【実施例】
【0019】
本発明は、ネットワーク回線(伝送路)を使用して音声データと映像データを伝送(パケット通信)するIP電話システムやIP−TV会議システム等におけるパケット通信に適用することができるが、ここでは、IP−TV会議システムへの適用例を説明する。
【0020】
IP−TV会議システムは、離れて位置する複数の拠点に設置した端末をネットワーク回線を介して半二重通信方式でパケット通信するように接続し、各端末により音声データと映像データを送信及び受信(再生)する構成である。
【0021】
図1は、3つの拠点に設置した端末1,2,3の相互間をネットワーク回線(伝送路)4を介して接続して構成したIP−TV会議システムのブロック図である。
【0022】
図2は、第1の拠点に設置した第1の端末1と第2の拠点に設置した第2の端末2の間において通信データ(音声データと映像データ)をパケット化してネットワーク回線4を介してパケット通信するパケット通信系を示すブロック図である。実際には、第3の拠点に設置した第3の端末3との間にも同様のパケット通信系を設けるが、第1の端末1と第2の端末2間のパケット通信系と同様に構成するものであることから説明を省略する。
【0023】
各端末1,2,3は、映像情報と音声情報を入力してネットワーク回線4を介して映像データと音声データを送信し、受信した映像データと音声データを再生出力する機能手段を備えたコンピュータシステムによって構成する。
【0024】
第1の端末1は、入出力手段として、音声データを生成するマイクロフォン101と映像データを生成する電子カメラ102と映像データを再生するディスプレイ103と音声データを再生するスピーカ104と指令を入力するキーボード105を備える。
【0025】
この第1の端末1の信号処理手段は、メモリ(レジスタ)やCPUやプログラムや専用の処理回路によって構成され、次のような処理機能部を備える。
【0026】
主制御部106は、キーボード105から入力される指令に従って端末全体の処理機能部を制御する機能手段であり、パケットアナライザー機能部、パケット損失率解析部、送受信制御部制御機能部を備える。
【0027】
AV入出力制御部111は、マイクロフォン101から出力される送信用の音声データと電子カメラ102から出力される送信用の映像データを取得して後述する第1,2のPADに同一の第1,第2の送信用映像データ及び送信用音声データとして入力し、パケット通信によって受信して後述する第1,2のPADによって復元した第1,2の受信映像データ及び受信音声データの一方を出力用の映像データ及び音声データとして選択してディスプレイ103とスピーカ104に供給するように機能する。
【0028】
第1のPAD112aは、AV入出力制御部111から入力した第1の送信用音声データと映像データを第1の送信用パケットデータに変換して出力し、パケット通信によって受信した第1の受信パケットデータを元のデータ形態の映像データと音声データに復元するように機能する。
【0029】
第2のPAD112bは、AV入出力制御部111から入力した第2の送信用音声データと映像データを第2の送信用パケットデータに変換して出力し、パケット通信によって受信した第2の受信パケットデータを元のデータ形態の映像データと音声データに復元するように機能する。
【0030】
第1の送受信制御部113a,第2の送受信制御部113bは、前記PAD112a,112bで生成した第1,第2の送信用パケットデータの送信制御と受信パケットデータの受信制御を実行するように機能する。
【0031】
回線接続部114は、ネットワーク回線4と接続し、第1,第2の送受信制御部113a,113bで制御した送信パケットデータをネットワーク回線4に送出し、ネットワーク回線4から受信パケットデータを入力するように機能する。
【0032】
このように構成した第1の端末1において、前記第1のPAD112aと第1の送受信制御部113aと回線接続部114は第1の通信ポート(ポート番号)で通信する第1の送受信系を構成し、前記第2のPAD112bと第2の送受信制御部113bと回線接続部114は第2の通信ポート(ポート番号)で通信する第2の送受信系を構成する。
【0033】
第2の端末2は、前述した第1の端末1と同様に構成され、入出力手段として、マイクロフォン201と電子カメラ202とディスプレイ203とスピーカ204とキーボード205を備える。
【0034】
