(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態に係る放電用電極部材およびこれを用いたオゾン発生器について、図面を参照して説明する。
図1は本発明の実施形態に係る一対の放電用電極部材1(以下、部材1とも記載する。)が空間を空けて配置された構成を示す図である。各部材1は、セラミック焼結体2とセラミック焼結体2に接合された電極3とを有する。セラミック焼結体2の形状には、例えば板形状、および筒形状などがある。
図2に示すように、本実施の形態による放電用電極部材1は、板形状で、かつ略矩形状のセラミック焼結体2を有している。セラミック焼結体2を平面視したとき、その4隅は、曲線状になっていることが好ましい。すなわち、セラミック焼結体2の外周面は、その4隅において、曲面となっていることが好ましい。このように曲面が形成されていることによって、セラミック焼結体2の4隅に電界が集中することによるセラミック焼結体2の割れを抑制することができる。
【0017】
セラミック焼結体2の主結晶相(第1の結晶相)は、アルミナからなることが好ましい。アルミナは、絶縁抵抗が高く、耐電圧が比較的高いからである。
【0018】
また、セラミック焼結体2は、第1の結晶相の他に第2の結晶相を含有する。第2の結
晶相は、例えばチタン(Ti)等の遷移金属元素を含有する。この遷移金属元素は、酸素と結合しているが、その酸素原子が存在すべき格子の一部には酸素元素が存在しておらず、酸素空孔となっている。
【0019】
例えば、放電用部材1をオゾン発生器に用いた場合、
図1および
図3に示すように、セラミック焼結体2は、放電空間となる空間6(以下、放電空間6ともいう。)に接するように配置される。すなわち、電極3は、セラミック焼結体2の放電空間6に接する面と反対側の面に接合される。放電空間6には、酸素を含む原料ガスが供給されて、原料ガス中の酸素が放電空間6中で反応することにより、オゾンが生成される。セラミック焼結体2における酸素空孔は、酸素ガスから生成したオゾンと化学的に反応し、その後に生成するオゾンの分解を抑制すると考えられる。このオゾン分解抑制のより詳しいメカニズムは次の通りであると推定される。
【0020】
セラミック焼結体2の酸素空孔は、正に帯電している。オゾンは極性を有し、その負極は、酸素空孔と電気的に結合する。酸素空孔と結合したオゾン(負極が酸素空孔と電気的に結合したオゾン)の正極は、放電空間6中に存在しやすい。一方、放電空間6において生成されたオゾンは、放電の起点となるセラミック焼結体2の表面2a付近で最も分解されやすい。放電空間6において新たに生成したオゾンは、セラミック焼結体2の表面2aに近づこうとしても、酸素空孔と電気的に結合したオゾンが障壁となり、表面2aに近づくことができない。従って、酸素空孔と結合したオゾンが、放電空間6中で新たに生成されたオゾンが表面2aに近づくことを抑制するため、オゾンの分解が抑制される。
【0021】
以上により、セラミック焼結体2の空間6に接する面に酸素空孔が存在すると、放電空間6に発生するオゾン濃度を長時間高く保持することができる。
【0022】
さらに、上記第2の結晶相は、通常オゾン発生器で使われる交流電圧の周波数帯における誘電損失が比較的低いので、交流電圧を長時間印加してオゾンを発生させても、部材1から発生する熱量を少なくすることができる。
【0023】
第2の結晶相に含まれる遷移金属元素は、チタン(Ti)であることが好ましい。チタンを含む第2の結晶相は、オゾン発生器で通常使用される環境温度、例えば室温から200℃程度までの範囲において、酸素空孔の量が変動しにくい。このため、セラミック焼結体2にチタンを含む第2の結晶相を含有させると、発生するオゾン濃度をさらに長時間高く保持することができる。
【0024】
また、オゾン発生器において、放電空間6に介在させる原料ガスBに酸素ガス以外の窒素ガスまたは炭酸ガスが含まれている場合、第2の結晶相は生成した負極性イオン(NO
3−,CO
32−)を選択的に最初に吸着する。すなわち、セラミック焼結体2の表面2aは、第2の結晶相によって半導電性を有することから、上記負極性イオンから放出された電子が流れ、これらの電子の蓄積を抑制することができる。これにより、窒素酸化物の生成が抑制され、オゾンの発生効率は向上する。具体的な理由は、以下の通りである。
