【実施例】
【0023】
本発明による実施例に係る気液接触板について、図面を参照して説明する。
図1は、気液接触板の概略図である。
図1に示すように、気液接触板10は、基板11の上側から下側方向に処理液12が流れ、処理液12に接触したガス13の一部が該処理液12に吸収される気液接触板であって、基板11の下端部側が所定間隔のピッチを有する下に凸状の鋸歯状部14を有するものである。
【0024】
図2−1は、下に凸状の鋸歯状部14の各山部(1mm)を示す図、
図2−2は、下に凸状の鋸歯状部14の各山部(3mm)を示す図である。
図2−1及び
図2−2に示すように、下に凸状の鋸歯状部14の各山部14−1〜14−8は、各々左右対称の斜面部(6〜8mm)14aと、斜面部14aの頂面が平坦部(1〜3mm)14bとから構成されている。
図2−1に示すように、斜面部14aが8mmの場合には、平坦部14bが1mmとしている。また、
図2−2に示すように、斜面部14aが6mmの場合には、平坦部14bが3mmとしている。
【0025】
この下に凸状の鋸歯状部14は、気液接触板10を複数段重ねた場合、後述するように、基板11の上側から流れてきた処理液12を次の気液接触板10に受け渡す液渡し構造の役割を果たしている。
【0026】
また、
図1に示すように、基板11には、所定間隔を持って複数段の液分散用の孔群20が設けられている。
この複数段の液分散用の孔群20は複数の孔20aから構成されており、その孔20aの配列は千鳥状配列とした液分散構造としている。
この孔20aとしては、孔の直径4.5〜6.0mmとしている。
これは、直径が4mmの孔では分散効果が良好に発揮されないからである。
【0027】
図3は、実施例に係る気液接触積層ブロック体の積層状態を示す概略図である。
図3に示すように、
図1に示す気液接触板10は所定間隔を有して複数(本実施例では8枚)積層されて気液接触積層ブロック体50を構成し、この気液接触積層ブロック体50を90度の位相をもって交互に複数段(3段50−1〜50−3)重ねている。
【0028】
この気液接触積層ブロック体50とすることで、吸収塔の内部にこの気液接触積層ブロック体50を複数段(3段50−1〜50−3)重ねて充填して、ガス処理をし、ガス13中に含まれる例えばCO
2を処理液12に吸収させるようにしている。
【0029】
この気液接触板10を充填してなる吸収塔は、例えば化学プラントの一設備として備えられ、化学プラント内で発生したガス中に含まれる例えば二酸化炭素、ハロゲン化水素やアンモニアなどの水溶性ガス成分を水等の処理液による吸収で浄化するための吸収塔、あるいは脱臭装置として有利に使用することができる。また、これらのガス成分を水中に溶かして水溶液を製品として得るための溶かし込み装置としても使用することができる。
【0030】
ここで、処理液12としては、例えば二酸化炭素やハロゲン化水素の吸収に用いられる吸収液としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミン系化合物の水溶液が用いられる。また、アンモニアの吸収に用いられる吸収液としては、水、希硫酸等の水溶液が用いられる。
【0031】
図4は、本発明の気液接触積層構造体を用いたガス浄化装置の概略図である。ガス浄化装置の吸収塔内では、気液接触積層ブロック体50が鉛直軸方向に、90度の位相をもって交互に複数段(本実施例では50−1〜50−7)設けて、多段処理を行うような気液接触積層構造体としている。
【0032】
図4に示すように、本実施例に係るガス浄化装置70は、ガス13が流通するガス浄化装置本体71と、該ガス浄化装置本体71内に配設される気液接触積層ブロック体50が鉛直軸方向に、90度の位相をもって交互に複数段(本実施例では50−1〜50−7)設けて、多段処理を行うような気液接触積層構造体60と、前記ガス浄化装置本体71の底部71a(又は上部71b)のいずれかよりガス13を導入するガス導入手段であるガス供給口72と、前記ガス供給口72の設置側と異なる側より浄化ガス13aを排出するガス排出手段であるガス排出口73と、前記気液接触積層構造体60に対して上方から処理液12を供給する処理液供給手段であるノズル74と、ガス浄化装置本体71の底部71a付近に設けられた処理液12を排出する処理液排出手段(排出ライン75a、使用済処理液タンク75bからなる)75とを具備するものである。なお、処理液12は処理液タンク76a、供給ポンプ76b及び供給ライン76cによりノズル74に導入されている。なお、図中、符号77はミストを捕集するミストエリミネータを図示する。
【0033】
また、このガス浄化装置をCO
2吸収塔とし、処理液12としてアミン吸収液を用い、CO
2を吸収した処理液からCO
