【文献】
ヌルサリザ アブドラ 他,リアデフォッガを用いた簡易アダプティブアンテナの試作評価,電子情報通信学会技術研究報告,2011年 2月 2日,pp.37-42,A.P2010-167
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2の給電点から前記第1,第3及び第4の給電点までの距離が、誤差±10%の範囲で互いに等しく、前記第4の給電点から前記第1,第2及び第3の給電点までの距離が、誤差±10%の範囲で互いに等しいことを特徴とする請求項2に記載の開口面共用アレーアンテナ。
前記共有アンテナ開口面が受信する無線信号の搬送波の波長をλとして、前記第2の給電点から前記第1,第3及び第4の給電点までの距離、及び前記第4の給電点から前記第1,第2及び第3の給電点までの距離がそれぞれ、0.1λ〜0.5λの範囲の値であることを特徴とする請求項2に記載の開口面共用アレーアンテナ。
前記共有アンテナ開口面が受信する無線信号の搬送波の波長をλとして、前記平行四辺形の各辺の長さが、0.1λ〜0.5λの範囲の値であることを特徴とする請求項4又は5に記載の開口面共用アレーアンテナ。
前記共有アンテナ開口面が自動車のリアデフォッガを用いて構成され、前記自動車に搭載されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の開口面共用アレーアンテナ。
互いに離間して、平行に配置された第1及び第2の端部ストライプ、mを正の整数として、前記第1及び第2の端部ストライプのそれぞれに、それぞれの両側の端部を接続し、互いに平行に設けられた第1〜第m番目のm本の主グリッド線、前記主グリッド線の長手方向に直交する方向を長手方向として、前記主グリッド線のすべてに交わるように平行に設けられた4本の補助グリッド線とを有した矩形の格子状の共有アンテナ開口面を備える開口面共用アレーアンテナと、
前記4本の補助グリッド線を前記第1の端部ストライプ側から順に第1,第2,第3及び第4の補助グリッド線とし、前記第m番目の主グリッド線と前記第1の補助グリッド線との交点を無線信号を空中から捉える活性素子の給電点と選定し、該活性素子の給電点に接続されたベースバンド信号生成部と、
前記第m番目の主グリッド線と前記第3の補助グリッド線との交点、前記第1番目の主グリッド線と前記第4の補助グリッド線との交点及び前記第1番目の主グリッド線と前記第2の補助グリッド線との交点を、それぞれ第1、第2及び第3のパラサイト素子の給電点と選定し、該第1、第2及び第3のパラサイト素子の給電点にそれぞれ接続された第1、第2及び第3の可変リアクタンス回路と、
前記ベースバンド信号生成部の出力する目的関数を用いて、前記第1、第2及び第3の可変リアクタンス回路の接地リアクタンス値を調整するリアクタンス適応制御回路
とを備え、前記第1、第2及び第3のパラサイト素子の接地リアクタンスをそれぞれ制御することにより、前記活性素子と前記第1、第2及び第3のパラサイト素子からなるアレーアンテナの指向性を制御しながら、前記無線信号を復調することを特徴とする適応指向性受信装置。
前記第m番目の主グリッド線と前記第1の補助グリッド線との交点を第1の給電点、前記第m番目の主グリッド線と前記第3の補助グリッド線との交点を第2の給電点、前記第1番目の主グリッド線と前記第4の補助グリッド線との交点を第3の給電点、前記第1番目の主グリッド線と前記第2の補助グリッド線との交点を第4の給電点としたとき、前記第2の給電点から前記第1,第3及び第4の給電点までの距離が、誤差±10%の範囲で互いに等しく、前記第4の給電点から前記第1,第2及び第3の給電点までの距離が、誤差±10%の範囲で互いに等しいことを特徴とする請求項8に記載の適応指向性受信装置。
前記無線信号の搬送波の波長をλとして、前記第2の給電点から前記第1,第3及び第4の給電点までの距離、及び前記第4の給電点から前記第1,第2及び第3の給電点までの距離がそれぞれ、0.1λ〜0.5λの範囲の値であることを特徴とする請求項9に記載の適応指向性受信装置。
前記第m番目の主グリッド線と前記第1の補助グリッド線との交点を第1の給電点、前記第m番目の主グリッド線と前記第3の補助グリッド線との交点を第2の給電点、前記第1番目の主グリッド線と前記第4の補助グリッド線との交点を第3の給電点、前記第1番目の主グリッド線と前記第2の補助グリッド線との交点を第4の給電点とし、該第1,第2,第3及び第4の給電点が、平行四辺形のそれぞれの頂点を構成することを特徴とする請求項8に記載の適応指向性受信装置。
前記無線信号の搬送波の波長をλとして、前記平行四辺形の各辺の長さが、0.1λ〜0.5λの範囲の値であることを特徴とする請求項11又は12に記載の適応指向性受信装置。
前記リアクタンス適応制御回路は、前記目的関数を相関係数としたシンプレックス法をによって、前記目的関数が最適値になる条件を探索することを特徴とする請求項8〜13のいずれか1項に記載の適応指向性受信装置。
前記共有アンテナ開口面が自動車のリアデフォッガを用いて構成され、前記自動車に搭載されることを特徴とする請求項8〜14のいずれか1項に記載の適応指向性受信装置。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に至るまでに検討した先行検討例に係る開口面共用アレーアンテナの構造の概略を説明する模式的平面図である。
【
図2】
図1に示した先行検討例に係る開口面共用アレーアンテナの構造の一部の詳細を拡大して説明する模式的平面図である。
【
図3】
図1に示した先行検討例に係る開口面共用アレーアンテナを適用する車両(自動車)のボディ、特に後部金属ボディと後部金属ボディに設けられたリアデフォッガの構造を説明する模式的な鳥瞰図である。
【
図4】先行検討例と比較するための比較例(比較例1)に係る開口面共用アレーアンテナの構造の概略を説明する模式的平面図である。
【
図5】先行検討例と比較するための他の比較例(比較例2)に係る開口面共用アレーアンテナの構造の概略を説明する模式的平面図である。
【
図6】
図1に示した先行検討例に係る開口面共用アレーアンテナの各ポート(給電点)から見たVSWRの平均値の周波数依存性(実線)を、
図4に示す比較例1に係る開口面共用アレーアンテナの各ポート(給電点)から見たVSWRの平均値の周波数依存性(破線)及び
図5に示す比較例2に係る開口面共用アレーアンテナの各ポート(給電点)から見たVSWRの平均値の周波数依存性(一点鎖線)と比較して示す図である。
【
図7】
図1に示した先行検討例に係る開口面共用アレーアンテナの各ポート間のポート間結合(CBP)の平均値の周波数依存性(実線)を、
図4に示す比較例1に係る開口面共用アレーアンテナの各ポート間のポート間結合の平均値の周波数依存性(破線)及び
図5に示す比較例2に係る開口面共用アレーアンテナの各ポート間のポート間結合の平均値の周波数依存性(一点鎖線)と比較して示す図である。
【
図8】
図1に示した先行検討例に係る開口面共用アレーアンテナの各ポート(給電点)から見た空間相関(SCC)の平均値の周波数依存性(実線)を、
図4に示す比較例1に係る開口面共用アレーアンテナの各ポート(給電点)から見た空間相関の平均値の周波数依存性(破線)及び
図5に示す比較例2に係る開口面共用アレーアンテナの各ポート(給電点)から見た空間相関の平均値の周波数依存性(一点鎖線)と比較して示す図である。
【
図9】
図1に示した先行検討例に係る開口面共用アレーアンテナの第1のポートを活性素子の給電点とし、残りの3つのポートをパラサイト素子の給電点として、先行波と遅延波の入射方向を変化させ適応ビームを形成したときの760MHz(一点鎖線)、830MHz(破線)、900MHz(実線)における信号対干渉雑音比SINRの累積分布(CCDF)を示す図である。
