特許第5794736号(P5794736)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ バイオデル, インコーポレイテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5794736
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】迅速取込みのためのインスリン製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/28 20060101AFI20150928BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20150928BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20150928BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20150928BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20150928BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20150928BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20150928BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20150928BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20150928BHJP
【FI】
   A61K37/26
   A61K9/08
   A61K47/18
   A61K47/12
   A61K47/36
   A61K47/22
   A61K47/20
   A61P3/10
   A61K9/14
【請求項の数】29
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2011-553081(P2011-553081)
(86)(22)【出願日】2010年3月3日
(65)【公表番号】特表2012-519695(P2012-519695A)
(43)【公表日】2012年8月30日
(86)【国際出願番号】US2010026073
(87)【国際公開番号】WO2010102020
(87)【国際公開日】20100910
【審査請求日】2013年2月28日
(31)【優先権主張番号】12/397,219
(32)【優先日】2009年3月3日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505390727
【氏名又は名称】バイオデル, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100062409
【弁理士】
【氏名又は名称】安村 高明
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】スタイナー, ソロモン エス.
(72)【発明者】
【氏名】ポール, ロデリク
(72)【発明者】
【氏名】リー, ミン
(72)【発明者】
【氏名】ハウザー, ロバート
【審査官】 深草 亜子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2002/076495(WO,A1)
【文献】 特表2000−502993(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/084237(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/041481(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/121256(WO,A1)
【文献】 特表2007−528902(JP,A)
【文献】 International Journal of Pharmaceutics,2003年,Vol.254,pp.271-280
【文献】 Pharmaceutical Research,1991年,Vol.8 , No.7,pp.925-929
【文献】 International Journal of Pharmaceutics,2001年,Vol.217,pp.71-78
【文献】 Journal of Colloid and Interface Science,1988年,Vol.122 , No.2,pp.557-566
【文献】 Journal of Pharmaceutical Sciences,1983年,Vol.72 , No.1,pp.75-78
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インスリン、溶解剤及び亜鉛キレート剤を含むインスリン製剤であって、該製剤のpHはpH7より大きくpH7.6以下であり、該製剤は澄明水溶液であり、該インスリンは、該溶解剤および該亜鉛キレート剤の両方なしで投与される該インスリンに比較して、上皮細胞を経る取り込みおよび輸送の速度が増強されている、製剤。
【請求項2】
前記キレート剤がエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、EGTA、クエン酸三ナトリウム(TSC)、アルギン酸、アルファリポ酸、ジメルカプトコハク酸(DMSA)、CDTA(1,2−ジアミノシクロヘキサン四酢酸)からなる群から選択される、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
前記キレート剤がエチレンジアミン四酢酸(EDTA)である、請求項2に記載の製剤。
【請求項4】
前記溶解剤が酢酸、アスコルビン酸、クエン酸、グルタミン酸、コハク酸、アスパラギン酸、マレイン酸、フマル酸及びアジピン酸からなる群から選択される酸又はその塩である、請求項1に記載の製剤。
【請求項5】
前記溶解剤がクエン酸又はクエン酸ナトリウムである、請求項4に記載の製剤。
【請求項6】
前記pHが7より大きく7.5以下である、請求項1に記載の製剤。
【請求項7】
インスリン溶液のpHをH4から生理的pHに上昇させることにより調製される、請求項1に記載の製剤。
【請求項8】
前記インスリンがヒトインスリン、インスリン類似体及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の製剤。
【請求項9】
前記インスリンが組換えヒトインスリンである、請求項8に記載の製剤。
【請求項10】
インスリン、溶解剤及び亜鉛キレート剤を含むインスリン製剤であって、該溶解剤が塩であり、該製剤のpHはpH7より大きくpH7.6以下であり、該製剤は澄明水溶液であり、該インスリンは、該溶解剤および該亜鉛キレート剤の両方なしで投与される該インスリンに比較して、上皮細胞を経る取り込みおよび輸送の速度が増強されている、製剤。
【請求項11】
前記キレート剤がエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、EGTA、クエン酸三ナトリウム(TSC)、アルギン酸、アルファリポ酸、ジメルカプトコハク酸(DMSA)、CDTA(1,2−ジアミノシクロヘキサン四酢酸)からなる群から選択される、請求項10に記載の製剤。
【請求項12】
前記キレート剤がエチレンジアミン四酢酸(EDTA)である、請求項10に記載の製剤。
【請求項13】
前記溶解剤が酢酸塩、アスコルビン酸塩、クエン酸塩、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩及びアジピン酸塩、並びにI族金属又はII族金属の塩からなる群から選択される塩である、請求項10に記載の製剤。
【請求項14】
前記溶解剤がアスコルビン酸、クエン酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸及びアジピン酸のナトリウム塩又はカリウム塩からなる群から選択される、請求項13に記載の製剤。
【請求項15】
前記溶解剤がクエン酸ナトリウムである、請求項13に記載の製剤。
【請求項16】
前記pHが7より大きく7.5以下である、請求項10に記載の製剤。
【請求項17】
前記インスリンがヒトインスリン、インスリン類似体及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項10に記載の製剤。
【請求項18】
前記インスリンが組換えヒトインスリンである、請求項10に記載の製剤。
【請求項19】
前記インスリンが第1の容器に入った乾燥粉末として提供され、前記キレート剤及び溶解剤の少なくとも1つが希釈剤を含有する第2の容器に入った状態で提供される、請求項1に記載の製剤。
【請求項20】
前記インスリンが第1の容器に入った乾燥粉末として提供され、前記キレート剤及び溶解剤の少なくとも1つが希釈剤を含有する第2の容器に入った状態で提供される、請求項10に記載の製剤。
【請求項21】
糖尿病の治療用の薬学的に許容される凍結製剤として提供される、請求項1に記載の製剤。
【請求項22】
糖尿病の治療用の薬学的に許容される凍結製剤として提供される、請求項10に記載の製剤。
【請求項23】
4℃での澄明水溶液として提供される、請求項1に記載の製剤。
【請求項24】
4℃での澄明水溶液として提供される、請求項10に記載の製剤。
【請求項25】
皮細胞を経るインスリンの取込み及び輸送を増大させるのに有効な量の溶解剤及び亜鉛キレート剤とを含む、有効量の注射用インスリン製剤を含み、該製剤のpHはpH7より大きくpH7.6以下であり、該製剤は澄明水溶液であり、該インスリンは、該溶解剤および該亜鉛キレート剤の両方なしで投与される該インスリンに比較して、上皮細胞を経る取り込みおよび輸送の速度が増強されている、糖尿病個体を治療するための組成物。
【請求項26】
前記II族金属は、マグネシウム(Mg)である、請求項13に記載の製剤。
【請求項27】
前記インスリン類似体は、インスリンリプロ、インスリングラルギン、インスリンアスペルト、インスリングルリシン、およびインスリンデテミルを含む、請求項8に記載の製剤。
【請求項28】
前記インスリン類似体は、インスリンリプロ、インスリングラルギン、インスリンアスペルト、インスリングルリシン、およびインスリンデテミルを含む、請求項17に記載の製剤。
【請求項29】
