(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5794798
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】車両用変速装置
(51)【国際特許分類】
F16H 61/04 20060101AFI20150928BHJP
F16H 61/682 20060101ALI20150928BHJP
【FI】
F16H61/04
F16H61/682
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-61460(P2011-61460)
(22)【出願日】2011年3月18日
(65)【公開番号】特開2012-197837(P2012-197837A)
(43)【公開日】2012年10月18日
【審査請求日】2014年2月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134212
【弁理士】
【氏名又は名称】提中 清彦
(72)【発明者】
【氏名】秋葉 巧
【審査官】
小野 孝朗
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−113933(JP,A)
【文献】
実開昭62−030939(JP,U)
【文献】
実開昭63−68545(JP,U)
【文献】
実開昭60−103749(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 59/00−61/12、61/16−61/24
61/66−61/70、63/40−63/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力軸或いは出力軸の一方に対して回転連結されると共に軸方向に並んで配設される複数の回転連結側変速ギヤと、対応する回転連結側変速ギヤに各々噛合されると共に入力軸或いは出力軸の他方に対して同軸的かつ回転自在に配設される複数の回転自在側変速ギヤと、を備え、前記複数の回転自在側変速ギヤのうちから選択される一つに、前記他方と一体的に回転連結されつつ軸方向に移動可能に構成される可動部材を移動させて係合させることにより、所定の変速比で前記一方と前記他方とを回転連結するようにした機械式自動変速機の変速制御装置であって、
変速の際に、対応する可動部材を係合させる前に、可動部材の移動に連動して、前記他方の軸と一体回転すると共に軸方向移動可能に支持される軸側同期要素を軸方向に移動させ、該当の回転自在側変速ギヤと一体回転する変速ギヤ側同期要素に押し付けることで連れ廻り力を発生させ、前記一方の軸と、前記他方の軸と、の間で同期を図るようにしたシンクロ機構を全ての変速段のうちの一部に備えたものにおいて、
シンクロ機構を備えない変速段への変速の際に、
変速機の温度が所定以上の場合に、一旦シンクロ機構を備えた変速段へ変速してから該当の変速段へ変速する変速方法を選択し、
変速機の温度が所定より低い場合に、入力軸の回転速度が所定より低くなったときに、直接該当の変速段へ変速することを特徴とする機械式自動変速機の変速制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用の変速装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、商用車(トラック、バスなど)などの車両に用いられる変速装置(変速機)では、1速ギヤ、後退速ギヤ(リバースギヤ)にギヤチェンジをする場合、停車時にギヤ操作を行ってたギヤ鳴きがしたり、ギヤを入れ難い或いは入れることができないといったギヤの渋りが発生するおそれがある。
【0003】
このような現象は、例えば、
図3の上側に示すような変速装置にあっては、インプットシャフト1からの回転入力が入力されるカウンターシャフト2に略一体的に支持される複数変速段の各変速ドライブギヤと、これらの各変速ドライブギヤにそれぞれ対応して噛合すると共にメインシャフト(アウトプットシャフト)3に回転自在に設けられる複数変速段の各変速ドリブンギヤと、が常時噛み合っていて(リバースギヤの場合はカウンターギヤを介して常時噛み合っている)、所望の変速段の変速ドリブンギヤをアウトプットシャフト3と一体的に回転させ得るように、アウトプットシャフト3と一体的に回転するスリーブの内側スプライン溝を、軸方向に移動させて所望の変速ドリブンギヤと一体回転するドグと係合させる変速操作の際に、スリーブの内側スプライン溝とドグとの相対的な位置ズレ(同期不足)により、前記スリーブを、所望の変速ドリブンギヤのドグと良好に係合させることができないことなどによって生じる。