【
図10】
図4に示した比較例1に係る開口面共用アレーアンテナの第1のポートを活性素子の給電点とし、残りの3つのポートをパラサイト素子の給電点として、先行波と遅延波の入射方向を変化させ適応ビームを形成したときの760MHz(一点鎖線)、830MHz(破線)、900MHz(実線)における信号対干渉雑音比SINRの累積分布(CCDF)を示す図である。
【
図11】
図5に示した比較例2に係る開口面共用アレーアンテナの第1のポートを活性素子の給電点とし、残りの3つのポートをパラサイト素子の給電点として、先行波と遅延波の入射方向を変化させ適応ビームを形成したときの760MHz(一点鎖線)、830MHz(破線)、900MHz(実線)における信号対干渉雑音比SINRの累積分布(CCDF)を示す図である。
【
図12】本発明に至るまでに検討した先行検討例に係る開口面共用アレーアンテナを用いた適応指向性受信装置の構造の概略を説明する模式的なブロック図である。
【
図13】
図12に示す先行検討例に係る適応指向性受信装置に用いるOFDM信号の構造を説明する模式図である。
【
図14】本発明の実施の形態に係る開口面共用アレーアンテナの構造の概略を説明する模式的平面図である。
【
図15】本発明の実施の形態と比較するための比較例(比較例3)に係る開口面共用アレーアンテナの構造の概略を説明する模式的平面図である。
【
図16】本発明の実施の形態と比較するための他の比較例(比較例4)に係る開口面共用アレーアンテナの構造の概略を説明する模式的平面図である。
【
図17】
図14に示した本発明の実施の形態に係る開口面共用アレーアンテナの各ポート(給電点)から見たVSWRの平均値の周波数依存性(実線)を、
図15に示す比較例3に係る開口面共用アレーアンテナの各ポート(給電点)から見たVSWRの平均値の周波数依存性(破線)及び
図16に示す比較例4に係る開口面共用アレーアンテナの各ポート(給電点)から見たVSWRの平均値の周波数依存性(二点鎖線)と比較して示す図である。
【
図18】
図14に示した本発明の実施の形態に係る開口面共用アレーアンテナの各ポート間のポート間結合(CBP)の平均値の周波数依存性(実線)を、
図15に示す比較例3に係る開口面共用アレーアンテナの各ポート間のポート間結合の平均値の周波数依存性(破線)及び
図16に示す比較例4に係る開口面共用アレーアンテナの各ポート間のポート間結合の平均値の周波数依存性(二点鎖線)と比較して示す図である。
【
図19】
図14に示した本発明の実施の形態に係る開口面共用アレーアンテナの各ポート(給電点)から見た空間相関(SCC)の平均値の周波数依存性(実線)を、
図15に示す比較例3に係る開口面共用アレーアンテナの各ポート(給電点)から見た空間相関の平均値の周波数依存性(破線)及び
図16に示す比較例4に係る開口面共用アレーアンテナの各ポート(給電点)から見た空間相関の平均値の周波数依存性(二点鎖線)と比較して示す図である。
【
図20】
図14に示した本発明の実施の形態に係る開口面共用アレーアンテナの第1のポートを活性素子の給電点とし、残りの3つのポートをパラサイト素子の給電点として、先行波と遅延波の入射方向を変化させ適応ビームを形成したときの900MHz(実線)、1000MHz(破線)、1080MHz(一点鎖線)、2075MHz(二点鎖線)、2100MHz(点線)、2200MHz(太い実線;2重線)における信号対干渉雑音比SINRの累積分布(CCDF)を示す図である。
【
図21】
図16に示した比較例4に係る開口面共用アレーアンテナの第1のポートを活性素子の給電点とし、残りの3つのポートをパラサイト素子の給電点として、先行波と遅延波の入射方向を変化させ適応ビームを形成したときの900MHz(実線)、1000MHz(破線)、1080MHz(一点鎖線)、2075MHz(二点鎖線)、2100MHz(点線)、2200MHz(太い実線;2重線)における信号対干渉雑音比SINRの累積分布(CCDF)を示す図である。
【
図22】
図15に示した比較例3に係る開口面共用アレーアンテナの第1のポートを活性素子の給電点とし、残りの3つのポートをパラサイト素子の給電点として、先行波と遅延波の入射方向を変化させ適応ビームを形成したときの900MHz(実線)、1000MHz(破線)、1080MHz(一点鎖線)、2075MHz(二点鎖線)、2100MHz(点線)、2200MHz(太い実線;2重線)における信号対干渉雑音比SINRの累積分布(CCDF)を示す図である。
【
図23】本発明の実施の形態に係る開口面共用アレーアンテナを用いた適応指向性受信装置の構造の概略を説明する模式的なブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1〜13を参照して、既にその一部内容を非特許文献1において報告したシングルバンド用に検討した開口面共用アレーアンテナを、本発明に至るまでの先行検討例として説明し、その後、
図14〜23を参照して、本発明の実施の形態に係るダブルバンド用の開口面共用アレーアンテナと、このダブルバンド用の開口面共用アレーアンテナを用いた適応指向性受信装置を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、各平面寸法間の比率等は現実のものとは異なるものが含まれることに留意すべきである。したがって、具体的な寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0016】
(先行検討例)
本発明に至るまでの先行検討例に係る開口面共用アレーアンテナは21
sは、非特許文献1の
図2において既に開示された構造にほぼ対応するが、
図1に示すように、互いに離間して、平行に配置された第1の端部ストライプG
pp1及び第2の端部ストライプG
pp2と、第1の端部ストライプG
pp1及び第2の端部ストライプG
pp2のそれぞれに、それぞれの両側の端部を接続し、互いに平行に設けられた第1番の主グリッド線G
h1,第2番の主グリッド線G
h2,第3番の主グリッド線G
h3,…,第m番目の主グリッド線G
hm(m=17)と、第1番〜第m番目の主グリッド線G
h1,G
h2,G
h3,…,G
hmの長手方向に直交する方向を長手方向として、主グリッド線G
h1,G
h2,G
h3,…,G
hmのすべてに交わるように平行に設けられた2本の補助グリッド線G
v11,G
v12とを有した矩形の格子状の共有アンテナ開口面を備える。
【0017】
2本の補助グリッド線G
v11,G
v12を、第1の端部ストライプG
pp1側から順に、第1の補助グリッド線G
v11,第2の補助グリッド線G
v12と定義し、
図1に示すように、第1の端部ストライプG
pp1側の第m番目の主グリッド線G
hmの端部を第1の給電点P
1、第m番目の主グリッド線G
hmと第2の補助グリッド線G
v12との交点を第2の給電点P
2、第2の端部ストライプG
pp2側の第1番目の主グリッド線の端部を第3の給電点P
3、第1番目の主グリッド線と第1の補助グリッド線G
v11との交点を第4の給電点P
4と選定し、第1〜第4の給電点P
1,P
2,P
3,P
4により、共有アンテナ開口面に4つの電磁波的に独立した仮想アンテナを配列してシングルバンド用の4素子アンテナアレーを構成している。
【0018】
先行検討例では1/10のスケールモデルで実験を行うため、電磁解析シミュレータIE3Dによる計算機シミュレーションも1/10に縮尺したスケールとしている。このため、
