(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2ボリュームのデータに含まれる血管部分と組織部分とに対して異なる色情報を割り付ける色情報割付部をさらに具備する請求項2記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
前記画像処理部は、前記時間範囲内に関する複数の第1ボリュームにそれぞれ含まれる複数の同一位置のボクセルのボクセル値のうちの最大値、平均値、中央値、又は最小値を前記第2ボリュームのデータにおける前記同一位置に対応する位置のボクセルのボクセル値に設定することで、前記第2ボリュームのデータを生成する請求項1記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
前記X線管と前記X線検出器と前記回転機構部とを制御して、前記被検体の前記同一スキャン領域を連続的にスキャンさせる制御部をさらに備える請求項1記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
前記画像処理部に対し、時間方向に関する投影処理と空間方向に関する投影処理とを選択的に実行させるための選択部をさらに具備する請求項1記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
前記画像処理部に対し、時間方向に関する投影処理における時間範囲と空間方向に関する投影処理における空間範囲との少なくとも一方を指定する指定部をさらに具備する請求項1記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の第1及び第2実施形態を説明する。
【0013】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置(以下、X線CT装置と呼ぶ)1の構成を示す図である。X線CT装置1は、ガントリ10とコンピュータ装置20とから構成される。ガントリ10は、円環又は円板状の回転フレーム11を回転可能に支持する。回転フレーム11は、撮影領域中に天板12に載置された被検体Pを挟んで対向するようにX線管13とX線検出器14とを有する。回転フレーム11は、一定の角速度でX線管13とX線検出器14とを連続回転させる。X線管13は、高電圧発生装置15からの高電圧の印加及びフィラメント電流の供給を受けてX線を発生する。典型的には、X線管13は、大きなコーン角を有し、一般的には四角錐形状を有するコーンビームX線を発生する。X線検出器14には、データ収集部(DAS;Data Acquisition System)32が接続される。X線検出器14は、列方向とチャンネル方向との両方向に関して稠密に分布される複数の検出素子を有する。チャンネル方向に沿って1列に配列される複数の検出素子の列を検出素子列と呼ぶ。検出素子列は、列方向(被検体の体軸方向)に沿って複数配列される。検出素子列は、例えば、320列配列される。
【0014】
コンピュータ装置20は、画像処理装置30と、表示部22と、入力部23とから構成される。表示部22は、画像を表示する。入力部23は、ユーザからの指示をコンピュータ20に入力する。画像処理装置30は、制御部31を中枢として、データ収集部32、前処理部33、再構成部34、画像処理部35、記憶部40を有する。
【0015】
データ収集部32は、X線検出器14からチャンネルごとに読み出される電流信号を増幅し、デジタル信号に変換する。データ収集部32から出力されるデータは、入射X線の強度を反映しており生データと呼ばれる。
【0016】
前処理部33は、データ収集部32から出力される生データに対して、対数変換処理やX線検出器14の感度補正等の処理を行なう。前処理部33から出力されるデータは、投影データと呼ばれる。投影データは、記憶部40に記憶される。
【0017】
再構成部34は、前処理部33又は記憶部40からの投影データに画像再構成処理を行い、被検体の特定の撮影部位に関するボリュームのデータを生成する。第1実施形態では、制御部31の制御により4DCTスキャン(同一スキャン領域を連続してスキャンする)が行なわれる。従って再構成部34は、スキャン時刻の異なる複数のボリューム(以下、時系列ボリュームと呼ぶ)のデータを生成する。なお、この複数の時系列ボリュームのボクセル値は、CT値であるとする。なお、再構成部34は、画像のノイズ低減のためのフィルタ処理等も行なっても良い。再構成された複数の時系列ボリュームのデータは、スキャン時刻を示すコードに関連付けて記憶部40に記憶される。
