特許第5794708号(P5794708)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5794708
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】粉末成形用の金型および粉末成形方法
(51)【国際特許分類】
   B30B 11/02 20060101AFI20150928BHJP
【FI】
   B30B11/02 F
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-132923(P2013-132923)
(22)【出願日】2013年6月25日
(65)【公開番号】特開2015-6685(P2015-6685A)
(43)【公開日】2015年1月15日
【審査請求日】2014年1月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】593016411
【氏名又は名称】住友電工焼結合金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100084858
【弁理士】
【氏名又は名称】東尾 正博
(74)【代理人】
【識別番号】100112575
【弁理士】
【氏名又は名称】田川 孝由
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(72)【発明者】
【氏名】山本 勇太
【審査官】 水野 治彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−102898(JP,A)
【文献】 特開昭55−077999(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B30B 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末成形時に上方から粉末の圧力を受ける上面と、
粉末成形機の金型設置面に下方から支持される底面と、
同一の円周上に間隔をおいて設けられた上下方向の複数の貫通孔と、
前記金型設置面から上方に離れた位置で前記各貫通孔の下端が開口するように全ての前記貫通孔の下端を包含する凹部と、
を有し、
同一の円周上に設けられた前記複数の貫通孔は、合計で前記円周の半周を超える周方向長さを有する粉末成形用の金型。
【請求項2】
粉末成形時に上方から粉末の圧力を受ける上面と、
粉末成形機の金型設置面に下方から支持される底面と、
同一の円周上に間隔をおいて設けられた上下方向の複数の貫通孔と、
前記金型設置面から上方に離れた位置で前記各貫通孔の下端が開口するように全ての前記貫通孔の下端を包含する凹部と、
を有し、
さらに、前記底面の側の端部外周に締め代をもって嵌合する外筒を有する粉末成形用の金型。
【請求項3】
前記凹部は、径方向内側から径方向外側に向かって次第に前記金型設置面に近くなる方向に傾斜したテーパ面を有し、そのテーパ面に前記貫通孔の下端が開口している請求項1または2に記載の粉末成形用の金型。
【請求項4】
同一の円周上に設けられた前記複数の貫通孔のうちの少なくとも1つの貫通孔は、前記円周に沿って延びる円弧穴である請求項1から3のいずれかに記載の粉末成形用の金型。
【請求項5】
粉末成形時に上方から粉末の圧力を受ける上面と、
粉末成形機の金型設置面に下方から支持される底面と、
同一の円周上に間隔をおいて設けられた上下方向の複数の貫通孔と、
前記金型設置面から上方に離れた位置で前記各貫通孔の下端が開口するように全ての前記貫通孔の下端を包含する凹部と、
を有し、
同一の円周上に設けられた前記複数の貫通孔は、合計で前記円周の半周を超える周方向長さを有する金型を使用した粉末成形方法。
【請求項6】
粉末成形時に上方から粉末の圧力を受ける上面と、
粉末成形機の金型設置面に下方から支持される底面と、
同一の円周上に間隔をおいて設けられた上下方向の複数の貫通孔と、
前記金型設置面から上方に離れた位置で前記各貫通孔の下端が開口するように全ての前記貫通孔の下端を包含する凹部と、
を有し、
さらに、前記底面の側の端部外周に締め代をもって嵌合する外筒を有する金型を使用した粉末成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末成形用の金型およびこの金型を用いた粉末成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、粉末を圧縮して粉末成形体を製造するとき、上下に貫通する成形孔を有するダイと、このダイの成形孔に摺動可能に挿入される上パンチおよび下パンチとが、粉末成形用の金型として使用される。そして、ダイの成形孔に粉末を充填し、その粉末を上パンチと下パンチで圧縮することにより、粉末成形体が製造される(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−83250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願の発明者は、図5に示すような下パンチ51を用いて、粉末成形体の製造を行なった。この下パンチ51は、粉末成形時に上方から粉末の圧力を受ける上面52と、粉末成形機の金型設置面53に下方から支持される底面54と、同一の円周上に間隔をおいて設けられた上下方向の複数の貫通孔55と、中央の貫通孔56とを有する。中央の貫通孔56は、コアロッド57が挿入される孔である。周囲の貫通孔55は、下2パンチ58が挿入される孔である。
