(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0026】
(第一実施形態)
(機械式時計)
次に、この発明の第一実施形態を
図1〜
図17に基づいて説明する。
図1は、機械式時計のムーブメントを裏蓋側からみた平面図である。
同図に示すように、機械式時計100は、ムーブメント101を備えている。ムーブメント101は、このムーブメント101の基板を構成する地板102を有している。地板102には巻真案内孔103が形成されており、ここに巻真104が回転可能に組み込まれている。
【0027】
また、ムーブメント101の裏側(
図1における紙面奥側)には、おしどり、かんぬき、及びかんぬき押さえを含む切換装置(不図示)が配置されている。この切換装置により、巻真104の軸方向の位置が決定するようになっている。
一方、ムーブメント101の表側(
図1における紙面手前側)には、表輪列105を構成する四番車106、三番車107、二番車108、及び香箱車110が配置されていると共に、表輪列105の回転を制御するデテント脱進機1が配置されている。
【0028】
香箱車110は、ぜんまい111を有しており、巻真104を回転させると不図示のつづみ車が回転し、さらにきち車、丸穴車、及び角穴車(何れも不図示)を介してぜんまい111が巻き上げられるようになっている。そして、ぜんまい111が巻き戻される際の回転力により香箱車110が回転し、さらに二番車108が回転するように構成されている。
二番車108は、香箱車110の不図示の香箱歯車に噛合う二番かなと、二番歯車(何れも不図示)とを有している。二番車108が回転すると、三番車107が回転するように構成されている。
【0029】
三番車107は、二番車108の二番歯車に噛合う不図示の三番かなと、三番歯車(何れも不図示)とを有している。三番車107が回転すると、四番車106が回転するように構成されている。
四番車106は、三番車107の三番歯車に噛合う不図示の四番かなと、四番歯車(何れも不図示)とを有している。四番車106が回転することによりデテント脱進機1が駆動する。このデテント脱進機1が駆動することにより、四番車106が1分間に1回転するように制御されると共に、二番車108が1時間に1回転するように制御される。
【0030】
(デテント脱進機)
図2は、デテント脱進機の斜視図、
図3は、デテント脱進機の平面図である。
図2、
図3に示すように、デテント脱進機1は、四番車106が回転することにより回転するがんぎ車2と、がんぎ車2の歯部2aと接触可能な止め石6を有するデテント7と、がんぎ車2の歯部2aと接触可能な振り石3、及びデテント7と接触可能な外し石4を有するてんぷ5とを備えている。
【0031】
がんぎ車2は不図示の四番歯車に噛合されるがんぎかな8を有しており、軸部19を介し、地板102(
図1参照)と輪列受(不図示)によって回転可能に枢支されている。また、がんぎ車2の歯部2aは、がんぎ車2の外周部に複数(例えば、この実施形態では15個)形成されている。
このように構成されたがんぎ車2は、表輪列105によって
図3における時計回り方向(矢印CW1参照)に向かって回転力が付与されている。
【0032】
てんぷ5は、回転軸であるてん真9を中心にして自由振動するものであって、てん真9の他に、てん真9と同心円上に配置されたてん輪10と、略円板状の大つば11と、ひげぜんまい51とを有している。そして、不図示のてんぷ受けにてん真9の上軸部が回転可能に支持されると共に、地板102にてん真9の下軸部が回転可能に支持されることにより、地板102、及びてんぷ受けに、てんぷ5が回転可能に枢支される。
ひげぜんまい51は螺旋状に形成された薄板ばねであって、ひげぜんまい51が巻き上げられたり、巻き戻されたりすることによっててんぷ5が自由振動するようになっている。
【0033】
また、大つば11に、振り石3と外し石4とが設けられている。振り石3は、この断面形状が大つば11の径方向に沿って長くなるように直方体状に形成されており、断面短手方向で対向する2面のうち、がんぎ車2の歯部2aと接触する接触面3aが他の面よりも大つば11から突出するように形成されている。
外し石4は、デテント7に設けられている後述の片作動ばね24と接触可能になっている。外し石4によってデテント7が作動する。
【0034】
デテント7は、地板102に固定ワッシャ12を介して固定されている。固定ワッシャ12は、大径ワッシャ12aと、小径ワッシャ12bとにより構成されており、大径ワッシャ12aを地板102側(
図2における下側)に配置した状態で、各ワッシャ12a,12bによりデテント7を挟持している。そして、この状態で一対の固定ピン13a,13bを介してデテント7を固定するようになっている。
【0035】
また、固定ワッシャ12は、地板102を挟んで反対側に設けられている回転レバー14と調整ボルト15を介して連結されている。調整ボルト15は、固定ワッシャ12の径方向中央を貫通するように設けられている。回転レバー14は、デテント7の取り付け角度を調整するためのものであって、デテント7の取り付け角度を調整した後、取り外せるようになっている。
