特許第5794650号(P5794650)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5794650
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】難溶性薬物の溶解性改善製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/19 20060101AFI20150928BHJP
   A61K 31/405 20060101ALI20150928BHJP
   A61K 31/192 20060101ALI20150928BHJP
   A61K 31/196 20060101ALI20150928BHJP
   A61K 31/575 20060101ALI20150928BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20150928BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20150928BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20150928BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20150928BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20150928BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20150928BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20150928BHJP
【FI】
   A61K31/19
   A61K31/405
   A61K31/192
   A61K31/196
   A61K31/575
   A61K47/02
   A61K47/20
   A61K47/38
   A61K47/32
   A61K47/36
   A61K9/20
   A61K9/48
【請求項の数】26
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2014-78025(P2014-78025)
(22)【出願日】2014年4月4日
(62)【分割の表示】特願2012-536542(P2012-536542)の分割
【原出願日】2011年9月29日
(65)【公開番号】特開2014-141518(P2014-141518A)
(43)【公開日】2014年8月7日
【審査請求日】2014年4月11日
(31)【優先権主張番号】特願2010-221000(P2010-221000)
(32)【優先日】2010年9月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001926
【氏名又は名称】塩野義製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103230
【弁理士】
【氏名又は名称】高山 裕貢
(74)【代理人】
【識別番号】100113789
【弁理士】
【氏名又は名称】杉田 健一
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 聡
(72)【発明者】
【氏名】上田 廣
(72)【発明者】
【氏名】真下 全
(72)【発明者】
【氏名】村里 博志
【審査官】 澤田 浩平
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−202728(JP,A)
【文献】 特開昭47−010498(JP,A)
【文献】 特表2006−514635(JP,A)
【文献】 特開平02−223522(JP,A)
【文献】 特開2010−189337(JP,A)
【文献】 特表2006−514968(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/017098(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K9/00−9/72
A61K31/00−31/80
A61K47/00−47/48
A61P1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)1)分子内にカルボキシル基を有する難溶性薬物(但し、前記難溶性薬物が、式(I):
【化1】

(式中、R1はハロゲン原子又はC1−C3アルキルオキシ;R2はC1−C8アルキル;R3はC1−C8アルキル;R4及びR5はそれぞれ独立して、フッ素原子又は塩素原子;R6はC1−C3アルキル又はC1−C3アルキルオキシ;*は、付された炭素原子が不斉炭素であることを示す)で示される光学活性な化合物、その製薬上許容される塩またはそれらの溶媒和物を除く。)、2)アルカリ剤、および3)界面活性剤を含有し、かつ崩壊剤を実質的に含有しない造粒物;ならびに
(B)前記造粒物の外部にのみ存在する崩壊剤、
を含有することを特徴とする、固形製剤。
【請求項2】
前記難溶性薬物が、非ステロイド性抗炎症薬または胆汁酸である、請求項1記載の固形製剤。
【請求項3】
前記難溶性薬物が、インドメタシン、イブプロフェン、メフェナム酸、およびウルソデオキシコール酸からなる群から選択される1以上である、請求項2記載の固形製剤。
【請求項4】
アルカリ剤が、マグネシウム、カルシウム、およびアルミニウムからなる群から選択される1以上の原子を分子内に含有する1以上の化合物である、請求項1〜3のいずれかに記載の固形製剤。
【請求項5】
アルカリ剤が、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミナマグネシウム、合成ヒドロタルサイト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、およびケイ酸カルシウムからなる群から選択される1以上である、請求項4記載の固形製剤。
【請求項6】
アルカリ剤が、酸化マグネシウムおよび/または水酸化マグネシウムである、請求項5記載の固形製剤。
【請求項7】
前記造粒物に対し、アルカリ剤として、酸化マグネシウムを0.5〜30重量%および/または水酸化マグネシウムを0.5〜30重量%含有する、請求項6記載の固形製剤。
【請求項8】
界面活性剤が、イオン性界面活性剤である、請求項1〜7のいずれかに記載の固形製剤。
【請求項9】
イオン性界面活性剤が、硫酸エステル塩である、請求項8記載の固形製剤。
【請求項10】
硫酸エステル塩が、ラウリル硫酸ナトリウムである、請求項9記載の固形製剤。
【請求項11】
ラウリル硫酸ナトリウムを、前記造粒物に対し0.2〜50重量%含有する、請求項10記載の固形製剤。
【請求項12】
崩壊剤が、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドン誘導体、およびデンプン誘導体からなる群から選択される1以上である、請求項1〜11のいずれかに記載の固形製剤。
【請求項13】
崩壊剤が、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロースカルシウム、クロスポビドン、およびカルボキシメチルスターチナトリウムからなる群から選択される1以上である、請求項12記載の固形製剤。
【請求項14】
カルメロースカルシウムを、前記固形製剤に対し0.2〜30重量%含有する、請求項13記載の固形製剤。
【請求項15】
カルメロースカルシウムを、前記固形製剤に対し3〜7重量%含有する、請求項14記載の固形製剤。
【請求項16】
前記造粒物が、ヒドロキシプロピルセルロースを含有する、請求項1〜15のいずれかに記載の固形製剤。
【請求項17】
ヒドロキシプロピルセルロースを、前記造粒物に対し0.1〜20重量%含有する、請求項16記載の固形製剤。
【請求項18】
前記造粒物に対し、酸化マグネシウムを0.5〜30重量%、水酸化マグネシウムを0.5〜30重量%、ラウリル硫酸ナトリウムを0.2〜50重量%、およびヒドロキシプロピルセルロースを0.1〜20重量%含有し、ならびに前記固形製剤に対し、崩壊剤として、カルメロースカルシウムを0.2〜30重量%含有する、請求項1〜14、16および17のいずれかに記載の固形製剤。
【請求項19】
カルメロースカルシウムを、前記固形製剤に対し3〜7重量%含有する、請求項18記載の固形製剤。
【請求項20】
前記難溶性薬物が、pH7以下のいずれかの溶媒の37℃における溶解度が1mg/ml以下の薬物である、請求項1〜19のいずれかに記載の固形製剤。
【請求項21】
前記難溶性薬物が、pH4〜5、37℃における溶解度が1mg/ml以下の薬物である、請求項1〜20のいずれかに記載の固形製剤。
【請求項22】
前記難溶性薬物が、pH7、37℃における溶解度が1mg/ml以下の薬物である、請求項1〜21のいずれかに記載の固形製剤。
【請求項23】
錠剤またはカプセル剤である、請求項1〜22のいずれかに記載の固形製剤。
【請求項24】
錠剤である、請求項1〜23のいずれかに記載の固形製剤。
【請求項25】
(A)1)分子内にカルボキシル基を有する難溶性薬物、2)アルカリ剤、および3)界面活性剤を混合し、造粒する工程;ならびに
(B)前記(A)工程で得られた造粒物および崩壊剤を混合する工程、
を含むことを特徴とする、請求項1〜24のいずれかに記載の固形製剤の製造方法。
【請求項26】
(A)1)分子内にカルボキシル基を有する難溶性薬物、2)アルカリ剤、および3)界面活性剤を混合し、造粒する工程;ならびに
(B)前記(A)工程得られた造粒物および崩壊剤を混合する工程、
を含むことを特徴とする、分子内に酸性基を有する難溶性薬物の溶解性を改善する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難溶性薬物の経口吸収性を高めるための溶解性改善製剤、その製造方法および溶解性を改善する方法、に関する。
【背景技術】
【0002】
分子内に極性基を有する難溶性薬物を経口投与した場合、消化管内pH条件における低溶解性により経口吸収性が低下する場合がある。特に分子内に酸性基を有する化合物の多くは、pHが低くなるほど溶解性が減少し難溶性となることから、経口投与した場合に胃内で製剤中から効率良く溶出されず、また一旦溶出したとしてもすぐに析出することもあり、経口吸収性の低さが問題となっている。
【0003】
難溶性薬物の経口吸収性を改善する方法の一つとして、固体分散体を形成する方法が知られている。しかし、固体分散体は、微細化した難溶性薬物を基剤に担持させて製造するため、難溶性薬物が固体分散体中において非晶質状態で存在し、粒子の表面エネルギーが高く物理的な安定性に劣る(非特許文献1)。また、固体分散体の場合、従来のクロスカルメロースカルシウムや低置換度ヒドロキシプロピルセルロースなどの崩壊剤のみでは十分な崩壊性を示すことができない(特許文献1)。
以上より、難溶性薬物の経口吸収性を改善する方法として、固体分散体を形成する以外の方法の開発が期待されている。
【0004】
難溶性薬物の溶解性を改善するその他の方法として、種々の検討が行われている。例えば、難溶性薬物が分子内に酸性基を有する化合物である場合は、(1)難溶性薬物を塩にすることにより溶解性を改善した製剤(特許文献2)、および(2)アルカリ剤を配合して難溶性薬物近傍をアルカリ環境にすることにより溶解性を改善した製剤(特許文献3〜5、非特許文献2)などが報告されている。
【0005】
しかし、特許文献2において、難溶性薬物を塩にすることによりpH7の水への溶解性を改善しても、経口投与後に胃の酸性pH条件で薬物の析出が起こり得ることが記載されている。
特許文献3の製剤は、難溶性薬物を含有する造粒物にアルカリ剤を外部より添加して製造しており、また、非特許文献2の製剤は、難溶性薬物、アルカリ剤を含む混合物を直接打錠しているため、難溶性薬物を含有する造粒物内のみに限局してアルカリ剤を配合することによって、造粒物内のみアルカリ環境にする場合と比較して、製剤全体をアルカリ環境にする必要があり、難溶性が特に高い薬物の製剤とするには多量のアルカリ剤の配合が必要となり適していない。
また、特許文献4および5の製剤は、難溶性薬物、アルカリ剤および崩壊剤を一括して造粒しているため、崩壊時に造粒物自体が崩壊することにより、難溶性薬物の近傍よりアルカリ剤が分散して、難溶性薬物の溶解に適した環境が失われる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開98/29137号パンフレット
【特許文献2】国際公開2006/100281号パンフレット
【特許文献3】国際公開2009/048940号パンフレット
【特許文献4】国際公開2007/061415号パンフレット
【特許文献5】日本国出願公開平3−240729号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「経口投与製剤の設計と評価」、178頁、(1995年)
【非特許文献2】薬剤学、69巻、5号、329〜335頁、(2009年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、難溶性薬物の溶解性が改善されて、その結果、経口吸収性も改善された製剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、分子内に極性基(酸性基または塩基性基)を有する難溶性薬物、pH調整剤(アルカリ剤または酸)、および界面活性剤を含有する造粒物に、崩壊剤を混合させることにより、該難溶性薬物の溶解性が改善された製剤を得ることができることを見出し、以下の発明(以下、「本発明の溶解性改善製剤」とも言う)を完成した。
【0010】
(1)(A)1)分子内に酸性基を有する難溶性薬物、2)アルカリ剤、および3)界面活性剤を含有し、かつ崩壊剤を実質的に含有しない造粒物;ならびに
(B)前記造粒物の外部にのみ存在する崩壊剤、
を含有することを特徴とする、固形製剤、
(2)酸性基が、カルボキシル基、スルホ基、スルフィノ基、ホスホノ基およびフェノール性ヒドロキシ基からなる群から選択される1以上である、上記(1)記載の固形製剤、
(3)酸性基が、カルボキシル基である、上記(2)記載の固形製剤、
(4)前記難溶性薬物が、式(I):
【化1】