【0018】
画像処理部35は、時系列投影機能、空間投影機能、色情報割付機能、断面画像の生成機能、時間濃度曲線の作成機能、機能画像の生成機能、及び血管の抽出機能を有する。以下、個々の機能について説明する。
【0019】
時系列投影機能において画像処理部35は、スキャン時刻の異なる複数の時系列ボリュームのデータの時間方向における最大値、平均値、中央値、又は最小値に対応する単一のボリュームのデータを生成する。例えば、画像処理部35は、複数の時系列ボリュームのデータから単一の最大値ボリュームのデータを生成する。より詳細には、画像処理部35は、複数の時系列ボリュームの同一位置にある複数のボクセル値を比較し、これら複数のボクセル値のうちの最大値を特定する。特定された最大値を最大値ボリュームの当該同一位置のボクセル値に設定する。この処理を各位置について行なうことにより、最大値ボリュームのデータを生成する。なお、ここでいう「位置」とは、時系列ボリューム及び最大値ボリュームの座標を意味する。
【0020】
空間投影処理(レンダリング)機能において画像処理部35は、最大値ボリュームのデータ又は時系列ボリュームのデータの空間方向における最大値、平均値、中央値、又は最小値に対応する表示画像のデータを生成する。具体的には、画像処理部35は、最大値ボリュームのデータ又は時系列ボリュームのデータを所望の投影点から投影軌跡に沿って最大値投影、最小値投影、中央値、又は平均値投影し、最大値投影画像、最小値投影画像、中央値投影画像、又は平均値投影画像のデータを生成する。また、空間投影処理は、ボリューム全体について行なわなくともよい。すなわち、空間投影処理は、厚みつき最大値投影(スラブMIP)、厚みつき平均値投影、厚みつき中央値投影、あるいは厚みつき最小値投影等であってもよい。空間投影処理により生成された各種画像は、表示部22に表示される。
【0021】
色情報割付処理において画像処理部35は、最大値ボリュームのデータ又は断面画像のデータを構成するボクセル又はピクセルに色情報を割り付け、カラー画像のデータを生成する。色情報割付処理により生成されたカラー画像は、表示部22に表示される。
【0022】
断面画像の生成処理において画像処理部35は、ボリュームのデータに関する任意の位置及び向きの断面に関する断面画像データを生成する。
【0023】
時間濃度曲線の作成処理において画像処理部35は、複数の時系列ボリュームのデータの特定領域に関する時間濃度曲線を作成する。
【0024】
機能画像の生成機能において画像処理部35は、複数の時系列ボリュームのデータに基づいて、例えば、脳組織部分における血流動態を表したCBP(脳組織の毛細血管内の単位体積及び単位時間あたりの血流量[ml/100ml/min])、CBV(脳組織内の単位体積あたりの血流量[ml/100ml])、MTT(毛細血管の血液平均通過時間[秒])等のインデックス値を2次元マップ又は3次元マップとした機能画像のデータを生成する。このインデックス値は、以下のように算出される。まず、画像処理部35は、画像の脳動脈部分に設定された関心領域内における造影剤の時間的な濃度変化と、画像の脳組織部分における造影剤の時間的な濃度変化とを算出する。画像処理部35は、算出した脳動脈部分の濃度変化と脳組織部分の濃度変化とを対応付ける伝達関数を算出する。そして画像処理部35は、算出した伝達関数から上記のインデックス値を算出する。詳細については、例えば特許文献1に記載されている。
【0025】
血管抽出機能において画像処理部35は、最大値ボリュームのデータや表示画像のデータ等に閾値処理等をして血管部分のデータを抽出する。
【0026】
上記構成を有するX線CT装置1は、制御部31の制御により4DCTスキャン(同一スキャン領域を連続してスキャンする)を行う。以下、説明を具体的に行なうため、スキャン対象は、被検体の頭部であるとする。
【0027】