図1において、横幅a=110mm、高さb=48mm、第1の端部ストライプG
pp1及び第2の端部ストライプG
pp2の水平方向に測った幅d
11=5mm、第1の補助グリッド線G
v11と第2の補助グリッド線G
v12との間の水平方向に測った距離d
12=18mm、第2の補助グリッド線G
v12と第2の端部ストライプG
pp2との間の水平方向に測った距離d
13=40.5mmである。日本のFMラジオの周波数帯域は76−90MHzで、
図1に示した1/10スケールモデルでの帯域は760−900MHzとなる。車両(自動車)のアンテナの性能はボディの影響を強く受けるので、先行検討例でもアンテナを
図3に示すような車両(自動車)のボディ33,32に実装した状態で、先行検討例に係る開口面共用アレーアンテナ21
sを評価する。
【0019】
図3に示すような車両(自動車)のリアデフォッガの構造を考慮して、先行検討例に係る開口面共用アレーアンテナは21
sは、
図2に示す1/10スケールモデルでは、幅0.5mm、厚さ40μmのm本(先行検討例においては、m=17本)の主グリッド線G
h1,G
h2,G
h3,…,G
hmが2.5mm間隔(両端は1.25mm間隔)で第1の方向(例えば水平方向)に沿って平行に比誘電率7の厚さ0.5mmのガラスに貼られている。この開口面共用アレーアンテナ21
sを
図3のような後部金属ボディ32の窓部に装着する。
【0020】
先行検討例に係る開口面共用アレーアンテナ21
sが、4つの電磁波的に独立した仮想アンテナとして機能し、4素子アレーアンテナとして実現するためのキーとなるパラメータは、仮想アンテナ間の空間相関(SCC)である。空間相関(SCC)は複数のアンテナの 3次元複素指向性の類似度を表す性能指標で、低いほどダイバーシチ利得が大きくなる。空間相関ρ
eは、次の式(1)で表される。
【数1】
……(1)
ここで、A
1(θ、φ)とA
2(θ、φ)は2つのアンテナの複素指向性で、A
1*(θ、φ)は、A
1(θ、φ)の複素共役を表し、A
2*(θ、φ)は、A
2(θ、φ)の複素共役を表す。先行検討例に係る開口面共用アレーアンテナ21
sの性能を評価するため、VSWR、ポート間結合(CBP)及び空間相関(SCC)を電磁解析シミュレータIE3Dにより解析し、
図4に示す比較例1に係る開口面共用アレーアンテナ21
a及び
図5に示す比較例2に係る開口面共用アレーアンテナ21
bの2つの比較例と比較し、比較結果をそれぞれ
図6,
図7及び
図8に示した。
【0021】
実際には、ポートP
1,P
2,P
3,P
4の位置の組み合わせについて100通り以上のケースを検討したのであるが、便宜上、
図4及び
図5に示す比較例の構造のみについて説明し、先行検討例に係る開口面共用アレーアンテナ21
sの性能と比較する。例えば、図示を省略しているが、
図1に示すような、共有アンテナ開口面のほぼ中央にある2本の補助グリッド線(垂直グリッド線)G
v11,G
v12がある場合とない場合についても比較しているが、f=830MHzでポート間結合(CBP)、空間相関(SCC)を計算した結果では、2本の補助グリッド線(垂直グリッド線)G
v11,G
v12を設けることにより、ポート間結合(CBP)が増し、空間相関(SCC)が下がることが確認されている。
【0022】
図4に示す比較例1に係る開口面共用アレーアンテナ21
aも、1/10のスケールモデルの構造であり、横幅a=110mm、高さb=48mm、第1の端部ストライプG
pp1及び第2の端部ストライプG
pp2の水平方向に測った幅d
21=5mmである点では、
図1に示した先行検討例に係る開口面共用アレーアンテナ21
sと同様である。但し、
図4に示す比較例1に係る開口面共用アレーアンテナ21
aでは、第1の補助グリッド線G
v21と第2の補助グリッド線G
v22との間の水平方向に測った距離d
22=43mmであり、
図1に示した先行検討例に係る開口面共用アレーアンテナ21
sの第1の補助グリッド線G
v11と第2の補助グリッド線G
v12との間の水平方向に測った距離d
12よりも広い。このため、逆に、第2の補助グリッド線G
v22と第2の端部ストライプG
pp2との間の水平方向に測った距離d
23=28mmとなり、
図1に示した先行検討例に係る開口面共用アレーアンテナ21
sの第2の補助グリッド線G
v12と第2の端部ストライプG
pp2との間の水平方向に測った距離d
13より狭い。
【0023】
図4に示す比較例1に係る開口面共用アレーアンテナ21
aにおいても、
図1に示した先行検討例に係る開口面共用アレーアンテナ21
sと同様に、第1の端部ストライプG
pp1側の第17番目の主グリッド線G
hmの端部を第1の給電点P
1、第17番目の主グリッド線G
hmと第2の補助グリッド線G
v22との交点を第2の給電点P
2、第2の端部ストライプG
pp2側の第1番目の主グリッド線の端部を第3の給電点P
3、第1番目の主グリッド線と第1の補助グリッド線Gv21との交点を第4の給電点P
4と選定し、第1〜第4の給電点P
1,P
2,P
3,P
4により、共有アンテナ開口面に4つの仮想アンテナを配列してシングルバンド用の4素子アンテナアレーを構成することを意図している。
【0024】
図5に示す比較例2に係る開口面共用アレーアンテナ21
aも、1/10のスケールモデルの構造であり、横幅a=110mm、高さb=48mm、第1の端部ストライプG
pp1及び第2の端部ストライプG
pp2の水平方向に測った幅d
21=5mmである点では、
図1に示した先行検討例に係る開口面共用アレーアンテナ21
sと同様である。しかし、
図5に示す比較例2に係る開口面共用アレーアンテナ21
aでは、中央に1本の補助グリッド線G
v31しかない点が、
図1に示した先行検討例に係る開口面共用アレーアンテナ21
sとは異なる。
図5において、第1の端部ストライプG
pp1と補助グリッド線G
v31との間の距離d32=49.75mmであり、補助グリッド線G
v31と第2の端部ストライプG
pp2との間の距離d33=d32=49.75mmである。
【0025】
このため、
図5に示す比較例2に係る開口面共用アレーアンテナ21
aにおいては、中央の1本の補助グリッド線G
v31は4つの給電点のうちのいずれの基準点にもなっていない。即ち、
図5に示す比較例2に係る開口面共用アレーアンテナ21
aでは、第1の端部ストライプG
pp1側の第17番目の主グリッド線G
hmの端部を第1の給電点P
1、第2の端部ストライプG
pp2側の第1番目の主グリッド線の端部を第3の給電点P
3としている点は、
図1に示した先行検討例に係る開口面共用アレーアンテナ21
sと同様であるが、第17番目の主グリッド線G
hm上の補助グリッド線G
v31と第2の端部ストライプG
pp2との間の中間点を第2の給電点P
2、第1番目の主グリッド線G
h1上の第1の端部ストライプG
pp1と補助グリッド線G
v31との間の中間点を第4の給電点P
4と選定している。そして、第1〜第4の給電点P
1,P
2,P
3,P
4により、共有アンテナ開口面に4つの仮想アンテナを配列してシングルバンド用の4素子アンテナアレーを構成することを意図している。
【0026】
図6に示すVSWR、
図7に示すポート間結合(CBP)、及び
図8に示す空間相関(SCC)において、本発明に至るまでの先行検討例に係る開口面共用アレーアンテナ21
sの特性を実線で、
図4に示す比較例1に係る開口面共用アレーアンテナ21
aの特性を破線で、
図5に示す比較例2に係る開口面共用アレーアンテナ21
bの特性を一点鎖線で示している。
図6では4つのポート(給電点)P
1,P
2,P
3,P
4から見たVSWRの平均値を示している。
