特許第5794772号(P5794772)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5794772太陽熱を利用した蒸気供給装置および蒸気供給システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5794772
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】太陽熱を利用した蒸気供給装置および蒸気供給システム
(51)【国際特許分類】
   F24J 2/42 20060101AFI20150928BHJP
   F24J 2/24 20060101ALI20150928BHJP
   F22B 3/04 20060101ALI20150928BHJP
【FI】
   F24J2/42 F
   F24J2/24 A
   F22B3/04
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2010-235354(P2010-235354)
(22)【出願日】2010年10月20日
(65)【公開番号】特開2012-87989(P2012-87989A)
(43)【公開日】2012年5月10日
【審査請求日】2013年8月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000169499
【氏名又は名称】高砂熱学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100095957
【弁理士】
【氏名又は名称】亀谷 美明
(74)【代理人】
【識別番号】100076130
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 憲治
(72)【発明者】
【氏名】石井 秀一
【審査官】 杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−316903(JP,A)
【文献】 特開昭55−111890(JP,A)
【文献】 特開昭57−104050(JP,A)
【文献】 特開昭59−043909(JP,A)
【文献】 実開昭57−152556(JP,U)
【文献】 特公昭63−040242(JP,B1)
【文献】 独国特許発明第00540410(DE,C2)
【文献】 特開昭56−077644(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24J 2/42
F22B 3/04
F24J 2/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱機器に蒸気を供給する装置であって、
太陽熱で沸騰させられた蒸気を溜めるアキュムレータと、
前記アキュムレータに溜められた蒸気を前記熱機器に供給する蒸気配管と、
前記蒸気配管内を減圧させて沸騰状態を作る真空ポンプを備え、
前記真空ポンプは、蒸気の沸点が大気圧での沸点よりも低い時のみ前記蒸気配管内を減圧させ、
太陽熱で水を沸騰させて蒸気を作る集熱器を備え、
アキュムレータは集熱器の上方に設けられ、
アキュムレータには水が溜められており、
アキュムレータの底部には還水管が接続され、その他端は集熱器の最下部と接続されており、集熱器で蒸気が発生して上昇するのと入れ違いに、集熱器に水を満たし、沸騰を継続させ、
集熱器で沸騰して作られた蒸気は、集熱器の蒸気配管を経てアキュムレータに送られ、集熱器の蒸気配管に設けられた多数の小孔を経て微細な気泡となってアキュムレータの水中にまんべんなく広がって供給され水全体を均一に加熱することを特徴とする、太陽熱を利用した蒸気供給装置。
【請求項2】
ボイラで作った蒸気を前記熱機器に供給する既設蒸気供給装置を備え、
請求項1または2に記載の蒸気供給装置で作られた蒸気が前記熱機器に供給される圧力が、既設蒸気供給装置から前記熱機器に供給される蒸気の圧力よりも大きく設定されていることにより、請求項1に記載の蒸気供給装置で作られた蒸気が前記熱機器に優先的に供給されることを特徴とする、蒸気供給システム。
【請求項3】