【0025】
セラミック焼結体の表面に負極性電荷(イオン)が過剰に蓄積すると、放電空間6における電界は影響を受け、放電空間6におけるオゾン化が抑制される。これにより、放電空間6には、オゾン生成に寄与しない酸素の割合が増加し、放電空間6で活性化された酸素が窒素と反応する確率が増える。このため、セラミック焼結体2の表面2aに負極性イオンの電子が過剰に蓄積すると、窒素酸化物が生成しやすくなる。以上により、表面2aに負極性イオンの電子を過剰に蓄積させず、外部へリークさせることができれば、窒素酸化物の生成が抑制され、オゾンの発生効率は向上する。
【0026】
本実施の形態による放電用電極部材1によれば、セラミック焼結体2が第2相を含有しているため、表面2aに負極性イオンの電子が蓄積されずに容易にリークされる。従って、本実施の形態による放電用電極部材1によれば、窒素酸化物の生成が抑制され、オゾンの発生効率は向上する。
【0027】
なお、第2の結晶相に含まれる遷移金属元素がチタンの場合、チタンは酸素空孔を安定的に形成しやすいので、特に窒素酸化物が生成しにくい。
【0028】
次に、セラミック焼結体2が有する電気的抵抗の特徴について説明する。第2の結晶相は、第1の結晶相よりも電気抵抗が低いので、第2の結晶相に含まれる酸素空孔の濃度を、セラミック焼結体2内で変化させることにより、セラミック焼結体2内で電気的抵抗を変化させることができる。セラミック焼結体2の断面の一部を拡大した
図2(c)には、セラミック焼結体2の厚み方向に均等に6等分したときの仮想線Y1〜Y5が描かれている。厚み方向の中心は仮想線Y3である。セラミック焼結体2の厚みは、典型的には1〜5mm程度である。なお、面2aは、放電空間6に接し、面2bは、電極に接合される。
【0029】
セラミック焼結体2において、放電空間6に接する面2aの表面抵抗率は10
5Ω〜10
11Ωである。面2aの表面抵抗率を10
5Ω〜10
11Ωの範囲に設定した理由は、第1に、負極性イオンの電子を表面2aから適度にリークさせて電子の過剰な蓄積を抑制することにより、オゾンの発生効率を向上させるためであり、第2に、この範囲であればアーク放電が抑制されるためである。
【0030】
また、面2a、および仮想線Y1、Y2、Y3における断面の酸素空孔を測定した場合、仮想線Y1、Y2、Y3における断面をそれぞれ面Y1a,Y2a,Y3a(不図示)とすると、酸素空孔は、面2a、Y1a、Y2a、Y3aの順で減少する。
【0031】
なお、仮想線Y4、Y5における断面をそれぞれ面Y4a、Y5a(不図示)とすると、面Y4a、Y5aにおける酸素空孔の量は、面2aにおける酸素空孔の量と面2bの酸素空孔の量の範囲内であることが好ましい。この範囲内であれば、面Y4a、Y5aにおける酸素空孔の量は、オゾン発生効率や窒素酸化物の発生量に大きな影響を及ぼさないからである。
【0032】
ここで、酸素空孔そのものの量を測定することは困難であるが、酸素空孔と相関を有する測定値を用いて、酸素空孔の含有量を測定することができる。すなわち、酸素空孔の量は、セラミック焼結体2に含まれるTiの平均価数と負の相関関係があるため、Tiの平均価数を測定することにより、酸素空孔の含有量を測定することができる。具体的には、酸素空孔が多いと、第2の結晶相に含まれるTiイオンの平均価数は減少し、酸素空孔が少なければTiイオンの平均価数は増加する。なお、ここで、価数ではなく平均価数と記載したのは、結晶格子に存在する個々のTiの価数は厳密にはばらつきがあるため、測定値としては平均価数をもって評価するのが妥当と考えられるからである。
【0033】
Tiイオンなどの遷移金属元素のイオンの平均価数は、X線吸収スペクトル(XAFSスペクトル:x-ray absorption fine structures)の吸収端付近に観察される"XANE
S"(X-ray Absorption Near Edge Structure)のスペクトルを分析することによって測
定することができる。遷移金属元素の平均価数の絶対値が測定できなくても、セラミック焼結体2の面2a、仮想線Y1、Y2、Y3における断面(Y1a、Y2a、Y3a)を分析すれば、平均価数の大きさを相対的に比較することができる。
【0034】