インスリン、溶解剤及び亜鉛キレート剤を含むインスリン製剤であって、該製剤は生理的pHを有し、該製剤は澄明水溶液であり、該製剤のpHはpH6.8〜7の間ではなく、該インスリンは、該溶解剤および該亜鉛キレート剤の両方なしで投与される該インスリンに比較して、上皮細胞を経る取り込みおよび輸送の速度が増強されている、製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注射用速効型薬物送達インスリン製剤の一般的分野に属する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病の概要
グルコースは、エネルギーを生み出し、生命を維持するために身体のすべての細胞により使用されている単糖である。ヒトは、生き続けるために常時それらの血液中の最小限のレベルのグルコースを必要とする。身体が血糖を産生する主な方法は、食物の消化による。人がこのグルコースを食物の消化により得ていない場合、グルコースは、組織中の貯蔵物から産生され、肝臓により放出される。身体のグルコースレベルは、インスリンにより調節されている。インスリンは、膵臓により自然に分泌されるペプチドホルモンである。インスリンは、グルコースが生命維持に必要なエネルギー源を供給するために体細胞に入ることを助ける。
【0003】
健常者が食事を始めるとき、膵臓が第1相インスリン分泌と呼ばれるインスリンの自然スパイク(natural spike)を分泌する。第1相インスリン分泌は、食物の消化により血液中に入ってくるグルコースを処理するのに十分なインスリンを供給することに加えて、食物の消化が起こっている間にグルコースを産生することを停止させるための肝臓へのシグナルとして作用する。肝臓がグルコースを産生しておらず、消化によるグルコースを処理するのに十分なさらなるインスリンが存在するため、健常者の血糖値は比較的に一定のままであり、それらの血糖値は高くなりすぎることはない。
【0004】
糖尿病は、異常に高いレベルの血糖及び不十分なレベルのインスリンによって特徴づけられる。2つの主要なタイプの糖尿病、すなわち1型と2型が存在する。1型糖尿病において、身体はインスリンを産生しない。2型糖尿病の初期段階において、膵臓はインスリンを産生するが、身体は適切な時点にインスリンを産生しないか、又は体細胞はインスリンを無視する(インスリン抵抗性として公知の状態)。
【0005】
任意の他の症状が存在する前でさえ、2型糖尿病の最初の影響の1つは、食事誘発性の第1相インスリン分泌の喪失である。第1相インスリン分泌が存在しない場合、肝臓は、グルコースを産生することを停止させるそのシグナルを受けない。結果として、肝臓は、身体が食物の消化により新たなグルコースを産生し始めるときにグルコースを産生し続ける。結果として、糖尿病患者の血糖値は、高血糖として公知の状態である、食後に高すぎる状態になる。高血糖は、グルコースを血液中の特定のタンパク質に異常に結合させ、小血管の完全性を維持するという正常な機能を果たすタンパク質の能力を妨害する。毎回の食事の後に起こる高血糖により、毛細血管(tiny blood vessels)は、最終的に崩壊し、漏れる。高血糖の長期有害作用は、失明、腎臓機能の喪失、神経損傷及び感覚の喪失並びに四肢の切断を必要とする可能性がある末梢における不十分な循環を含む。
【0006】
食後2時間から3時間の間に、未治療糖尿病患者の血糖は非常に高くなるため、膵臓は異常に大量のインスリンを分泌するシグナルを受ける。初期2型糖尿病を有する患者において、膵臓は、まだ反応し、この大量のインスリンを分泌することができる。しかし、これは、消化がほぼ終了し、血糖値が低下し始めるときに起こる。この異常に大量のインスリンは、2つの好ましくない作用を有する。第1に、それは、既に障害が起きた膵臓に対して過度の極端な要求を課し、これが、その急速な悪化につながり、最終的に膵臓がインスリンを産生することをできなくする可能性がある。第2に、消化後のあまりにも多くのインスリンは、体重増加をもたらし、これが、疾患状態をさらに悪化させる可能性がある。
【0007】
糖尿病の現在の治療法及びそれらの限界
1型糖尿病患者はインスリンを産生しないので、1型糖尿病の主要な治療法は、日常の集中的なインスリン療法である。2型糖尿病の治療法は、一般的に食事及び運動の管理から開始する。短期間では有益であるが、食事及び運動のみによる治療は、2型糖尿病を有する大多数の患者に対する有効な長期の解決策ではない。食事及び運動がもはや十分でない場合、治療は、種々の非インスリン経口薬から始める。これらの経口薬は、膵臓により産生されるインスリンの量を増加させることにより、インスリン感受性細胞の感受性を増加させることにより、肝臓のグルコース産出量を減少させることにより、又はこれらのメカニズムのある組合せにより、作用する。これらの治療法は、疾患を効果的に管理するそれらの能力が限られており、一般的に、体重増加及び高血圧などの重大な副作用を有する。非インスリン療法に限界があるため、2型糖尿病を有する多くの患者は、時間の経過とともに悪化し、それらの代謝を維持するためのインスリン療法を最終的に必要とする。
【0008】
インスリン療法は、糖尿病を治療するために80年間以上にわたり使用されている。この療法は、毎日インスリンの数回の注射を適用することを通常必要とする。これらの注射は、1日1回又は2回の長時間作用性基礎注射及び食事時の迅速作用性インスリンの注射を適用することからなる。この治療方法は、有効と認められているが、限界を有する。第1に、不便さと針の痛みのため、患者は一般的に自分でインスリンを注射することを好まない。結果として、患者は、処方された治療方法を十分に遵守しない傾向があり、しばしば薬物治療を不適切に受けることとなる。
【0009】
より重要なことに、適切に投与されている場合でさえ、インスリン注射は、インスリンの自然の時間−作用プロファイルを再現しない。特に、糖尿病を有さない人における第1相インスリン分泌の自然スパイクは、食物からのグルコースが血液中に入ってから数分以内の血中インスリンレベルの上昇をもたらす。これに反して、注射されたインスリンは、血液に徐々に入り、ピークのインスリンレベルは、レギュラーヒトインスリンの注射後80〜100分以内に生じる。
【0010】
可能な解決策は、食物を食べる直前に糖尿病患者の静脈内にインスリンを直接注射することである。インスリンの静脈内注射の試験において、患者は、食事後3〜6時間にわたる血糖のより良好なコントロールを示した。しかし、様々な医学的理由のため、毎回の食事の前のインスリンの静脈内注射は、実際的な療法ではない。
【0011】
インスリン治療の重要な改善の1つは、1990年代におけるインスリンリスプロ(IL)、インスリンアスパルト(IA)及びインスリングルリシン(IG)などの速効型インスリン類似体の導入であった。しかし、速効型インスリン類似体を用いた場合でさえ、最高インスリンレベルは、一般的に注射後50〜90分以内に生じる。速効型インスリン類似体は第1相インスリン分泌を十分に模倣するものではないため、インスリン療法を用いる糖尿病患者は、食事の開始時に存在する不十分なレベルのインスリン及び食間に存在する過剰なインスリンを有し続ける。このインスリンの送達の遅延は、食事の開始後の初期の高血糖をもたらし得る。さらに、食間の過剰なインスリンは、低血糖として公知の異常に低いレベルの血糖をもたらし得る。低血糖は、知力の喪失、精神錯乱、心拍数の増加、空腹感、発汗及び脱力をもたらし得る。非常に低い血糖値では、低血糖は、意識喪失、昏睡及び死亡さえをももたらし得る。米国糖尿病協会、すなわちADAによれば、インスリン使用糖尿病患者は、年間平均1.2件の重篤な低血糖事象を経験し、それらの事象の多くが患者による病院救急処置室への来訪を必要とする。
【0012】
血液へのインスリン送達の時間的経過が全体的なグルコース調節にそのような重要な役割を果たしているため、速効型インスリン類似体より速やかに血液に到達する注射用インスリンであるインスリンの重要なニーズがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、本発明の目的は、改善された安定性及び作用の速やかな発現を有する速効型注射用インスリン組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本明細書では、改善された安定性及び作用の速やかな発現を有する注射用インスリン製剤を記載する。この製剤は、皮下、皮内又は筋肉内投与用であってよい。好ましい実施形態において、製剤を皮下注射により投与する。製剤は、インスリンを、キレート剤及び溶解剤並びに場合によって追加の賦形剤と組み合わせて含有する。好ましい実施形態において、製剤は、ヒトインスリン、EDTAなどの亜鉛キレート剤、及びクエン酸又はクエン酸ナトリウムなどのその塩などの溶解剤を含有する。これらの製剤は、皮下注射により投与するとき、血流中に速やかに吸収される。実施例で、pHを生理的pHに上昇させ、インスリンの溶解及び速やかな取込みを実現できることが実証されている。
【0015】
一実施形態において、インスリンは、滅菌済みバイアル中の乾燥粉末として提供される。投与の直前又は投与時点に、これを、水などの薬学的に許容されるキャリアを含有する希釈剤並びに場合によってEDTAなどの亜鉛キレート剤及び/又はクエン酸などの溶解剤と混合する。他の実施形態において、通常pHが約4のインスリンを、解凍によって使える状態である凍結混合物として保存する。好ましい実施形態において、インスリンを、4℃で保存されているpH7の水溶液として提供する。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
インスリン、解離剤及び亜鉛キレート剤を含み、生理的pHを有し、澄明水溶液であるインスリン製剤。
(項目2)
前記キレート剤がエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、EGTA、クエン酸三ナトリウム(TSC)、アルギン酸、アルファリポ酸、ジメルカプトコハク酸(DMSA)、CDTA(1,2−ジアミノシクロヘキサン四酢酸)からなる群から選択される、項目1に記載の製剤。
(項目3)
前記キレート剤がエチレンジアミン四酢酸(EDTA)である、項目2に記載の製剤。
(項目4)
前記溶解剤が酢酸、アスコルビン酸、クエン酸、グルタミン酸、コハク酸、アスパラギン酸、マレイン酸、フマル酸及びアジピン酸からなる群から選択される酸又はその塩である、項目1に記載の製剤。
(項目5)
前記解離剤がクエン酸又はクエン酸ナトリウムである、項目4に記載の製剤。
(項目6)
前記pHが7から7.5の間である、項目1に記載の製剤。
(項目7)
インスリン溶液のpHを約pH4から生理的pHに上昇させることにより調製される、項目1に記載の製剤。
(項目8)
前記インスリンがヒトインスリン、インスリン類似体及びそれらの組合せからなる群から選択される、項目1に記載の製剤。
(項目9)
前記インスリンが組換えヒトインスリンである、項目8に記載の製剤。