【0005】
本願の発明者が、上述の下パンチ51を用いて複数の粉末成形体を製造したところ、図6に示すように、下パンチ51の底面54の周方向に隣り合う貫通孔55の間の部分に亀裂59が入るおそれがあることが分かった。このような亀裂59が生じるのは、粉末成形時の圧力が下パンチ51に作用したときに、その圧力で上下に圧縮される結果として、下パンチ51の底面54に水平方向の引張応力が生じ、この引張応力が下パンチ51の底面54に開口する貫通孔55の下端縁に集中することが原因だと考えられる。
【0006】
本発明は、上記の事情を考慮し、同一の円周上に間隔をおいて設けられた複数の貫通孔を有する金型の耐久性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明では、以下の構成を採用した粉末成形用の金型を提案する。
粉末成形時に上方から粉末の圧力を受ける上面と、
粉末成形機の金型設置面に下方から支持される底面と、
同一の円周上に間隔をおいて設けられた上下方向の複数の貫通孔と、
前記金型設置面から上方に離れた位置で前記各貫通孔の下端が開口するように全ての前記貫通孔の下端を包含する凹部とを有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、同一の円周上に間隔をおいて設けられた複数の貫通孔の下端縁に亀裂が入るのを防止して、下パンチの耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態にかかる粉末成型用の金型の上面図である。
図2図1のII−II線に沿った断面図である。
図3図2に示す金型の使用例を示す図であり、粉末を圧縮する前の状態を示す図である。
図4図2に示す金型の使用例を示す図であり、粉末を圧縮したときの状態を示す図である。
図5】参考例の金型を示す断面図である。
図6図5に示す金型の底面図である。
図7A】本発明の凹部を有さない下パンチが粉末成形時の圧力を受けたときに、貫通孔の下端縁に生じる応力を解析した結果を示す図である。
図7B】本発明の凹部を有する下パンチが粉末成形時の圧力を受けたときに、貫通孔の下端縁に生じる応力を解析した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本発明の実施形態の説明]
(1)本発明の実施形態である粉末成形用の金型は、
粉末成形時に上方から粉末の圧力を受ける上面と、
粉末成形機の金型設置面に下方から支持される底面と、
同一の円周上に間隔をおいて設けられた上下方向の複数の貫通孔と、
前記金型設置面から上方に離れた位置で前記各貫通孔の下端が開口するように全ての前記貫通孔の下端を包含する凹部と、
を有する粉末成形用の金型である。
この構成を採用すると、粉末成形時の圧力が下パンチに作用したときに、下パンチの底面に水平方向の引張応力が生じるが、貫通孔の下端は下パンチの底面ではなく、金型設置面から上方に離れた凹部の内面に開口しているので、貫通孔の下端縁に引張応力が集中するのを防止することができる。そのため、同一の円周上に間隔をおいて設けられた複数の貫通孔の下端縁に亀裂が入るのを防止して、下パンチの耐久性を向上させることができる。
(2)前記凹部は、径方向内側から径方向外側に向かって次第に前記金型設置面に近くなる方向に傾斜したテーパ面を有する構成とし、そのテーパ面に前記貫通孔の下端を開口させると好ましい。このようにすると、粉末成形時の圧力が下パンチに作用したときに、貫通孔の下端縁に応力が集中するのをより効果的に防止することができる。
(3)同一の円周上に設けられた前記複数の貫通孔のうちの少なくとも1つの貫通孔が、前記円周に沿って延びる円弧穴である場合、上述の凹部を設けると、円弧穴である貫通孔の下端縁に亀裂が入るのを防止することができる。
(4)同一の円周上に設けられた前記複数の貫通孔が、合計で前記円周の半周を超える周方向長さを有する場合、上述の凹部を設けると、合計しても円周の半周に満たない隣り合う貫通孔の間の部分に亀裂が入るのを防止することができる。
(5)前記底面の側の端部外周に締め代をもって嵌合する外筒を設けると好ましい。このようにすると、外筒の締め代によって予め水平方向の圧縮応力が負荷された状態となるので、粉末成形時の圧力が下パンチに作用したときに生じる水平方向の引張応力を低減することができ、貫通孔の下端縁の応力をより効果的に緩和することが可能となる。
(6)また、本発明の実施形態である粉末成形方法は、
粉末成形時に上方から粉末の圧力を受ける上面と、
粉末成形機の金型設置面に下方から支持される底面と、
同一の円周上に間隔をおいて設けられた上下方向の複数の貫通孔と、