(式中、R1はハロゲン原子又はC1−C3アルキルオキシ;R2はC1−C8アルキル;R3はC1−C8アルキル;R4及びR5はそれぞれ独立して、フッ素原子又は塩素原子;R6はC1−C3アルキル又はC1−C3アルキルオキシ;*は、付された炭素原子が不斉炭素であることを示す)で示される光学活性な化合物、その製薬上許容される塩、またはそれらの溶媒和物である、上記(3)記載の固形製剤、
(5)前記難溶性薬物が、(S)−(E)−3−(2,6−ジクロロ−4−{4−[3−(1−ヘキシルオキシエチル)−2−メチルオキシフェニル]チアゾール−2−イルカルバモイル}フェニル)−2−メチルアクリル酸、その製薬上許容される塩、またはそれらの溶媒和物である、上記(4)記載の固形製剤、
(6)前記難溶性薬物が、非ステロイド性抗炎症薬または胆汁酸である、上記(3)記載の固形製剤、
(7)前記難溶性薬物が、インドメタシン、イブプロフェン、メフェナム酸、およびウルソデオキシコール酸からなる群から選択される1以上である、上記(3)記載の固形製剤、
(8)アルカリ剤が、マグネシウム、カルシウム、およびアルミニウムからなる群から選択される1以上の原子を分子内に含有する1以上の化合物である、上記(1)〜(7)のいずれかに記載の固形製剤、
(9)アルカリ剤が、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミナマグネシウム、合成ヒドロタルサイト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、およびケイ酸カルシウムからなる群から選択される1以上である、上記(8)記載の固形製剤、
(10)アルカリ剤が、酸化マグネシウムおよび/または水酸化マグネシウムである、上記(9)記載の固形製剤、
(11)前記造粒物に対し、アルカリ剤として、酸化マグネシウムを0.5〜30重量%および/または水酸化マグネシウムを、0.5〜30重量%含有する、上記(10)記載の固形製剤、
(12)界面活性剤が、イオン性界面活性剤である、上記(1)〜(11)のいずれかに記載の固形製剤、
(13)イオン性界面活性剤が、硫酸エステル塩である、上記(12)記載の固形製剤、
(14)硫酸エステル塩が、ラウリル硫酸ナトリウムである、上記(13)記載の固形製剤、
(15)ラウリル硫酸ナトリウムを、前記造粒物に対し0.2〜50重量%含有する、上記(14)記載の固形製剤、
(16)崩壊剤が、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドン誘導体、およびデンプン誘導体からなる群から選択される1以上である、上記(1)〜(15)のいずれかに記載の固形製剤、
(17)崩壊剤が、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロースカルシウム、クロスポビドン、およびカルボキシメチルスターチナトリウムからなる群から選択される1以上である、上記(16)記載の固形製剤、
(18)カルメロースカルシウムを、前記固形製剤に対し0.2〜30重量%含有する、上記(17)記載の固形製剤、
(19)カルメロースカルシウムを、前記固形製剤に対し3〜7重量%含有する、上記(18)記載の固形製剤、
(20)前記造粒物が、ヒドロキシプロピルセルロースを含有する、上記(1)〜(19)のいずれかに記載の固形製剤、
(21)ヒドロキシプロピルセルロースを、前記造粒物に対し0.1〜20重量%含有する、上記(20)記載の固形製剤、
(22)前記造粒物に対し、酸化マグネシウムを0.5〜30重量%、水酸化マグネシウムを0.5〜30重量%、ラウリル硫酸ナトリウムを0.2〜50重量%、およびヒドロキシプロピルセルロースを0.1〜20重量%含有する前記造粒物を含有し、ならびに前記固形製剤に対し、崩壊剤として、カルメロースカルシウムを0.2〜30重量%含有する、上記(1)〜(4)、(6)〜(18)、(20)、または(21)のいずれか記載の固形製剤、
(23)前記難溶性薬物が、(S)−(E)−3−(2,6−ジクロロ−4−{4−[3−(1−ヘキシルオキシエチル)−2−メチルオキシフェニル]チアゾール−2−イルカルバモイル}フェニル)−2−メチルアクリル酸、その製薬上許容される塩、またはそれらの溶媒和物である、上記(22)記載の固形製剤、
(24)カルメロースカルシウムを、前記固形製剤に対し3〜7重量%含有する、上記(22)または(23)記載の固形製剤、
(25)前記難溶性薬物が、pH7以下のいずれかの溶媒の37℃における溶解度が1mg/ml以下の薬物である、上記(1)〜(24)のいずれかに記載の固形製剤、
(26)前記難溶性薬物が、pH4、37℃における溶解度が1mg/ml以下の薬物である、上記(1)〜(25)のいずれかに記載の固形製剤、
(27)前記難溶性薬物が、pH7、37℃における溶解度が1mg/ml以下の薬物である、上記(1)〜(26)のいずれかに記載の固形製剤、
(28)(A)1)分子内に塩基性基を有する難溶性薬物、2)酸、および3)界面活性剤を含有し、かつ崩壊剤を実質的に含有しない造粒物;ならびに
(B)前記造粒物の外部にのみ存在する崩壊剤、
を含有することを特徴とする、固形製剤、
(29)錠剤またはカプセル剤である、上記(1)〜(28)のいずれかに記載の固形製剤、
(30)錠剤である、上記(1)〜(29)のいずれかに記載の固形製剤、
(31)(A)1)分子内に酸性基を有する難溶性薬物、2)アルカリ剤、および3)界面活性剤を混合し、造粒する工程;ならびに
(B)前記(A)工程で得られた造粒物および崩壊剤を混合する工程、
を含むことを特徴とする、上記(1)〜(27)、(29)、および(30)のいずれかの記載の固形製剤の製造方法、
(32)(A)1)分子内に酸性基を有する難溶性薬物、2)アルカリ剤、および3)界面活性剤を混合し、造粒する工程;ならびに
(B)前記(A)工程で得られた造粒物および崩壊剤を混合する工程、
を含むことを特徴とする、分子内に酸性基を有する難溶性薬物の溶解性を改善する方法、
(33)(S)−(E)−3−(2,6−ジクロロ−4−{4−[3−(1−ヘキシルオキシエチル)−2−メチルオキシフェニル]チアゾール−2−イルカルバモイル}フェニル)−2−メチルアクリル酸、界面活性剤、およびアルカリ剤を含有する造粒物、
(34)界面活性剤が、イオン性界面活性剤である、上記(33)記載の造粒物、
(35)イオン性界面活性剤が、ラウリル硫酸ナトリウムである、上記(34)記載の造粒物、
(36)アルカリ剤が、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、またはそれらの混合物である、上記(33)〜(35)のいずれかに記載の造粒物。
(37)上記(33)〜(36)のいずれかに記載の造粒物を含有する、固形製剤。
(38)第14改正日本薬局方溶出試験法第2法(パドル法)による、日本薬局方崩壊試験法第2液を用いた溶出試験において、前記溶出試験開始60分後の溶出率が20%以上である、上記(1)〜(30)および(37)のいずれかに記載の固形製剤。
(39)前記溶出試験開始60分後の溶出率が、薬物原末またはそれを含有する混合末の該溶出率と比較して4倍以上である、上記(1)〜(30)および(37)のいずれかに記載の固形製剤。
【発明の効果】
【0011】
本発明の溶解性改善製剤は、難溶性薬物が本来難溶であるpH条件下においても高い溶解性を示す。従って、本発明の溶解性改善製剤は、その溶解性が消化管内pH条件に影響されにくいため、胃から小腸上部に到る広範囲において高い経口吸収性を示すことが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】比較例1〜3製剤における化合物C−3Bの溶出挙動を示す。縦軸は薬物の溶出率(%)、横軸は溶出試験開始後の時間(分)を表す。
図2】実施例1製剤、比較例4製剤における化合物C−3Bの溶出挙動を示す。縦軸は薬物の溶出率(%)、横軸は溶出試験開始後の時間(分)を表す。
図3】実施例4〜6製剤における化合物C−3Bの溶出挙動を示す。縦軸は薬物の溶出率(%)、横軸は溶出試験開始後の時間(分)を表す。
図4】化合物C−3Bの溶出試験開始後60分後の溶出率の、酸化マグネシウム配合量に対する用量依存性を示す。縦軸は溶出試験開始後60分後の薬物の溶出率(%)、横軸は酸化マグネシウム配合量(mg)を表す。
図5】実施例13および14製剤における化合物C−3Bの溶出挙動を示す。縦軸は薬物の溶出率(%)、横軸は溶出試験開始後の時間(分)を表す。
図6】化合物C−3Bの溶出試験開始後60分後の溶出率の、ラウリル硫酸ナトリウム配合量に対する用量依存性を示す。縦軸は溶出試験開始後60分後の薬物の溶出率(%)、横軸はラウリル硫酸ナトリウム配合量(mg)を表す。
図7】ビーグル犬における、実施例20製剤、比較例7製剤の経口投与による化合物C−3Bの血漿中薬物濃度変化を示す。縦軸は血漿中薬物濃度(ng/ml)、横軸は試験開始後の時間(時間)を表す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書における用語について説明する。
「難溶性」とは、溶媒、特に水、緩衝液、または消化管内液に対する溶解度が1mg/ml以下、より好ましくは100μg/ml以下、さらに好ましくは10μg/ml以下、特に好ましくは1μg/ml以下、最も好ましくは0.1μg/ml以下の状態を意味する。pH7以下のいずれかの溶媒に難溶性であるのが好ましく、pH4〜7のいずれかの溶媒に難溶性であるのがより好ましく、pH4および/またはpH7の溶媒に難溶性であるのがさらに好ましい。但し、分子内に塩基性基を有する化合物の場合は、pH7以上のいずれかの溶媒に難溶性であるのが好ましく、pH7〜9のいずれかの溶媒に難溶性であるのがより好ましく、pH7および/またはpH9の溶媒に難溶性であるのがさらに好ましい。溶解度を測定するための溶媒は特に限定されないが、pH4の溶媒としては、例えば、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液などである。pH5の溶媒としては、例えば、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液などである。pH7の溶媒としては、例えば、水、リン酸緩衝液などである。pH9の溶媒としては、例えば、炭酸緩衝液などである。溶解度の測定温度は、いずれの場合も、好ましくは20〜40℃であり、より好ましくは37℃である。
【0014】
「難溶性薬物」としては、例えば滋養強壮保健薬、解熱鎮痛消炎薬(例えば、非ステロイド性抗炎症薬)、向精神薬、抗不安薬、抗うつ薬、催眠鎮静薬、鎮痙薬、中枢神経作用薬、脳代謝改善剤、脳循環改善剤、抗てんかん剤、交感神経興奮剤、胃腸薬、制酸剤、抗潰瘍剤、鎮咳去痰剤、鎮吐剤、呼吸促進剤、気管支拡張剤、アレルギー用薬、歯科口腔用薬、抗ヒスタミン剤、強心剤、不整脈用剤、利尿薬、血圧降下剤、血管収縮薬、冠血管拡張薬、末梢血管拡張薬、高脂血症用剤、血小板産生調節剤、利胆剤、抗生物質、化学療法剤、糖尿病用剤、骨粗しょう症用剤、抗リウマチ薬、骨格筋弛緩薬、鎮痙剤、ホルモン剤、アルカロイド系麻薬、サルファ剤、痛風治療薬、血液凝固阻止剤、抗悪性腫瘍剤、胆汁酸などから選ばれた1種または2種以上の成分が用いられる。
「分子内に酸性基を有する難溶性薬物」とは、分子内に酸性基を有する化合物、その製薬上許容される塩、またはそれらの溶媒和物を意味するが、分子内に酸性基を有する化合物が好ましい。酸性基は、好ましくは、カルボキシル基、スルホ基、スルフィノ基、ホスホノ基、およびフェノール性ヒドロキシ基からなる群から選択される1以上、さらに好ましくは、カルボキシル基、スルホ基またはフェノール性ヒドロキシ基、最も好ましくは、カルボキシル基である。また、分子内に塩基性基を有さないのが好ましい。
「分子内に塩基性基を有する難溶性薬物」とは、分子内に塩基性基を有する化合物、その製薬上許容される塩、またはそれらの溶媒和物を意味するが、分子内に塩基性基を有する化合物が好ましい。塩基性基は、好ましくは、アミノ基、アミジノ基、グアニジノ基、アンモニウム基、環状アミノ基、および核酸塩基からなる群から選択される1以上である。また、分子内に酸性基を有さないのが好ましい。
【0015】
分子内に酸性基を有する難溶性薬物としては、好ましくは、国際公開2009/017098号記載の式(I):
【化2】