【0004】
そして、このようなギヤ入れが難しいといった円滑でない変速操作を改善する技術としては、例えば、
図3の下側に示したような機構、いわゆる同期機構(シンクロ機構)を設けるようにすることが一般的である。
【0005】
しかし、かかるシンクロ機構においては、1速ギヤや後退速(リバース)ギヤ用のシンクロ機構はサイズが大きくなるため、使用頻度の割には大容量化が必要となり、コストアップ、重量増、更には大容量のシンクロ機構を搭載することによる大幅な構造変更(場合によっては軸方向長さの変更)などが必要となるなど、デメリットが大きく、1速ギヤ、後退速(リバース)ギヤ用のシンクロ機構を採用することは難しいといった実情がある。
【0006】
なお、
図3において、符号1はインプットシャフト、符号2はカウンターシャフト、符号3はメインシャフト(アウトプットシャフト)、符号4はシフトフォーク、符号5は変速ドリブンギヤ、符号6はスリーブ、符号7はシンクロコーン、符号8はシンクロリング、符号9はシンクロキー、符号10はシンクロヘッド、符号11はキースプリング、符号12はハブである。
【0007】
このようなことから、例えば、特許文献1では、機械的なシンクロ機構を使用せずに、電子的にシンクロ制御して、ギヤの噛合を確実にできるようにした変速機の回転同期制御装置が提案されている。
【0008】
すなわち、この特許文献1に記載された変速機の回転同期制御装置は、
図4に示すように、メインシャフト307と平行にカウンターシャフト306が配置された変速機301と、エンジンの回転数を制御するコントロールユニット211と、クラッチを断接するクラッチ制御手段212と、変速機の変速比を切り換える変速切換手段202と、カウンターシャフトの回転数を設定値に合わせる回転制御手段313と、運転状態を検知し、目標変速比を決定し、各手段212,202,313を用いて変速機を目標変速比に変速制御するコントロールユニット205とを有し、変速制御時に、メインシャフトの回転数とカウンターシャフトの回転に応じメインシャフトに対して自在に回転するメインギア318の回転数との回転数差を回転制御手段の作動により所定の範囲に制御する回転同期制御を行い、変速制御の開始から所定時間経過しても変速が完了しない場合には、回転同期制御を中止し、再試行するように構成されている。
【0009】
また、特許文献2には、変速機のセレクトおよびシフト操作を行うセレクトおよびシフトアクチュエータと、該両アクチュエータの各操作ポートを流体圧源と排出側のいずれかへ連通させるように各々配設された流路切換弁と、該流路切換弁と流体圧源とを連絡する配管中に配設された開閉弁と、クラッチのオン、オフ操作をするクラッチアクチュエータと、該クラッチアクチュエータの流体圧源側および排出側に各々配設された開閉弁および電子制御装置とを備え、リバースの変速時には一旦他の変速段へシフト後にリバースへシフトするようにした電子制御式変速機の変速操作方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001−280473号公報
【特許文献2】特開昭59−120524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に記載されている装置では、
図4に示したように、回転制御手段としてのカウンターシャフトブレーキ313などを別個新たに備える必要があるため、変速機のサイズや重量が増加すると共に構成が複雑化して高コスト化するといった実情がある。
【0012】
この一方、特許文献2に記載されている装置は、別個新たな機構を備える必要がないため、変速機のサイズが大型化したり重量が増加することもなく低コストであるが、使用環境等によっては十分でない場合があり、よりきめ細かな制御により高精度かつ円滑に変速操作を行うようにすることが求められる。
【0013】
本発明は、かかる実情に鑑みなされたもので、簡単かつ低コストな構成でありながら、よりきめ細かく高精度かつ円滑に、1速ギヤやリバースギヤなどのシンクロ機構を持たない変速ギヤへの変速の際におけるギヤ鳴きの発生やギヤの入りが悪い渋りの発生などを抑制して円滑な変速を実現可能な機械式自動変速機の変速制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このため、本発明に係る機械式自動変速機の変速制御装置は、
入力軸或いは出力軸の一方に対して回転連結されると共に軸方向に並んで配設される複数の回転連結側変速ギヤと、対応する回転連結側変速ギヤに各々噛合されると共に入力軸或いは出力軸の他方に対して同軸的かつ回転自在に配設される複数の回転自在側変速ギヤと、を備え、前記複数の回転自在側変速ギヤのうちから選択される一つに、前記他方と一体的に回転連結されつつ軸方向に移動可能に構成される可動部材を移動させて係合させることにより、所定の変速比で前記一方と前記他方とを回転連結するようにした機械式自動変速機の変速制御装置であって、