なお、着目した元素の価数が大きいほど、吸収端の位置は高エネルギー側にシフトする。価数が既知である試料と照合すれば、任意の遷移金属元素の平均価数を測定することが
できる。これにより、セラミック焼結体2の表面抵抗率と平均価数の関係も評価することができる。例えば、遷移金属元素がチタンであり、第2の結晶相がチタンを含む場合には、第2の結晶相に含まれるチタンの価数を変化させた試料を作製し、それぞれのXANESス
ペクトルのピーク位置とチタンの価数との関係を示す検量線グラフを作成する。この検量線グラフでは、チタンの価数が変化するのに伴い、XANESスペクトルのピーク位置がシフ
トする。この検量線グラフを用いれば、測定したい試料(チタンを含む第2の結晶相)に含まれるチタンの価数を内挿法または外挿法によって求めることができる。
【0035】
なお、遷移金属元素がチタンの場合には、面2aにおけるチタンの平均価数は、+3.4以上+3.95以下が好ましい。特に好ましくは、チタンの平均価数は+3.6以上+3.92以下である。
【0036】
また、セラミック焼結体2は、面2aからその深さ方向に、断面の表面抵抗率が面2aと比較して、連続的に減少することが好ましい。
【0037】
面2aの表面抵抗率が例えば10
7Ωの場合を例に説明する。面2aと平行に仮想線Y1、Y2、Y3における断面Y1a、Y2a、Y3aを加工によって形成したと仮定する。この場合、Y1、Y2、Y3の断面Y1a、Y2a、Y3aにおける表面抵抗率は、それぞれ例えば10
8Ω、10
9Ω、10
12Ωである。表面抵抗率は、面2aから内部に向かって段階的に増加しているのではなく、連続的に増加していることが好ましい。このように連続的な電気的抵抗の変化を有していると、セラミック焼結体2の誘電損失が比較的低くなると考えられる。
【0038】
セラミック焼結体2の体積固有抵抗は、10
12Ω・cm以上であることが好ましい。セラミック焼結体2全体としての電気抵抗を高くすることにより、高電圧を印加した場合の絶縁破壊が抑制されるからである。
【0039】
また、放電空間6に接する面2aと反対側の面2b、すなわち電極3が接合される面2bの表面抵抗率が、10
8Ω以上であることが好ましい。面2bは、通常、金属電極3が接合されるため、金属電極3と面2bの境界に電界が集中すると、この境界でアーク放電が発生して部材1が割れるおそれがある。面2bの表面抵抗率が10
8Ω以上であれば、アーク放電が抑制され、部材1が割れることを抑制することができる。
【0040】
なお、セラミック焼結体2の端面2cの表面抵抗率は、面2aよりも低いことが好ましい。これは、セラミック焼結体2に電極3を介して交流電源14から交流電圧を印加したときに、端面2c側に電界が集中してアーク放電が発生することによってセラミック焼結体2の端面2cが割れることを抑制できるからである。
【0041】
セラミック焼結体2の表面抵抗率の測定方法について説明する。面2a、2bのそれぞれの表面抵抗率は、セラミック焼結体2の任意の2点を選び、この2点に測定端子を当接して2点間の抵抗率を測定する。この場合において、測定端子とセラミック焼結体2との接触抵抗を少なくした状態で測定するため、測定端子とセラミック焼結体2の間に、銅箔、金箔、アルミニウム箔などの低抵抗の金属からなる金属箔を介在させた状態で測定することが好ましい。この金属泊を用いずに、Agを焼き付けてAg電極を形成し、このAg電極に測定端子を当接した状態で、表面抵抗率を測定することもできる。Ag電極を用いる場合には、測定端子を接合した状態で表面抵抗率を測定しても良い。Ag電極の代わりにIn/Ga(インジウム/ガリウム)を塗布したものを用いても良い。
【0042】
セラミック焼結体2の体積固有抵抗の測定方法について説明する。体積固有抵抗は、面2aと面2bに金属導体層を形成し、両金属導体層に測定端子を当接させた状態で、電気
抵抗を測定する。この場合に用いられる金属導体層としては、前記した金属泊、In/Ga、Ag電極を用いることができる。
【0043】
次に、放電用電極部材1を用いたオゾン発生器16について詳細に説明する。