2を追い出す再生塔を設け、アミン吸収液を循環させる循環ラインを設置して、連続して排ガス中のCO
2を処理するようにしてもよい。
【0034】
このガス浄化装置70は、上方からは処理液12を噴霧するノズル74が設けられ、ガス13は処理液12と対向する方向(同一方向でもよい)から導入され、気液接触積層ブロック体50を構成する気液接触板10の表面で処理液12との気液接触を行うようにしている。
【0035】
この多段に積層させる際に、気液接触積層ブロック体50を単に多段に重ねるのではなく、
図3に示すように、90度の位相をもって交互に重ねることで、処理液12の落下、液受け渡し、液分散を効率的に行っている。
【0036】
具体的には、
図3では、気液接触積層ブロック体50を3段(50−1〜5−3)重ねている状態を示している。先ず、第1段の気液接触積層ブロック体50−1では、紙面と直交する方向に8枚の気液接触板10−1〜10−8が積層されている。そして、第2段の気液接触積層ブロック体50−2では、紙面と平行する方向に8枚の気液接触板が積層されている(図面ではその内の一枚の気液接触板10−1のみが見えている)。そして、第3段の気液接触積層ブロック体50−3では、紙面と直交する方向に8枚の気液接触板10−1〜10−8が積層されている。
【0037】
そして、第2段の気液接触積層ブロック体50−2の気液接触板10−1の下方に形成された所定間隔のピッチを有する下に凸状の鋸歯状部14の各山部14−1〜14−8は、第3段の気液接触積層ブロック体50−3の8枚の気液接触板10−1〜10−8にそれぞれ当接している。
【0038】
図5−1は、実施例に係る液受渡し構造の模式図である。
図5−2は、比較例に係る液受渡し構造の模式図である。なお、
図5−1では、
図3の一部を抜き出している。また、処理液は2本のみ流下させた状態である。
図5−1に示すように、下に凸状の鋸歯状部14の各山部14−1〜14−5同士の間隔D
1と、第3の気液接触積層ブロック体50−3を構成する気液接触板10−1〜10−5の積層間隔D
2とを略同一としている。
なお、従来の端部が直線状の気液接触板の場合には、
図5−2に示すように、下段の位相を90度変えた場合には、気液接触板が傾いている場合に上段側の気液接触板101−1の下縁部分と下段側の気液接触板101−1〜101−5との各当接部分において、処理液12の落下が不均一になる。
【0039】
これに対して、本発明のように、下に凸状の鋸歯状部14の各山部14−1〜14−8を形成することで、処理液12を下段側の気液接触板101−1〜101−5に均一に渡すことができる。
【0040】
すなわち、第2段目の気液接触積層ブロック体50−2から処理液12が落下する際に、鋸歯状部14を設けているので、液の落下がその山部14−1〜14−8によって行われることとなる。そして、第3段目の気液接触積層ブロック体50−3が90度の位相をもって設けられているので、山部14−1〜14−8に対応する気液接触板10−1〜10−8に液が落下され、処理液12の受け渡しが確実となる。
【0041】
このように、第1段の気液接触積層ブロック体50−1から落下される処理液12の液の受け渡しが、液渡し部Aにより確実となると共に、基板に設けた液分散部である複数段の液分散用の孔群20の液分散部Bにより、基板11の表面全体に処理液12が広がることとなる。この結果、処理液12とガス13との気液接触効率が向上する。
そして、これらが交互に行われるので、結果として液分散効率が向上し、処理液12とガス13との気液接触効率が向上することとなる。
【0042】
図6−1は、実施例に係る液受け部と液分散部を備えた正面図である。
図6−2は、その側面図である。
図6−1及び
図6−2に示すように、前記孔群20と基板11の上縁部11aとの間には、所定間隔を持って凸状の液受け群30を設けるようにしてもよい。
この凸状の液受け群30は、上方から落下した処理液12を受止める液受止部の役割を果たしている。
【0043】
この前記液受け群30は、複数の円筒(又は円柱)30aから構成されている。
円筒(又は円柱)30aの径は9mm程度としている。
【0044】
これは、
図6−1及び
図6−2に示すように、液受け群30の複数の円筒30aが存在することで、仮に山部の位置合わせがずれた場合にも、落下した処理液12はこの円筒30aの側壁に当接し、基板11側に処理液を導くことができる。
円筒30aに代わり中実な円柱としてもよい。この円筒や円柱は基板と一体成形により形成される。なお、基板に穴を形成し、この穴にパイプを通すことで液受け群30とすることもできる。この際には、スペーサが別途必要となる。
【0045】
また、
図7に示すように、他の実施例に係る気液接触板10は、基板11に所定間隔を持って突起群21が設けられている。
この突起群21の配列も千鳥状配列としている。