【0036】
(デテント)
デテント7は、固定ワッシャ12の大径ワッシャ12aと小径ワッシャ12bとにより挟持されている円板状のデテント固定部21と、デテント固定部21に復帰ばね22を介して支持されている作動レバー23と、外し石4と接触可能な片作動ばね24とが一体成形されたものである。
ここで、一体成形を行う方法として、例えば電鋳加工によりデテント7を形成したり、フォトリソグラフィーのような光学的な手法を取り入れたLIGA(Lithographie
Galvanoformung Abformung)プロセスやDRIE、MIMによりデテント7を形成したりすることが可能である。
【0037】
デテント固定部21の直径は、固定ワッシャ12を構成する小径ワッシャ12bの直径と略同一に設定されている。デテント固定部21の径方向中央には、調整ボルト15を挿通可能な不図示のボルト挿通孔が形成されており、このボルト挿通孔を挟んで両側に、一対の固定ピン13a,13bを挿通可能な2つのピン挿通孔26a,26bが形成されている。2つのピン挿通孔26a,26bのうち、一方のピン挿通孔26bは、各部品の製作誤差を吸収できるように長円形状に形成されている。
【0038】
また、デテント固定部21の外周部には、てんぷ5側(
図3における上側)に凹部27が形成され、ここに復帰ばね22が立設されている。復帰ばね22は、この基端22aとてんぷ5のてん真9の中心(軸心)とを結ぶ直線Lに沿うように板状に形成されている。復帰ばね22は、例えば、ニッケルなどの弾性材料により形成されていることが望ましい。
【0039】
復帰ばね22の先端に設けられている作動レバー23は、直線L上に沿う直方体状のアーム部28と、このアーム部28の先端側に配置され、アーム部28よりも幅広の止め石取付部29と、止め石取付部29よりも先端側に配置され、アーム部28よりも細い直方体状の先端部30とが一体成形されている。止め石取付部29には、がんぎ車2の歯部2aと接触可能な止め石6が設けられている。
【0040】
図4は、
図3のA部拡大図である。
図4に詳示するように、止め石6は、例えば人工ルビー等により、角柱状で、且つその断面形状が作動レバー23の先端部30に向かうに従って漸次幅広となるように略台形状に形成されたものである。
【0041】
より具体的には、止め石6は、作動レバー23のアーム部28が直線Lに沿っている状態で、直線Lに略直交し、且つ先端側(
図4における上側)に位置する停止面6aと、この停止面6aに対向する下面6bと、停止面6a、及び下面6bのがんぎ車2とは反対側(
図4における右側)に位置し、且つ停止面6a、及び下面6bに略直交する側面6cと、停止面6a、及び下面6bのがんぎ車2側(
図4における左側)に位置し、直線Lに対して傾斜している背面6dとを有している。そして、停止面6aと背面6dとの交差稜線部がロッキングコーナ6eとされる一方、下面6bと背面6dとの交差稜線部がリービングコーナ6fとされる。
【0042】
ここで、がんぎ車2の歯部2aは、このがんぎ車2の回転方向(
図3、
図4における矢印CW1方向)前方に位置し、止め石6に接触する接触面71と、この接触面71と対向し、回転方向後方に位置する背面73と、径方向外側に位置し、接触面71と背面73とを連結する歯先端面74とにより構成されている。そして、接触面71と歯先端面74との交差稜線部がロッキングコーナ75とされる一方、背面73と歯先端面74との交差稜線部がリービングコーナ76とされる。
また、接触面71は、がんぎ車2の径方向の直線KLに対して傾斜した傾斜面71aにより構成されている。傾斜面71aは、径方向の直線KLに対して、がんぎ車2の軸部19側に向かって傾斜した状態になっている。
【0043】
図1〜
図3に戻り、作動レバー23のアーム部28の基端側には、片作動ばね24の一端が一体成形されている。一方、作動レバー23の先端部30は、この中心が直線Lからがんぎ車2とは反対側(
図3における右側)に向かって僅かにオフセットするように配置されている。このようにオフセットされた先端部30のがんぎ車2側の当接面30aに片作動ばね24の先端が当接されている。
【0044】
片作動ばね24は、平面視略6字状に形成されたものであって、アーム部28の基端部から延出する円弧部31と、円弧部31の先端から作動レバー23の先端部30に向かって延出する直線部32とにより構成されている。そして、円弧部31、及び直線部32が作動レバー23に対する接離方向に沿って弾性変形するようになっている。
円弧部31は、アーム部28の基端部からがんぎ車2とは反対側(
図3、
図4における右側)に向かって、かつ直線Lと略直交する方向に沿って延出し、この後、デテント固定部21の周囲の約3/4を取り囲むように円弧状に形成されている。
【0045】