前記熱機器から前記ボイラに戻される還水の一部が、前記蒸気供給装置のアキュムレータに戻されることを特徴とする、請求項2に記載の蒸気供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽熱を利用した蒸気供給装置と蒸気供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽熱の利用方法としては、太陽熱温水器で30〜80℃のお湯を作る方法が一般的に知られている。そのような太陽熱の利用方法は、戸建住宅や、プール・老健・病院などの給湯需要のある建物で古くから採用されている。しかし工場では、30〜80℃といった温度帯の温熱の需要が大量にあることは少なく、広い屋根面積を持つにもかかわらず太陽熱を利用しているケースは少ない。
【0003】
一方、食品工場(加熱、煮沸等)・化学工場(蒸留、分解、軟化成型等)・半導体工場(純水加温、空調再熱等)・病院(滅菌、加湿等)や、吸収式冷凍機・中央式暖房設備を有する建物等では、100〜150℃の温熱は、広く大量に需要がある。そこで、これらの建物では、ボイラを設置して低圧蒸気を供給することが一般に行われている。
【0004】
ところで、太陽熱で蒸気を製造する集熱器としては、回転放物面鏡や多数の平面鏡によって反射した太陽光を一点に集める方法(点集光型集熱装置)や、樋型放物面鏡で反射した太陽光をその焦点に設けた集熱管に集める方法(線集光型集熱装置)が知られている。いずれも、安定した蒸気製造のために蓄熱するのが一般的である。蓄熱媒体としては、沸点が水より高いオイルなどの顕熱や、多価アルコール類等の潜熱が提案されている。しかしこれらの方法は、システムが複雑で高価、廃棄時に蓄熱材の分別やリサイクルが困難といった欠点がある。一方、蓄熱媒体として水を用い、太陽熱で蒸気を発生させて熱収集を行うシステムもいくつか開示されている(特許文献1、2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−266631号公報
【特許文献2】特開2008−170138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、太陽熱は不安定で、またそれだけで十分需要を賄えるものではない。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、不安定で不十分な太陽熱から高効率に安定して蒸気を発生させることができる蒸気供給装置と蒸気供給システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するため、本発明によれば、熱機器に蒸気を供給する装置であって、太陽熱で沸騰させられた蒸気を溜めるアキュムレータと、前記アキュムレータに溜められた蒸気を前記熱機器に供給する蒸気配管と、前記蒸気配管内を減圧させて沸騰状態を作る真空ポンプを備え、前記真空ポンプは、蒸気の沸点が大気圧での沸点よりも低い時のみ前記蒸気配管内を減圧させ、太陽熱で水を沸騰させて蒸気を作る集熱器を備え、アキュムレータは集熱器の上方に設けられ、アキュムレータには水が溜められており、アキュムレータの底部には還水管が接続され、その他端は集熱器の最下部と接続されており、集熱器で蒸気が発生して上昇するのと入れ違いに、集熱器に水を満たし、沸騰を継続させ、集熱器で沸騰して作られた蒸気は、集熱器の蒸気配管を経てアキュムレータに送られ、集熱器の蒸気配管に設けられた多数の小孔を経て微細な気泡となってアキュムレータの水中にまんべんなく広がって供給され水全体を均一に加熱することを特徴とする、太陽熱を利用した蒸気供給装置が提供される。
【0010】
また、本発明によれば、ボイラで作った蒸気を前記熱機器に供給する既設蒸気供給装置を備え、上記蒸気供給装置で作られた蒸気が前記熱機器に供給される圧力が、既設蒸気供給装置から前記熱機器に供給に供給される蒸気の圧力よりも大きく設定されていることにより、上記蒸気供給装置で作られた蒸気が前記熱機器に優先的に供給されることを特徴とする、蒸気供給システムが提供される。この蒸気供給システムにおいて、前記熱機器から前記ボイラに戻される還水の一部が、前記蒸気供給装置のアキュムレータに戻されても良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、蒸気配管内を真空ポンプで減圧することにより、集熱部において熱伝導率の高い沸騰状態を作り出し、高効率に太陽熱を集熱することができる。また太陽熱で製造した蒸気を、安価安全で廃棄の容易な水を使って蓄えることができ、不安定な太陽熱から安定して低圧蒸気を供給することができる。また、ボイラで作った蒸気を熱機器に供給する既設蒸気供給装置を備えた建物に本発明の蒸気供給装置を導入した場合、本発明の蒸気供給装置で作られた蒸気を熱機器に優先的に供給することにより、蒸気製造に要するボイラの燃料費やCO排出量を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】既設蒸気供給装置に本実施の形態にかかる蒸気供給装置を組み合わせた蒸気供給システムの概略的な構成を示す説明図である。