(式中、Rはハロゲン原子又はC1−C3アルキルオキシ;RはC1−C8アルキル;RはC1−C8アルキル;R及びRはそれぞれ独立して、フッ素原子又は塩素原子;RはC1−C3アルキル又はC1−C3アルキルオキシ;*は、付された炭素原子が不斉炭素であることを示す)で示される光学活性な化合物、その製薬上許容される塩またはそれらの溶媒和物などが挙げられる。
【0016】
式(I)で示される化合物のR1〜R6の好ましい置換基群を(Ia)〜(In)で示す。それらの可能な組合せの化合物が好ましい。
R1は、(Ia)ハロゲン原子又はC1−C3アルキルオキシが好ましく、さらに(Ib)フッ素原子又はメチルオキシがより好ましく、(Ic)メチルオキシが最も好ましい。
R2は、(Id)C1−C8アルキルが好ましく、さらに(Ie)C1−C6アルキルがより好ましい。
R3は、(If)C1−C8アルキルが好ましく、さらに(Ig)C1−C6アルキルがより好ましい。
R4およびR5はともに同じで、(Ih)フッ素原子又塩素原子が好ましく、さらに(Ii)塩素原子がより好ましい。
R6は、(Ij)C1−C3アルキル又はC1−C3アルキルオキシが好ましく、さらに(Ik)C1−C3アルキルがより好ましく、(Il)メチルが最も好ましい。
光学異性体の旋光度は、(Im)(+)又は(−)が好ましく、さらに(In)(−)がより好ましい。
【0017】
式(I)で示される光学活性な化合物として、以下の光学活性な化合物が好ましい。
【化3】

