによるIFN-a1 mRNA量増大効果の細胞内発現部位を決定する目的で、asORNを導入し、SenVを感染させたNamalwa細胞を24時間経過後に回収し、その核RNA分画と細胞質RNA分画を解析した。その結果、asORNを導入した細胞の細胞質においてのみ、IFN-α1 mRNAの発現量が、ncORN導入細胞ならびにmock細胞に比較し約2倍に増大していた(
図7C/D, IFN-α1 mRNA, Total/Cytoplasmic asORN)。同細胞においても、核内ではそのような発現量の変動は観察されなかった(
図7C/D, IFN-α1 mRNA, Nuclear asORN/ncORN/mock)。またasORN導入細胞、ncORN導入細胞を問わず、 IFN-α1 asRNAの発現量は核、細胞質共に変化は認められなかった(
図7C/D, IFN-α1 asRNA, Total/Cytoplasmic/Nuclear asORN/ncORN/mock)。
【0083】
以上の結果から、IFN-α1 asRNAはIFNA1遺伝子上nt: 434-308(さらには、BSL領域のnt: 346-322)に存在する機能中心を介して転写後性に、しかも細胞質においてIFN-α1 mRNAを安定化し、その発現調節を担っていることが示された。この事実は、asRNAの発現をノックダウンするSe1センスオリゴヌクレオチドやasRNA機能中心に由来するアンチセンスリボオリゴヌクレオチドの投与によるIFN-α1 mRNAの発現制御の可能性を強く示唆しており、新たなINF-αタンパク質発現モジュレーターの開発につながるものと期待される。
【0084】
本発明を好ましい態様を強調して説明してきたが、好ましい態様が変更され得ることは当業者にとって自明であろう。本発明は、本発明が本明細書に詳細に記載された以外の方法で実施され得ることを意図する。したがって、本発明は添付の「請求の範囲」の精神および範囲に包含されるすべての変更を含むものである。
ここで述べられた特許および特許出願明細書を含む全ての刊行物に記載された内容は、ここに引用されたことによって、その全てが明示されたと同程度に本明細書に組み込まれるものである。
本出願は、2009年10月16日及び2010年5月7日付でそれぞれ日本国に出願された特願2009-239801及び特願2010-107544を基礎としており、それらの内容は全て本明細書に包含される。