図2】真空ポンプ類と減圧弁・安全弁を一体化して集熱部近傍に設置した実施の形態にかかる蒸気供給システムの概略的な構成を示す説明図である。
図3】真空ポンプ類と減圧弁・安全弁・給水ポンプ類を一体化して集熱部近傍に設置した実施の形態にかかる蒸気供給システムの概略的な構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0014】
図1に示すように、建物1は、ボイラ2で作った蒸気を複数の熱機器3に供給する既設蒸気供給装置4を備えている。建物1は、例えば加熱、煮沸等を行う食品工場、蒸留、分解、軟化成型等を行う化学工場、純水加温、空調再熱等を行う半導体工場、滅菌、加湿等を行う病院、その他、吸収式冷凍機・中央式暖房設備を有する建物等である。熱機器3は、これらの建物1に設置された加熱装置、成型装置、滅菌装置、その他の各種熱機器である。これらの建物1では、熱機器3に供給するために100〜150℃の温熱(蒸気)の需要が広く大量にある。
【0015】
この建物1には、既設蒸気供給装置4に加えて、本発明の実施の形態にかかる蒸気供給装置10を備えている。このように、既設蒸気供給装置4に蒸気供給装置10を組み合わせることにより、本発明の実施の形態にかかる蒸気供給システム5が構成される。この蒸気供給システム5では、後に詳しく説明するように、蒸気供給装置10で作られた蒸気が、既設蒸気供給装置4よりも優先的に、熱機器3に供給される。
【0016】
先ず、既設蒸気供給装置4を説明する。既設蒸気供給装置4は、燃料を燃焼させて高圧蒸気を作るボイラ2を備えている。このボイラ2で作られた高圧蒸気が、主配管11を経て、高圧蒸気ヘッダ12に供給されている。高圧蒸気ヘッダ12には、高圧蒸気系統用配管9と既設高圧側配管13が接続されており、高圧蒸気系統用配管9は、建物1に既設の例えばタービンなどの高圧蒸気系統に接続され、それら高圧蒸気系統には、高圧蒸気ヘッダ12から高圧蒸気系統用配管9を介して高圧蒸気が供給される。
【0017】
一方、既設高圧側配管13は減圧弁15より下流の既設低圧側配管14を経て、熱機器3に接続されている。高圧蒸気ヘッダ12から既設高圧側配管13に流入した高圧蒸気は、減圧弁15で減圧されて低圧蒸気となり、既設低圧側配管14を経て熱機器3に供給される。なお、高圧蒸気とは0.1[MPa(G)](約120℃)以上の蒸気であり、低圧蒸気とは0.1[MPa(G)]未満の蒸気である。工場などではボイラ2で高圧蒸気を製造し、特に高圧を要する器具以外では、その手前で必要圧力に減圧するのが一般的である。
【0018】
既設高圧側配管13、既設低圧側配管14には、減圧弁15の前後にそれぞれ圧力センサ16、17が取り付けてある。圧力センサ16により、高圧蒸気ヘッダ12から既設高圧側配管13に流入される高圧蒸気の圧力P5が検出される。また、圧力センサ17により、減圧弁15で減圧された低圧蒸気の圧力P4が検出される。
【0019】
熱機器3で加熱に使用されて凝縮した水は、既設還水配管20を経て還水槽21に戻される。還水槽21には、軟水器22で軟水にされた水(上水)も供給されている。還水槽21に溜められた水は、ボイラ補給水として、既設補給配管23を経てボイラ2に供給されている。そして、燃料の燃焼によってボイラ2で作られた高圧蒸気が、主配管11に供給されている。
【0020】
次に、本発明の実施の形態にかかる蒸気供給装置10を説明する。蒸気供給装置10は、太陽熱を利用して集熱管31内に満たされた水を沸騰させて蒸気を作る複数の集熱器30を備えている。集熱器30は、集熱管31に集光することで高温が得られ、また太陽の追尾の必要がない線集光型が望ましい。集熱量を増やすため、集熱器30は南向き(北半球)、緯度と同じ程度の傾斜で設置する。また、従来の太陽熱温水器のサイズから考えて、集熱器30のサイズは2mL×1mWの大きさを1つのモジュールとすることが望ましい。
【0021】
集熱器30で沸騰して作られた蒸気は、蒸気配管32を経てアキュムレータ33に送られている。アキュムレータ33は各集熱器30の上部にそれぞれ設けられており、各集熱器30で生じた蒸気がそれぞれのアキュムレータ33に集まるようになっている。集熱管31は上がり下がりが無いようにし、中で生じた蒸気がスムーズにアキュムレータ33へ移動するようにする。