一方、直線部32は、円弧部31の先端から直線Lに対して緩やかに傾斜するように延出された緩傾斜部32aと、緩傾斜部32aの先端から、この緩傾斜部32aよりも直線Lに対して急傾斜するように延出され、先端が先端部30に当接された急傾斜部32bと、急傾斜部32bから先端部30に沿って延出された舌片部32cとにより構成されている。
【0046】
緩傾斜部32aは、円弧部31の先端から止め石取付部29に対応する位置に至るまで延出されている。すなわち、直線部32は、作動レバー23の止め石取付部29との干渉を避けるように円弧部31の先端から作動レバー23の先端部30に向かって延出形成された状態になっている。
また、舌片部32cは、この先端が作動レバー23の先端部30から僅かに突出するように延出形成されている。この舌片部32cの先端部30から突出した部位に、てんぷ5の外し石4が接触するようになっている。
【0047】
このように構成されたデテント7の作動レバー23は、復帰ばね22の基端22aを支点23aとし、この支点23aを中心にしてがんぎ車2に対して接離可能になっている。すなわち、復帰ばね22が基端22aを中心にしてしなるように弾性変形することにより、作動レバー23ががんぎ車2に対して接離方向に沿って変位する。
なお、片作動ばね24は、復帰ばね22と同様に、例えばニッケルなどの弾性材料により形成されていることが望ましい。
【0048】
復帰ばね22は、作動レバー23を原位置に復帰するように付勢している。つまり、
図3に示すように、復帰ばね22は、作動レバー23のアーム部28の長手方向が直線L上となる位置に復帰するように付勢している。一方、片作動ばね24は、この片作動ばね24の舌片部32cが常に作動レバー23の先端部30と当接可能な程度のばね力に設定されている。
【0049】
片作動ばね24の舌片部32cに接触可能な外し石4は、舌片部32cの先端部30とは反対側の面に接触する接触面4aが舌片部32cに沿うように形成されている。一方、外し石4の接触面4aとは反対側には、平面取りすることにより傾斜面4bが形成されている。これにより、外し石4は、この断面形状が台形状のように大つば11の径方向外側に向かうに従って先細りになっている。そして、外し石4は、てんぷ5の自由振動時における先端の軌跡が作動レバー23に接触不能な位置となるように、かつ片作動ばね24の舌片部32cに接触可能な位置となるように配置される。
【0050】
このように外し石4やデテント7を構成することにより、てんぷ5の自由振動に伴って作動レバー23をがんぎ車2から離間させたり、接近させたりすることができる(詳細は後述する)。
ここで、地板102には、作動レバー23のがんぎ車2に接近する方向に向かう変位を規制するストッパ40が設けられている。ストッパ40は、ストッパアーム41とストッパアーム41の先端に立設されたストッパピン42とを有している。そして、ストッパアーム41の基端側が、固定ピン43を介して地板102に固定されている。
【0051】
ストッパピン42は、作動レバー23のアーム部28に、がんぎ車2側から当接するようになっている。これにより、作動レバー23のがんぎ車2に接近する方向に向かう変位が規制される。
また、ストッパアーム41は、固定ピン43を中心にして回転可能に設けられており、これによってストッパピン42の位置が調整できるようになっている。このストッパピン42の位置を調整することにより、作動レバー23の移動規制位置が、がんぎ車2の歯部2aに止め石6が接触可能、かつアーム部28の長手方向が直線L上となる位置に設定される。
【0052】
(デテント脱進機の動作)
次に、
図5〜
図14に基づいて、デテント脱進機1の動作について説明する。
図5〜
図8、および
図11〜
図14は、デテント脱進機の動作説明図である。
図5に示すように、デテント7の作動レバー23が直線Lに沿う位置に存在している状態では、がんぎ車2の歯部2aと作動レバー23に設けられている止め石6の停止面6aとが接触し、両者2,6が係合してがんぎ車が停止した状態になっている。
【0053】
そして、てんぷ5が自由振動することにより、大つば11が矢印CCW1方向(
図5における反時計回り方向)に向かって回転し、この大つば11に設けられている外し石4の接触面4aと片作動ばね24の舌片部32cの先端とが当接すると、作動レバー23の動作が開始される(作動レバー動作開始状態)。
ここで、
図4に示すように、がんぎ車2の歯部2aの接触面71は、がんぎ車2の径方向の直線KLに対してがんぎ車2側に向かって傾斜した傾斜面71aにより構成されている。このため、止め石6の停止面6aには、歯部2aのロッキングコーナ75が接触した状態になる。
【0054】
図6に示すように、作動レバー動作開始状態から、てんぷ5がさらに自由振動すると、外し石4によって舌片部32cを介して作動レバー23が押圧される。そして、がんぎ車2から離間する方向に向かって変位する(
図6における矢印Y1参照)。
作動レバー23ががんぎ車2から離間する方向に向かって変位することにより、これに設けられている止め石6ががんぎ車2の歯部2aから離脱し、両者2,6の係合が解除される(がんぎ車停止解除状態)。