(項目10)
インスリン、解離剤及び亜鉛キレート剤を含み、該解離剤が塩であるインスリン製剤。
(項目11)
前記キレート剤がエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、EGTA、クエン酸三ナトリウム(TSC)、アルギン酸、アルファリポ酸、ジメルカプトコハク酸(DMSA)、CDTA(1,2−ジアミノシクロヘキサン四酢酸)からなる群から選択される、項目10に記載の製剤。
(項目12)
前記キレート剤がエチレンジアミン四酢酸(EDTA)である、項目10に記載の製剤。
(項目13)
前記溶解剤が酢酸塩、アスコルビン酸塩、クエン酸塩、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩及びアジピン酸塩並びにI族金属又はII族金属からなる群から選択される塩である、項目10に記載の製剤。
(項目14)
前記溶解剤がアスコルビン酸、クエン酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸及びアジピン酸のナトリウム塩又はカリウム塩からなる群から選択される、項目13に記載の製剤。
(項目15)
前記解離剤がクエン酸ナトリウムである、項目13に記載の製剤。
(項目16)
pHが7から7.5の間である、項目10に記載の製剤。
(項目17)
pHが約4である、項目10に記載の製剤。
(項目18)
前記インスリンがヒトインスリン、インスリン類似体及びそれらの組合せからなる群から選択される、項目10に記載の製剤。
(項目19)
前記インスリンが組換えヒトインスリンである、項目10に記載の製剤。
(項目20)
前記インスリンが第1の容器に入った乾燥粉末として提供され、前記キレート剤及び溶解剤の少なくとも1つが希釈剤を含有する第2の容器に入った状態で提供される、項目1に記載の製剤。
(項目21)
前記インスリンが第1の容器に入った乾燥粉末として提供され、前記キレート剤及び溶解剤の少なくとも1つが希釈剤を含有する第2の容器に入った状態で提供される、項目10に記載の製剤。
(項目22)
糖尿病の治療用の薬学的に許容される凍結製剤として提供される、項目1に記載の製剤。
(項目23)
糖尿病の治療用の薬学的に許容される凍結製剤として提供される、項目10に記載の製剤。
(項目24)
4℃での澄明水溶液として提供される、項目1に記載の製剤。
(項目25)
4℃での澄明水溶液として提供される、項目10に記載の製剤。
(項目26)
項目1により定義される、インスリンと、亜鉛キレート剤及びHClと組み合わされたインスリンと比較して上皮細胞を経るインスリンの取込み及び輸送を増大させるのに有効な量の溶解剤及び亜鉛キレート剤とを含む、有効量の注射用インスリン製剤を注射することを含む、糖尿病個体を治療する方法。

【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、露出表面電荷及び電荷を遮へいするための適切なサイズの分子(「溶解剤及びキレート剤」)により表面を覆われた状態を示すインスリンの3次元概略図である。
図2図2は、0.1ミクロンフィルター16の4〜5層の不死化口腔上皮細胞14を経るドナーチャンバー12からレシーバーチャンバー18内へのインスリンの吸収を測定するために用いるトランスウエル装置10の概略図である。
図3図3aは、溶解剤として選択した酸の関数としての0.45mgEDTA/mlを含む及び含まない、図2のトランスウエルシステムにおける口腔上皮細胞を経るin vitroでのインスリン輸送(マイクロ単位での累積インスリン)を比較したグラフである。EDTAは0.45mg/mLと一定であったが、酸濃度は次のように異なっていた:アスパラギン酸(0.47mg/mL)、グルタミン酸(0.74mg/mL)、コハク酸(0.41mg/mL)、アジピン酸(0.73mg/mL)及びクエン酸(0.29mg/mL及び0.56mg/mL)、pH範囲3.2〜3.8。比較分析のために2つの時間(10及び30分)を選択した。結果は、平均値±測定標準誤差(n=4)である。図3bは、溶解剤として選択した酸の関数としての0.45mgEDTA/mlを含む及び含まない、図2のトランスウエルシステムにおける口腔上皮細胞を経るin vitroでのインスリン輸送(マイクロ単位での累積インスリン)を比較したグラフである。EDTAは0.45mg/mLと一定であったが、酸濃度は次のように異なっていた:マレイン(0.32mg/mL)、フマル酸(1.28mg/mL)及びシュウ酸(0.32mg/mL)、pH範囲2〜3。比較分析のために2つの時間(10及び30分)を選択した。結果は、平均値±測定標準誤差(n=4)である。
図4図4aは、0.56mgEDTA/mlを含み及び含まず、次の当モル(1.50×10−3モル)濃度の酸:アスパラギン酸(0.20mg/mL)、グルタミン酸(0.22mg/mL)及びクエン酸(0.29mg/mL)を含む、異なる溶解剤を比較した、図2に示したトランスウエルシステムにおける口腔上皮細胞を経るin vitroでのインスリン輸送(マイクロ単位での累積インスリン)のグラフである。比較分析のために2つの時間(10及び30分)を選択した。図4bは、0.56mgEDTA/mlを含み及び含まず、次の当モル(1.50×10−3モル)濃度の酸:1.80mg/mLのクエン酸を含む、異なる溶解剤を比較した、図2に示したトランスウエルシステムにおける口腔上皮細胞を経るin vitroでのインスリン輸送(マイクロ単位での累積インスリン)のグラフである。比較分析のために2つの時間(10及び30分)を選択した。
図5図5は、異なるキレート剤の有効性を比較するための図2のトランスウエルシステムを用いた口腔上皮細胞を経るin vitroでのインスリン輸送のグラフである。図5は、同じモル濃度(4.84×10−3モル)の異なるキレート剤を加えたグルタミン酸、クエン酸又はHClを含む溶液からの口腔上皮細胞を経たインスリン(1mg/mL)の輸送を測定したグラフである(累積インスリン、マイクロモル)。キレート剤は、キレート剤なし(対照)、EDTA、EGTA、DMSA、CDTA及びTSCであった。
図6図6は、平均グルコース注入速度(GIR)/kgとして測定された、IL(12U)及びRHI(12U)と比較したヒト被験体におけるクエン酸及びEDTA(12U)を用いて調製したインスリンのin vivoでの薬力学的効果のグラフである。
図7図7は、RHIと比較した、ヒトにおけるクエン酸及びEDTAを用いて調製したインスリンのin vivoでの薬物動態学的効果、すなわちインスリン濃度(マイクロ単位/ml)の経時的(分)推移のグラフである。平均値(±SEM、n=10)。インスリンの用量は12U/被験体であった。
図8図8は、血糖(mg/dl)を経時的(分)にプロットした、RHI及びILと比較した、16例の2型糖尿病患者におけるクエン酸及びEDTAを用いて調製したインスリンのin vivoでの薬力学のグラフである。患者試験に用いた投与量は、それらの現在のインスリン療法に基づいて各患者について調節した患者特有のものであった。
図9-1】図9Aは、0.17、0.51、1.68及び3.62mg/mlの濃度のRHIの沈降係数のグラフである。図9Bは、0.15、0.56、1.75及び3.59mg/mlの濃度のILの沈降係数のグラフである。
図9-2】図9Cは、0.16、0.56、1.66及び3.56mg/mlの濃度のIAの沈降係数のグラフである。図9Dは、0.15、0.55、1.72及び3.48mg/mlの濃度のCE100−4の沈降係数のグラフである。
図10-1】図10Aは、0.18、0.55及び1.72mg/mlの濃度でのRHIの沈降係数を負荷濃度に対して正規化したc(s)分布のグラフである。図10Bは、0.17、0.57及び1.82mg/mlの濃度でのILの沈降係数を負荷濃度に対して正規化したc(s)分布のグラフである。
図10-2】図10Cは、0.19、0.54及び1.84mg/mlの濃度でのIAの沈降係数を負荷濃度に対して正規化したc(s)分布のグラフである。図10Dは、0.18、0.40及び0.84mg/mlの濃度でのCE100−4を沈降係数の負荷濃度に対して正規化したc(s)分布のグラフである。
図11図11は、0.18、0.57、1.74及び3.52mg/mlの濃度での対照インスリンpH7の沈降係数を負荷濃度に対して正規化したc(s)分布のグラフである。
図12図12は、CE100−4、CE100−7及びCES100−7の希釈度の関数としてのインスリン平均粒径(nm)のグラフである。
図13図13は、糖尿病ミニブタにおけるELISAによるインスリン濃度(μ単位/ml)の経時的(分)な推移のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書で記載する注射用ヒトインスリンのインスリン製剤は、食事の直前又は食事の終了時点に投与する。好ましい実施形態において、製剤は、組換えヒトインスリンと、FDAにより安全と一般的に見なされている特定の成分とを組み合わせている。製剤は、現在市販されている速効型インスリン類似体より速く血液中に吸収されるように設計されている。インスリンの製剤の重要な特徴の1つは、インスリンがインスリンの6分子形態、すなわち六量体形態からインスリンの単量体形態又は二量体形態に解離又は分離することを可能にし、六量体形態への再会合を阻止することである。人体は、インスリンが体内に吸収されてその望ましい生物学的効果をもたらすことができる前に、インスリンが単一分子の形態であることを要求するので、単量体形態又は二量体形態を有利にすることによって、この製剤が血液中へのインスリンのより速やかな送達を可能にすると考えられる。注射用に販売されているほとんどのヒトインスリンは、六量体形態である。インスリン六量体は最初に解離して、二量体、次に単量体を形成しなければならないので、これが、身体が吸収することをより困難にしている。
【0018】
I.定義
本明細書で用いているように、「インスリン」は、特に指定しない限り、ヒト若しくは非ヒト組換え、精製又は合成インスリン若しくはインスリン類似体を意味する。
【0019】
本明細書で用いているように、「ヒトインスリン」は、天然源から分離されたか、又は遺伝子改変した微生物により産生されたかにかかわりなく、膵臓により分泌されるヒトペプチドホルモンである。本明細書で用いているように、「非ヒトインスリン」は、ヒトインスリンと同じであるが、ブタ又はウシなどの動物源からのものである。
【0020】