図6に示すとおり、760−900MHzの帯域において、VSWRは
図1に示した先行検討例に係る開口面共用アレーアンテナ21
s及び
図4に示す比較例1に係る開口面共用アレーアンテナ21
aの特性が優れているが、
図5に示す比較例2に係る開口面共用アレーアンテナ21
bの特性が劣ることが分かる。
【0027】
図7では、第1のポートP
1と第2のポートP
2との結合係数CBP
12、第2のポートP
2と第3のポートP
3との結合係数CBP
23、第3のポートP
3と第4のポートP
4との結合係数CBP
34、第4のポートP
4と第1のポートP
1との結合係数CBP
41、第1のポートP
1と第3のポートP
3との結合係数CBP
13及び第2のポートP
2と第4のポートP
4との結合係数CBP
24の平均値を示している。
図7に示すとおり、760−900MHzの帯域において、ポート間結合(CBP)も
図1に示した先行検討例に係る開口面共用アレーアンテナ21
s(実線)及び
図4に示す比較例1に係る開口面共用アレーアンテナ21
a(破線)の特性が優れているが、
図5に示す比較例2に係る開口面共用アレーアンテナ21
b(一点鎖線)の特性が劣ることが分かる。
【0028】
図8では、第1のポートP
1を給電点とする第1の仮想アンテナA
1(θ、φ)と第2のポートP
2を給電点とする第2の仮想アンテナA
2(θ、φ)との空間相関SCC
12、第2の仮想アンテナA
2(θ、φ)と 第3のポートP
3を給電点とする第3の仮想アンテナA
3(θ、φ)との空間相関SCC
23、第3の仮想アンテナA
3(θ、φ)と 第4のポートP
4を給電点とする第4の仮想アンテナA
4(θ、φ)との空間相関SCC
34、第4の仮想アンテナA
4(θ、φ)と 第1の仮想アンテナA
1(θ、φ)との空間相関SCC
41、第1の仮想アンテナA
1(θ、φ)と第3の仮想アンテナA
3(θ、φ)との空間相関SCC
13、及び第2の仮想アンテナA
2(θ、φ)と 第4の仮想アンテナA
4(θ、φ)との空間相関SCC
24の平均値を示している。
図8に示すとおり、760−900MHzの帯域において、空間相関(SCC)は、
図1に示した先行検討例に係る開口面共用アレーアンテナ21
s(実線)及び
図5に示す比較例2に係る開口面共用アレーアンテナ21
b(一点鎖線)の特性が優れているが、
図4に示す比較例1に係る開口面共用アレーアンテナ21
a(破線)の特性が劣ることが分かる。
【0029】
このように、
図4及び
図5に示した構造を含む100通り以上のケースの検討結果から、
図1に示すような、共有アンテナ開口面のほぼ中央に2本の補助グリッド線(垂直グリッド線)G
v11,G
v12を設けて、第1の端部ストライプG
pp1側の第m番目の主グリッド線G
hmの端部を第1の給電点P
1、第m番目の主グリッド線G
hmと第2の補助グリッド線G
v12との交点を第2の給電点P
2、第2の端部ストライプG
pp2側の第1番目の主グリッド線の端部を第3の給電点P
3、第1番目の主グリッド線と第1の補助グリッド線G
v11との交点を第4の給電点P
4と選定した場合が、VSWR、ポート間結合(CBP)及び空間相関(SCC)のいずれもが、760−900MHzの帯域において、シングルバンド用の4素子アンテナアレーとして最も優れているという知見が得られた。
【0030】
なお、車両(自動車)のリアデフォッガは抵抗体であり、高い抵抗率の影響が懸念される。一般に、車両(自動車)のデフォッガの消費電力は200Wである。m=17本の主グリッド線G
h1,G
h2,G
h3,…,G
hmがある場合、1本あたりの消費電力は12Wで、車両(自動車)の電圧は12Vなので、金属グリッド線の抵抗は12ohm・mである。車両(自動車)の金属グリッド線の断面は幅1mm、厚さ40μmで、断面積は4×10
-8(m
2)である。したがって抵抗率は12(ohm)×4×10
-8(m
2)=4.8×10
−7ohm・mとなる。
【0031】
先行検討例では1/10のスケールモデルで検討しているが、抵抗率は4.8×10
−7(ohm・m )×10×0.5=2.4×10
−6ohm・mと設定して、先行検討例に係る開口面共用アレーアンテナ21
sの各ポート(給電点)P
1,P
2,P
3,P
4のVSWR、ポート間結合、空間相関を電磁解析シミュレータIE3Dによる計算機シミュレーションで評価した結果、抵抗による変動は少ないという知見が得られた。
【0032】
図12に示すように、先行検討例に係る適応指向性受信装置は、先行検討例に係る開口面共用アレーアンテナ21
sの周囲に設けられた4つのポート(給電点)P
1,P
2,P
3,P
4のうちのひとつである第1のポートP
1を活性素子の給電点とし、残りの3つのポートP
2,P
3,P
4がパラサイト素子とする4素子アダプティブ・アレーアンテナを備える。ここで、「活性素子」とは、空中から捉えた無線信号を受信装置側に出力する励振素子(給電素子)であり、第1のポートP
1からアンテナ出力が得られる。
【0033】
第1のポートP
1を給電点とする活性素子には、ディジタルシグナルプロセッサ(DSP)を備えるベースバンド信号生成部24が接続され、活性素子からベースバンド信号生成部24のRFフロントエンド部に、空中から捉えた無線信号が出力される。ベースバンド信号生成部24に備えられた演算処理回路(DSP)は、ベースバンド信号生成部24で生成されたベースバンド信号を処理する。なお、DSPは、必ずしもベースバンド信号生成部24に内蔵されている必要はなく、物理的構成としては、ベースバンド信号生成部24の外部に接続されていてもよい。
【0034】
「パラサイト素子」とは、空中からの無線信号に直接寄与しない非励振素子の意味であり、第2のポートP
2を給電点とする第1のパラサイト素子には、例えば、第1インダクタと可変容量ダイオードの直列回路が接続され、第1インダクタと可変容量ダイオードの接続点に一方の端子を接続するように、可変容量ダイオードと第2インダクタとが並列接続されて第1の可変リアクタンス回路22aを構成している。第1の可変リアクタンス回路22aは、リアクタンス適応制御回路23を介して、ベースバンド信号生成部24のDSPに接続されている。
【0035】
同様に、第3のポートP
3を給電点とする第2のパラサイト素子には、第1インダクタと可変容量ダイオードの直列回路が接続され、第1インダクタと可変容量ダイオードの接続点に一方の端子を接続するように、可変容量ダイオードと第2インダクタとが並列接続されて第2の可変リアクタンス回路22bを構成している。第2の可変リアクタンス回路22bは、リアクタンス適応制御回路23を介して、ベースバンド信号生成部24のDSPに接続されている。同様に、第4のポートP
4を給電点とする第3のパラサイト素子には、第1インダクタと可変容量ダイオードの直列回路が接続され、第1インダクタと可変容量ダイオードの接続点に一方の端子を接続するように、可変容量ダイオードと第2インダクタとが並列接続されて第2の可変リアクタンス回路22bを構成している。第2の可変リアクタンス回路22bは、リアクタンス適応制御回路23を介して、ベースバンド信号生成部24のDSPに接続されている。
【0036】
第1のポートP
1を給電点とする活性素子、第2のポートP
2を給電点とする第1のパラサイト素子、第3のポートP
3を給電点とする第2のパラサイト素子及び第4のポートP
4を給電点とする第3のパラサイト素子は、同一の格子状の面である開口面の周囲に設けられた4つのポートP
1,P
2,P
3,P
4を給電点としているので、物理的なハードウェア構成としては電気的に短絡され、空間的に分離されていないが、