【0022】
アキュムレータ33は、2mL×1mWの集熱器30のサイズに対して、同様の幅で内径250mm程度の円筒容器とすることが望ましい。この形状は、日射条件が良い場合に約1時間分の蓄熱ができる容量であること、耐圧的に有利で集熱器30と一体化しやすいこと、法的規制の緩い小型圧力容器の適用範囲内である、という利点がある。また、放熱ロスを減らすために、外側を断熱することが望ましい。
【0023】
アキュムレータ33の内部にはボールタップ34が設けてあり、水面高さL1の量に不足すると、還水配管35からアキュムレータ33に給水される。アキュムレータ33の下方には蒸気配管32が配置され、アキュムレータ33の長手方向に延びており、多数の小孔(不図示)が設けられている。集熱管31で沸騰して蒸気配管32を上昇してきた蒸気は、上記の小孔を経て微細な気泡となってアキュムレータ33の水中にまんべんなく広がり、水全体を均一に加熱する。アキュムレータ33の底部には還水管29が接続され、その他端は集熱管31の最下部と接続されており、集熱管31で蒸気が発生して上昇するのと入れ違いに、集熱管31に水を満たし、沸騰を継続させる。
【0024】
アキュムレータ33には、還水配管35の一端と、熱機器3に蒸気を供給する往管である低圧蒸気配管36の一端が接続されている。還水配管35の他端は、熱機器3と既設蒸気供給装置4の還水槽21とを結ぶ、既設還水配管20の途中に接続されている。すなわち還水配管35は、一部管路(既設還水配管20)を既設蒸気供給装置4と共有して、熱機器3と連通している。還水配管35には、ストレーナ37、給水ポンプ38、逆止弁39、圧力センサ40などが設けられている。圧力センサ40により、給水ポンプ38の稼動で還水配管35に送水される水の圧力P1が検出される。
【0025】
低圧蒸気配管36の他端は、既設蒸気供給装置4が備える既設低圧側配管14の途中に接続されている。低圧蒸気配管36には、温度センサ49、ストレーナ50、逆止弁51、減圧弁52、圧力センサ53などが設けられている。温度センサ49により、低圧蒸気配管36内の蒸気の温度Tが検出される。また、圧力センサ53により、減圧弁52によって減圧されて、低圧蒸気配管36から既設低圧側配管14に供給される蒸気の圧力P3が検出される。
【0026】
低圧蒸気配管36には減圧配管55が接続され、減圧配管55には、圧力センサ60、真空ポンプ61、逆止弁62、電磁弁63などが取り付けられている。また、圧力センサ60により、低圧蒸気配管36内の圧力P2(減圧弁52によって減圧される前の低圧蒸気配管36内の圧力P2)が検出される。
【0027】
給水ポンプ38は、圧力P1が圧力P3よりボールタップ最低作動圧力以上高くなるように稼働する。給水ポンプ38は、熱機器3と還水槽21とを結ぶ既設還水配管20中を流れる還水の一部を、還水配管35を経て吸い込み、アキュムレータ33に送水する。あるいは給水ポンプ38は、別途軟水処理された水(不図示)を吸い込み、アキュムレータ33に送水するようにしてもよい。こうしてアキュムレータ33の内部には、水面高さL1まで水が溜められる。
【0028】
電磁弁63を開いて真空ポンプ61を稼動させることにより、減圧配管55を通じて低圧蒸気配管36内を強制排気して、低圧蒸気配管36内を減圧させることができる。真空ポンプ61は、必要到達圧力が10[kPa]程度であり、蒸気や水滴を含んだ気体を排気することから、水封式真空ポンプが望ましい。低圧蒸気配管36や集熱管31などの内部を一度減圧してしまえば、運転中の排気量はわずかであるので、排気速度や消費電力の小さな機種で十分である。
【0029】
水封式真空ポンプは補給水が必要なので、還水配管35に送水される水の一部、あるいは軟水処理された水を使用する。還水を使用する場合は、補給水槽45と、補給水槽45に還水配管35から送水するバイパス配管46と、補給水槽45から真空ポンプ61に水を補給する配管64を設けておくと良い。補給水槽45にはボールタップ47が設けてあり、水面高さL2の量に不足するとバイパス配管46から補給水槽45に給水されるようにボールタップ47が作動することにより、補給水槽45の内部には、水面高さL2まで、水が溜められている。
【0030】
また、低圧蒸気配管36の途中には、減圧配管55と、リーク配管56が接続してある。リーク配管56には、安全弁57が取り付けられており、低圧蒸気配管36内の蒸気の圧力が許容範囲を超えると、リーク配管56を経て外部に蒸気がリークされる。