また、この第2の端末2の信号処理手段も、メモリ(レジスタ)やCPUやプログラムによって構成され、主制御部206と、AV入出力制御部211と、第1のPAD212a及び第2のPAD212bと、第1の送受信制御部213a及び第2の送受信制御部213bと、回線接続部214とを備える。
【0035】
このように構成した第2の端末2においても、前記第1のPAD212aと第1の送受信制御部213aと回線接続部214は第1の通信ポート(ポート番号)で通信を行う第1の送受信系を構成し、前記第2のPAD212bと第2の送受信制御部213bと回線接続部214は第2の通信ポート(ポート番号)で通信を行う第2の送受信系を構成する。
【0036】
第1の端末1と第2の端末2は、実際には、更に多くの送受信系(通信ポート)を備え、他の端末とも併行して通信することができる構成である。
【0037】
このIP−TV会議システムは、TV会議を行うときには、以下のように機能する。ここでは、第2の端末2が第1の端末1から音声データと映像データを受信して再生するときの通信制御処理について説明する。第2の端末2から第1の端末1へも同様に音声データと映像データを送受信して再生するが、各端末1、2は同様に機能するので具体的な説明は省略する。
【0038】
第1の端末1と第2の端末2を起動し、各機能手段を動作させてパケット通信可能状態とする。
【0039】
第2の端末2の主制御部206は、キーボード205からの指示入力に基づいて、第1のPAD213aと第1送受信制御部213a及び回線接続部214を制御して第1の通信ポート(IPアドレスとポート番号)で第1の端末1に対してデータ送信を要求する制御処理を行う。
【0040】
第1の端末1の主制御部106は、このデータ送信要求に呼応して、第1のPAD112aと第1送受信制御部113a及び回線接続部114を制御し、AV入出力制御部111から出力される音声データと映像データを第1の送信用パケットデータに変換し、この第1の送信用パケットデータを第1の送受信制御部113aと回線接続部114を通して前記第2の端末2の第1の通信ポート(IPアドレスとポート番号)宛にネットワーク回線4に出力して第2の端末2に送信(第1のパケット通信)する制御処理を行う。
【0041】
第2の端末2の主制御部206は、ネットワーク回線4から回線接続部214を介して受信した第1の受信パケットデータを第1の送受信制御部213aから第1のPAD212aに入力して元のデータ形態に復元させ、AV入出力制御部211により音声データと映像データとしてスピーカ204とディスプレイ203に供給して再生する制御処理を行う。
【0042】
第2の端末2は、このような第1のパケット通信におけるデータ受信・復元・再生状態において、主制御部206は、パケットアナライザー機能部によりパケットロスを検出し、パケット損失解析部によりパケットロス率を解析し、送受信制御部制御機能部によりパケットロス率が予め設定した設定値(FECにより修復可能で音質低下の限界ロス状態で、例えば20%)に
増加したのを検出すると、第2のPAD212bと第2の送受信制御部113bを制御(起動)して第2の通信ポート(IPアドレスとポート番号)で第1の端末1に対してデータ送信を要求する制御処理(第2のパケット通信系の起動)を行う。
【0043】
第1の端末1の主制御部106は、この第2のPAD212bからのデータ送信要求に呼応して、第2のPAD112bを制御して第1のPAD112aにより送信しているものと同一の音声データと映像データを第2の送信用パケットデータに変換し、この第2の送信用パケットデータを第2の送受信制御部113bから回線接続部114を介して前記第2の端末2の第2の通信ポート(IPアドレスとポート番号)宛にネットワーク回線4に送信する制御処理を行う。
【0044】
第2の端末2の主制御部206は、ネットワーク回線4から回線接続部214を介して受信した第2の受信パケットデータを第2の送受信制御部213bから第2のPAD212bに入力して元のデータ形態に復元させ、AV入出力制御部211により音声データと映像データとしてスピーカ204とディスプレイ203に供給して再生することができるようにするバックアップ通信制御処理を行い(この時点では、第1のパケット通信系により受信したデータの再生を継続する。)、更に、この第2の受信パケットデータのパケットロスをパケットアナライザー機能部により検出し、パケット損失解析部によりパケットロス率を解析し、送受信制御部制御機能部により第1の受信パケットデータのパケットロス率と第2の受信パケットデータのパケットロス率を大小比較し、パケットロス率が小さい方の受信パケットデータを採用して音声データと映像データをスピーカ204とディスプレイ203に供給して再生するように送受信部を切り換える制御処理を行う。