血流動態を調べるために頭部をスキャンする場合、よく知られているように、眼窩と外耳孔とを結ぶ線、すなわちOMライン(外眼角耳孔線:OrbitoMeatal line)を位置決めの基準とする。典型的には、このOMラインと頭頂とがスキャン領域に含まれるように位置決めされる。このOMラインと頭頂との間の長さは、個人差はあるが大人の場合、概ね12〜14cm程度であり、小児の場合でも概ね8cm以上である。一方、X線検出器14は、320列の検出素子列を備える。このX線検出器14がカバー可能なスキャン領域のスライス方向に関する長さは、概ね16cmである。すなわち、このX線検出器14を用いれば、天板12又はガントリ10を移動することなく、定位置でX線管14とX線検出器16とを回転させて4DCTスキャンするだけで、当該スキャン領域の全体を再構成するために必要な投影データを全て収集することが可能である。
【0028】
このような4DCTスキャンにより生成された複数の投影データセットに基づいて再構成部34は、被検体の複数の時系列ボリュームのデータを生成する。4DCTスキャン中、被検体は固定され、且つ、天板12とガントリ10との移動はない。従って、4DCTスキャンにより生成される複数の時系列ボリュームは、互いに位置整合している。時系列ボリュームのデータは、それぞれの辺がL×M×N個のボクセルからなる直方体であるとする。L、M、Nの数は、幾つであっても構わない。
【0029】
以下、画像処理部35による最大値ボリュームのデータの生成処理について詳細に説明する。4DCTにより、被検体の頭部に関する時間的に連続した複数の時系列ボリュームのデータVD1〜VDnが生成される。4DCTスキャンは、造影剤注入直後あるいは注入直前から行われるとする。この時系列ボリュームのデータは、被検体中における造影剤の時間的な濃度変化を表した画像データである。なお、添え字(1〜n)は、1<nであり、生成された時刻(順番)を示す。この添え字をボリューム番号と呼ぶことにする。ボリューム番号1は造影剤注入直後あるいは直前の時刻であり、ボリューム番号nは頭部に流れた造影剤が十分に薄まる時刻である。また、座標iにおける時系列ボリュームのデータVD1、VD2、…VDn各々のボクセルを、それぞれボクセルVXi1、VXi2、…VXinと記載することにする。
【0030】
図2は、最大値ボリュームのデータ生成処理の流れを示す図である。まず、入力部23等からの開始要求を受けて制御部31は、画像処理部35に最大値ボリュームのデータの生成処理を行なわせる。最大値ボリュームのデータの生成処理において、まず画像処理部35は、複数の時系列ボリュームのデータVD1〜VDnを再構成部34又は記憶部40から読み込む。次に画像処理部35は、読み込んだ複数の時系列ボリュームのデータVD1〜VDnの座標iにおけるボクセルVXi1〜VXinのCT値に基づいて所定のCT値を決定する(ステップSA1)。例えば、所定のCT値は、ボクセルVXi1〜VXinのCT値のうちの最大値(最大CT値)である。
【0031】
ステップSA1において決定された最大CT値は、最大値ボリュームのデータにおける座標iのボクセルのCT値として、例えば画像処理部35等のメモリに定義された計算上の3次元空間の座標iに設定される(ステップSA2)。
【0032】
図3A及び
図3Bは、ステップSA1及びSA2の処理を具体的に説明するための図である。
図3Aは、座標i(例えば(x、y、z)=(0,0,0))におけるボクセルVXi1〜VXinを示す図である。
図3Aに示すように、これらボクセルVXi1〜VXinは、生成された時刻(ボリューム番号)は異なるが、全て同じ座標iにおけるボクセルである。まず複数の時系列ボリュームのデータVD1〜VDm〜VDn(1<m<n)各々の、座標i(例えば(x、y、z)=(0,0,0))におけるボクセルVXi1〜VXinのCT値が特定される。次に、特定された複数のCT値から最大CT値が特定され、特定された最大CT値は、最大値ボリュームのデータの座標iにおけるCT値に設定される。
図3Bに示す例では、時系列ボリュームのデータVDmのボクセルVXimのCT値imaxが最大であり、このCT値imaxが最大値ボリュームのデータの座標iにおけるCT値に設定される。
【0033】