(式中、Meはメチル;*は、付された炭素原子が不斉炭素であることを示す。)さらに好ましくは、(E)−3−(2,6−ジクロロ−4−{4−[3−(1−ヘキシルオキシエチル)−2−メチルオキシフェニル]チアゾール−2−イルカルバモイル}フェニル)−2−メチルアクリル酸であり、最も好ましくは、(S)−(E)−3−(2,6−ジクロロ−4−{4−[3−(1−ヘキシルオキシエチル)−2−メチルオキシフェニル]チアゾール−2−イルカルバモイル}フェニル)−2−メチルアクリル酸(国際公開2009/017098号記載の「化合物C−3B」)である。化合物C−3Bは、pHが7以下の溶媒に対する溶解度が0.0004μg/ml以下であり、難溶性薬物の中でも非常に難溶性が高い薬物である。
また、他の好ましい分子内に酸性基を有する難溶性薬物としては、非ステロイド性抗炎症薬または胆汁酸などが挙げられる。例えば、インドメタシン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、ロキソプロフェン、ケトロラック、フェルビナク、ジフェロナク、サリチル酸、サリチル酸グリコール、アセチルサリチル酸、フルフェナム酸、メフェナム酸、アセメタシン、アルクロフェナク、イブプロフェン、スリンダク、トルメチン、ロベンザリット、ペニシラミン、オキサプロジン、ジフルニサル、フェンブフェン、フェンチアザク、ナプロキセン、プラノプロフェン、チアプロフェン、スプロフェン、オキサプロジン、エトドラク、ザルトフェン、テルミサルタン、ウルソデオキシコール酸またはその製薬上許容される塩などが挙げられ、好ましくはインドメタシン、イブプロフェン、メフェナム酸、またはウルソデオキシコール酸である。
【0018】
分子内に塩基性基を有する難溶性薬物としては、塩酸マプロチリン、塩酸パパベリン、ノルエピネフリン、塩化ベルベリン、塩酸セトラキサート、スルファメトキサゾール、メトロニダゾール、ジアゼパム、シメチジン、ファモチジン、塩酸ブロムヘキシン、塩酸ジフェニドール、カフェイン、ジゴキシン、塩酸ペラパミル、エリスロマイシン、クラリスロマイシン、キタサマイシン、ジョサマイシン、ロキシスロマイシン、ミデカマイシンなどが挙げられる。
【0019】
「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を意味する。フッ素原子、塩素原子、および臭素原子が好ましい。
「アルキル」は、炭素原子数1〜8の直鎖又は分枝鎖の1価の炭化水素基を包含する。例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、イソヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチルなどが挙げられる。好ましくは、C1−C6アルキルが挙げられる。さらに好ましくは、C1−C4アルキルが挙げられる。 「アルキルオキシ」としては、メチルオキシ、エチルオキシ、n−プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、n−ブチルオキシ、イソブチルオキシ、sec−ブチルオキシ、tert−ブチルオキシ、n−ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、2−ペンチルオキシ、3−ペンチルオキシ、n−ヘキシルオキシ、イソヘキシルオキシ、2−ヘキシルオキシ、3−ヘキシルオキシ、n−ヘプチルオキシ、n−オクチルオキシなどが挙げられる。好ましくは、C1−C6アルキルオキシが挙げられる。さらに好ましくは、C1−C4アルキルオキシが挙げられる。
【0020】
上記化学式において、*が付された炭素原子は不斉炭素であることを示す。*が付された化合物は、*が付された炭素原子の絶対配置が、R配置又はS配置であることを示す。例えば、式(I)で示される光学活性な化合物は、R配置の光学異性体((R)−I))またはS配置の光学異性体((S)−I))を包含する。
【化4】