【0045】
この主制御部206による通信系切り換え制御処理を
図3を参照して説明する。
【0046】
ステップS1
起動している通信経路(パケット通信系)数を確認して処理を分岐する。
【0047】
ステップS2
起動している通信経路数が1つの場合には、起動している通信経路(第1のパケット通信系)で受信している受信パケットデータのパケットロス率を解析する。
【0048】
ステップS3
解析したパケットロス率が予め設定した設定値以上かどうかを確認して処理を分岐する。
【0049】
ステップS4
起動している通信経路(第1のパケット通信系)のパケットロス率が設定値
以上に
増加していると他の通信経路(第2のパケット通信系)を起動し、2つのパケット通信系を併行して
稼動状態とする。
【0050】
ステップS5
2つのパケット通信系
が併行して
稼動状態にあるときには、先ず、第1のパケット通信系のパケットロス率を解析する。
【0051】
ステップS6
次いで、第2のパケット通信系のパケットロス率を解析する。
【0052】
ステップS7
第1のパケット通信系と第2のパケット通信系のパケットロス率を大小比較し、比較結果に基づいて処理を分岐する。
【0053】
ステップS8
第1のパケット通信系のパケットロス率が第2のパケット通信系のパケットロス率よりも大きいときには、第2のパケット通信系を選択してパケット通信を継続し、第1のパケット通信系によるパケット通信を停止する。
【0054】
ステップS9
第1のパケット通信系のパケットロス率が第2のパケット通信系のパケットロス率よりも大きくないときには、第1のパケット通信系を選択してパケット通信を継続し、第2のパケット通信系によるパケット通信を停止する。
【0055】
因みに、ネットワーク回線4においては、第1のパケット通信と第2のパケット通信の信号を異なる信号伝送経路で伝送するが、一般的には、後から起動した第2のパケット通信における信号伝送経路は、先に起動してパケットロスが増加している第1のパケット通信における信号伝送経路よりも回線混雑が少ない伝送ルートを選択するようにしている。
【0056】
そこで、第2の端末2の主制御部206の送受信制御部制御機能部による前記切り換え制御処理は、第2の受信パケットデータのパケットロス率が第1の受信パケットデータのパケットロス率よりも小さいと判定すると、第2送受信制御部213bにより受信して第2のPAD212bにより復元した音声データと映像データをスピーカ204とディスプレイ203に供給して再生するようにAV入出力制御部211を制御(第2のパケット通信系によるパケット通信に切り換え)し、そして、第1のPAD212aと第1送受信制御部213aによるパケット通信を停止させる制御処理を行う。
【0057】
しかし、前記大小比較において、第2の受信パケットデータのパケットロス率が第1の受信パケットデータのパケットロス率よりも大きいと判定したときには、第1の受信パケットデータによるパケット通信を継続し、第2のPAD212bと第2送受信制御部213bによるパケット通信を停止させる制御処理を行う。
【0058】
以降は、第1の端末1と第2の端末2は、第2のパケット通信系によるパケット通信を継続し、そのパケットロス率を同様に検出、解析及び監視し、この第2のパケット通信系におけるパケットロス率が予め設定した設定値に
増加すると、停止している第1のパケット通信系によるパケット通信に切り換えるための同様のバックアップ通信制御処理を行う。
【0059】
このように、第1のパケット通信系によるパケット通信においてパケットロス率を解析し、この第1のパケット通信系におけるパケットロス率が予め設定した設定値に
増加すると第2のパケット通信系により前記第1のパケット通信系における送信データと同一の送信データについて併行してパケット通信を行い、そして、第1のパケット通信系におけるパケットロス率と第2のパケット通信系におけるパケットロス率を大小比較し、パケットロス率が小さい方のパケット通信系における送信データを再生・出力するように切り換えることにより、ネットワーク回線(伝送経路)における回線混雑によるパケットロスの影響を軽減したパケット通信を継続して実現することができる。また、パケットロス率が大きい方のパケット通信系はパケット通信を停止させる制御処理を行うことにより、ネットワーク回線の負荷(伝送量の増加)を軽減することができる。