【0031】
真空ポンプ61の稼動および電磁弁63の開閉は、制御部65によって制御される。制御部65には、温度センサ49によって検出された低圧蒸気配管36内の蒸気の温度Tと、圧力センサ60によって検出された低圧蒸気配管36内の圧力P2(減圧弁52によって減圧される前の低圧蒸気配管36内の圧力P2)が入力され、それらの検出値T、P2に基づいて、真空ポンプ61の稼動および電磁弁63の開閉が制御される。
【0032】
さて、この蒸気供給システム5の始動時には、低圧蒸気配管36内の圧力P2が一定以下になるまで、電磁弁63が開いて真空ポンプ61が稼動する。この動作により、減圧配管55を通じて低圧蒸気配管36内が強制排気され、既設蒸気供給装置4の系内(低圧蒸気配管36、アキュムレータ33、還水配管35、集熱管31、蒸気配管32)から空気が除去され、既設低圧側配管14への空気の混入が防止される。
【0033】
蒸気供給システム5の始動後、低圧蒸気配管36内の蒸気の沸点が大気圧での沸点よりも低い場合は、減圧配管55を通じて低圧蒸気配管36内を強制排気して、低圧蒸気配管36内を飽和圧力程度まで減圧する。すなわち温度センサ49で検出される温度Tが100℃未満の場合は、制御部65は、電磁弁63を開け、圧力センサ60で検出される圧力P2が、温度Tの飽和圧力以下となるように、真空ポンプ61の運転を制御する。例えば、温度Tが45℃の時は圧力P2が10[kPa]前後となるように真空ポンプ61の運転を制御し、温度Tが60℃の時は圧力P2が20[kPa]前後となるように真空ポンプ61の運転を制御する。
【0034】
アキュムレータ33内部の水温が集熱管31内部の水温より低い場合は、集熱管31で沸騰が起こって蒸気が蒸気配管32を経てアキュムレータ33に上昇し、アキュムレータ33内部の水温を高める。この際、集熱管内壁では気泡が連続的に生じて集熱管内部を強制的に撹拌するので、従来の太陽熱温水器集熱部における熱伝導と自然対流による熱伝達に比べて、熱伝達率が高い。逆にアキュムレータ33内部の水温が集熱管31内部の水温より高い場合は、集熱管31内部で沸騰は起こらず、またアキュムレータ33の方が集熱管31より上部にあって自然対流も起きない。よって、アキュムレータ33を適切に保温している場合は、ほとんど放熱しない。
【0035】
一方、低圧蒸気配管36内の蒸気の温度Tが大気圧での沸点(約100℃)よりも高い場合は、電磁弁63を閉じ真空ポンプ61を停止する。日射量の増加とともに集熱管31からの蒸気でアキュムレータ33内部の水温が上昇し、圧力センサ60で検出される低圧蒸気配管36内の圧力P2も上昇する。この間、アキュムレータ33方の蒸気は、アキュムレータ33内部に飽和水の状態で蓄えられる。
【0036】
一方、建物1に予め設置されている既設蒸気供給装置4においても、ボイラ2で作られた蒸気が、高圧蒸気ヘッダ12で分けられて減圧弁15で減圧され、低圧蒸気となって熱機器3に供給される。以上のように、熱機器3には、新しく組み込まれた蒸気供給システム5と、建物1に予め設置されている既設蒸気供給装置4の両方から低圧蒸気を供給することができる。
【0037】
ここで、蒸気供給装置10は、既設蒸気供給装置4より優先して熱機器3に蒸気を供給するように設定されている。即ち、既設蒸気供給装置4の既設低圧側配管14に設けられている減圧弁15の設定と、蒸気供給システム5の低圧蒸気配管36に設けられている減圧弁52の設定は、既設低圧側配管14に供給される蒸気の圧力P3が、既設蒸気供給装置4の減圧弁15で減圧された圧力P4よりも僅かに大きくなる(P3>P4)ように定めておく。
【0038】
日射量が増加して、圧力P2が圧力P3の設定値を上回るようになると、アキュムレータ33の水面から蒸発した蒸気が、低圧蒸気配管36と減圧弁52を経て、熱機器3に供給され始める。日射量が減少しても、アキュムレータ33内部の水温が高くて圧力P2が圧力P3の設定値を上回っている間は、引き続き熱機器3に供給され続ける。このように日射量の変動がアキュムレータ33で吸収され、太陽熱で作られた一定圧力(圧力P3の設定値)の低圧蒸気が、長時間連続して蒸気供給装置10から熱機器3に供給される。
【0039】
アキュムレータ33の水面における蒸気流速は小さいので、低圧蒸気配管36には水滴の同伴が少ない乾き度の高い良質な蒸気が供給される。なお、低圧蒸気配管36への水滴の同伴を防止するために、アキュムレータ33への水の補給は、アキュムレータ33の下部から行い水面をなるべく波立たせないようにすると良い。また、蒸気配管32からアキュムレータ33内の水中へ供給される蒸気が、前述のように微細な気泡となるように構成することで、水面を波立たせることを抑制している。