「難溶性薬物」は、本発明製剤において、好ましくは結晶である。難溶性薬物の結晶状態は、固体NMRまたは粉末X線回折法により確認することができる。
「難溶性薬物」の含有量は、本発明の造粒物に対し、好ましくは、0.1〜20重量%、より好ましくは1〜10重量%、さらに好ましくは2〜6重量%である。
【0021】
「アルカリ剤」は、水に5重量%を溶解または懸濁させた状態のpHが好ましくは9以上であれば特に限定されず、2種以上の混合物であっても良い。また、水への溶解速度が遅いものが望ましい。例えば、マグネシウム、カルシウム、およびアルミニウムからなる群から選択される1以上の原子を分子内に含有するものが挙げられる。好ましくは、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミナマグネシウム、合成ヒドロタルサイト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、またはケイ酸カルシウムからなる群から選択される1以上であり、さらに好ましくは、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、またはそれらの混合物である。
分子内に酸性基を有する難溶性薬物を含有する造粒物内のみにアルカリ剤を配合することにより、専ら造粒物内のみをアルカリ環境にすることができる。その結果、製剤全体をアルカリ環境にした場合と比較して、少量のアルカリ剤の配合で、かつ効果的に難溶性薬物の近傍をアルカリ環境にすることができる。
各アルカリ剤の含有量は、本発明の造粒物に対し、それぞれ好ましくは0.5〜30重量%、より好ましくは2〜25重量%である。
酸化マグネシウムの含有量は、本発明の造粒物に対し、好ましくは0.5〜30重量%、より好ましくは2〜25重量%、さらに好ましくは2.5〜10重量%である。水酸化マグネシウムの含有量としては、本発明の造粒物に対し、好ましくは0.5〜30重量%、より好ましくは2〜25重量%、さらに好ましくは5〜20重量%である。水酸化アルミナマグネシウムの含有量としては、本発明の造粒物に対し、好ましくは0.5〜30重量%、より好ましくは2〜25重量%、さらに好ましくは7.5〜20重量%である。合成ヒドロタルサイトの含有量としては、本発明の造粒物に対し、好ましくは0.5〜30重量%、より好ましくは2〜25重量%、さらに好ましくは5〜20重量%である。
これらの含有量よりも多ければ、難溶性薬物によっては安定性が低下し、また、添加剤、特に崩壊剤の作用を経時的に低下させる可能性があり、少なければ、造粒物において難溶性薬物の近傍を十分アルカリ環境にすることができず、難溶性薬物の溶解性を改善できない恐れがある。
「酸」は、水に5重量%を溶解または懸濁させた状態のpHが好ましくは5以下であれば特に限定されず、2種以上の混合物であっても良い。例えば、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸などが挙げられる。
分子内に塩基性基を有する難溶性薬物を含有する造粒物内のみに酸を配合することにより、専ら造粒物内のみを酸性環境にすることができる。その結果、製剤全体を酸性環境にした場合と比較して、少量の酸の配合で、かつ効果的に難溶性薬物の近傍を酸性環境にすることができる。
【0022】
「界面活性剤」は、製剤学的に使用できるものであればよく、2種以上の混合物であっても良い。界面活性剤は、難溶性薬物の濡れ性を改善することにより、該難溶性薬物の溶解性を改善することができる。イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤のいずれも使用することができるが、イオン性界面活性剤がより好ましい。イオン性界面活性剤は、好ましくは、硫酸エステル塩、カルボン酸塩、およびスルホン酸塩からなる群から選択される1以上であり、さらに好ましくは、硫酸エステル塩であり、最も好ましくは、ラウリル硫酸ナトリウムである。非イオン性界面活性剤は、好ましくは、糖脂肪酸エステルおよび/またはポリオキシアルキレングリコールであり、さらに好ましくは、ショ糖脂肪酸エステルおよび/またはポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールである。
界面活性剤の含有量は、本発明の造粒物に対し、好ましくは0.2〜50重量%、より好ましくは1〜40重量%である。
ラウリル硫酸ナトリウムの含有量は、本発明の造粒物に対し、好ましくは0.2〜50重量%、より好ましくは1〜40重量%、さらに好ましくは2.5〜30重量%である。
これらの含有量よりも多ければ、粘度上昇により造粒性が低下する可能性があり、少なければ、造粒物において難溶性薬物の濡れ性を十分改善できず、難溶性薬物の溶解性を改善できない恐れがある。
【0023】
「結合剤」としては、製剤学的に使用できるものであればよく、2種以上の混合物であっても良い。具体的には、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウムなどが挙げられ、好ましくはセルロース誘導体および/またはポリビニルピロリドンである。
セルロース誘導体としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、フマル酸・ステアリン酸・ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート・ヒドロキシプロピルメチルセルロース混合物、ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどが挙げられ、好ましくは、ヒドロキシプロピルセルロースである。
結合剤の含有量は、本発明の造粒物に対し、0.1〜20重量%、好ましくは0.5〜10重量%である。
ヒドロキシプロピルセルロースの含有量は、本発明の造粒物に対し、好ましくは0.1〜20重量%、より好ましくは0.5〜10重量%、さらに好ましくは1〜5重量%である。
界面活性剤として、水への溶解度が高いイオン性界面活性剤(例:ラウリル硫酸ナトリウム)を用いた場合は、結合剤としてセルロース誘導体を用いてイオン性界面活性剤の溶解速度を遅くするのが望ましい。
【0024】
「賦形剤」としては、製剤学的に使用できるものであればよく、2種以上の混合物であっても良い。具体的には、水溶性賦形剤、水不溶性賦形剤をいずれも使用することができる。より具体的には、水溶性賦形剤として、ぶどう糖、果糖、乳糖、蔗糖、D−マンニトール、エリスリトール、マルチトール、トレハロース、ソルビトールなどが挙げられ、水不溶性賦形剤として、トウモロコシデンプン、馬鈴薯デンプン、コムギデンプン、コメデンプン、結晶セルロース、無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素などが挙げられる。好ましくは、D−マンニトール、トウモロコシデンプン、および結晶セルロースからなる群から選択される1以上である。
水溶性賦形剤の含有量は、本発明の溶解性改善製剤に対し、好ましくは9重量%以上、より好ましくは15重量%以上、さらに好ましくは35重量%以上、最も好ましくは50重量%以上で、かつ95重量%以下、好ましくは90重量%以下である。
【0025】
「滑沢剤」としては、製剤学的に使用できるものであればよく、2種以上の混合物であっても良い。具体的には、ショ糖脂肪酸エステル、タルク、含水二酸化ケイ素、ステアリン酸金属塩などが挙げられる。好ましくは、ステアリン酸マグネシウムおよび/またはタルクである。
滑沢剤の含有量は、本発明の溶解性改善製剤に対し、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.5〜2.5重量%である。
【0026】
「崩壊剤」としては、製剤学的に使用できるものであればよく、2種以上の混合物であっても良いが、好ましくは、実質的にアルカリ剤または界面活性剤として使用可能であるもの(例:炭酸水素ナトリウム)を含まない。具体的には、崩壊剤としては、セルロース誘導体、トウモロコシデンプン、アルファー化デンプン、デンプン誘導体、ポリビニルピロリドン誘導体、カンテン末などで挙げられる。好ましくは、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドン誘導体、またはデンプン誘導体である。セルロース誘導体としては、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウムなどが挙げられ、好ましくは低置換度ヒドロキシプロピルセルロースまたはカルメロースカルシウムである。ポリビニルピロリドン誘導体としては、クロスポビドンなどが挙げられ、好ましくは、クロスポビドンである。デンプン誘導体としては、カルボキシメチルスターチナトリウムなどが挙げられ、好ましくは、カルボキシメチルスターチナトリウムである。
崩壊剤の含有量は、本発明の溶解性改善製剤に対し、好ましくは0.2〜30重量%、より好ましくは1〜20重量%である。
低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの含有量は、本発明の溶解性改善製剤に対し、好ましくは0.2〜30重量%、より好ましくは2.5〜20重量%、さらに好ましくは5〜15重量%である。カルメロースカルシウムの含有量は、本発明の溶解性改善製剤に対し、好ましくは0.2〜30重量%、より好ましくは1〜20重量%、さらに好ましくは2〜10重量%である。カルボキシメチルスターチナトリウムの含有量は、本発明の溶解性改善製剤に対し、好ましくは0.2〜30重量%、より好ましくは1〜20重量%、さらに好ましくは3〜10重量%、最も好ましくは3〜7重量%である。クロスポビドンの含有量は、本発明の溶解性改善製剤に対し、好ましくは0.2〜30重量%、より好ましくは1〜20重量%、さらに好ましくは2〜10重量%である。
これらの含有量よりも多ければ、崩壊剤あたりの内部に取り込む水の量が不十分になり、崩壊性が低下する可能性があり、少なければ、崩壊作用を十分示すことができない恐れがある。
【0027】
「造粒物」とは、造粒により製造されたものを意味し、その製法は時に限定されない。例えば、粉末、微粒、顆粒、散剤などが例示される。
「固形製剤」は、固形の製剤であれば特に限定されないが、内用薬であるのが好ましい。剤形としては、例えば、日本薬局方記載の製剤総則中における、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、丸剤などが挙げられるが、好ましくは、錠剤またはカプセル剤、さらに好ましくは錠剤である。
【0028】
本発明の造粒物は、難溶性薬物、アルカリ剤または酸、および界面活性剤を含有することを特徴とする。必要に応じて、他に結合剤、賦形剤、滑沢剤などを含有しても良いが、崩壊剤は実質的に含有しない。ここで、「崩壊剤を実質的に含有しない」とは、崩壊剤を全く含有しないか、または崩壊剤が本来有する崩壊作用を示すことができない程度の配合量しか含有していないことをいう。好ましくは、崩壊剤の含有量が本発明の造粒物に対し、約0.5重量%未満、好ましくは約0.05重量%未満、さらに好ましくは0.005重量%未満であり、特に好ましくは、崩壊剤を全く含有しない。崩壊剤を造粒物内に一定量以上含有させた場合、製剤を経口投与後、崩壊時に造粒物の構造が著しく崩壊し、難溶性薬物近傍からアルカリ剤および界面活性剤が分散することによって、難溶性薬物の溶解に適した環境が失われる。剤形としては、好ましくは、日本薬局方記載の製剤総則中における、顆粒剤または散剤とすることができる。難溶性薬物は、本発明の造粒物中において結晶状態で存在するのが好ましい。難溶性薬物の結晶状態は、固体NMRまたは粉末X線回折法により確認することができる。
本発明の造粒物は、公知の手段に従い製造することができる。具体的には、難溶性薬物、アルカリ剤または酸、および界面活性剤に、必要に応じて、結合剤、賦形剤、滑沢剤などを混合し、湿式造粒法、例えば、押し出し造粒法、流動層造粒法、攪拌造粒法、噴霧造粒法、転動造粒法、解砕造粒法など、好ましくは攪拌造粒法で造粒することにより、製造することができる。難溶性薬物、アルカリ剤、界面活性剤、結合剤、および賦形剤を混合し、造粒することにより製造するのが好ましい。造粒は、結合剤の水溶液、好ましくは1〜20重量%の結合剤含有水溶液、さらに好ましくは5〜15重量%の結合剤含有水溶液を添加して行うのが好ましい。造粒後は、乾燥して調粒を行うのが好ましい。
【0029】
本発明の溶解性改善製剤は、本発明の造粒物および崩壊剤を含有することを特徴とする固形製剤であり、崩壊剤は造粒物の外部に存在し、内部には実質的には存在しないことを特徴とする。該溶解性改善製剤は、本発明の造粒物に崩壊剤を混合することにより製造される。
本発明の溶解性改善製剤は、アルカリ剤または酸を該造粒物内にのみ含有させればよいので、アルカリ剤または酸の配合量を比較的少量にすることができる。また、アルカリ剤または酸を外部にのみ存在させる場合に比べて、難溶性薬物の溶解性を改善できる。本発明の溶解性改善製剤では、崩壊剤を実質的に造粒物の外部にのみ含有させることによって、難溶性薬物の溶解性がさらに改善できる。本発明の溶解性改善製剤は必要に応じて、他に結合剤、賦形剤、滑沢剤などを含有しても良い。剤形としては、日本薬局方記載の製剤総則中における、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、丸剤などが挙げられる。好ましくは、錠剤またはカプセル剤であり、さらに好ましくは、錠剤である。
本発明の溶解性改善製剤は、公知の手段に従い製造することができる。具体的には、本発明の造粒物に、崩壊剤および必要に応じて結合剤、賦形剤、滑沢剤などを混合し、例えば、打錠、カプセル充填、または造粒することなどにより製造することができる。打錠は、外部滑沢打錠を行う装置、単発打錠機、ロータリー式打錠機などを用いて行うことができる。造粒は、湿式造粒法、例えば、押し出し造粒法、流動層造粒法、攪拌造粒法、噴霧造粒法、転動造粒法、解砕造粒法などを用いて行うことができる。本発明の造粒物に、崩壊剤および滑沢剤を外部添加し、さらに必要に応じて賦形剤を混合し、打錠することにより製造するのが好ましい。その際、打錠圧は3〜20kNが好ましく、4〜15kNがさらに好ましい。また、錠剤径は6〜10mmが好ましい。
本発明の分子内に酸性基を有する難溶性薬物の溶解性改善製剤において、難溶性薬物の溶解性をより一層改善させるために、アルカリ剤、界面活性剤および結合剤の前記造粒物に対する含有量、ならびに崩壊剤の前記固形製剤に対する含有量を、好ましくは以下の通り設定することができる。例えば、前記造粒物に対して、1以上のアルカリ剤をそれぞれ0.5〜30重量%、界面活性剤を0.2〜50重量%、および/または結合剤を0.1〜20重量%含有し、前記固形製剤に対して、崩壊剤を0.2〜30重量%含有する。より好ましくは、前記造粒物に対して、酸化マグネシウムを0.5〜30重量%、水酸化マグネシウムを0.5〜30重量%、ラウリル硫酸ナトリウムを0.2〜50重量%、および/またはヒドロキシプロピルセルロースを0.1〜20重量%含有し、前記固形製剤に対して、崩壊剤としてカルメロースカルシウムを、0.2〜30重量%含有する。さらに好ましくは、以下の通り設定することができる。前記造粒物に対して、酸化マグネシウムを2.5〜10重量%、水酸化マグネシウムを5〜20重量%、ラウリル硫酸ナトリウムを2.5〜30重量%、および/またはヒドロキシプロピルセルロースを1〜5重量%含有し、前記固形製剤に対して、崩壊剤としてカルメロースカルシウムを、3〜7重量%含有する。
【0030】
本発明の溶解性改善製剤は、コーティングされていても良い。コーティングは公知の手段により行うことができる。コーティング剤としては、ポリビニルアルコール、エチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、カルメロース、カルメロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、PVAコポリマー、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー分散液、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、オパドライ、カルナバロウ、カルボキシビニルポリマー、乾燥メタクリル酸コポリマー、ジメチルアミノエチルメタアクリレート・メチルメタアクリレートコポリマー、ステアリルアルコール、セラック、セタノール、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、フマル酸・ステアリン酸・ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート・ヒドロキシプロピルメチルセルロース混合物、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルアルコール、メタクリル酸コポリマー、2−メチル−5−ビニルピリジンメチルアクリレート・メタクリル酸コポリマーなどが挙げられる。好ましくは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである。
上記コーティング剤は、1以上の着色剤を含有していてもよい。着色剤としては、食用赤色3号、食用黄色5号、食用青色1号などの食用色素、酸化チタン、三二酸化鉄、褐色酸化鉄、黒酸化鉄、銅クロロフィル、銅クロロフィリンナトリウム、リボフラビン、抹茶末などが挙げられる。好ましくは、酸化チタンおよび/または三二酸化鉄である。着色剤は、遮光効果も有する場合がある。ある種の難溶性薬物は、特定の波長領域、例えば300〜500nmでアルカリ剤(例:酸化マグネシウム)との反応によって分解する場合があるが、着色剤、好ましく三二酸化鉄を配合しておくことで、その分解が抑制される。
【0031】
本発明の溶解性改善製剤は、難溶性薬物の近傍が溶解に適した環境に設定されていることにより、溶解性が改善されている。本発明の分子内に酸性基を有する難溶性薬物の溶解性改善製剤は、特に酸性pH条件下においても高い溶解度を示す。溶解度の測定方法は、例えば、第14改正日本薬局方溶出試験法第2法(パドル法)による溶出試験などが挙げられる。溶出試験に用いる溶媒は、日本薬局方崩壊試験法第2液が好ましい。本発明の溶解性改善製剤は、溶出試験開始後60分後の溶出率が、好ましくは20%以上、さらに好ましくは30%以上、最も好ましくは35%以上である。また、本発明の溶解性改善製剤は、溶出試験開始後60分後の溶出率が、難溶性薬物またはそれを含有する混合末と比較して、好ましくは4倍以上、さらに好ましくは10倍以上、最も好ましくは20倍以上である。例えば、(S)−(E)−3−(2,6−ジクロロ−4−{4−[3−(1−ヘキシルオキシエチル)−2−メチルオキシフェニル]チアゾール−2−イルカルバモイル}フェニル)−2−メチルアクリル酸を難溶性薬物とする溶解性改善製剤は、溶出試験開始後60分後の溶出率を、該難溶性薬物を含有する混合末と比較して100倍以上改善することができる。
従って、本発明の溶解性改善製剤は、難溶性薬物の溶解度が消化管内のpH条件に影響されにくいため、胃および小腸上部のいずれにおいても溶解性が改善され、その結果、難溶性薬物の経口吸収性が顕著に改善された製剤として有用である。
【実施例】
【0032】
以下、実施例と比較例を挙げて本発明を詳しく説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
溶出試験は、第14改正日本薬局方溶出試験法第2法(パドル法)に従い、日本薬局方崩壊試験法第2液900mlを用いて、37℃で毎分50回転の条件により行った。また、薬物濃度はHPLC法により測定した。