この突起群21により、基板11を流れる処理液12の分散性を向上させる分散部の役割を果たしている。
【0046】
図8−1〜
図8−3は孔群の千鳥状配列の一例である。
図8−1は、実施例に係る孔群を構成する孔の配列状態(二列千鳥配列)を示す図である。
図8−2は、実施例に係る孔群を構成する孔の配列状態(三列千鳥配列)を示す図である。
図8−3は、実施例に係る孔群を構成する孔の配列状態(四列千鳥配列)を示す図である。
【0047】
図9−1〜
図9−8は基板に孔群の千鳥状配列を設けた一例を示す。
図9−1は、実施例に係る孔群を構成する孔(孔径5mm)を二列千鳥配列で孔を80個配置した基板の概略図である。
図9−2は、実施例に係る孔群を構成する孔(孔径5mm)を三列千鳥配列で配置した基板の概略図である。
図9−3は、実施例に係る孔群を構成する孔を二列千鳥配列で孔を104個配置した基板の概略図である。
図9−4は、実施例に係る孔群を構成する孔(孔径5mm)を三列千鳥配列で配置した基板の概略図である。
図9−5は、比較例に係る孔群を構成する孔(孔径3mm)を四列千鳥配列で配置した基板の概略図である。
図9−6は、比較例に係る孔群を構成する孔(孔径4mm)を四列千鳥配列で配置した基板の概略図である。
図9−7は、実施例に係る孔群を構成する孔(孔径5mm)を四列千鳥配列で配置した基板の概略図である。
図9−8は、実施例に係る孔群を構成する孔(孔径4mm)を三列千鳥配列で配置した基板の概略図である。
表1にこれらの千鳥状配列と孔径、ピッチ(P
1、P
2)、個数を示す。
【0048】
【表1】
【0049】
図10及び
図11は、試験例に係る基板の濡れ性の評価結果の写真である。なお、本試験においては、処理液の液量を10cc/分で一箇所から流した。
【0050】
図10に示すように、三列千鳥配列及び二列千鳥配列はいずれも液分散効果が良好であった。
また、
図11に示すように、孔径3mmの四列千鳥配列、孔径4mmの四列千鳥配列は液分散効果が悪いが、孔径5mmの四列千鳥配列、孔径4mmの三列千鳥配列は液分散効果が良好であった。
【0051】
さらに、基板11の表面が親水性の構造であることが好ましい。
基板を構成する材料として樹脂を用いる場合には、親水性が低いので、濡れ性能が低下する。そこで、基板11の表面を親水性の構造とすることで、濡れ性能を良好としている。
この構造は、例えばサンドブラストやショットブラスト等のブラスト処理、スクラッチャーを用いたスクラッチ処理等の公知の物理的処理により粗面構造とするか、プラズマ処理等の公知の化学的処理により親水基を有する構造とすればよい。
【0052】
また、基板の材料である樹脂に親水性材料を含有して、予め基板に練りこむようにしてもよい。
【0053】
ここで、基板11として使用可能な樹脂材料としては、CO
2を吸収するような場合には、アミン系の吸収液などがアルカリ性であることから、耐アルカリ性を有する樹脂材料が好ましく用いられる。具体的には、ポリプロピレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ナイロン、塩化ビニル等が挙げられる。特に、ポリプロピレンは耐アルカリ性に優れるため、好ましく用いられる。
【0054】
また、基材に混合される親水性付与材としては、例えば脂肪酸エステル系化合物、ポリエーテル系化合物等が挙げられる。脂肪酸エステル系化合物としては、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。また、ポリエーテル系化合物としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等が挙げられる。基材に対する親水性付与材の添加量は、樹脂100部に対して1重量部〜30重量部程度とするのが好ましい。
【0055】
図12は、基板の表面処理の相違におけるガス流速と濡れ面積比との関係を示すグラフである。
図12に示すように親水化剤を添加したものを1とすると、ブラスト処理、プラズマ処理が良好であることが判明した。
【0056】
また、基板11の表面に鉛直軸と直交する方向に横溝80を基板11の一面亙って形成するようにしてもよい。
図13は、基板11に横溝を形成した一例を示す図である。
図13に示すように、基板11の板厚が2mmの場合、横溝80の溝幅Lは1.0mmから0.3mmとするのが好ましい。また横溝80と隣接する横溝80の基板11の表面の長さWは0.75mm〜0.3mmとするのが好ましい。
この範囲以外の横溝の場合には濡れ性能が良好ではない。
【0057】
孔を形成した基板より、孔に横溝をつけた基板の方が液の広がりが拡大しているのが確認された。なお、従来の孔も横溝もない通常の基板に対して、孔を形成した基板は共に濡れ面積が大幅に拡大した。