これにより、がんぎ車2が矢印CW1方向(
図6における時計回り方向)に向かって回転する。
【0055】
続いて、
図7に示すように、大つば11が矢印CCW1方向に向かって回転することにより、がんぎ車2が矢印CW1方向に向かって回転し始めるのとほぼ同時に、がんぎ車2の歯部2aに振り石3の接触面3aが接触する。そして、がんぎ車2の回転トルクが振り石3を介しててんぷ5に伝達される。このとき、てんぷ5は、矢印CCW1方向に向かって回転トルクが付与される(てんぷ回転トルク付与開始状態)。
【0056】
図8に示すように、がんぎ車2の回転トルクが振り石3を介しててんぷ5に伝達されている間、作動レバー23を支持する復帰ばね22の復元力により、作動レバー23が原位置に戻るべく、がんぎ車2に接近する方向(
図8における矢印Y2参照)に向かって変位する。すると、がんぎ車2の歯部2aの背面73側に、作動レバー23に設けられている止め石6の背面6dが接触する(歯部背面、止め石背面接触状態)。
【0057】
この接触した状態を、
図9、
図10に基づいて詳述する。
図9は、
図8の状態説明図、
図10は、
図9のB部拡大図である。
図9、
図10に示すように、外し石4によって作動レバー23ががんぎ車2から離間する方向に向かって変位し、この後、復帰ばね22の復元力により作動レバー23ががんぎ車2に接近する方向に向かって変位すると、がんぎ車2の歯部2aのリービングコーナ76に、止め石6の背面6dが接触した状態になる。
【0058】
ここで、互いに接触するがんぎ車2、および止め石6の各背面73,6dの傾斜角度は、所定の条件に基づいて設定されている。より具体的に以下に説明する。
傾斜角度の条件を設定するにあたって、まず、がんぎ車2の軸部19を中心とし、がんぎ車2の歯部2aと止め石6とが接触する接触部である歯部2aのリービングコーナ76と、がんぎ車2の軸部19との間の距離を半径R1とした仮想円KC1を形成する。この仮想円KC1のうち、歯部2aのリービングコーナ76に対応する位置の接線SL1と、止め石6の背面6dとの間の角度をθ1とし、止め石6の背面6dと歯部2aの背面73との間の角度をθ2としたとき、
これら角度θ1,θ2は、
θ1≧0°・・・(1)
θ2≧0°・・・(2)
を満たすように設定されている。
【0059】
角度θ1,θ2がそれぞれ式(1)、式(2)を満たすように、止め石6の背面6dの傾斜角度、及び歯部2aの背面73の傾斜角度を設定することにより、歯部2aのリービングコーナ76に止め石6の背面6dが接触したとき、復帰ばね22の復元力によって止め石6が歯部2aを押圧する押圧力F1の分力F2が、がんぎ車2の回転方向(矢印CW1方向)に向かって作用する。これにより、がんぎ車2の回転トルクが増大する。この増大されたがんぎ車2の回転力は、さらに、振り石3を介しててんぷ5に伝達される。
【0060】
さらに厳密には、角度θ1は、歯部2aのリービングコーナ76と止め石6の背面6dとの接触部における摩擦係数μにより定義されるため、
tanθ1>μ・・・(3)
と設定することが好ましい。
【0061】
図11に示すように、がんぎ車2が矢印CW1方向(
図11における時計回り方向)に向かって回転し続けることにより、止め石6から歯部2aが離間する(歯部背面、止め石背面接触終了状態)。
さらにこの後、
図12に示すように、がんぎ車2から回転トルクを付与されたてんぷ5の大つば11が矢印CCW1方向(
図12における反時計回り方向)に向かって回転し、歯部2aから振り石3が離間する(てんぷ回転トルク付与終了状態)。
【0062】
続いて、
図13に示すように、原位置に戻った作動レバー23の止め石6の停止面6aに、歯部2aのロッキングコーナ75が再び接触する。そして、がんぎ車2と止め石6とが係合され、がんぎ車2の回転が停止する。ここで、がんぎ車2と止め石6との係合が解除されてから再び係合するまでの間に、がんぎ車2は1歯分だけ回転する(がんぎ車停止状態)。
【0063】
そして、
図14に示すように、がんぎ車2によって矢印CCW1方向に向かう回転力が付与されたてんぷ5は、このてんぷ5に設けられているひげぜんまい51が巻き上げられた状態になる。さらに、ひげぜんま
い51ががんぎ車2により付与されるエネルギーにより、所定量巻き上げられると、ひげぜんまい51の復元力とてんぷ5の回転力とが逆転し、大つば11の回転方向が矢印CW2方向(
図14における時計回り方向)に転じる。
大つば11が矢印CW2方向に向かって回転すると、外し石4の傾斜面4bが片作動ばね24の舌片部32cの先端に接触する。そして、さらに大つば11が回転することにより、片作動ばね24の舌片部32cが作動レバー23から離間する方向、つまり、がんぎ車2に向かう方向(矢印Y3参照)に向かって押圧される。すると、片作動ばね24は、直線部32を押し広げるように弾性変形する。
【0064】