試験例1 薬物の溶解度評価
薬物に溶媒を添加し、超音波照射処理を行った後、37℃で3時間撹拌した。3時間後、検体を0.45μmフィルターでろ過し、ろ液中の薬物濃度をHPLC法により測定した。なお溶媒としては、100mMのクエン酸緩衝液(pH4)、100mMのリン酸緩衝液(pH7)、および100mM炭酸緩衝液(pH9)を用いた。結果を表1に示す。
以上により、国際公開2009/017098号記載の(S)−(E)−3−(2,6−ジクロロ−4−{4−[3−(1−ヘキシルオキシエチル)−2−メチルオキシフェニル]チアゾール−2−イルカルバモイル}フェニル)−2−メチルアクリル酸(化合物C−3B)が酸性および中性の溶媒に難溶であること、およびインドメタシンが酸性溶媒に難溶であることを確認した。
【表1】
【0033】
試験例2 製剤構成の検討
比較例1〜3の処方を表2に示す。難溶性薬物としては、化合物C−3B、アルカリ剤としては、酸化マグネシウム(関東化学製)、界面活性剤としてはラウリル硫酸ナトリウム(ナカライテスク製)、崩壊剤としてはカルメロースカルシウム(ニチリン化学製)、賦形剤としては、D−マンニトール(マンニットS、東和化成製)およびトウモロコシデンプン(コーンスターチ、日本食品化工製)、ならびに結合剤としてはヒドロキシプロピルセルロース(HPCSL、日本曹達製)を使用した。

比較例1
化合物C−3B、D−マンニトール、トウモロコシデンプン、ラウリル硫酸ナトリウム、酸化マグネシウム、ヒドロキシプロピルセルロース、およびカルメロースカルシウムを袋内で混合し、得られた混合末を乳鉢上に置いて、適量の水を滴下しながら、乳棒でこね、攪拌造粒を行った。造粒後、通気式乾燥機により60℃で30分乾燥し、30メッシュの金網により篩過を行い、得られた造粒物を2号ゼラチンカプセルに充填した。

比較例2
化合物C−3B、D−マンニトール、トウモロコシデンプン、ラウリル硫酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、およびカルメロースカルシウムを袋内で混合し、得られた混合末を乳鉢上に置いて、適量の水を滴下しながら、乳棒でこね、攪拌造粒を行った。得られた造粒物に、さらに酸化マグネシウムを加え、袋内で混合し、乳鉢上で二次造粒を行った。造粒後、通気式乾燥機により60℃で30分乾燥し、30メッシュの金網により篩過を行い、得られた造粒物を2号ゼラチンカプセルに充填した。

比較例3
化合物C−3B、D−マンニトール、トウモロコシデンプン、ラウリル硫酸ナトリウム、酸化マグネシウム、およびカルメロースカルシウムを袋内で混合し、得られた混合末を2号ゼラチンカプセルに充填した。
【表2】

溶出試験の結果を図1に示す。カプセル充填物について比較した結果、難溶性薬物、アルカリ剤、および界面活性剤を含む混合末(比較例3)である場合は、試験開始60分後の溶出率が0.1%以下であり、ほとんど難溶性薬物の溶出が認められなかったのに対し、全ての製剤成分を一括造粒した造粒物(比較例1)である場合は、試験開始60分後の溶出率が44%であり、比較例3の場合より難溶性薬物の溶解性が著しく改善した。一方、難溶性薬物および界面活性剤を含む造粒物にアルカリ剤を添加して二次造粒を行った造粒物(比較例2)の場合は、試験開始60分後の溶出率が8%であり、比較例1の場合よりも難溶性薬物の溶解性改善度が低かった。
以上より、難溶性薬物の溶解性を改善するためには、比較例1の造粒物のように、アルカリ剤および界面活性剤を薬物近傍に存在させる方法が効果的であることが分かった。
【0034】
試験例3 崩壊剤の添加方法の検討
実施例1および比較例4の処方を表3に示す。難溶性薬物としては、化合物C−3B、アルカリ剤としては、合成ヒドロタルサイト(アルカマック、協和化学製)、界面活性剤としてはラウリル硫酸ナトリウム(ナカライテスク製)、崩壊剤としては低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC31、信越化学製)、賦形剤としては、D−マンニトール(マンニットS、東和化成製)およびトウモロコシデンプン(コーンスターチ、日本食品化工製)、ならびに結合剤としてはヒドロキシプロピルセルロース(HPCSL、日本曹達製)を使用した。

実施例1
化合物C−3B、D−マンニトール、トウモロコシデンプン、ラウリル硫酸ナトリウム、および合成ヒドロタルサイトを袋内で混合した。得られた混合末を乳鉢上に置いて、10重量%ヒドロキシプロピルセルロース水溶液を滴下しながら乳棒でこね、攪拌造粒を行った。造粒後、通気式乾燥機により60℃で30分乾燥し、20メッシュの金網により篩過を行った。得られた造粒物に、さらに低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを加え、袋内で混合し、ABM100S型静的圧縮機(東京衝機製造所製)を用いて5〜15kNの打錠圧で打錠を行うことにより、直径が7mmである200mgの錠剤を製造した。
比較例4
化合物C−3B、D−マンニトール、トウモロコシデンプン、ラウリル硫酸ナトリウム、合成ヒドロタルサイト、および低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを袋内で混合した。得られた混合末を乳鉢上に置いて、10重量%ヒドロキシプロピルセルロース水溶液を滴下しながら乳棒でこね、攪拌造粒を行った。造粒後、通気式乾燥機により60℃で30分乾燥し、20メッシュの金網により篩過を行った。得られた造粒物を、ABM100S型静的圧縮機(東京衝機製造所製)を用いて5〜15kNの打錠圧で打錠を行うことにより、直径が7mmである200mgの錠剤を製造した。
【表3】