変速の際に、対応する可動部材を係合させる前に、可動部材の移動に連動して、前記他方の軸と一体回転すると共に軸方向移動可能に支持される軸側同期要素を軸方向に移動させ、該当の回転自在側変速ギヤと一体回転する変速ギヤ側同期要素に押し付けることで連れ廻り力を発生させ、前記一方の軸と、前記他方の軸と、の間で同期を図るようにしたシンクロ機構を全ての変速段のうちの一部に備えたものにおいて、
シンクロ機構を備えない変速段への変速の際に、
変速機の温度が所定以上の場合に、一旦シンクロ機構を備えた変速段へ変速してから該当の変速段へ変速する変速方法を選択し、
変速機の温度が所定より低い場合に、入力軸の回転速度が所定より低くなったときに、直接該当の変速段へ変速することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、簡単かつ低コストな構成でありながら、よりきめ細かく高精度かつ円滑に、1速ギヤやリバースギヤなどのシンクロ機構を持たない変速ギヤへの変速の際におけるギヤ鳴きの発生やギヤの入りが悪い渋りの発生などを抑制して円滑な変速を実現可能な変速制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係る機械式自動変速機の変速制御装置を概略的に示すブロック図である。
【
図2】同上実施形態に係る機械式自動変速機の変速制御装置が発進時に行う変速制御を示すフローチャートである。
【
図3】同上実施形態に係る機械式自動変速機の一構成例を示す断面図である。
【
図4】従来の変速制御装置の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明に係る機械式自動変速機の変速制御装置の一実施形態について、添付の図面を参照しつつ説明する。なお、以下で説明する実施形態により、本発明が限定されるものではない。
【0020】
本実施形態に係る機械式自動変速機の変速制御装置は、
図1に示すように、内燃機関の回転出力が、摩擦板などを離接することで接断可能に構成される機械式のクラッチ機構200を介して、常時噛み合い式の機械式自動変速機100に入力され、この機械式自動変速機100により所定に変速された回転出力は、図示しないプロペラシャフトやディファレンシャル機構等を介して駆動輪に伝達されるようになっている。
【0021】
また、本実施形態に係る変速制御装置は、チェンジレバーによる運転者の変速操作或いは自動変速制御装置(AMT ECU)300からの変速指令に従って、アクチュエータを用いてクラッチ機構を切断した状態にて、変速段位置のシフト機構を移動させるセレクトモータやシフト機構をギヤ入れするシフトモータなどの変速用の各種アクチュエータによりシフトフォーク等のシフト機構を動かして自動的に所望の変速段へ変速することができるように構成されている。
【0022】
ここで、本実施形態に係る機械式自動変速機100の基本的な構成は、従来同様で、
図3の上側に例示したものと同様、インプットシャフト1からの回転入力が入力されるカウンターシャフト2に略一体的に設けられる複数変速段の各変速ドライブギヤと、これらの各変速ドライブギヤにそれぞれ対応して噛合すると共にメインシャフト(アウトプットシャフト)3に回転自在に設けられる複数変速段の各変速ドリブンギヤ5と、が常時噛み合っていて(リバースギヤの場合はカウンターギヤを介して常時噛み合っている)、所望の変速段の変速ドリブンギヤ5をアウトプットシャフト3と一体的に回転させるように、アウトプットシャフト3と一体的に回転しているスリーブ6の内側スプライン溝を、軸方向に移動させて、所望の変速ドリブンギヤと一体のドグに、スプライン係合を介して係合させることによって変速が行われる。
【0023】
なお、変速の際に、スリーブ6の内側スプラインと、変速ドリブンギヤ5のドグと、が円滑に係合できるように、1速ギヤ(1速段)と後退ギヤ(リバースギヤ;後退段)を除く前進ギヤにおいては、従来同様に、各変速段毎にシンクロコーン7が変速ドリブンギヤ5と略一体回転するように設けられ、シンクロコーン7に対応するシンクロリング8が軸方向に移動可能にアウトプットシャフト3上に略一体回転するように設けられ、シフトフォーク4によりスリーブ6が移動される際に、スリーブ6がシンクロリング8をシンクロコーン7に押し付けることで、カウンターシャフト2(ドライブギヤ)延いては変速ドリブンギヤ5と、メインシャフト(アウトプットシャフト)3と、の間の回転速度差を縮小することにより同期が図られるようになっている(