さらに、大つば11が矢印CW2方向に向かって回転し、所定角度に達すると、片作動ばね24の舌片部32cから外し石4が離間する。すると、片作動ばね24の復元力により、舌片部32cが作動レバー23側に向かって変位し(
図14における矢印Y4参照)、原位置に戻る。
【0065】
一方、大つば11が矢印CW2方向に向かって回転している間、てんぷ5に設けられているひげぜんまい51が巻き戻される。そして、ひげぜんまい51が所定量巻き戻されると、ひげぜんまい51の復元力とてんぷ5の回転力とが逆転し、再び大つば11の回転方向が矢印CCW1方向(
図14における反時計回り方向)に転じる。
【0066】
これを繰り返すことにより、てんぷ5がてん真9を中心にして自由振動すると共に、デテント7が
図5〜
図14に示す状態を繰り返す。このため、がんぎ車2が常に一定間隔で停止解除され、回転する。
このような動作のもと、作動レバー23を支持する復帰ばね22の復元力を、作動レバー23、止め石6、がんぎ車2、振り石3を介しててんぷ5に伝達することができるため、デテント脱進機1のエネルギー伝達効率を向上させることができる。
【0067】
より具体的に、
図15〜
図17に基づいて説明する。
図15は、縦軸をてんぷ角速度(rad/s)とし、横軸を経過時間(ms)としたときのてんぷ角速度の変化を示すグラフ、
図16は、縦軸をてんぷ5が受けた回転トルク(N・mm)とし、横軸を経過時間(ms)としたときのてんぷ5ががんぎ車2から受けた回転トルクの変化を示すグラフである。
図15、
図16に示すように、自由振動しているてんぷ5は、作動レバー動作開始状態(
図5参照)において、作動レバー23からの抵抗を受け、てんぷ角速度が若干遅くなる。さらにこの後、てんぷ5により作動レバー23をがんぎ車2から離間する方向に向かって変位させているので、さらにてんぷ5の角速度が遅くなる。
【0068】
この後、がんぎ車停止解除状態(
図6参照)を経ててんぷ5にかかる負荷がやや減少した後、てんぷ回転トルク付与開始状態(
図7参照)から、がんぎ車2の回転トルクがてんぷ5に伝達され、てんぷ5の角速度が増速する。
続いて、歯部背面、止め石背面接触状態(
図8参照)によって、さらに作動レバー23を支持する復帰ばね22の復元力を、作動レバー23、止め石6、がんぎ車2、振り石3を介して回転トルクとしててんぷ5に伝達させる。このため、再びてんぷ5の角速度が増速する。
【0069】
ここで、従来のように、歯部背面、止め石背面接触状態(
図8参照)を経ない場合のてんぷ5の角速度は、復帰ばね22の復元力が回転トルクとしててんぷ5に伝達されることがない。このため、
図15におけるC部において、てんぷ5の角速度が増速されることがない(
図15における2点鎖線参照)。よって、この第一実施形態では、復帰ばね22の復元力が回転トルクとしててんぷ5に伝達される分、てんぷ5の振角が大きくなる。
【0070】
図17は、縦軸をてんぷ5の振角(deg)とし、横軸を経過時間(ms)としたときの第一実施形態のてんぷ5の振角の変化と、従来におけるてんぷの振角の変化とを比較したグラフである。
同図に示すように、従来と比較して、この第一実施形態のてんぷ5の振角が大きくなっているのが確認できる。
【0071】
したがって、上述の第一実施形態によれば、作動レバー23を支持する復帰ばね22の復元力をてんぷ5の回転エネルギーを増大させるために有効利用することができる。このため、デテント脱進機1のエネルギー伝達効率を向上させ、持続時間を向上させた機械式時計100を提供することが可能となる。
【0072】
また、作動レバー23を原位置に変位させる際、がんぎ車2の歯部2aに止め石6を押圧させることにより、復帰ばね22の復元力をがんぎ車2に伝達させるように構成している。すなわち、復帰ばね22の復元力を、作動レバー23、および止め石6を介してがんぎ車2に伝達するように構成している。このため、復帰ばね22の復元力をがんぎ車2に伝達するための装置(復元力伝達手段)を別途設ける必要がなく、既存の部品を利用して復帰ばね22の復元力をがんぎ車2に伝達させることが可能になる。よって、小型でエネルギー伝達効率に優れ、低コストなデテント脱進機1を提供することができる。
【0073】
さらに、がんぎ車2の歯部2aの背面73と止め石6の背面6dとが接触する際、歯部2aのリービングコーナ76に止め石6の背面6dが接触する。このため、歯部2aと止め石6とが線接触になる。よって、止め石6から歯部2aへの力の伝達を効率よく行うことができると共に、歯部2aと止め石6との間の接触抵抗を最小限に抑えることができる。
【0074】
そして、
図9に示すように、仮想円KC1のうち、歯部2aのリービングコーナ76に対応する位置の接線SL1と、止め石6の背面6dとの間の角度をθ1とし、止め石6の背面6dと歯部2aの背面73との間の角度をθ2としたとき、これら角度θ1,θ2は、それぞれ式(1)、式(2)を満たすように設定されている。このように設定することにより、がんぎ車2の回転を妨げることなく、確実に復帰ばね22の復元力を、がんぎ車2を介して、てんぷ5へ伝えることが可能になるため、エネルギー伝達効率に優れ、且つ、作動の安定に優れたデテント脱進機1、及び機械式時計100を提供できる。