図8に示したとおり、高周波の電磁波的には4つの独立したアンテナとして機能することが可能である。
【0037】
先行検討例に係る適応指向性受信装置では、
図13(a)に示すように、入射信号としてOFDM信号を用いている。OFDM信号の各シンボル区間の先頭にはガード区間HGIが設けられている。ガード区間HGIは各シンボル区間の尾部のコピー元区間TGIの波形をダミー信号としてそのまま巡回的にコピーしたものである。ガード区間HGI、ガード区間HGIに続くデータ区間、データ区間に続くコピー元区間TGIとで、各シンボル区間が構成されている。
図13(a)に示す主波に対し、
図13(b)のようにガード区間HGIだけ遅れた遅延波が受信されると、OFDM信号の誤り率は急激に劣化する。遅延波が重畳して受信されるとガード区間HGIとコピー元区間TGIの相関係数は小さくなる。
【0038】
図12に示すベースバンド信号生成部24のDSPは、第1のポートP
1を給電点とする活性素子のアンテナ出力を用いて、
図13に示すOFDM信号の各シンボル区間毎にガード区間HGIとコピー元区間TGIのとの複素相関係数を計算し、リアクタンス適応制御回路23は、ガード区間HGIとコピー元区間TGIの複素相関係数が大きくなるように、それぞれの可変リアクタンス回路22a,22b,22cを制御する。リアクタンス適応制御回路23の制御には、例えば、目的関数を相関係数としたシンプレックス法を使用すればよい。
【0039】
計算機シミュレーションでは、2つの同一振幅のOFDM信号(遅延波と主波)を水平面でランダムな2方向から入射させる。100パターンの到来角組み合わせについて信号対干渉雑音比SINRの累積分布(CCDF)を計算した。到来波の垂直面の入射角は、本発明者らが実施したフィールドテストで得た平均値の0.48°を用いた。
図13(b)に示すように、遅延波は
図13(a)に示す主波に対しガード区間HGIだけ遅れている。
【0040】
なお、
図12に示す構成において、ポートP
1,P
2,P
3,P
4のうち、どのポートを給電点する活性素子として選択してアンテナ出力を出力とし、どのポートを給電点するパラサイト素子として、パラサイト素子に可変リアクタンス回路を接続すべきかについては、金属グリッド線の材質を銅として、周波数は830MHzにおける信号対干渉雑音比SINRの累積分布(CCDF)を測定して、第1のポートP
1を活性素子の給電点とし、他のポートP
2,P
3,P
4をパラサイト素子として可変リアクタンス回路22a,22b,22cを接続する場合が最も性能がよいことが確認されている。
【0041】
又、データの図示を省略しているが、第1のポートP
1を活性素子の給電点とし、金属グリッド線の抵抗率を考慮した場合の、830MHzにおける信号対干渉雑音比SINRの累積分布(CCDF)から、金属グリッド線の高抵抗により若干性能が劣化することが分かっている。
【0042】
図1に示した先行検討例に係る開口面共用アレーアンテナ21
s、
図4に示した比較例1に係る開口面共用アレーアンテナ21
a及び
図5に示した比較例2に係る開口面共用アレーアンテナ21
bについて、第1のポートP
1を活性素子の給電点とし、残りの3つのポートP
2,P
3,P
4をパラサイト素子の給電点として、先行波と遅延波の入射方向を変化させ、適応ビームを形成したときの760、830、900MHzにおける信号対干渉雑音比SINRの累積分布(CCDF)を、それぞれ
図9、
図10及び
図11に示す。
図9、
図10及び
図11において、760MHzにおけるSINRの累積分布を一点鎖線で、830MHzにおけるSINRの累積分布を破線で、900MHzのSINRの累積分布を実線で示している。
図9、
図10及び
図11を比較すれば明らかなように、先行検討例に係る開口面共用アレーアンテナ21
sの場合が、760−900MHzにわたりSINRの累積分布が、
図4に示した比較例1に係る開口面共用アレーアンテナ21
a及び
図5に示した比較例2に係る開口面共用アレーアンテナ21
bに比し、飛躍的に優れていることが理解できる。
【0043】
更に、金属グリッド線を用いて矩形の格子状の共有アンテナ開口面を構成し、アンテナ開口面の周囲に複数のポートを設けることによって、4つの電磁波的に独立した仮想アンテナを配列したシングルバンド用の4素子のアンテナアレーを構成でき、ESPARアンテナのコンセプトを適用することによってシングルバンド用の受信系統で適応指向性を形成する車両(自動車)用のVHF帯のアダプティブ・アレーアンテナが、広帯域性を持ち、金属グリッド線の抵抗率の影響も小さいことを実験によっても検証した。
【0044】
以下に示す本発明の実施の形態は、上記のシングルバンド用の先行検討例における評価をふまえて、更にマルチバンドに発展させるための技術的思想を提供するものである。又、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでなく、本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0045】
(本発明の実施の形態)
本発明の実施の形態に係る開口面共用アレーアンテナ21
wは、
図14に示すように、互いに離間して、平行に配置された第1の端部ストライプG
pp1及び第2の端部ストライプG
pp2と、第1の端部ストライプG
pp1及び第2の端部ストライプG
pp2のそれぞれに、それぞれの両側の端部を接続し、互いに平行に設けられた第1番の主グリッド線G
h1,第2番の主グリッド線G
h2,第3番の主グリッド線G
h3,…,第m番目の主グリッド線G
hm(mは、5以上の正の整数)と、第1番〜第m番目の主グリッド線G
h1,G
h2,G
h3,…,G
hmの長手方向に直交する方向を長手方向として、主グリッド線G
h1,G
h2,G
h3,…,G
hmのすべてに交わるように平行に設けられた4本の補助グリッド線G
v41,G
v42,G
v43,G
v44とを有した矩形の格子状の共有アンテナ開口面を備える。
【0046】
第1の端部ストライプG
pp1及び第2の端部ストライプG
pp2とが、本発明の実施の形態に係る開口面共用アレーアンテナ21
wの共有アンテナ開口面を構成する矩形の対向する2辺をなし、第1番の主グリッド線G
h1と第m番目の主グリッド線G
hmとが、共有アンテナ開口面を構成する矩形の他の対向する2辺をなしている。共有アンテナ開口面が受信する無線信号の搬送波の波長をλとした場合、
図14においては、第1の端部ストライプG
pp1及び第2の端部ストライプG
pp2とがなす互いに対向する2辺の長さb=0.1λ〜0.4λ程度の範囲の値に選ぶことが好ましく、第1番の主グリッド線G
h1と第m番目の主グリッド線G
hmとがなす他の互いに対向する2辺の長さa=0.2λ〜λ程度の範囲の値に選ぶことが好ましい。例えば、ISDB−TSBに適合した90〜108MHzの周波数帯(V−LOW)及びISDB−Tmmに適合した207.5〜222MHzの周波数帯(V−HIGH)のダブルバンドの帯域での共有アンテナ開口面とするためには、b=48cm,a=1.1m程度の値に選定可能である。この寸法は、車両(自動車)のリアデフォッガの寸法に適合可能である。車両(自動車)のリアデフォッガに適用する場合は、第1の端部ストライプG
pp1及び第2の端部ストライプG
pp2は、電源ラインとして用いることが可能である。アンテナのサイズスケーリング則によって、b=48mm,a=110cm程度の値に選定すれば、900〜1080MHz及び2075〜2220MHzのダブルバンドの帯域での共有アンテナ開口面とすることができる。
【0047】
4本の補助グリッド線G