図3の下側等参照)。
【0024】
このような構成を備えた本実施形態に係る機械式自動変速機100の変速制御装置は、自動変速制御装置(AMT ECU)300からの変速指令に従って、シンクロ機構を持たない1速ギヤ或いは後退ギヤ(リバースギヤ)への変速時には、これらのギヤへの変速操作を行う前に、一度2速ギヤへ変速操作を行い、その際のシンクロリング8のシンクロコーン7への押し付けによってカウンターシャフト2(ドライブギヤ)延いては変速ドリブンギヤ5の回転速度を低下させて、例えば停車状態のメインシャフト(アウトプットシャフト)3の回転との同期を図ってから、1速ギヤ或いは後退ギヤ(リバースギヤ)への変速操作を行うようになっている。
【0025】
このような操作を行うことにより、本実施の形態では、シンクロ機構を持たない1速ギヤ或いは後退ギヤ(リバースギヤ)への変速操作であっても、ギヤ鳴きの発生などを抑制して円滑な変速を実現することができるようになっている。
【0026】
また、本発明者等は、低温時には、トランスミッションオイルの粘度が高いため、メインシャフト(アウトプットシャフト)3と一体的に回転しているスリーブ6の内側スプライン溝を、軸方向に移動させて所望の変速ドリブンギヤ5と一体のドグと係合させるために、ドグ間に滑り込ませる際に必要な力(掻き分け力)が大きくなるため、ギヤ入れを難しくしていることを確認した。
【0027】
このように、1速ギヤ或いは後退ギヤ(リバースギヤ)への変速がうまく行えなかった場合には、一旦ギヤ入れを中止して、何度かギヤ入れをトライする必要があったり、それでもギヤ入れができない場合には、ニュートラル状態にてクラッチ機構200を接続して内燃機関の回転力によりカウンターシャフト2(ドライブギヤ)延いては変速ドリブンギヤ5を再び回転させるなどの必要があった。
【0028】
このため、本実施の形態に係る変速制御装置では、
図2に示すようなフローチャートに従って、以下のような制御を実行する。
なお、本制御は、例えば、1速ギヤ或いは後退ギヤ(リバースギヤ)への変速時(例えば発進時:メインシャフト(アウトプットシャフト)3の回転速度がゼロに近い状態での変速時)などにおいて実行される。
【0029】
すなわち、
ステップ(図では、Sと記す。以下、同様)1では、例えばエンジンコントロールユニット(E/G ECU)とのCAN(Controller Area Network)通信で受信した内燃機関の冷却水温情報(或いは潤滑油温情報など)から、機械式自動変速機100の温度(トランスミッション油温(TM油温))を推定などして取得する。なお、トランスミッションケースに温度センサ等を取り付けて実際にトランスミッション油温を検出する構成とすることもできる。
【0030】
また、取得したトランスミッション油温の初期値に対して、カウンターシャフト2等の積算回転数に基づいて予め定まるトランスミッション油温の上昇率を考慮して、現在のトランスミッション油温を推定して取得するような構成とすることができる。
【0031】
ステップ2では、取得したトランスミッション油温と、所定の閾値(第1所定値)と、を比較して、トランスミッション油温(TM油温)が所定の閾値以上である場合には、ステップ3へ進み、トランスミッション油温(TM油温)が所定の閾値より低い場合には、ステップ4へ進む。
【0032】
ステップ3は、トランスミッション油温(TM油温)が所定の閾値(第2所定値)以上であり、トランスミッションオイルの粘度は所定に低い状態にあるため、カウンターシャフト2等の回転落ちは悪く、そのままでは円滑な変速操作を行うことができないとして、1速ギヤ或いは後退ギヤ(リバースギヤ)への変速を行う前に、一度2速ギヤへ変速操作を行って、その際のシンクロ機構の作用によってカウンターシャフト2(ドライブギヤ)の回転速度を落とすことで、メインシャフト(アウトプットシャフト)3の回転との同期を図った後、1速ギヤ或いは後退ギヤ(リバースギヤ)への変速操作を行う。
【0033】
これにより、シンクロ機構を持たない1速ギヤ或いは後退ギヤ(リバースギヤ)への変速操作であっても、ギヤ鳴きの発生などを抑制して円滑な変速を実現することができる。
【0034】
一方、ステップ4へ進む場合には、トランスミッション油温(TM油温)が所定の閾値より低い場合であり、トランスミッションオイルの粘度が高いため、メインシャフト(アウトプットシャフト)3と一体回転しているスリーブ6の内側スプライン溝を、軸方向に移動させて所望の変速ドリブンギヤ5と一体のドグと係合させるために、ドグ間に滑り込ませる際に必要な力(掻き分け力)が大きくなるため、ギヤ入れが難しくなる。
【0035】