ステップSA2の処理が終了すると、画像処理部35は、最大値ボリュームのデータの全ての座標((0,0,0)〜(L,M,N)の全ての座標)についてCT値が設定されたか否かを判定する(ステップSA3)。ステップSA4において否と判定すると(ステップSA3:NO)、画像処理部35は、座標iを変更し(ステップSA4)する。そして画像処理部35は、変更後の座標について再びステップSA1〜ステップSA2の処理を行なう。全ての座標についてこれらの処理が行われると(ステップSA3:YES)、最大値ボリュームのデータの全ての座標についてCT値が設定されたことになる。即ち、最大値ボリュームのデータが生成される。最大値ボリュームのデータが生成されると最大値ボリュームのデータ生成処理は終了する。
【0034】
上記の最大値ボリュームのデータの生成処理
において画像処理部35は、複数の時系列ボリュームのデータVD1〜VDnを処理して最大値ボリュームのデータを生成する。
【0035】
最大値ボリュームのデータの生成処理は、
図4に示すように、4次元画像データ(複数の時系列ボリュームのデータVD1〜VDn)を単一の3次元画像データ(最大値ボリュームのデータ)に変換する新たな方法であるといえる。より詳細には、この処理は、複数のボリュームのデータVD1〜VDnの同じ座標iにおけるボクセルVXi1〜VXin各々のCT値のうちの最大CT値imaxを、最大値ボリュームのデータの座標iにおけるボクセルVのCT値とする方法である。このような考えから、最大値ボリュームのデータの生成処理は、時系列MIP処理と言い換えることができる。
【0036】
このように最大値ボリュームのデータは、4DCTによって生成された全ての時系列ボリュームのデータに基づくため、比較的早く造影剤が到達する血管に比して遅れて造影剤が到達する遅延血管に関する情報も含む。さらに、最大CT値に基づいて生成されるので、最大値ボリュームのデータに描出されている血管部分は、時系列加算平均処理によるボリュームのデータに描出されている血管部分に比して、コントラストが良い。なお、時系列加算処理とは、時系列ボリュームのデータVD1〜VDnの同じ座標iにおけるボクセルVXi1〜VXinのCT値の加算平均を、最大値ボリュームのデータの座標iにおけるボクセルのCT値に設定する処理である。
【0037】
なお、上記の説明では、時系列MIP処理をボリュームデータの全座標について行なうとした、しかしながらこれに限定する必要はなく、血管部分や脳組織、ボリュームのデータの中心を含む概球形領域、あるいは立方体領域等の特定領域についてのみ行なうとしてもよい。
【0038】
また、ステップSA2にて所定のCT値は、複数のボクセルのCT値の最大値であるとしたが、最小値或いは平均値等であってもよい。また、所定のCT値として、例えば、腫瘍、石灰化等の病変部のCT値であってもよい。
【0039】
次に第1実施形態の応用例を
図5に示す処理の流れに従って説明する。まず、制御部31は、同一スキャン領域に関しスキャン時刻の異なる複数の時系列ボリュームのデータを再構成部34又は記憶部40から読み込む(ステップSB1)。次に制御部31は、最大値ボリュームのデータの生成処理の処理対象とする時系列ボリュームを指定するか否かを判断する(ステップSB2)。
【0040】
入力部23等からの指定要求を受けると制御部31は、画像処理部35に時間濃度曲線の作成処理を行なわせる。時間濃度曲線の作成処理において画像処理部35は、既存の技術を用いて、複数の時系列ボリュームの特定領域(例えば、動脈部分等)に関する時間濃度曲線(Time Density Curve:TDC)を作成する(ステップSB3)。なお、時間濃度曲線とは、複数の時系列ボリュームの特定領域におけるCT値の経時的変化を表す曲線である。作成された時間濃度曲線は、制御部31により表示部22に表示される。時間濃度曲線が表示されると、制御部31は、ユーザにより入力部23を介して最大値ボリュームのデータの生成処理の対象とする時系列ボリュームの時間範囲(期間)が指定されるのを待機する。ユーザは、時間濃度曲線を観察することにより動脈相及び静脈相を判別することができる。例えば動脈相に対応する時間範囲が指定されることにより、得られる最大値ボリュームのデータは、主に動脈部分を描出する。
【0041】
ユーザにより入力部23を介して時系列ボリュームのデータの時間範囲が指定されることを契機として、制御部31は、画像処理部35に最大値ボリュームのデータの生成処理を行なわせる。画像処理部35は、ステップSB3にて指定された、あるいは全ての時系列ボリュームデータに対して最大値ボリュームのデータの生成処理を行なうことにより、最大値ボリュームのデータを生成する(ステップSB5)。最大値ボリュームのデータの生成処理は、上記の方法と同様である。なお、処理対象とする時系列ボリュームのデータの時間範囲が指定された場合は、上記の時系列ボリュームのデータVD1〜VDnを、指定された範囲内の時系列ボリュームのデータとすればよい。
