(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5794768
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】ワイヤーハーネスのシールド付外装
(51)【国際特許分類】
H02G 3/04 20060101AFI20150928BHJP
H01B 7/17 20060101ALI20150928BHJP
H05K 9/00 20060101ALI20150928BHJP
【FI】
H02G3/04
H01B7/18 D
H05K9/00 L
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2010-167503(P2010-167503)
(22)【出願日】2010年7月26日
(65)【公開番号】特開2012-29504(P2012-29504A)
(43)【公開日】2012年2月9日
【審査請求日】2013年6月19日
【審判番号】不服2014-14301(P2014-14301/J1)
【審判請求日】2014年7月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信雄
(72)【発明者】
【氏名】近藤 宏樹
【合議体】
【審判長】
鈴木 匡明
【審判官】
河口 雅英
【審判官】
加藤 浩一
(56)【参考文献】
【文献】
実開平5−034161号公報(JP,U)
【文献】
特開2008−147476号公報(JP,A)
【文献】
特開平8−274488号公報(JP,A)
【文献】
特開2006−147962号公報(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アラミド繊維、ポリアリレート繊維及びPBO繊維の1つである耐摩耗性の繊維からなる耐摩耗繊維部と前記耐摩耗性の繊維であって導電性を有する繊維が編みあげられることにより構成された導電性繊維部とを有し、前記耐摩耗繊維部の表面と前記導電性繊維部の表面とが同一平面を構成する繊維シートが、ワイヤーハーネス上に寿司巻きされて、前記ワイヤーハーネスの周囲少なくとも1周を前記導電性繊維部により覆い、且つ、当該導電性繊維部の周囲少なくとも1周を前記耐摩耗性繊維部により覆ってなる
ことを特徴とするワイヤーハーネスのシールド付外装。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤーハーネスのシールド付外装に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の床下等に配置されるワイヤーハーネスは、車両の振動に起因する摩耗や飛石に対応すべく、コルゲートチューブが被せられ保護されている。また、コルゲートチューブにはメッキ加工が施され、シールド機能を有したものも存在する(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−298382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来においてワイヤーハーネスはコルゲートチューブにより保護されているため、車両振動による電線がコルゲートチューブに接触したり、コルゲートチューブ自体が車体等に接触したりすることによって、異音の原因となってしまう。
【0005】
本発明はこのような従来の課題を解決するためになされたものであり、その発明の目的とするところは、シールド機能を有しつつ、ワイヤーハーネスを保護すると共に、異音の発生を抑制することが可能なワイヤーハーネスのシールド付外装を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のワイヤーハーネスのシールド付外装は、アラミド繊維、ポリアリレート繊維及びPBO繊維の1つである耐摩耗性の繊維からなる耐摩耗繊維部と前記耐摩耗性の繊維であって導電性を有する繊維が編みあげられることにより構成された導電性繊維部とを有し
、前記耐摩耗繊維部の表面と前記導電性繊維部の表面とが同一平面を構成する繊維シートが
、ワイヤーハーネス上に寿司巻きされて、前記ワイヤーハーネスの周囲少なくとも1周を前記導電性繊維部により覆い、且つ、当該導電性繊維部の周囲少なくとも1周を前記耐摩耗性繊維部により覆ってなることを特徴とする。
【0007】
このワイヤーハーネスのシールド付外装によれば、繊維シートがワイヤーハーネス上に寿司巻きされているため、シールド付外装がワイヤーハーネスや車体等と接触したとしても、繊維が接触することとなり異音の発生を抑制することができる。特に、ワイヤーハーネスの周囲少なくとも1周を導電性繊維部により覆っているため、シールド機能を有しつつ、さらに導電性繊維部の周囲少なくとも1周を耐摩耗性繊維部により覆っているため、摩耗や飛石からワイヤーハーネスを保護することができる。従って、シールド機能を有しつつ、ワイヤーハーネスを保護すると共に、異音の発生を抑制することができる。
【0008】
また、本発明のワイヤーハーネスのシールド付外装において、繊維シートは、耐摩耗性の繊維の一部にメッキ処理が施され、当該メッキ処理が施されていない部位を耐摩耗繊維部とし、当該メッキ処理が施された部位を導電性繊維部としていることが好ましい。
【0009】