【0075】
なお、上述の第一実施形態では、止め石6のロッキングコーナ6e、及びリービングコーナ6fと、がんぎ車2の歯部2aのロッキングコーナ75、及びリービングコーナ76に何ら面取り加工が施されていない場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではない。望ましくは、各コーナ6e,6f,75,76にそれぞれ丸面取り部78(
図4に2点鎖線で示す)を形成するとよい。このように構成することで、歯部2aと止め石6とを滑らかに接触させることができ、歯部2aと止め石6との接触抵抗をさらに低減させることが可能になる。
【0076】
また、上述の第一実施形態では、がんぎ車2の歯部2aの背面73と止め石6の背面6dとが接触する際、歯部2aのリービングコーナ76に止め石6の背面6dが接触する場合について説明した。しかしながら、歯部2aと止め石6とが接触する部位は、リービングコーナ76と背面6dとに限られるものではなく、止め石6を介して歯部2aに復帰ばね22の復元力が伝達されるように、歯部2aと止め石6とが接触すればよい。
【0077】
例えば、歯部2aと止め石6とが接触する部位のパターンについて、第一実施形態の他に以下のようなパターンが挙げられる。
(1) 歯部2aの背面73と止め石6の背面6dとが接触
(2) 歯部2aの背面73と止め石6のリービングコーナ6fとが接触
(3) 歯部2aの背面73と止め石6のロッキングコーナ6eとが接触
(4) 歯部2aのロッキングコーナ75と止め石6の背面6dとが接触
これら(1)〜(4)に示すパターンで歯部2aと止め石6とが接触した場合であっても、上述の第一実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0078】
さらに、上述の第一実施形態では、デテント固定部21に復帰ばね22を介して作動レバー23が支持されている場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、所謂ピボットデテント脱進機のように、不図示の回転軸を介して作動レバー23を回転自在に支持し、これによってがんぎ車2に対して作動レバー23を接離可能に構成してもよい。この場合、復帰ばね22に代わって不図示の回転軸を取り囲むように渦巻きばね(不図示)や板ばね(例えば、特許文献3の復帰ばね)を設ける。そして、これらのばねにより、作動レバー23を原位置に復帰するように付勢することにより、上述の第一実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0079】
(第二実施形態)
次に、この発明の第二実施形態を
図1を援用し、
図18に基づいて説明する。なお、第一実施形態と同一態様には、同一符号を付して説明を省略する(以下の実施形態についても同様)。
図18は、第二実施形態におけるデテント脱進機の要部拡大図であって、歯部背面、止め石背面接触状態(前述の第一実施形態の
図9に対応する状態)を示している。
【0080】
この第二実施形態において、機械式時計100は、ムーブメント101を備えている点、ムーブメント101の表側に、表輪列105の回転を制御するデテント脱進機1が配置されている点、デテント脱進機1は、四番車106が回転することにより回転するがんぎ車2と、がんぎ車2に対して接離可能に支持されている作動レバー23を有するデテント7と、がんぎ車2と接触可能な振り石3、及びデテント7と接触可能な外し石4を有するてんぷ5とを備えている点等の基本的構成は、前述した第一実施形態と同様である(以下の実施形態についても同様)。
【0081】
ここで、
図18に示すように、前述した第一実施形態と、この第二実施形態との相違点は、作動レバー23に設けられている第一実施形態の止め石6の形状と、第二実施形態の止め石61の形状とが異なる点にある。
すなわち、第二実施形態の止め石61は、作動レバー23のアーム部28が直線Lに沿っている状態で、直線Lに略直交し、且つ先端側(
図18における上側)に位置する停止面61aと、この停止面61aのがんぎ車2と反対側(
図18における右側)に位置し、且つ直線Lに沿う側面61bと、これら停止面61aと側面61bとに跨るように背面側(
図18における左側)に湾曲形成された湾曲面61cとを有している。
【0082】
このような構成のもと、歯部背面、止め石背面接触状態においては、歯部2aの背面73に止め石6の湾曲面61cが接触した状態になる。つまり、歯部2aの背面73の一部と止め石6の湾曲面61cの一部とが線接触した状態になる。以下、この線接触する箇所を接触部62と称して説明する。
【0083】
ここで、止め石6の湾曲面61cの湾曲形状は、以下の条件に基づいて決定されている。