本明細書で用いているように、インスリン類似体は、膵臓により分泌されるインスリンと異なるが、天然インスリンと同じ作用を果たすために身体に利用できる改変インスリンである。基礎をなすDNAの遺伝子操作により、インスリンのアミノ酸配列を変化させて、そのADME(吸収、分布、代謝及び排泄)特性を変化させることができる。例としては、インスリンリプロ、インスリングラルギン、インスリンアスペルト、インスリングルリシン、インスリンデテミルなどがある。インスリンは、化学的に、例えば、アセチル化により修飾することもできる。本明細書で用いているように、ヒトインスリン類似体は、ヒトインスリンと同じ生物学的作用を果たすことができる改変ヒトインスリンである。
【0021】
本明細書で用いているように、「キレート剤(chelator)」又は「キレート化剤(chelating agent)」は、亜鉛イオンに対する1つ以上の結合を形成する能力を有する化合物を意味する。結合は、一般的にイオン結合又は配位結合である。キレート剤は、無機又は有機化合物であってよい。キレート錯体は、金属イオンがキレート化剤の2つ以上の原子に結合している錯体である。
【0022】
本明細書で用いているように、「可溶化剤」は、溶媒中の物質、例えば、水溶液中のインスリンの溶解度を増加させる化合物である。可溶化剤の例としては、界面活性剤(TWEENS(登録商標));エタノールなどの溶媒、モノステアリン酸オキシエチレンなどのミセル形成化合物;及びpH調整剤などがある。
【0023】
本明細書で用いているように、「溶解剤」は、インスリン及びEDTAに加えたとき、下の実施例で記載する上皮細胞トランスウエルプレートアッセイを用いて測定される、同じpHのHCl及びEDTAと比較してインスリンの輸送及び吸収を増加させる酸又は塩である。HClは、溶解剤でなくて、可溶化剤であり得る。クエン酸及びクエン酸ナトリウムは、このアッセイで測定するとき溶解剤である。これは、一部が六量体からの解離の間に露出する、インスリンの電荷を遮へいすることによって少なくとも一部分達成されると考えられる。
【0024】
本明細書で用いているように、「賦形剤」は、インスリンのキャリアとして用いられる、又は製品が製造される過程を促進するのに用いられる、キレート剤又は溶解剤以外の不活性物質である。そのような場合に、活性物質は、賦形剤に溶解するか、又は賦形剤と混合する。
【0025】
本明細書で用いているように、「生理的pH」は、6.8から7.6まで、好ましくは7から7.5まで、最も好ましくは約7.4である。
【0026】
本明細書で用いているように、VIAJECT(商標)は、クエン酸などの溶解剤及びEDTAなどのキレート剤を用いて製剤化した組換えヒトインスリンの商品名である。Viaject 25U/mL(CE25−4)は、25U/mL レギュラー組換えヒトインスリン、1.8mg/mL クエン酸、1.8mg/mL EDTA二ナトリウム、0.82% NaCl(等張性)及び3mg/mL m−クレゾールを含有する。それは、凍結保存されている水溶液として、又は乾燥粉末インスリン及び希釈剤(その少なくとも1つがクエン酸及びEDTAを含有する)からなる2部キットで提供される。再構成混合物及び凍結溶液両方のpHは、約pH4である。Viaject 100U/mL(CE100−4)は、100U/mL レギュラー組換えヒトインスリン、1.8mg/mL クエン酸、1.8mg/mL EDTA二ナトリウム、22mg/mL グリセリン、3mg/mL m−クレゾールを含有する。これも凍結水溶液又は乾燥粉末状インスリン及び希釈剤からなる2部キットとして提供される。再構成混合物及び凍結溶液の両方のpHは、約4である。Viaject 100U/mL(CE100−7)は、100U/mL レギュラー組換えヒトインスリン、1.8mg/mL クエン酸、1.8mg/mL EDTA二ナトリウム、22mg/mL グリセリン、3mg/mL m−クレゾールを含有する。これは、4℃で保存することができる約7.4のpHを有する水溶液として提供される。酸塩を含むVIAject(CSE100−7)は、両方が1.8mg/mLのEDTAとクエン酸三ナトリウムを水に加え、次に100U/mLのインスリンを加え、pHを6に低下させ、次にpHを7.4に上昇させることにより、作製する。
【0027】
製剤
製剤は、インスリン、キレート剤及び溶解剤(単数又は複数)並びに場合によって1つ以上の他の賦形剤を含む。好ましい実施形態において、製剤は、皮下投与に適しており、脂肪皮下組織中に速やかに吸収される。溶解剤及びキレート剤の選択、溶解剤及びキレート剤の両方の濃度並びに製剤が調整されるpHは、すべてがシステムの有効性に対する著しい影響を有する。多くの組合せが有効性を有するが、好ましい実施形態は、安全性、安定性、規制プロファイル及び性能を含む多くの理由のために選択される。
【0028】
好ましい実施形態において、製剤成分の少なくとも1つが活性剤の電荷を遮へいするように選択される。これは、インスリンの膜透過輸送を促進し、それにより、インスリンの作用の発現及び生物学的利用能の両方を増加させる。成分はまた、水性媒体に速やかに溶解する組成物を構成するように選択される。好ましくは、インスリンは、吸収され、血漿に速やかに輸送され、作用の速やかな発現をもたらす(好ましくは投与後約5分以内に始まり、投与後約15〜30分目に最大に達する)。
【0029】
EDTAなどのキレート剤は、インスリン中の亜鉛をキレートし、インスリン溶液から亜鉛を除去する。これにより、インスリンにその二量体及び単量体形態をとり、六量体の状態への再会合が妨害される。実施例で記載する試験で、解離しつつある六量体の全体的なサイズは亜鉛錯体化インスリン六量体より大きく、その後より小さい単位を形成する。六量体、二量体及び単量体は、濃度駆動平衡状態で存在するので、単量体が吸収されるとき、より多くの単量体が生ずる。したがって、インスリン単量体が皮下組織を通して吸収されるとき、さらなる二量体が分解されて(dissemble)、より多くの単量体を形成する。完全に解離した単量体形態は、単量体形態の分子量の1/6未満の分子量を有し、それにより、インスリンの吸収の速度と量の両方を著しく増加させる。キレート剤(EDTAなど)及び/又は溶解剤(クエン酸など)がインスリンと水素結合する程度に応じて、それがインスリンの電荷を遮へいし、その膜透過輸送を促進し、それにより、インスリンの作用の発現及び生物学的利用能の両方を増加させる。
【0030】
インスリン
インスリンは、組換えること又は天然源から精製することができる。インスリンは、ヒト又は非ヒトであってよい。ヒトが好ましい。最も好ましい実施形態において、インスリンは、ヒト組換えインスリンである。組換えヒトインスリンは、多くの源から利用可能である。インスリンは、ヒトインスリンのアミノ酸配列に基づくものであってよいが、1つ以上のアミノ酸の差異を有するインスリン類似体、又は化学的に修飾されたインスリン若しくはインスリン類似体であってもよい。
【0031】
インスリンの投与量は、その生物学的利用能及び治療を受ける患者に依存する。インスリンは、一般的にヒトへの投薬につき1.5〜100IU、好ましくは3〜50IUの投与量範囲に含まれる。一般的に、インスリンは、100IUバイアル入りで提供される。
【0032】
溶解剤
特定の酸又はそれらの塩は、図1に示すように、インスリンの電荷を遮へいし、取込み及び輸送を増大させるのは明らかである。溶解剤として有効であるそれらの酸は、下の実施例で記載するトランスウエルアッセイで測定されるように、塩酸を基準として、酢酸、アスコルビン酸、クエン酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸及びアジピン酸を含む。例えば、活性剤がインスリンである場合、好ましい溶解剤はクエン酸である。塩酸及び水酸化ナトリウムは、pH調整用の好ましい剤である。HClは、製剤のいずれかと組み合わせて用いることができるが、溶解剤ではない。酸の塩は、酢酸ナトリウム、アスコルビン酸塩、クエン酸塩、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩及びアジピン酸塩を含む。有機酸の塩は、金属水酸化物、金属酸化物、金属炭酸塩及び金属重炭酸塩、金属アミン、並びに塩化アンモニウム、炭酸アンモニウム等などのアンモニウム塩基を含むが、これらに限定されない様々な塩基を用いて調製することができる。適切な金属は、一価及び多価金属イオンを含む。例としての金属イオンは、リチウム、ナトリウム及びカリウムなどのI族金属、バリウム、マグネシウム、カルシウム及びストロンチウムなどのII族金属、並びにアルミニウムなどのメタロイドを含む。多価金属イオンは、2つ以上のカルボン酸基と同時に錯体を形成できるので、複数のカルボン酸基を含有する有機酸が望ましい場合がある。
【0033】
溶解剤の範囲は、9.37×10−4Mから9.37×10−2Mクエン酸の間でのインスリン及びEDTAと組み合わされたクエン酸の有効量に対応する。
【0034】
キレート剤
好ましい実施形態において、亜鉛キレート剤をインスリンと混合する。キレート剤は、イオン性又は非イオン性であってよい。適切なキレート剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、EGTA、アルギン酸、アルファリポ酸、ジメルカプトコハク酸(DMSA)、CDTA(1,2−ジアミノシクロヘキサン四酢酸)、クエン酸三ナトリウム(TSC)を含む。塩酸は、pHを調整するのにTSCとともに、また溶解剤であるクエン酸の形成を生じさせる工程に用いられる。
【0035】
好ましい実施形態において、キレート剤はEDTAである。キレート剤は、インスリンからの亜鉛を捕捉し、それにより、インスリンの二量体形態を六量体形態より有利にし、投与部位の周囲の組織(例えば、粘膜又は脂肪組織)によるインスリンの吸収を促進する。さらに、キレート剤の水素は、活性剤に結合し、それにより、インスリン単量体の電荷の遮へいを促進し、インスリン単量体の膜透過輸送を促進し得る。
【0036】
キレート剤の範囲は、2.42×10−4Mから9.68×10−2M EDTAの間でのインスリン及びクエン酸と組み合わされたEDTAの有効量に対応する。
【0037】
賦形剤
薬学的組成物は、薬学的に用いることができる調製物への活性化合物の処理を促進する賦形剤及び助剤を含む1つ以上の生理的に許容されるキャリアを用いて従来の方法で処方することができる。薬物の処方は、例えば、Hoover, John E.、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Co.、Easton、Pennsylvania(1975年)並びにLiberman, H. A.及びLachman, L.編、Pharmaceutical Dosage Forms、Marcel Decker、New York、N.Y.(1980年)に記載されている。
【0038】
好ましい実施形態において、水性媒体への速やかな溶解を促進するために、1つ以上の可溶化剤をインスリン薬とともに含める。適切な可溶化剤は、ポリソルベート、グリセリン及びポロキサマー類などの湿潤剤、非イオン性及びイオン性界面活性剤類、食用酸類及び食用塩基類(例えば、重炭酸ナトリウム)並びにアルコール類並びにpH調節用の緩衝塩類を含む。
