【実施例1】
【0015】
(本発明の装置構成)
図1及び
図2は、本発明の内接歯車型膨張機1(以下、単に「膨張機」とも呼ぶ)の概略を示した斜視図及び断面図である。なお、
図2においては、後述する台座63は説明の便宜上、図示していない。膨張機1は、
図1に示すように、ほぼ同一外径を有した円筒形を成す複数の部材から構成される。これらの部材は、具体的には、エンドカバー66、ポート本体40、ロータケーシング30、ベアリングホルダ61、シールケース62である。これらの部材66,40,30,61,62には、複数本(例えば4本)のボルト64が挿通されて互いに一体に組み付けられる。また、ボルト64は台座63にも挿通されるので、部材66,40,30,61,62は安定した状態で固定される。部材66,40,30,61,62の円筒断面中央には、ロータ軸50が挿通されている。
【0016】
ベアリングホルダ61の中央には、ロータ軸50の中心軸を基点とした円筒形の内部空間61aが形成されており、この内部空間61aにはボールベアリング61bが設けられる。なお、ポート本体40内にもボールベアリング49bを収容可能な円筒形の内部空間49が設けられる。これにより、膨張機1内に挿通されたロータ軸50は、これらのボールベアリング49b,61bによって回転可能に支持される。
【0017】
シールケース62は、ベアリングホルダ61に接続した一側から台座63の開口部に挿通されて他側まで延びた円筒凸部62aを有している。なお、円筒凸部62aの内部には、ベアリングホルダ61に向かって開口した円筒形の内部空間62bが形成されている。この内部空間62bには、内部空間62bの壁面とロータ軸50の外周面とを密閉するシール材62cが設けられ、これにより図示しない作動流体が膨張機1内を流れる際にボールベアリング61bから流れ出た作動流体
が膨張機1から漏れ出すことを防ぐことができる。
【0018】
図3は膨張機1の主要な構成要素を説明するための分解斜視図である。膨張機1は、内歯21を有したアウターロータ20と、アウターロータ20内に回転可能に設けられかつ内歯21と噛合する外歯11を有したインナーロータ10と、の一対の内接型歯車を有する。本実施例では、内接型歯車として内接型トロコイド歯車を用いた膨張機1について説明するものとする。インナーロータ10は、インナーロータ10内に形成された軸穴12に挿通されたロータ軸50(
図3には説明の便宜上、図示せず)によって軸支されている。軸穴12にはキー溝13が形成されており、ロータ軸50上に設けられたキー51に係合している(
図5を参照)。これにより、熱機関サイクル(例えば、ランキンサイクル)の回路中を循環する作動流体の作用圧力によって、アウターロータ20とともに回転するインナーロータ10の回転力は、ロータ軸50を介して負荷側に伝達され、動力回収又は発電機で発電させるための動力として使用されることになる。
【0019】
一方、アウターロータ20の外側には、インナーロータ10とアウターロータ20とを収容するようにロータケーシング30が設けられている。なお、
図2、
図3及び
図5に示すように、アウターロータ20の中心軸O
oはインナーロータ10の中心軸O
iとは一致していない。つまり、アウターロータ20及びその外側に設けられた後述する針状ころ軸受31及びロータケーシング30は、インナーロータ10及びその内側に挿通されたロータ軸50に対して偏心していることになる。
【0020】
本発明の膨張機1は、吸入ポート41と吐出ポート42とが形成されたポート本体40をさらに備える。ポート本体40は、例えば、
図3及び
図4に示すような円筒形を成し、ポート本体40の外周側面43には吸入通路44と吐出通路45が設けられ、ポート本体40の中央にはロータ軸50を挿通させる軸穴46が設けられている。吸入通路44と吐出通路45とは外周側面43から軸穴46に向かって延びており、それぞれ最も奥まった位置に吸入ポート41又は吐出ポート42に連結する貫通穴47,48が設けられている。熱機関サイクル回路を循環する作動流体は、ポート本体40の吸入通路44から膨張機1に入り、貫通穴47にてほぼ直角に進行方向を曲げるとともに流路面積が狭められる。その後、吸入ポート41にて若干、流路面積が拡大し、相対的に回転するインナーロータ10の外歯11とアウターロータ20の内歯21との間に形成された内部空間に導入・回転し、その後、吐出ポート42から貫通穴48及び吐出通路45を通って、膨張機1から排出されて熱機関サイクル回路に戻ることになる。