v41,G
v42,G
v43,G
v44を、第1の端部ストライプG
pp1側から順に、第1の補助グリッド線G
v41,第2の補助グリッド線G
v42,第3の補助グリッド線G
v43及び第4の補助グリッド線G
v44と定義し、
図14に示すように、第m番目の主グリッド線G
hmと第1の補助グリッド線G
v41との交点を第1の給電点P
1、第m番目の主グリッド線G
hmと第3の補助グリッド線G
v43との交点を第2の給電点P
2、第1番目の主グリッド線と第4の補助グリッド線G
v44との交点を第3の給電点P
3、第1番目の主グリッド線と第2の補助グリッド線G
v42との交点を第4の給電点P
4と選定し、第1〜第4の給電点P
1,P
2,P
3,P
4により、共有アンテナ開口面に4つの電磁波的に独立した仮想アンテナを配列して4素子のアンテナアレーを構成している。
【0048】
図14に示すように、第1,第2,第3及び第4の給電点P
1,P
2,P
3,P
4が、平行四辺形のそれぞれの頂点を構成しているが、必ずしも完全な(厳密な)平行四辺形に限定されるものではない。但し、この 平行四辺形の各辺の長さl
12,l
23,l
34,l
41は、誤差±10%の範囲で互いに等しいことが好ましい(平行四辺形の各辺の長さが等しければ菱形になる。)。又、第2の給電点P
2から他の3つの給電点P
1,P
3,P4までの距離が、誤差±10%の範囲で互いに等しく、第4の給電点P
4から他の3つの給電点P
1,P
2,P
3までの距離が、誤差±10%の範囲で互いに等しいことが好ましい。
【0049】
そして、更に、平行四辺形の各辺の長さl
12,l
23,l
34,l
41は、0.1λ〜0.5λの範囲の値であることが好ましい。例えば、
図14において、l
12=l
34=0.17λ〜0.43λ、l
23=l
41=0.20λ〜0.49λ程度の値に選ぶことが可能である。上述したとおり、第1,第2,第3及び第4の給電点P
1,P
2,P
3,P
4が頂点をなす形状は、各辺の長さl
12,l
23,l
34,l
41が誤差±10%の範囲で互いに等しければ、必ずしも完全な平行四辺形に限定されるものではないが、一定の対称性を有するトポロジーであることが好ましい。例えば、l
12=l
34、l
23=l
41ではなく、l
12=l
41、l
23=l
34とする不等辺四辺形や梯形(トラペジオン)でもよい。
【0050】
より具体的には、例えば、90〜108MHz及び207.5〜222MHzのダブルバンドの帯域での共有アンテナ開口面として使用するためには、l
12=l
34=57.5cm、l
23=l
41=66.1cm程度の値に選定可能である。アンテナのサイズスケーリング則によって、l
12=l
34=57.5mm、l
23=l
41=66.1mm程度の値に選定すれば、900〜1080MHz及び2075〜2220MHzのダブルバンドの帯域での共有アンテナ開口面として使用することができる。
【0051】
本発明の実施の形態に係る開口面共用アレーアンテナ21
wの性能を評価するため、VSWR、ポート間結合(CBP)及び空間相関(SCC)を電磁解析シミュレータIE3Dにより解析し、
図15に示す比較例3に係る開口面共用アレーアンテナ21
c及び
図16に示す比較例4に係る開口面共用アレーアンテナ21
dの2つの比較例と比較し、比較結果をそれぞれ
図17,
図18及び
図19に示した。
【0052】
図14に示す構造において、第2の補助グリッド線G
v42と第3の補助グリッド線G
v43との間の水平方向に測った距離d
43=0.04λ〜0.15λ程度の値に選ぶことが可能であり、第1の補助グリッド線G
v41と第2の補助グリッド線G
v42との間の水平方向に測った距離d
42=0.10λ〜0.30λ程度の値に選ぶことが可能であり、第4の補助グリッド線G
v44と第2の端部ストライプG
pp2との間の水平方向に測った距離d
44=0.002λ〜0.008λ程度の値に選ぶことが可能である。
【0053】
図17,
図18及び
図19に示す比較において、
図14に示す構造の寸法を、900〜1080MHz及び2075〜2220MHzのダブルバンドの帯域に合わせて、横幅a=110mm、高さb=48mmとした場合は、例えば、第1の端部ストライプG
pp1及び第2の端部ストライプG
pp2の水平方向に測った幅d
41=5mmと、
図1の先行検討例に係る開口面共用アレーアンテナ21
sと同一の値が採用可能である。又、第2の補助グリッド線G
v42と第3の補助グリッド線G
v43との間の水平方向に測った距離d
43=18mmも、先行検討例に係る開口面共用アレーアンテナ21
sと同一の値を採用可能であるが、第1の補助グリッド線G
v41と第2の補助グリッド線G
v42との間の水平方向に測った距離d
42=39mm程度の値に選び、第4の補助グリッド線G
v44と第2の端部ストライプG
pp2との間の水平方向に測った距離d
44=1mm程度の値に選ぶことができる。
【0054】
なお、
図14において、b=48mm,a=110cm程度の値に選定し、900〜1080MHz及び2075〜2220MHzのダブルバンドの帯域での共有アンテナ開口面とした場合であれば、
図3に示したのと同様に、本発明の実施の形態に係る開口面共用アレーアンテナは21
wの主グリッド線G
h1,G
h2,G
h3,…,G
hmの幅は、0.5mm程度の値、主グリッド線G
h1,G
h2,G
h3,…,G
hmの相互の間隔は2.5mm程度の値、両端における間隔は1.25mm程度の値に、それぞれ選定できる。
【0055】
図15に示す比較例3に係る開口面共用アレーアンテナ21
cは、
図1に示したシングルバンド用の先行検討例の構造と同様であり、第1の補助グリッド線G
v51と第2の補助グリッド線G
v52の2本のみの補助グリッド線G
v51,G
v52を有する構造である。即ち、
図15に示す比較例3に係る開口面共用アレーアンテナ21
cにおいて、横幅a=110mm、高さb=48mm、第1の端部ストライプG
pp1及び第2の端部ストライプG
pp2の水平方向に測った幅d
51=5mm、第1の補助グリッド線G
v51と第2の補助グリッド線G
v52との間の水平方向に測った距離d
52=18mm、第2の補助グリッド線G
v52と第2の端部ストライプG
pp2との間の水平方向に測った距離d
53=40.5mmである。
【0056】
図15に示す比較例3に係る開口面共用アレーアンテナ21
cにおいては、第1の端部ストライプG
pp1側の第m番目の主グリッド線G
hmの端部を第1の給電点P
1、第m番目の主グリッド線G
hmと第2の補助グリッド線G
v52との交点を第2の給電点P
2、第2の端部ストライプG
pp2側の第1番目の主グリッド線の端部を第3の給電点P
3、第1番目の主グリッド線と第1の補助グリッド線Gv51との交点を第4の給電点P
4と選定し、第1〜第4の給電点P
1,P
2,P
3,P
4により、共有アンテナ開口面に4つの仮想アンテナを配列してシングルバンド用の4素子アンテナアレーを構成することを意図している。
【0057】
図16に示す比較例4に係る開口面共用アレーアンテナ21
cも、第1の端部ストライプG
pp1側から順に、第1の補助グリッド線G
v61,第2の補助グリッド線G
v62,第3の補助グリッド線G
v63及び第4の補助グリッド線G
v64の4本の補助グリッド線G
v61,G
v62,G
v63,G
v64を備える点では、
図14に示した本発明の実施の形態に係る開口面共用アレーアンテナ21
wと同様であるが、4本の補助グリッド線G
v61,G
v62,G
v63,G
v64の相互の間隔が、