【0039】
安定化剤は、例として酸化反応を含む薬物分解反応を抑制又は妨害するために用いる。多くの安定化剤を用いることができる。適切な安定化剤は、セルロース及びセルロース誘導体などの多糖類、並びにグリセロールなどの単純アルコール類;フェノール、m−クレゾール及びメチルパラベンなどの静菌剤;塩化ナトリウム、グリセロール及びグルコースなどの等張剤;例えば、天然レシチン類(例えば、卵黄レシチン又は大豆レシチン)及び合成又は半合成レシチン類(例えば、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン又はジステアロイルホスファチジルコリン)などのレシチン類;ホスファチジン酸類;ホスファチジルエタノールアミン類;ジステアロイルホスファチジルセリン、ジパルミトイルホスファチジルセリン及びジアラキドイルホスファチジルセリンなどのホスファチジルセリン類;ホスファチジルグリセロール類;ホスファチジルイノシトール類;カルジオリピン類;スフィンゴミエリン類を含む。一例として、安定化剤は、グリセロール、静菌剤及び等張剤の組合せであってよい。
【0040】
II.製剤を製造する方法
注射製剤は、インスリン、キレート剤及び溶解剤を含有する。好ましい実施形態において、注射製剤は、インスリン、EDTA、クエン酸、食塩水及び/又はグリセリンを含有する。
【0041】
一実施形態において、皮下注射製剤は、食塩水及びグリセリン、クエン酸並びにEDTAを混合して溶液を作り、その溶液(「希釈剤」と呼ぶ)を滅菌することによって製造する。インスリンは、滅菌水に別個に加えて、溶液を作り、ろ過し、指定された量を多くの別個の滅菌済み注射ビンのそれぞれに入れる。インスリン溶液を凍結乾燥して、粉末を形成させ、その安定性を保持するために希釈剤と別個に保存すべきである。投与前に、希釈剤をインスリン注射ビンに加える。所定の量のインスリンを患者に皮下注射した後、残りのインスリン溶液は、好ましくは冷凍により保存することができる。
【0042】
他の実施形態において、インスリンを希釈剤、pH4と混合し、滅菌ろ過して複数回使用バイアル又はカートリッジに入れ、使用前に凍結する。
【0043】
好ましい実施形態において、インスリンをバイアル又はカートリッジ中pH7.0の水溶液として調製し、4℃で保存する。
【0044】
III.製剤を使用する方法
製剤は、皮下又は筋肉内注射により投与することができる。製剤は、全身送達のために速やかに吸収され、血漿に輸送されるように設計されている。
【0045】
活性剤としてのインスリンを含有する製剤は、食事前又は食事中に1型又は2型糖尿病患者に投与することができる。速やかな吸収のため、組成物は、肝臓におけるグリコーゲンのグルコースへの変換を停止させ、それにより、糖尿病の合併症の主な原因であり、2型糖尿病の最初の症状である高血糖を予防する。現在入手できるヒトインスリンの標準的な皮下注射剤は、インスリンは吸収されるのが遅すぎて肝臓におけるグルコースの産生を停止させることができないため、所望とは言えない効果を得るために摂食の約1/2〜1時間前に投与しなければならない。さらに、疾患の進行における十分に早期に投与する場合、皮下インスリン組成物は、2型糖尿病の進行を遅くするか、又は停止させることができる場合がある。
【0046】
低pH製剤の利点は、いずれも非混和性及び沈殿のため他のタイプの市販のインスリンと混合することができない、BYETTA(登録商標)(エクゼナチド)、SYMLIN(登録商標)(酢酸プラムリンチド)及びLANTUS(登録商標)(長時間作用型インスリン類似体)と混合することがきることである。
【0047】
より高いpHのインスリンの利点は、より低いpHのインスリンより保存中安定であることである。
【0048】
本発明は、以下の非限定的な実施例を参照することによりさらに理解される。以下のインスリンを実施例で用いた。
【0049】
HUMULIN(登録商標)(RHI)は、組換えヒトインスリンである。1ミリリットルが100単位のレギュラー組換えヒトインスリン、0.22% m−クレゾール、1.4〜1.8% グリセリン、pH7を含有する。これは、いくつかの供給元から商業的に入手可能である。
【0050】
Eli Lilly製のHUMALOG(登録商標)(IL)(インスリンリスプロ注射剤)は、インスリンB鎖の28位と29位のアミノ酸を逆転させるときに生ずるLys(B28)、Pro(B29)ヒトインスリン類似体である組換えヒトインスリン類似体である。IL注射剤の1ミリリットルがインスリンリスプロ100単位、16mg グリセリン、1.88mg リン酸水素二ナトリウム、3.15mg メタクレゾール、亜鉛イオンが0.0197mgとなるように調整された酸化亜鉛の量、微量のフェノール及び注射用水を含有する。インスリンリスプロは、7.0〜7.8のpHを有する。pHを調整するために塩酸10%及び/又は水酸化ナトリウム10%を加えることができる。1単位のILは、1単位のレギュラーヒトインスリンと同じグルコース低下作用を有するが、その作用は、より速やかであり、持続時間がより短い。
【0051】
NOVOLOG(登録商標)(IA)は、Novo Nordisk A/Sから入手可能な組換えインスリン類似体である。該類似体は、B28位におけるアミノ酸プロリンのアスパラギン酸による単一置換を含み、組換え酵母により産生される。それは、100単位 インスリンアスパルト/ml、16mg/ml グリセリン、1.50mg フェノール/ml、1.72mg メタクレゾール/ml、19.6mg 亜鉛/ml、1.25mg リン酸水素二ナトリウム二水和物/ml、0.58mg 塩化ナトリウム/mlを含み、10%HCl又はNaOHで調整された7.2〜7.6のpHを有する滅菌済み水溶液で提供される。

【0052】
VIAJECT(商標)は、クエン酸及びEDTAを用いて製剤化された組換えヒトインスリンである。Viaject 25U/mL(CE25−4)は、25U/mL レギュラー組換えヒトインスリン、1.8mg/mL クエン酸、1.8mg/mL EDTA二ナトリウム、0.82% NaCl(等張性)及び3mg/mL m−クレゾールを含有する。それは、凍結保存されている水溶液として、又は乾燥粉末インスリン及び希釈剤(その少なくとも1つがクエン酸及びEDTAを含有する)からなる2部キットで提供される。再構成混合物及び凍結溶液の両方のpHは、約pH4である。再構成粉末は、実施例において用いたものである。Viaject 100U/mL(CE100−4)は、100U/mL レギュラー組換えヒトインスリン、1.8mg/mL クエン酸、1.8mg/mL EDTA二ナトリウム、22mg/mL グリセリン、3mg/mL m−クレゾールを含有する。これも凍結水溶液として又は乾燥粉末状インスリン及び希釈剤からなる2部キットとして提供される。再構成混合物及び凍結溶液の両方のpHは、約4である。凍結水溶液のみを分析用遠心分離機データ及びマルバーンに用いた。Viaject 100U/mL(CE100−7)は、100U/mL レギュラー組換えヒトインスリン、1.8mg/mL クエン酸、1.8mg/mL EDTA二ナトリウム、22mg/mL グリセリン、3mg/mL m−クレゾールを含有する。これは、4℃で保存することができる約7.4のpHを有する水溶液として提供される。これは、ブタ試験に用いた。酸塩を含むVIAject(CSE100−7)は、両方が水中1.8mg/mLのEDTA及びクエン酸三ナトリウムと、100U/mL インスリン及びグリセリン(22mg/mL)を用いて調製する。最終pHは、水酸化ナトリウムを用いて7.4に調整する。これは、マルバーン情報に関する最終実施例に用いた。
【実施例】
【0053】
(実施例1)
溶解剤に応じた、上皮細胞トランスウエルアッセイを用いたインスリンの取込み及び輸送のin vitroでの比較
材料及び方法
口腔上皮細胞を、図2に示すように複数(4〜5層)の細胞層が形成されるまでトランスウエルインサートで2週間にわたり増殖させた。適切な溶液をドナーウエルに加え、10分後にレシーバーウエルから試料を除去することにより、輸送試験を行った。溶液は、水、+/−EDTA(0.45mg/ml)、NaCl(0.85重量/容積%)、1mg/ml インスリン及びpHを3.8に維持するために十分な量の酸からなっていた。レシーバーウエル中のインスリンの量をELISAを用いてアッセイした。
【0054】
結果
図3a及び3bに示す結果は、いくつかの酸が上皮細胞を経るインスリンの取込み及び輸送を増大させるのにより有効であることを実証している。これらは、容易に試験し、HClを用いて得られた結果と比較することができ、それにより、任意の酸を試験し、溶解剤(すなわち、HClと比較して取込み及び輸送を増大させる)であるか、否かを決定することができる基準を得ることができる。
【0055】
3.2〜3.8のpH範囲を有する酸を用いて得られた結果を図3aでグループ化する。より強い酸(pH<3)を図3bでグループ化する。
【0056】
結果から、同じ濃度のキレート剤を用いての酸の選択が細胞培養物を経るインスリンの輸送に実質的な影響を有することが確認される。好ましい酸は、クエン酸である。
【0057】
(実施例2)
溶解剤の濃度に応じた、上皮細胞トランスウエルアッセイを用いたインスリンの取込み及び輸送のin vitroでの比較
材料及び方法
実施例1の材料及び方法を異なる濃度の試薬で用いた。試験において、等モル濃度の酸及びキレート剤を加えた。溶液は、水、+/−EDTA(0.56mg/ml)、NaCl(0.85重量/容積%)、1mg/mL インスリン及び酸:アスパラギン酸(0.20mg/mL)、グルタミン酸(0.22mg/mL)又はクエン酸(0.20mg/mL)からなっていた。クエン酸は、キレート剤の存在下及び不存在下で1.8mg/mLというより高い濃度で試験した。このデータは、細胞ドナーチャンバーの投与後の2つの時間、10及び30分について示す。
【0058】
結果
アスパラギン酸(0.20mg/mL)、グルタミン酸(0.22mg/mL)又はクエン酸(0.29mg/mL)を用いて得られた結果を図4aに示す。この場合、キレート剤の添加に関して有意差は認められなかった。
【0059】
これに反して、1.80mg/mLでの、より高い濃度のクエン酸を用いた試験では、その溶液へのキレート剤の添加による有意な増加が示されている(t検定比較、片側)。図4bを参照のこと。これは、取込み及び輸送を最適化するうえで両成分の濃度が重要であることを実証するものである。
【0060】
(実施例3)
キレート剤に応じた、上皮細胞トランスウエルアッセイを用いたインスリンの取込み及び輸送のin vitroでの比較
材料及び方法