【0042】
最大値ボリュームのデータが生成されると、制御部31は、画像処理部35に最大値ボリュームのデータから所望断面の断面画像のデータを生成させる(ステップSB6)。断面画像のデータが生成されると制御部31は、画像処理部35に血管抽出処理を行なわせる。血管抽出処理において画像処理部35は、断面画像に対して血管部分と他の部分とを区別するCT値を閾値とした閾値処理をし、断面画像から血管部分を抽出する(ステップSB7)。血管部分が抽出されると、制御部31は、画像処理部35に色情報割り付け処理を行なわせる。色情報割り付け処理において画像処理部35は、血管部分に相当するピクセルに色情報を割り付ける(ステップSB8)。色情報としては、単一色の、例えば赤色等である。
【0043】
また制御部31は、ステップSB6〜ステップSB8とは別に、画像処理部35に機能画像生成処理を行なわせる。機能画像生成処理において画像処理部35は、既知の技術(例えば、特許文献1参照)を用いて、複数の時系列ボリュームのデータに基づいてステップSB7の断面と同一断面の機能画像のデータを生成する(ステップSB9)。機能画像とは、複数の時系列ボリュームのデータに基づいて血流に関するインデックスの値をボクセル毎に計算し、計算されたインデックスの値に応じてボクセルに色情報を割り付けた画像である。例えば、血流に関するインデックスは、CBP[ml/100ml/min]、CBV[ml/100ml]、MTT[秒]等が適当である。これらインデックスに関する機能画像の生成方法は、特許文献1に記載されている方法と同様なので、ここでは説明を省略する。
【0044】
ステップSB8及びステップSB9が終了すると、制御部31は、表示部22に血管部分と機能画像とを重ねてカラー表示する(ステップSB10)。
図6は、ステップSB10で表示される画像の一例を示す図である。
図6に示すように、この画像に描出されている脳組織部分は、インデックス値に応じて色分けされる。また、血管部分は、最大値ボリュームのデータに由来するため、血管部分のコントラストや血管の走行状態が良好に描出されている。
【0045】
以上で
図5に示した処理の流れが終了する。
【0046】
なお、第1実施形態の別の応用例として、最大値ボリュームのデータに含まれる血管部分と脳組織部分とに色情報を割り付けてカラー表示してもよい。この場合、画像処理部35は、最大値ボリュームのデータに含まれる血管部分と脳組織部分とが区別されるように、色情報を最大値ボリュームのデータを構成するボクセルに割り付ける。具体的には脳組織部分は脳組織を走行する毛細血管部分であり、血管部分は脳動脈や脳静脈のような毛細血管以外の血管部分である。
【0047】
図7を参照しながら別の応用例における色情報の割付処理を説明する。
図7は、最大値ボリュームのデータのボクセルに割り付ける不透明度とCT値との関係を示すオパシティーカーブ及びヒストグラムを示す図である。通常、脳組織のCT値として考えられるCT値の範囲は、とても狭く数十HUである。脳組織の最大CT値よりも高いCT値を有するボクセル(血管部分)には不透明度“1”を、脳組織のCT値の最小CT値よりも小さいCT値を有するボクセル(水や脂肪部分(図示せず))には不透明度“0”を割り付ける。そして脳組織部分のボクセルには、CT値に応じて“0”から“1”へと直線的に変化するように不透明度を割り付ける。色情報は、ボクセルが有する不透明度に応じて割り付けられる。具体的には、血管部分には例えば赤色等の1色を、脳組織部分には不透明度に応じて段階的に赤色以外の8色程度を割り付ける。血管部分及び脳組織部分以外のボクセルには、色情報を割り付けない。
【0048】
この様に色情報が割り付けられた最大値ボリュームのデータに基づく断面画像に描出される脳組織部分は、CT値に応じて色分けされる。最大値ボリュームのデータにおける脳組織部分は、その座標の時系列の最大CT値を有している。従って、ユーザは、最大値ボリュームのデータに由来する断面画像を観察することで、脳組織の血流情報を色情報で判断することが可能となる。つまり、この断面画像は、血管の走行状態を示す血管画像及び脳組織の機能画像として活用できる。