【0040】
アキュムレータ33から熱機器3に蒸気が供給されるうちに、圧力P2が圧力P3の設定値を下回ってくると、減圧弁52が閉まって蒸気供給装置10からの蒸気供給が止まる。熱機器3における蒸気消費に伴って、既設低圧側配管14の圧力が圧力P4の設定値まで低下すると、今度は既設高圧側配管13から減圧弁15を経て、熱機器3に蒸気が供給され始める。この状態は、日射量が再び増加して、圧力P2が圧力P3の設定値を上回るようになるまで継続する。このように、日射量が不足する場合は、一定圧力(圧力P4の設定値)の低圧蒸気が、既設高圧側配管13から熱機器3に供給される。
【0041】
つまり、熱機器3には圧力P3の設定値を上限、圧力P4の設定値を加減とする圧力の低圧蒸気が、常時安定して供給される。また圧力P3の設定値が圧力P4の設定値より僅かに高いため、蒸気供給装置10が既設高圧側配管13より、優先して熱機器3に低圧蒸気を供給する。よって既設蒸気供給装置4の、燃料消費量やCO2排出量を削減することができる。
【0042】
ところで、リーク配管56には安全弁57が取り付けられている。集熱器30の集熱管31に集光される太陽熱が強すぎて、既設蒸気供給装置4の系内(低圧蒸気配管36、アキュムレータ33、還水配管35、集熱管31、蒸気配管32)の圧力が許容範囲を超えた場合は、リーク配管56に取り付けられた安全弁57が開き、リーク配管56を経て外部に蒸気がリークされる。これにより、例えば集熱器30の廻りの配管等からの蒸気漏れが防止される。
【0043】
以上の結果をまとめると、第一に太陽熱によって既設蒸気供給装置4のボイラ2の燃料消費量を抑制できる。第二に、不安定な太陽熱を効果的に利用して、工場などでニーズの高い低圧蒸気を安定して製造することができる。第三に、既設蒸気供給装置4の系内に空気が混入する心配もなく、一定圧力でかつ乾き度の高い良質な蒸気を供給できる。第四に、蓄熱媒体として水を利用しているので、安価安全であり、廃棄も容易である。その他、蒸気供給システム5は、集熱部と蓄熱部の一体化したり、真空ポンプ類・減圧弁・安全弁・給水ポンプ類等を一体化したりすることが可能で、既設蒸気供給装置4への組み込みが容易である。
【0044】
以上、本発明の好適な実施の形態の一例を説明したが、本発明はここに示した形態に限定されない。建物1に予め設置されている既設蒸気供給装置4に、新しく蒸気供給装置10を組み込む場合、既設低圧側配管14の廻りに減圧弁52を設置するスペースが無い場合が考えられる。その場合は、図2に示すように、真空ポンプ類と減圧弁・安全弁を一体化し(ポンプユニットA)、これを集熱部近傍に設置する。また、建物1に予め設置されている既設蒸気供給装置4に、新しく蒸気供給装置10を組み込む場合、既設還水配管20の廻りに給水ポンプ類の設置スペースが無い場合が考えられる。その場合は、図3に示すように、真空ポンプ類と減圧弁・安全弁・給水ポンプ類を一体化し(ポンプユニットB)、これを集熱部近傍に設置する。また、既設蒸気供給装置を備えた建物に蒸気供給装置を導入する例を示したが、本発明は新築建物にも適用できる。本発明はボイラ等の既設蒸気供給装置を備えない場合に、熱機器に対して蒸気を供給する装置としても適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、建物内に発生する蒸気需要に有用である。
【符号の説明】
【0046】
1 建物
2 ボイラ
3 熱機器
4 既設蒸気供給装置
5 蒸気供給システム
9 高圧蒸気系統用配管
10 蒸気供給装置
11 主配管
12 高圧蒸気ヘッダ
13 既設高圧側配管
14 既設低圧側配管
15 減圧弁
16、17 圧力センサ
20 既設還水配管
22 軟水器
29 還水管
30 集熱器
31 集熱管
32 蒸気配管
33 アキュムレータ
34 ボールタップ
35 還水配管
36 低圧蒸気配管
37 ストレーナ
38 給水ポンプ
39 逆止弁
40 圧力センサ
45 補給水槽
46 バイパス配管
47 ボールタップ
49 温度センサ
50 ストレーナ
51 逆止弁
52 減圧弁
53 圧力センサ
55 減圧配管
56 リーク配管
57 安全弁
60 圧力センサ
61 真空ポンプ
62 逆止弁
63 電磁弁
65 制御部
図1
図2
図3