口腔上皮細胞を、複数(4〜5層)の細胞層が形成されるまでトランスウエルインサートで2週間にわたり増殖させた。適切な溶液をドナーウエルに加え、10、20及び30分後にレシーバーウエルから試料を除去することにより、輸送試験を行った。
【0061】
溶液は、トランスウエル実験の直前に次の方法で調製した:1.8mg/mlのクエン酸を0.85重量/容積%の食塩水に溶解し、次いで、次のキレート剤の1つをこの溶液に、示す濃度で加えた:1.80mg/mlのEDTA、1.84mg/mlのEGTA、0.88mg/mlのDMSA及び1.42mg/mlのTSC。CDTAはその液体形態で用いたため、クエン酸をCDTAに直接加えた。これらの場合のそれぞれにおいて、キレート剤の濃度は、4.84×10−3モルで一定であった。
【0062】
インスリンを次に1mg/mlで加え、必要な場合、pHを3.8に再調整した。pH調整用にHClのみを用いた試料の対照セットを比較のために含めた。0.2mlの各溶液をドナーウエルに加えることにより、トランスウエル実験を行った。
【0063】
レシーバーウエル中のインスリンの量をELISAを用いてアッセイした。
【0064】
結果
30分のインスリンデータのグラフを図5に示す。TSC(クエン酸三ナトリウム)を用いて得られた結果と比較したときを除いて、クエン酸又はグルタミン酸を用いた場合に細胞を経て送達された有意により多くのインスリンが存在した。TSCの場合、pH調整のためにHClを用いた。pHの調整によりクエン酸が発生したが、これにより、これらの結果が説明される。
【0065】
これらの結果により実証されたように、取込み及び輸送の増大は、キレート剤の選択に依存する。
【0066】
(実施例4)
ブタにおけるクエン酸をベースとするインスリン製剤中のキレート剤の前臨床評価
材料及び方法
公表された試験、A. Plum、H. Agerso及びL. Andersen、Pharmacokinetics of the rapid−acting insulin analog,insulin aspart,in rats,dogs,and pigs,and pharmacodynamics of insulin aspart in pigs.Drug Metab. Dispos.,28巻(2号)、155〜60頁(2000年)と調和して、消失の遅延は注射部位からの吸収がより遅いことを意味するので、消失半減期がインスリンの吸収の有効な決定因子であると決定した。したがって、ミニブタ試験の非コンパートメント解析を行って、PK及びPDパラメーター、特に消失半減期を調査した。
【0067】
糖尿病ブタにインスリンの4つの製剤のうちの1つを皮下注射した。3つの製剤は、キレート剤(EDTA、EGTA又はTSC)を含んでおり、第4の対照は、レギュラーヒトインスリンRHIのみを含み、キレート剤を含んでいなかった。クエン酸(1.8mg/ml)をすべてのキレート剤製剤における酸として用い、NaCl及びm−クレゾールをすべての場合に等張性及び製剤の無菌性のために加えた。キレート剤は、すべて4.84×10−3モルという同じモル濃度であった。
【0068】
ブタには、一夜絶食させ、EDTAを含有する0.125U/kgヒトインスリン(n=3)又はEGTA若しくはTSCを含有する0.08U/kgヒトインスリン(n=2)の用量を皮下投与した。より高用量では極度の血糖の低下のため、用量を低くした。血糖及びインスリンレベルを投薬後8時間までのすべての時点で測定した。
【0069】
薬物動態モデリングは、均一重み付きの非コンパートメントモデルを用いてWin Nonlinを用いて行われた。消失半減期を以下の表1で比較した。
【0070】
表1:キレート剤に応じたブタにおける血糖の比較
【0071】
【表1】
ブタにおけるこのパイロット試験におけるレギュラーヒトインスリンの消失半減期(120分)は、文献にみられるものと一致しており、データをバリデートするためのテストポイントとして用いた。これは静脈投与後よりかなり長いので、注射後の注射部位からの持続的な遅い吸収があることがこれによって確認される。クエン酸製剤中のキレート剤は、このパラメーターの低下を明らかに示しており、これらの3つのキレート剤が、程度は異なるが、レギュラーヒトインスリンの吸収を増大させるのに有効であることが実証されている。
【0072】
(実施例5)
ヒト臨床試験におけるEDTAクエン酸インスリン製剤とレギュラーヒトインスリンとの比較
材料及び方法
本試験の目的は、クエン酸及びEDTAと組み合わせてインスリンを含有する試験製剤(「CE25−4」)の薬力学的(PD)特性を評価することであった。5回の正常血糖グルコースクランプ(Biostator;標的血糖90mg/dl)を10例の絶食健常志願者(平均年齢40歳(年齢範囲20〜62歳);BMI22.5(19.2〜24.9)kg/m)において実施した。固定された治療順序でのクロスオーバーデザインを用いて、12IUのレギュラーインスリン及び12IUのCEインスリン製剤を腹部に皮下注射した。
【0073】
結果
結果を図6及び7に示す。CE25−4のSC注射は、グルコース消費レギュラーヒトインスリンの有意により速やかな上昇をもたらした時間−作用プロファイルをもたらした(図6)。平均薬物動態データは、PD結果を確認するものとなっている(図7)。
【0074】
本試験は、レギュラーヒトインスリンへのクエン酸及びEDTAの添加が、レギュラーインスリン単独と比較して最高濃度までのより速い到達時間(図7)及び作用のより速やかな発現(図6)によって実証されるように、インスリンの吸収速度を改善することを示している。
【0075】
(実施例6)
1型糖尿病患者における食事の直前に皮下注射した場合のCEインスリン、インスリンリプロ及びレギュラーヒトインスリンの薬物動態及び薬力学
背景及び目的:
本試験の目的は、1型糖尿病患者における標準食後の食後血糖(BG)の逸脱に対するCE25−4、RHI及びILの作用を測定することであった。
【0076】
材料及び方法
9例の患者(男性5例及び女性4例;年齢40±10歳、BMI24.0±2.0kg/m)のBGを、食事摂取前のグルコースクランプにより安定化させた(標的BG120mg/dl)。グルコースの注入は、標準食及びインスリン投薬の前に止めた。固定された治療順序でのクロスオーバー試験デザインを用いて、VIAject(商標)(CE25−4)、IL又はRHIの同一患者固有の用量を食事の直前にs.c.注射した。その後、食後血糖逸脱を8時間にわたり連続的にモニターし、BGが60mg/dl未満であった場合にはグルコース注入を再開した。試験中、血漿インスリンレベルを測定した。
【0077】
結果
平均値±標準偏差として表2に示す結果は、食事、レギュラーヒトインスリン、インスリン+クエン酸及びEDTA(CE)並びにリスプロ後の2型糖尿病患者への皮下注射後のインスリンTmaxを比較したものである。表3における結果は、同じ被験者の血糖を比較したものである。
【0078】
表2:インスリンTmax(分)の比較
【0079】
【表2】
*p<.001、対応のあるt検定
表3:インスリン薬物動態の比較 血糖
【0080】
【表3】
*p<0.05、対応のあるt検定
注射後3〜8時間の低血糖事象の総数(グルコース注入を必要とする時間)は、RHI製剤で13、IL製剤で11、CE25−4製剤で4であった。この時間中の低血糖を予防するために注入したグルコースの平均総量は、CE25−4を用いた場合よりRHIでは6倍高く、ILでは2倍多かった。群ごとのすべての患者について合計した正常血糖標的ゾーンの上及び下の面積(140mg/dLを上回る及び80mg/dLを下回るBG AUC)は、RHIで81,895mg/dL*分、ILで57,423mg/dL*分、CE25−4で38,740mg/dL*分であった。平均血糖値を図8に示す。
【0081】
CE25−4は、標準食後の血糖の上昇を逆転させるのが最も速かった。CE25−4で治療した患者は、低い食後血糖逸脱を経験した。対照的に、RHIは、そのより遅い吸収速度と一致する、最も高い血糖逸脱を有した。血糖値の変動(最大値と最小値との間の平均値の差)は、CE25−4でILより有意に小さく、これらの1型糖尿病患者におけるCE25−4のより良好な血糖調節が実証されている。
【0082】
(実施例7)
光散乱によるインスリンのサイズの特徴づけ:
CE100−4は、患者において作用の非常に速やかな発現を有する。この速やかな吸収プロファイルの基礎を理解するために、CE100−4のin vitro実験を他の市販の組換えヒトインスリン及びインスリンの速効型類似体と比較して実施した。光散乱法を最初の製品並びに合成細胞外液緩衝液による希釈系列に適用した。結果から、レギュラー組換えインスリン及び速効型類似体と異なり、CE100−4が1:3希釈後にほぼ二量体のサイズにサイズを減少することが示される。これは、その速やかな吸収プロファイルと一致している。
【0083】
材料及び方法
この速やかな作用の発現のメカニズムを解明するために、皮下注射後に自然に起こることをシミュレートする手段としての合成細胞外液緩衝液による伝統的な製剤の希釈の効果を試験するためのin vitro実験を設計した。光散乱法を用いて、平均サイズ分布(nm)を評価した。これらのin vitro実験での比較のために用いた市販の速効型又は食事インスリン製剤は、IL、IA、RHI及びCE100−4であった。サイズの比較のために、単量体(pH2.0)及び六量体亜鉛インスリン(pH7)の標準調製物を基準のために用いた。
【0084】
市販のインスリンをZetasizer nano(Malvern Inst、UK)を用いてサイズについて特徴づけした。1mLの試料をガラスキュベットに入れ、分析して溶解したインスリンの平均体積平均サイズ分布(nm)を測定した。3つの試料(各試料を数回測定)の平均値を比較のための基礎として用いた。最初の完全な強度解析の後に、細胞外液の同様なpH及び緩衝能力を有する緩衝液(ECF、0.7mN MgCl、1.2mM CaCl、0.2mM KCl、0.5mM NaSO、104mM NaCl、28.3mM NaHCO)による1:2〜1:16の希釈系列を実施した。各製剤の単量体/二量体/六量体のサイズ分布を理解するために、市販のインスリン及びCE100−4のそれぞれの平均サイズをすべての希釈度について測定した。
【0085】
インスリン
RHI、IL、IA及びCE100−4
希釈剤
滅菌水中ECF、0.7mM MgCl、1.2mM CaCl、2mM KHPO、2mM KCl、0.5mM NaSO、104mM NaCl、28.3mM NaHCO
結果
サイズ測定試験において、未希釈CE100−4は、IL、IA及びRHIより大きい。しかし、1:3の希釈度については、CE100−4の平均サイズは、単量体/二量体のサイズまでの2nmに減少したが、試験した他のインスリンは、約5nmの六量体サイズのままであった。IL、IA及びRHIは別として、CE100−4は、希釈度の増加に伴ってさらに減少した。未希釈RHIは、明らかにより小さいが、一旦、1:1に希釈されたならば5nmより大きなサイズに成長し、1:16の希釈度までこのサイズ範囲のままである。
