特許第5794622号(P5794622)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5794622-ドレン回収システム 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5794622
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】ドレン回収システム
(51)【国際特許分類】
   F22D 11/06 20060101AFI20150928BHJP
【FI】
   F22D11/06 A
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2011-148962(P2011-148962)
(22)【出願日】2011年7月5日
(65)【公開番号】特開2013-15278(P2013-15278A)
(43)【公開日】2013年1月24日
【審査請求日】2014年6月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000130651
【氏名又は名称】株式会社サムソン
(72)【発明者】
【氏名】亀山 達彦
(72)【発明者】
【氏名】西山 友章
(72)【発明者】
【氏名】合田 敦裕
【審査官】 藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−098240(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第0931911(EP,A2)
【文献】 特開平07−119918(JP,A)
【文献】 実開昭57−178909(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22D 11/00
F22D 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気使用装置へ蒸気を供給するボイラ、ボイラで発生した蒸気の熱を使用する蒸気使用装置、ボイラへ供給するボイラ用水をためておく給水タンクを持ち、前記蒸気使用装置で熱を使用した後の蒸気は給水タンクへ環流し、ボイラ用水として再利用するようにしているドレン回収システムにおいて、蒸気使用装置から給水タンクへドレンを環流するドレン配管の途中にドレンの熱を回収するドレン回収熱交換器を設け、ドレン回収熱交換器は、ベーパライザとの間で温水の循環を行うベーパライザ用循環配管を接続して、ドレンから回収した熱はベーパライザへ供給するようにしており、ベーパライザ用循環配管のドレン回収熱交換器からベーパライザまでの間にベーパライザ用温水タンク、さらにベーパライザ用循環配管のベーパライザからドレン回収熱交換器の間と、ドレン回収熱交換器からベーパライザ用温水タンクの間をつなぐドレン熱交バイパス経路とその途中に設けたドレン熱交バイパス弁を設置しておき、100℃以上のドレンはドレン回収熱交換器で熱を回収しベーパライザなどの熱使用装置へ供給することで100℃より低くするようにしていること特徴とするドレン回収システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラで発生した蒸気は、蒸気使用機器にて使用することで温度が低下した後に給水タンクへ還元するドレン回収システムに関するものであり、より詳しくはドレンが保有している熱が無駄に放出されることをなくし、ドレン回収効果を高めることのできるドレン回収システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開平7−119918号公報に記載があるように、蒸気使用装置ではボイラで発生した蒸気の熱を利用し、熱交換することで温度の低下した蒸気(ドレン)は給水タンクに回収しており、回収したドレンはボイラ用水として再利用するドレン回収装置が広く普及している。ドレン回収を行うと、ドレンの温度は常温よりも高いため、ボイラ用水の温度が上昇する。ボイラ用水温度が上昇すれば、蒸気発生に要する熱量が少なくなるため、ボイラでの燃料使用量を削減することができる。また、ボイラ用水を再利用する分だけボイラ用水の使用量を削減することができる。
【0003】
しかし、ドレン回収量が多くなると、給水タンクには多量の高温ドレンが入るために給水タンク内の温度が上昇し、給水タンク内でウオータハンマ現象が発生したり、給水ポンプがキャビテーションを起こすことがあるという問題があった。そのため、船舶用ボイラであればドレンは海水で冷却した後に回収したり、また給水タンクからボイラへ送っている給水とドレンの間で熱交換を行うことでドレンの冷却を行った後に回収するということが行われている。特開平7−119918号公報の実施例欄には、ボイラ給水によってドレンを冷却する例の具体的な記載がある。ここでは、約180℃のドレンを約95℃のボイラ給水によって冷却することでドレンを約100℃まで低下させており、100℃に低下したドレンを給水タンクに環流させるとしている。給水タンクには大気解放タンクを使用する場合、給水タンク内には圧力は掛かっておらず、100℃より高いドレンが給水タンク内に入った場合にはフラッシュ蒸気が発生する。給水タンクに戻るドレンの温度を100℃よりも低くしておけば、給水タンク内に入ったドレンがフラッシュ蒸発し、多量の蒸気が給水タンクから放出されるということはなくなる。
【0004】
しかし上記の例では、既に約95℃まで上昇しているボイラ給水でドレンを冷却するものであり、ボイラ給水の温度は上下するために、ドレン温度を十分に低下させることができないことがある。ドレンの冷却が不十分であり、給水タンクに戻るドレン温度が100℃を越える場合には、給水タンク内で沸騰し、大気中にフラッシュ蒸気を大量に放出することになるため、回収するドレンが保有するエネルギー及び水を多量に捨てることになっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−119918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、ドレン回収を行っているボイラ装置において、熱エネルギー及び用水の損失を低減し、熱及び用水の回収量を増加することで総合的な燃料消費量及び用水使用量を削減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