溶出試験の結果を図2に示す。難溶性薬物を含む造粒物に崩壊剤を外部添加した実施例1の本発明製剤は、試験開始60分後の溶出率が63%であり、難溶性薬物と崩壊剤を一括造粒した比較例4(試験開始60分後の溶出率が40%)と比較して、難溶性薬物の溶解性が改善した。
【0035】
試験例4 アルカリ剤の検討
実施例2〜6の処方を表4に示す。難溶性薬物としては、化合物C−3B、アルカリ剤としては、合成ヒドロタルサイト(アルカマック、協和化学製)、水酸化アルミナマグネシウム(サナルミン、協和化学製)、水酸化マグネシウム(キョウワスイマグ、協和化学製)、酸化マグネシウム(関東化学製)、またはケイ酸カルシウム(フローライトRE、トクヤマ製)、界面活性剤としてはラウリル硫酸ナトリウム(エマールO、花王製)、崩壊剤としては低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC31、信越化学製)、賦形剤としては、D−マンニトール(マンニットS、東和化成製)およびトウモロコシデンプン(コーンスターチ、日本食品化工製)、結合剤としてはヒドロキシプロピルセルロース(HPCSL、日本曹達製)、ならびに滑沢剤としてはステアリン酸マグネシウム(太平化学製)を使用した。
実施例2〜6
化合物C−3B、D−マンニトール、トウモロコシデンプン、ラウリル硫酸ナトリウム、および各アルカリ剤を袋内で混合した。得られた混合末を乳鉢上に置いて、10重量%ヒドロキシプロピルセルロース水溶液を滴下しながら乳棒でこね、攪拌造粒を行った。造粒後、通気式乾燥機により60℃で30分乾燥し、20メッシュの金網により篩過を行った。得られた造粒物に、さらに低置換度ヒドロキシプロピルセルロースおよびステアリン酸マグネシウムを加え、袋内で混合し、ABM100S型静的圧縮機(東京衝機製造所製)を用いて10kNの打錠圧で打錠を行うことにより、直径が7mmである200mgの錠剤を製造した。
【表4】

実施例4〜6の溶出試験の結果を図3に示す。いずれも良好な溶出率を示した。
【0036】
試験例4 アルカリ剤の用量依存性
実施例7〜10および比較例5の処方を表5に示す。難溶性薬物としては、化合物C−3B、アルカリ剤としては、酸化マグネシウム(関東化学製)、界面活性剤としてはラウリル硫酸ナトリウム(エマールO、花王製)、崩壊剤としては低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC31、信越化学製)、賦形剤としては、D−マンニトール(マンニットS、東和化成製)およびトウモロコシデンプン(コーンスターチ、日本食品化工製)、結合剤としてはヒドロキシプロピルセルロース(HPCSL、日本曹達製)、ならびに滑沢剤としてはステアリン酸マグネシウム(太平化学製)を使用した。
実施例7〜10、比較例5
化合物C−3B、D−マンニトール、トウモロコシデンプン、ラウリル硫酸ナトリウム、および各アルカリ剤を袋内で混合した。得られた混合末を乳鉢上に置いて、10重量%ヒドロキシプロピルセルロース水溶液を滴下しながら乳鉢上において乳棒でこね、攪拌造粒を行った。造粒後、通気式乾燥機により60℃で30分乾燥し、20メッシュの金網により篩過を行った。得られた造粒物に、さらに低置換度ヒドロキシプロピルセルロースおよびステアリン酸マグネシウムを加え、袋内で混合し、ABM100S型静的圧縮機(東京衝機製造所製)を用いて10kNの打錠圧で打錠を行うことにより、直径が7mmである200mgの錠剤を製造した。
【表5】

溶出試験の結果を図4に示す。難溶性薬物の溶出率は、アルカリ剤である酸化マグネシウムの配合量に依存していることが分かった。
【0037】
試験例5 界面活性剤の検討
実施例11〜14の処方を表6に示す。難溶性薬物としては、化合物C−3B、アルカリ剤としては、水酸化マグネシウム(キョウワスイマグ、協和化学製)、酸化マグネシウム(酸化マグネシウムG、協和化学製)、およびケイ酸カルシウム(フローライトRE、トクヤマ製)、界面活性剤としてはラウリル硫酸ナトリウム(エマールO、花王製)、ショ糖脂肪酸エステル(サーフホープJ−1616、三菱化学)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(PEP101、三洋化成)、またはポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール(プロノン#181P、日本油脂)、崩壊剤としてはカルメロースカルシウム(ニチリン化学製)、賦形剤としては、D−マンニトール(マンニットS、東和化成製)、結合剤としてはヒドロキシプロピルセルロース(HPCSL、日本曹達製)、ならびに滑沢剤としてはステアリン酸マグネシウム(太平化学製)を使用した。
実施例11〜14
化合物C−3B、D−マンニトール、ケイ酸カルシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、および各界面活性剤を袋内で混合した。得られた混合末を乳鉢上に置いて、10重量%ヒドロキシプロピルセルロース水溶液を滴下しながら乳棒でこね、攪拌造粒を行った。造粒後、通気式乾燥機により60℃で30分乾燥し、20メッシュの金網により篩過を行った。得られた造粒物に、さらにカルメロースカルシウムおよびステアリン酸マグネシウムを加え、袋内で混合し、ABM100S型静的圧縮機(東京衝機製造所製)を用いて10kNの打錠圧で打錠を行うことにより、直径が7mmである200mgの錠剤を製造した。
【表6】

実施例13、14の溶出試験の結果を図5に示す。いずれも良好な溶出率を示した。
【0038】
試験例6 界面活性剤の用量依存性
実施例15〜19および比較例6の処方を表7に示す。難溶性薬物としては、化合物C−3B、アルカリ剤としては、水酸化マグネシウム(キョウワスイマグ、協和化学製)、酸化マグネシウム(酸化マグネシウムG、協和化学製)、およびケイ酸カルシウム(フローライトRE、トクヤマ製)、界面活性剤としてはラウリル硫酸ナトリウム(エマールO、花王製)、崩壊剤としてはカルメロースカルシウム(ニチリン化学製)、賦形剤としては、D−マンニトール(マンニットS、東和化成製)、結合剤としてはヒドロキシプロピルセルロース(HPCSL、日本曹達製)、ならびに滑沢剤としてはステアリン酸マグネシウム(太平化学製)を使用した。
実施例15〜19、比較例6
化合物C−3B、D−マンニトール、ケイ酸カルシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、およびラウリル硫酸ナトリウムを袋内で混合し、得られた混合末に10重量%ヒドロキシプロピルセルロース水溶液を滴下しながら乳鉢上に置いて、乳棒でこね、攪拌造粒を行った。造粒終了後、通気式乾燥機により60℃で30分乾燥し、20メッシュの金網により篩過を行った。得られた造粒物に、さらにカルメロースカルシウムおよびステアリン酸マグネシウムを加え、袋内で混合し、ABM100S型静的圧縮機(東京衝機製造所製)を用いて10kNの打錠圧で打錠を行うことにより、直径が7mmである200mgの錠剤を製造した。
【表7】

溶出試験の結果を図6に示す。難溶性薬物の溶出率は、界面活性剤であるラウリル硫酸ナトリウムの配合量に依存していることが分かった。
【0039】
試験例7 イヌにおける経口吸収性評価
実施例20の処方を表8に示す。なお、難溶性薬物としては、国際公開2009/017098号記載の(S)−(E)−3−(2,6−ジクロロ−4−{4−[3−(1−ヘキシルオキシエチル)−2−メチルオキシフェニル]チアゾール−2−イルカルバモイル}フェニル)−2−メチルアクリル酸(化合物C−3B)、アルカリ剤としては、水酸化マグネシウム(キョウワスイマグ、協和化学製)および酸化マグネシウム(酸化マグネシウムG、協和化学製)、界面活性剤としてはラウリル硫酸ナトリウム(エマールO、花王製)、崩壊剤としてはカルメロースカルシウム(ニチリン化学製)、賦形剤としては、D−マンニトール(マンニットS、東和化成製)および結晶セルロース(セオラスPH102、旭化成製)、結合剤としてはヒドロキシプロピルセルロース(HPCSL、日本曹達製)、滑沢剤としてはステアリン酸マグネシウム(太平化学製)およびタルク(富士タルク)、コーティング剤としてはヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC RW、信越化学製)、コーティングの添加剤としてはクエン酸トリエチル(森村商事)ならびにコーティングの着色剤としては酸化チタン(フロイント産業製)を使用した。
実施例20
化合物C−3B、ラウリル硫酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、D−マンニトール、および結晶セルロースを10型ハイスピードミキサーに入れ、7.7重量%ヒドロキシプロピルセルロース水溶液を造粒液として加え、アジテーター回転数が200rpm、チョッパー回転数が2000rpm、液速度が80g/分の条件で、攪拌造粒を行った。造粒終了後、WSG2&5型流動層造粒機により70℃で乾燥し、P−3型パワーミルにより、24メッシュのバスケットを用い、回転数が3000rpmの条件で調粒を行った。得られた造粒物に、さらにカルメロースカルシウムおよびステアリン酸マグネシウムを混合し、RTM−S30K−2S型打錠機により10kNの打錠圧で打錠を行った。得られた錠剤に、ヒドロキシプロピルセルロース、酸化チタン、クエン酸トリエチル、およびタルクを含有するコーティング液を用いて、HCT48型ハイコーターにより、液スプレー圧が0.15MPa、送風量が400Paの条件でコーティングを行うことにより、直径が7.5mmのコーティング錠を製造した。溶出試験の結果、溶出試験開始60分後の溶出率は61%であった。
【表8】