この一方で、カウンターシャフト2側の回転がメインシャフト(アウトプットシャフト)3の回転より所定に高い場合には、同期を図ることができないため、スリーブ6の内側スプラインが、変速ドリブンギヤと一体のドグにより弾き返されて、ギヤ鳴きなどが生じると共に、ギヤ入れができないおそれがある。
【0036】
このため、本実施の形態では、ステップ4にて、カウンターシャフト2の回転速度と、閾値と、を比較して、カウンターシャフト回転速度<閾値となるまで待ってから、ステップ5へ進む。
【0037】
そして、ステップ5では、1速ギヤ或いは後退ギヤ(リバースギヤ)への変速を行う場合でも、1速ギヤ或いは後退ギヤ(リバースギヤ)への変速操作の際に通常行っていた事前の2速ギヤへの変速操作を行うことなく、直接、1速ギヤ或いは後退ギヤ(リバースギヤ)への変速操作を行う。
【0038】
これにより、シンクロ機構を持たない1速ギヤ或いは後退ギヤ(リバースギヤ)への低温時における変速操作であっても、ギヤ鳴きの発生やギヤの入りが悪い渋りの発生などを抑制して円滑な変速を実現することができる。
【0039】
このように、本実施の形態によれば、機械式自動変速機100(トランスミッションオイル)の温度状態に応じてカウンターシャフト2(ドライブギヤ)延いては変速ドリブンギヤ5の回転抵抗が変動することを考慮して、シンクロ機構を持たない変速段への変速方法を変更するようにしたので、簡単かつ低コストな構成でありながら、よりきめ細かく高精度かつ円滑に、シンクロ機構を持たない変速段への変速の際におけるギヤ鳴きの発生やギヤの入りが悪い渋りの発生などを抑制して円滑な変速を実現することができる。
【0040】
すなわち、本実施の形態では、例えば、機械式自動変速機100(トランスミッションオイル)の温度が所定以上の場合に、1速ギヤ或いは後退ギヤ(リバースギヤ)への変速の場合は、トランスミッションオイル粘度が低くカウンターシャフト2(ドライブギヤ)の回転落ちは通常であるため、これに合わせて、1速ギヤ或いは後退ギヤ(リバースギヤ)への変速操作を行う前に、一度2速ギヤなどのシンクロ機構の備わる変速段へ変速操作を行って、その際のシンクロ機構の作用によってカウンターシャフト2(ドライブギヤ)の回転速度を落とすことで、メインシャフト(アウトプットシャフト)3の回転との同期を図った後、1速ギヤ或いは後退ギヤ(リバースギヤ)への変速操作を行う。これにより、シンクロ機構の備わっていない1速ギヤ或いは後退ギヤ(リバースギヤ)などの変速段への変速操作であっても、ギヤ鳴きの発生などを抑制して円滑な変速を実現することができる。
【0041】
また、本実施の形態では、例えば、機械式自動変速機100(トランスミッションオイル)の温度が所定より低い場合に、1速ギヤ或いは後退ギヤ(リバースギヤ)へ変速する場合は、トランスミッションオイル粘度が高くカウンターシャフト2(ドライブギヤ)の回転落ちが速いため、これに合わせて、1速ギヤ或いは後退ギヤ(リバースギヤ)への変速操作の際に通常行っていた事前の2速ギヤへの変速操作を行うことなく、直接、1速ギヤ或いは後退ギヤ(リバースギヤ)への変速操作を行う。これにより、シンクロ機構の備わっていない1速ギヤ或いは後退ギヤ(リバースギヤ)などの変速段への低温時の変速操作であっても、ギヤ鳴きの発生やギヤの入りが悪い渋りの発生などを抑制して円滑な変速を実現することができる。
【0042】
ところで、本発明は、全ての変速段のうちの一部の変速段にシンクロ機構を備えた常時噛み合い式の機械式変速機であれば適用可能であり、自動式変速を行う自動変速機に限定されるものではなく、手動にて変速操作を行う変速機にも適用可能である。この場合、1速ギヤ或いは後退ギヤ(リバースギヤ)へ変速する場合に、温度状態に応じて、事前に他の変速段へ入れるか否かを指示すると共に、そのギヤ入れタイミング等を運転者に報知することにより、ギヤ鳴きの発生やギヤの入りが悪い現象の発生などを抑制して円滑な変速を実現することができる。
【0043】
以上で説明した実施形態は、本発明を説明するための例示に過ぎず、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々変更を加え得ることは可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 インプットシャフト
2 カウンターシャフト
3 メインシャフト(アウトプットシャフト)
4 シフトフォーク
5 変速ドリブンギヤ(本発明に係る回転自在側変速ギヤ)
6 スリーブ(本発明に係る可動部材)
7 シンクロコーン(本発明に係る変速ギヤ側同期要素)
8 シンクロリング(本発明に係る軸側同期要素)
100 常時噛み合い式の機械式自動変速機
200 機械式のクラッチ機構
300 自動変速制御装置(AMT ECU)