【0021】
(ポンプと膨張機との使用環境の違い)
上述したように、本発明の目的に適した膨張機は存在しなかった為に、本発明者らは、トロコイドポンプ用歯車として実績のあるトロコイドロータ(トロコイド曲線を使用した歯車)を本発明の膨張機1としてそのまま転用できないか、先ず、検討した。その結果、トロコイドポンプと本発明の膨張機1とには、以下のような使用環境の違いがあることが分かった。
【0022】
(1)作動流体の物性
トロコイドポンプ用の作動流体には液体(オイル等)を使用するのに対し、本発明の膨張機1用の作動流体には、低沸点の有機熱媒体(例えば、HFC系冷媒、アンモニア、二酸化炭素CO
2など)を使用する。
【0023】
従って、本発明の膨張機1用の作動流体は、粘度が低いこと、液体と気体とが存在した二相流となり得ること、膨張しやすいこと、などの特徴を有しており、本発明の膨張機1の構造をこれらの特徴に適切に対応させる必要がある。
【0024】
(2)出力の範囲
比較対象となるトロコイドポンプ一機当たりの出力は広範囲であるのに対して、本発明にて目標とする膨張機一機当たりの出力は、100W〜10kW程度(さらに好ましくは100W〜1kW)であり、比較的小さい出力である。なお、出力が小さくなる程、摩擦損失の低減を図る必要がある。また、本発明の膨張機1内で回転するインナーロータ10の回転数は、最大で10,000rpm程度にまで及ぶため、公知のトロコイドポンプのロータ回転数(最大で3,500rpm程度)に比べて非常に高速となる。従って、本発明の膨張機1には、高速なロータ回転に対応可能な構造を採用すべきである。
【0025】
以上のような相違があるために、本発明の膨張機1では、以下に詳述するような改良構造が組み込まれている。
【0026】
(摩擦抵抗の低減)
先ず、本発明では、
図3及び
図5に示すように、ロータケーシング30は、ロータケーシング30の内周面に、アウターロータ20を回転可能に支持する複数の針状ころ軸受31又は玉軸受(図示せず)を備えていることを特徴とする。トロコイドポンプでは、一般に、ロータケーシング30の内周面には何も設けず、オイルを介してロータケーシング30とアウターロータ20とを「滑り接触」させる。本発明者らは、トロコイドポンプ用の公知のロータケーシングを本発明の膨張機1に組み付けて動作させようと試みたが、全く回転しなかった。そこで、上述のように、ロータケーシング30とアウターロータ20とを「ころがり接触」させる構造を取り入れることにした。これにより、摩擦抵抗やスターティングトルクを飛躍的に低減させることができる。特に、膨張比が大きくなる程、この低減効果がさらに向上する。また、高速回転時にもこの低減効果が大きくなり、同時に発熱も抑えられる。
【0027】
内接型歯車の膨張機1では、一般に、インナーロータ10が偏心回転すること、ロータ10,20間に形成される作用室の圧力値、及び吸気側と排気側との圧力差に起因して、アウターロータ20をロータケーシング30に押しつけようとするアキシャル負荷が軸方向と垂直方向とに周期的に且つ強く作用する。一方で、軸方向に作用するスラスト負荷はアキシャル負荷ほど大きくならない傾向がある。つまり、このアキシャル負荷がアウターロータ20とロータケーシング30との間の摩擦抵抗の要因となっており、これを低減することが重要と成る。
【0028】
ここで、針状ころ軸受31は、玉軸受等の他の軸受と比較して小スペースの割に大きなラジアル荷重が負荷できる上に、剛性も高く、慣性力が小さく、かつ、揺動運動にも適しているのでさらに好ましい。これにより、膨張機1は、出力の面だけではなく、信頼性と応答性との面でも優れるようになる。さらに、針状ころ軸受31は非常に薄肉であるために、膨張機を小型かつ軽量にしたまま、膨張容積を確保できる利点もある。
【0029】
(作動流体の漏れ損失の低減)