図14に示した本発明の実施の形態に係る開口面共用アレーアンテナ21
wとは異なる。
【0058】
即ち、
図16に示す比較例4に係る開口面共用アレーアンテナ21
cにおいても、
図14に示した本発明の実施の形態に係る開口面共用アレーアンテナ21
wと同様に、横幅a=110mm、高さb=48mm、第1の端部ストライプG
pp1及び第2の端部ストライプG
pp2の水平方向に測った幅d
61=5mmであり、第2の補助グリッド線G
v62と第3の補助グリッド線G
v63との間の水平方向に測った距離d
64=18mmである。しかし、第1の端部ストライプG
pp1と第1の補助グリッド線G
v61との間の水平方向に測った距離d
62=18mmで、第1の補助グリッド線G
v61と第2の補助グリッド線G
v62との間の水平方向に測った距離d
63=22mmで、第3の補助グリッド線G
v63と第4の補助グリッド線G
v64との間の水平方向に測った距離d
65=d
63=22mmで、第4の補助グリッド線G
v64と第2の端部ストライプG
pp2との間の水平方向に測った距離d
66=d
61=18mmである点が
図14に示す構造とは異なる。
【0059】
図16に示す比較例4に係る開口面共用アレーアンテナ21
cは、
図14に示した本発明の実施の形態に係る開口面共用アレーアンテナ21
wと同様に、第m番目の主グリッド線G
hmと第1の補助グリッド線G
v61との交点を第1の給電点P
1、第m番目の主グリッド線G
hmと第3の補助グリッド線G
v63との交点を第2の給電点P
2、第1番目の主グリッド線と第4の補助グリッド線G
v64との交点を第3の給電点P
3、第1番目の主グリッド線と第2の補助グリッド線G
v62との交点を第4の給電点P
4と選定し、第1〜第4の給電点P
1,P
2,P
3,P
4により、共有アンテナ開口面に4つの電磁波的に独立した仮想アンテナを配列して4素子のアンテナアレーを構成することを意図している。
【0060】
図17に示すVSWR、
図18に示すポート間結合(CBP)、及び
図19に示す空間相関(SCC)において、本発明の実施の形態に係る開口面共用アレーアンテナ21
wの特性を実線で、
図15に示す比較例3に係る開口面共用アレーアンテナ21
cの特性を破線で、
図16に示す比較例4に係る開口面共用アレーアンテナ21
dの特性を二点鎖線で示している。
図17では4つのポート(給電点)P
1,P
2,P
3,P
4から見たVSWRの平均値を示している。
図17に示すとおり、900〜1080MHz及び2075〜2220MHzのダブルバンドの帯域において、VSWRは
図14に示した本発明の実施の形態に係る開口面共用アレーアンテナ21
wの特性が優れているが、
図16に示す比較例4に係る開口面共用アレーアンテナ21
dの特性が最も劣ることが分かる。
【0061】
図18では、
図7と同様に、第1のポートP
1と第2のポートP
2との結合係数CBP
12、第2のポートP
2と第3のポートP
3との結合係数CBP
23、第3のポートP
3と第4のポートP
4との結合係数CBP
34、第4のポートP
4と第1のポートP
1との結合係数CBP
41、第1のポートP
1と第3のポートP
3との結合係数CBP
13及び第2のポートP
2と第4のポートP
4との結合係数CBP
24の平均値を示している。
図18に示すとおり、900〜1080MHz及び2075〜2220MHzのダブルバンドの帯域において、ポート間結合(CBP)も
図14に示した本発明の実施の形態に係る開口面共用アレーアンテナ21
w(実線)の特性が最も優れているが、
図16に示す比較例4に係る開口面共用アレーアンテナ21
d(二点鎖線)の特性が最も劣ることが分かる。
【0062】
図19では、
図8と同様に、第1の仮想アンテナA
1(θ、φ)と第2の仮想アンテナA
2(θ、φ)との空間相関SCC
12、第2の仮想アンテナA
2(θ、φ)と第3の仮想アンテナA
3(θ、φ)との空間相関SCC
23、第3の仮想アンテナA
3(θ、φ)と第4の仮想アンテナA
4(θ、φ)との空間相関SCC
34、第4の仮想アンテナA
4(θ、φ)と 第1の仮想アンテナA
1(θ、φ)との空間相関SCC
41、第1の仮想アンテナA
1(θ、φ)と第3の仮想アンテナA
3(θ、φ)との空間相関SCC
13、及び第2の仮想アンテナA
2(θ、φ)と第4の仮想アンテナA
4(θ、φ)との空間相関SCC
24の平均値を示している。
図19に示すとおり、900〜1080MHz及び2075〜2220MHzのダブルバンドの帯域における空間相関(SCC)については、
図14に示した本発明の実施の形態に係る開口面共用アレーアンテナ21
w(実線)、
図15に示す比較例3に係る開口面共用アレーアンテナ21
c(破線)及び
図16に示す比較例4に係る開口面共用アレーアンテナ21
d(二点鎖線)の特性において、大きな差異は認められなかった。
【0063】
他の構造については図示を省略しているが、
図15及び
図16に示した構造を含む100通り以上のケースの検討結果から、
図14に示すような間隔の関係で、4本の補助グリッド線G
v41,G
v42,G
v43,G
v44を設け、第m番目の主グリッド線G
hmと第1の補助グリッド線G
v41との交点を第1の給電点P
1、第m番目の主グリッド線G
hmと第3の補助グリッド線G
v43との交点を第2の給電点P
2、第1番目の主グリッド線と第4の補助グリッド線G
v44との交点を第3の給電点P
3、第1番目の主グリッド線と第2の補助グリッド線G
v42との交点を第4の給電点P
4と選定し、第1〜第4の給電点P
1,P
2,P
3,P
4により、共有アンテナ開口面に4つの電磁波的に独立した仮想アンテナを配列して4素子のアンテナアレーを構成した場合が、VSWR、ポート間結合(CBP)及び空間相関(SCC)のいずれについても、900〜1080MHz及び2075〜2220MHzのダブルバンドの帯域において4素子アンテナアレーとして最も優れているという知見が得られた。
【0064】
図23に示すように、本発明の実施の形態に係る適応指向性受信装置は、上記において説明した本発明の実施の形態に係る開口面共用アレーアンテナ21
wの周囲に設けられた4つのポート(給電点)P
1,P
2,P
3,P
4のうちのひとつである第1のポートP
1を活性素子の給電点とし、残りの3つのポートP
2,P
3,P
4がパラサイト素子とする4素子アダプティブ・アレーアンテナを備える。ここで、「活性素子」とは、先行検討例に係る適応指向性受信装置で既に説明したとおり、空中から捉えた無線信号を受信装置側に出力する励振素子(給電素子)であり、第1のポートP
1からアンテナ出力が得られる。
【0065】
第1のポートP
1を給電点とする活性素子には、ディジタルシグナルプロセッサ(DSP)を備えるベースバンド信号生成部24が接続され、活性素子からベースバンド信号生成部24のRFフロントエンド部に、空中から捉えた無線信号が出力される。ベースバンド信号生成部24に備えられた演算処理回路(DSP)は、ベースバンド信号生成部24で生成されたベースバンド信号を処理する。なお、DSPは、必ずしもベースバンド信号生成部24に内蔵されている必要はなく、物理的構成としては、ベースバンド信号生成部24の外部に接続されていてもよい。
【0066】
「パラサイト素子」とは、先行検討例に係る適応指向性受信装置で既に説明したとおり、空中からの無線信号に直接寄与しない非励振素子の意味であり、第2のポートP