図3に示すように、オゾン発生器16は、セラミック焼結体2と電極3とが接合された放電用電極部材1を一対有し、この一対の放電用電極部材1の間に形成された空間6に原料ガスBを介在させるとともに、この一対の放電用電極部材1の間に電圧を印加してこの空間6に放電を起こすことによってオゾンを発生させる。原料ガスBは、筐体12内で放電空間6に導入管(不図示)から導入され、発生したオゾンは回収管(不図示)を通って回収される。原料ガスBは、酸素ガスを主成分とし、不純物として窒素ガス等を含有する。
【0044】
放電用電極部材1間、具体的には電極3間に印加する交流電圧の周波数は1〜100kHzが好ましい。また、交流電圧は1〜10kVが好ましい。これにより、オゾンの発生濃度を上げることができる。
【0045】
なお、一対の放電用電極部材1の間の最短距離は、0.03〜1mmの間の一定値が選択される。
【0046】
本実施の形態によるオゾン発生器16を用いてオゾンを発生させれば、窒素酸化物が低減された、高濃度のオゾンを長時間連続して生成することができる。
【0047】
原料ガスBは、酸素を99.9%以上含むガスであることが好ましい。これにより、特に高濃度のオゾンを発生させることができる。
【0048】
図1(b)および
図3に示すように、セラミック焼結体2は金属電極3よりも大きいので、放電空間6の端である面2aが対向しており、金属電極3同士は対向していない。これにより、アーク放電の発生によるセラミック焼結体2の損傷を抑制することができる。
【0049】
なお、
図1に示すように一対の部材1が対向する実施形態だけでなく、
図4に示すようにセラミック焼結体2と金属電極3とが対向して放電空間6を形成しても良い。
図4の構成を有するオゾン発生器の場合は、
図1の構成を有するオゾン発生器よりも放電効率が増加しにくいものの、実用的には十分な濃度のオゾンを発生させることができる。
【0050】
なお、
図1,
図4に示すように、一方の金属電極3には、アース10を設ける。
【0051】
本発明の実施形態に係るオゾン発生器およびこれに使用可能な放電用電極部材は、上記の実施形態に限られず、本発明の要旨を変更しない態様であれば、実施形態を変更しても良い。
【実施例】
【0052】
(実施例1)
次のようにしてオゾン発生器16を作製した。
【0053】
(1)セラミック焼結体2の作製とその評価方法
アルミナ粉末87質量%、酸化チタン12質量%、酸化マグネシウム0.7質量%、酸化珪素0.3質量%からなる混合粉末を湿式粉砕した後、有機バインダーを添加してスラリーを作製した。このスラリーを噴霧乾燥して顆粒を作製した。得られた顆粒をプレス成形して四角形の板状体からなる成形体を作製した。成形体を1550℃で焼成し、焼結体を得た。焼結体全面を加工して、外辺が200mm、厚みが3.1〜5mmである四角形状の加工体を得た。加工体を水素ガス33%、窒素ガス67%を含むガス中で、1300
℃の温度で2時間還元処理して、還元体を得た。
【0054】
そして、還元体の外辺の四隅に半径3mmの曲率の曲面を形成した。
【0055】
還元体の一方の主面(面2a)を、還元体ごとに加工深さ0.1〜2mmの範囲で種々変化させて加工し除去した。これにより、面2aの表面抵抗率を変化させた。加工深さを多くすれば面2aの表面抵抗率が高くなり、加工深さを小さくすれば面2aの表面抵抗率が低くなった。
【0056】
還元体他方の主面(面2b)は、深さ1mm加工し除去した。
【0057】
これらの加工により、外辺196mmで四隅に曲面を形成した四角形状のセラミック焼結体2を得た。
【0058】
なお、上記のセラミック焼結体2の作製において、面2aの表面抵抗率を変えたセラミック焼結体2の作製個数は、表面抵抗率が同じセラミック焼結体2ごとに複数個とした。
【0059】
表1においては、このセラミック焼結体2の材質をAl2O3-TiO2と記載した。
【0060】
【表1】
【0061】
(2)セラミック焼結体2の電気的特性の測定(室温)、チタンの価数の測定
表1に示した各特性(体積固有抵抗および表面低効率)は以下のように測定した。体積固有抵抗は、面2aと2b間の抵抗を測定した。この場合において、面2aに直径60mmのAg電極、面2bに直径30mmのAg電極とその周囲にリング状の電極を形成して、両面間の電気抵抗を測定した。その結果、体積固有抵抗は、2×10
13Ω・cmであった。
【0062】
面2aの表面抵抗率を、表面抵抗率が10
6Ω未満の場合は、株式会社三菱化学アナリテックの抵抗率計ロレスタ−EP,ロレスタ−GPを使用した。表面抵抗率が10