【0086】
未希釈CE100−4は、最初は試験した他のインスリンより明らかに大きく、これは、表面電荷を遮へいすることにより皮下部位からの吸収速度をさらに増加させる役割を果たし得る、表面に弱く結合しているクエン酸及びEDTAにおそらく起因する。電荷は、吸収の妨げとなり得る。皮下投与の直後に、注射された物質がECFにより希釈されるので、CE100−4は、同じ希釈度の速効型インスリン類似体及びRHIより小さい平均サイズを有する。
【0087】
(実施例8)
インスリンの分析用超遠心分離
材料及び方法
浮力有効モル重量に比例する推定の重量平均沈降係数(Svedbergs 20℃、水 S(20、w))を決定する、分析用超遠心法を用いた一連の実験を開発した。この分析の手順は、光散乱サイズ測定と多少異なっていた。第1に、各試料を、市販製品の希釈剤と組成が同じ希釈剤で希釈する。これを得るために、3kDa MWカットオフを有するCentriprep(登録商標)Ultracel−3膜フィルターユニット(Millipore Inc、MA、USA)を用いてインスリンを希釈剤から分離した。最初の希釈剤を回収し、インスリン含量の存在について分析した。インスリン不含有が確認済みの希釈剤を用いて市販製品を希釈した。
【0088】
これらの最初のデータセットを用いて、安定単一種、又はそれ自体の希釈剤中の六量体、二量体、単量体から変化するもののいずれかとしてのインスリンを特徴づけした。分析用超遠心分離を用いて2セットのデータを得た。第1のセットのデータは、製剤の希釈剤を厳密に希釈することにより得た。市販の製剤の場合、これは、インスリン又は類似体を希釈剤から分離するセンチプレプ(centiprep)チューブにより得た。ろ液をタンパク質含量についてチェックし、確認後のものを第1回の実験における希釈剤に用いた。
【0089】
第2のセットの試料は、希釈剤の代わりにECF緩衝液を置換して調製した。これが有効になるために、最も濃い試料を最初にECFで1:2に希釈した。次いで、ECFを用いてさらなる希釈を行った。CE100−4の場合、ECFによる最初の希釈は、等電点を越えさせて任意の沈殿物を除去することを確実にするために1:4であった。これらの実験は、皮下注射後を模倣することを意図するものであった。
【0090】
標準状態に補正した、各負荷濃度についての重量平均沈降係数について得られた値を下表に示す。速度分析は、Beckman−Coulter XL分析用超遠心分離機により、干渉光学機器を用いて20℃、55,000RPMにおいて実施した。サファイアウインドウを装着したダブルセクター合成バウンダリセルを用いて、試料及び基準メニスカスを一致させた。ローターを真空中20℃で平衡化させ、20℃で約1時間の後、ローターを55,000RPMまで加速した。干渉スキャンを5時間にわたり60秒間隔で得た。
【0091】
いくつかの解析プログラムをデータについて実行して(DcDt+vers.2.1.02及びSedfit、vers11.3b3)各試料に固有の情報を引き出した。Sedfitプログラムからのデータを下の結果に示す。DcDtは、濃度プロファイルの時間導関数を用いるモデル非依存性沈降係数分布g(s)である。濃度の増加に伴うSのより高い値への変化がない場合、それは、可逆的反応が起こっていない(すなわち、単量体、二量体、六量体)という強い証拠である。希釈によりサイズ及び形状が変化する場合(六量体から、二量体、単量体への変化)、推定の分子量を決定することは可能でないが、沈降係数S(w)に関するSedfitプログラムから有用な情報を得ることができる。さらに、このプログラムは、Lamm方程式によるモデルに基づく数値解を用い、個々のデータセットについて直接的境界モデルを産出する。それは、連続沈降係数c(s)を沈降係数(s)に対してプロットして、沈降種の相対的サイズを記述する曲線を作製する。
【0092】
インスリン固有の希釈剤による各インスリンの希釈:
A.RHI
RHIを沈降速度超遠心分離による分析にかけた。推定保存溶液濃度は、3.745mg/mlであった。希釈剤は、上記の通りであった。
【0093】
以下の物理定数は、Sednterpプログラムを用いてそのタンパク質のアミノ酸組成から計算した。
RHI: MWseq=5792Da N20°=0.726ml/g
希釈剤の密度及び粘度は、Sednterpを用いてそれぞれ20℃で1.00231g/ml及び0.01041ポイズと計算された。
【0094】
結果
図9AにRHI(商標)の負荷濃度に対して正規化したc(s)分布のプロットを示す。正規化c(s)プロットについて示したデータは、DcDt+からのg(s)データと一致している。濃度の増加に伴う沈降におけるSのより低値への著しい変化がある。
【0095】
標準状態に補正した、各負荷濃度についての重量平均沈降係数について得られた値を下表に示す。
【0096】
【表4】
結論:
これら解析は、RHIがその実験条件下で主として六量体として存在することを示している。より低濃度の試料中存在する少量のより遅い沈降性物質並びに六量体からの二量体と思われるものが存在する。
【0097】
B.IL
材料及び方法は、上記の通りであった。
【0098】
結果
図9Bは、各濃度についての重量平均沈降係数のプロットである。そのタンパク質は、希釈により解離する。さらに、おそらく六量体からの二量体である少量(<5%)のより速い沈降性種が存在するのは明らかである。
【0099】
標準状態に補正した、各負荷濃度についての重量平均沈降係数について得られた値を下表に示す。
【0100】
【表5】
結論:
これら解析は、そのタンパク質試料ILがこの実験の条件下で主として六量体として存在することを示している。希釈によるILの解離の証拠があり、存在する六量体からの二量体であると思われるものが少量存在する。試験した濃度は、約30μm、100μm、300μm及び600μm(単量体単位)であった。
【0101】
C.IA
材料及び方法は、上記の通りであった。
【0102】
結果
図9Cに、負荷濃度に対して正規化したc(s)分布のプロットを示す。正規化c(s)プロットについて示したデータは、DcDt+からのg(s)データと一致している。低濃度におけるc(s)曲線は、濃度が増加するにつれて減少するより小さい種(単量体)の寄与を示している。濃度の増加に伴う沈降におけるSのより低値へのわずかな変化もある。おそらく六量体からの二量体である少量(<5%)のより速い沈降性種が存在することは明らかである。
【0103】
標準状態に補正した、各負荷濃度についての重量平均沈降係数について得られた値を下表に示す。
【0104】
【表6】
結論:
これら解析は、IAがこの実験の条件下で主として六量体として存在することを示している。希釈によるIAの解離の証拠があり、存在する六量体からの二量体であると思われるものが少量存在する。試験した濃度は、約30μm、100μm、300μm及び600μm(単量体単位)であった。
【0105】
D.CE−100 4
材料及び方法は、上記の通りであった。
【0106】
結果
CE−100 4のデータベースをSedfit及びc(s)モデルを用いて解析した。厳密に言えば、このモデルは、非相互作用性混合物にのみ適用できるが、相互作用性種の場合、溶解して存在する種についてのアイデアを得ることができる。図9Dでは、負荷濃度に対して正規化したc(s)分布のプロットを示す。c(s)プロットは、希釈により、より低いS値への著しい変化があるという点でDcDt+からのg(s)データと一致している。より高い濃度におけるc(s)プロットは、CE100−4が六量体より大きい場合があることを明確に示している。
【0107】
標準状態に補正した、各負荷濃度についての重量平均沈降係数について得られた値を下表に示す。
【0108】
【表7】
結論:
これら解析は、タンパク質試料CE100−4がこの実験の条件下で単量体、二量体、六量体及びおそらくより大きいオリゴマーの間の平衡状態で存在することを示している。試験した濃度は、約30μm、100μm、300μm及び600μm(単量体単位)であった。
【0109】
ECF緩衝液による希釈:
市販の製剤を最初にECFで1:2に希釈した。ただし、1:4に希釈したCE100−4を除く。pH4で開始するので、等電点による沈殿を避けるために、これを別に処理しなければならなかった。他の市販のインスリンは、既にpH7であり、そのため最初の希釈は1:2とした。
【0110】
A.RHI
RHIを沈降速度超遠心分離による分析にかけた。推定保存液濃度は、等容量の供給されたECFで希釈した後に1.87mg/mlであった。
【0111】
以下の物理定数は、Sednterpプログラムを用いてそのタンパク質のアミノ酸組成から計算した。
RHI: MWseq=5792Da、 N20°=0.726ml/g
希釈剤の密度及び粘度は、Sednterpを用いてそれぞれ20℃で1.00273g/ml及び0.01043ポイズと計算された。
【0112】
分析に用いた3つのセルについての保存溶液を用いた希釈スキームを下表に示す。
【0113】
【表8】
Lamm方程式によるモデルに基づく数値解を用いた個々のデータセットに対して、直接境界モデリングプログラムとともに、Sedfit、version 11.71を用いた。
【0114】
連続沈降係数分布c(s)モデルを計算した。c(s)分布プロットは、摩擦係数の平均値を用いることにより拡散の広がり効果が除去されているため、他の解析方法と比べて鋭い。
【0115】
結果
図10Aでは、負荷濃度に対して正規化したc(s)分布のプロットを示す。正規化c(s)プロットについて示したデータは、DcDt+からのg(s)データと一致している。c(s)プロットはほぼ一致しているが、濃度の増加に伴う沈降におけるSのより低値へのわずかな変化がある。
【0116】
2つの最低濃度試料中に少量(<1%)のより遅い沈降性物質、及びおそらく六量体からの二量体である少量(<3%)のより速い沈降性種が存在することは明らかである。濃度の増加に伴うより遅い種の減少及びより速い種の増加は、試験した濃度範囲にわたるRHIの自己会合の非常にわずかな変化があるにすぎないことを意味する。
【0117】
標準状態に補正した、各負荷濃度についての重量平均沈降係数について得られた値を下表に示す。
【0118】
【表9】
結論:
これら解析は、RHIがこの実験の条件下で主として六量体として存在することを示している。より低濃度の試料中に非常に少量のより遅い沈降性物質並びに六量体からの二量体と思われるものが存在する。試験する濃度は、約30μM、100μ及び300μM(単量体単位)であった。
【0119】
IL
方法は上記した。