2を給電点とする第1のパラサイト素子には、例えば、第1インダクタと可変容量ダイオードの直列回路が接続され、第1インダクタと可変容量ダイオードの接続点に一方の端子を接続するように、可変容量ダイオードと第2インダクタとが並列接続されて第1の可変リアクタンス回路22aを構成している。第1の可変リアクタンス回路22aは、リアクタンス適応制御回路23を介して、ベースバンド信号生成部24のDSPに接続されている。
【0067】
同様に、第3のポートP
3を給電点とする第2のパラサイト素子には、第1インダクタと可変容量ダイオードの直列回路が接続され、第1インダクタと可変容量ダイオードの接続点に一方の端子を接続するように、可変容量ダイオードと第2インダクタとが並列接続されて第2の可変リアクタンス回路22bを構成している。第2の可変リアクタンス回路22bは、リアクタンス適応制御回路23を介して、ベースバンド信号生成部24のDSPに接続されている。同様に、第4のポートP
4を給電点とする第3のパラサイト素子には、第1インダクタと可変容量ダイオードの直列回路が接続され、第1インダクタと可変容量ダイオードの接続点に一方の端子を接続するように、可変容量ダイオードと第2インダクタとが並列接続されて第2の可変リアクタンス回路22bを構成している。第2の可変リアクタンス回路22bは、リアクタンス適応制御回路23を介して、ベースバンド信号生成部24のDSPに接続されている。
【0068】
第1のポートP
1を給電点とする活性素子、第2のポートP
2を給電点とする第1のパラサイト素子、第3のポートP
3を給電点とする第2のパラサイト素子及び第4のポートP
4を給電点とする第3のパラサイト素子は、同一の格子状の面である開口面の周囲に設けられた4つのポートP
1,P
2,P
3,P
4を給電点としているので、物理的なハードウェア構成としては電気的に短絡され、空間的に分離されていないが、
図19に示したとおり、900〜1080MHz及び2075〜2220MHzのダブルバンドの帯域において、高周波の電磁波的には4つの独立したアンテナとして機能するとみなすことが可能である。
【0069】
本発明の実施の形態に係る適応指向性受信装置では、
図13(a)に示したのと同様に、入射信号として逆離散フーリエ変換された信号をデータ区間として有するOFDM信号を用いている。OFDM信号の各シンボル区間の先頭にはガード区間HGIが設けられている。ガード区間HGIは各シンボル区間の尾部のコピー元区間TGIの波形をダミー信号としてそのまま巡回的にコピーしたものである。ガード区間HGI、ガード区間HGIに続くデータ区間、データ区間に続くコピー元区間TGIとで、各シンボル区間が構成されている。
図13(a)に示す主波に対し、
図13(b)に示したのと同様に、ガード区間HGIだけ遅れた遅延波が受信されると、OFDM信号の誤り率は急激に劣化する。遅延波が重畳して受信されるとガード区間HGIとコピー元区間TGIの相関係数は小さくなる。
【0070】
図23に示すベースバンド信号生成部24のDSPは、第1のポートP
1を給電点とする活性素子のアンテナ出力を用いて、
図13に示すOFDM信号の各シンボル区間毎にガード区間HGIとコピー元区間TGIのとの複素相関係数を計算し、リアクタンス適応制御回路23は、ガード区間HGIとコピー元区間TGIの複素相関係数が大きくなるように、それぞれの可変リアクタンス回路22a,22b,22cの接地リアクタンス値を制御する。リアクタンス適応制御回路23の制御には、例えば、目的関数を相関係数としたシンプレックス法を使用すればよい。
【0071】
計算機シミュレーションでは、2つの同一振幅のOFDM信号(遅延波と主波)を水平面でランダムな2方向から入射させる。100パターンの到来角組み合わせについて信号対干渉雑音比SINRの累積分布(CCDF)を計算した。到来波の垂直面の入射角は、本発明者らが実施したフィールドテストで得た平均値の0.48°を用いた。
図13(b)に示したのと同様に、遅延波は
図13(a)に示す主波に対しガード区間HGIだけ遅れている。
【0072】
図14に示した本発明の実施の形態に係る開口面共用アレーアンテナ21
w、
図16に示した比較例4に係る開口面共用アレーアンテナ21
d及び
図15に示した比較例3に係る開口面共用アレーアンテナ21
c及びについて、第1のポートP
1を活性素子の給電点とし、残りの3つのポートP
2,P
3,P
4をパラサイト素子の給電点として、先行波と遅延波の入射方向を変化させ、適応ビームを形成したときの900,1000,1080,2075,2100,2222MHzにおける信号対干渉雑音比SINRの累積分布(CCDF)を、それぞれ
図20、
図21及び
図22に示す。
図20、
図21及び
図22において、900MHzのSINRの累積分布を実線で、1000MHzにおけるSINRの累積分布を破線で、1080MHzにおけるSINRの累積分布を一点鎖線で、2075MHzにおけるSINRの累積分布を二点鎖線で、2100MHzにおけるSINRの累積分布を点線で、2200MHzのSINRの累積分布を太い実線(2重線)で示している。
【0073】
図20及び
図21を比較すれば明らかなように、本発明の実施の形態に係る開口面共用アレーアンテナ21
wの場合が、横幅a=110mm、高さb=48mmの矩形の格子状の共有アンテナ開口面の寸法においては、900〜1080MHz及び2075〜2220MHzのダブルバンドの帯域にわたり、
図16に示した比較例4に係る開口面共用アレーアンテナ21
dに比し、SINRの累積分布が飛躍的に優れていることが理解できる。又、
図15に示した比較例3に係る開口面共用アレーアンテナ21
cの場合は、
図22から分かるように、900〜1080MHzのシングルバンドの帯域においてのみ、SINRの累積分布が優れ、ダブルバンドには適さないことが分かる。
【0074】
図17〜
図20に示した本発明の実施の形態に係る開口面共用アレーアンテナ21
wの寸法を10倍にすれば、アンテナのサイズスケーリング則によって、90〜108MHz及び207.5〜222MHzのダブルバンドの帯域において、SINRの累積分布が優れていることは容易に理解できる。即ち、本発明の実施の形態に係る開口面共用アレーアンテナ21
wの構造は、寸法を車両(自動車)のリアデフォッガの寸法に対応させて、車両(自動車)に搭載して、ISDB−TSBに適合した90〜108MHzの周波数帯(V−LOW)及びISDB−Tmmに適合した207.5〜222MHzの周波数帯(V−HIGH)の、周波数が2倍程度異なるダブルバンドの帯域において使用可能な4素子のアンテナアレーを構成するのに好適である。
【0075】
更に、アンテナのサイズスケーリング則によって、本発明の実施の形態に係る矩形の格子状の共有アンテナ開口面の寸法を選択することにより、任意の周波数帯におけるダブルバンドの4素子のアンテナアレーを、開口面共用アレーアンテナ21
wによって構成できることも容易に理解できる事項である。
【0076】
(その他の実施の形態)
本発明は、上記のような本発明の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。特に、サイズスケーリング則によって、所望の寸法を選択することにより、任意の周波数帯におけるダブルバンドの4素子のアンテナアレーが実現できるので、本発明の開口面共用アレーアンテナ21
wは、車両(自動車)のリアデフォッガの他、車両後付け平面アンテナ、平面シート状アンテナ等に適用できる。更に、住宅の窓や壁に本発明の開口面共用アレーアンテナ21
wを用いてもよく、携帯端末用のアレーアンテナとして、本発明の開口面共用アレーアンテナ21
wを用いることもできる。このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。