【0049】
上記構成によりX線CT装置1は、複数のボリュームのデータに基づいて単一のボリュームデータを生成する。ある局面において、ユーザは、生成された単一のボリュームのデータに基づく単一の画像のみを観察するだけで、複数のボリュームのデータに基づく複数の画像を観察したのと略同等な効果を得ることができる。かくして第1実施形態によれば、複数のボリュームのデータの診断効率を向上することが可能となる。
【0050】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【0051】
また、表示部22は、画像処理部35に対し、時間方向に関する投影処理と空間方向に関する投影処理とを選択的に実行させる画面インターフェースを表示してもよい。この画面インターフェースは、ボリュームのリストの表示領域と、時系列投影処理ボタンと、空間投影処理ボタンとを有する。リスト表示領域には、処理対象の候補となる複数のボリュームが表示される。例えば、リスト表示領域には、最大値ボリュームに関する情報、複数の時系列ボリュームに関する情報が表示される。複数の時系列のボリュームに関する情報は、例えば、シリーズ毎あるいは検査毎に表示される。時系列投影処理ボタンは、処理対象のボリュームのデータに時系列投影処理を行なうためのボタンである。空間投影処理ボタンは、処理対象のボリュームのデータに空間投影処理を行なうためのボタンである。例えば、入力部23を介して、複数の時系列ボリュームが選択され、時系列投影処理ボタンが押されると、画像処理部35は、選択された複数の時系列ボリュームのデータを時系列投影処理する。
【0052】
また、表示部22は、画像処理部35に対し、時間方向に関する投影処理の範囲と空間方向に関する投影処理の範囲との少なくとも一方を指定するための画面インターフェースを表示してもよい。
図8は、この画面インターフェースの表示例を示す図である。
図8に示すように画面インターフェースは、指定領域R1、指定領域R2、実行ボタンBB、及び表示領域R3を有する。指定領域R1は、時間方向に関する範囲を指定するための領域である。具体的には、指定領域R1には、タイムチャートCHと2つのカーソルTC1とTC2とが表示される。タイムチャートCHは、スキャンシーケンスを管電流の時間変化として表している。2つのカーソルTC1とTC2とは、タイムチャートCH上で時間範囲を指定するためカーソルである。2つのカーソルTC1とTC2とで挟まれる範囲dTが、時間投影処理における時間範囲に設定される。指定領域R2は、空間方向に関する範囲を指定するための領域である。具体的には、指定領域R2には、断面画像CIと2つのカーソルIC1とIC2とが表示される。断面画像CIは、カーソルTC1とTC2とによって指定された時間範囲内に関する画像である。この断面画像CIは、アキシャル断面、コロナル断面、サジタル断面、或いは任意の断面に関する画像である。2つのカーソルIC1とIC2とは、断面画像CI上で空間範囲を指定するためのカーソルである。2つのカーソルIC1とIC2とで挟まれる範囲dSが、空間投影処理における空間範囲に設定される。入力部23を介して実行ボタンBBが押されることにより、画像処理部35は、指定された時間範囲及び空間範囲で投影処理を行なう。表示領域R3には、指定された時間範囲及び空間範囲での投影処理により発生された画像が表示される。
【0053】
また、X線CT装置1が4DCTスキャンするスキャン領域は、被検体の頭部であるとした。しかしながらこれに限定する必要はなく、頭部以外のあらゆる部位をスキャン領域としてもよい。しかし、X線検出器14が多列であるという特徴を活かすのであれば、スキャン領域は、被検体が天板12に載置された状態においてスライス方向に関する長さが8cm以上である肝臓等の大きな臓器が好ましい。なぜなら、X線CT装置1は、上述のように、天板12又はガントリ10を移動することなしにこの大きな臓器の全体を4DCTスキャンすることが可能であるため、4DCTスキャンにより生成される複数の時系列ボリュームのデータの位置合わせが不要だからである。
【0054】
(第2実施形態)
図9は、本発明の第2実施形態に係るX線CT装置50の構成を示す図である。なお以下の説明において、第1実施形態と略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行なう。