【0120】
結果
図10Bでは、負荷濃度に対して正規化したc(s)分布のプロットを示す。正規化c(s)プロットについて示したデータは、DcDt+からのg(s)データと一致している。低濃度におけるc(s)曲線は、濃度が増加するにつれて減少するより小さい種(おそらく二量体)の有意な寄与を示している。濃度の増加に伴う沈降におけるSのより低値へのわずかな変化もある。
【0121】
2つのより高濃度の試料で特に明らかである、少量(<2%)のより速い沈降性種があることは明らかである。
【0122】
標準状態に補正した、各負荷濃度についての重量平均沈降係数について得られた値を下表に示す。
【0123】
【表10】
結論:
これら解析は、ILがこの実験の条件下で主として六量体として存在することを示している。希釈によるILの解離の証拠があり、存在する六量体からの二量体であると思われるものが少量存在する。試験する濃度は、約30μM、100μ及び300μM(単量体単位)であった。
【0124】
インスリンアスパルト(IA)
方法は上記した。
【0125】
結果
図10Cでは、負荷濃度に対して正規化したc(s)分布のプロットを示す。正規化c(s)プロットについて示したデータは、DcDt+からのg(s)データと一致している。低濃度におけるc(s)曲線は、濃度が増加するにつれて減少する少量のより小さい種(単量体/二量体)を示している。濃度の増加に伴う沈降におけるSのより低値へのわずかな変化もある。グラフは、そのタンパク質が希釈によりわずかに解離することを示している。さらに、六量体からの二量体であり得る少量(最高濃度試料で約3%)のより速い沈降性種が存在することは明らかである。
【0126】
標準状態に補正した、各負荷濃度についての重量平均沈降係数について得られた値を下表に示す。
【0127】
【表11】
結論:
これら解析は、IAがこの実験の条件下で主として六量体として存在することを示している。希釈によるIAの解離の証拠があり、存在する六量体からの二量体であると思われるものが少量存在する。試験する濃度は、約30μM、100μ及び300μM(単量体単位)であった。
【0128】
D.CE100−4
材料
推定保存液濃度は、3容量の供給されたECFで1容量の溶液を希釈した後に0.936mg/mlであった。
【0129】
方法
分析に用いた4つのセルについて、保存溶液を用いた希釈スキームを以下の表に示す。
【0130】
【表12】
結果
CE100−4についてデータベースをSedfit及びc(s)モデルを用いて解析した。厳密に言えば、このモデルは、非相互作用性混合物にのみ適用できるが、相互作用性種の場合、溶解して存在する種についてのアイデアを得ることができる。図10Dに負荷濃度に対して正規化したc(s)分布のプロットを示す。c(s)プロットは、希釈によりより低いS値への著しい変化があるという点で、DcDt+からのg(s)データと一致している。より高い濃度におけるc(s)プロットは、CE100−4が六量体より大きくあり得ることを明確に示している。
【0131】
標準状態に補正した、各負荷濃度についての重量平均沈降係数について得られた値を下表に示す。
【0132】
【表13】
これら解析は、CE100−4がこの実験の条件下で、最高濃度では単量体、二量体、六量体及びおそらくより大きいオリゴマーの間の平衡状態で存在することを示している。試験した濃度は、約30μM、70μM及び145μM(単量体単位)であった。
【0133】
HCl pH2又はNaOH pH7で調整した水中の対照
以下の物理定数は、Sednterpプログラムを用いてそのタンパク質のアミノ酸組成から計算した。
IC−pH7: MWseq=5792Da N20°=0.726ml/g
希釈剤の密度及び粘度は、Sednterpを用いてそれぞれ20℃で0.99823g/ml及び0.01002ポイズと計算された。
【0134】
内部対照IC pH7
方法
分析に用いた4つのセルについての希釈剤としてのNaOHを含む水、pH7を用いた希釈スキームを下表に示す。
【0135】
【表14】
連続沈降係数分布c(s)
c(s)分布プロットは、摩擦係数の平均値を用いることにより拡散の広がり効果が除去されているため、他の解析方法と比べて鋭い。
【0136】
結果
IC−pH7についてのデータセットをSedfit及びc(s)モデルを用いて解析した。厳密に言えば、このモデルは、非相互作用性混合物にのみ適用できるが、相互作用性種の場合、溶解して存在する種についてのアイデアを得ることができる。図11では、負荷濃度に対して正規化したc(s)分布のプロットを示す。c(s)プロットは、希釈によりより低いS値への著しい変化があるという点でDcDt+からのg(s)データと一致している。
【0137】
標準状態に補正した、各負荷濃度についての重量平均沈降係数について得られた値を下表に示す。
【0138】
【表15】
解析は、この実験の条件下において、試料IC−pH7が、最低希釈度では二量体−六量体平衡状態で存在し、ここで用いた3つの最高濃度では六量体状態が著しく有利であることを示している。試験した濃度は、約30μM、100μM、305μM及び620μM(単量体単位)であった。
【0139】
内部対照IC pH2
方法:
上記のようにインスリンを0.01N HClで希釈した。
【0140】
結果:
主として負荷濃度の良好な推定を得るために、IC−pH2のデータセットをSedfit及びc(s)モデルを用いて解析した。各負荷濃度についての重量平均沈降係数について得られた値は、DcDt+を用いて決定された値とかなり良く一致していた。Sedfitを用いて決定されたS20.w値の表を下に示す。
【0141】
【表16】
これらの解析は、IC−pH2が、この実験の条件下で主として単一種(おそらくインスリン単量体)として存在し、さらなる自己会合の傾向がないことを示している。溶媒の状態は、支持電解質の欠如のため高度に非理想的であった。試験した濃度は、約30μM、97μM、305μM及び620μM(単量体単位)であった。
【0142】
全般的結論、沈降分析
DcDtソフトウエアを用いたRHI分子量の推定により、その分子量が全希釈範囲にわたって六量体と一致していること(35.6±1.6kDa)が確認された。単量体インスリン(2.29nm)の標準であるpH2インスリンの対照値は、希釈系列にわたって本質的に未変化のままである1.28S(20、w)の沈降係数値を有し、その単量体状態が確認される。全濃度における対照の非安定化インスリン、pH7は、六量体であるが、pH7希釈剤による希釈によるサイズの減少によって実証されたように、より小さい二量体形態と動的平衡状態にある。IA及びILは、六量体サイズ範囲で始まり、ECFで1:16に希釈した後に単量体/二量体形態の小集団を有する。CE100−4の単量体/二量体粒子の割合がより高いことは、そのより速やかな吸収プロファイルと一致する。
【0143】
(実施例10)
インスリン、pH7.4へのクエン酸ナトリウム及びEDTAの添加によるインスリンサイズに対する効果の測定
CES100−4のpHの7への上昇がブタモデルにおける速やかな吸収及びMalvernによるサイズの減少を示したので、クエン酸三ナトリウムの代わりにクエン酸を用いることがpH7.4でも有効であるかどうかを確認するために代替方法を設計した。
【0144】
材料及び方法
EDTA二ナトリウム(1.8mg/mL)及びクエン酸三ナトリウム(1.8mg/mL)をグリセリン(22mg/mL)を含む水に溶解した。インスリンを3.8mg/mLの濃度で溶液に加えた。水酸化ナトリウムを滴下して加えpHを7.4に上昇させた。次いで、未希釈物質を平均粒径についてMalvernで分析し、次いで、細胞外液緩衝液(ECF)で希釈し、希釈系列に沿った各時点に粒径を決定した。
【0145】
結果
CSE100−7、すなわち、ECF緩衝液で希釈したクエン酸ナトリウムインスリンpH7.4を酸性及び中性環境におけるクエン酸製剤と比較した。結果を図12に示す。図12は、CE100−7 pH7.5及びクエン酸の代わりにクエン酸ナトリウムを含有するCSE100−7、pH7.4について、希釈度に応じたインスリン平均粒径(nm)のグラフである。
【0146】
結果は、クエン酸ナトリウム、EDTA及び中性pHで溶解したインスリンを混合することによって、速やかに解離するインスリンを得ることができることを示している。平均粒径は、最初は一般的な六量体より大きく、これは、六量体が解離し、インスリン分子の緩く会合した多量体の形態にあることを推定して示している。注射後環境(ECFにより希釈)における1:2希釈により、インスリンは、より小さい単位(インスリン二量体である可能性が最も高い)に速やかに解離する。新たな製剤は、最初にpH4で調製され、次にpH7にされたクエン酸/EDTAインスリン製剤として正確に挙動する。
【0147】
(実施例11)
糖尿病ミニブタにおけるクエン酸EDTAインスリンpH7
材料及び方法
インスリンは、インスリン(3.8mg/ml)、EDTA二ナトリウム(1.8mg/ml)、クエン酸(1.8mg/ml)、グリセリン及びm−クレゾール(3mg/ml)を混合し、HClを用いてpHを4に調整することにより調製した。次いで、溶液のpHをNaOHの添加によりpH7に上昇させた。これにより、製剤がインスリンの等電点を短時間通過して、混濁した混合物が生じ、それは、7.4の最終pHに到達したときに清澄化した。CE100−7は、食事の前にブタに食事インスリンとして投与した。
【0148】
6匹の雄糖尿病ミニブタ(30〜50kg)に最初に0.25U/kgの試験インスリンを投与し、次いで、直ちに500gの標準ブタ飼料を与えた。血液試料を給餌前−30、−20、−10、0分に、次いで投薬後5、10、15、20、30、45、60、75、90、120、150、180、240、300、360、420、480分に採取した。2mLの血液試料を頸静脈カテーテルを介して採取し、そのうちの1滴を標準グルコースストリップ法を用いてグルコース測定をチェックするのに用い、残りの試料をKEDTAで処理し、血漿試料を将来の分析用に凍結した。
【0149】
結果
pH7製剤の薬物動態プロファイルを図13に示す。この非常に速やかなプロファイルは、実施例6において糖尿病患者で示されたデータと一致している。クエン酸及びEDTAを含有する酸製剤のpHの7への上昇は、糖尿病ミニブタにおいて非常に十分に機能した。このpHの変化により、クエン酸がクエン酸ナトリウムになった。したがって、クエン酸の塩形態が酸と同様に十分に働く。
【0150】
本発明の改変及び変形は、上述の記載から当業者に明らかであり、添付の特許請求の範囲の範囲内にあるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図7
図8
図9-1】
図9-2】
図10-1】
図10-2】
図11
図12
図13
図6