まず、この条件を設定するにあたって、がんぎ車2の軸部19を中心とし、この軸部19と接触部62との間の距離を半径R2とした仮想円KC2を形成する。この仮想円KC2の接触部62に対応する位置の接線SL2と、止め石6の湾曲面61cにおける接触部62の接線SL3との間の角度をθ3としたとき、角度θ3は、
θ3≧0°・・・(4)
を満たすように設定されている。
なお、角度θ3は、仮想円KC2の接触部62に対応する位置の接線SL2と、歯部2aの背面73との間の角度としてもよい。
【0084】
角度θ3が式(4)を満たすように、止め石61の湾曲面61cを形成することにより、歯部2aの背面73に止め石61の湾曲面61cが接触したとき、復帰ばね22の復元力によって止め石61が歯部2aを押圧する押圧力F3の分力F4が、がんぎ車2の回転方向(矢印CW1方向)に向かって作用する。これにより、がんぎ車2の回転トルクが増大する。この増大されたがんぎ車2の回転力は、さらに、振り石3を介しててんぷ5に伝達される。
【0085】
さらに厳密には、角度θ3は、歯部2aのリービングコーナ76と止め石61の背面61cとの接触部における摩擦係数μにより定義されるため、
tanθ3>μ・・・(5)
と設定される事が好ましい。
【0086】
したがって、上述の第二実施形態によれば、前述の第一実施形態と同様の効果を奏することができる。これに加え、歯部背面、止め石背面接触状態において、止め石61の歯部2aに接触する部位が湾曲面61cになっているので、がんぎ車2が回転して歯部2aと止め石61との接触角度が変化した場合であっても、止め石61によって歯部2aにかかる力の方向をほぼ一定にすることが可能になる。このため、復帰ばね22の復元力を、がんぎ車2を介して、てんぷ5へ伝える時に、がんぎ車2のトルク変動が生じず、エネルギー伝達効率に優れ、且つ、変動の無い安定したエネルギー伝達が可能なデテント脱進機1、及び機械式時計100を提供する事ができる。
【0087】
(第三実施形態)
次に、この発明の第三実施形態を
図19に基づいて説明する。
図19は、第三実施形態におけるデテント脱進機の要部拡大図であって、歯部背面、止め石背面接触状態を示している。
同図に示すように、前述した第二実施形態と、この第三実施形態との相違点は、第二実施形態のがんぎ車2の歯部2aの形状と、第三実施形態のがんぎ車2の歯部82の形状とが異なる点にある。
【0088】
すなわち、第三実施形態のがんぎ車2の歯部82は歯先端面74を有している一方、歯部82の背面73には、歯先端面74側に凹部83が形成されている。つまり、歯部82の背面73のうち、作動レバー23の止め石61と接触する部位に、凹部83が形成されている。この凹部83は、止め石61の湾曲面61cよりも緩やかな湾曲状に形成されており、凹部83と止め石61は、互いに線接触するようになっている。
ここで、この線接触している接触部83aにおける凹部83の接線SL4は、止め石61の湾曲面61cの接触部83aに対応する箇所の接線SL3と一致する。そして、接線SL4と、仮想円KC2の接触部83aに対応する位置の接線SL2との間の角度θ4は、
θ4≧0°・・・(6)
を満たすように設定されている。式(6)を満たすことにより、歯部82の凹部83に止め石61の湾曲面61cが接触したとき、復帰ばね22の復元力によって止め石61が歯部82を押圧する押圧力F5の分力F6が、がんぎ車2の回転方向に向かって作用する。
【0089】
さらに厳密には、角度θ4は、歯部82の凹部83と止め石61の湾曲面61cとの接触部83aにおける摩擦係数μにより定義されるため、
tanθ4>μ・・・(7)
と設定されることが好ましい。
【0090】
したがって、上述の第三実施形態によれば、前述の第二実施形態と同様の効果に加え、がんぎ車2の歯部82の歯厚を厚く設定することができるため、がんぎ車2の歯部82の強度を増したデテント脱進機1、及び機械式時計100を提供することができる。
【0091】
(第四実施形態)
次に、この発明の第四実施形態を
図20に基づいて説明する。
図20は、第四実施形態におけるデテント脱進機の要部拡大図であって、歯部背面、止め石背面接触状態を示している。
同図に示すように、前述した第三実施形態と、この第四実施形態との相違点は、第三実施形態のがんぎ車2の歯部82の形状と、第四実施形態のがんぎ車2の歯部84の形状とが異なる点にある。
【0092】
すなわち、第四実施形態のがんぎ車2の歯部84には、背面側が湾曲状に膨出された湾曲面85が形成されており、歯部84と止め石61は、互いに線接触するようになっている。
ここで、この線接触している接触部85aにおける湾曲面85の接線SL5は、止め石61の湾曲面61cの接触部83aに対応する箇所の接線SL3と一致する。そして、接線SL5と、仮想円KC2の接触部83aに対応する位置の接線SL2との間の角度θ5は、
θ5≧0°・・・(8)
を満たすように設定されている。式(8)を満たすことにより、歯部84の湾曲面85に止め石61の湾曲面61cが接触したとき、復帰ばね22の復元力によって止め石61が歯部84を押圧する押圧力F7の分力F8が、がんぎ車2の回転方向に向かって作用する。