蒸気使用装置へ蒸気を供給するボイラ、ボイラで発生した蒸気の熱を使用する蒸気使用装置、ボイラへ供給するボイラ用水をためておく給水タンクを持ち、前記蒸気使用装置で熱を使用した後の蒸気は給水タンクへ環流し、ボイラ用水として再利用するようにしているドレン回収システムにおいて、蒸気使用装置から給水タンクへドレンを環流するドレン配管の途中にドレンの熱を回収するドレン回収熱交換器を設け、ドレン回収熱交換器で回収した熱はベーパライザなどの熱使用装置へ供給するようにしたこと特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
ドレンの熱をボイラ給水の加熱以外の用途で利用することによって、熱を無駄なく有効活用することができ、用水の損失も低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明を実施しているドレン回収システムのフロー図
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施例を図面を用いて説明する。図1は本発明を実施しているドレン回収システムのフロー図である。ボイラ1は給水タンク2から給水配管4を通して供給されたボイラ給水を加熱して蒸気を発生する。給水タンク2は補給水(軟水)を供給するようになっているが、ドレンの回収が行われている時にはドレンとして回収した水をボイラへ供給するために補給水の供給量は少なくなる。給水タンク2では、ドレン回収分のみでは足りない分は軟水を補給するようにしており、ドレン回収量が多ければ軟水の供給は少なくなる。給水タンク2からボイラ1へ送るボイラ給水は、回収してきたドレンと補給した軟水を混合した状態で供給する。
【0011】
ボイラ1で発生した蒸気は、蒸気使用装置3とボイラ1の間をつなぐ蒸気配管5を通して蒸気使用装置3へ送り、蒸気使用装置3では蒸気の熱を使用する。蒸気使用装置3に供給された蒸気は、蒸気使用装置3で熱が奪われることによって温度が低下する。蒸気使用装置3で熱を奪われた後の蒸気は、ドレン配管6を通して給水タンク2へ戻す。
【0012】
ドレン配管6は蒸気使用装置3と給水タンク2を結んでおり、ドレン配管6の途中にはドレンを冷却するためのドレン回収熱交換器7を設けておく。蒸気は蒸気使用装置3で熱を奪われることで温度は低下するが、それでもまだ多くの熱を有しているため、ドレン配管6にドレン回収熱交換器7を設置して給水タンク2へ戻す前のドレンから熱を回収するようにしておく。給水タンク2は大気解放しているタンクであり、ドレン配管6の給水タンク2側先端は、給水タンク2内の水中部に没するようにしておくことで、ドレンの熱は給水タンク2内の水で吸収させるようにしておく。解放タンクであれば設備コストは低いが、100℃以上のドレンを回収した場合には、フラッシュ蒸気が発生する。この場合、蒸気を大気中に大量に放出することになるため、回収するドレンが保有するエネルギー及び水を捨てることになる。そのため、ドレン回収熱交換器7でドレンの熱を事前に回収するようにしておく。ドレン回収熱交換器7でドレンの温度が100℃よりも低くなるまで熱回収を行っておけば、ドレンを給水タンク2内へ戻した際にフラッシュ蒸気が発生することはなくなり、熱及び水の給水タンク2からの放出量を削減することができる。
【0013】
ドレン回収熱交換器7は、ベーパライザ8との間で温水の循環を行うベーパライザ用循環配管11を接続しておき、ドレンから回収した熱はベーパライザ8へ供給する。ドレン回収熱交換器7ではドレンと循環水の間で熱交換を行い、加熱した温水はベーパライザ用温水タンク9にため、ベーパライザ用温水タンク9からベーパライザ8へ送る。ベーパライザ8では燃料ガスが気化する際に気化熱が奪われるため、ベーパライザ8へ送った温水はベーパライザ8で温度が低下し、再びドレン回収熱交換器7へと送られる。ドレン回収熱交換器7ではドレンの熱がベーパライザ8からの循環水に移動し、循環水の温度を上昇させる。ドレンの熱を利用してベーパライザ用温水タンク9の温度を上昇させることで、ベーパライザ用温水タンク9への蒸気給量を削減することができる。
【0014】
ドレンの熱はボイラ給水の加熱に使用しすることで、ボイラでの燃料使用量を減少することができる。ボイラの効率のみを考えるならば、ドレンの熱はすべてボイラ給水の加熱に使用した方が効率は高くなる。しかしその場合には、ベーパライザ8には別の熱を供給する必要があり、ボイラで発生している蒸気の一部をベーパライザ8に供給することになる。するとボイラ単体では効率が高くなっても蒸気使用量が多くなるため、結局は燃料消費量が多くなる。
【0015】
本実施例では、ドレンの熱をベーパライザ8に供給しているため、ドレンによるボイラ給水の加熱量はドレンの熱をすべてボイラ給水に使用している場合に比べると少なくなる。しかし、ドレンの熱によってベーパライザ用温水タンク9の加熱を行うようにすれば、ベーパライザ用温水タンク9へ供給する蒸気量を削減することができる。蒸気必要量が少なくなれば当然ボイラが消費する燃料量も少なくなる。ドレンの熱をボイラ給水の加熱にのみに使用してたため、ドレンの熱を使い切ることができずに100℃を越えるドレンが給水タンク2に戻り、フラッシュ蒸気を発生して給水タンク2から熱と水を捨てることになっていた場合に比べると、総合的な熱の回収量が増加することになり、燃料消費量を抑えることができる。
【0016】
なお、ドレン回収熱交換器7で回収した熱の使い道はベーパライザ8に限られるものではなく、ドレンの熱を使用するものであれば別であってもよい。しかし、ボイラ室内及びその周辺に設置されている装置であると、熱をロスなく供給でき、熱をより有効に活用することができるために都合が良い。その点、LNGを気化してボイラの燃料ガスとするベーパライザ8は、ボイラ室内やその周辺に設置されており、かつ熱を必要とする装置であるために最適である。
【0017】
また、本発明は以上説明した実施例に限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
【符号の説明】
【0018】
1 ボイラ
2 給水タンク
3 蒸気使用装置
4 給水配管
5 蒸気配管
6 ドレン配管
7 ドレン回収熱交換器
8 ベーパライザ
9 ベーパライザ用温水タンク
10 ドレン熱交バイパス弁
11 ベーパライザ用循環配管
図1