6Ω以上の場合は、ハイレスタ−UPとMCPプローブ等を併用して測定した。この場合において、抵抗率計の端子とセラミック焼結体2との接触抵抗が測定値に付加されにくいようにするため、端子とセラミック焼結体2の間にアルミニウム箔を介在させた状態で表面抵抗率を測定した。その結果、表面抵抗率は、7×10
8〜1×10
11Ωであった。
【0063】
セラミック焼結体2を加工しながら、断面Y1、Y2、Y3における加工面の表面抵抗率を上記と同様にして測定した。その結果、表面2aの表面抵抗率と比較すると、断面Y1a、Y2a、Y3aにおける加工面の表面抵抗率は、表面2aの表面抵抗率よりも高く
、かつY1a,Y2a,Y3aの順に高かった。
【0064】
一方、表1のNo.2に用いたセラミック焼結体2について、面2a、Y1a、Y2a、Y3aの断面におけるチタンの平均価数を、X線吸収スペクトル(XAFSスペクトル)の吸収端付近に観察される"XANES"のスペクトルを分析することによって測定した。この測定にあたり、予め、チタンの価数が+3価(Ti
2O
3)と+4価(TiO
2)の2つの標準試料のスペクトルのピーク位置を求め、2つの標準試料のチタンの平均価数とピーク位置との関係を直線と仮定して、この直線を検量線とした。この検量線を用いて各試料のチタンの平均価数を計算した。
【0065】
その結果、面2a、Y1a、Y2a、Y3aの断面におけるチタンの平均価数は、それぞれ、+3.79、+3.91、+3.98、+4であった。
【0066】
(3)金属電極3の準備
外辺長さ180mm、厚み2mmの銅板を複数個準備した。
【0067】
(4)セラミック焼結体2と金属電極3の接合
セラミック焼結体2の面2bと金属電極3の一方の主面を接合して、放電用電極部材1を作製した。
【0068】
(5)オゾン発生器の作製
(4)で作製した放電用電極部材1を、セラミック焼結体2同士を対向させた状態で、筐体12に収容し、原料ガスの導入流路(不図示)と、発生したオゾンの排出流路(不図示)とを形成して、
図3に示すオゾン発生器16を作製した。
【0069】
(6)オゾン発生試験
下記の条件で試験した。
【0070】
放電電力密度: 5W/cm
2
放電空間6の距離(一対のセラミック焼結体2の表面2a間の最短距離): 0.1mm
原料ガス: 酸素ガス99.9%以上
原料ガス圧: 0.253MPa
その他の条件は表1に示す通りである。
【0071】
上記のオゾン発生試験後、セラミック焼結体2を観察した結果、クラック、亀裂は全く観察されなかった。また、放電プラズマ中には、アーク放電が起こらず安定であった。
【0072】
表1のNo.2〜6より明らかなように、セラミック焼結体2を用いた場合、30分後と192時間後のオゾン発生濃度が共に高く、窒素酸化物(NO
X)も発生しなかった。
【0073】
(実施例2)
実施例1のNo.2の(1)における還元温度と加工深さを変更した以外は、No.2と同様にしてオゾン発生器を作製し、実施例1と同様にして評価した。
【0074】
結果を表2に示した。No.7〜9に示すように、表面2aの表面抵抗率が5×10
5〜7×10
8Ωの範囲、体積固有抵抗が3×10
11〜6×10
13Ω・cmの範囲でも、オゾン発生濃度が高く、窒素酸化物(NO
X)も発生しなかった。なお、セラミック焼結体2の体積固有抵抗が3×10
11Ω・cmのNo.7では、オゾン濃度が実施例1と比べて若干低下したが、実用上は全く問題ない濃度であった。
【0075】
【表2】
【0076】
(比較例1)
面2aの表面抵抗を低くしたNo.1、面2aの表面抵抗を高くしたNo.5を作製し、その他の条件は実施例と同様にしてオゾン発生器を作製し、実施例1と同様に評価した。その結果、表1に示すように、30分後のオゾン濃度が低いだけでなく、196時間後のオゾン濃度が低下した。また、窒素酸化物も発生した。
【0077】
(比較例2)
アルミナ99.9%からなる四角形状の焼結体(外辺長さ196mm、厚み2mm)の両主面に酸化クロム膜を形成した放電用電極部材を作製した。この部材を用いた他は実施例1と同様にしてオゾン発生器No.6を作製し、実施例と同様に評価した。その結果、表1に示すように、30分後のオゾン濃度が低いだけでなく、196時間後のオゾン濃度が低下した。また、窒素酸化物も発生した。