本発明では、上述のように、二相流又は気体の状態下の作動流体を用いるため、作動流体が膨張機1から漏れ出てしまうことを極力抑える措置を講じる必要がある。そこで、ロータ10,20の歯面11,21間の最小隙間(つまり、
図6(a)及び(b)に示すような、内歯21の最も内側に張り出した部分21aと外歯11の最も外側に張り出した部分11aとの隙間)を0.03mm以下と、可能な限り小さく設定することが好ましい。なお、実際の加工精度も考慮すると、最小隙間の上記範囲は上限である0.03mm近くに設定することが最も好ましい。一方、作動流体としてオイルを用いるトロコイドポンプでは、通常、対応する隙間は0.1mm程度に設定する。
【0030】
加えて、ポート本体40の側面やベアリングホルダ61の側面と、ロータ10,20の側面と、の隙間を0.02mm程度(つまり、0.015mm〜0.025mm)に比較的小さく設定することが好ましい。これにより、作動流体の漏れ損失をさらに低減することが可能になる。0.015mm未満になると、ポート本体40の側面やベアリングホルダ61の側面と、ロータ10,20の側面と、の間にかじりが発生してしまう恐れがあるため好ましくない。なお、作動流体としてオイルを用いるトロコイドポンプでは、通常、対応する隙間は0.05mm程度に設定する。
【0031】
なお、作動流体が通過する上記隙間を上記好適な範囲に設定すると、歯面11,21同士がぶつかり易くなり、ロータ10,20の回転不良が頻発する恐れがある。従って、本発明では、上記措置を講じるにあたって、ロータ軸50とインナーロータ10の軸穴12との隙間(具体的には、インナーロータ10の内周半径とロータ軸50の外周半径との差、つまり、片側隙間)を0.1mm〜0.2mm程度と、大幅に大きく設定することが好ましい。なお、トロコイドポンプでは、通常、対応する隙間は、0.01mm〜0.04mm程度となっており、つまり、上記好適な範囲の約25分の1〜100分の1程度に設定されている。なお、片側隙間が0.2mmより大きくなると、ガタツキが顕著になり、インナーロータ10の回転力がロータ軸50に適切に伝達されなくなる恐れがあるため好ましくない。
【0032】
(高速回転時のかじり対策)
上述のように、本発明の膨張機1においては、双方のロータ10,20を高速に回転させるため、ロータ10,20同士の接触面やロータ10,20とポート本体40との接触面にて摩耗やかじりが発生するおそれがある。特に、作動流体の候補として挙げられるHFC系冷媒は、環境問題に配慮して塩素を含ませていないために非常に潤滑性の低い媒体であり、この問題がより顕著になる。
【0033】
この問題に対処するため、本発明では、アウターロータ20又はインナーロータ10の表面に軟窒化法、塩浴窒化法、又はプラズマ窒化法のいずれかによる窒化処理を施すことが好ましい。窒化処理の際は、ロータ10,20の熱変形を抑えるために、処理温度は低く、処理時間は短い方が良い。この観点からは、窒化処理のうち、上述のいずれかの方法による窒化処理を施すことが好ましく、これらの方法以外の処理、例えば、ガス窒化法による処理は好ましくない。なお、実際の表面処理層の厚さとしては、約5mm程度(つまり、4mm〜6mm)と比較的薄くなるように窒化処理を施すことがさらに好ましい。処理層の厚さがある程度以上大きくなると、処理層が堆積したことによる表面の粗さ(凹凸)が顕著になり、ロータ10,20の回転不良の原因となるため好ましくない。
【0034】
さらに、ロータ10,20への窒化処理に加えて、ロータ10,20に接触するポート本体40の原料にかじりが発生しにくい鋳鉄を採用することで、これらの接触面での潤滑性を効果的に改善することができる。さらに、ポート本体40の側面にも上述の窒化処理を施すことで潤滑性を一層高めることが可能となる。
【0035】
次に、本発明の膨張機1にて実際に生じる膨張比について、以下に定義する容積比とともに説明する。本発明においては、
図6(a)及び(b)に示すように、ポート本体40の吸入ポート41の面積と吐出ポート42の面積との比率(本明細書においては容積比と呼ぶ。)を変えることで、膨張機1内で実際に生じる膨張比(各ポート41,42の開口位置とロータ10,20の噛み合い位置とから決まる作動流体の膨張比)を変化させることができる。なお、各ポート41,42の開口領域と、アウターロータ20とインナーロータ10との噛合(噛み合い)によって形成される容積の一部と、が重なるように各ポート41,42を設ける必要がある。例えば、