【0093】
したがって、上述の第四実施形態によれば、前述の第二実施形態と同様の効果に加え、歯部84を小さく設定することができるため、がんぎ車2の慣性モーメントを低減させ、よりがんぎ車2の回転トルクを向上させ、よりエネルギー伝達効率に優れたデテント脱進機1、及び機械式時計100を提供することができる。
【0094】
(第五実施形態)
次に、この発明の第五実施形態を
図21に基づいて説明する。
図21は、第五実施形態におけるデテント脱進機の平面図であって、(a)は、がんぎ車2と作動レバー23とが係合してがんぎ車2が停止している状態を示し、(b)は、復帰ばね22の復元力を作動レバー23を介してがんぎ車2に伝達している状態を示す。
ここで、
図21(a)に示すように、前述の第一実施形態と、この第五実施形態との相違点は、第五実施形態の作動レバー23に、止め石6とは別にアシスト石86が設けられている点にある。
【0095】
アシスト石86は、作動レバー23のアーム部28の止め石取付部29寄りに設けられている。アシスト石86は、復帰ばね22の復元力をがんぎ車2に伝達し、がんぎ車2の回転トルクを増大させるためのものである。
すなわち、
図21(b)に示すように、がんぎ車2から一端離間する方向に向かって変位した作動レバー23が復帰ばね22の復元力により原位置に戻る際(
図21(b)における矢印Y5参照)、アシスト石86とがんぎ車2の歯部2aとが接触するようになっている。
【0096】
ここで、アシスト石86に接触する歯部2aの詳細位置は、背面73、ロッキングコーナ75、及びリービングコーナ76(
図4参照)の何れの位置であってもよい。
なお、アシスト石86と歯部2aとが接触している状態のとき、歯部2aと止め石6は、互いに離間して接触していない状態が維持される。
【0097】
したがって、上述の第五実施形態によれば、止め石6を利用せずに復帰ばね22の復元力をがんぎ車2に伝達することができる。このため、デテント脱進機1のバリエーションを増大させることができ、仕様に応じてさまざまなデテント脱進機1を提供することが可能になる。
【0098】
(第六実施形態)
次に、この発明の第六実施形態を
図22に基づいて説明する。
図22は、第六実施形態におけるデテント脱進機の平面図であって、(a)は、がんぎ車2と作動レバー23とが係合してがんぎ車2が停止している状態を示し、(b)は、復帰ばね22の復元力を作動レバー23を介してがんぎ車2に伝達している状態を示す。
ここで、
図22(a)に示すように、前述の第五実施形態と、この第六実施形態との相違点は、作動レバー23に、アシスト石86に代わってアシストピン87が設けられている点にある。
【0099】
すなわち、作動レバー23のアーム部28には、止め石取付部29寄りにアシストピン87が設けられている。このアシストピン87は、復帰ばね22の復元力をがんぎ車2に伝達し、がんぎ車2の回転トルクを増大させるためのものである。
つまり、
図22(b)に示すように、がんぎ車2から一端離間する方向に向かって変位した作動レバー23が復帰ばね22の復元力により原位置に戻る際(
図22(b)における矢印Y6参照)、アシストピン87とがんぎ車2の歯部2aとが接触するようになっている。
【0100】
ここで、アシストピン87に接触する歯部2aの詳細位置は、背面73、ロッキングコーナ75、及びリービングコーナ76(
図4参照)の何れの位置であってもよい。
なお、アシストピン87と歯部2aとが接触している状態のとき、歯部2aと止め石6は、互いに離間して接触していない状態が維持される。
したがって、上述の第六実施形態によれば、前述の第五実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0101】
なお、上述の第五実施形態では、復帰ばね22の復元力を、止め石6に代わって別途アシスト石86を用いてがんぎ車2に伝達する場合について説明した。また、上述の第六実施形態では、復帰ばね22の復元力を、止め石6に代わって別途アシストピン87を用いてがんぎ車2に伝達する場合について説明した。
しかしながら、これに限られるものではなく、止め石6に代わって別途復帰ばね22の復元力をがんぎ車2に伝達する構成であればよい。すなわち、作動レバー23上ではなく、例えば、地板102に復帰ばね22の復元力をがんぎ車2に伝達する復元力伝達装置を別途設けてもよい。
【0102】
また、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば、上述の実施形態では、がんぎ車2の歯部2a,82は、歯先端面74を有している場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、
図23に示すように、がんぎ車2に、歯先端面74を有さず、且つリービングコーナ76を有さない、ロッキングコーナ75のみを有する歯部92を形成してもよい。