このワイヤーハーネスのシールド付外装によれば、繊維シートは、耐摩耗性の繊維の一部にメッキ処理が施され、当該メッキ処理が施されていない部位を耐摩耗繊維部とし、当該メッキ処理が施された部位を導電性繊維部としている。このため、まず耐摩耗性の繊維を編み上げ、編み上げたシートの一部にメッキ処理を施すことで、繊維シートを作成することができ、簡易に繊維シートを作成することができる。また、耐摩耗繊維部と導電性繊維部とを別々に作成してつなぎ合わせた場合と比較して、耐摩耗繊維部と導電性繊維部との間で破断等が生じ難い繊維シートを提供することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、シールド機能を有しつつ、ワイヤーハーネスを保護すると共に、異音の発生を抑制することが可能なワイヤーハーネスのシールド付外装を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態に係るワイヤーハーネスのシールド付外装として用いられる繊維シートの概略構成図である。
【
図2】本実施形態に係るシールド付外装1を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係るワイヤーハーネスのシールド付外装の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係るワイヤーハーネスのシールド付外装として用いられる繊維シート10の概略構成図である。
【0013】
図1に示すように、ワイヤーハーネスのシールド付外装1は、耐摩耗性繊維シート(耐摩耗性繊維部)20と、導電性繊維シート(導電性繊維部)30とを有し、これらが1枚の繊維シート10として構成されている。
【0014】
耐摩耗性繊維シート20は、耐摩耗性の繊維が編みあげられることにより構成された繊維シートである。ここで、耐摩耗性の繊維とは、ポリエステル、ナイロン(登録商標)、アラミド、ポリアリレート及びPBOなどの繊維である。
【0015】
導電性繊維シート30は、導電性を有する繊維が編みあげられることにより構成された繊維シートである。ここで、導電性を有する繊維とは、炭素繊維、金属フィラーを有した樹脂繊維、及びポリエステルやナイロン(登録商標)にメッキを施したものなどが該当する。さらには、アラミド繊維、ポリアリレート繊維、及びPBO繊維なども該当する。
【0016】
図2は、本実施形態に係るシールド付外装1を示す断面図である。
図2に示すように、シールド付外装1は、繊維シート10がワイヤーハーネスW上に寿司巻きされた状態で用いられる。このとき、繊維シート10は、ワイヤーハーネスWの周囲少なくとも1周を導電性繊維シート30により覆うように、且つ、導電性繊維シート30の周囲少なくとも1周を耐摩耗性繊維シート20により覆うように寿司巻きされる。
【0017】
このように、繊維シート10がワイヤーハーネスW上に寿司巻きされているため、シールド付外装1がワイヤーハーネスWや車体等と接触したとしても、繊維が接触することとなり異音の発生を抑制することとなる。
【0018】
特に、ワイヤーハーネスWの周囲少なくとも1周を導電性繊維シート30により覆っているため、シールド機能を有しつつ、さらに導電性繊維シート30の周囲少なくとも1周を耐摩耗性繊維シート20により覆っているため、摩耗や飛石からワイヤーハーネスWを保護することができる。
【0019】
次に、本実施形態に係るシールド付外装1として用いられる繊維シート10の製造方法について説明する。まず、ポリエステル、ナイロン(登録商標)、アラミド、ポリアリレート及びPBOなどの耐摩耗性の繊維を用意し、これを縦糸や横糸として編み上げていく。これにより、全体が耐摩耗性を有したシートを作成することができる。
【0020】
次いで、全体が耐摩耗性を有したシートの一部にメッキ処理を施す。これにより、メッキ処理が施された部位が導電性繊維シート30となり、メッキ処理が施されていない部位が耐摩耗性繊維シート20となる。
【0021】
このようにして、本実施形態に係るワイヤーハーネスWのシールド付外装1によれば、繊維シート10がワイヤーハーネスW上に寿司巻きされているため、シールド付外装1がワイヤーハーネスWや車体等と接触したとしても、繊維が接触することとなり異音の発生を抑制することができる。特に、ワイヤーハーネスWの周囲少なくとも1周を導電性繊維シート30により覆っているため、シールド機能を有しつつ、さらに導電性繊維シート30の周囲少なくとも1周を耐摩耗性繊維シート20により覆っているため、摩耗や飛石からワイヤーハーネスWを保護することができる。従って、シールド機能を有しつつ、ワイヤーハーネスWを保護すると共に、異音の発生を抑制することができる。
【0022】
また、繊維シート10は、耐摩耗性の繊維の一部にメッキ処理が施され、当該メッキ処理が施されていない部位を耐摩耗性繊維シート20とし、当該メッキ処理が施された部位を導電性繊維シート30としている。このため、まず耐摩耗性の繊維を編み上げ、編み上げたシートの一部にメッキ処理を施すことで、繊維シート10を作成することができ、簡易に繊維シート10を作成することができる。また、耐摩耗性繊維シート20と導電性繊維シート30とを別々に作成してつなぎ合わせた場合と比較して、耐摩耗性繊維シート20と導電性繊維シート30との間で破断等が生じ難い繊維シート10を提供することができる。
【0023】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよい。
【0024】
例えば、上記実施形態においてシールド付外装1として用いられる繊維シート10は、耐摩耗性の繊維の一部にメッキ処理が施され、当該メッキ処理が施されていない部位を耐摩耗性繊維シート20とし、当該メッキ処理が施された部位を導電性繊維シート30としている。しかし、これに限らず、耐摩耗性繊維シート20と導電性繊維シート30とを別々に作成し、これらを縫い合わせる等により一体化することにより、製造してもよい。
【符号の説明】
【0025】
1 シールド付外装
10 耐摩耗性繊維シート
20 導電性繊維シート