【0055】
図9に示すように、X線CT装置50は、ガントリ10とコンピュータ装置70とから構成される。コンピュータ装置70は、画像処理装置80と、表示部22と、入力部23とから構成される。画像処理装置80は、制御部31を中枢として、データ収集部32、前処理部33、再構成部34、画像処理部35、投影データ処理部36、及び記憶部40を有する。
【0056】
データ収集部32は、X線検出器14の各検出素子から読み出される電流信号を増幅し、デジタル信号に変換する。データ収集部32から出力されるデータは、入射X線の強度を反映しており生データと呼ばれる。
【0057】
前処理部33は、データ収集部32から出力される生データに対して、対数変換処理やX線検出器14の感度補正等の処理を行なう。前処理部33から出力されるデータは、投影データと呼ばれる。ここで、一つのボリュームのデータを再構成するために必要な投影データの集合を一単位として投影データセットと呼ぶことにする。また、第2実施形態においても、制御部31の制御により4DCTスキャンが行なわれる。従って前処理部33は、同一スキャン領域に関しスキャン時刻の異なる複数の投影データセット(時系列投影データセット)を生成する。生成される複数の時系列投影データセットは、スキャン時刻を示すコードに関連付けて記憶部40に記憶される。時系列投影データセットとは、例えば、X線管13が回転角度0°に位置した時の時刻である。各投影データの位置は、ビュー数(X線管の回転角度:view)及び当該投影データに対応する検出素子の位置(チャンネル番号及び列番号)によって規定される。
【0058】
投影データ処理部36は、複数の投影データセットの時間方向における最大値、平均値、中央値、又は最小値に対応する単一の投影データセットを生成する。例えば、投影データ処理部36は、複数の投影データセットから単一の最大値投影データセットを生成する。具体的には、投影データ処理部36は、複数の投影データセット上の同一位置(ビュー、チャンネル数、列数)にある複数の投影データの値を比較し、これら複数の投影データの値のうちの最大値を特定する。特定された最大値を、投影データ処理部36は、最大値投影データセットの当該同一位置の投影データの値に設定する。この処理を各位置について行なうことにより、投影データ処理部36は、最大値投影データセットを生成する。生成された投影データセットは、記憶部40に記憶される。
【0059】
再構成部34は、投影データ処理部36又は記憶部40からの最大値投影データセットに再構成処理を行い最大値ボリュームのデータを、平均値投影データセットに再構成処理を行い平均値ボリュームのデータを、中央値投影セータセットに再構成処理を行ない中央値ボリュームのデータを、又は最小値投影データセットに再構成処理を行い最小値ボリュームのデータを生成する。記憶部40は、生成されたボリュームのデータを記憶する。
【0060】
以下、投影データ処理部36による最大値投影データセットの生成処理について詳細に説明する。4DCTにより、被検体の頭部に関する時間的に連続した複数の時系列投影データセットPS1〜PSnが生成される。4DCTスキャンは、造影剤注入直後あるいは注入直前から行われるとする。この添え字を投影データセット番号と呼ぶことにする。投影データセット番号(1〜n)は、1<nであり、生成された時刻(順番)を示す。投影データセット番号1は、造影剤注入直後あるいは直前の時刻である。また、投影データセット番号nは、頭部に流れた造影剤が十分に薄まる時刻である。また、時系列投影データセットPS1、PS2、…PSn各々の位置(view,channel,row)における投影データを、それぞれ投影データPD1(view,channel,row)、PD2(view,channel,row)、…、PDn(view,channel,row)と記載することにする。
【0061】
上述のように、4DCTスキャン中、被検体は固定され、且つ、天板12とガントリ10との移動はない。従って、同一位置における複数の時系列投影データセットPS1、PS2、…PSnの投影データ値は、互いにスキャン時刻の異なる同一軌跡のX線パスに由来する。
【0062】