図6(a)は、容積比が1の場合の各ポート41,42の開口面積及び開口位置を示し、一方、
図6(b)は、容積比が2の場合の各ポート41,42の開口面積及び開口位置を示している。
【0036】
なお、実際の膨張比は、上記のように各ポート41,42の開口面積で定義した容積比と必ずしも一致するわけではないが、本発明者らの経験上、実際の膨張比はこの容積比に比例することが分かっている。
【0037】
なお、
図3、
図4及び
図6(a)に示すように、ポート本体40の吸入ポート41の流路と、吐出ポート42の流路と、が同一の形状・寸法を有している場合(つまり、容積比が1の場合)には、膨張機1を正逆どちらの方向に回転させても同様の出力を得ることができる。これにより、例えば、本発明者らが既に提案したポンプレスランキン型サイクルにおいて要望されていた往復流膨張機(または正逆回転膨張機)の用途に本発明の膨張機1を適用することがすることが可能となる。また、膨張機1は、気液二相流の状態下の作動流体を使用することも可能であるため、僅かな温度差でも高効率の出力を実現できる。
【0038】
一方、本発明の膨張機1を通常のランキンサイクルシステム用の膨張機として使用する場合には、
図6(b)に示すように、吐出ポート41の流路面積を吸入ポート42の流路面積よりも大きくしておくことが好ましい。このような構成を採用することで、吸入ポート41からロータ10,20の歯面11,21間の隙間(内部容積)に入り込んだ作動流体が吐出ポート42に案内される際に、タイミング良く膨張させることができるため、膨張機1の効率をさらに高めることができる。特に、ロータ10,20同士の回転によりこれらの歯面11,21間の内部容積が最大になる位置に吐出ポート42を設けて、吐出ポート42に作動流体を吐き出すようにすれば大きな膨張比が得られるようになる。
【0039】
本発明に適用可能な内接型歯車として、アウターロータ20とインナーロータ10とが図示のトロコイド曲線を形成する一対の内接歯車(トロコイド歯車)の他、インボリュート曲線やサイクロイド曲線を形成する内接歯車(インボリュート歯車やサイクロイド歯車)を用いても良い。
【0040】
特に、トロコイド歯車である場合には、ロータ軸50の回転方向を比較的容易に逆転させることができるために、作動流体の進行方向を簡単に逆転させることが可能となる利点がある。また、図示のように部品点数が少なく簡素に内接型歯車を構成できるため、膨張機1を安価に製造することができる。従って、製造された膨張機1は、寸法精度が高く維持されるので、耐久性にも優れる。
【0041】
(実証試験)
以上説明した膨張機1の性能を確認するために、
図7に示す熱機関サイクル(オーガニックランキンサイクル)に組み込んで、その動作確認と効率の測定を行った。作動流体にはHFC245faを選択した。蒸発器及び凝縮器には積層プレート式熱交換器を用いた。熱源流体には高温側及び低温側ともに水を用いた。高温側の熱源流体は抵抗式ヒーターで60〜100℃に加熱しながら温水用ポンプにより循環を行い、低温側の熱源流体はチラーを用いて約10℃に冷却しながら循環を行った。なお、本実証試験では、吐出容積を吸込容積で除した容積比が1で設計された膨張機と、容積比が2で設計された膨張機と、を使用した。ポンプの消費電力W
pは電力計で測定され、膨張機の回転数NとトルクTとは、回転計とトルク計で測定される。蒸発器で作動流体が受け取る熱量Q
in、膨張機の出力W
e、膨張機の断熱効率η
eは、次の(1)〜(3)式で計算される。
【0042】
【数1】
【0043】
ここで、hはエンタルピー、mは作動流体の質量流量、Nは最大出力点における膨張機の回転数である。添え字の1〜4は
図7に示す状態1から状態4を示し、添え字isは等エントロピー過程を示す。作動流体の物性値はアメリカ合衆国の国立標準技術研究所(National Institute of Standards and Technology, NIST)の物性値データベース(Reference Fluid