前記金型設置面から上方に離れた位置で前記各貫通孔の下端が開口するように全ての前記貫通孔の下端を包含する凹部と、
を有する金型を使用した粉末成形方法である。
この構成を採用すると、粉末成形時の圧力が下パンチに作用したときに、下パンチの底面に水平方向の引張応力が生じるが、貫通孔の下端は下パンチの底面ではなく、金型設置面から上方に離れた凹部の内面に開口しているので、貫通孔の下端縁に引張応力が集中するのを防止することができる。そのため、同一の円周上に間隔をおいて設けられた複数の貫通孔の下端縁に亀裂が入るのを防止して、下パンチの耐久性を向上させることができる。
【0011】
[本発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態にかかる粉末成形用の金型の具体例とこの金型を用いた粉末成形方法を、図1から図4を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0012】
図1図2に示す金型は、図3図4に示すように粉末成形体22の成形時に粉末Pに下方から圧力を加える下パンチ1である。この下パンチ1は、図2に示すように、粉末成形時に上方から粉末Pの圧力を受ける上面2と、粉末成形機の金型設置面10に下方から支持される底面3と、同一の円周上に間隔をおいて設けられた上下方向の複数の貫通孔4A、4Bと、これらの貫通孔4A、4Bの下端を開口させる内面をもつ凹部5と、中央の貫通孔6とを有する。
【0013】
図1に示すように、下パンチ1の上面2は、粉末成形体22(図4参照)と同じ形状の輪郭をもつように形成されている。この実施形態では、粉末成形体22は外周に歯をもつスプロケットであり、そのため、下パンチ1の上面2の輪郭も外周に歯をもつ形状となっている。
【0014】
同一の円周上に設けられた複数の貫通孔4A、4Bは、丸穴の貫通孔4Aと、円周に沿って延びる円弧穴の貫通孔4Bとからなる。少なくとも1つの円弧穴の貫通孔4Bは、60°以上の中心角を有する。これらの貫通孔4A,4Bは、個々の貫通孔4A,4Bの周方向長さを足したときに、合計で円周の半周を超える周方向長さを有する。すなわち、これらの貫通孔4A,4Bが設けられた円周のうち貫通孔4A,4Bを除いた部分(すなわち周方向に隣り合う貫通孔4A,4Bの間の部分、貫通孔4B,4Bの間の部分)は、合計しても円周の半周に満たない。
【0015】
図2に示すように、下パンチ1は、金型設置面10に支持される底面3をもつ本体1Aと、この本体1Aの底面3の側の端部外周に締め代をもって嵌合する外筒1Bとを有する。貫通孔4A,4Bおよび凹部5は、本体1Aに設けられている。本体1Aは、高速度工具鋼等の鋼材で形成することができる。外筒1Bも鋼材で形成することができる。外筒1Bと本体1Aの組み立ては、加熱により熱膨張した外筒1Bを本体1Aの外周に嵌め合わせる方法(焼き嵌め)によって行なうことができる。
【0016】
本体1Aの外筒1Bに対する嵌合面には、上面2側から底面3側に向かって大径となる段部7が形成されている。外筒1Bの本体1Aに対する嵌合面にも、上面2側から底面3側に向かって大径となる段部8が形成されている。本体1Aの段部7と外筒1Bの段部8は当接している。
【0017】
下パンチ1の下端外周(この実施形態では外筒1Bの下端外周)には、フランジ9が形成されている。フランジ9は、後述するように、下パンチ1を金型設置面10に押し付けて固定するための部位である。
【0018】
凹部5は、下パンチ1の下部中央に形成され、この凹部5を囲む環状の領域が金型設置面10に支持される底面3とされている。凹部5は、同一の円周上に設けられた全ての貫通孔4A,4Bの下端を包含している。すなわち、凹部5は、全ての貫通孔4A,4Bに共通して接する仮想の外接円を想定したときに、その外接円を包含するように形成されている。そして、この凹部5を設けることにより、各貫通孔4A,4Bの下端は、金型設置面10から上方に離れた凹部5の内面で開口している。具体的には、凹部5は、径方向内側から径方向外側に向かって次第に金型設置面10に近くなる方向に傾斜したテーパ面5Aを有し、貫通孔4A,4Bの下端は、このテーパ面5Aに開口している。テーパ面5Aは、図に示すように円錐形状とすると、テーパ面5Aを高精度に加工することが容易となるが、テーパ面5Aは半球面等としてもよい。凹部5は、切削加工により形成することができる。
【0019】
次に、この金型を用いた粉末成形方法を説明する。図3に示すように、下パンチ1は、粉末成形機の金型設置面10の上に載置され、下パンチ押さえ11をフランジ9にボルト12で締め付けることで金型設置面10に固定される。このとき、下パンチ1の底面3は金型設置面10に接するが、凹部5の内面は金型設置面10から上方に離れている。
【0020】
下パンチ1の中央の貫通孔6にはコアロッド13が挿入され、その周囲の貫通孔4A,4Bには下2パンチ14が挿入される。コアロッド13は、下パンチ1の上面2から上方に突出している。下2パンチ14は、下パンチ1の上面2から下方に落ち込んでいる。下パンチ1は、ダイ15に形成された上下に貫通する成形孔16に下方から挿入されている。下パンチ1の上方には上パンチ17が設けられている。ダイ15と上パンチ17、ダイ15と下パンチ1、下パンチ1と下2パンチ14は、それぞれ上下方向に相対移動可能となっている。