図10は、最大値投影データセットの生成処理の流れを示す図である。まず、入力部23等からの開始要求を受けて制御部31は、投影データ処理部36に最大値投影データセットの生成処理を行なわせる。最大値投影データセットの生成処理において、まず投影データ処理部36は、複数の時系列投影データPS1〜PSnを記憶部40から読み込む。
【0063】
次に投影データ処理部36は、読み込んだ複数の時系列投影データセットPS1〜PSnの位置(view,channel,row)=(i,j,k)における投影データPD1(i,j,k)〜PDn(i,j,k)の値に基づいて所定の投影データ値を決定する(ステップSC1)。例えば、所定の投影データ値は、投影データPD1(i,j,k)〜PDn(i,j,k)の値のうちの最大値(最大投影データ値)である。
【0064】
ステップSC1において決定された最大投影データ値は、最大値投影データセットの位置(i,j,k)における投影データ値に設定される(ステップSC2)。
【0065】
図11は、ステップSC1及びSC2の処理を具体的に説明するための図である。
図11は、列番号row=kにおける時系列投影データセット(サイノグラム)PS1〜PSnを示す図である。
図11に示す時系列投影データセットは、一例として、フル再構成を用いる場合の投影データセットである。すなわち、一つの時系列投影データセットは、0°〜360°分の投影データの集合により構成されている。まず、投影データ処理部36は、時系列投影データセットPS1〜PSm〜PSn(1<m<n)各々の、位置(例えば(view、channel、row)=(i,j,k))における投影データPD1(i,j,k)〜PDm(i,j,k)〜PDn(i,j,k)の値が特定される。次に、特定された複数の投影データ値から最大投影データ値が特定され、特定された最大投影データ値は、最大値投影データセットMPSの位置(i,j,k)における投影データ値に設定される。
図11に示す例では、時系列投影データPS2の位置(i,j,k)の投影データ値が最大であり、この投影データ値が最大値投影データセットの位置(i,j,k)における投影データ値に設定される。
【0066】
ステップSC2の処理が終了すると、投影データ処理部36は、最大値投影データセットの全ての位置についてCT値が設定されたか否かを判定する(ステップSC3)。ステップSC3において否と判定すると(ステップSC3:NO)、投影データ処理部36は、位置(i,j,k)を変更する(ステップSC4)。そして投影データ処理部36は、変更後の位置について再びステップSC1〜ステップSC2の処理を行なう。全ての位置についてこれらの処理が行われると(ステップSC3:YES)、最大値投影データセットの全ての位置について投影データ値が設定されたことになる。即ち、最大値投影データセットが生成される。最大値投影データセットが生成されると最大値投影データセットの生成処理は終了する。
【0067】
生成された最大値投影データセットは、再構成部34により、最大値ボリュームのデータに再構成される。再構成される最大値ボリュームのデータは、4DCTによって生成された全ての時系列投影データセットに基づくため、比較的早く造影剤が到達する血管に比して遅れて造影剤が到達する遅延血管に関する情報も含む。
【0068】
上記構成によりX線CT装置50は、複数の投影データセットに基づいて単一の投影データセットを生成する。そしてX線CT装置50は、生成された単一の投影データセットに基づいてボリュームのデータを生成する。ある局面において、ユーザは、生成されたボリュームのデータに基づく画像のみを観察するだけで、複数のボリュームのデータに基づく複数の画像を観察したのと略同等な効果を得ることができる。かくして第2実施形態によれば、複数のボリュームのデータの診断効率を向上することが可能となる。
【0069】
また、第1及び第2実施形態に係る各機能は、当該処理を実行するプログラムをワークステーション等のコンピュータにインストールし、これらをメモリ上で展開することによっても実現することができる。このとき、コンピュータに当該手法を実行させることのできるプログラムは、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクなど)、光ディスク(CD−ROM、DVDなど)、半導体メモリなどの記録媒体に格納して頒布することも可能である。
【0070】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。