比較例7
化合物C−3B 10mgおよびヒドロキシプロピルセルロース 50mgを混合し、10mlの水に懸濁することにより懸濁液を得た。

実施例20で得られた錠剤および比較例7で得られた懸濁液について、イヌにおける経口吸収性を評価した。雄ビーグル犬を予め24時間絶食させた後、検体1錠を経口投与した。投与前および投与後一定時間後に、前肢静脈より採血を行い、血漿中薬物濃度をLC/MS/MSを用いて測定し、最大血漿中薬物濃度(Cmax)、最高血漿中薬物濃度到達時間(Tmax)を求め、台形法により投与時から24時間後までの血漿中薬物濃度−時間曲線下面積(AUC)を算出した。
化合物C−3Bの血漿中薬物濃度変化についての結果を図7に、およびTmax、CmaxおよびAUC値についての結果を表9に示す。難溶性薬物、界面活性剤、およびアルカリ剤を含有する造粒物ならびに崩壊剤を含有する実施例20の錠剤は、比較例7の懸濁液と比較して約8倍経口吸収性が改善した。
【表9】
【0040】
試験例8 溶解性改善製剤の製造
実施例20〜23の処方を表10に示す。なお、難溶性薬物としては、国際公開2009/017098号記載の(S)−(E)−3−(2,6−ジクロロ−4−{4−[3−(1−ヘキシルオキシエチル)−2−メチルオキシフェニル]チアゾール−2−イルカルバモイル}フェニル)−2−メチルアクリル酸(化合物C−3B)、アルカリ剤としては、水酸化マグネシウム(キョウワスイマグ、協和化学製)および酸化マグネシウム(酸化マグネシウムG、協和化学製)、界面活性剤としてはラウリル硫酸ナトリウム(エマールO、花王製)、崩壊剤としてはカルメロースカルシウム(ニチリン化学製)、賦形剤としては、D−マンニトール(マンニットS、東和化成製)および結晶セルロース(セオラスPH102、旭化成製)、結合剤としてはヒドロキシプロピルセルロース(HPCSL、日本曹達製)、滑沢剤としてはステアリン酸マグネシウム(太平化学製)およびタルク(富士タルク)、コーティング剤としてはヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC RW、信越化学製)、コーティングの添加剤としてはクエン酸トリエチル(森村商事)、ならびにコーティングの着色剤としては酸化チタン(フロイント産業製)および三二酸化鉄(癸巳化成製)を使用した。
実施例21〜23
化合物C−3B、ラウリル硫酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、D−マンニトール、および結晶セルロースを10型ハイスピードミキサーに入れ、7.7重量%ヒドロキシプロピルセルロース水溶液を造粒液として加え、アジテーター回転数が200rpm、チョッパー回転数が2000rpm、液速度が80g/分の条件で造粒を行った。造粒終了後、WSG2&5型流動層造粒機により70℃で乾燥し、P−3型パワーミルにより、24メッシュのバスケットを用い、回転数が3000rpmの条件で調粒を行った。得られた造粒物に、さらにカルメロースカルシウムおよびステアリン酸マグネシウムを混合し、RTM−S30K−2S型打錠機により10kNの打錠圧で打錠を行った。得られた錠剤に、ヒドロキシプロピルセルロース、酸化チタン、三二酸化鉄、クエン酸トリエチル、およびタルクを含有するコーティング液を用いて、HCT48型ハイコーターにより、液スプレー圧が0.15MPa、送風量が400Paの条件でコーティングを行うことにより、直径6mm(実施例21および実施例23)または直径が10mm(実施例22)のコーティング錠を製造した。溶出試験の結果、溶出試験開始60分後の溶出率は52%(実施例21)、62%(実施例22)、および38%(実施例23)であった。
【表10】

実施例20〜22で得られた錠剤について、試験例7と同様の方法によりイヌにおける経口吸収性を評価した。Tmax、CmaxおよびAUC値についての結果を表11に示す。いずれの錠剤も難溶性薬物の溶解性改善能を有することが分かった。
【表11】
【0041】
試験例9 インドメタシンの溶解性改善製剤
実施例24、比較例8、および比較例9の処方を表12に示す。なお、難溶性薬物としては、インドメタシン(金剛化学製)、アルカリ剤としては、酸化マグネシウム(協和化学製)、界面活性剤としてはラウリル硫酸ナトリウム(エマールO、花王製)、崩壊剤としてはカルボキシメチルスターチナトリウム(EXPLOTAB、木村産業製)、賦形剤としては、D−マンニトール(ロケット製)および結晶セルロース(セオラスPH102、旭化成製)、結合剤としてはヒドロキシプロピルセルロース(HPCSL、日本曹達製)、ならびに滑沢剤としてはステアリン酸マグネシウム(太平化学製)を使用した。
実施例24
インドメタシン、D−マンニトール、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ラウリル硫酸ナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル、および酸化マグネシウムを混合し、得られた混合末に水を滴下しながら乳鉢上において乳棒でこねて造粒を行った。造粒終了後、VOS−301SD型真空乾燥機(EYELA製)により50℃で90分乾燥し、30メッシュの金網により篩過を行った。得られた造粒物に、さらにカルボキシメチルスターチナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムを加え、袋内で混合し、ABM100S型静的圧縮機(東京衝機製造所製)を用いて4kNの打錠圧で打錠を行うことにより、直径が7mmである200mgの錠剤を製造した。
比較例8
インドメタシン、D−マンニトール、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ラウリル硫酸ナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル、酸化マグネシウム、およびカルボキシメチルスターチナトリウムを混合し、得られた混合末に水を滴下しながら乳鉢上において乳棒でこねて造粒を行った。造粒終了後、VOS−301SD型真空乾燥機(EYELA製)により50℃で90分乾燥し、30メッシュの金網により篩過を行った。得られた造粒物に、さらにステアリン酸マグネシウムを加え、袋内で混合し、ABM100S型静的圧縮機(東京衝機製造所製)を用いて4kNの打錠圧で打錠を行うことにより、直径が7mmである200mgの錠剤を製造した。
比較例9
インドメタシン、D−マンニトール、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ラウリル硫酸ナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル、酸化マグネシウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、およびステアリン酸マグネシウムを乳鉢上で混合することにより、混合末を製造した。
【表12】

溶出試験は、日本薬局方崩壊試験法の第2液を酢酸緩衝液(pH4)に置き換えて行った。溶出試験の結果、実施例24および比較例9の製剤は、試験開始60分後の溶出率がそれぞれ42%および10%であった。インドメタシンは本来、酸に難溶であるが、本発明の溶解性改善錠にすることにより、酸性溶液における溶解性が改善できることが分かった。
【0042】
試験例10 イブプロフェン、メフェナム酸、およびウルソデオキシコール酸の溶解性改善製剤
実施例25〜27および比較例10〜12の処方を表13に示す。なお、難溶性薬物としては、イブプロフェン(和光純薬製)、メフェナム酸(和光純薬製)、またはウルソデオキシコール酸(和光純薬製)、アルカリ剤としては、水酸化マグネシウム(協和化学製)および酸化マグネシウム(協和化学製)、界面活性剤としてはラウリル硫酸ナトリウム(花王製)、崩壊剤としては、クロスポビドン(BASF製)またはカルメロースカルシウム(ニチリン化学製)、賦形剤としては、D−マンニトール(ロケット製)および結晶セルロース(旭化成製)、結合剤としてはヒドロキシプロピルセルロース(HPCSL、日本曹達製)、ならびに滑沢剤としてはステアリン酸マグネシウム(太平化学製)を使用した。
実施例25〜27
難溶性各薬物、水酸化マグネシウム、マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、およびD−マンニトールを混合し、得られた混合末に7.5重量%のヒドロキシプロピルセルロース水溶液を滴下しながらIMC−1855型超小型攪拌造粒装置(井元製作所製)を用いて造粒を行った。造粒終了後、通気乾燥機(佐竹化学機械工業製)により60℃で30分乾燥し、24メッシュの金網により篩過を行った。得られた造粒物に、さらに各崩壊剤およびステアリン酸マグネシウムを加え、袋内で混合し、ABM100S型静的圧縮機(東京衝機製造所製)を用いて打錠を行うことにより錠剤を製造した。
比較例10〜12
各難溶性薬物、各崩壊剤、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、D−マンニトール、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、およびステアリン酸マグネシウムを乳鉢上で混合することにより、混合末を製造した。
【表13】

溶出試験は、日本薬局方崩壊試験法の第2液を50mMのリン酸緩衝液(pH5)に置き換えて行った。溶出試験の結果、試験開始60分後の溶出率が表14の通りであった。イブプロフェン、メフェナム酸、およびウルソデオキシコール酸は本来、酸に難溶であるが、本発明の溶解性改善錠にすることにより、酸性溶液における溶解性が改善できることが分かった。
【表14】
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の溶解性改善製剤は、難溶性のために経口吸収性が低い薬物の溶解性を改善し、消化器内pH条件の溶解性に対する影響を軽減することから、経口吸収性が改善された難溶性薬物の製剤として非常に有用である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7