【0021】
まず、図3に示すように、コアロッド13の外周とダイ15の内周との間に形成されるキャビティ18に粉末Pを充填する。次に、図4に示すように、上パンチ17と下パンチ1と下2パンチ14を上下方向に相対移動させて、粉末Pを圧縮する。この粉末Pの圧縮によって、コアロッド13に対応する形状の貫通孔20と、貫通孔4A,4Bに対応する形状の突起21を有する粉末成形体22が得られる。ここで、上パンチ17と下パンチ1と下2パンチ14を相対移動させる具体的態様としては、例えば、ダイ15を固定した状態で、上パンチ17を下降させるとともに、下パンチ1と下2パンチ14を上昇させる(ただし下2パンチ14の上昇距離は下パンチ1の上昇距離よりも大きくする)態様や、下2パンチ14を固定した状態で、上パンチ17を下降させるとともに、ダイ15と下パンチ1を上パンチ17よりも遅い速度で下降させる態様などが挙げられる。
【0022】
ところで、図4に示すように、上パンチ17と下パンチ1の間で粉末Pを圧縮するとき、下パンチ1には、例えば6t/cm程度の圧力(成形圧)が作用する。そして、下パンチ1の底面3には、成形圧で上下に圧縮される結果として、水平方向の引張応力が生じる。このとき、例えば、図5に示すように、金型設置面53に接する下パンチ51の底面54に貫通孔55の下端が開口していると、粉末成形時の圧力が作用したときに貫通孔55の下端縁に応力が集中し、その結果、図6に示すように、下パンチの底面54の隣り合う貫通孔55と貫通孔55の間の部分に亀裂59が入るおそれがある。
【0023】
これに対し、この実施形態の下パンチ1では、下パンチ1の下部中央に凹部5を設けることによって、粉末成形時の応力を外径側に逃がし、貫通孔4A,4Bの下端縁の亀裂を防止している。すなわち、この実施形態の下パンチ1は、貫通孔4A,4Bの下端が下パンチ1の底面3ではなく、金型設置面10から上方に離れた凹部5の内面に開口しているので、貫通孔4A,4Bの下端縁に引張応力が集中するのを防止することができる。そのため、同一の円周上に間隔をおいて設けられた複数の貫通孔4A,4Bの下端縁に亀裂が入るのを防止して、下パンチ1の耐久性を向上させることができる。
【0024】
また、この実施形態の下パンチ1は、径方向内側から径方向外側に向かって次第に金型設置面10に近くなる方向に傾斜したテーパ面5Aに貫通孔4A,4Bの下端が開口しているので、粉末成形時の圧力が下パンチ1に作用したときに、貫通孔4A,4Bの下端縁に応力が集中するのをより効果的に防止することが可能となっている。
【0025】
また、この実施形態の下パンチ1は、外筒1Bの締め代によって予め水平方向の圧縮応力が負荷された状態となっているので、粉末成形時の圧力が下パンチ1に作用したときに生じる水平方向の引張応力を低減することができ、貫通孔4A,4Bの下端縁の応力をより効果的に緩和することが可能となっている。
【0026】
図7A図7Bに、粉末成形時の圧力を下パンチが受けたときに、下パンチの貫通孔の下端縁に生じる応力を解析した結果を示す。図7Aは、本発明の凹部を有さない下パンチの解析結果であり、図7Bは、本発明の凹部を有する下パンチの解析結果である。図中、色の濃い部分は、高い応力が生じている部分である。
【0027】
この解析結果によれば、図7Aに示すように、本発明の凹部を有さない下パンチでは、貫通孔の下端縁に応力が集中しているのに対し、図7Bに示すように、本発明の凹部を有する下パンチでは、貫通孔の内面に比較的応力が高い部分が存在するものの、貫通孔の下端縁には応力集中がない。つまり、貫通孔の下端を包含する凹部を設けることにより、貫通孔の下端縁の亀裂を防止することが可能となっていることが分かる。
【0028】
上記実施形態では、同一の円周上に設けられた複数の貫通孔4A,4Bとして、下2パンチ14を挿入する貫通孔4A,4Bをもつ下パンチ1を例に挙げて説明したが、本発明は、例えば、コアロッド13の周囲に設けられた複数のサイドコアロッド(すなわち下パンチ1の上面2から上方に突出して設けられ、粉末成形体22にサイドコアロッドに対応した形状の貫通孔を形成する金型)を挿入する下パンチにも適用することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 下パンチ
1A 本体
1B 外筒
2 上面
3 底面
4A 貫通孔
4B 貫通孔
5 凹部
5A テーパ面
6 貫通孔
7 段部
8 段部
9 フランジ
10 金型設置面
11 下パンチ押さえ
12 ボルト
13 コアロッド
14 下2パンチ
15 ダイ
16 成形孔
17 上パンチ
18 キャビティ
20 貫通孔
21 突起
22 粉末成形体
51 下パンチ
52 上面
53 金型設置面
54 底面
55 貫通孔
56 貫通孔
57 コアロッド
58 下2パンチ
59 亀裂
P 粉末
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B