Thermodynamic and Transport Properties Database, REFPROP)を用いて計算した。
【0044】
(実験結果)
図8に実証試験により得られたトロコイド膨張機における断熱効率η
eの結果を示す。具体的には、横軸は、膨張機入口の作動流体温度(高温側熱源温度)T
e,inであり、縦軸が膨張機の断熱効率η
eである。実線で示された曲線は容積比が1の場合であり、破線で示された曲線は容積比2の場合である。いずれの場合とも、断熱効率ηeが、温度T
e,inに対する依存性があることがわかる。容積比が1の場合の結果では、T
e,inが70℃付近で、断熱効率η
eが最大となった(η
e≒65%)。一方、容積比が2の場合の結果では、T
e,inが75℃付近で、断熱効率η
eが最大となった(η
e≒80%)。従って、使用する作動流体の温度レベルに応じて膨張機の容積比を設定することにより、熱機関サイクルの更なる高効率化を図ることができるものと考えられる。
【実施例2】
【0045】
次に、
図9を参照しながら、本発明の別の実施例に係る膨張機1について説明する。本発明では、所定の圧力を有した作動流体が吸入通路44を通して熱機関サイクル回路から膨張機1に導入され、ポート本体40やロータ10,20の歯面11,21の隙間等に案内され、吐出通路45を通して膨張機1から熱機関サイクル回路へ戻ることで作動流体はサイクル回路中を循環する。実施例1では、ベアリングケース61を介した作動流体の漏れを極力無くすために、ベアリングホルダ61より先の負荷側にシール材62cが内封されたシールケース62が設けられており、ロータ軸50の外周とシールケース62の内壁との隙間を塞ぐ構成にしている。
【0046】
しかしながら、本発明においては、圧力を100気圧(atm)程度にまで高められた作動流体が使用される場合も想定され、このような非常に高圧での作動流体を熱機関サイクル回路から膨張機1内に案内した場合、シール材62cが破損・破壊してしまう恐れがある。従って、実施例2の膨張機1では、このような高圧に耐え得る後述の構造を採用した。
【0047】
実施例2の膨張機1においては、実施例1の膨張機1のベアリングホルダ61の側面に設けられていたシール材62c及びこれを収容するシールケース62を要しない。その代わりに、実施例2では、ベアリングホルダ61の側面には、ロータ軸50とロータ軸50に接続された発電機2とを収容する耐圧容器70がさらに設けられていることを特徴としている。実施例2の上記特徴以外のその他の構成については、実施例1の構成と同様であり、再度の説明を省略する。
【0048】
耐圧容器70は、上記圧力にまで耐えられるような耐圧構造を有することが好ましい。耐圧構造は、
図9に示すように、例えば10mm〜30mm程度の厚みを有した鋳鉄、鋼等の金属製の平板71を複数組み合わせることで外壁を構成することができる。なお、鋳鉄の引張強度は約250N/mm
2であるのに対し、鋼の引張強度は約400N/mm
2である。耐圧強度は引張強度に比例するため、鋼製の平板71を使用した方がさらに好ましい。また、平板71同士を組み付ける際には、
図9に示すように、ボルト等を利用することが考えられる。ボルトも上記のような高圧に耐え得る仕様・構造を有することが好ましい。また、耐圧容器70は、上述したような複数の平板71を組み合せたものに限らず、例えば鋳造により一体的に作られた単一部材であってもよい。
【0049】
このような構成を採用することにより、膨張機1内に流入した非常に高圧の作動流体がボールベアリング61bを介して発電機2側に漏洩したとしても、発電機2及びその周囲空間72は膨張機1に接続された耐圧容器70に完全に囲繞かつ密閉されているため、この周囲空間も高圧のまま保たれることになる。結局のところ、作動流体は、ポート本体40の吐出流路45から排出されることになり、意図しない箇所から漏洩することはない。
【0050】
以上のように、実施例2の膨張機1は発電用ランキンサイクルシステムに限定されることになるが、非常に高圧の作動流体を安全に漏洩無く使用することができるという利点が得られる。